JP2006258011A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 エンジンのトルク低下を抑制する。
【解決手段】 エンジンECUは、エンジン回転数NEを検知するステップ(S130)と、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合(S140にてYES)、吸気バルブが開いた状態である場合に燃料が噴射されるように吸気通路噴射用インジェクタを同期噴射にするステップ(S150)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図3
【解決手段】 エンジンECUは、エンジン回転数NEを検知するステップ(S130)と、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合(S140にてYES)、吸気バルブが開いた状態である場合に燃料が噴射されるように吸気通路噴射用インジェクタを同期噴射にするステップ(S150)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と吸気通路または吸気ポート内に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた内燃機関の制御装置に関し、特に、第2の燃料噴射手段からの噴射時期を決定する技術に関する。
機関吸気通路内に燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタと、機関燃焼室内に燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタとを具備し、機関回転数と機関負荷とに基づいて吸気通路噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとの燃料噴射比率を決定する内燃機関が公知である。
このような内燃機関における、始動開始から排気ガスを浄化する触媒を早期に活性化する直噴火花点火式内燃機関の制御装置が、特開平11−324765号公報(特許文献1)に開示されている。この直噴火花点火式内燃機関の制御装置は、機関の燃焼室内に直接燃料を噴射供給する燃料噴射弁と、燃焼室内全体に均質な混合気を形成する燃料供給手段と、燃焼室内の混合気に火花点火する点火栓とを備え、所定の機関運転条件のとき、点火実行時に点火栓周りに偏在する混合気層の空燃比がほぼストイキとなるよう燃料噴射弁の圧縮行程中の燃料噴射量と燃料噴射時期および点火栓の点火時期を制御して成層燃焼を行なう直噴火花点火式内燃機関を制御する。この制御装置は、機関の排気通路に配設された排気浄化触媒を昇温すべき条件を判断する昇温条件判断手段と、排気浄化触媒を昇温すべき条件のとき、燃焼室内全体に形成される混合気の空燃比がストイキよりリーンかつ火炎伝播可能な空燃比となるよう燃料供給手段の燃料噴射量を制御するとともに、点火実行時に点火栓周りに偏在する混合気の空燃比がストイキよりリッチとなるよう燃料噴射弁の圧縮行程中の燃料噴射量と燃料噴射時期および点火栓の点火時期を制御して第2の成層燃焼を行なう制御手段とを備える。
この直噴火花点火式内燃機関の制御装置によると、点火栓周りの混合気層の空燃比をストイキよりリッチな空燃比としているので、主燃焼(火花点火による着火とその後の火炎伝播による燃焼)の際に不完全燃焼物(CO)が生成され、主燃焼後もこのCOが燃焼室内に残存する。また、リッチ混合気層の周囲にストイキよりリーンな混合気を形成しているので、この領域には主燃焼後も酸素が残存する。この残存COと残存酸素とが主燃焼以降の筒内ガス流動によって混合・再燃焼し、排気温度が上昇する。不完全燃焼物(CO)は、主燃焼の燃焼過程で生成されるものであるから、主燃焼の終了時点において既に高温状態となっており、燃焼室温度が低い状況下であっても、比較的良好に燃焼させることができる。すなわち、生成したCOを燃焼室内と触媒上流の排気通路内でほとんど再燃焼させることが可能となる。なお、主燃焼自体でのCO発生量が少ない均質燃焼時に比べると、触媒へのCOの流入量が増加する可能性はあるが、触媒のCO転化開始温度はHC転化開始温度よりも低いので、排気エミッションに対する影響は比較的小さい。また、リーン混合気層の空燃比を火炎伝播可能な空燃比としているので、リッチ混合気層とリーン混合気層との境目で未燃HCが発生することはない。また、燃焼室の隅々まで火炎が良好に伝播されるので、燃焼室内の低温領域(クエンチングエリア)を均質燃焼時と変わりのない小さな領域とすることができる。さらに、リーン混合気が燃焼する領域の過剰な酸素を主燃焼後も残存させる形とするので、主燃焼の終了時点における残存酸素の温度も比較的高温となっており、COの再燃焼がより速やかに進行する。
特開平11−324765号公報
上述した特許文献の第4の実施の形態には以下のような構成が記載されている。燃焼室内全体に均質な混合気を形成する燃料供給手段として、吸気通路に設けた燃料噴射弁(吸気ポート噴射用燃料噴射弁)による排気行程もしくは排気行程ないし吸気行程での燃料噴射により燃焼室全体にストイキよりも比較的リーン(希薄)な均質混合気を形成し、筒内へ燃料を噴射する燃料噴射弁を用いて、圧縮行程で燃焼室内に燃料を噴射供給し、点火栓周りにストイキよりも比較的リッチな(燃料濃度の高い)混合気を層状に形成して、燃焼させる。そして、触媒活性化のための成層ストイキ燃焼においては、具体的には、1燃焼サイクルあたりの吸入空気量で略完全燃焼させることができるトータル燃料量(略ストイキ(理論空燃比)を達成するのに必要な燃料重量)のうち、たとえば略50%ないし略90%の燃料重量を、吸気ポート噴射用燃料噴射弁で吸気通路内に(排気行程もしくは排気行程ないし吸気行程で)噴射供給し、これにより吸気行程中に燃焼室内全体にストイキよりも比較的リーン(希薄)な均質混合気を形成するとともに、残りの略50%ないし略10%の燃料重量を、筒内へ燃料を噴射する燃料噴射弁で燃焼室内に圧縮行程中に噴射供給し、点火栓周りにストイキよりも比較的リッチな(燃料濃度の高い)混合気を層状に形成して燃焼させることが記載されている。
ところで、燃料の気化性が悪い燃料が使用された場合においては、吸気バルブが閉じた状態で燃料を吸気通路内に噴射しても、燃料が気化し難く、吸気通路内に多くの燃料が液状のまま残留する。そのため、燃焼室への燃料の供給が不十分になり、空燃比が目標の空燃比よりもリーンになり得る。このような場合、内燃機関の出力が低下し、ドライバビリティが悪化するおそれがある。しかしながら、上述の特開平11−324765号公報においては、このような問題は考慮されていない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ドライバビリティの悪化を抑制することができる、内燃機関の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関の制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備えた内燃機関を制御する。吸気通路と燃焼室との間には、吸気バルブが設けられる。制御装置は、内燃機関の回転数を検知するための検知手段と、内燃機関の回転数に関する条件が満たされた場合、第2の燃料噴射手段からの噴射時期を、吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更して、少なくとも第2の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、燃料噴射手段を制御するための制御手段とを含む。
第1の発明によると、検知手段が内燃機関の回転数を検知する。たとえば、燃料の気化性が悪い燃料が使用された場合、吸気バルブが閉じた状態で燃料を吸気通路内に噴射しても、燃料が気化し難く、吸気通路内に多くの燃料が液状のまま残留する。そのため、燃焼室への燃料の供給が不十分になり、空燃比が目標の空燃比よりもリーンになり得る。このような場合、内燃機関の出力が低下し、回転数が低下する。そこで、内燃機関の回転数が予め定められた回転数よりも低いという条件が満たされた場合や、内燃機関の回転数の低下量が予め定められた低下量よりも大きいという条件が満たされた場合、吸気通路内への噴射時期が吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更される。吸気バルブが開いた状態である場合、吸気通路内を空気が流れる。吸気通路内に噴射された燃料は気流に流されて、速やかに燃焼室内に流入する。これにより、吸気通路内に残留する燃料を抑制して、燃焼室内に十分な量の燃料を供給することができる。そのため、不意に低下した内燃機関のトルクを回復させることができる。その結果、ドライバビリティの悪化を抑制することができる、内燃機関の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、内燃機関の排気系には予め定められた温度以上で活性化する排気浄化用の触媒が設けられる。制御手段は、触媒の暖機中に、条件が満たされた場合、第2の燃料噴射手段からの噴射時期を、吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更して、少なくとも第2の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、燃料噴射手段を制御するための制御手段とを含む。
第2の発明によると、内燃機関の排気系には予め定められた温度以上で活性化する排気浄化用の触媒が設けられる。この触媒の暖機中は、内燃機関の温度が低い状態であるといえる。この状態で、たとえば、燃料の気化性が悪い燃料が使用された場合、特に燃料が気化し難く、内燃機関のトルク低下により回転数が低下し易い。したがって、触媒の暖機中において、たとえば、内燃機関の回転数が予め定められた回転数よりも低いという条件が満たされた場合や、内燃機関の回転数の低下量が予め定められた低下量よりも大きいという条件が満たされた場合、吸気通路内への噴射時期が吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更される。これにより、触媒の暖機中において、不意に低下した内燃機関のトルクを回復させ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
第3の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加え、条件は、内燃機関の回転数が、予め定められた回転数よりも低いという条件である。
第3の発明によると、内燃機関の回転数が予め定められた回転数よりも低いという条件が満たされた場合、吸気通路内への噴射時期が吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更される。これにより、内燃機関のトルクが不意に低下したために回転数が低下した場合において、トルクを回復させ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
第4の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加え、条件は、内燃機関の回転数の低下量が、予め定められた低下量よりも大きいという条件である。
第4の発明によると、内燃機関の回転数の低下量が予め定められた低下量よりも大きいという条件が満たされた場合、吸気通路内への噴射時期が吸気バルブが閉じた時期から吸気バルブが開いた時期に変更される。これにより、内燃機関のトルクが不意に低下したために回転数が低下した場合において、トルクを回復させ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
第5の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加え、第1の燃料噴射手段は、筒内噴射用インジェクタである。第2の燃料噴射手段は、吸気通路用インジェクタである。
第5の発明によると、第1の燃料噴射手段である筒内噴射用インジェクタと第2の燃料噴射手段である吸気通路噴射用インジェクタとを別個に設けて噴射燃料を分担する内燃機関において、内燃機関のトルクの低下を抑制し、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではなく、V型6気筒エンジン、V型8気筒エンジンなど、種々の形式のエンジンに適用可能である。
図1に示すように、エンジン10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU(Electronic Control Unit)300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。また、各気筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されており、この燃料分配管130は燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されており、したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
なお、三元触媒コンバータ90は、理論空燃比(A/F(空気重量/燃料重量)=14.7)近傍において排気中のCO、HCの酸化とNOxの還元を行なって排気を浄化することができる三元触媒である。この三元触媒コンバータ90における触媒(プラチナ、ロジウム、パラジウム等)は、ある程度の温度(高温)にならないと、活性化せず、浄化機能が作用しない。
本実施の形態に係る制御装置においては、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とを備えたエンジン10の始動後において、三元触媒コンバータ90を早期に昇温して触媒を活性化させて、排気浄化をエンジン10の始動直後できるだけ早く作用させるものである。三元触媒コンバータ90が活性化したか否かは、三元触媒コンバータ90の排気下流側に、排気中の特定成分(たとえば、酸素)濃度を検知して、、判断することができる。たとえば、三元触媒コンバータ90の下流側に設けた酸素センサが活性化しているか否かを判断する。具体的には、三元触媒コンバータ90が活性化しているか否かを、下流側の酸素センサの検知値号の変化に基づいて判断することになる。これは、三元触媒コンバータ90の下流側に設けられる酸素センサが活性化したのは、三元触媒コンバータ90の活性化の出口側排気温度の上昇(酸化反応)によるものであるとして、三元触媒コンバータ90が活性化したと判断するものである。
また、エンジン冷却水の水温もしくはエンジンオイルの油温等を検知して三元触媒コンバータ90の温度を推定し、その結果に基づいて三元触媒コンバータ90の活性化を判断することができる。さらには、直接的に三元触媒コンバータ90の温度(出口温度)を検知することによっても三元触媒コンバータ90の活性化を判断することができる。
このエンジン10は、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料を分担して噴射する。エンジンECU300のROM320に記憶される、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、直噴比率、DI比率、DI比率r(または単にr)とも記載する。)を表わすマップについて説明する。このようなマップは、たとえば、エンジン回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率が直噴比率(DI比率r)として百分率で示されている。
エンジン回転数と負荷率とにより定まる運転領域ごとに、直噴比率(DI比率r)が設定されている。「直噴100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域(r=1.0、r=100%)であることを意味し、「直噴0〜20%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が、全噴射量の0〜20%である領域(r=0〜0.2)であることを意味している。たとえば、「直噴40%」とは、筒内噴射用インジェクタ110から全噴射量の40%が噴射され、吸気通路噴射用インジェクタ120から全噴射量の60%が噴射されることを示す。なお、このようなマップの詳細については後述する。
図2に、図1の部分拡大図を示す。図2は、図1の各気筒112における筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の位置関係、ならびにインテークマニホールド20、吸気バルブ122、排気バルブ121、点火プラグ119およびピストン123の位置関係を説明する図である。
インテークマニホールド20の燃焼室側には吸気バルブ122が設けられており、その吸気バルブ122の上流側に吸気通路噴射用インジェクタ120が配置されている。
なお、図2に示すように配置された筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料分担比率の詳細については、後述する。
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300において実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU300は、エンジン10が始動されたか否かを判断する。このとき、他のECUからエンジンECU300に入力されるエンジン始動要求信号や、エンジンECU300自体により処理された結果に基づいて判断される。エンジン10が始動されると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S110にて、エンジンECU300は、急速触媒暖機が必要であるか否かを判断する。このとき、上述したように、三元触媒コンバータ90の下流側に設けられた酸素センサの検知値号の変化に基づいて三元触媒コンバータ90が活性化していないと、急速触媒暖機は必要であると判断される。また、エンジン冷却水の水温もしくはエンジンオイルの油温等から急速触媒暖機が必要であるか否かを判断するようにしてもよい。触媒急速暖機が必要であると(S110にてYES)、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS190へ移される。
S120にて、エンジンECU300は、吸気バルブ122が閉じた状態である場合に燃料が噴射されるように吸気通路噴射用インジェクタ120を非同期噴射にして、急速触媒暖機処理を実行する。このとき、たとえば、図4に示すように、点火時期、筒内噴射用インジェクタ110の噴射時期、燃料噴射量、供給空気量、DI比率rが、エンジンECU300により制御される。なお、この図4におけるDI比率の値は一例であって、50%以上(筒内噴射用インジェクタ110の分担の割合を吸気通路噴射用インジェクタ120の分担の割合と同等以上)であればよい。また、燃料量減量については、一例として、空燃比が15.5程度のリーンな状態にすればよい。
S130にて、エンジンECU300は、回転数センサ460から送信された信号に基づいて、エンジン回転数NEを検知する。S140にて、エンジンECU300は、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低いか否かを判別する。しきい値NE(0)は、たとえばアイドル時の目標回転数に設定される。エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合(S140にてYES)、処理はS150に移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS160に移される。
S150にて、エンジンECU300は、吸気バルブ122が開いた状態である場合に燃料が噴射されるように吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にして、急速触媒暖機処理を実行する。
S160にて、エンジンECU300は、急速触媒暖機を終了するか否かを判断する。このとき、上述したように、三元触媒コンバータ90の下流側に設けられた酸素センサの検知値号の変化に基づいて三元触媒コンバータ90が活性化していると、急速触媒暖機は終了すると判断される。また、エンジン冷却水の水温もしくはエンジンオイルの油温等から急速触媒暖機を終了するか否かを判断するようにしてもよい。さらに、エンジン冷却水の水温が始動時より予め定められた値以上上昇した否かに基づいて、急速触媒暖機を終了するか否かを判断するようにしてもよい。さらに、吸入空気量の積算値に基づいて、エンジン10が予め定められた時間以上運転していか否かを判断することにより、急速触媒暖機を終了するか否かを判断するようにしてもよい。触媒急速暖機を終了すると判断されると(S160にてYES)、処理はS190へ移される。もしそうでないと(S160にてNO)、処理はS170へ移される。
S170にて、エンジンECU300は、エンジン回転数NEを検知する。S180にて、エンジンECU300は、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも高いか否かを判別する。エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも高い場合(S180にてYES)、処理はS120へ戻される。もしそうでないと(S180にてNO)、処理はS150へ戻される。
S190にて、エンジンECU300は、エンジン10に対して通常の運転処理を実行する。このとき、一時的に急速触媒暖機用に設定されていた、点火時期、筒内噴射用インジェクタ110の噴射時期、燃料噴射量、供給空気量、DI比率rが、エンジンECU300により通常運転用に戻される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300により制御されるエンジン10の動作について説明する。
エンジン10が始動して(S100にてYES)、三元触媒コンバータ90の下流側に設けられた酸素センサの検知値号の変化に基づいて三元触媒コンバータ90が活性化していないと、急速触媒暖機は必要であると判断される(S110にてYES)。このような場合、図4に示すような値になるように、点火時期、筒内噴射用インジェクタ110の噴射時期、燃料噴射量、供給空気量、DI比率rが、エンジンECU300により制御される。
このように制御されたエンジンにおいては、筒内噴射用インジェクタ110の分担の割合を吸気通路噴射用インジェクタ120の分担の割合と同等またはそれより多い65%程度になるようにして、筒内噴射用インジェクタ110から圧縮行程で燃料を筒内に噴射する。吸気バルブ122が閉じた状態である場合に燃料が噴射されるように吸気通路噴射用インジェクタ120から非同期噴射で燃料を吸気管内に噴射する。このとき、吸気通路噴射用インジェクタ120による全体として空燃比がリーンで均質状態の混合気と、筒内噴射用インジェクタ110による点火プラグ周りの空燃比がリッチな成層状態の混合気とが燃焼室内で形成される。点火プラグでの点火時期を大きく遅角(たとえば、ATDC15゜)しても、筒内噴射用インジェクタ110の比率の方が同等か高いので、点火プラグ周りの混合気の空燃比をよりリッチであり、さらに、その点火プラグ周りの混合気の周りは、吸気通路噴射用インジェクタ120により形成された均質な混合気であるので、火炎の伝播を良好にできる。このように火炎が伝播しやすく、未燃燃料(HC)が発生しにくい。点火時期を大きく遅角させることにより、排気温度は上昇する。排気温度の上昇により、始動開始から触媒が活性化するまでの間における大気中へのHCの排出を抑制しながら、触媒を急速に暖機して、触媒を急速に活性化できる。
ところが、粗悪な燃料が使用されたために燃料の気化性が悪い場合、吸気バルブ122が閉じた状態である場合にインテークマニホールド20に噴射された燃料が気化し難く、多くの燃料が、インテークマニホールド20内に液状のまま残留する場合がある。このような現象は、急速触媒暖機が必要なエンジン10の冷間時において特に顕著に発生する。
この場合、燃焼室内の空燃比が目標の空燃比よりもリーンになり、エンジン10の出力(トルク)が低下する。このようなトルクの低下を検知するため、エンジン回転数NEが検知され(S130)、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低いか否かが判別される(S140)。
エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合(S140にてYES)、トルクが低下した状態であるといえる。このような場合、吸気バルブ122が開いた状態である場合に燃料が噴射されるように、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にして燃料を噴射させる(S150)。
吸気バルブ122が開いた状態では、インテークマニホールド20内の空気が燃焼室に向かって流れる。噴射された燃料は気流に流されて燃焼室内に流入する。これにより、インテークマニホールド20内に残留する燃料を抑制して燃焼室内に十分な燃料を供給し、低下したトルクを回復させることができる。そのため、トルクの低下によるドライバビリィティの悪化を抑制することができる。
一方、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも高い場合(S140にてNO)、トルクは低下していないため、吸気通路噴射用インジェクタ120は同期噴射にされない。
急速触媒暖機処理により、三元触媒コンバータ90における触媒の温度が上昇して活性化すると、三元触媒コンバータ90の下流側に設けられた酸素センサの検知値号が変化し得る。この変化に基づいて三元触媒コンバータ90が活性化したか否かが判断される。
三元触媒コンバータ90が活性化していないため、急速触媒暖機を終了しないと判断された場合(S160にてNO)、エンジン回転数NEが検知される(S170)。エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合(S180にてNO)、トルクが回復していない状態であるといえる。この場合、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にした急速触媒暖機処理が継続される(S150)。
エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも高い場合(S180にてYES)、トルクが回復した状態であるといえる。この場合、吸気通路噴射用インジェクタ120を非同期噴射に戻して急速触媒暖機処理が継続される(S120)。
三元触媒コンバータ90が活性化すると、急速触媒暖機を終了すると判断され(S160にてYES)、図4に示すような、点火時期、筒内噴射用インジェクタ110の噴射時期、燃料噴射量、供給空気量、DI比率rではなく、後述するDI比率r等を用いて、通常の運転処理によりエンジン10が制御される(S190)。
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジンECUを搭載した車両において、エンジン回転数NEが低下した場合、吸気バルブが開いた状態で燃料が噴射されるように、吸気通路噴射用インジェクタを同期噴射にして燃料が噴射される。このようにすると、吸気通路噴射用インジェクタから噴射された燃料をインテークマニホールド内を流れる気流により燃焼室内に流入させることができる。そのため、インテークマニホールド内に残留する燃料を抑制し、低下したトルクを回復させることができる。その結果、ドライバビリィティが悪化することを抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、急速触媒暖機中において、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にして吸気バルブ122が開いた状態で燃料を噴射していたが、急速触媒暖機中以外においてエンジン回転数NEが低下した場合に、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にして吸気バルブ122が開いた状態で燃料を噴射するようにしてもよい。
また、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低い場合に、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にしていたが、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)よりも低く、かつエンジン回転数NEとしきい値NE(0)との偏差が予め定められた偏差よりも大きい場合に、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にして吸気バルブ122が開いた状態で燃料を噴射するようにしてもよい。
また、予め定められた時間内におけるエンジン回転数NEの低下量が、予め定められた低下量よりも大きい場合に、吸気通路噴射用インジェクタ120を非同期噴射から同期噴射にして吸気バルブ122が開いた状態で燃料を噴射するようにしてもよい。
また、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射から非同期噴射に戻す際のしきい値を、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射にする際のしきい値よりも高くして、ヒステリシスを持たせるようにしてもよい。
また、アイドリング状態である場合など、エンジン回転数NEが運転者により意図的に高くされたり低くされたりしない状態である場合にエンジン回転数NEを検知して、吸気通路噴射用インジェクタ120を同期噴射に変更するか否かを判断するようにしてもよい。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)について説明する。
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)について説明する。
図5および図6を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率(r)とも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図5は、エンジン10の温間用マップであって、図6は、エンジン10の冷間用マップである。
図5および図6に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図5および図6に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態(たとえば、アイドル時の触媒暖気時が、通常運転状態以外の非通常運転状態の一例であるといえる)である場合には、均質燃焼のみが行なわれるようにしている。
さらに、これらの図5および図6に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図5の温間時のマップを選択して、そうではないと図6に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図5および図6に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図5のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図6のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図5のNE(2)や、図6のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図5および図6を比較すると、図5に示す温間用マップのNE(1)よりも図6に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図5および図6を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図5に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。これは、温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられ、このために、筒内噴射用インジェクタ110を用いた領域としている。
図5および図6を比較すると、図6の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)について説明する。なお、以下のエンジン(その2)の説明において、エンジン(その1)と同じ説明については、ここでは繰り返さない。
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)について説明する。なお、以下のエンジン(その2)の説明において、エンジン(その1)と同じ説明については、ここでは繰り返さない。
図7および図8を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図7は、エンジン10の温間用マップであって、図8は、エンジン10の冷間用マップである。
図7および図8を比較すると、以下の点で図5および図6と異なる。エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用される領域が多いことを示す。しかしながら、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図7および図8に十字の矢印で示す。このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図7および図8で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
なお、図5〜図8を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
また、ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖気時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖気時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖気時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
また、図5〜図8を用いて説明したエンジンにおいては、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖気時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
さらに、エンジン10の温度によらず(すなわち、温間時および冷間時のいずれの場合であっても)、オフアイドル時(アイドルスイッチがオフの場合、アクセルペダルが踏まれている場合)には、図5または図7に示す温間マップを用いるようにしてもよい(冷間温間を問わず、低負荷領域において筒内噴射用インジェクタ110を用いる)。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160 燃料分配管(低圧側)、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、310 双方向性バス、320 ROM、330 RAM、340 CPU、350 入力ポート、360 出力ポート、370,390,410,430,450 A/D変換器、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ。
Claims (5)
- 筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備えた内燃機関の制御装置であって、前記吸気通路と燃焼室との間には、吸気バルブが設けられ、
前記内燃機関の回転数を検知するための検知手段と、
前記内燃機関の回転数に関する条件が満たされた場合、前記第2の燃料噴射手段からの噴射時期を、前記吸気バルブが閉じた時期から前記吸気バルブが開いた時期に変更して、少なくとも前記第2の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、前記燃料噴射手段を制御するための制御手段とを含む、内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関の排気系には予め定められた温度以上で活性化する排気浄化用の触媒が設けられ、
前記制御手段は、前記触媒の暖機中に、前記条件が満たされた場合、前記第2の燃料噴射手段からの噴射時期を、前記吸気バルブが閉じた時期から前記吸気バルブが開いた時期に変更して、少なくとも前記第2の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、前記燃料噴射手段を制御するための制御手段とを含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記条件は、前記内燃機関の回転数が、前記予め定められた回転数よりも低いという条件である、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記条件は、前記内燃機関の回転数の低下量が、前記予め定められた低下量よりも大きいという条件である、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記第1の燃料噴射手段は、筒内噴射用インジェクタであって、
前記第2の燃料噴射手段は、吸気通路用インジェクタである、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2005078293A JP2006258011A (ja) | 2005-03-18 | 2005-03-18 | 内燃機関の制御装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014206109A (ja) * | 2013-04-12 | 2014-10-30 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関 |
JP2016048035A (ja) * | 2014-08-27 | 2016-04-07 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の制御方法 |
-
2005
- 2005-03-18 JP JP2005078293A patent/JP2006258011A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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