JP2006256082A - セルロースエステル系樹脂フィルム、及びその製造方法 - Google Patents

セルロースエステル系樹脂フィルム、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステル系樹脂フィルムを溶融押出し製膜法により製膜する工程において、最適な濾過条件を具備する製造方法を提供する。また異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(A)と、空隙率(B)の関係が、下記一般式(1)および(2)を満たしているフィルタにより濾過する。一般式(1)
−0.285×A+1.57×A+67.8≦B≦−0.524×A+1.38×A+98.6
一般式(2) 3.0≦A≦10.0
(式中、Aはフィルタの捕集粒子径、Bはフィルタの空隙率を表わす。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムとして有用なセルロースエステル系樹脂フィルム、及びその製造方法に関するものである。
近年、液晶表示装置(LCD)は、省スペース、省エネルギーであることから、TV、パソコン、携帯電話などへの液晶ディスプレイの利用が増大している。特に、TVの大画面化、高画質化が進み、また使用場所の拡大、汎用化、および多様化により、液晶ディスプレイは、より高品質であることが求められ、表示機能、視認機能のさらなる向上が求められている。
LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルロースエステルフィルムが用いられているが、特に、モニターやTVの大型化や高精細化が進み、生産量の増大に伴って、フィルム表面物性など、フィルム品質の管理がより重要になってきている。
光学フィルムの製造方法には、大別して溶液流延製膜法と溶融押出し製膜法とがある。前者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法である。膜厚の均一性に優れるなどの点から広く採用されてきたが、溶媒の乾燥のため、設備が大型化するなどの問題点を抱えていた。後者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要により延伸してフィルムにする方法であり、溶媒を乾燥する必要がないので、設備が比較的コンパクトにできるとの利点があるが、膜厚の均一性及びフィルムの表面物性に劣るという問題点があった。
ところで、セルロースエステル系樹脂は、天然原料由来の材料であることから、元々微量の金属イオンを含有しており、かつセルロースのエステル化工程で混入する金属イオンをも、少なからず含んでいる。これらの微量金属イオンは、溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂溶融液の増粘を引き起こし、一般的な石油由来ポリマーに比べて、溶融液の粘度が高くなる傾向にあるという問題があった。
一方、溶融可能なセルロースエステル系樹脂であっても、部分的な置換状態の差異により、溶融性の悪い部分が存在する。また、天然原料由来のポリマーであることから、他の石油原料由来のポリマーに比べて、分子量分布が広く、それによっても部分的な溶融不良を発生する場合がある。
このような溶融不良部分がフィルム内に存在することは、異物故障の発生の原因となるだけでなく、光学フィルムの光学物性の均一性の要望が、市場において高まってきている現在、致命的な欠陥となる光学ムラを引き起こす原因となり、フィルムの製膜工程において、これを除去することが必要である。
しかしながら、粘度の高いセルロースエステル系樹脂溶融液から上記異物を除去することは、生産技術上これまで困難であり、セルロースエステル系樹脂フィルムの溶融製膜をおこなう上で、大きな課題の一つであった。
上記のような樹脂フィルムの製膜工程において、樹脂溶融液の濾過に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
特開平11−181018号公報 特許文献1には、芳香族ビニル系共重合体が溶融状態にて焼結金属フィルターを通過させることにより、芳香族ビニル系共重合体の異物を低減する光学材料用透明樹脂を製造する方法が開示されている。 特開平11−180920号公報 特許文献2には、液状ビスフェノール類または該ビスフェノール類とフェノール類との混合液を焼成金属フィルターにより濾過して、μm単位の微粒子を含まないかあるいは極少量でしか含まないビスフェノール類を効率よく得ることができるビスフェノール類の製造方法、及びこれにより得られるビスフェノール類を用いたポリカーボネートの製造方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1と2に記載の従来の発明では、いずれも濾過フィルタについては、濾過精度(捕集粒子径)の好ましい条件のみが記載されているだけである。
また、これら特許文献1と2に記載の従来の発明は、芳香族ビニル系共重合体やビスフェノール類または該ビスフェノール類とフェノール類等の石油由来原料の重合物についての発明であることから、天然原料由来の材料を使用するセルロースエステル系樹脂フィルムの溶融押出し製膜法への適用は、フィルム中に生じる異物の性質や存在数が大きく異なっているため、困難である。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の保護フィルム等に用いられるセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法であって、セルロースエステル系樹脂を溶融押出し製膜法により製膜する工程において、最適な濾過条件を具備するセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法により製造された異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法の発明は、溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(A)と、空隙率(B)の関係が、下記一般式(1)および(2)を満たしているフィルタにより濾過することを特徴としている。
一般式(1)
−0.285×A+1.57×A+67.8≦B≦−0.524×A+1.38×A+98.6
一般式(2)
3.0≦A≦10.0
ここで、式中、Aはフィルタの捕集粒子径、Bはフィルタの空隙率を表わす。
なお、フィルタの捕集粒子径とは、90%捕集可能な粒子のうち、最も小さい粒子径をいう。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法であって、溶融前のセルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度の差が、0.01以上0.05以下であることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法であって、溶融前のセルロースエステル系樹脂の重量平均分子量に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量の変化量が、2000以上7000以下であることを特徴としている。
請求項4記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の製造方法により製造されたことを特徴としている。
請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法の発明は、溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(A)と、空隙率(B)の関係が、下記一般式(1)および(2)を満たしているフィルタにより濾過するもので、
一般式(1)
−0.285×A+1.57×A+67.8≦B≦−0.524×A+1.38×A+98.6
一般式(2)
3.0≦A≦10.0
ここで、式中、Aはフィルタの捕集粒子径、Bはフィルタの空隙率を表わす。
本発明によれば、セルロースエステル系樹脂を溶融押出し製膜法により製膜する工程において、最適な濾過条件を具備することにより、光学ムラを引き起こす原因となる溶融不良部分を除去することができて、異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法であって、溶融前のセルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度の差が、0.01以上0.05以下であるもので、本発明によれば、光学ムラを引き起こす原因となる溶融不良部分が除去されており、異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項3記載の発明は、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法であって、溶融前のセルロースエステル系樹脂の重量平均分子量に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量の変化量が、2000以上7000以下であるもので、本発明によれば、光学ムラを引き起こす原因となる溶融不良部分が除去されており、異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを製造することができるという効果を奏する。
このように、本発明によれば、異物故障が少なくかつ光学ムラの無い優れた品質を有するセルロースエステル系樹脂フィルムを提供することができるため、このセルロースエステル系樹脂フィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼り合わせて偏光板に加工する際の加工適性が優れているとともに、偏光板の光学ムラのない光学物性の均一性、ひいては液晶表示パネルの光学物性の均一性、さらには、液晶表示装置(LCD)の品質の改善が可能である。
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(濾過精度)(A)と、空隙率(B)の関係が、下記一般式(1)および(2)を満たしているフィルタにより濾過することにある。
一般式(1)
−0.285×A+1.57×A+67.8≦B≦−0.524×A+1.38×A+98.6
一般式(2)
3.0≦A≦10.0
ここで、式中、Aはフィルタの捕集粒子径、Bはフィルタの空隙率を表わす。
溶融前のセルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度に対し、上記の金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度の差が、0.01以上0.05以下である。
ここで、セルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度差が、0.01未満であれば、濾過が不充分と考えられ、本発明で期待されるレベルの輝点異物と光学ムラが改善されない。また、アシル基の平均置換度差が、0.05を超えると、濾過圧が高くなりすぎるため、高い平面性を維持できなくなり、光学ムラが劣化してくるので、好ましくない。
溶融前のセルロースエステル系樹脂の重量平均分子量に対し、上記の金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量の変化量が、2000以上7000以下である。
ここで、セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量の変化量が、2000未満となる場合は、濾過前の樹脂の分子量がもともと小さいため、均一な製膜が困難となり、好ましくない。一方、量平均分子量の変化量が、7000を超える場合は、溶融が不充分と考えられ、光学ムラが発生しやすくなるため、好ましくない。
本発明において、金属焼結フィルタとは、金網を金属の融点前後の温度で一定時間維持することにより、金属組織内で各線の接点間にまたがる結晶が形成され、一体化させたものをいう。
このような特徴から、本発明のような高温液体の濾過には、金属焼結フィルタを用いるのが、好適である。
金属焼結フィルタのその他の特徴としては、耐圧性、耐久性、耐食性などが挙げられ、プリーツ状に加工することにより、大きな濾過面積を得ることができる。また、濾過した異物は洗浄により除去し、繰り返し再生使用できる。
本発明において、金属焼結フィルタの材質としては、例えばSUS316を使用するのが、好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
つぎに、本発明において、使用するセルロースエステル系樹脂は、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが挙げられる。
これらのセルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度は2.5〜2.95が好ましく、特に2.6〜2.95が好ましい。さらにアシル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステル系樹脂のアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
セルロースエステル系樹脂の合成方法は、特に限定はされないが、例えば、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプなどのセルロースを用いてセルロースに無水酢酸、無水プロピオン酸または無水酪酸などのエステルに対応する酸類を常法により反応して得ることができる。合成されたセルロースエステル系樹脂は、フレーク状、パウダー状、チップ状あるいはペレット状で使用されるが、粒径を0.1〜5.0mmの大きさに成形することにより取り扱い性や溶解性が向上できるので好ましい。
ここで、セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、230000〜380000であることが好ましい。これらの範囲を外れると、フィルムの平面性が劣化する場合がある。
なお、セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は下記の方法で測定できる。セルロースエステル系樹脂の分子量分布を調整する方法は、特に限定はないが、例えば混合比率を変化させたジクロロメタンとアセトンの混合溶媒を用いて分級し、低分子量物や高分子量物を除去することにより得ることができる。
本発明において、光学フィルムを構成するセルロースエステル系樹脂の平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりセルロースエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製GPCk806、GPCk805、GPCk803の
3本を使用
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:500万〜670万)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルム中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及びマット剤などの添加剤を含有させることができる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることはこれまで知られていなかった。可塑剤としては、特に相溶性に優れたものが好ましく、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルホスフェート、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート及びジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール酸エステル系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸系可塑剤、ジプロピレングリコールベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリベンゾエート等の多価アルコールエステル系可塑剤、その他にトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)などを挙げることができる。必要に応じて上記のうち2種類以上の可塑剤を併用して用いてもよい。
これらの可塑剤を添加することで、フィルムの水分率を低くでき、水バリアー性が向上できる。可塑剤のセルロースエステル系樹脂に対する添加量としては、セルロースエステル系樹脂に対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることでセルロースエステル系樹脂フィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本発明のセルロースエステル系樹脂フィルムには、液晶材料の保護などのために、紫外線吸収剤を用いるのが、好ましい。紫外線吸収剤としては、波長380nm以下に吸収極大を有する化合物であって、25℃において液状の紫外線吸収剤を含有するのが、好ましい。液状の紫外線吸収剤は、いわゆる常温で液体の紫外線吸収剤である。ここで、「常温で液体」とは25℃において「化学大事典(1963)共立出版」等に定義される如く、一定の形を持たず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものを示す。従って、上記性質を有するものであれば融点は限定されないが、融点30℃以下、特に好ましくは15℃以下である化合物が好ましい。
液状の紫外線吸収剤は単一化合物であっても混合物であってもよく、混合物としては構造異性体群から構成されるものを好ましく用いることができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物及びニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、特に、紫外線吸収剤自体の光堅牢性の点から、2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール系の好ましい市販の紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等がある。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
本発明において、好ましく用いられる紫外線吸収剤の使用量は、紫外線の吸収効果、透明性の観点から、例えばセルロースエステル系樹脂に対する含有量が0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
本発明のセルロースエステル系樹脂フィルムには、赤外線吸収剤を用いるのが、好ましい。赤外線吸収剤としては、波長700nm以上に吸収極大を持つ赤外吸収色素、カーボンブラック、磁性粉等を使用することができる。特に好ましい赤外線吸収剤は700〜850nmに吸収ピークを有する赤外吸収色素である。
上記赤外吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノ系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が挙げられる。
赤外線吸収剤の添加量は、0.001〜10.0重量%、好ましくは0.01〜5.0重量%、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲である。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステル系樹脂に対し、重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために、固体微粒子を添加するのが、好ましい。本発明で用いられる固体微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば、無機微粒子または有機微粒子のどちらでも使用可能であるが、固体微粒子は、無機粒子であることが好ましい。
無機微粒子としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、珪素を含む無機微粒子や酸化ジルコニウムである。中でも、セルロースエステル系樹脂積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)等の商品名を有する市販品が好ましく使用できる。
本発明に係る酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
フィルム中での微粒子の含有量は0.05〜0.5重量%がフィルム同士の滑り性を持たせるために好ましい。含有量が0.05重量%未満の場合はフィルムからの突起数が少ないためフィルム同士がくっつき変形を生じるため、好ましくない。0.5重量%を越えると、樹脂と微粒子との屈折率差が小さくても、ヘイズの上昇を抑えられず、フィルムの透明性が損ねられるため、液晶用部材として好ましくない。
上記セルロースエステル系樹脂フィルム中には染料等を含有させてもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステル系樹脂に対して重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。また、この他、上記セルロースエステル系樹脂フィルム中に帯電防止剤、難燃剤、滑剤及び油剤等も加える場合もある。これらの添加剤は、セルロースエステル系樹脂溶液の調製の際に、セルロースエステル系樹脂や溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
本発明による光学フィルムの製造方法は、溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(A)と空隙率(B)の関係が、一定の数値範囲にある、特殊フィルタにより濾過することにある。
ここで、溶融押出し製膜法としては、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、50〜500μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、リタデーションの絶対値およびそのバラツキを小さくできるTダイを用いた溶融押出し法が好ましい。
溶融押出し製膜法の条件は、他の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして成形できる。例えば、乾燥したセルロースエステル系樹脂を1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからシート状に流延し、冷却ドラム上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。冷却ドラムの温度は樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。また、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
微粒子、可塑剤などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ドラム上で固化したフィルムは、さらに必要により幅手方向に延伸してフィルムにする。ここで、ピンテンター方式、またはクリップテンター方式で、フィルムを搬送しながら延伸する方式が採られる。
本発明の方法によって製造される光学フィルムの厚さは、20〜200μmが好ましく、さらに25〜90μmが好ましい。光学フィルムの膜厚が薄すぎると、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作製工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすく、取り扱い性が悪くなる場合があり、厚すぎると、液晶表示装置の薄膜化に対する寄与が少ない。
なお、膜厚は、所望の厚さになるように、押出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることで調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて、調節するのが好ましい。
本発明では、フィルムを巻き取る前に、製品となる幅にフィルムの端部をスリットして裁ち落とし、フィルム巻き中のクッツキや、すり傷防止のために、ナーリング加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施す。ナーリング加工の方法は、凸凹のパターを側面に有する金属リングを加熱及び/または加圧により加工することができる。
フィルムのスリット工程においては、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、フィルム端部をスリットする。このように、フィルム端部のスリット工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リタデーション(Rt)の湿度変化の耐性が向上する。
本発明において、フィルムのスリット工程における温度が20℃未満であれば、シワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムのスリット工程における温度が30℃を超えると、やはりシワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。
また、フィルムのスリット工程における湿度が20%RH未満であれば、帯電しやすく、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムのスリット工程における湿度が60%RHを超えると、巻品質、貼り付き故障、搬送性が劣化するので、好ましくない。
本発明による光学フィルムの製造方法において、ナーリング高さa(μm)とフィルム膜厚d(μm)の関係は、ナーリング高さa(μm)のフィルム膜厚d(μm)に対する比率X(%)を
X(%)=(a/d)×100
としたとき、比率Xが、2〜25%の範囲にあることが好ましい。
ここで、ナーリング高さ(a)とフィルム膜厚(d)との比a/dが、2%未満の場合は、フィルム同士がくっつき、フィルムが変形したり、表面に傷がつくため、好ましく無い。また、比a/dが25%を越えると、長尺で巻いた際に幅手の中央部分の窪みが大きくなり、これも巻き変形を発生させ、フィルムの変形になるため、好ましくない。
つぎに、フィルムの巻取り工程は、円筒形巻きフィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながらフィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、フィルムの表面電位を除去または低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、光学フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2N/m以上、300.8N/m以下であるのが、好ましい。
本発明の方法におけるフィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、フィルムを巻き取る。このように、フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リタデーション(Rt)の湿度変化の耐性が向上する。
本発明において、フィルムの巻き取り工程における温度が20℃未満であれば、シワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における温度が30℃を超えると、やはりシワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。
また、フィルムの巻き取り工程における湿度が20%RH未満であれば、帯電しやすく、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における湿度が60%RHを超えると、巻品質、貼り付き故障、搬送性が劣化するので、好ましくない。
ところで、光学フィルムの面内方向リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)は、次式により求められる。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルム厚さ:nm、を表わす)
本発明の方法により製造された光学フィルムは、面内方向リタデーション(Ro)が20〜100nm、厚み方向リタデーション(Rt)が90〜200nmであるのが、好ましい。
本発明による光学フィルムの弾性率は、3300MPa以上であることが好ましく、さらに3500MPa以上であることが好ましい。好ましい範囲の上限はないが、セルロースエステル系樹脂では6000MPa程度が実質的な上限である。
本発明による光学フィルムは、光学的に均一で透明性に優れているので、液晶表示装置の部材、例えば、偏光フィルム用保護フィルムや位相差フィルム、反射板、光学補償フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム及び帯電防止フィルムなどの基材として好適に用いることができる。特に偏光フィルム用保護フィルムとして用いると、偏光フィルムの寸法変化率が小さくできるので、好ましい。
本発明の方法により製造された光学フィルムを、偏光子(偏光フィルム)の少なくとも片面に貼り合わせることにより、楕円偏光板を作製することができる。
すなわち、本発明による偏光板は、偏光子、及びその両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムからなる偏光板であって、2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方が、上記の位相差フィルムによって構成されているものである。
偏光子は、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光子自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
本発明の偏光板は、上記偏光子に本発明の方法により製造された光学フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の方法により製造された光学フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光子と貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、前述したが、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光子(偏光フィルム)と長尺の本発明の方法により製造された光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板は、その片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
溶融押出し製膜法により目標ドライ膜厚80μmの光学フィルムとしてのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アシル基平均置換度1.95、プロピオニル置換度0.7、
および数平均分子量70000)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
二酸化珪素微粒子(アエロジルR972V) 1重量部
UV−23L(紫外線吸収剤) 0.75重量部
UV−28L(紫外線吸収剤) 0.75重量部
酸化防止剤 0.01重量部
(樹脂の乾燥)
上記のセルロースアセテートプロピオネート樹脂を120℃で1時間空気中で乾燥を行ない、室温まで放冷した。
(フィルム構成材料のペレット化)
乾燥済みのセルロースアセテートプロピオネート樹脂100重量部に対して、上記の構成でセルロースアセテートプロピオネート以外の添加物を添加し、ヘンシェルミキサーで混合後、材料混合物を2軸式押出し機を用いて250℃で溶融混合し、ペレット化した後、放冷した。
(濾過方法)
このペレットを用いて、表1に捕集粒子径と空隙率を記載した日本精線社製ファインメットNFフィルタ(材質はSUS316)のうち、Aフィルタを用いて、濾過を行なった。フィルタの濾過面積は、5mとし、濾過速度は、毎時15kg/mとした。
ここで、光学フィルムの材料であるセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、アシル基平均置換度分析を行なった。すなわち、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートのアシル基の平均置換度測定値と、溶融後の平均置換度測定値の差を測定した。
(アシル基平均置換度差測定)
ASTM D817−96に記載の方法に従い、アシル基平均置換度分析を行なった。そして、表2に、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートのアシル基の平均置換度測定値と、溶融後の平均置換度測定値の差を示した。また、本測定は2回行ない、その平均値を採用した。
また、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量と、溶融後の重量平均分子量の差を、下記のようにして測定した。
(分子量差測定)
セルロースアセテートプロピオネートの平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて重量平均分子量(Mw)を算出した。
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりセルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量(Mw)を測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製GPCk806、GPCk805、GPCk803の
3本を使用
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:500万〜670万)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
表2に、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量と、溶融後の重量平均分子量の差を示した。なお、本測定は2回行ないその平均値を採用した。
つぎに、上記のセルロースアセテートプロピオネートを主材とするフィルム材料混合物を、溶融押出し製膜装置のTダイから、溶融温度250℃でシート状に30℃の冷却ドラム上に溶融押出しをし、冷却固化させて、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムを、テンターを用いて幅手方向に160℃で1.5倍幅手方向に延伸した。ついで、テンタークリップに把持したまま30℃まで冷却し、その後クリップから開放した後、製品となる幅にフィルムの端部をスリットして裁ち落とし、フィルム巻き中のクッツキや、すり傷防止のために、フィルムの幅手方向両端に温度280℃押し圧0.05MPaでナーリング加工を施し、巻き取り機によって、ドライ膜厚80μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを巻き取った。
そして、本発明による実施例1で得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、光学ムラ(光漏れ)、及び輝点異物故障を評価し、得られた結果を下記の表2に示した。
(光学ムラ評価)
フィルム製品幅1450mmに対して、等間隔で幅手方向12箇所の光漏れ量を測定し、その時の最大値と最小値の差を評価した。液晶表示装置(LCD)用のフィルムとしては、この差ができるだけ小さいほど、液晶パネルとした場合のコントラストのムラが無く、良好であり、本発明においても同様である。
(輝点異物評価)
直交状態(クロスニコル)に2枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、2枚の偏光板の間に、実施例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを配置し、片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で900mm当たりの輝点異物の数をカウントした。カウントの対象サイズは、フィルムの長手方向に、20μm以上の大きさを有するものとした。
実施例2〜4
実施例1の場合と同様の方法で、本発明によるセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、表1に記載のフィルタのうち、B〜Dのフィルタを用いた。
そして、実施例1の場合と同様に、光学フィルムの材料であるセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートのアシル基の平均置換度測定値と、溶融後の平均置換度測定値の差を測定するとともに、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量と、溶融後の重量平均分子量の差を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
なお、本発明の実施例1〜4では、フィルタA〜D材質はすべてSUS316を使用したが、特にこれに限定されるものではない。
つぎに、本発明による実施例2〜4で得られた各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、光学ムラ(光漏れ)、及び輝点異物故障を、実施例1の場合と同様に評価し、得られた結果を下記の表2に示した。
比較例1〜5
比較のために、表1に記載のフィルタのうちE〜Iのフィルタを用いた以外は、実施例1の場合と同様の方法で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
そして、比較例1〜5において、光学フィルムの材料であるセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、実施例1の場合と同様に、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートのアシル基の平均置換度測定値と、溶融後の平均置換度測定値の差を測定するとともに、溶融前のセルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量と、溶融後の重量平均分子量の差を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。また、比較例1〜5で得られた各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、光学ムラ(光漏れ)、及び輝点異物故障を、実施例1の場合と同様に評価し、得られた結果を下記の表2に示した。
Figure 2006256082
Figure 2006256082
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4によれば、本発明の金属焼結フィルタを使用することによって、光学ムラを引き起こす原因となる溶融不良部分を除去することができて、異物が低減しかつ光学ムラの無い光学特性に優れた溶融製膜セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作ることができた。そして、このセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に貼り合わせて偏光板に加工する際の加工適性が優れているとともに、偏光板の光学ムラのない光学物性の均一性、ひいては液晶表示パネルの光学物性の均一性、さらには、液晶表示装置(LCD)の品質の改善が可能である。
これに対し、比較例1〜5の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムによれば、いずれの場合も、フィルムに光学ムラが多く、かつ異物故障が多く発生しており、液晶表示装置(LCD)用のフィルムとしては使用できないものであった。

Claims (4)

  1. 溶融押出しによるセルロースエステル系樹脂フィルムの製膜工程において、セルロースエステル系樹脂の溶融液を、金属焼結フィルタの捕集粒子径(A)と、空隙率(B)の関係が、下記一般式(1)および(2)を満たしているフィルタにより濾過することを特徴とする、セルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法。
    一般式(1)
    −0.285×A+1.57×A+67.8≦B≦−0.524×A+1.38×A+98.6
    一般式(2)
    3.0≦A≦10.0
    ここで、式中、Aはフィルタの捕集粒子径、Bはフィルタの空隙率を表わす。
  2. 溶融前のセルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂のアシル基の平均置換度の差が、0.01以上0.05以下であることを特徴とする、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法。
  3. 溶融前のセルロースエステル系樹脂の重量平均分子量に対し、上記金属焼結フィルタを使用して濾過を施した後の該セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量の変化量が、2000以上7000以下であることを特徴とする、請求項1記載のセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、セルロースエステル系樹脂フィルム。
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CN104332416A (zh) * 2014-08-21 2015-02-04 京东方科技集团股份有限公司 一种柔性显示器的制备方法和柔性显示器

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