JP2006255653A - 水系の電解処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】循環水系の水を電解装置に通水して電解処理する方法において、系内のスケール成分を適正量除去すると共に、電解装置からの流出水中に塩素系酸化剤が適正量含有されるように電解処理することができる電解処理方法を提供する。
【解決手段】電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加し、電解装置1に貯水槽51からの水を循環通水し、電解処理する。陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらが電極表面に析出することからスケール化傾向が低減される。循環水中の酸化還元電位及びpHが所定範囲となるように電解装置1を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加し、電解装置1に貯水槽51からの水を循環通水し、電解処理する。陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらが電極表面に析出することからスケール化傾向が低減される。循環水中の酸化還元電位及びpHが所定範囲となるように電解装置1を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は循環型冷却水系や逆浸透膜分離装置で濃縮排水(ブライン)を給水側へ循環させるようにした循環水系などスケールの析出が問題となる水系におけるスケール析出を防止するための電解処理方法に係り、特に、電解装置内にてスケールを析出させて水系から除去すると共に、塩素系酸化剤を生成させるようにした電解処理方法に関する。
工場、ビルなどのコンプレッサー、冷凍機で発生した廃熱は、熱交換器を介して冷却水(冷却媒体)で冷却されている。熱交換器において、廃熱との熱交換で温度が上昇した冷却水は開放型冷却塔で空気と接触することで蒸発して放熱、冷却され、再び熱交換器に循環される。従って、このような循環型冷却水系では、冷却塔で蒸発ないし飛散して減少した水量に相当する補給水が補給されて運転が行われている。
しかし、そのままでは補給水中に含有されるスケール成分が冷却水系内で濃縮されて、その溶解度を超え、熱交換器の伝熱面、冷却塔の充填材や底部或いは配管にスケールとして析出して付着し、熱交換効率の低下、通水抵抗の増加といった様々な運転障害を引き起こす。
そこで、系内をスケール析出が起こらない濃縮倍率に相当する導電率を上限とし、その導電率に達したならば、冷却塔の底部から、濃縮された冷却水をブロー水として系外へ排出し、補給水で全体を希釈することにより、循環冷却水を一定の水質で運転管理することが行われている。ここで、ブロー水量を多くして、系内のスケール成分濃度を低くして運転すると、補給水を多く必要として上下水道料金が過大となる。反対に、ブロー水量を少なくして高濃縮運転を行うと、冷却水中のスケール成分が溶解度を超え難溶塩のスケールが析出することとなる。
従来、このような冷却水系内のスケール析出を防止するために、リン酸系薬剤やカルボン酸系など各種ポリマーよりなるスケール防止剤を添加することが行われている。
これら薬剤処理は効果が認められる一定濃度で連続注入するので、補給水濃度に負荷変動が生じた場合、季節によって塩素消費速度が変動した場合には、処理効果が不足する場合や過剰処理となる場合が生じる。一般的には処理不足でスケール付着やスライム付着が生じて、問題となる場合が多いので、薬品注入量は過剰気味とする。したがって、薬剤コストが過大となるばかりか、薬剤が溶存したブロー水はCODやリン化合物を含有しており、放流域に住む水生生物へ影響を与える可能性があることから、下水道放流又は水処理が必要となるという問題もあった。
このようなスケール防止剤を使用しない方法として、物理的スケール防止技術が提案されている。
例えば、特開2003−190988号公報には、冷却水系の補給水または循環水を、極性が変わるバイポーラ電極を有する電解装置に通水し、補給水または循環水に含まれるスケール成分を微小な結晶として析出させることにより、冷却水系におけるスケール付着、特に伝熱面におけるスケール付着を防止する方法が記載されている。
この電解装置においては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンは導電性粒子の陰極側に集まり、炭酸イオン、シリカなどは陽極側に集まる。陰極付近が高pHのため、陰極付近でスケールが析出する。正負の極性を逆に変換すると陰極は陽極となり、電極表面のpHが低下する。このため、析出したスケールは電極近傍で溶解して溶液中へ流れ出る。この結果、非常に微細な結晶が冷却水中に分散したものとなる。この微細結晶が核となってスケール成分が析出する。極性を変換しながら電解を継続することにより、被処理水中のスケール成分がこの微細結晶上に析出することにより、循環水のスケール傾向が低減され、伝熱面等へのスケール付着が防止される。
即ち、上記特開2003−190988号公報の電解装置を備えた冷却水系において、電解装置で生じた微粒子を含んだ冷却水は熱交換器や冷却塔へ送り込まれ、その部位において溶解度が過飽和状態になる。過飽和状態において新たに結晶核を生成するために必要なエネルギーと既に存在する結晶を元に結晶成長するために必要なエネルギーでは既に存在する結晶を元に成長する方がはるかに必要なエネルギーが小さいので、流れてきたスケール成分の微粒子を種晶としてその上にスケール成分が析出する。そして、微細結晶は堆積するまでは成長せずにブローラインより排出される。
また、特表2001−502229号公報には、円筒形容器内に黒鉛よりなる1対の電極を配置すると共に、該電極間に黒鉛等の炭素質材料よりなる導電性の粒子と、シリカ、ガラス、プラスチック等の非導電性の粒子とを混合充填し、この電極間に通電しつつ円筒形容器に水を通水させてスケール生成を低減する方法が記載されている。同号の記載によると、この通電処理によりアルカリが生成し、このアルカリによって結晶核が生成し、スケール生成傾向が低下する。このスケール防止方法では、アルカリ領域でスケール微細結晶の生成と共に電極へのスケール付着も起こり、定期的な洗浄が必要となる。この洗浄方法として、一定時間で電極を極性転換し、アルカリ側でスケール付着した電極が酸性領域となりスケールを剥離・溶解させる技術がある。
しかしながら、電極の極性を転換させる方法では、極性転換によって陽極と陰極が反転するために電極自体の酸化・還元が繰り返され、電極が劣化し易い。電極の多くは酸化・還元どちらかの用途で用いられるが、両極で用いる場合、極性転換の時間によっては電極としての機能を果たす時間が非常に短くなる。例えば、グラファイト電極の場合、陽極で電極自身が酸化され、グラファイト粉末が流出して劣化する。不溶性電極としてよく使用される白金酸化物やイリジウム酸化物を被覆したチタン電極では、陽極での酸化には耐性を有するが、陰極では酸化物が剥離して劣化が進み易い。電極の交換を頻繁に行うことで上記問題は解決されるが、それに要する電極費が過大となる。
特開2000−140849号公報には、凹凸の金属電極ユニットを備えた電解装置に被処理水を通してスケール成分を陰極面に析出させ、さらに極性反転して析出したスケール成分を系外へ除去する装置および方法が記載されている。この方法の問題点は、極性転換により電極が劣化し易いこと、及び、極性転換のみでは、付着したスケールの除去性が不十分なことである。即ち、一定量のスケールが電極に付着してから極性転換したときには、スケールが付着した部分が非導電性となり、電流に分布が生じる。従って、スケールが溶解する酸性領域が形成されるのはスケールが付着していない部分からとなり、スケールの剥離・溶解に時間がかかる。
特開2004−132592号公報には、電解により循環水を処理し、電極表面にスケールが付かないように被処理水中の電気伝導度を計測しながら、CaCO3換算で250mg/L以下となるように保持する方法が記載されている。しかしながら、この方法では塩素の発生量を制御することができず、被処理水の塩素消費量が著しく低い場合には配管、熱交換器が腐食する恐れがある。
特開2003−190988号公報
特表2001−502229号公報
特開2000−140849号公報
特開2004−132592号公報
循環水系のスケール成分濃度が高過ぎると、水系にスケールが析出する。一方、循環水系からスケール成分を過剰に除去すると、循環水系の機器や配管に腐食が生じ易くなる。
また、循環水系の残留塩素濃度が低過ぎると水系にスライムが発生し易くなり、高過ぎると水系の機器や配管に腐食が生じ易くなる。
本発明は、水系の水を電解装置に通水して電解処理する方法において、系内のスケール成分を適正量除去すると共に、電解装置からの流出水中に塩素系酸化剤が適正量含有されるように電解処理することができる電解処理方法を提供することを目的とする。
請求項1の水系の電解処理方法は、被処理水を、電極を有する電解装置に通水して電解して、前記電極表面にスケールを析出させると共に、塩素系酸化剤を生成させる電解処理工程を有する循環水系の電解処理方法において、該被処理水のpHが所定範囲となるように該電解装置への通電を制御することを特徴とするものである。
請求項2の水系の電解処理方法は、請求項1において、被処理水のランジェリア指数が正の値となるように電解装置への通電を制御することを特徴とするものである。
請求項3の水系の電解処理方法は、請求項1又は2において、被処理水の酸化還元電位が所定範囲となるように電解装置への通電を制御することを特徴とするものである。
請求項4の水系の電解処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該水系は循環型冷却水系であり、該循環型冷却水系の濃縮倍数が所定範囲となるように循環型冷却水系の管理を行うことを特徴とするものである。
請求項5の水系の電解処理方法は、請求項4において、補給水量に対するブロー水量を制御することにより濃縮倍数を制御することを特徴とするものである。
請求項6の水系の電解処理方法は、請求項5において、濃縮倍数を目標値に維持しつつ、循環水の酸化還元電位が所定範囲となるように電解装置を制御するステップと、循環水のpHが所定範囲となるように電解装置を制御するステップとを交互に実行することを特徴とするものである。
請求項7の水系の電解処理方法は、請求項4において、循環水の導電率を制御することにより濃縮倍数を制御することを特徴とするものである。
本発明方法によって循環型冷却水系等の水系におけるスケール析出を防止する場合には、水系の水を電解装置に通水して電解処理する。この電解処理により、スケールが析出する。
即ち、この電解装置において水は以下のように電解される。
陽極:2H2O→O2+4H++4e−
陰極:4H2O+4e−→4OH−+2H2
陽極:2H2O→O2+4H++4e−
陰極:4H2O+4e−→4OH−+2H2
この反応により陰極近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから循環水系のスケール化傾向が低減される。従って、循環水又は補給水をこの電解装置に通水することにより、循環水のスケール生成傾向が低下する。
本発明の電解処理方法によると、薬品を使用せずに循環水中のスケール成分を所定濃度で運転することができるため、熱交換部や冷却塔にスケールが析出することが防止ないし抑制されると共に、腐食の低減が可能となる。また、補給水の硬度が高い地方においては高濃縮運転が可能となり、節水に繋がる。
また、冷却水には塩化物イオンなどの塩素成分が含まれているので、電解処理により次亜塩素酸などの酸化剤が発生する。これにより、循環水系における水の殺菌を行うことができる。
本発明では、循環水のpHが所定範囲となるように電解装置への通電を制御する。
一般に、溶液の腐食・スケール傾向を計るインデックスであるランジェリア指数(以下LSIと記載する。)は、正の値になるほどスケール析出傾向となり、負の値になるほど腐食傾向となり、0のときにどちらの傾向も示さない。電解装置により硬度成分と重炭酸イオンの両方を除去してpHを下げることにより、LSIを正の値、特に0.5〜1.5となるようにコントロールするのが好ましい。LSIを0.5〜1.5程度の正の値で管理しておくと、循環水中のスケール成分は析出しにくい。
なお、水系の水質に大きな変動がない場合、LSIは水系のpHによってほぼ定まるので、実際は水系のpHのみを制御することによりLSIを上記範囲に収めることができる。
また、電解装置で電解を行うと、陽極側では、循環水中の塩化物イオンが酸化されて、塩素ガスが発生する。pH4以上ではその塩素ガスが循環水に溶解して次亜塩素酸となる。この次亜塩素酸はpHが8以上となると80%が次亜塩素酸イオンに解離していく。これらは酸化力が強いために循環水中のスライムやカビなどの殺菌をすることができる。この塩素発生量は電流密度によって操作することができる。
この電解装置の電流密度と塩素発生速度及びスケール析出速度との間には、概略的に図3に示される関係がある。即ち、電流密度と塩素発生速度とはほぼ比例する。スケール析出速度は、電流密度が小さい範囲では略比例するが、やがて頭打ちとなり、さらに電流密度がある値よりも大きくなると、逆にスケール析出速度が低下してくる。電流密度とスケール析出速度との間にこのような頭打ち、あるいは逆比例の関係があるのは、電流密度を上げすぎるとOH−が電極近傍に多く発生しすぎてスケール成分の接近を妨げ、その結果、陰極表面で生じたスケールの核が電極表面に付着せずに系内に流れてしまうため、スケール析出速度は下がるためである。
この塩素発生量の制御を行うには、冷却水系内の残留塩素濃度と酸化還元電位(ORP)値との相関を予め把握しておき、残留塩素濃度が所定範囲となるようにORP検出値に基づいて電解装置への通電を制御するのが好ましい。
なお、循環水系の濃縮倍数を所定範囲、好ましくは略一定となるように濃縮管理を行うことにより、補給水コストの低減と共に、スケール析出防止、腐食防止、スライム付着防止を図ることができる。濃縮倍数の管理は、循環水の導電率が所定範囲となるように行ってもよいが、補給水量に対するブロー水量を調整して濃縮倍数の管理を行うことが、正確な濃縮倍数管理を行う上で好ましい。
本発明は循環冷却水系に適用するのに好適であるが、逆浸透膜分離装置で濃縮排水(ブライン)を給水側へ循環させるようにした循環水系などの循環水系にも適用可能である。
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る電解装置の系統図であり、図2は冷却水系の概略的な系統図である。
図2の通り、水はクーリングタワー50で冷却され、貯水槽51に貯留される。この冷却水が循環ポンプ52を介して熱交換器53へ送られ、熱交換後、クーリングタワー50で冷却され、貯水槽51に戻される。
この貯水槽51内の水をポンプ55及び配管56を介して電解装置1に通水し、電解処理した後、配管57を介して貯水槽51に戻す。
図示はしないが、貯水槽51にはブロー弁及び流量計を有したブローラインと、給水弁(例えばボールタップ)及び流量計を有した補給水ラインとが接続されている。このブロー水の流量計及び補給水の流量計の検出値が制御器60に入力されている。制御器60は、補給水量に対するブロー量の割合を調整して冷却水系の濃縮倍数が所定範囲、好ましくは略一定となるようにブロー弁を制御する。
貯水槽51にはpH計58とORP計(酸化還元電位計)59とが設けられ、これらの検出値が制御器60に入力されている。この制御器60は、これらの検出値に基づいて電解装置1を制御する。
次に、図1を参照して電解装置1の構成について説明する。
電解装置1は、ケーシング2内に2個の陽極3と3個の陰極4とを交互に配置し、陽極3と陰極4との間の通水スペース5に貯水槽51からの水を通水して電解処理するよう構成している。この実施の形態では、多孔質の板よりなる陰極4が3枚、相互間に間隔をあけて配置され、各陰極4,4間にそれぞれ板状の陽極3が配置されている。
陰極4を構成する多孔体の材料としては、導電性を有し、酸に不溶な材料が好ましく、具体的にはガラス質炭素、不溶性金属、金属酸化物、SUSなどの金属複合物が好適である。なお、多孔体電極の空隙率は30〜97%の範囲が好ましく、特に80〜97%が好適である。陽極には不溶性の金属電極、耐酸化性のある電極を使うのが好ましく、具体的には、白金、イリジウムを被覆したチタン電極や白金メッキ電極等が好ましい。なお、電解処理工程において、陽極3と陰極4とに印加する電圧を反転させないので、白金、イリジウムを被覆したチタン電極を陽極に用いることができる。
陽極3と陰極4との間隔は3〜20mm特に5〜10mmが好適である。
ケーシング2の下端側に前記被処理水導入用の配管56が弁56aを介して接続され、他端側に電解処理水流出用の配管57が弁57aを介して接続されている。
ケーシング2内の該下端側にパンチングメタル等よりなる2枚の多孔板6,6が板面を略水平として配置され、配管56からの流入水を各スペース5に分散させて流入させるようにしている。なお、この多孔板6,6間が炭酸ガス溶解水の流入スペース7となっている。
ケーシング2内の上端側にパンチングメタル等よりなる多孔板8が板面を略水平として配置されており、この多孔板8の上側に炭酸ガス溶解水の集合用スペース9が形成されている。このように流出側にも多孔板8を配置することにより、各スペース5の流れをより均等なものとすることができる。
陰極4に付着したスケールを溶解させるために炭酸ガス溶解水を該ケーシング2内に供給する炭酸ガス溶解水供給装置20が設置されている。この炭酸ガス溶解水供給装置20は、液体炭酸ボンベ21が弁22を介して接続された溶解タンク23と、該溶解タンク23内から炭酸ガス溶解水を送り出すポンプ24と、該ポンプ24の吐出側に接続されたエゼクタ25と、該エゼクタ25の吸気口と溶解タンク23の上部とを連通する炭酸ガス供給用配管26等を有する。溶解タンク23には圧力ゲージ27が設けられている。
このエゼクタ25の吐出側は前記ケーシング2の流入スペース7に弁29及び配管28を介して接続されている。ケーシング2の前記集合用スペース9と溶解タンク23の上部とは、配管30及び弁31を介して接続されている。
この溶解タンク23内の上部のガス圧が所定圧となるようにボンベ21から炭酸ガスが供給される。弁56a,57aを閉、弁29,31を開としてポンプ24を作動させると、溶解タンク23内の水がエゼクタ25に供給され、配管26を介して吸い込まれた炭酸ガスがエゼクタ25の吐出水中に巻き込まれ、その一部は水中に溶解する。この炭酸ガス溶解水が配管28からケーシング2内を通った後、配管30を介して溶解タンク23に循環される。このときの循環流速は0.05〜3m/sec、好適には1〜2m/secとする。流速が速いほど、スケール表面上の拡散層が薄くなり、水中のCO2がスケールに到着し易くなる。
次に、この電解処理装置を用いた電解処理工程と、そのスケール除去工程について各々詳細に説明する。
[電解処理工程]
電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加すると共に、弁29,31を閉、弁56a,57aを開とする。貯水槽51からの水は、前記ポンプ55、配管56、弁56aを介して通水スペース5に通水され、電解処理された後、弁57a、配管57を介して貯水槽51に戻される。
電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加すると共に、弁29,31を閉、弁56a,57aを開とする。貯水槽51からの水は、前記ポンプ55、配管56、弁56aを介して通水スペース5に通水され、電解処理された後、弁57a、配管57を介して貯水槽51に戻される。
この電解処理工程にあっては、通水スペース5内の陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出する。
従って、貯水槽51内の水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。また、スケールが主に炭酸塩として析出することにより、系内の硬度成分だけでなく重炭酸イオンも除去して循環水のpHが低下する。
貯水槽51の水の代わりに、補給水をこの電解装置で処理してから貯水槽51へ供給するようにしてもよい。
上記電解を行うと、陽極3側では、循環水中の塩化物イオンが酸化されて、塩素ガスが発生する。pH4以上ではその塩素ガスが循環水に溶解して次亜塩素酸となる。この次亜塩素酸はpHが8以上となると80%が次亜塩素酸イオンに解離していく。これらは酸化力が強いために循環水中のスライムやカビなどの殺菌をすることができる。この塩素発生量は電解装置をON,OFFさせるか、又は電解装置の電流密度を調整することによって操作することができる。
この塩素発生量の制御を行うには、具体的には、冷却水系内の残留塩素濃度とORP値との相関を予め把握しておき、残留塩素濃度が0.1〜0.5mgCl2/LとなるようにORP計59の検出値に基づいて、電解装置をON,OFFさせるか、電流密度の制御を行う。後者の場合、例えば、残留塩素濃度が0.1mgCl2/Lよりも低くなれば電流密度を上げて塩素発生速度を調整し、0.5mgCl2/L以上となれば、電流密度を下げて塩素発生速度を低下させる。0.1〜1.5A/dm2の範囲ならば、電流密度が変化しても、図3の通りスケール析出速度に影響は殆ど無いので、スケール・スライムの同時自動管理が可能となる。
一般に、スケール析出速度は、図3のaの範囲、例えば電流密度0.1〜1.5A/dm2の間で略一定速度となる。この理由は、スケール析出は循環水中の硬度成分の陰極表面への拡散が律速となっているからである。流速を上げることで硬度成分を陰極表面に到達させ易くすることができるが、流速を上げすぎるとアルカリ雰囲気となっている陰極表面で生じた炭酸塩の核が、陰極4の表面に付着せずに配管57に流れてしまい、電極へのスケール付着速度は下がる。従って、流速は、塩素発生速度にも関連するが、0.01〜1m/secが好ましく、特に0.05〜0.1m/secが好適である。水質、流速及び電流密度が一定であると、単位電極面積あたりのスケール析出速度が一定となるので、異なる冷却塔規模に対しては電極面積を増減することで対応可能となる。
この循環水中に、スケールが析出しない過飽和に近い濃度でスケール成分を残存させておくことにより、系内配管や熱交換器への腐食速度の低減が可能となる。循環水中のカルシウム硬度は冷却水系の熱交換部や配管、冷却塔の充填材などにスケールを析出させない80〜120mgCaCO3/Lで運転することが望ましく、さらにはMアルカリ度を80〜120mgCaCO3/Lに制御して、飽和指数LSIを正の値、特に0.5〜1.5にすることが好ましい。
一般に、溶液の腐食・スケール傾向を計るインデックスであるランジェリア指数(LSI)は、正の値になるほどスケール析出傾向となり、負の値になるほど腐食傾向となり、0のときにどちらの傾向も示さない。電解装置1により硬度成分と重炭酸イオンの両方を除去してpHを下げることにより、LSIを正の値、特に0.5〜1.5となるようにpHをコントロールするのが好ましい。LSIを正の値、特に0.5〜1.5程度の正の値で管理しておくと、循環水中のスケール成分は析出しにくい。なお、前述の通り、水系の水質に大幅な変動が無い限り、pHを制御することによりLSIを調整することができる。
冷却水系のMアルカリ度を一定に保つために電解装置1で除去すべき硬度成分量は、補給水と共に冷却水系に流入する硬度成分からブロー水と共に排出される硬度成分量を引いた値である。即ち、冷却水系への硬度成分の蓄積がないように、[除去すべき硬度成分量]=[補給水からの硬度成分量]−[ブロー水中の硬度成分量]とする。
例えば、Mアルカリ度120mgCaCO3/Lとなるように電解装置の制御を行うには、Mアルカリ度120mgCaCO3/Lとなる場合のpHを測定しておき、その範囲に入るように電解装置を制御する。具体的には、Mアルカリ度120mgCaCO3/LのときのpHが8.6の場合、pH8.5〜8.7を目標pH範囲として設定し、pHが8.7より高いときは電解装置を作動させてpHを8.7以下とし、pHが8.5よりも低いときには電解装置を停止する。以後はこれの繰り返しとすることで、補給水の負荷変動が生じても、pH管理によってスケールが析出することなく、また腐食を起こすことなくランジェリア指数を管理することができる。
本発明において電解装置の作動制御を行うにはまずORP値が適正範囲(例えば、残留塩素濃度0.1〜0.5mgCl2/Lに対応する範囲)となるように電解装置を作動させる第1ステップと、pHが所定範囲(例えば8.6±0.1)となるように電解装置を作動させる第2ステップとを交互に行う。第1及び第2ステップよりなる1制御プロセスは、連続的に実行されてもよく、1〜120分に1回程度の割合で実行されてもよい。
[スケール除去工程]
この電解処理を継続すると、陰極4のスケール付着量が増加してくるので、電解処理工程を停止し、スケール除去工程を行う。このスケール除去工程にあっては、弁56a,57aを閉、弁29,31を開とすると共に、ポンプ24を起動し、エゼクタ25へタンク23内の水を供給する。
この電解処理を継続すると、陰極4のスケール付着量が増加してくるので、電解処理工程を停止し、スケール除去工程を行う。このスケール除去工程にあっては、弁56a,57aを閉、弁29,31を開とすると共に、ポンプ24を起動し、エゼクタ25へタンク23内の水を供給する。
エゼクタ25からの炭酸ガス気泡を巻き込んだ炭酸ガス溶解水は、通水スペース5へ流入し、陰極4に付着していたスケールを溶解させる。この際、この水に含まれていた気泡がスケールと接触して陰極4から剥離させる作用も奏される。
このスケールの除去工程が終了した後は、ポンプ24を停止し、弁29,31を閉とした後、溶解タンク23内の水を該タンク23に設けられている排出ライン(図示略)を介して排出する。一般に、水道水に二酸化炭素を飽和させた水ではpH4.8以下になることはなく、炭酸カルシウムを溶解させた放流水のpHは5.8以上となるので、この排出ラインからの排出水は中和処理することなく放流することができる。
なお、溶解タンク23内の水は、スケール除去工程に繰り返し使用可能である。溶解タンク23内の水が汚れてきたときに、一部又は全部を排出し、代わりに水を該タンク23に供給するようにしてもよい。
[実施例1]
図2に示す開放系循環冷却水ラインに図1の本発明装置を設置した。
図2に示す開放系循環冷却水ラインに図1の本発明装置を設置した。
この循環ラインは厚木市水5倍濃縮で300冷凍トンの開放系循環冷却水ラインである。補給水カルシウム硬度は40mgCaCO3/Lであり、5倍濃縮理論カルシウム硬度は200mgCaCO3/Lである。5倍濃縮となるように、補給水量に対するブロー量の割合を制御した。
ステップ1
電解装置1における炭酸カルシウムスケール析出速度が20gCaCO3/m3/hrとなり、残留塩素濃度0.3mgCl2/Lとなるように電流密度を1.0A/dm2に設定して自動運転を開始した。冷却水のpHが8.6±0.1となるようにpHが8.7を上回ると電解装置を作動させ、8.5を下回ると電解装置を停止した。これにより、循環冷却水中のMアルカリ度を120mgCaCO3/L前後で維持しながら、5倍濃縮を維持することができた。
電解装置1における炭酸カルシウムスケール析出速度が20gCaCO3/m3/hrとなり、残留塩素濃度0.3mgCl2/Lとなるように電流密度を1.0A/dm2に設定して自動運転を開始した。冷却水のpHが8.6±0.1となるようにpHが8.7を上回ると電解装置を作動させ、8.5を下回ると電解装置を停止した。これにより、循環冷却水中のMアルカリ度を120mgCaCO3/L前後で維持しながら、5倍濃縮を維持することができた。
このステップ1を、pH8.6±0.1になってから60分間維持した後、次のステップ2に移った。
ステップ2
運転開始時のORPは800mVで0.3mgCl2/Lであった。冷却水のORPが600mVよりも低いときには、電解装置を作動させ、900mVを超えるときには電解装置を停止した。なお、このORP制御時の電流密度は1.5A/dm2とした。
運転開始時のORPは800mVで0.3mgCl2/Lであった。冷却水のORPが600mVよりも低いときには、電解装置を作動させ、900mVを超えるときには電解装置を停止した。なお、このORP制御時の電流密度は1.5A/dm2とした。
ORPが600〜900mVに保たれるように60分間このステップを継続した後、上記ステップ1に戻った。
このステップ1,2を交互に実行することにより、冷却水循環溶液中のMアルカリ度を120mgCaCO3/L前後で維持しながら、5倍濃縮を維持することができた。残留塩素濃度は0.2〜0.4mgCl2/Lの範囲で安定した。
[比較例1]
実施例1において、ステップ2のみを実行したところ、循環水中の残留塩素濃度は0.2〜0.5mgCl2/Lであったが、Mアルカリ度は50〜150mgCaCO3/Lの範囲で変動した。Mアルカリ度が低いときにはスケール析出が発生し、熱交換チューブの効率は実施例1の90%であった。Mアルカリ度が高いときには、腐食が発生し、熱交換チューブの効率は実施例1の75%であった。
実施例1において、ステップ2のみを実行したところ、循環水中の残留塩素濃度は0.2〜0.5mgCl2/Lであったが、Mアルカリ度は50〜150mgCaCO3/Lの範囲で変動した。Mアルカリ度が低いときにはスケール析出が発生し、熱交換チューブの効率は実施例1の90%であった。Mアルカリ度が高いときには、腐食が発生し、熱交換チューブの効率は実施例1の75%であった。
[比較例2]
実施例1において、ステップ2を省略した。また、ステップ1ではpH管理の代りに、循環水の電気伝導度が50〜60mS/mとなるように電解装置を作動させた。
実施例1において、ステップ2を省略した。また、ステップ1ではpH管理の代りに、循環水の電気伝導度が50〜60mS/mとなるように電解装置を作動させた。
その結果、Mアルカリ度は120mgCaCO3/Lで一定であったが、残留塩素濃度は0〜1.0mgCl2/Lの範囲で変動した。残留塩素濃度が高いときには腐食が生じ、低いときにはスケールが発生した。
1 電解装置
2 ケーシング
3 陽極
4 陰極
23 溶解タンク
25 エゼクタ
58 pH計
59 ORP計
2 ケーシング
3 陽極
4 陰極
23 溶解タンク
25 エゼクタ
58 pH計
59 ORP計
Claims (7)
- 被処理水を、電極を有する電解装置に通水して電解して、前記電極表面にスケールを析出させると共に、塩素系酸化剤を生成させる電解処理工程を有する循環水系の電解処理方法において、
該被処理水のpHが所定範囲となるように該電解装置への通電を制御することを特徴とする水系の電解処理方法。 - 請求項1において、被処理水のランジェリア指数が正の値となるように電解装置への通電を制御することを特徴とする水系の電解処理方法。
- 請求項1又は2において、被処理水の酸化還元電位が所定範囲となるように電解装置への通電を制御することを特徴とする水系の電解処理方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該水系は循環型冷却水系であり、該循環型冷却水系の濃縮倍数が所定範囲となるように循環型冷却水系の管理を行うことを特徴とする水系の電解処理方法。
- 請求項4において、補給水量に対するブロー水量を制御することにより濃縮倍数を制御することを特徴とする水系の電解処理方法。
- 請求項5において、濃縮倍数を目標値に維持しつつ、循環水の酸化還元電位が所定範囲となるように電解装置を制御するステップと、循環水のpHが所定範囲となるように電解装置を制御するステップとを交互に実行することを特徴とする水系の電解処理方法。
- 請求項4において、循環水の導電率を制御することにより濃縮倍数を制御することを特徴とする水系の電解処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005079703A JP2006255653A (ja) | 2005-03-18 | 2005-03-18 | 水系の電解処理方法 |
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-
2005
- 2005-03-18 JP JP2005079703A patent/JP2006255653A/ja active Pending
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