JP2006249436A - 新規化合物とその合成方法、インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、液体組成物、パターン形成方法、物品、環境履歴検知方法及び記録媒体 - Google Patents

新規化合物とその合成方法、インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、液体組成物、パターン形成方法、物品、環境履歴検知方法及び記録媒体 Download PDF

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【課題】溶媒に対する溶解性を制御することのできる新規化合物及びその合成方法を提供し、これを利用したインク等の応用技術を提供する。
【解決手段】所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することにより該溶媒に可溶であり、逆ディールス・アルダー反応によって該親溶媒性の基が脱離して該溶媒に対する溶解度が不可逆的に低下可能である化合物。この化合物の合成方法。この技術を利用したインク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、記録媒体、液体組成物、パターン形成方法、物品および環境履歴検知方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、逆ディールス・アルダー反応を用いて分子構造を変化させ、溶媒に対する溶解性を変化させることのできる化合物とその製造方法、インクジェット記録等の記録において用いられるインク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、記録媒体、またDNAチップの製造等に用いられるパターン形成方法とこれに用いる液体組成物、物品が加熱等を経ているか否かを検知する環境履歴検知方法及び環境履歴検知が可能な物品に関する。
化合物の、溶媒に対する溶解性を、局面に応じてコントロールすることは、様々な技術分野において、切望されている技術である。
例えば、インクジェット記録を例にとってみると、インクジェット用インクの安定性としては、当該インク中に色材が溶解状態で存在していること、即ち単分子レベルで溶媒中に存在していることが好ましい。その一方で、当該インクが記録媒体上に付与された後には、色材を速やかに溶媒と分離させて記録媒体表面若しくは表面近傍に留めることが、高品位な画像を形成する上では好ましいとされている。前者の性能は、所謂染料インクによって達成でき、一方後者の性能は所謂顔料インクによって達成できるものの、それらの両方を同時に達成することは困難である。近年、顔料を微細化したり、顔料表面に水分散性の官能基を導入したりすることで、顔料に染料的な性質を付与する様々な技術が提案されているが、未だ改良の余地が残されているのが実情である。また近年のインクジェットプリンタの性能の大幅な向上に伴って、インクジェットプリンタを単なる文字や画像の形成手段としてではなく、微細なパターンを有するデバイス、例えばDNAチップなどの製造装置として用いることが提案されてきている。
本発明者らは、このような技術的背景に鑑み検討を重ねた結果、インク中では溶媒に対して溶解状態を維持して安定なインクを与え、ひとたび記録媒体に付与された後には、該溶媒に対する溶解性を失って、記録媒体の表面や表面とその近傍にとどまるような化合物、具体的には例えばインクジェット記録において、インク中の色材に対して染料の性質と顔料の性質とをその局面に応じて変化させることのできる性質を有する化合物の開発が、インクジェット技術のより一層の発展に有効であるとの認識を得るに至った。
そこで本発明の目的は、溶媒に対する溶解性を制御することのできる新規な化合物及びその製造方法を提供する点にある。
また本発明は、高品位な記録を行うことができ、また物品に対して例えば当該物品が経てきた環境の履歴を知ることのできる環境履歴検知等の機能を付与することのできるインクを提供することを他の目的とする。
また本発明は、高品位なプリント物を得ることのできるインクジェット記録装置、及びそれに用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニットを提供することを他の目的とする。
また本発明は、高品位な記録物を与える記録方法、記録媒体を提供することを他の目的とする。
また本発明は、高品位な記録や、物品に対する様々な機能、例えば当該物品が経てきた環境の履歴を知ることのできる環境履歴検知機能、記録物の堅牢性、濃度、彩度、記録によって構築された分子素子などの反応応答性、電気伝導性などの諸特性を制御する機能などの付与に用いることのできる液体組成物を提供することを他の目的とする。
また本発明は、例えばナノメートルオーダーやピコメートルオーダーの微細なパターンを正確に形成することのできるパターン形成方法を提供することを他の目的とする。
更に本発明は、物品が経てきた環境の履歴を検知する方法を提供すること、このような検知が可能な物品を提供することを他の目的とする。
本発明により、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することにより該溶媒に可溶であり、逆ディールス・アルダー反応によって該親溶媒性の基が脱離して該溶媒に対する溶解度が不可逆的に低下可能であることを特徴とする化合物が提供される。
この化合物として、テトラアザポルフィリン骨格を有していることが好ましい。
さらには、テトラアザポルフィリン骨格を有している化合物としては、下記式(I)ないしは(II)で示される構造を有している化合物が好ましい。
Figure 2006249436
Figure 2006249436
(式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ該親溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、Yはハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2の整数を示す)
また、前記化合物として、ポルフィリン骨格を有している化合物が好ましい。
さらには、ポルフィリン骨格を有している化合物としては、下記式(III)ないしは(IV)で示される構造を有している化合物が好ましい。
Figure 2006249436
Figure 2006249436
(式(III)及び(IV)中、R1及びR2はそれぞれ該親溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、Yはハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2の整数を示す)
また本発明により、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法であって、
(i) 該親溶媒性の基あるいは該親溶媒性の基へと変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノフィルとしてのジシアノ化合物とをディールス・アルダー反応させて下記式(V)で示される化合物を得る工程;および
Figure 2006249436
(式(V)中、R3及びR4は、各々独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表わす)
(ii) 上記式(V)で示される化合物を4量環化せしめてテトラアザポルフィリン骨格を形成した後、金属原子を該テトラアザポルフィリン骨格中に配位させる工程、
を有することを特徴とするテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法が提供される。
さらに本発明により、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法であって、
(i) ジエンとして該親溶媒性の基あるいは該親溶媒性の基への変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノフィルとしてのフェニルスルホニル化合物とをディールス・アルダー反応させて下記式(VI)で示される化合物および下記式(VII)で示される化合物の少なくとも一方を得る工程;
Figure 2006249436
Figure 2006249436
(式(VI)および(VII)中、R3及びR4は、各々独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を示す。)
(ii) 上記式(VI)で示される化合物および上記式(VII)で示される化合物の少なくとも一方と、CNCH2COOR5(R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を示す)で示されるイソニトリルとを付加環化反応させて下記式(VIII)で示される化合物を得る工程;および、
Figure 2006249436
(式(VIII)中、R3及びR4は、各々独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表し、R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を示す)
(iii) 上記式(VIII)で示される化合物を4量環化せしめてポルフィリン骨格を形成せしめた後、金属原子をポルフィリン骨格中に配位させる工程、を有することを特徴とするポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法が提供される。
また本発明により、上記の本発明の化合物の何れかおよび溶媒を含むことを特徴とするインクが提供される。
本発明により、上記の本発明の化合物の何れかおよび溶媒を含み、更に他の化合物として色材を含むことを特徴とするインクも提供される。
上記インクはインクジェット用として好適である。
本発明により、上記インクを収容しているインク収容部を具備していることを特徴とするインクカートリッジが提供される。
また本発明により、上記インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出するインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニットが提供される。
さらに本発明により、上記インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出するインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
本発明により、
(i) 上記インクを記録媒体に付与する工程と、
(ii) 該記録媒体に付与した該インクに含まれる該化合物を逆ディールス・アルダー反応させる工程と、
を有することを特徴とする記録方法が提供される。
また本発明により、上記の本発明の化合物のいずれかおよび溶媒を含んでいることを特徴とする液体組成物が提供される。
この液体組成物は、インクジェット法で吐出させるためのものとして好適である。
本発明により、
(i) 上記液体組成物を基材に位置選択的に付与する工程と、
(ii) 該基材に付与した該液体組成物に含まれる該化合物を逆ディールス・アルダー反応させて該液体組成物に含まれる該溶媒に対して不溶化せしめる工程と、を有することを特徴とするパターン形成方法が提供される。
また本発明により、表面に上記した本発明の化合物、もしくは上記した本発明の化合物の逆ディールスアルダー反応物が付着していることを特徴とする物品が提供される。
さらに本発明により、物品の表面に上記した本発明の化合物を付着させた物品の、該化合物が逆ディールス・アルダー反応しているか否かを検知する工程を有することを特徴とする物品の環境履歴検知方法が提供される。
本発明により、上記した本発明の化合物もしくは上記した本発明の化合物の逆ディールスアルダー反応物を含む表面を具備していることを特徴とする記録媒体が提供される。
本発明によれば、インクに対する優れた溶解性と、それが記録媒体に付与された後の高速な固液分離、という従来の技術では両立が困難であると考えらていた2つの特性を共に極めて高いレベルで満足することができる。
本発明により、例えば溶媒溶解系から、パターニング後に溶媒非溶解系へと変換するというような化合物の特性を変化させることが可能となり、画像堅牢性を劇的に向上させるということが可能となる。
〔本発明にかかる化合物について〕
本発明にかかる化合物は、所定の溶媒に対して親溶媒性の基を有し、この溶媒に可溶であり、且つ該親溶媒性の基は、逆ディールス・アルダー反応によって該化合物の分子から脱離し、その結果として該溶媒に対する溶解度が低下するものである。
例えば、所定の溶媒が水もしくは水と親水性有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、グリセリン等)からなる水系媒体である場合においては、水に対する溶解度(25℃)が少なくとも1質量%以上となるように親溶媒性基、つまり親水性基として、例えば水酸基やスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基などを導入しておき、これらの親水性基を逆ディールス・アルダー反応により分子から脱離させることにより、溶解度を殆どゼロにすることができる。ここで親水性基としては、上記した水酸基やスルホン酸基に限らず、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のうちの少なくとも1つを含む極性置換基であれば良い。
また所定の溶媒が非水溶性、もしくは難水溶性の有機溶媒である場合には、これらの溶媒に対する溶解度が少なくとも1質量%以上となるように親油性の基、例えばアルキル基やアルコキシ基、好ましくはC4以上のアルキル基やアルコキシ基を導入し、この基を逆ディールス・アルダー反応で脱離させて、非水溶性、もしくは難水溶性の有機溶媒に対する溶解度を殆どゼロにまで低下させることができる。
以下にこの化合物について、具体例を用いてより詳細に説明する。
上記したように逆ディールス・アルダー法により親溶媒性基を脱離させることで、その溶媒への溶解度を有効に制御することのできる化合物の例として、例えば下記式(I)ないしは(II)で示されるようなテトラアザポルフィリン化合物や下記式(III)ないしは(IV)で示されるようなポルフィリン化合物が挙げられる。
Figure 2006249436
Figure 2006249436
Figure 2006249436
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式(I)〜(IV)中、R1、R2はそれぞれ親溶媒性の基を表し、溶媒が水系溶媒の場合は酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つを含む極性基が好ましく、具体的には水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基などを挙げることができ、中でも水酸基がより好適である。また、溶媒が非水溶性もしくは難水溶性の有機溶媒である場合は、親油性の基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、あるいはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基等のアルコシキ基が挙げられ、より好ましくは炭素数4以上のアルキル基、ないしはアルコシキ基が挙げられる。
式中、Mは2価〜4価の配位金属を表し、具体的にはZn、Cu、Fe、Mg、Al、Ga、Ti、Snなどが挙げられる。またYは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、酸素原子または水酸基を表す。nは0〜2の整数である。
〔水溶性基具備のポルフィリン骨格を有する化合物〕
次に、上記式(IV)にかかり、水に対する溶解性を変化させることのできるポルフィリン化合物の具体例について説明する。
下記構造式で示されるポルフィリン系化合物は、親水性の基として水酸基を有し、該水酸基によって水系溶媒に可溶であり(25℃における水に対する溶解度1質量%以上)、該水酸基は逆ディールス・アルダー反応によって該化合物の分子から脱離して、その結果として水系溶媒への溶解性が低下するものである。
Figure 2006249436
ポルフィリン系化合物は一般にポルフィリン骨格部分の平面性が高く、パイ−パイスタッキングにより溶媒に難溶(例えば、25℃における水に対する溶解度1質量%未満)なものが多いが、上記式(IX)で示される水酸基が結合しているビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格が縮環したポルフィリンは、嵩高いビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格並びに水酸基の存在によって水系溶媒に対して可溶化されている。そして上記式(IX)の化合物を逆ディールス・アルダー反応させて架橋部分のエチレンを脱離させると、水酸基の脱離並びに嵩高さの減少による分子のスタッキングとが相まって、水系溶媒に対する溶解性が低下し、例えば25℃の水に対して溶解しない、或いは殆ど溶解しない化合物となる。本発明のポルフィリン系化合物においては(IV)の一例を示したものであり、中心金属として亜鉛、溶媒親和性基として水酸基を用いているものを挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述したように親和性を持たせたい溶媒に対する極性などを考慮して適宜選択されてよい、また中心金属については亜鉛の他に銅、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられるが、必要とされる化合物の電子状態、構造に由来する因子(吸収スペクトル等)を目的のものに調整する目的で合成のし易さ等を考慮して適宜選択されてよい。親溶媒性へと変換可能な置換基については特に限定されるものではないが、例えば、合成のし易さから水酸基などをエーテル基やエステル基に変換して長鎖アルキル基、エチレングリコール基などの種々の置換基に変成することができる。
〔ポルフィリン系化合物の合成方法〕
次に本発明にかかるポルフィリン系化合物の合成方法について説明する。
本発明にかかる、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性基を有するポルフィリン骨格を有する化合物は、
(i) ジエンとして該親溶媒性基あるいは該親溶媒性基への変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノフィルとしてのフェニルスルホニル化合物とをディールス・アルダー反応させて下記式(VI)で示される化合物および下記式(VII)で示される化合物の少なくとも一方を得る工程;
Figure 2006249436
Figure 2006249436
(式(VI)および(VII)中、R3及びR4は、各々独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を示す。)
(ii) 上記式(VI)で示される化合物および上記式(VII)で示される化合物の少なくとも一方と、CNCH2COOR5(R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を示す)で示されるイソニトリルとを付加環化反応させて下記式(VIII)で示される化合物を得る工程;および、
Figure 2006249436
(式(VIII)中、R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を示す)
(iii) 上記式(VIII)で示される化合物を4量環化せしめてポルフィリン骨格を形成せしめた後、金属原子をポルフィリン骨格中に配位させる工程、により合成することができる。なお、上記式(VI)及び(VII)において、R3及びR4は、親溶媒性の基、即ち上記式(I)〜(IV)におけるR1、R2と同義のもの、あるいは親溶媒性の基に変換可能な基を表す。親溶媒性の基に変換可能な基とは、例えばポルフィリン化合物の合成の過程において、R1及びR2の少なくとも一方が反応してしまうのを防ぐためにR1、R2が保護基によって保護されている形態を包含する。
次に、上記式(IX)で示されるポルフィリン化合物の合成方法についてより詳細に説明する。この化合物は例えば図1に示すスキームに従って合成することができる。図中、化学式に付された符号は、その化学式が示す化合物の番号を表し、矢印に付された符号は工程の番号を表す。
まず、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−トルエンスルホン酸の存在下で反応させ、水酸基を保護した化合物2を得る(i)。化合物2と、ジエノフィルとしての2−ニトロ−1−(フェニルスルホニル)エチレンをトルエンの存在下でディールス・アルダー反応させて化合物3a、3bを得る(ii)。こうして得た化合物3a、3bを窒素置換した環境下で、ドライTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、氷冷下、ドライーエチルイソシアノアセテートを加えた後、ドライ−1、8−ジアザビシクロー[5,4,0]ウンデセン−7(以降「DBU」と称す。)を加えて改良Barton−Zard法により反応させることによってポルフィリン前駆体としての化合物4を得る(iii)。
ここでいう改良Barton−Zard法とは、N.Ono、H.Hironaga、K.Ono、S.Kaneko、T.Murashima、T.Ueda、C.Tsukamura and T.Ogawaらの執筆にかかるJ.Chem.Soc.Perkin Trans.1、1996、417に開示されているようなニトロアルケンと芳香族ニトロ化合物とイソシアノ酢酸エチルからのピロール骨格の構築法を改良し、より多様な芳香環構築法として確立したものである。本発明ではディールス・アルダー反応と組み合わせることによって新しい機能を有する化合物の合成に成功し、本発明の完成に至った。Barton−Zard法は、これまでアルキル基が置換したピロール骨格の構築法として知られていたものであるが、本発明ではこれを改良し芳香環置換前駆体(アリール置換前駆体)ピロール骨格の構築を可能とした反応を用いている。具体的にはディールス・アルダー反応で親溶媒性基が置換されたスルホニル化合物、ニトロスルホニル化合物を出発原料を合成し、それをイソシアノ酢酸エチルと反応させることによって前駆体ピロール環を構築する過程の反応として用いている。
化合物4を窒素雰囲気下、ドライTHFに溶解し、氷冷下で水素化リチウムアルミニウムを加え反応させて、化合物4の4量体であるところの、ポルフィリン骨格を有する化合物5を得る(iv)。化合物5を、金属塩例えば酢酸亜鉛と共にクロロホルム−メタノール等に溶かし、反応させることによって、金属元素をポルフィリン骨格中に配位させて化合物6を得る(v)。次いで化合物6に対して水酸基の脱保護反応を行なうことで上記式(IX)にかかる化合物7を得る(vi)。こうして得られた化合物7の、25℃におけるメタノール1gに対する溶解度は1.4g、イソプロピルアルコール1gに対する溶解度は2.55g、水/イソプロピルアルコール混合溶媒1gに対する溶解度0.8g程度である。
そして化合物7を逆ディールス・アルダー反応させて得られる水酸基が脱離した化合物8は、25℃における水系溶媒に対する溶解度が殆どない化合物となる。
〔ディールス・アルダー反応および逆ディールス・アルダー反応について〕
ディールス・アルダー反応は、共役二重結合の1,4位に二重結合又は三重結合を持った化合物が付加して6員環のヒドロ芳香環を生成する反応をいう。逆ディールス・アルダー反応とは、ディールス・アルダー反応の逆反応のことを指す。例えば、ビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格の縮環部分を有する化合物を逆ディールス・アルダー反応させることで、架橋部分のエチレンを脱離させることができる。そして当該エチレン部分に、当該化合物が溶媒に対する溶解性を増すような基を結合させておくことによって、溶解度のコントロールが可能となる。また、本発明にかかる逆ディールス・アルダー反応によるエチレンの脱離の結果、パイ共役系が構築される化合物の場合、パイ共役系の構築の結果として分子の立体構造が嵩高い構造から、平坦な構造に変化するように分子構造を構築しておくことは、当該化合物を逆ディールス・アルダー反応させた結果として得られる化合物の凝集性や会合性をも制御することができ、好ましい態様である。
上記好ましい態様を実現するために逆ディールス・アルダー反応後に分子間で水素結合や、ファンデルワールス力、静電相互作用、極性による相互作用が大きくなる系を設計することがより好ましい。従来であれば会合状態が大きくなっているため制御が困難であった系においても、反応前後の化合物の性質を設計することによって効果的に凝集性や会合性を制御することが可能となる。
本発明にかかる化合物は、逆ディールス・アルダー反応によって脱離した架橋部分の置換基を極めて安定で安全性の高いものにすることが可能である。言い換えれば、系に悪影響を与えるような可逆的な反応や副次的な反応が起こらないように、反応系を設計することが好ましい。一般的にジエン化合物とジエノフィル化合物間でのディールス・アルダー反応は、発熱反応(ディールス・アルダー反応)、吸熱反応(逆ディールス・アルダー)の平衡反応であることから可逆性反応であることが知られている。この点を利用して特開平11−349877号公報にインクジェットインク・キャリアーの粘度温度制御に利用されている例が開示されている。しかし、該発明に使用されている反応は可逆反応であるため本発明に適用した場合、溶解性が減少した状態で、冷却をされると再度、環化反応を誘発し、溶解性が再び増加することが考えられる。また、逆ディールス・アルダー反応した状態では不安定なジエン化合物とジエノフィル化合物で存在するため、副反応として酸化反応を誘発することが懸念され、本発明のような用途には不適であると考えられる。さらに、特開平10−31275号公報ではトリアリルメタン系の化合物の紫外線・熱による分解反応や、フォトクロミック化合物のような光・熱可逆性化合物を使用して極性(溶解性、凝集性)の制御をしている例が開示されている。しかし、該発明に利用されている極性制御部はラジカルイオン開裂的に分解する系であるため、非可逆的な状態を形成することは可能であるが、副生成物が極めて不安定であり、酸化劣化反応を誘発し、悪影響を与える恐れが考えられる。また、フォトクロミック反応は可視・紫外光線、および熱に対する可逆反応であるため、1つの状態を維持することが極めて困難であり、本発明のような用途には不適当であると考えられる。
従って、本発明においては、逆ディールス・アルダー反応によって前駆体から脱離した化合物と前駆体から生成した化合物とが再びディールス・アルダー反応を起こすジエンとジエノフィルの関係となることがない様に反応系を設計することが好ましい。本態様においては、逆ディールス・アルダー反応によって脱離した化合物(1,2−エチレンジオール)は、ジエノフィルとなることはない。また、1,2−エチレンジオール自体が不安定な化合物であり、反応系内においてヒドロキシアセトアルデヒドに変化してしまうと考えられる。そのため、反応系内には、非水溶化した化合物8と再び反応するような化合物は存在せず、その結果として逆ディールス・アルダー反応は非可逆的に進行する。このように、逆ディールス・アルダー反応により脱離した化合物が、酸化、還元、異性化等によって反応性2重結合を持たない、ディールス・アルダー反応が不可能な物質に変換されるように、反応系を設計することは、逆ディールス・アルダー反応を非可逆的に進行させるうえで好ましい。
〔逆ディールス・アルダー反応のさせ方〕
本発明にかかる化合物、例えば図1のスキーム中の化合物7を逆ディールス・アルダー反応させる具体的な方法としては、例えば、加熱、光、電磁波や放射線の照射等から選ばれる少なくとも1つの手段によるこれらエネルギーの付与などが挙げられる。
〔水溶性基具備のテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物〕
本発明にかかる化合物の他の例として、下記構造式(X)で示されるテトラアザポルフィリン化合物を挙げることができる。
Figure 2006249436
当該化合物は、やはり前記式(IX)で示した化合物と同様に、ビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格に結合してなる水酸基によって水系溶媒に対する溶解性を保持しており、逆ディールス・アルダー反応によってエチレンを脱離させることによって、当該化合物の分子から脱離する結果、水系溶媒に対する良好な溶解性を失うことになる。
〔テトラアザポルフィリン系化合物の合成方法〕
次に、本発明にかかるテトラアザポルフィリン系化合物の合成方法について説明する。
本発明にかかる逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性基を有するテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物は、
(i) 該親溶媒性基あるいは該親溶媒性基へと変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノフィルとしてのジシアノ化合物とをディールス・アルダー反応させて下記式(V)で示される化合物を得る工程;および
Figure 2006249436
(式(V)中、R3およびR4は、各々独立に該親溶媒性基、又は該親溶媒性基に変換可能な基を表わす)
(ii) 上記式(V)で示される化合物を4量環化せしめてテトラアザポルフィリン骨格を形成した後、金属原子を該テトラアザポルフィリン骨格中に配位させる工程、
により合成することができる。なお、上記式中、R3及びR4は、親溶媒性の基、即ち上記式(I)〜(IV)におけるR1、R2と同義のもの、あるいは親溶媒性の基に変化可能な基を表す。親溶媒性の基に変換可能な基とは、例えばポルフィリン化合物の合成の過程において、R1及びR2の少なくとも一方が反応してしまうのを防ぐためにR1、R2が保護基によって保護されている形態を包含する。
次いで、上記式(X)で示されるテトラアザポルフィリン化合物の合成方法について詳細に説明する。この化合物は例えば図2に示すスキームに従って合成することができる。まず、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−トルエンスルホン酸存在下で反応させ、水酸基を保護した化合物2’を得る(i’)。化合物2’とジシアノアセチレンをトルエンの存在下でディールスアルダー反応させて、ジシアノ化合物3’を得る(ii’)。こうして得た化合物3’を窒素置換した環境下で、例えばジ−n−ブトシキマグネシウムとともに、n−ブタノール等に溶かし、反応させることによって、4量体化してテトラアザポルフィリン骨格を形成させると共に、金属元素をテトラアザポルフィリン骨格中に配位させて化合物4’を得る(iii’)。次いで化合物4’に対して水酸基の脱保護反応を行なうことで上記式(X)にかかる化合物5’を得る(iv’)。こうして得られた化合物5’の、25℃における水に対する溶解度は50質量%程度である。
そしてステップ(v’)に示すように、化合物5’を逆ディールス・アルダー反応させて得られる水酸基が脱離した化合物6’は、25℃における水に対する溶解性を持たない(溶解度ゼロ)化合物となる。
〔油溶性基具備の化合物について〕
これまで水系媒体に対して優れた溶解性を示す化合物について説明してきたが、本発明にかかる技術は、これに限定されず、油性の有機溶媒に対して優れた溶解性を示す化合物を逆ディールスアルダー反応させて油性溶媒に対する溶解性を低下させることも可能である。このような化合物としては、例えば下記式(XI)で示されるような構造の化合物を挙げることができる。このような化合物は前述した化合物群の水酸基をアルキル基等の溶媒可溶化基によって変成することや合成時における出発物質を工夫することよって容易に合成することが可能である。
Figure 2006249436
〔本発明の新規化合物の応用例〕
次に、上記したような各種化合物の各種用途への応用例を以下に説明する。
〔インク〕
上記したような各種化合物は、溶媒に対する溶解性を制御することができることから、インクに適用することで高品位な印刷を行うことができる。具体的には、例えば、染料型の色材から顔料型の色材へと変化させることができるものである。より具体的に述べれば、インク中では溶解状態で存在し、記録媒体上において逆ディールス・アルダー反応させて溶媒に対する溶解性を低下させることによって、記録媒体上での色材と溶媒との分離を迅速化させることができる。また、本発明にかかる技術によれば、逆ディールス・アルダー反応させた結果として得られる化合物(色材)を、耐久性(耐光性、耐ガス性を含む)に優れている構造のものとすることによって、染料インクの優れている点と顔料インクの優れている点との双方を享受することが可能となる。本発明にかかるインクの組成に含まれてよい色材としては特に限定されるものではないが、一般的に会合状態が強固であって溶解性、分散性が低いとされている色材で効果が大きく特に好適である。例えば、アゾ色材、キノン系色素、キナクリドン系色素などの多環式色材、各種キレート色材、ニトロ色材、ニトロソ色材、アニリンブラック等が好適である。これらの色材は分子間相互作用が大きく溶解性、分散性が低いとされている化合物が多い。
化合物(色材)を、耐久性(堅牢性)に優れているものとするためには前述した通り、分子間相互作用によって外部の劣化要因(光、ガス)からの影響を受けに難い構造にする必要がある。このために相互作用を制御することが重要である。
〔インクジェットインク〕
上記式(IX)や(X)で示した、本発明にかかる、水溶性の化合物を色材として用いることによって、水性のインクジェット用インクを得ることができる。
水性インクの溶媒としては、水若しくは水と水溶性有機溶剤との混合物が挙げられる。水と水溶性有機溶剤との混合物を用いる場合、水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲である。また、インクに含有される水の含有量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲にある。
水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールなどのアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。また、本発明の水系インク(溶媒が水系溶媒であるインク)は、所望の物性値を有するインクとするために、上述した成分の他に必要に応じて、添加剤として例えば粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、界面活性剤、酸化防止剤等を添加することができる。
〔インクの他の実施態様〕
上記のインクは、何れも本発明にかかる化合物を色材として用いた場合を説明してきたが、本発明にかかるインクにおいて、逆ディールス・アルダー反応によってインク中の溶媒に対する溶解性が低下する化合物が必ずしも色材である必要はない。例えばインクを構成するあらゆる成分から選ばれる少なくとも1つとして、本発明にかかる化合物を用いることもできる。例えば、水溶性のバインダー用ポリマーとして、逆ディールスアルダー反応によって溶媒に対する溶解性が変化するものを、色材と共にインク中に添加することで、インク中では当該ポリマーを溶解状態としておき、記録媒体に付与された時点で逆ディールス・アルダー反応によって非水溶性に変化させることで、耐水性の良好な記録物を得ることもできる。
〔インクジェット記録方法〕
前記した式(IX)で示されるポルフィリン化合物や式(X)で示されるテトラアザポルフィリン化合物を含む水系インクは、インクジェット記録に好適に用いることができる。具体的には、例えば、当該インクを市販のオンデマンド型インクジェットプリンタ(例えばBJ−F900(商品名)、キヤノン社製)用のインクタンクに充填し、そのインクタンクをプリンタに搭載して、記録媒体上に、当該インクを付与した後、逆ディールス・アルダー反応を誘起せしめるために、記録媒体上のインクにエネルギーを印加する。ここで印加するエネルギーとしては、前記したように、熱、光等を用いることができる。インクの記録媒体への付与と、記録媒体上のインクへのエネルギーの印加のタイミングとしては、記録媒体が、水に対する良好な浸透性を有するもの、例えば普通紙等の場合には、インクが記録媒体に十分に浸透してしまうより前であることが好ましく、例えば普通紙(キヤノン製PB用紙)の場合には、浸透性がよいことから、インク付与とエネルギー付与とは1秒程度以内とすることが好ましい。従って、ここで用いるインクジェット記録装置には、記録媒体へのインクの付与と、記録媒体に付与されたインクへのエネルギーの印加とが、時間的に殆ど同時、或いはインク付与後のできるだけ短時間の後に行われるように、記録ヘッドの下流側に近接してエネルギー付与手段を設けたり、或いは記録ヘッドに隣接してエネルギー付与手段を配置してもよい。
〔インクジェット記録装置〕
本発明の逆ディールス・アルダー反応誘起手段としてのプレヒータ、ハロゲンヒータを含む記録装置に関して図3を使用して説明する。
図3は、交換可能な記録ヘッド(不図示)及び該記録ヘッドに対して着脱可能に装着されているインクタンクCを具備しているフルカラーシリアルタイプのプリンタの概略斜視図である。インクタンクCは本発明のインクを収容するインク収容部の一形態である。記録ヘッドおよびインクタンクCはキャリッジ3に対して脱着自由に装着される。キャリッジ3はガイド軸11に沿って摺動方向に係合し、また、主走査モータ(不図示)によって移動する駆動ベルト52の一部と接続する。これにより記録ヘッド及びインクタンクはガイド軸に沿った方向に走査が可能となる。記録ヘッド、インクカートリッジの走査による記録領域の奥側および手前側においてガイド軸とほぼ平行に延在する搬送ローラ16がある。プレヒート加熱を兼ねた搬送ローラ16は制御回路と副走査モータ(何れも不図示)によって駆動され、記録媒体Pおよび記録媒体上に付与されるインクに含まれる本発明の新規化合物を加熱し、逆ディールス・アルダー反応を誘起するとともに、記録媒体Pを搬送する。この搬送されていた記録媒体Pはプラテン部において印字下面側から赤外線加熱ヒータユニット500によってメインヒート加熱が行われ、記録媒体Pおよび本発明の新規化合物を所望の温度まで高め、急速に逆ディールス・アルダー反応を進行させる。赤外線ヒータユニット500は、例えばハロゲンヒータ501と、記録媒体進入防止と効率的加熱を可能にした網目状のプラテン502と赤外線を記録媒体側に集光するための反射板(不図示)と、温度センサー(サーミスター)(不図示)およびそれを制御する回路(不図示)で構成している。また、上述したインクジェット記録装置における加熱手段としてはハロゲンヒータによる赤外線加熱をもって説明したが、これは本発明の新規化合物が有する逆ディールス・アルダー反応特性によって温風加熱方式や光開裂のための半導体レーザー等の別誘起手段で構成することも可能である。
〔記録ユニット〕
本発明にかかる記録ユニットとしては、インクジェット記録装置に必要な、記録ヘッド、インクカートリッジ(インク収容部)、キャリッジ装置、紙搬送装置を有し、さらに本発明の新規化合物の逆ディールス・アルダー反応を誘起するために必要な外部エネルギー付与装置(加熱装置、光照射装置、電磁波照射装置等)を有するものである。これら装置をシーケンス的にコントロールするコントローラ、インク回復系装置等は適宜選択されて装備される。
〔インクカートリッジ〕
本発明にかかるインクカートリッジとしては、一般的なインクジェット記録方式に使用されている方式のインクカートリッジが適宜選択されて使用される。これには記録ヘッドの上部に装着されてヘッドにインク供給可能とされるもの、チューブを使ってヘッドにインク供給可能とされるもの、記録ヘッドと一体化されているものなどが挙げられる。
〔記録媒体〕
前記した本発明にかかる新規化合物は、また記録媒体、例えばインクジェット記録などに用いる記録媒体に含有させることもできる。そしてそのような記録媒体をインクジェット記録に適用することで、高品位なインクジェット記録物を得ることが可能である。本発明にかかる新規化合物を記録媒体に含有させる例としては、例えば本発明にかかる化合物を水溶性のバインダーとして記録媒体上に塗布することが考えられる。このような記録媒体に水系インクで記録した後、当該化合物の水溶性可溶化基を逆ディールス・アルダー反応により脱離することによって、記録媒体表面を疎水化することが可能である。そしてこのとき、逆ディールス・アルダー反応を生じさせる程度を、記録媒体に与えるエネルギーを制御することで調整できるため、疎水化の程度もまた調整することができる。よって記録媒体に付与された水性インクの良好な定着と少ない滲みとの両立を高いレベルで満足させることが可能である。
本態様において被記録対象となると考えられる記録媒体は、水系インクによるインクジェット記録方法に適用しうる記録媒体の中から適宜選択されるものであるので特に限定されるものではないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維および皮革等が挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理をされたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックをポリビニルアルコール等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することによって設けられる。なお、普通紙も記録媒体として用いることができるのはもちろんである。
〔添加剤等〕
インクや液体組成物、あるいは記録媒体に添加剤等を加えることもできる。添加剤等の具体例としては特に限定されるものではないが、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等の代表される抗酸化剤、サリチル酸系、ベンゾトリアゾール系に代表される紫外線吸収剤が挙げられる。これらの添加剤は一般的に非水溶性のものであり、インクジェットインク、インクジェット記録媒体に含有させようとする場合、水溶性の置換基(水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等)を添加剤に導入するのが、一般的である。しかし、この場合、高湿度等の水分の影響により添加剤のマイグレーション(流れ出し)等が生じ、効果が低下することが予想される。それを防止するために分子量を大きくすると、添加剤の溶解性が低下し、当初期待する効果が出ない可能性がある。このような場合において、本発明の可溶化基脱離、構造変化の機構を用いることにより、溶解性をコントロールすることにより、マイグレーションを停止することができ、溶解性とマイグレーションを両立することが可能である。溶解性とマイグレーションを両立させるためには脱離する置換基と、前駆体から生成する化合物に残存する置換基の大きさ、極性、位置を設計することが好ましい。
〔環境履歴検出方法〕
本発明にかかる化合物に逆ディールス・アルダー反応させる一手段として加熱する方法があることは前記したが、このような性質を用いて、当該化合物を熱履歴を検出するための手段として用いることもできる。即ち、逆ディールス・アルダー反応による化合物の構造変化、特にはパイ共役系の構築によって、逆ディールス・アルダー反応前後で、変色させることができる。この変色を利用して、例えばある物品に対して所定の温度以上の熱が加わったか否かを知ることができる。例えば前記した、本発明にかかる、ポルフィリン骨格あるいはテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物は、逆ディールス・アルダー反応を誘起する温度以上に加熱された場合に変色する。この温度は設計される化合物によって異なるが、例えば上記の新規化合物の場合は120℃以上の熱履歴で変色が認められる。従って、物品に、本発明にかかる化合物を付着させておき、その化合物が逆ディールス・アルダー反応により変化したか否かを観察することで、当該物品に対する熱履歴を知ることができる。
〔化合物精製方法〕
本発明にかかる技術を用いることで、化合物の精製を行うことも可能であると考えられる。例えば、様々な有機機能性材料において、パイ電子の拡張された化合物は有用と考えられているが、かかる化合物、例えばテトラアザポルフィリン系化合物(フタロシアニンなど)においては、分子のスタッキングによって溶媒に溶け難いものが多く、分子間に含まれているような不純物を除去し、精製することが困難である。しかし、本発明にかかる技術を用いて、フタロシアニンの合成段階では、例えば親水性基が結合した嵩高いビシクロオクタジエン骨格を導入することで水系溶媒に対して高い溶解性を確保しておき、この段階においてろ過や抽出などの定法に従って精製を行ない、不純物を除去したのちに、逆ディールス・アルダー反応でエチレンを脱離させてパイ電子系を拡張することで、所望の化合物、例えばフタロシアニン化合物を得ることで、高純度なフタロシアニン化合物を容易に得られる。
[パターン形成方法]
本発明にかかる化合物に、逆ディールス・アルダー反応させ有機半導体特性を持つ化合物の製膜も可能になる。一般にアントラセン、テトラセン、ポリチオフェン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロシアニンなど)の化合物は有機半導体特性を持つことが知られているが、この様な化合物は、パイ共役系が広い平面構造を持つことにより、溶媒に溶け難い物が多く、製膜するには蒸着以外には出来ないのが一般的であった。蒸着による製膜は、バッチ式でかつ製膜条件に制約される点が多く、大面積に均質な製膜を行うのが難しくかつコスト的にも不利であった。
しかし、本発明にかかる技術を用いることで、上記したアントラセン、テトラセン、ポリチオフェン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロシアニンなど)の化合物に溶剤可溶性を担持させることが出来、これらの溶液をキャスト法などの方法を用いることで製膜が可能となる。製膜後、逆ディールス・アルダー反応でエチレンを脱離させてパイ共役系を拡張することで、所望の化合物からなる有機半導体薄膜を得ることができる。製膜法としては、スピンコート、ディップコートなどのキャスト方法や、これらの溶剤可溶性の付与してなるアントラセン、テトラセン、ポリチオフェン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロシアニンなど)などの化合物は、スクリーン印刷やインクジェット方式で印刷することも可能である。これらの製膜法は大面積を低コストで製膜することが可能である。さらにインクジェット方式による印刷を用いれば、記録媒体上の所望の位置に極めて高精度に選択的にインクを付与することができ、当該基板上で逆ディールスアルダー反応により溶媒不溶化させることで、記録媒体上に、有機半導体の高精度なパターンを形成することができる。またこれらの化合物は、基材(記録媒体)に付与されて初めて溶媒に対する溶解性を低下させることができる為、記録媒体上における溶媒の挙動と有機半導体材料(ここではアントラセン、テトラセン、ポリチオフェン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロシアニンなど)化合物)の挙動とを独立させることが可能となる。つまり、溶媒が基材上に無秩序に拡散してしまった場合においても、当該溶媒に対して不溶化した有機半導体材料は、溶媒の拡散に追従して拡散してしまうことを抑制できる。このことも、パターンの高精度化に寄与しているものである。
次に、本発明に基づく実施例を示し、本発明の効果をより明らかにするが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、次の略語を使用する。
THF:テトラヒドロフラン
DBU:1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン−7
〔実施例1(ポルフィリン系化合物の合成)〕
図1に記載のスキームに従って、逆ディールスアルダー反応で脱離可能な水酸基を有する本発明のポルフィリン系化合物を色材として合成した。
1.1 化合物2の合成
まず原料として1,2−ジヒドロキシシクロヘキサジエン(化合物1)の20%酢酸エチル溶液(25ml)を用意し、溶媒を減圧下濃縮し、そこにアセトン(30ml)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕跡量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で4時間攪拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、飽和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止し、ジエチルエーテル(3×30ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(3×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮することで化合物1の水酸基を保護した化合物2が8.33gの収率で得られた。
1.2.化合物3の合成
反応容器に 化合物2(158mg、1.04mmol)と2−ニトロ−1−(フェニルスルホニル)エチレン(230mg、1.08mmol)を入れ、トルエン(2.00ml)を加えて、90℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィ(20−30容量% 酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、Rf0.24(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)とRf0.18(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)のフラクションを濃縮した。これらをそれぞれ再結晶することにより、化合物3aと3bが124mg(0.339mmol、32.6質量%)、62mg(0.17mmol、16.3質量%)の収率で得られた。
mp 151.9−152.6℃
1HNMR(溶媒:CDCl3 単位:δppm 7.87(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(dd、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(dd、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、1.22(s、3H)
IR(KBr)/cm-1 2981w、1552s、1313s、1151s、1056s、727.0m、601.7m。
1.3.化合物4の合成
反応容器に化合物3a、3b(2、2−ジメチル−8−ニトロ−9−フェニルスルホニル−3a、4、7、7a−テトラヒドロ−4、7−エタノ−1、3−ベンゾジオキソール)を365mg(1mmol)を入れ窒素置換し、ドライTHF(5.00ml)に溶解させ、反応容器を氷浴に浸した。ドライ−エチルイソシアノアセテート(0.110ml、1.00mmol)を加えた後、水素化カルシウムにより蒸留したDBU(0.370ml、2.50mmol)を5分かけて滴下し、氷浴を取り除き、室温で17時間攪拌した。反応終了後、2%塩酸(10.0ml)を加え、酢酸エチル(3×20.0ml)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)で分離し、Rf0.41(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶することにより化合物4を283mg(97.8mmol、97.8重量%)の収率で得られた。
mp 114.9−146.3℃
1HNMR(溶媒:CDCl3、単位:δppm) 8.58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0Hz、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.30(s、3H)
IR(KBr)/cm-1 3345s、2892w、1681s、1297m、1141s、1039s。
1.4.化合物5の合成
反応容器に化合物4(289mg、1.00mmol)を入れ窒素置換し、ドライTHF(5.00ml)に溶解させ、反応容器を氷浴に浸した。水素化リチウムアルミニウム(114mg、3.00mmol)を加えて氷浴を取り除き、室温で1時間攪拌した。還元終了後、飽和食塩水(20.0ml)を加え、不溶物をセライト濾過し、クロロホルム(3×100ml)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液にp−トルエンスルホン酸(80.0mg)を加え、1日攪拌した。さらにクロラニル(223mg、0.907mmol)を加えさらに1日撹拌した。反応終了後、反応溶液を1%チオ硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、飽和食塩水(50.0ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製し再結晶することで、化合物5(収率39.8重量%)を得た。
1.5.化合物6の合成
反応容器に化合物5と酢酸銅をクロロホルム(30ml)−メタノール(3ml)に溶かし、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水(100ml×2)、飽和食塩水(40ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、クロロホルム−メタノールから再結晶することによって赤紫色結晶(化合物6)を得た。
1.6.化合物7の合成
得られた化合物5の酸存在化における加水分解反応により脱保護基反応を行い、目的とする水溶性化合物7を得た。
〔実施例2(インクジェットインクの作成および画像記録)、参考例〕
実施例1で得られた水溶性化合物7を限界濾過膜を用いて脱塩処理したもの、および参考例としてフタロシアニン色素(C.I.ダイレクトブルー199)を用いて以下の組成でインクジェットインク(水系インク)を作成した。
1)脱塩処理した水溶性化合物7
あるいは、C.I.ダイレクトブルー199 5.0部
2)グリセリン 5.0部
3)尿素 5.0部
4)エチレングリコール 5.0部
5)水 80.0部
計 100.0部
このインクをキヤノン株式会社製 インクジェットプリンタ 商品名:BJ−F870を用いて記録媒体(商品名:PR−101;キヤノン株式会社製)に縦−横1cm四方の赤紫色のカラーパッチを印刷した。実施例2のカラーパッチは、120℃・1分間で熱処理することによって、化合物7を逆ディールスアルダー反応させて、シアン色のカラーパッチに加熱変換した。こうして得た実施例2並びに参考例のパッチに関して耐光堅牢性、耐ガス堅牢性、耐水堅牢性、耐湿堅牢性の試験を行った。
〔耐光堅牢性〕
以下の試験条件に従って、キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行った。本試験は室内における窓越し太陽光を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件:
照射強度:70Klx 試験時間520時間
試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
フィルタ:ソーダライム(アウター)、ボロシリケート(インナー)
耐光堅牢性を以下の様に評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率89〜80%
C:濃度残存率79%以下。
〔耐ガス堅牢性〕
以下の試験条件(ANSI/ISA−S71.04−1985)に従って、ガス腐食試験機を用いて、ガス暴露試験を行った。本試験は室内における各種のガスの影響を考慮した画像堅牢性試験である。
試験条件:
暴露ガス組成:H2S:50ppb、SO2:300ppb、NO2:1250ppb、Cl2:10ppb、O3:1200ppb
試験時間:72時間、試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
耐ガス堅牢性を以下の様に評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率89〜80%
C:濃度残存率79%以下。
〔耐水堅牢性〕
得られた記録物を水道水に5分間浸漬した後、引き上げ乾燥し、試験前との濃度変化を測定した。
A:濃度残存率1%以下
B:濃度残存率2〜4%
C:濃度残存率5%以上。
〔耐湿堅牢性〕
得られた記録物を30℃・80%RHの恒温恒湿槽に1週間保管し、取り出し乾燥し、試験前との濃度変化を測定した。
A:濃度残存率1%以下
B:濃度残存率2〜4%
C:濃度残存率5%以上。
以上の試験を化合物7の加熱変換前と加熱変換後および参考例のインク(ダイレクトブルー199)でまとめた結果を表1に示す。
Figure 2006249436
以上のように、本発明にかかる記録方法を用いることによって、インクを記録媒体上で溶媒溶解系から非溶解系へと変換することができる。記録媒体上で、溶解特性を変化(低下)させることによって、色材の自己凝集を誘起し、優れた画像堅牢性を達成することが可能となった。一方、インクに対しては、従来の顔料インクのように高分子分散剤等をインクに添加する必要がない。即ち、本発明は、従来の染料インクと、顔料インクとの双方の効果を享受することができるものである。
〔実施例3(テトラアザポルフィリン系化合物)の合成〕
図2に記載のスキームに従ってテトラアザポルフィリン骨格を有する本発明にかかる化合物を合成した。
3.1 化合物2’の合成
まず原料として1,2−ジヒドロキシシクロヘキサジエン(化合物1’)の20%酢酸エチル溶液(25ml)を用意し、溶媒を減圧下濃縮し、そこにアセトン(30ml)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕跡量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で4時間攪拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、飽和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止し、ジエチルエーテル(3×30ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(3×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮することで化合物1’の水酸基を保護した化合物2が8.33g得られた。
3.2.化合物3’の合成
反応容器に化合物2’(158mg)とジシアノアセチレン(230mg)を入れ、トルエン(2.00ml)を加えて、90℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィ(20−30容量% 酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、Rf0.24(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)とRf0.18(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)のフラクションを濃縮した。これらをそれぞれ再結晶することにより、化合物3’が184mg得られた。
mp:151.9−152.6℃
1HNMR(溶媒:CDCl3 単位:δppm 7.87(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(dd、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(dd、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、1.22(s、3H)
IR(KBr)/cm-1 2981w、1552s、1313s、1151s、1056s、727.0m、601.7m。
3.3.化合物4’の合成
反応容器に化合物3’(365mg)を入れ窒素置換し、ドライTHF(5.00ml)に溶解させた。そこにn−ブトシキマグネシウムのn−ブタノール溶液を加え、150℃の温度で加熱撹拌し、4量環化、金属錯体化を行った。反応終了後、酢酸エチル(3×20.0ml)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)で分離し、Rf0.41(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶することにより化合物4’が283mgの収率で得られた。
mp 114.9−146.3℃
1HNMR(溶媒:CDCl3、単位:δppm) 8.58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0Hz、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.30(s、3H)
IR(KBr)/cm-1 3345s、2892w、1681s、1297m、1141s、1039s。
3.4.化合物5’の合成
反応容器に化合物4’(289mg)を入れ窒素置換し、THF(5.00ml)に溶解させた。1N塩酸(114mg)を加えて室温で1時間攪拌した。反応終了後、飽和食塩水(20反応終了後、反応溶液を1%チオ硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、飽和食塩水(50.0ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製し再結晶することで、水酸基が脱保護された水溶性フタロシアニン化合物5’(収率39.8%)を得た。
本発明にかかるポルフィリン系化合物の合成方法を示すスキームである。 本発明にかかるテトラアザポルフィリン系化合物の合成方法を示すスキームである。 本発明にかかるインクジェットプリンタの概略斜視図である。
符号の説明
3 キャリッジ
11 ガイド軸
16 搬送ローラ
52 駆動ベルト
500 赤外線加熱ヒータユニット
501 ハロゲンヒータ
502 プラテン
C インクタンク
P 記録媒体

Claims (8)

  1. 印刷を用いることにより少なくともビシクロ化合物を含む溶液を基材上の所望の位置に付与し、該ビシクロ化合物からビシクロ骨格の一部を脱離させてπ共役系を拡張し、該ビシクロ化合物を有機半導体材料に変換することによって、
    該基材上の選択的な位置で逆ディールス・アルダー反応させ、それにより、基材上の所望の位置に有機半導体膜を形成することを特徴とする有機半導体膜のパターン形成方法。
  2. 前記印刷がインクジェット方式による印刷であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体膜のパターン形成方法。
  3. 前記印刷がスクリーン印刷であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体膜のパターン形成方法。
  4. 少なくとも下記式(1)もしくは下記式(2)で示される構造を有するビシクロ化合物を基材上に付与し、該ビシクロ化合物からビシクロ骨格の一部を脱離させてπ共役系を拡張し該ビシクロ化合物を有機半導体に変換する逆ディールス・アルダー反応を用いて該ビシクロ化合物を有機半導体材料に変化させることにより、有機半導体膜を形成する有機半導体膜のパターン形成方法。
    Figure 2006249436
    Figure 2006249436
    (式(1)及び(2)中、R1及びR2はそれぞれ、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つを含む極性基を示すか、もしくはアルキル基を示し、Mは亜鉛、銅、マグネシウムまたはアルミニウムを示す)
  5. 前記ビシクロ化合物が下記式(3)で示される構造を有することを特徴とする請求項4に記載の有機半導体膜のパターン形成方法。
    Figure 2006249436
  6. ビシクロ化合物に逆ディールス・アルダー反応させることにより、
    基材上に下記式(4)もしくは下記式(5)で示される化合物からなる有機半導体膜を形成する工程を少なくとも有する有機半導体膜のパターン形成方法。
    Figure 2006249436
    Figure 2006249436
  7. 逆ディールス・アルダー反応を用いることにより、
    基材上にアントラセン、テトラセン、ポルフィリン骨格を有する化合物、テトラアザポルフィリン骨格を有する化合物のいずれかからなる有機半導体膜を形成する工程
    を少なくとも有する有機半導体膜のパターン形成方法。
  8. 少なくともビシクロ化合物を含む溶液を基材上に付与し、加熱および光照射によって、該ビシクロ化合物からビシクロ骨格の一部を脱離させてπ共役系を拡張し、該ビシクロ化合物を有機半導体材料に変換することによって、
    該基材上で逆ディールス・アルダー反応させ、それにより、基材上に有機半導体膜を形成することを特徴とする有機半導体膜のパターン形成方法。
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