JP2006077103A - 色素化合物、インク組成物、記録方法及び記録画像 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、逆ディールス−アルダー(Retro Diels−Alder)反応を用いて、例えば、加熱といった簡易な手段で、その分子構造を変化させて、特に親水性溶媒(水系溶媒)に対しての可溶性が変化し、併せて分子内より脱離生成するエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体であることを特徴とする色素化合物、これらを含有するインク組成物、記録方法及び記録画像に関する。
これまで、高精細度を要求されるインクジェット用記録液(インク)の色材には染料が用いられてきた。染料を用いたインクは、高透明度、高精細度、優れた演色性等の特徴を有する画像を与えることができるが、耐光性や耐水性等の画像の堅牢性に劣るという問題を有する場合が多い。近年、この画像の耐光性や耐水性等の問題を解決するために、染料に代えて、有機顔料やカーボンブラックを色材として用いた顔料インクが製造されている。このように、画像の堅牢性を高める観点から、インクに使用される色材は、染料から顔料へとシフトしてきており、例えば、下記の如き種々の提案がなされている。
例えば、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有する構造の化合物とすることによって、該溶媒に可溶であり、逆ディールス−アルダー反応によって該親溶媒性の基が脱離し、該溶媒に対する溶解度が不可逆的に低下可能な化合物、及びかかる化合物を用いたインクが提案されている(特許文献1参照)。この化合物が色材の場合には、該色材は、インク中では溶媒に溶解状態(即ち、染料状態)であるが、該インクを被記録材上に付与し、且つ該色材を逆ディールス−アルダー反応させると、溶媒に不溶解状態(即ち、顔料状態である)にすることができ、画像の堅牢性が良好になる。しかしながら、上記提案では、溶媒に溶解した化合物(即ち、染料状態)を被記録材に付与し、該被記録材上で上記の反応を生じせしめるためには、加熱や、光、電磁波及び放射線の照射等といった外的エネルギー付与手段が必要となる。
又、熱的可逆性のディールス−アルダー反応する重合化反応化合物を、インクジェットインク・キャリアの粘度温度制御材として用いた相変化インクについての提案がされている(特許文献2参照)。この提案では、反応が可逆反応であるため、溶解性が減少した状態で冷却すると、環化反応が誘発され、溶解性が増加するという問題がある。
又、トリアリルメタン系の化合物の紫外線、熱による分解反応や、フォトクロミック化合物のような光、熱可逆性化合物を使用した極性(溶解性、凝集性)の制御についての提案がされている(特許文献3参照)。しかしながら、該極性部は、ラジカルイオン開裂的に分解する系であるため、非可逆的な状態を形成することは可能であるが、副生成物が極めて不安定であるため、酸化劣化反応を誘発してしまう。又、フォトクロミック反応は、可視、紫外線及び熱に対し可逆反応であるため、ある一定状態を維持することが難しいといった問題がある。
更に、インクが、被記録材上に付与された時に、ディールス−アルダー反応を生じさせることで、得られた記録画像の堅牢性を良好にすることについての提案がある(特許文献4参照)。又、被記録媒体中の構成成分による逆ディールス−アルダー反応に起因して生じる着色現象(黄変現象)を、強くディールス−アルダー反応を生じさせる成分を含有させることで防止することが提案がされている(特許文献5参照)。
顔料には、化学式や組成、構造が同じでも2以上の結晶型をとるものがあり、多形と呼ばれる。例として挙げると、フタロシアニンブルーの、α型、β型、ε型等があり、これらは、吸収係数や屈折率が異なるので、色相や隠蔽力が異なっている。有機顔料は、色材として塗料分野で使用されるばかりでなく、エレクトロニクス分野においても、例えば、電子写真感光体の電荷発生剤、CD−R、DVD−R等の被記録媒体用色素、トナーやインクジェットプリンタ用インクの着色剤、液晶表示素子用カラーフィルター色素、有機ELデバイス用発光材等の様々な用途に用いられる。ここで、有機顔料を上記用途に使用するためには、先ず、高純度であること、特定の吸収特性を持つこと、が必要である。吸収特性は、顔料の化学構造、粒径、結晶型、純度等により支配されているが、特に有機顔料は同一化学構造であっても、幾つもの結晶型を持つものが多く存在するため、それらを制御しながら、且つ、いかに高純度に製造していくかが新たな有機顔料を開発する上での重要なポイントとなる。
例えば、電子写真感光体の電荷発生材料としては様々な有機顔料が使用されているが、近年、半導体レーザー光やLED光の発振波長である近赤外光に対し、高感度な吸収を示す顔料が強く求められている。この要求を満たす有機顔料として、フタロシアニン類が広く研究されている。フタロシアニン類は、中心金属の種類により吸収スペクトルや光導電性が異なるだけでなく、結晶型によってもこれらの物性には差があり、同じ中心金属のフタロシアニンでも特定の結晶型が電子写真感光体用に選択されている例が幾つか報告されている。
無金属フタロシアニンではX型の結晶型が高い光導電性で、且つ、800nm以上の近赤外光に対しても感度が有るとの報告があり、又、銅フタロシアニンでは、多くの結晶型のうちで、ε型が最も長波長に感度を有していると報告されている。しかし、X型無金属フタロシアニンは準安定型結晶型であって、その製造が困難であり、又、安定した品質のものが得にくいという欠点がある。一方で、ε型銅フタロシアニンは、α型やβ型の銅フタロシアニンに比べれば分光感度は長波長に伸びているが、800nmでは780nmに比較し、急激に低下しており、発振波長に変動のある半導体レーザー用には使いにくい性能となっている。銅フタロシアニンでは、α、β、γ、ε型等の結晶型の違いにより、帯電性、暗減衰、感度等に大きな差があることが知られており(例えば、非特許文献1参照)、又、結晶型により吸収スペクトルが異なることより、分光感度も変化することも報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
この様に、結晶型による電気特性の違いは、無金属フタロシアニンや他の多くの金属フタロシアニンに関してよく知られており、電気特性の良好な結晶型をいかに作るか、という点に多くの努力がなされている。更に、多くの顔料は、水の中で合成或いは後処理されていて、ここで大きさや形を調整した一次粒子がつくられるが、その後の工程、特に乾燥工程で粒子同士が凝集して二次粒子を形成してしまうため、これらの凝集した粒子を微細化することが分散工程においては必要である。
これまで、有機顔料の結晶型を制御(又は微細化)する方法としては、合成段階で制御する方法の他、例えば、アシッドペーステイング法、アシッドスラリー法等のいわゆる硫酸法(特許文献6参照);ソルベントミリング法、ドライミリング法、ソルトミリング法等の粉砕法により一旦溶解或いは非晶質化した後、所望の結晶型に転換させる方法(非特許文献3参照)、加熱条件下、有機顔料を溶媒に加熱溶解した後、徐冷却し結晶化させる方法(特許文献7参照)が一般的である。又、有機薄膜において、結晶型を制御する方法では、昇華温度を制御して所望の結晶型を得る方法(特許文献8参照)が一般的である。
本発明者らは、このような技術的背景に鑑み検討を重ねた結果、インク中では溶媒に対して溶解状態を維持して安定な液状組成物(インク)を与え、ひとたび記録媒体に付与された後には、簡易な手段によって、該溶媒に対する溶解性が変化するといった、染料の性質と顔料の性質とをその局面に応じて変化させることのできる性質をもった色素化合物の開発が可能であり、該化合物が開発できれば、インクジェット技術のより一層の発展に有効であるとの認識をもつに至った。
又、本発明者らは、これまでインクジェット記録方法等に用い得る種々の特性を有する化合物の検討を行ってきた中で、色素化合物の分子構造内にあって、該色素化合物に、水又は親水性溶媒に対する可溶性を付与している可溶性付与基を含む部分を脱離させ、脱離生成したエチレン誘導体をインク成分、もしくはインク画像に対して機能させることで、より好適なインク組成物及びそれを用いた記録方法、及び記録画像を提供できるとの結論を得て、本発明の完成に至った。
従って、本発明の目的は、逆ディールス−アルダー反応により、例えば、加熱や光照射といった簡易な手段で可溶性付与基を含む部分を容易に脱離することができる、直接的或いは間接的に結合された可溶性付与基が結合している脱離部分を有する構造部分を分子構造中に有し、該構造部分が逆ディールス−アルダー反応によりエチレン誘導体を脱離生成でき、このエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体であることを特徴とする色素化合物、該化合物を含有するインク組成物、これを用いた記録方法及び記録画像を提供する点にある。
上記した目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、その分子構造中に、下記一般式(1)で示される構造部分を有し、該構造部分が逆ディールス−アルダー反応によりエチレン誘導体を脱離生成でき、このエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体であることを特徴とする色素化合物である。
(R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された、色素化合物に親水性媒体に対する可溶性を与える可溶性付与基を表し、R5〜R8は、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。)
(R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された、色素化合物に親水性媒体に対する可溶性を与える可溶性付与基を表し、R5〜R8は、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。)
又、本発明の別の形態は、上記色素化合物が逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有していることを特徴とする色素化合物である。
又、本発明の別の形態は、上記色素化合物が親水性溶媒に溶解した状態で含有されていることを特徴とするインク組成物である。
又、本発明の別の形態は、上記色素化合物が親水性溶媒に溶解した状態で含有されていることを特徴とするインク組成物である。
又、本発明の別の形態は、上記インク組成物を用いることを特徴とする記録方法である。
又、本発明の別の形態は、上記記録方法によって記録されたことを特徴とする記録画像である。
又、本発明の別の形態は、上記記録方法によって記録されたことを特徴とする記録画像である。
上記したように、本発明は、その分子構造中に、逆ディールス−アルダー反応によって可溶性付与基を含む部位を容易に脱離できる前記一般式(1)で示される構造部分を有している色素化合物、該化合物が含有されているインク組成物、それを用いた記録方法及び記録画像である。本発明にかかる色素化合物は、例えば、インク中に含有させて用いられるものであって、インク中においては、親水性溶媒に対して溶解している状態にあり、一方、逆ディールス−アルダー反応により、加熱或いは光照射といった簡易な手段で、前記一般式(1)で示される構造部分のうちの可溶性付与基を含む部分が脱離されて「溶解性が変化」し、併せて分子内より脱離生成するエチレン誘導体がインク成分として、又は画像形成に対して有益に作用することで、例えば、記録後における所望の特性を獲得できるものである。
本発明でいう上記色素化合物の「溶解性が変化」とは、該色素化合物の構造中の前記一般式(1)で示される構造部分から、逆ディールス−アルダー反応によって、該化合物に対して、親水性溶媒に対する可溶性(溶解性)を付与している可溶性付与基を含む部分が脱離することで得られる化合物が、単に水溶性が低下することだけではなく、例えば、テトラアザポルフィリン系化合物、チオインジゴ系化合物、ポルフィリン系化合物等のパイ電子系有機化合物としての性質(化学的性質、物理的性質、電気的性質)を新たに獲得することをいう。
本発明にかかる特有の構造部分を有している色素化合物によれば、外部エネルギー(例えば、熱や光)を付与することによって起こる逆ディールス−アルダー反応を用いて、その分子構造を容易に変化させ、これによって該化合物の溶解性が変化し、併せて分子内より脱離生成するエチレン誘導体がインク成分として、又は画像形成に対して有益に作用するというメカニズムを用いることによって、例えば、通常の染料インクと、顔料インクの、双方の効果を享受することができる、従来にない特性を有するインク組成物が提供される。
以下に、発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明にかかる色素化合物は、逆ディールス−アルダー反応によって、下記一般式(1)で示される構造部分から、直接的或いは間接的に結合された可溶性付与基を有する部分(以下、脱離部分という)が離脱して、溶解性が変化する化合物である。
(R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された色素化合物に水又は有機溶媒に対する可溶性付与基を表し、R5〜R8は水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。)
ここで具体的に、R1〜R4は、脱離部分に直接的に結合しているか、間接的に結合している可溶性付与基を表しており、R5〜R8は、可溶性付与基に限定されない水素原子、又は置換基を表している。ここでR1〜R4は、脱離部位に結合しているもので、脱離部分と一緒に脱離してしまう置換基であり、R5〜R8は、脱離部分の脱離によって構築された芳香環上に置換された形になる置換基である。
本発明の目的を損なわない範囲であればR1〜R4、R5〜R8の各置換基は請求項の範囲以外には限定されるものではない。具体的にはR1〜R4に関しては、水素原子、又は、水と水溶性有機溶媒からなる親水性媒体に可溶性を付与するための極性置換基が挙げられ、含酸素原子系の水酸基、アルコール基類、アルキレンオキサイド基類、カルボキシル基類、含窒素原子系のアミノ基類、含硫黄原子系のスルホン基類が例示される。又、R1とR3、R2とR4のように各々互いに環状となることも必要に応じて可能である。又、R5〜R8に関しては、上述した極性基のほか、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、メルカプト基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
本発明の特徴として、併せて該構造部分が逆ディールス−アルダー反応によりエチレン誘導体(R1R2C=CR3R4)を脱離生成でき、このエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体であることを特徴としている。インク成分、もしくはインク画像に対して機能するとは、該構造部分が脱離生成してなるエチレン誘導体が逆ディールス−アルダー反応前にインク組成物を構成していたインク成分に相溶することができる構造を有し、不溶化物等ではインク組成物に悪影響を及ぼさないという意味と、界面活性剤やインク吐出安定剤等の新規成分としての構造を有し、インク組成物の特性に対し機能するという意味の2つの意味を有している。
該構造部分が有機合成により構築されるため、従来知られているインク用添加剤のように複数の構造が混在してしまっているものではなく、脱離生成するエチレン誘導体も厳密に構造が決定された化合物として機能させることができるのも特徴である。
該構造部分が有機合成により構築されるため、従来知られているインク用添加剤のように複数の構造が混在してしまっているものではなく、脱離生成するエチレン誘導体も厳密に構造が決定された化合物として機能させることができるのも特徴である。
又、インク画像に対して機能するとは、画像の品位や堅牢性に対して有効に作用することを意味し、具体的には光沢性、光堅牢性、ガス堅牢性、印字汚れ防止、擦過性向上等の有効成分として機能することをいう。
R1〜R4の組み合わせにおいて、置換基として可溶性付与に関与しない水素原子が脱離部位に偏ってしまうと、他の可溶性付与基が十分な効果を発揮しない恐れがあるため、水素原子を偏って配置することは好ましくない。又、水素原子は親水性媒体による可溶性付与効果がほとんどないため、よって、R1〜R4は化合物を溶解させたい親水性溶媒に対して十分な可溶性を与えるように水素原子に関しても加味して適宜選択すればよい。
更に本発明の特徴として、該構造部分が逆ディールス−アルダー反応によりエチレン誘導体(R1R2C=CR3R4)を脱離生成でき、このエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体であることを特徴としているので、生成するエチレン誘導体の性質を前もって検討して、R1〜R4を決定する。
本発明においてR5〜R8は、可溶性付与基に限定されない水素原子、又は置換基を表しており、これらは脱離部位の脱離によって構築された芳香環上に置換されたまま残るので、溶解性が変化した状態(脱離部位の脱離後)の会合性、凝集性、結晶性、分散性、色調等の諸特性を調整するために用いることができる。R5〜R8に可溶化付与基を用いない場合は、R1〜R4の可溶化基の脱離により溶解性をなくしてしまうことができ、又、R5〜R8に適当な可溶化基を存在させることによって、溶解性を低減変化させることもできる。
本発明においては更に、該色素化合物がその分子構造中に、逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有するように分子設計することができる。逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有するとは、前述の脱離生成したエチレン誘導体が反応活性となり、色素と反応することにより耐水性等の画像堅牢性の向上機能を発現したり、エチレン誘導体同士で反応してより高機能の界面活性剤、インク用溶媒として機能することをいう。また、別の意味として、逆ディールス−アルダー反応後に芳香環が構築された色素分子が反応活性となり、色素分子同士が反応し、耐光性や耐水性等の画像堅牢性が向上する効果をもたらすことをいう。
本発明においては更に、該色素化合物がその分子構造中に、逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有するように分子設計することができる。逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有するとは、前述の脱離生成したエチレン誘導体が反応活性となり、色素と反応することにより耐水性等の画像堅牢性の向上機能を発現したり、エチレン誘導体同士で反応してより高機能の界面活性剤、インク用溶媒として機能することをいう。また、別の意味として、逆ディールス−アルダー反応後に芳香環が構築された色素分子が反応活性となり、色素分子同士が反応し、耐光性や耐水性等の画像堅牢性が向上する効果をもたらすことをいう。
例えば、所定の溶媒が水若しくは水と水溶性有機溶媒からなる親水性媒体である場合においては、水に対する溶解度(25℃)が少なくとも1質量%以上となるように、逆ディールス−アルダー反応により脱離する色素化合物の構造中の脱離部分に、直接的或いは間接的に可溶性付与基を導入しておき、該脱離部分を逆ディールス−アルダー反応により色素化合物の構造中から脱離させることにより、溶解性を変化させることが可能となる。
尚、上記における親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、グリコール系、アミン系に代表されるような、水に溶解可能な極性を有する有機性溶媒を挙げることができる。本発明にかかる色素化合物をインクジェット用の液体組成物(インク組成物)として用いる場合には、この分野で従来より使用されている親水性溶媒をいずれも用いることができる。又、インクジェット用の液体組成物に用いる水性液体中の水の割合は、通常30質量%以上とされる。以下にこの化合物について、具体例を用いてより詳細に説明する。
先ず、本発明でいうディールス−アルダー(Diels−Alder)反応、及び逆ディールス−アルダー(Retro Diels−Alder)反応、について詳細を述べる。
[ディールス−アルダー反応]
ディールス−アルダー反応とは、共役二重結合を持った化合物(ジエン)の1,4位(架橋部位)に、二重結合又は三重結合を持った化合物(ジエノフィル)が付加して環状化合物を生成する反応をいう。例えば、環状構造を持った共役2重結合化合物をジエンとして、該ジエンの架橋部位にジエノフィルを反応させることによって、架橋部分を持ったビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格を構築することができる。
ディールス−アルダー反応とは、共役二重結合を持った化合物(ジエン)の1,4位(架橋部位)に、二重結合又は三重結合を持った化合物(ジエノフィル)が付加して環状化合物を生成する反応をいう。例えば、環状構造を持った共役2重結合化合物をジエンとして、該ジエンの架橋部位にジエノフィルを反応させることによって、架橋部分を持ったビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格を構築することができる。
[逆ディールス−アルダー反応]
逆ディールス−アルダー反応とは、ディールス−アルダー反応の逆反応のこと、即ち、ディールス−アルダー反応によって形成された環状化合物の架橋部位(即ち、脱離部位)から、置換又は未置換のエチレン基(脱離部分)を脱離する反応を意味する。例えば、上記架橋部分を持ったビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格の縮環部分を有する化合物を逆ディールス−アルダー反応させることで、脱離部位(架橋部位)からエチレン誘導体を脱離させる反応を意味する。該脱離の結果、芳香環を構築することができる。
逆ディールス−アルダー反応とは、ディールス−アルダー反応の逆反応のこと、即ち、ディールス−アルダー反応によって形成された環状化合物の架橋部位(即ち、脱離部位)から、置換又は未置換のエチレン基(脱離部分)を脱離する反応を意味する。例えば、上記架橋部分を持ったビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格の縮環部分を有する化合物を逆ディールス−アルダー反応させることで、脱離部位(架橋部位)からエチレン誘導体を脱離させる反応を意味する。該脱離の結果、芳香環を構築することができる。
上記に定義したディールス−アルダー反応及び逆ディールス−アルダー反応の例を、下記に式で示す。先ず、下記に示した例1は、ディールス−アルダー反応を用いて得られた色素化合物の脱離部位(架橋部位)から、架橋部分であるエチレン誘導体を逆ディールス−アルダー反応を用いて脱離して、色素化合物の溶解性が変化する場合の反応を部分的に式で示したものである。
又、下記に示した例2は、ディールス−アルダー反応を用いて得られた、水酸基を保護するための色素化合物の中間体を経て得られた、親水性媒体に対する可溶性付与基である水酸基を有する色素化合物の脱離部位から、水酸基で置換されているエチレン誘導体(脱離部分)を逆ディールス−アルダー反応を用いて脱離することで、色素化合物の溶解性が変化する場合の反応を部分的に式で示したものである。
上記の例2に示したように、色素化合物の逆ディールス−アルダー反応によって脱離される脱離部分に、当該化合物が溶媒に対する溶解性を増すような置換基(上記した例2では親水性基である水酸基)を、直接或いは間接に導入しておくことによって、溶媒溶解性の化合物(色素化合物)を、溶媒不溶性の化合物(顔料)へと変換することが可能となる。更に、脱離後に構築される芳香環上に存在させたい置換基(例1におけるR5〜R8)を、ディールス−アルダー反応及び逆ディールス−アルダー反応に関連する部分にあらかじめ導入しておくことにより、置換芳香環を構築することが可能である。これにより溶解性が変化した後の諸特性(会合性、凝集性、結晶性、分散性、色調等)を所望のものにすることが可能となる。
上記に例示したように、特有の構造を有す本発明にかかる色素化合物は、逆ディールス−アルダー反応によって可溶性付与基を有する脱離部分を脱離し、その結果、パイ共役系が構築される化合物(即ち、溶解性が変化した状態)へと変換されるが、この場合に、更に、パイ共役系の構築の結果として、分子の立体構造が嵩高い構造から、平坦な構造に変化するように分子構造を構築(設計)しておくことは、好ましい態様である。即ち、このようにすることで、本発明にかかる色素化合物を逆ディールス−アルダー反応させた結果として得られる化合物(即ち、溶解性が変化した状態)の凝集性や会合性を、所望の特性のものに変化させることができる。
上記好ましい態様を実現するためには、逆ディールス−アルダー反応後に分子間で、水素結合や、ファンデルワールス力、静電相互作用、極性による相互作用が大きくなる系を設計することがより好ましい。このようにすれば、従来の構造であれば会合状態が大きくなっているため制御が困難であった系においても、反応前後の化合物の性質を上記したように設計することによって、効果的に、逆ディールス−アルダー反応後に得られる溶解性が変化した状態での凝集性や会合性を変化させることが可能となる。
又、本発明にかかる色素化合物は、逆ディールス・アルダー反応によって該化合物から脱離されるエチレン誘導体部分(脱離部分)を、極めて安定で安全性の高いものにすることが可能であり、系に悪影響を与えるような可逆的な反応や、副次的な反応は起こさないような反応を構築することが可能である。一般的に、ジエン化合物とジエノフィル化合物間でのディールス−アルダー反応系は、発熱反応(ディールス−アルダー反応)と、吸熱反応(逆ディールス−アルダー反応)との平衡反応であることから、可逆性反応であることが知られている。この点を利用した技術としては、特開平11−349877号公報に、インクジェットインク・キャリアの粘度温度制御にディールス−アルダー反応系を利用した発明が開示されている。しかし、該発明に使用されているディールス−アルダー反応系は、可逆反応であるため、本発明のような、記録後に、逆ディールス−アルダー反応により色素化合物の溶解性を変化させて画像を形成させるという技術に適用した場合、溶解性が減少した状態で、冷却をされると、再度、環化反応(ディールス−アルダー環化反応)を誘発し、溶解性が再増加することが考えられる。又、同公報においては、化合物が逆ディールス−アルダー反応した状態では、反応生成物が、不安定なジエン化合物とジエノフィル化合物で存在するため、副反応として酸化反応を誘発することが懸念され、本発明のような用途には不適であると考えられる。
更に、特開平10−31275号公報では、トリアリルメタン系の化合物の紫外線・熱による分解反応や、フォトクロミック化合物のような光・熱可逆性化合物を使用して極性(溶解性、凝集性)の制御をしている例が開示されている。しかし、該発明に利用されている極性制御部はラジカルイオン開裂的に分解する系であるため、非可逆的な状態を形成することは可能であるが、副生成物が不安定であり、酸化劣化反応を誘発し、悪影響を与える恐れが考えられる。又、フォトクロミック反応は可視・紫外光線、及び熱に対する可逆反応であるため、1つの状態を維持することが極めて困難であり、本発明のような用途には不適当であると考えられる。
上記した本発明で目的としている用途に対して好ましい態様のものとするためには、色素化合物から脱離したエチレン誘導体(脱離部分)と、該前駆体から生成された顔料が、再びディールス−アルダー反応を起こすジエンとジエノフィルの関係で反応しないことが必要である。本発明の場合、脱離した化合物が、反応性の2重結合を持たない化合物へと自動酸化、還元等によって逆反応が不可能な物質に変換される仕組みを持たせて反応を非可逆的に進行させていることが特徴となっている。
〔逆ディールス−アルダー反応の誘起方法〕
逆ディールス−アルダー反応を誘起する具体的な方法としては、外部エネルギーの付与、及び化学的摂動(熱エネルギー、光エネルギー、電磁波エネルギー、化学的作用)が挙げられる。
逆ディールス−アルダー反応を誘起する具体的な方法としては、外部エネルギーの付与、及び化学的摂動(熱エネルギー、光エネルギー、電磁波エネルギー、化学的作用)が挙げられる。
上記したように逆ディールス−アルダー反応により、色素化合物から可溶性付与基を含む脱離部分をエチレン誘導体として脱離させることで、該化合物の、ある親水性媒体への溶解度を変化させることのでき、このエチレン誘導体がインク成分、もしくはインク画像に対して機能する可溶体である色素化合物としては、その分子構造中に、本発明で規定する下記一般式(1)で示される構造部分を有しているものであれば特に限定されない。
(R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された、色素化合物に親水性媒体に対する可溶性を与える可溶性付与基を表し、R5〜R8は、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。)
又、1つの色素化合物の分子構造中に、本発明で規定する下記一般式(1)で示される構造部分は同一の構造が複数有していてもよいし、複数の異なった種類(置換基の位置、種類が異なっているもの)を有していてもよい。その効果としては複数の異なった種類を逆ディールス−アルダー反応により脱離生成するエチレン誘導体を複数種になるようにすることにより、インク成分として複数のエチレン誘導体が有効に機能したり、又は画像形成に対して複数のエチレン誘導体が有効に機能したりと、より高度に機能させることが可能となる等が挙げられる。又、複数の芳香環を同一分子内に構築することが可能となり、色素化合物がより高度化される。
その具体例としては、例えば、下記式(I)或いは(II)で示されるようなテトラアザポルフィリン化合物、下記式(III)で示されるようなチオインジゴ化合物、下記式(IV)で表されるようなアクリドン化合物、下記式(V)で表されるようなアミノアントラキノン化合物、下記式(VI)で表されるような縮合多環系化合物が挙げられる。これらの式で表した色素化合物のX、Y部分に、上記した一般式(1)で示される構造部分を有しているものである。
(上記式(I)及び(II)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された、色素化合物に親水性媒体に対する可溶性を与える可溶性付与基を表し、R5〜R8は、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。Mは、2価〜4価の配位金属原子であり、Zは、ハロゲン原子、酸素原子及び水酸基のいずれかであり、nは0〜2の整数を表す。)
(上記式(III)〜(VI)中、中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された、色素化合物に親水性媒体に対する可溶性を与える可溶性付与基を表し、R5〜R8は、水素原子、又は直接的或いは間接的に結合された置換基を表す。)
本発明の色素化合物から逆ディールス−アルダー反応を誘起して目的の脱離部位を脱離する方法は、R1〜R4の置換基の種類と、脱離前後の分子のエネルギー準位によって変化する。例えば、R1〜R4がいずれも水素であると通常の熱的反応でエチレン分子が脱離する、更に、脱離後に構築される芳香環の共鳴安定化エネルギーが大きいほど、活性化エネルギーが大きくなり、加熱に必要な温度は高くなっていくことが知られている。又、R1〜R4がケトンを構成するものである場合にはその可視光によるn−π*励起によって反応が起こることが知られている。更には、R1〜R4が水酸基を有する場合、金属化合物(塩基性化合物)により電子引き抜きが生じる状態になることによって化学的作用により反応が起こることが知られている。この場合、脱離基と金属が電気的な相互作用をするための物理的パラメータや、原子半径等のこのようなパラメータを考慮に入れる必要がある。このように、R1〜R4の置換基と脱離機構を検討することによって、種々の方法によって脱離反応を誘起することが可能である。
これらの検討の際には、R5〜R8の置換基が反応系に及ぼす電気的誘起効果を考慮することが好ましい。これらの脱離反応は1つの反応種のみで完結されてもよいし、化学的反応下で加熱する、或いは光励起下加熱するといった複数の反応系を組み合わせて同時に誘起してもよいし、更には、逐次的(光反応で脱離させた中間生成物を加熱により最終生成物に変換する)といった複雑な工程を用いてより高度な脱離反応系を構築することも可能である。
当該化合物は、やはり前記式(V)で示した化合物と同様に、ビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格に結合してなる水酸基によって親水性溶媒に対する溶解性を保持しており、逆ディールス−アルダー反応によって、水酸基が置換しているエチレンを脱離させることによって(式中に一点鎖線で示した部分)、当該化合物の分子から脱離する結果、親水性溶媒に対する良好な溶解性を失うことになる。
〔テトラアザポルフィリン系色素化合物の合成方法〕
上記式(VII)で示されるテトラアザポルフィリン系化合物の合成方法について説明する。この化合物は、例えば、図1に示すスキームに従って合成することができる。先ず、1,1,2,2−テトラヒドロキシシクロヘキサジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−トルエンスルホン酸存在下で反応させ、水酸基を保護した化合物2を得る(i)。化合物2とジシアノアセチレンをトルエンの存在下でディールス−アルダー反応させて、フタロシアニン前駆体としてのジシアノ化合物3を得る(ii)。こうして得た化合物3を窒素置換した環境下で、例えば、ジ−n−ブトシキマグネシウムとともに、n−ブタノール等に溶かし、反応させることによって、4量体化してフタロシアニン骨格を形成させると共に、金属元素をフタロシアニン骨格中に配位させて化合物4を得る(iii)。次いで、化合物4に対して水酸基の脱保護反応を行うことで、上記式(VI)にかかる化合物5を得る(iv)。こうして得られた化合物5の、25℃における水に対する溶解度は50質量%程度である。
上記式(VII)で示されるテトラアザポルフィリン系化合物の合成方法について説明する。この化合物は、例えば、図1に示すスキームに従って合成することができる。先ず、1,1,2,2−テトラヒドロキシシクロヘキサジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−トルエンスルホン酸存在下で反応させ、水酸基を保護した化合物2を得る(i)。化合物2とジシアノアセチレンをトルエンの存在下でディールス−アルダー反応させて、フタロシアニン前駆体としてのジシアノ化合物3を得る(ii)。こうして得た化合物3を窒素置換した環境下で、例えば、ジ−n−ブトシキマグネシウムとともに、n−ブタノール等に溶かし、反応させることによって、4量体化してフタロシアニン骨格を形成させると共に、金属元素をフタロシアニン骨格中に配位させて化合物4を得る(iii)。次いで、化合物4に対して水酸基の脱保護反応を行うことで、上記式(VI)にかかる化合物5を得る(iv)。こうして得られた化合物5の、25℃における水に対する溶解度は50質量%程度である。
そしてステップ(v)に示すように、化合物5を、逆ディールス・アルダー反応させて得られる水酸基で置換したエチレン部分が脱離した化合物6は、25℃における水に対する溶解性を持たない化合物となる。
〔チオインジゴ系色素化合物〕
次に、前記した式(III)にかかり、水に対する溶解性を変化させることのできるチオインジゴ系色素化合物の具体例について説明する。
次に、前記した式(III)にかかり、水に対する溶解性を変化させることのできるチオインジゴ系色素化合物の具体例について説明する。
水に対する溶解性を変化させることができるチオインジゴ系化合物の合成方法について説明する。この化合物は、例えば、図2に示すスキームに従って合成することができる。水酸基を脱離部位に具備したチオインジゴ系化合物の場合には前述したテトラアザポルフィリン化合物と同じ1,1,2,2−テトラヒドロキシシクロヘキサジエンを出発原料として、ジシアノ化合物の代わりとして、プロピオール酸エステル等から誘導されるアセチレン化合物とディールス−アルダー反応させることによって脱離部位に水酸基を具備する化合物1を得る(i)。チオグリコール酸と共に水素化ナトリウムで還元することによって、化合物2を得る(ii)。リチウムジイソプロピルアミドで水素引き抜き反応を行い、環化することによって化合物3を得る(iii)。得られた化合物3を2量化反応させることによって、最終目的物の化合物4を得た(iv)。
〔本発明に係る記録方法について〕
本発明にかかる新規記録方法としては、該化合物を使用するものであれば、特に記録手段については限定するものではない。例えば、熱昇華型記録方式の場合は、本発明にかかる色素化合物を含むインクリボンを調製し、それを用いて記録させてもよいし、バーコーター、ロールコーター、刷毛塗りのような塗布手段で、画像情報に応じて記録媒体に色素化合物を塗布した後、逆ディールス−アルダー反応によって該化合物の構造を変換する方法によっても記録を行うことが可能である。
本発明にかかる新規記録方法としては、該化合物を使用するものであれば、特に記録手段については限定するものではない。例えば、熱昇華型記録方式の場合は、本発明にかかる色素化合物を含むインクリボンを調製し、それを用いて記録させてもよいし、バーコーター、ロールコーター、刷毛塗りのような塗布手段で、画像情報に応じて記録媒体に色素化合物を塗布した後、逆ディールス−アルダー反応によって該化合物の構造を変換する方法によっても記録を行うことが可能である。
本発明にかかる色素化合物の金属化合物の存在下での特性変化、例えば、顔料化反応のために必要なエネルギーの低減は、色素化合物と金属化合物との接触や金属化合物への色素化合物の吸着によるこれらの反応によって達成することができる。例えば、インクジェット記録の場合は、記録媒体に金属化合物を含有させておき、そこに本発明にかかる色素化合物を含むインクを付与する方法や、記録媒体に対して、本発明にかかる色素化合物と、金属化合物を含む液体と、を別々にこれら記録媒体上やその内部で接触できるよう付与する、又、複合的な方法として金属化合物に前駆体を吸着させた状態の化合物で記録する方法を挙げることができる。金属化合物によって、本発明にかかる色素化合物の特性を変化させた状態を記録媒体に得た段階で、熱等のエネルギーを付与すれば、本発明にかかる色素化合物の溶解性を変化させて画像を定着させることができる。
次に、インクジェット記録を例とした時の本発明にかかる色素化合物を含有するインク組成物について説明する。インク組成物中の含有量として好ましくは、色素化合物が0.1質量%〜10質量%である。該色素化合物の含有量がこれより少ないと効果が少なくなり、含有量がこれより多くなるとノズル先端での析出による固着等の問題を起こしやすくなり、好ましくない。
(インク組成物に使用される親水性媒体及びその他の添加剤)
本発明にかかるインク組成物は、前記した本発明にかかる色素化合物を親水性媒体に溶解してなるものが好ましい。親水性媒体としては、水と、下記に挙げるような水溶性有機溶媒との混合溶媒が好ましく使用できる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類等が挙げられる。
本発明にかかるインク組成物は、前記した本発明にかかる色素化合物を親水性媒体に溶解してなるものが好ましい。親水性媒体としては、水と、下記に挙げるような水溶性有機溶媒との混合溶媒が好ましく使用できる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般的にはインクの全質量に対して質量%で1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%の範囲である。上記の如き媒体を併用する場合は単独でも混合物としても使用できるが、好ましい水溶性有機溶剤は、1価アルコール類、ケトン類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、チオジグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びその誘導体(中でもそのアルキルエーテル類)である。
次に、本発明に基づく実施例を示し、本発明の効果をより明らかにするが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。尚、下記において次の略語を使用する。
・THF:テトラヒドロフラン
・DBU:1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン−7
・DMF:ジメチルホルムアミド
・LDA:リチウムジイソプロピルアミド
・THF:テトラヒドロフラン
・DBU:1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン−7
・DMF:ジメチルホルムアミド
・LDA:リチウムジイソプロピルアミド
[実施例1]
<テトラアザポルフィリン色素化合物の合成>
図1に記載のスキームに従ってテトラアザポルフィリン骨格を有する本発明にかかる色素化合物を合成した。
<テトラアザポルフィリン色素化合物の合成>
図1に記載のスキームに従ってテトラアザポルフィリン骨格を有する本発明にかかる色素化合物を合成した。
(化合物2の合成)
先ず、原料として、1,1,2,2−テトラヒドロキシシクロヘキサジエン(化合物1)の20%酢酸エチル溶液(25ml)を用意し、該溶液中の溶媒を減圧下で濃縮した。そこに、アセトン(30ml)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕跡量のp−トルエンスルホン酸を加えて、室温で4時間攪拌した。次に、10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、飽和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止し、その後、ジエチルエーテル(3×30ml)を用いて抽出操作を行った。そして、抽出操作後に得た有機層を飽和食塩水(3×30ml)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。この結果、上記化合物1の水酸基を保護した化合物2が、8.33g得られた。
先ず、原料として、1,1,2,2−テトラヒドロキシシクロヘキサジエン(化合物1)の20%酢酸エチル溶液(25ml)を用意し、該溶液中の溶媒を減圧下で濃縮した。そこに、アセトン(30ml)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕跡量のp−トルエンスルホン酸を加えて、室温で4時間攪拌した。次に、10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、飽和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止し、その後、ジエチルエーテル(3×30ml)を用いて抽出操作を行った。そして、抽出操作後に得た有機層を飽和食塩水(3×30ml)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。この結果、上記化合物1の水酸基を保護した化合物2が、8.33g得られた。
(化合物3の合成)
反応容器に、上記で得た化合物2(158mg)と、ジシアノアセチレン(230mg)を入れ、トルエン(2.00ml)を加えて、90℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィ(充填材:シリカゲル、展開溶媒:20容量%、酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、Rf=0.18(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)のフラクションを濃縮した。これらを再結晶することにより、化合物3が184mg得られた。得られた化合物3について、融点(mp)の測定、NMR及び赤外吸光分析(IR)を行った。その結果を下記に示す。
反応容器に、上記で得た化合物2(158mg)と、ジシアノアセチレン(230mg)を入れ、トルエン(2.00ml)を加えて、90℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィ(充填材:シリカゲル、展開溶媒:20容量%、酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、Rf=0.18(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)のフラクションを濃縮した。これらを再結晶することにより、化合物3が184mg得られた。得られた化合物3について、融点(mp)の測定、NMR及び赤外吸光分析(IR)を行った。その結果を下記に示す。
・mp:151.9−152.6℃
・1HNMR[溶媒:CDCl3、単位:δppm]7.87(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(dd、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(dd、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、1.22(s、3H)
・IR[KBr法、単位:/cm-1]2981w、1552s、1313s、1151s、1056s、727.0m、601.7m
・1HNMR[溶媒:CDCl3、単位:δppm]7.87(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(dd、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(dd、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(dd、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、1.22(s、3H)
・IR[KBr法、単位:/cm-1]2981w、1552s、1313s、1151s、1056s、727.0m、601.7m
(化合物4の合成)
反応容器に、上記で得た化合物3(365mg)を入れて、容器内を窒素置換した条件下で、dry−THF(5.00ml)に溶解させた。そこに、n−ブトシキマグネシウムのn−ブタノール溶液を加え、150℃の温度で加熱撹拌し、4量環化、金属錯体化を行った。反応終了後、酢酸エチル(3×20.0ml)で抽出操作を行った。抽出操作後の有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:5容量%酢酸エチル/クロロホルム)で分離し、Rf=0.41(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶することによって化合物4が283mgの収率で得られた。得られた化合物4について、融点(mp)の測定、NMR及び赤外吸光分析(IR)を行った。その結果を下記に示す。
反応容器に、上記で得た化合物3(365mg)を入れて、容器内を窒素置換した条件下で、dry−THF(5.00ml)に溶解させた。そこに、n−ブトシキマグネシウムのn−ブタノール溶液を加え、150℃の温度で加熱撹拌し、4量環化、金属錯体化を行った。反応終了後、酢酸エチル(3×20.0ml)で抽出操作を行った。抽出操作後の有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:5容量%酢酸エチル/クロロホルム)で分離し、Rf=0.41(5容量%酢酸エチル/クロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶することによって化合物4が283mgの収率で得られた。得られた化合物4について、融点(mp)の測定、NMR及び赤外吸光分析(IR)を行った。その結果を下記に示す。
・mp:114.9−146.3℃
・1HNMR[溶媒:CDCl3、単位:δppm]8.58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0Hz、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.30(s、3H)
・IR(KBr法、単位:/cm-1]3345s、2892w、1681s、1297m、1141s、1039s。
・1HNMR[溶媒:CDCl3、単位:δppm]8.58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0Hz、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.30(s、3H)
・IR(KBr法、単位:/cm-1]3345s、2892w、1681s、1297m、1141s、1039s。
(化合物5の合成)
反応容器に化合物4(289mg)を入れ、容器内を窒素置換した条件下で、THF(5.00ml)に溶解させた。ここに、1N塩酸(114mg)を加えて室温で1時間攪拌した。反応終了後、飽和食塩水(20ml)を加えて反応を停止し、反応溶液を、1%チオ硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、及び飽和食塩水(50.0ml)でそれぞれ洗浄した。得られた液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、これをカラムクロマトグラフィ(充填材:シリカゲル)で精製し、再結晶することで、水酸基が脱保護された水溶性フタロシアニン化合物5(収率39.8%)を得た。
反応容器に化合物4(289mg)を入れ、容器内を窒素置換した条件下で、THF(5.00ml)に溶解させた。ここに、1N塩酸(114mg)を加えて室温で1時間攪拌した。反応終了後、飽和食塩水(20ml)を加えて反応を停止し、反応溶液を、1%チオ硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、及び飽和食塩水(50.0ml)でそれぞれ洗浄した。得られた液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、これをカラムクロマトグラフィ(充填材:シリカゲル)で精製し、再結晶することで、水酸基が脱保護された水溶性フタロシアニン化合物5(収率39.8%)を得た。
[実施例2]
<チオインジゴ色素化合物の合成>
図2に記載したスキームに従って、チオインジゴ色素化合物を合成した。
<チオインジゴ色素化合物の合成>
図2に記載したスキームに従って、チオインジゴ色素化合物を合成した。
先ず、合成に使用した化合物1は、Tetrahedrn Letters,Vol.22,No.35,pp3347−3350,1981に従ってプロピオール酸エステルのチオフェニル化、ジメチルジオキシランでの酸化、テトラヒドロキシシクロヘキサジエンとのディールス−アルダー反応により合成した。次に、下記の式において[1]で示した化合物1を用いて、下記に述べるようにして[2]を合成した。
先ず、50mlナス型フラスコに、水素化ナトリウム(NaH、0.062g,2.60mmol)を入れ、窒素置換した条件下で、dry−DMF(2ml)を加えた後、水浴で冷やしたものを用意した。これとは別に、25mlナシ型フラスコに、前記した[1](0.200g,0.62mmol)を入れ、窒素置換した条件下で、dry−DMFを加え、チオグリコール酸(0.090ml,1.30mmol)を入れ、これをトランスファーチューブによって、先程用意した50mlのナス型フラスコ内にゆっくりと滴下し、1時間攪拌した。反応の終了をTLC(薄層クロマトグラフィ)によって確認してから、反応容器に0.1Mクエン酸水溶液をpH3になるまで加え、酢酸エチルで抽出操作を行った。抽出操作後の有機層を5%HClで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、その後、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:EtOAc/Hexane)により精製することで、目的物である[2]を得た(0.29g,収率:87.8%)。
先ず、25mlナス型フラスコに、窒素置換した条件下で、dry−THF(5.5ml)とジイソプロピルアミド(0.68ml,4.84mmol)を加えたあとで、0℃まで冷やし、この中にn−ブチルリチウムをゆっくり滴下した。そして、反応容器を−78℃まで冷やしたものを用意した。これとは別に、25mlナシ型フラスコに[2](0.325g,1.21mmol)を入れ、窒素置換した条件下で、dry−THF(2ml)を加えたものを用意し、これを先程の容器にトランスファーチューブにより滴下し、1時間攪拌した。反応終了をTLCにより確認してから、反応容器に5%HClをpH2になるまで加え、酢酸エチルVで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濃縮した。次に、濃縮したものをジクロロエタンに溶かし、濃塩酸を2,3滴加え、5時間攪拌し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(EtOAc/Hexane)により精製することで、目的物である[3]を得た(0.16g,収率:74%)。
先ず、50mlナス型フラスコに、上記で得た[3](0.120g,0.67mmol)を入れて、窒素置換した条件下で、dry−THFを加え、反応容器を−78℃まで冷やしたものを用意した。そして、これとは別に、25mlナス型フラスコに、窒素置換した条件下で、dry−THF(5.5ml)とジイソプロピルアミド(0.68ml,4.84mmol)を加えたあと、0℃まで冷やし、n−ブチルリチウムをゆっくり滴下したものを用意した。これを先程の50mlナス型フラスコに、トランスファーチューブにより加え、更にヨウ素(0.102g,0.80mmol)を加えて、3時間攪拌した。反応を水により停止し、酢酸エチルで抽出操作を行った。抽出操作後の有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。最後に、(EtOAc/Hexane)により精製することで、目的物であるチオインジゴ可溶性色材[4]を得た(0.027g,収率:23%)。
[実施例3及び4]
<インクジェット記録への応用検討>
上記したようにして得た実施例1及び2の色素化合物を、それぞれ限界濾過膜を用いて脱塩処理したものをそれぞれ用いて、下記の組成からなるインク組成物を調製し、実施例3及び4のインクジェット用インク組成物とした。この際、各色素化合物は、水及び水溶性有機性溶媒とを混合した親水性溶媒に容易に溶解した。
1)先に合成した色素化合物 5.0部
2)グリセリン 5.0部
3)尿素 5.0部
4)エチレングリコール 5.0部
5)水 80.0部
合計 100.0部
<インクジェット記録への応用検討>
上記したようにして得た実施例1及び2の色素化合物を、それぞれ限界濾過膜を用いて脱塩処理したものをそれぞれ用いて、下記の組成からなるインク組成物を調製し、実施例3及び4のインクジェット用インク組成物とした。この際、各色素化合物は、水及び水溶性有機性溶媒とを混合した親水性溶媒に容易に溶解した。
1)先に合成した色素化合物 5.0部
2)グリセリン 5.0部
3)尿素 5.0部
4)エチレングリコール 5.0部
5)水 80.0部
合計 100.0部
[比較例1]
実施例3或いは4で使用した色素化合物に代えて、フタロシアニン染料(C.I.ダイレクトブルー199)を用いた以外は実施例3或いは4と同様にして比較例のインクジェット用インク組成物を作成した。
実施例3或いは4で使用した色素化合物に代えて、フタロシアニン染料(C.I.ダイレクトブルー199)を用いた以外は実施例3或いは4と同様にして比較例のインクジェット用インク組成物を作成した。
[評価]
上記で得た実施例3及び4、比較例1の各インクを用いて、キヤノン株式会社製のインクジェットプリンタ(商品名:BJ−F870)を用いて記録媒体(商品名:PR−101;キヤノン株式会社製)に、縦−横1cm四方のカラーパッチを印刷した。実施例3或いは4のインクを用いて得られたカラーパッチは、室温に放置することで、各色素化合物を逆ディールス−アルダー反応させて、シアン色のカラーパッチに変換した。こうして得た実施例3及び4、並びに比較例1の各インクを用いて得られた記録物に関して、下記に述べるような方法及び評価基準で、耐光堅牢性、耐ガス堅牢性、耐水堅牢性、耐湿堅牢性の試験を行った。
上記で得た実施例3及び4、比較例1の各インクを用いて、キヤノン株式会社製のインクジェットプリンタ(商品名:BJ−F870)を用いて記録媒体(商品名:PR−101;キヤノン株式会社製)に、縦−横1cm四方のカラーパッチを印刷した。実施例3或いは4のインクを用いて得られたカラーパッチは、室温に放置することで、各色素化合物を逆ディールス−アルダー反応させて、シアン色のカラーパッチに変換した。こうして得た実施例3及び4、並びに比較例1の各インクを用いて得られた記録物に関して、下記に述べるような方法及び評価基準で、耐光堅牢性、耐ガス堅牢性、耐水堅牢性、耐湿堅牢性の試験を行った。
〔耐光堅牢性〕
以下の試験条件に従って、キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行った。本試験は、室内における窓越し太陽光を考慮した画像堅牢性試験である。又、評価は、下記の評価基準に従って行った。
以下の試験条件に従って、キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行った。本試験は、室内における窓越し太陽光を考慮した画像堅牢性試験である。又、評価は、下記の評価基準に従って行った。
試験条件:
・照射強度:70klx
・試験時間520時間
・試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
・フィルタ:ソーダライム(アウター)、ボロシリケート(インナー)
・照射強度:70klx
・試験時間520時間
・試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
・フィルタ:ソーダライム(アウター)、ボロシリケート(インナー)
評価基準:
上記耐光堅牢性試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐光堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率90未満〜80%
C:濃度残存率80%未満
上記耐光堅牢性試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐光堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率90未満〜80%
C:濃度残存率80%未満
〔耐ガス堅牢性〕
以下の試験条件(ANSI/ISA−S71.04−1985)に従って、ガス腐食試験機を用いて、ガス暴露試験を行った。本試験は室内における各種のガスの影響を考慮した画像堅牢性試験である。又、評価は、下記の評価基準に従って行った。
以下の試験条件(ANSI/ISA−S71.04−1985)に従って、ガス腐食試験機を用いて、ガス暴露試験を行った。本試験は室内における各種のガスの影響を考慮した画像堅牢性試験である。又、評価は、下記の評価基準に従って行った。
試験条件:
・暴露ガス組成:H2S=50ppb、SO2=300ppb、NO2=1250ppb、Cl2=10ppb、O3=1200ppb
・試験時間:72時間
・試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
・暴露ガス組成:H2S=50ppb、SO2=300ppb、NO2=1250ppb、Cl2=10ppb、O3=1200ppb
・試験時間:72時間
・試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH
評価基準:
上記耐ガス堅牢性の試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐ガス堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率90未満〜80%
C:濃度残存率80%未満
上記耐ガス堅牢性の試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐ガス堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率90%以上
B:濃度残存率90未満〜80%
C:濃度残存率80%未満
〔耐水堅牢性〕
得られた各記録物を水道水に5分間浸漬した後、引き上げて乾燥し、試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐水堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率2%未満
B:濃度残存率2〜4%未満
C:濃度残存率4%以上
得られた各記録物を水道水に5分間浸漬した後、引き上げて乾燥し、試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐水堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率2%未満
B:濃度残存率2〜4%未満
C:濃度残存率4%以上
〔耐湿堅牢性〕
得られた記録物を30℃・80%RHの恒温恒湿槽に1週間保管し、取り出して乾燥し、試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐湿堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率2%未満
B:濃度残存率2〜4%未満
C:濃度残存率4%以上
得られた記録物を30℃・80%RHの恒温恒湿槽に1週間保管し、取り出して乾燥し、試験前後における記録物の濃度をそれぞれ測定し、試験前の濃度に対する試験後の濃度の値を濃度残存率として求めた。そして、該濃度残存率を用いて耐湿堅牢性を以下の基準で評価した。
A:濃度残存率2%未満
B:濃度残存率2〜4%未満
C:濃度残存率4%以上
以上の各評価試験の結果を表1に示した。実施例については、変換前と変換後及び比較例のインク(ダイレクトブルー199)でまとめた結果を表1に示した。
以上のように、本発明にかかる記録方法を用いることによって、色素化合物を含有するインク組成物を記録媒体上で極めて低いエネルギーによって溶媒溶解系から非溶解系へと変換することができることがわかった。記録媒体上で、溶解特性を変化(低下)させることによって、色材の自己凝集を誘起し、優れた画像堅牢性を達成することが可能となった。一方、インクに対しては、従来の顔料インクのように高分子分散剤等をインクに添加する必要がない。即ち、本発明にかかるインク組成物は、従来の染料インクと、顔料インクとの双方の効果をいずれも享受することができるものである。また、脱離生成したエチレン誘導体はインク組成物中の成分に溶解してしまうため、画像堅牢性や画像品位に悪影響を与えるようなことはなかった。
本発明の活用例としては、加熱或いは光照射といった外部エネルギーの付与によって起こる逆ディールス−アルダー反応により、溶媒に可溶性の色素化合物の分子構造を変化させ、該前駆体化合物を顔料化するというメカニズムを用いることによって、従来の染料インクと、顔料インクとの双方の優れた効果を同時に享受することができる新たな記録方法が挙げられる。
Claims (5)
- 逆ディールス−アルダー反応後の分子が反応性を有していることを特徴とする請求項1に記載の色素化合物。
- 請求項1又は2に記載の色素化合物が親水性溶媒に溶解した状態で含有されていることを特徴とするインク組成物。
- 請求項3に記載のインク組成物を用いることを特徴とする記録方法。
- 請求項4に記載の記録方法によって記録されたことを特徴とする記録画像。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004261704A JP2006077103A (ja) | 2004-09-08 | 2004-09-08 | 色素化合物、インク組成物、記録方法及び記録画像 |
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JP2004261704A JP2006077103A (ja) | 2004-09-08 | 2004-09-08 | 色素化合物、インク組成物、記録方法及び記録画像 |
Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2004261704A Withdrawn JP2006077103A (ja) | 2004-09-08 | 2004-09-08 | 色素化合物、インク組成物、記録方法及び記録画像 |
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-
2004
- 2004-09-08 JP JP2004261704A patent/JP2006077103A/ja not_active Withdrawn
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