JP2006249443A - ポリアリールケトン系樹脂フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】エレクトロニクス用部材等として好適な、特に端裂抵抗値が向上されたポリアリールケトン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)、特定の繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)、及び樹脂(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部の充填材を含み、結晶化ピーク温度Tc(A+B)が下記関係式を満たすことを特徴とするポリアリールケトン系樹脂フィルム Tc(A)<Tc(A+B)≦Tg(B)+20ここで式中、Tc(A)は結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tc(A+B)は当該ポリアリールケトン系樹脂フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tg(B)は非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度(℃)を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、端裂抵抗値が改良、向上され、プリント配線基板などのエレクトロニクス用部材等として好適に使用できるポリアリールケトン系樹脂フィルムに関する。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂に代表される結晶性ポリアリールケトン樹脂は、耐熱性、難燃性、耐加水分解性、耐薬品性などに優れている為、航空機部品、電気・電子部品を中心に多く採用されている。しかしながら、ポリアリールケトン樹脂は原料価格が非常に高価な上、樹脂自体のガラス転移温度が約140〜170℃程度と比較的低いことから、耐熱性等の改良検討が種々行われてきた。その中でも良好な相溶性を示す系として、非晶性ポリエーテルイミド樹脂とのブレンドが注目されてきた。
例えば、結晶性ポリアリールケトン樹脂と非晶性ポリエーテルイミド樹脂との混合組成物(特許文献1及び2)、また、これらの組成物が回路板基材に有用であることが開示されている(特許文献3)。さらに、本発明者等も上記混合組成物を用いたプリント配線基板及びその製造方法を提案している(特許文献4及び5)。
しかしながら、結晶性ポリアリールケトン樹脂と非晶性ポリエーテルイミド樹脂との混合組成物(通常、寸法安定性向上のため無機充填材等を含む)からなるフィルムを用いて、フレキシブルプリント配線基板を作製すると、寸法安定性や耐熱性等は良好なものの、機械的強度、特に端裂抵抗値は必ずしも充分なレベルにはなく、耐折性、耐屈曲性が損なわれるため基板の接続信頼性が確保出来ず、用途範囲が限定されてしまうという問題や基板加工工程でのハンドリング適性が不充分などの問題があり、その改良が望まれていた。また、上記の特許公報には、この原因や改良方法に関して何ら技術的開示がなく示唆する記載もなかった。
特開昭59−187054号公報 特表昭61−500023号公報 特開昭59−115353号公報 特開2000−38464号公報 特開2000−200950号公報
本発明の目的は、エレクトロニクス用部材等として好適な、特に端裂抵抗値が向上されたポリアリールケトン系樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の結晶化特性を有する、特定の非晶性ポリエーテルイミド樹脂と結晶性ポリアリールケトン樹脂との混合樹脂組成物を主成分として用いることで、上記課題を解決することのできるポリアリールケトン系樹脂フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記である。
結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)、下記構造式(2)の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とする非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)、及び樹脂(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部の充填材を含み、該フィルムを示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温した時に測定される結晶化ピーク温度Tc(A+B)が下記関係式を満たすことを特徴とするポリアリールケトン系樹脂フィルム
Tc(A)<Tc(A+B)≦Tg(B)+20
ここで式中、各特性値はいずれも示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温したときに測定される値であり、Tc(A)は、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tc(A+B)は、当該ポリアリールケトン系樹脂フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tg(B)は、非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度(℃)を示す。
Figure 2006249443
本発明のフィルムは、特定の非晶性ポリエーテルイミド樹脂を主成分として含むことで、特定の結晶化特性を有し、これにより、結晶化処理された後に、顕著に向上された端裂抵抗値を示す。
本発明のフィルムは、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とからなる樹脂組成物100重量部に対して充填材を5〜50重量部の範囲で含むフィルムである。本発明でいうフィルムには肉厚が比較的厚い500μm程度以上のシートも含む。
結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等がある。本発明においては、下記構造式(1)に示す繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に使用される。この繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンは、VICTREX社製の商品名「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」などとして市販されている。なお、使用する結晶性ポリアリールケトン樹脂は、1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。
Figure 2006249443
また、非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、下記構造式(2)に示す繰り返し単位を有するポリエーテルイミドであり、例えばゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem CRS5001」として市販されている。本発明を限定する趣旨ではないが、式(1)の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンと、式(2)の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂との混合組成物では、分子間の電子的な相互作用が、式(1)を有するポリエーテルエーテルケトンと、下記構造式(3)の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂との混合組成物とは異なり、相溶性が異なるため特有の高次構造を形成し、このことも端裂抵抗値の向上に寄与しているものと思われる。
Figure 2006249443
Figure 2006249443
非晶性ポリエーテルイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記構造式(2)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(3)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。また、上述した非晶性ポリエーテルイミド樹脂には、本発明の主旨を超えない範囲で共重合可能な他の単量体単位を導入してもかまわない。なお、使用する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。
上記樹脂組成物において、本発明のフィルムをプリント配線基板などのエレクトロニクス用基板の基材として適用する場合には、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)の結晶融解ピーク温度が260℃以上であり、ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)とが混合重量比でA/B=70〜30/30〜70である樹脂組成物を用いることが好ましい。ここで、結晶性ポリアリールケトン樹脂が70重量%を超えたり、非晶性ポリエーテルイミド樹脂が30重量%未満では、組成物全体としてのガラス転移温度を向上させる効果が少ないため耐熱性が不充分となり易かったり、結晶化に伴う体積収縮(寸法変化)が大きくなり回路基板としての信頼性が低下し易いため好ましくない。また、結晶性ポリアリールケトン樹脂が30重量%未満であったり、非晶性ポリエーテルイミド樹脂が70重量%を超えると組成物全体としての結晶性自体が低く、また結晶化速度も遅くなり過ぎ、結晶融解ピーク温度が260℃以上であってもはんだ耐熱性が低下するため好ましくない。このことから本発明においては、上記結晶性ポリアリールケトン樹脂65〜35重量%と非晶性ポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる樹脂組成物がエレクトロニクス用基板の基材として特に好適に用いられる。
さらに、上述した樹脂組成物100重量部に対して混合する充填材が50重量部を超えると、フィルムの可とう性、端裂抵抗値が著しく低下するため好ましくない。一方、5重量部未満では、線膨張係数を低下して寸法安定性を向上させる効果が少ないため好ましくない。このことから好適な充填材の混合量は、上述した樹脂組成物100重量部に対して10〜40重量部であり、さらにフィルムの寸法安定性と可とう性あるいは端裂抵抗値とのバランスを重視する場合には、20〜35重量部の範囲で制御することが好ましい。また、用いる充填材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、タルク、マイカ、クレー、ガラス、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの無機充填材、ガラス繊維やアラミド繊維などの繊維が挙げられ、これらは1種類を単独で、2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、用いる充填材には、チタネートなどのカップリング剤処理、脂肪酸、樹脂酸、各種界面活性剤処理などの表面処理を行ってもよい。特に、本発明をプリント配線基板に適用する場合には、平均粒径が1〜20μm程度、平均アスペクト比(粒径/厚み)が20〜30程度以上、特には50以上の無機充填材が好適に用いられる。
次に、本発明のフィルムは、上述した混合組成物からなるフィルムを急冷製膜することによって、得ることができる。該フィルムを示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温した時に測定される結晶化ピーク温度Tc(A+B)が下記関係式Iを満たすことを特徴とする。
Tc(A)<Tc(A+B)≦Tg(B)+20 …関係式I
ここで式中、各特性値はいずれも示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温したときに測定される値であり、Tc(A)は、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tc(A+B)は、本発明フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tg(B)は、非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度(℃)を示す。
本発明において急冷製膜とは、得られたフィルムを用いて示差走査熱量測定を行った際に、少なくとも結晶化ピーク温度が観察される製膜法であることを意味し、好ましくは得られる特性値が、下記の関係式IIを満たすことをいう。
[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]≦0.50 …関係式II
上記の式において、ΔHmは、示差走査熱量測定により昇温した時に測定される結晶融解熱量(J/g)のことであり、ΔHcは、昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量(J/g)のことである。
なお、結晶融解熱量ΔHm(J/g)と結晶化熱量ΔHc(J/g)は、次のようにして求めた値である。すなわち、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7122に準じて、加熱速度10℃/分で室温から400℃まで昇温したときのサーモグラムから求めた。
上記の関係式II[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]の値は、原料ポリマーの種類・分子量・組成物の比率等にも依存するが、フィルムの成形・加工条件に大きく依存する。すなわち、フィルムを製膜する際に、原料ポリマーを溶融させた後、速やかに冷却すれば該数値を小さく制御することが出来る。また、該数値は、結晶化処理により、ある処理温度で処理時間を長くすれば大きくすることができる。該数値の最大値は1.0であり、数値が大きいほど結晶化が進行していることを意味している。ここで該数値が、0.50を超えていると、金属体との熱融着による接着を行う前の結晶化度がすでに高く、金属体との熱融着による接着成形温度を高温で行う必要があったり、多層化が困難となるため好ましくない。
一方、本発明のフィルムや金属積層体に耐熱性を付与する目的においては、結晶化処理により上記関係式IIの数値を0.90以上とすることが好ましい。ここで該数値が、0.90未満では、充分に結晶化が進行しておらず、寸法安定性が低下したり、耐熱性が不充分となり易く好ましくない。
ここで結晶化処理の方式や時間は、特に限定されるものではないが、例えば、押出キャスト時に結晶化させる方法(キャスト結晶化法)や製膜ライン内で、熱処理ロールや熱風炉等により結晶化させる方法(インライン結晶化法)および製膜ライン外で、恒温槽や熱プレス等により結晶化させる方法(アウトライン結晶化法)などを挙げることができる。本発明においては、生産の安定性および物性の均一性から、アウトライン結晶化法が好適に用いられる。また、熱処理時間については、上記関係式IIの数値が0.90以上となるようにすればよく、数秒〜数十時間、好適には数分から3時間程度の範囲が適用できる。
本発明においては、急冷製膜したフィルムを示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温した時に測定される結晶化ピーク温度Tc(A+B)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度Tg(B)および結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度Tc(A)との位置関係を規定する上記した関係式Iを満足することが最も重要である。
ここで、Tc(A+B)がTg(B)+20を超えると、すなわち、本発明フィルムの結晶化ピーク温度が非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度を超えると、結晶化処理を行った際に端裂抵抗値の低下が大きくなり、接続信頼性やハンドリング適性などが低下しやすく好ましくない。この理由は明確でないが、おそらく急冷製膜したフィルムの結晶化ピーク温度Tc(A+B)が非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体のガラス転移温度+20℃を超えると、フィルムの結晶化が完了する前に非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)成分の分子運動性が激しくなり、ポリアリールケトン樹脂(A)の結晶成分に由来する球晶などの結晶構造が高度に成長、発達し、これらの界面が欠陥となり端裂抵抗値が低下するものと思われる。
一方、Tc(A+B)がTc(A)と同じ、すなわち、本発明フィルムの結晶化ピーク温度が結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度と同一では、相溶性が悪く、フィルムの機械的特性や外観などの悪化を招きやすく好ましくない。このことから好適な結晶化ピーク温度Tc(A+B)の範囲は、Tc(A)+5℃以上、Tg(B)+15℃以下、特には、Tc(A)+10℃以上、Tg(B)以下である。
本発明のフィルムをフレキシブルプリント配線基板などのエレクトロニクス用基板の基材として適用する場合には、線膨張係数が30×10−6/℃以下であり、かつ端裂抵抗値が縦方向及び横方向ともに少なくとも40MPa以上、好ましくは50MPa以上である。ここで、線膨張係数が30×10−6/℃を超えると、金属箔を積層した場合にカールやそりが生じやすく、また寸法安定性が不充分となる。好適な線膨張係数の範囲は、使用する金属箔の種類や表裏面に形成する回路パターン、積層構成などによって異なるが、概ね10×10−6〜25×10−6/℃程度である。また、端裂抵抗値が40MPa未満であると、フレキシブルプリント配線基板などの薄肉基板においては、接続信頼性が不充分となり易かったり、基板加工工程でのハンドリング適性が不充分となり易く好ましくない。なお、本発明における端裂抵抗値は、JIS C2151の端裂抵抗試験に準拠して、厚さ75μmのフィルムから幅15mm、長さ300mmの試験片を切り出し、試験金具Bを用いて、引張速度500mm/分の条件で測定した値である。
本発明フィルムを構成する樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、他の樹脂や充填材以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合しても良い。また充填材を含めた各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、(a)各種添加剤を結晶性ポリアリールケトン樹脂及び/又は非晶性ポリエーテルイミド樹脂などの適当なベース樹脂に高濃度(代表的な含有量としては10〜60重量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法、(b)使用する樹脂に直接各種添加剤をニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などが挙げられる。上記混合方法の中では、(a)のマスターバッチを作製し、混合する方法が分散性や作業性の点から好ましい。さらに、フィルムの表面にはハンドリング性の改良等のために、エンボス加工やコロナ処理等を適宜施してもかまわない。
本発明フィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えばTダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね融点以上、430℃以下である。また、該フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、通常10〜800μm程度である。
上述したフィルムの少なくとも片面に接着層を介することなく金属体を加熱、加圧により熱融着させて金属積層体とすることができる。金属体とフィルムとを接着層を介することなく熱融着させる方法としては、加熱、加圧できる方法であれば公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、所望の熱融着温度に設定されたプレス装置にてフィルムと金属体とを加圧する方法、予め熱融着温度に熱せられた金属体をフィルムに圧着する方法、熱融着温度に設定された熱ロールにてフィルムと金属体とを連続的に加圧する方法、又はこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。プレス装置を用いる場合、プレス圧力は面圧力で0.98〜9.8MPa(10〜100Kg/cm)程度の範囲で、減圧度973hPa(ヘクトパスカル)程度の減圧下で行うと、金属体の酸化を防止でき好ましい。また、各々のフィルムと金属体は、フィルムと金属体の片面同士が接合(積層)されても良いし、片方または各々の両面が接合(積層)される形状であっても良い。
前記金属積層体をフレキシブルプリント配線基板、リジッドフレックス基板、ビルドアップ多層基板、一括多層基板、金属ベース基板などのエレクトロニクス用基板の基材として適用する場合において、金属体に導電性回路を形成させるためには、エッチングなどの公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。さらに多層基板とした場合の層間接続の方法としては、例えば、スルーホールに銅メッキする方法やスルーホール、インナーバイアホール中へ導電性ペーストやはんだボールを充填する方法、微細な導電粒子を含有した絶縁層による異方導電性材料を応用する方法などが挙げられる。
前記金属体としては、銅、銀、金、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニッケルなど、またはこれらの合金類が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、表面処理、例えばアミノシラン剤などによる処理が施された金属であっても良い。
金属体の形状としては、構造部材としての形状の他、電気、電子回路を形成するための細線やエッチング処理にて回路を形成するための箔状(厚み3〜70μm程度)などが挙げられる。放熱を主目的とするためにはアルミニウム(板、箔)が、耐食性、高強度、高電気抵抗性などが必要な場合はステンレス(板、箔)が好ましく、複雑で微細な回路形成のためには銅箔であることが好ましい。この場合、表面を黒色酸化処理等の化成処理を施したものが好適に使用される。金属体は、接着効果を高めるために、混合樹脂成形体との接触面(重ねる面)側を予め化学的または機械的に粗化したものを用いることが好ましい。表面粗化処理された銅箔の具体例としては、電解銅箔を製造する際に電気化学的に処理された粗化銅箔などが挙げられる。
実施例
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
(1)ガラス転移温度(Tg)、結晶化ピーク温度(Tc)、結晶融解ピーク温度(Tm)
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で昇温した時のサーモグラムから求めた。
(2)(ΔHm−ΔHc)/ΔHm
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS K7122に準じて、加熱速度を10℃/分で昇温した時のサーモグラムから、結晶融解熱量ΔHm(J/g)と結晶化熱量ΔHc(J/g)を求め、算出した。
(3)線膨張係数
セイコーインスツルメンツ(株)製の熱応力歪み測定装置TMA/SS6100を用いて、フィルムから切り出した短冊状の試験片(長さ10mm、断面積1mm)を引張荷重9.807×10−4Nで固定し、30℃から5℃/分の割合で220℃まで昇温させ、縦方向(α1(縦))と横方向(α1(横))の熱膨張量の温度依存性を求めた。
(4)端裂抵抗値
JIS C2151の端裂抵抗試験に準拠して、厚さ75μmのフィルムから幅15mm、長さ300mmの試験片を切り出し、試験金具Bを用いて、引張速度500mm/分の条件で縦方向及び横方向を測定した。
(5)接着強度
JIS C6481の常態の引き剥がし強さに準拠して測定した。
(6)はんだ耐熱性
JIS C6481の常態のはんだ耐熱性に準拠し、260℃のはんだ浴に試験片を銅箔側とはんだ浴とが接触するように20秒間浮かべ、室温まで冷却した後、膨れやはがれ等の有無を目視によって調べ、良否を判定した。
表1に示すようにポリエーテルエーテルケトン樹脂[ビクトレックス社製、PEEK381G、Tg:143℃、Tc:169℃、Tm:334℃](以下、単にPEEKと略記することがある)70重量部と、ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、Ultem−CRS5001、Tg:226℃](以下、単にPEI−1と略記することがある)30重量部及び市販のマイカ(平均粒径:10μm、アスペクト比:50)25重量部とからなる混合組成物を、Tダイを備えた押出機を用いて設定温度380℃で混練し、160℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚さ75μmのフィルム(以下、非晶フィルムと略記する)を得た。さらに得られたフィルムを230℃の恒温槽で180分間結晶化処理することにより結晶化処理済フィルム(以下、結晶化フィルムと略記する)を得た。非晶および結晶化フィルムを用いて、評価した熱特性や端裂抵抗値などの評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1において、使用するPEEKとPEI−1の混合比をそれぞれ40重量部及び60重量部に変更した以外は、実施例1と同様に非晶および結晶化フィルムを得た。評価した熱特性や端裂抵抗値などの評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1において、使用するPEEKとPEI−1の混合比をそれぞれ30重量部及び70重量部に変更した以外は、実施例1と同様に非晶および結晶化フィルムを得た。評価した熱特性や端裂抵抗値などの評価結果を表1に示す。
(比較例1)
表1に示すように、実施例2において使用したPEI−1をPEI−2に変更した以外は、実施例1と同様に非晶および結晶化フィルムを得た。評価した熱特性や端裂抵抗値などの評価結果を表1に示す。
(比較例2)
表1に示すように、実施例3において使用したPEI−1をPEI−2に変更した以外は、実施例1と同様に非晶および結晶化フィルムを得た。評価した熱特性や端裂抵抗値などの評価結果を表1に示す。
PEEKが40重量部と、PEI−1が60重量部および実施例1で使用したマイカ30重量部とからなる混合組成物を、Tダイを備えた押出機を用いて設定温度380℃で、厚さ75μmのフィルムに押出し、同時に片面に銅箔(厚さ:18μm、表面粗面化)をキャストロール温度250℃でラミネートすることにより銅箔積層板を得た。さらに得られた銅箔積層板をA4サイズに切り出し、エッチングにより所望の回路を形成後、スールホールをドリル加工し、導電性ペーストを充填した。次いでアルミ板(1mm)の上に、導電性ペーストを充填した銅箔積層板を2枚(アルミ板/樹脂フィルム/銅箔/樹脂フィルム/銅箔)積層し、温度240℃、時間30分、圧力2.94MPaの条件で真空プレスし、アルミベース多層基板を作製した。得られたアルミベース多層基板は、基板のそりもなく、また、銅箔の接着強度は、1.6N/mmであり、はんだ耐熱性も良好であった。
Figure 2006249443
表1より、本発明で規定する結晶化特性を有する実施例1乃至3のフィルムは、いずれも寸法安定性と端裂抵抗値のバランスに優れていることが分かる。また、本発明のフィルムを熱融着させることにより作製した実施例4の金属積層板は、接着強度やはんだ耐熱性にも優れていることが分かる。これに対して、比較例1及び2のフィルムは、いずれも端裂抵抗値に劣っていることが分かる。
本発明のフィルムは、高い端裂抵抗値が要求される用途、例えばエレクトロニクス用部材として好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)、下記構造式(2)の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を主成分とする非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)、及び樹脂(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部の充填材を含み、該フィルムを示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温した時に測定される結晶化ピーク温度Tc(A+B)が下記関係式を満たすことを特徴とするポリアリールケトン系樹脂フィルム
    Tc(A)<Tc(A+B)≦Tg(B)+20
    ここで式中、各特性値はいずれも示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で昇温したときに測定される値であり、Tc(A)は結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)単体の非晶フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tc(A+B)は当該ポリアリールケトン系樹脂フィルムの結晶化ピーク温度(℃)、Tg(B)は非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)単体フィルムのガラス転移温度(℃)を示す。
    Figure 2006249443
  2. 結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)が、下記構造式(1)の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
    Figure 2006249443
  3. 充填材が無機系であり、且つ、結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)との合計100重量部に対して10〜40重量部で含有されていることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム。
  4. 結晶性ポリアリールケトン樹脂(A)と非晶性ポリエーテルイミド樹脂(B)からなる混合樹脂の結晶融解ピーク温度が260℃以上であり、かつ、混合重量比がA/B=70〜30/30〜70であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のフィルムを、結晶化処理して得られるフィルム。
  6. 結晶化処理が、アウトライン結晶化法により行われることを特徴とする請求項5記載のフィルム。
  7. 線膨張係数が30×10−6/℃以下であり、且つ端裂抵抗値(JIS C2151に準拠)が、縦方向及び横方向ともに40MPa以上であることを特徴とする請求項5または6記載のフィルム。
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