JP2007253114A - 水の電解処理方法及び電解装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極に付着したスケールを十分に除去して、スケール付着による電圧上昇を防ぐことで長期運転を可能とする水の電解処理方法及び電解装置を提供する。
【解決手段】貯水槽21内の水を電解装置1に通水することにより、陰極11の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから冷却水系のスケール化傾向が低減される。陰極11にスケールが所定以上付着してきたときには、電解装置1への通水を停止し、ノズル6から水を噴出させる。この水が各陰極11の陽極対向面に沿って流れることにより、陰極11上の析出物が剥離除去される。
【選択図】図1

Description

本発明は、循環型冷却水系などの水のスケール障害やスライム障害などを防止するために水を電解処理する方法及び装置に関する。
工場、ビルなどのコンプレッサー、冷凍機で発生した廃熱は、熱交換器を介して冷却水(冷却媒体)で冷却されている。熱交換器において、廃熱との熱交換で温度が上昇した冷却水は開放型冷却塔で空気と接触することで蒸発して放熱、冷却され、再び熱交換器に循環される。従って、このような循環型冷却水系では、冷却塔で蒸発ないし飛散して減少した水量に相当する補給水が補給されて運転が行われている。
しかし、そのままでは補給水中に含有されるスケール成分が冷却水系内で濃縮されて、その溶解度を超え、熱交換器の伝熱面、冷却塔の充填材や底部或いは配管にスケールとして析出して付着し、熱交換効率の低下、通水抵抗の増加といった様々な運転障害を引き起こす。
そこで、系内をスケール析出が起こらない硬度で運転するために、濃縮された冷却水を系外へ排出して補給水で全体を希釈することにより、循環冷却水を一定の水質で運転管理することが行われている。ここで、ブロー水量を多くして、系内のスケール成分濃度を低くして運転すると、補給水を多く必要として水道料金が過大となる。反対に、ブロー水量を少なくして高濃縮運転を行うと、冷却水中のスケール成分が溶解度を超え難溶塩のスケールが析出することとなる。
従来、このような冷却水系内のスケール析出を防止するために、リン酸系薬剤やカルボン酸系など各種ポリマーよりなるスケール防止剤を添加することが行われているが、薬剤コストが嵩む。また、溶存した薬剤が放流域に住む水生生物へ影響を与える可能性があることから、下水道放流又は水処理が必要となるという問題もあった。また、薬剤は定期的に補充することが必要であり、その人員コストも問題となっている。
スケール防止剤を使用しない方法として、電解によるスケール防止技術が次の通り公知である。
1.電極へのスケール析出によるスケール除去
特開2002−86150号には、電極間に導電性粒子及び非導電性粒子を充填した電解装置内に被処理水を通水し、電極や粒子表面にスケール成分を析出させて水中からスケールを除去するボイラ給水処理方法及び装置が記載されている。
特開平8−10768号には、無隔膜型の電解槽を内に被処理水を通水して電解処理、電極表面にスケールを析出させて水中からスケールを除去することが記載されている。なお、同号公報には、電極の印加電圧を反転させることにより、電極表面に付着したスケールを溶解除去することが記載されている。
2.微粒子生成によるスケール防止
特開2003−190988号公報には、冷却水系の補給水または循環水を、極性が変わるバイポーラ電極を有する電解装置に通水し、補給水または循環水に含まれるスケール成分を微小な結晶として析出させることにより、冷却水系におけるスケール付着、特に伝熱面におけるスケール付着を防止する方法が記載されている。
この電解装置においては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンは導電性粒子の陰極側に集まり、炭酸イオン、シリカなどは陽極側に集まる。陰極付近が高pHのため、陰極付近でスケールが析出する。正負の極性を逆に変換すると陰極は陽極となり、電極表面のpHが低下する。そうすることで核とならずに陰極上に析出したスケールを溶解し、電解不良を防ぐことができる。電極近傍で析出したスケールは循環水中へ流れ出て、非常に微細な結晶が冷却水中に分散したものとなる。この微細結晶が核となって、循環水中のスケール成分は系内の熱交換部や冷却塔よりも核を中心に析出する。次第に核は大きくなるが、ブロー水と共に排出され、伝熱面等へのスケール付着が防止される。
即ち、上記特開2003−190988号公報の電解装置を備えた冷却水系において、電解装置で生じた微粒子を含んだ冷却水は熱交換器や冷却塔へ送り込まれ、その部位において溶解度が過飽和状態になる。過飽和状態において新たに結晶核を生成するために必要なエネルギーと既に存在する結晶を元に結晶成長するために必要なエネルギーでは既に存在する結晶を元に成長する方がはるかに必要なエネルギーが小さいので、流れてきたスケール成分の微粒子を種晶としてその上にスケール成分が析出する。そして、微細結晶は堆積するまでは成長せずにブローラインより排出される。
特開2005−279550号及び特開2005−288238号には1対の電極板間に被処理水を通水して電解処理し、上記と同様にして水中にスケール微粒子を析出させてスケール防止を行うことが記載されている。後者の公報には、電解処理によって酸を生成させ、電極に付着したスケールをこの酸によって溶解除去することが記載されている。
3.電解によるスライム防止処理
特開2003−285068号には、冷却水を電解処理することにより塩素系酸化剤を水中に生成させ、これにより冷却水系でのスライム発生を防止することが記載されている。このような電解処理においても、長期運転により電極にスケールが析出するため、電極洗浄が必要となる。
特開2002−86150号 特開平8−10768号 特開2005−279550号 特開2005−288238号 特開2003−190988号 特開2003−285068号
電極に付着したスケールを酸や極性反転によって溶解除去させる場合、スケールが溶解した電極洗浄排水を別途処理することが必要となり、工程に手間がかかる。また、極性反転では充分にスケールを剥離することができない。
本発明は、電極に付着したスケールを十分に除去することができ、しかも電極からスケールを除去する時に発生する電極洗浄排水の処理が容易となる水の電解処理方法及び電解装置を提供することを目的とする。
請求項1の水の電解処理方法は、電極を有する電解装置に被処理水を通水し電解処理する工程と、該電極に付着したスケールを除去するスケール除去工程とを有する水の電解処理方法において、該電極は板面を上下方向として設置されており、電極の上方又は上部側方に水噴出のノズルが噴出方向を板面に沿って変動させ得るように設置されており、該スケール除去工程において、該ノズルの水噴出方向を変動させながら電極板面に向けて水を噴出させてスケールを除去することを特徴とするものである。
請求項2の水の電解処理方法は、請求項1において、電解処理工程において電極表面にスケールを付着させて被処理水からスケール成分を除去することを特徴とするものである。
請求項3の水の電解処理方法は、請求項1において、電解処理工程において電解によって塩素系酸化剤を生成させることを特徴とするものである。
請求項4の水の電解処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記電極は電解槽内に配置されており、該電解槽内の水の少なくとも一部を抜き出して電極を露出させた後、水を噴出させてスケール除去を行うと共に、その後電解槽内に水を供給して電極を水没させた状態でノズルから水を噴出させることを特徴とするものである。
噴出させる水として、被処理水を濾過した水を用いることが好ましい。これによりノズルの詰まりを防止することができる。
スケール除去工程において排出される水から、剥離したスケールを分離することが好ましい。なお、この分離手段としては、膜濾過、フィルター、サイクロンによる遠心分離、静置沈殿等の手段が例示されるが、これに限定されない。
請求項5の水の電解装置は、電解槽内部に通水された被処理水を電解槽内に配置された電極によって電解処理するように電解槽及び電極を備えてなる電解装置において、電極に付着したスケールを除去するために該電極に向って水を噴出するノズルを備えており、該電極は板面を上下方向として設置されており、該ノズルは、電極の上方又は上部側方に、水の噴出方向を板面に沿って変動させ得るように設置されていることを特徴とするものである。ノズルとしては、水をレーザー状で直線的に噴出するタイプのものが好ましい。
請求項6の水の電解装置は、請求項5において、電極は板状であり、該ノズルから噴出する水の方向が電極の板面と略平行方向になるように該ノズルが設置されていることを特徴とするものである。
請求項7の水の電解装置は、請求項5又は6において、前記ノズルは所定角度範囲内を往復回動するように設けられていることを特徴とするものである。
本発明では、水を電解処理することによりスケール除去あるいはスライム防止を行う。この処理に伴って電極にスケールが付着した場合、電極に向って水を噴出させてスケールを除去する。
本発明では、水を上方から電極板面に沿って主として下方(鉛直下方又は斜め下方)に噴出させるため、水の勢いが強い。しかも、ノズルからの水の噴出方向を変動させ電極全面に水が届くようにしたため、電極板面の隅々までスケールを強力に除去することができる。
なお、この水噴出によるスケール除去によると、微量のスケールが電極表面に残留するが、この残留スケールが次回の電解処理時にスケール析出の核となり、電極表面にスケールが析出し易くなる。従って、電極表面にスケールを析出させてスケール成分を水系から除去する場合に、このノズル噴出水による電極洗浄は効果的である。
微量のスケールを残存させるためには、ノズルを電極の板面の延長面よりも1〜2mm程度ずれた位置に設けるのが好ましい。
本発明によると、電極の洗浄排水は、スケール剥離物を含むものであるから、このスケール剥離物を濾過等の簡単な手段で除去するだけで洗浄排水を冷却水等として再利用することができる。
このスケール除去を行う場合、電解槽内の水の少なくとも一部を排出し、電極を露出させておくことにより、噴出水流が電極に強く当り、スケールを効率よく剥離することができる。
この露出状態でのスケール除去の後、電解槽内に水を張り、電極を水没させた状態でノズルから水を噴出させることが好ましい。この噴出水流が水中に吹き込まれたときの強い振動や乱流が電極板面に伝播し、該電極板面に残留していたスケールのかなりの部分を除去することができる。
ノズルから水を噴出させて板状電極からスケール除去する場合、水を電極の板面に沿って流すことにより、水噴流が電極面の広範囲にわたり直接噴きつけられるので、電極全体からスケールを効率よく除去することができる。
本発明では、ノズルを回動させて電極板面の全体に水を直射させるのが好ましい。ノズルは一方向にのみ回転されてもよく、所定角度範囲内を往復回動させてもよい。
特に、次の段落に記載のように2枚の陽極間に2枚の陰極が配置された電極配列のみで構成される場合、陽極を挟み込む2個の陰極の陽極側に主にスケール析出するので、スケール洗浄を要する箇所の数が減り、ノズルの設置数を低減することができる。
2枚の陽極間に2枚の陰極が配置された電極配列を1箇所以上有する場合には、次の効果が奏される。即ち、陰極の陽極に対峙する側(スケール析出側)でない反対側(通水側)ではスケール析出量が相対的に少ないため、例えスケール析出側にスケールが析出しすぎて閉塞したとしても通水側は閉塞が起こることなく通水される圧損が上がらないので、ポンプへの過度な負担による故障や電解による温度上昇を避けることができる。
[電極へのスケール析出によるスケール除去機構]
冷却水系において、電解処理によって電極へスケールが析出する機構は次の通りである。
電解装置において冷却水は以下のように電解される。
陽極:2HO→O+4H+4e
陰極:4HO+4e→4OH+2H
この反応により陰極近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから冷却水系のスケール化傾向が低減される。従って、循環冷却水又は補給水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。
この方法によると、薬品を使用せずに循環冷却水中スケール成分を析出せず、腐食を起こさない一定濃度で運転することができるため、熱交換部や冷却塔にスケールが析出することが防止ないし抑制及び腐食の低減が可能となる。また、補給水の硬度が高い地方においては高濃縮運転が可能となり、節水に繋がる。
[スケール微粒子の水中析出によるスケール防止機構]
上記反応により陰極近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケール微粒子となって析出することからスケール化傾向が低減される。
また、このスケール微粒子を含んだ水が冷却水系のうち熱交換器等のスケール成分の過飽和領域を流れる場合、溶存スケール成分が該スケール微粒子上に析出するので、熱交換器等の機器表面へのスケール付着が著しく抑制される。従って、循環冷却水又は補給水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。
[塩素系殺菌剤生成によるスライム防止]
補給水には塩化物イオンなどの塩素成分が含まれているので、電解処理により次亜塩素酸などの酸化剤が発生する。これにより、循環型冷却水系における水の殺菌を行うことができる。
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1(a)〜(c)はそれぞれ実施の形態に係るスケール除去装置の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は電極とノズルとの関係図である。図2は冷却水系の概略的な系統図である。
図2の通り、熱交換器23で温められた水はクーリングタワー20で冷却され、貯水槽21に貯留される。この冷却水が循環ポンプ22を介して再び熱交換器23へ送られる。
この貯水槽21内の水をポンプ24を有する導入ライン25を介して電解装置1に通水し、電解処理した後、貯水槽21に戻す。貯水槽21内の水の蒸発により水位が下がると補給水が供給される。これにより循環水の過濃縮を防いでいる。また水位が一定以上になるとブロー配管27からオーバーフローされる。図には示さないが、循環水の電気伝導率を監視して上限設定値を超えたら補給水を供給し、下限設定値になるまで希釈して過濃縮を防ぐ。
導入ライン25に弁30が設けられている。電解装置1から電極洗浄排水を排出するための配管31に弁32が設けられている。戻りライン26に弁34が設けられている。後述のノズル6への給水配管35に弁36が設けられている。
次に、図1を参照して電解装置1の構成について説明する。
電解装置1は、水の入口3及び出口4を有したケーシング2内に複数(この実施の形態では2個)の電極セット10を配置すると共に、電極洗浄用のノズル6をケーシング2内の上部に設置したものである。各電極セット10は、1枚の陽極12の両側に3〜20mm程度の通水スペースをあけて、それぞれ陰極11、11を配置したものである。陽極12と陰極11とは平行である。隣接する電極セット10、10は、陰極11、11同士が平行に対面するように配置されている。隣接する電極セット10の陰極11、11同士の間隔は2〜10mm程度が好適である。
ケーシング2は、槽体2Aと蓋体2Bとからなり、蓋体2Bは着脱可能となっている。槽体2Aの底部は、一端(図の右端)から他端(図の左端)に向って下り勾配の斜面2aとなっている。
この槽体2Aの左端近傍において底面2aから仕切壁5が立設され、槽体2A内が電極室8Aと流出室8Bとに区画されている。電極11,12は該電極室8A内に配置されている。
前記入口3は電極室8Aの前記一端側の下部に設けられている。入口3には、槽体2A内に差し込まれたフード3aが連なっており、水は該フード3aに沿って電極室8A内に流入する。
電極室8Aの他端側の下部に洗浄排水の排水口9が設けられ、配管31が接続されている。
前記出口は流出室8Bの下部に設けられている。
この実施の形態では、蓋体2Bの上面に沿って各電極の板面と直交方向にノズル母管7が延設されている。このノズル母管7はステップモータ7Mによってその軸心回りに所定角度範囲θだけ往復回動可能とされている。このノズル母管7には、フレキシブルジョイント37を介して給水配管35が接続されている。
このノズル母管7にノズル6が下向きに取り付けられている。
各ノズル6は、陽極12に対面する陰極に沿って水を流すように該陰極面の延長方向に上方にそれぞれ配置されている。ノズル6は細いビーム状に水を噴出させるものが用いられている。
なお、上記の角度θは、ノズル6の噴出水が陰極11の一方の末端から他方の末端に至るまで水を吹き付けることができる範囲である。L,Lはノズル母管7の管軸心と陰極11の両端(上端)を結ぶ直線を示している。
弁32,36を閉、弁30,34を開とし、各電極セット10の陽極12と陰極11、11との間に電圧を印加して電解装置1に通水すると、主として各陰極11の板面のうち陽極12に対峙する面(前面)にスケールが析出する。なお、陰極11の反対側の面(裏面)にも若干量のスケールが析出する。
即ち、陽極12と陰極11との間の通水スペース内の陰極11の近傍では、水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極11の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから冷却水系のスケール化傾向が低減される。
従って、貯水槽21内の水を電解装置1に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。貯水槽21の水の代わりに、補給水をこの電解装置で処理してから貯水槽21へ供給するようにしてもよい。なお、この電解処理水は、仕切壁5をオーバーフローして流出室8Bに流れ込み、出口4から配管26を介して貯水槽21へ送られる。
本発明では、スケールが主に炭酸塩として析出することにより、系内の硬度成分だけでなく重炭酸イオンも除去して循環水のpHを低下させることができる。
溶液の腐食・スケール傾向を計るインデックスであるランジェリア指数(以下LSIと記載する。)は、正の値になるほどスケール析出傾向となり、負の値になるほど腐食傾向となり、0のときにどちらの傾向も示さない。電解装置1により硬度成分と重炭酸イオンの両方を除去してpHを下げることにより、LSIを0.5〜1.0の若干スケール傾向となるようにコントロールするのが好ましい。LSIを0.5〜1.0程度の正の値で管理し、スケールが析出しない過飽和に近い濃度でスケール成分を残存させておくことで、系内配管や熱交換器への腐食速度の低減が可能となる。循環水中のカルシウム硬度は冷却水系の熱交換部や配管、冷却塔の充填材などにスケールを析出させない80〜120mgCaCO/Lで運転することが望ましく、さらにはMアルカリ度を80〜120mgCaCO/Lに制御して、飽和指数LSIを0.5〜1.0にすることが好ましい。
なお、電解処理時の通水スペース(陽極12と陰極11との間のスペース)内での水の流速(線速)は0.1m/sec以下、例えば0.01〜0.1m/sec程度が好適である。このように流速を小さくすると、陰極11の表面に析出するスケールが非常に柔らかく、除去し易いものとなる。陰極11,12の裏面同士の間の通水線速は0.01〜1m/sec程度が好適である。
本発明では、陰極11を多孔体にて構成することにより、水と陰極11との接触面積が大きくなり、スケール成分を効率よく付着させることができる。また、スケールが多く付着しても電極の有効面積減少による電流密度上昇が起こらないので、電解工程の時間を長く設定して一度の電解工程で多量のスケール成分を除去することができる。
この多孔体の材料としては、導電性を有し、酸に不溶な材料が好ましく、具体的にはガラス質炭素、不溶性金属、金属酸化物、SUSなどの金属複合物が好適である。なお、多孔体電極の空隙率は30〜97%の範囲が好ましく、60〜95%がより好ましく特に80〜90%がさらに好適である。陽極には不溶性の金属電極、酸化耐性のある電極を使うのが好ましく、具体的には、白金、イリジウムを被覆したチタン電極や白金メッキ電極等が好ましい。
陰極11にスケールが所定以上付着してきたときには、弁30,34を閉として電解装置1への通水を停止し、弁32を開とし、槽2内の水を抜く。次いで、モータ7Mを駆動すると共に弁36を開とし、ノズル6から水を噴出させる。この水が各陰極11の陽極対向面に沿って流れることにより、陰極11上の析出物が剥離除去される。剥離したスケールは、配管31から水と共に排出される。
なお、このように槽2内から水抜きしておくと、ノズル6の噴出水流が電極に沿って高流速で流れるので、スケールを効率よく除去することができる。
本発明では、この電極洗浄水として貯水槽21内の水を濾過してから用いることが望ましい。この濾過により、ノズル6の詰まりを防止することができる。
この1次洗浄を行った後、弁30を開とし、槽体2内に水を張って電極11,12を水没させる。この状態で、ノズル6から水を噴出させると、水が激しく水中に吹き込まれ、これにより生じた振動が陰極11の板面に伝わり、付着残留していたスケールのかなりの部分が除去される。この排水も配管31を介して排出される。
配管31からの洗浄排水には剥離したスケール粒子が含まれているが、これは濾過、サイクロン、沈殿処理などの簡易な分離手段によって除去処理できるので、洗浄排水をスケール除去処理した後、貯水槽21へ戻して冷却水として再利用することができる。この分離手段としては、小型で付帯設備の不要な静沈分離手段が好ましい。
電極洗浄後は、弁32,36を閉、弁30,34を開とし、電解装置1への通水を再開する。
この実施の形態では、1個のノズル母管7ですべての陰極11の陽極対向面を洗浄することができ、ノズル母管設置数が少なくて足りる。
洗浄頻度は、スケール付着量に応じて選定すればよいが、通常は1日に1回程度で十分である。また、陽極と陰極との間に定電流を通電する場合、電極間の印加電圧が所定値以上になったならば電極洗浄するようにしてもよい。電極洗浄後に電極間電圧を測定し、電極が十分に低下していないときには再度電極を洗浄するようにしてもよい。
ノズル6による洗浄時間は1分以下特に10〜30秒程度が好ましく、短かれば短いほど良い。水圧(ポンプ吐出側からノズル出口までの水圧)は0.1〜0.5MPaが好ましい。
ノズルの口径は0.2〜2mm特に1〜1.5mmが好適である。1個のノズル6の流量は2〜5L/minが好ましい。
本発明では、ノズル6からの噴出水による洗浄だけではスケールが十分に除去できない場合などには、酸洗浄、CO溶解水洗浄、超音波洗浄などを組み合わせてもよい。また噴出水に用いる水は被処理水の他に、水道水、地下水、工業用水等でもよい。
上記実施の形態では電極の上方にノズル6を配置しているが、図4のように上部の側方に配置してもよい。また、図5のように複数の電極群の間の上部にノズルを配置し、1個のノズルで両側の電極群の各電極を洗浄できるようにしてもよい。
上記実施の形態ではノズル母管7を角度θの範囲で往復回動させているが、一方向に回転させてもよい。このときの回転速度は10rpm以下特に3〜8rpm程度が好ましい。
なお、ノズル母管7はモータ7Mに着脱可能とし、電極間隔に合わせて別のノズル母管を装着できるようにするのが好ましい。
上記実施の形態では、電極表面にスケールを析出させているが、水中にスケール微粒子を析出させて水系のスケール化傾向を低減させてもよい。また、電解によって塩素化殺菌剤を生成させる場合にも本発明を適用することができる。
本発明は、循環冷却水系に適用するのに好適であるが、逆浸透膜分離装置で濃縮排水(ブライン)を給水側へ循環させるようにした循環水系などの水系にも適用可能である。
実施例1
図2に示す90冷凍トンの開放系循環冷却水ラインに図1の本発明の電解装置を設置した。電極配置は図示の通り「陰極−陽極−陰極−陰極−陽極−陰極」であり、合計陰極4枚、陽極2枚の構成でそれぞれの極間距離を5mmとした。陰極の構成材料はステンレス多孔体であり、陽極の構成材料はチタンに白金メッキを施したものである。陰極面積は100dm、陽極面積は50dmとした。水温30℃で通水スペース15内における通水線速を0.1m/secとし、電流密度を0.7A/dmとした。24hr析出運転毎に、電極室から水を抜き、ノズル6(オリフィス相当径1.5mm)から水を噴出速度2L/分、圧力0.25MPaにて1分間噴出させた。ノズル母管7は8rpmで一方向に連続的に回転させた。このときの電極へのスケール付着量を図3に示す。
なお、循環冷却水の硬度成分は、電解しない場合にカルシウム硬度200mgCaCO/Lまで濃縮され、スケール析出が起こるが、電解装置をスケール除去運転した場合、カルシウム硬度は150mg−CaCO/L以下のスケール析出しない水質で保持されて、開放点検時の熱交換器へのスケール付着はなかった。
比較例1
実施例1において、ノズル噴出による電極洗浄の代わりに、背景技術の項で示した電極の極性転換によるスケール除去を行うことにより、冷却水系の運転を行った。その結果、陰極に局部的にスケールが残留して、極間抵抗が上がり、電圧上昇することが分かった。
実施例1、比較例1において、1日に1回の洗浄を行ったときのスケールの剥離率と電圧が初期の150%にまで上昇するのに要した時間を測定したところ、表1の通りであった。
Figure 2007253114
実施の形態に用いられる電解装置の説明図である。 循環型冷却水系の系統図である。 スケール析出量の経時変化図である。 別の実施の形態の斜視図である。 別の実施の形態の斜視図である。
符号の説明
1 電解装置
6 ノズル
7 ノズル母管
7M モータ
10 電極セット
11 陰極
12 陽極

Claims (7)

  1. 電極を有する電解装置に被処理水を通水し電解処理する工程と、該電極に付着したスケールを除去するスケール除去工程とを有する水の電解処理方法において、
    該電極は板面を上下方向として設置されており、電極の上方又は上部側方に水噴出のノズルが噴出方向を板面に沿って変動させ得るように設置されており、
    該スケール除去工程において、該ノズルの水噴出方向を変動させながら電極板面に向けて水を噴出させてスケールを除去することを特徴とする水の電解処理方法。
  2. 請求項1において、電解処理工程において電極表面にスケールを付着させて被処理水からスケール成分を除去することを特徴とする水の電解処理方法。
  3. 請求項1において、電解処理工程において電解によって塩素系酸化剤を生成させることを特徴とする水の電解処理方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記電極は電解槽内に配置されており、
    該電解槽内の水の少なくとも一部を抜き出して電極を露出させた後、水を噴出させてスケール除去を行うと共に、その後電解槽内に水を供給して電極を水没させた状態でノズルから水を噴出させることを特徴とする水の電解処理方法。
  5. 電解槽内部に通水された被処理水を電解槽内に配置された電極によって電解処理するように電解槽及び電極を備えてなる電解装置において、
    電極に付着したスケールを除去するために該電極に向って水を噴出するノズルを備えており、
    該電極は板面を上下方向として設置されており、
    該ノズルは、電極の上方又は上部側方に、水の噴出方向を板面に沿って変動させ得るように設置されていることを特徴とする水の電解装置。
  6. 請求項5において、電極は板状であり、該ノズルから噴出する水の方向が電極の板面と略平行方向になるように該ノズルが設置されていることを特徴とする水の電解装置。
  7. 請求項5又は6において、前記ノズルは所定角度範囲内を往復回動するように設けられていることを特徴とする水の電解装置。
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