JP2006249197A - ハイドレートの貯蔵、輸送方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ハイドレートを効率的に保冷する貯蔵、輸送方法を提供する。
【解決手段】 混合ガスの成分を分割するハイドレート化を行い、複数のハイドレートを得、このうち一部のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱を利用して保冷し、貯蔵又は輸送することを特徴とするハイドレートの貯蔵、輸送方法。該貯蔵、輸送方法に用いる貯槽は、目的のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱により冷やす構造を有し、内槽1,外槽2間は熱伝導率の高い物質(金属類)による仕切り10があり、外槽2の外部に接した壁は十分な保温材9を用いることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハイドレートを保冷して貯蔵又は輸送する方法に関する。
従来のガスの貯蔵、輸送は、次のような問題があった。
ガスホルダーによる貯蔵、輸送は、常圧での取り扱いで、技術上の困難さは少ないが容積が大きくなり、非効率的な方法である。
CNGは(圧縮天然ガス)は、高圧ガス(20MPa程度以上)としての取り扱いが必要であり、高圧化するための動力も必要になる。
ANG(吸着天然ガス)は、数MPa(例えば3.5MPa)の圧力での貯蔵が可能であるが、極性ガスや沸点の高い成分が混合していると、その放散のために、減圧や過熱のエネルギーが必要で、一般的なハイドレート化のための所要エネルギーと比べても効率的とは言えない。
以上の従来技術はいずれも、メタン発酵ガス(バイオガス)の精製は別途行う必要がある。したがって、従来技術の例では次のようなシステムとなっていた。
バイオガス→アルカリ洗浄などによる二酸化炭素分離→メタンガスの圧縮(CNGもしくはANGの場合)による貯蔵、輸送
このため、トータルシステムとしてのコストは結果的にかなり大きくなり、このような利用形態は経済的に成立しにくい状態だった。
一方、ガスをハイドレート化すれば、比較的低圧で、コンパクトに貯蔵できると考えられる。バイオガス等の精製、貯蔵については、ハイドレート化による方法が検討、開発されている(非特許文献1参照)。
ハイドレートは、貯蔵、輸送の際、保冷が必要であるが、従来、効率的な保冷方法が見出されていなかった。
三井造船(株)、「バイオマス利活用技術情報交換会」資料、2004年
従って、本発明の目的は、ハイドレートを効率的に保冷する貯蔵、輸送方法を見出すことにある。
斯かる実情に鑑み本発明者は鋭意研究を行った結果、ハイドレート化により分割された目的外のハイドレートを保冷剤として用いれば、経済的に有利に目的とするハイドレートの貯蔵、輸送ができることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、次の方法を提供するものである。
<1> 混合ガスの成分を分割するハイドレート化を行い、複数のハイドレートを得、このうち一部のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱を利用して保冷し、貯蔵及び/又は輸送することを特徴とするハイドレートの貯蔵、輸送方法。
<2> 混合ガスがメタン発酵ガスであり、一部のハイドレートがメタンハイドレートであり、他のハイドレートが二酸化炭素ハイドレートあることを特徴とする<1>記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
<3> 内槽とそれを囲む外槽とを有する2重式の槽を用い、一部のハイドレートを内槽に、他のハイドレートを外側の槽に入れて、貯蔵及び/又は輸送することを特徴とする<1>又は<2>記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
<4> 内槽及び外槽の夫々のガス放出口に圧力調整機能を持たせて各槽内圧を調整することを特徴とする<3>記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
<5> ハイドレートが、ハイドレート−水−第三成分の混合物スラリーであって、該第三成分が酸、アルカリ、四級アミン類又は/及びテトラヒドロフラン類である<1>〜<4>の何れか1項記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
本発明によれば、低コストで効率的なハイドレートの貯蔵、輸送が実現できる。
本発明のハイドレートの貯蔵、輸送方法は、混合ガスを成分を分割するハイドレート化を行い、複数のハイドレートを得、このうち一部のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱を利用して保冷し、貯蔵又は輸送することを特徴とする。
(ガス)
本発明方法が適用可能なガスとしては、低級炭化水素を含有する燃料ガスが好ましく、例えばバイオガス(メタンおよび/もしくは水素を生成する嫌気性発酵ガス)、天然ガス、熱分解ガス、即ち、メタン、エタン、プロパン、アセチレン等の低級炭化水素、水素、窒素、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気等を含む嫌気性発酵ガス、熱分解ガス、天然ガス等が挙げられる。
(ハイドレート化)
まず、成分を分割するハイドレート化を行う。
メタンガスハイドレートは通常、水の氷点近くで、5MPa以上の圧力で生成させるが、そこに、酸、アルカリ、四級アミン類又は/及びテトラヒドロフラン類が共存すると、生成平衡はガス、液側にシフトするものの、より低圧(例えば1〜2MPa以下)でのハイドレート化が可能になる。従って、水のみではなく、水にこのような第三成分を溶解した液をハイドレート化に用いることが好ましい。このような化合物としてはテトラヒドロフラン(THF)及びその誘導体、並びに4級アミン類及びその塩から選ばれるものが好ましい。THFの誘導体としては、カルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、水酸基、ヒドロキシアルキル、その他の異元素がTHFの水素原子、炭素原子と置換された化合物が挙げられ、具体的には、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
4級アミン類及びその塩としては、4級アミン化合物の水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩又はカルボン酸塩等が挙げられ、具体的には、臭化テトラブチルアンモニウム(臭化TBA)、水酸化テトラブチルアンモニウム(水酸化TBA)、塩化テトラブチルアンモニウム(塩化TBA)等が挙げられる。
これらの濃度は、10〜50重量%程度が好ましい。
ハイドレート化に用いる槽としては気液接触によってハイドレート化する従来の槽が使用できる。例えば、三井造船(株)「バイオマス利活用技術情報交流会資料」の「CO2分離CH4濃縮のプロセス」および 産総研 第10回日本エネルギー学会要旨集 「ガスハイドレート生成速度」2001年に記載の槽が使用できる。
ハイドレート製造の際の温度は15℃以下が好ましく、圧力は1MPa以下が好ましい。圧力が1MPa以下であることは、法規制上非常に重要であり(高圧ガス取締法適用から除外される)、また、装置も簡便なものとすることができる。上記のTHF、4級アミン類を用いれば1MPa以下でもハイドレート化は可能である。
メタン発酵ガス(バイオガス、二酸化炭素、メタン、硫化水素混合系)の貯蔵、輸送の場合、目的は燃料であるメタン回収、輸送、および貯蔵であり、ある程度の二酸化炭素と大部分の硫化水素は精製工程で除去されることが好ましい。二酸化炭素と硫化水素はメタンよりも水に対する溶解度が大きく、また、より低い圧力およびより高い温度でハイドレート化する。混合ガスの場合、これらのガスは共役して挙動するため、混合ガスから二酸化炭素と硫化水素だけをハイドレートとして完全に分離することはできない。そこで、まず、メタンがほとんどハイドレート中に入って来ない領域までのハイドレート化を行い、二酸化炭素、硫化水素ハイドレートのスラリー(ハイドレート濃度5〜20%程度の水・ハイドレートスラリー)を製造する。この工程後のガスを加圧下、冷水による洗浄を行い、残りの硫化水素と二酸化炭素を吸収除去し、精製メタンを得る。そして、例えば、5MPa、2℃の条件にてメタンハイドレートスラリー(ハイドレート濃度10〜30%程度のスラリー)を製造する。
(貯蔵、輸送)
メタンハイドレートなどのガスハイドレートは水を除いたものを固化すると、その表面に氷の薄層が生成し、ハイドレート分解を著しく遅くする自己保存効果をもつ。しかし、ここで製造した二種類のハイドレートスラリーは自己保存効果がなく、放置すれば熱の侵入に任せてハイドレートが分解してゆく。
従って、一方のハイドレートで他方のハイドレートを保冷するようにして、貯蔵、輸送を行う。この際、ハイドレートを種類ごとに貯蔵し、一方のハイドレートへ冷熱を供給するために、もう一方のハイドレートを任意に分解させ、その乖離熱を利用することが好ましい。ハイドレートを分解させるこの方法によって混合ガスの精製、貯蔵、輸送を統一的に行い、バイオガス(メタン発酵ガス)の効率的な利用システム実現することができる。バイオガスの場合は二酸化炭素ハイドレート冷熱(乖離熱)でメタンハイドレートを保冷し、その結果、一部の二酸化炭素は大気中に放散するが、これはバイオマス由来の二酸化炭素であり、新たな地球温暖化ガスの放散とはならない。貯蔵・利用地もしくは輸送目的地において、二酸化炭素ハイドレートは解凍による冷熱採取と二酸化炭素回収(温室利用、ボンベガス化、メタンへの変換等)とによる有効利用を図ることが望ましい。
この方法によって、メタンハイドレートの比較的低圧の保存が可能になり、所要エネルギーとして、最も効率的なバイオガス精製、貯蔵、輸送システムが実現できる。
本発明の貯蔵、輸送方法に用いる貯槽は、目的のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱により冷やす構造であれば特に限定されない。
好ましい実施態様としては、ハイドレートの貯槽を2重にし、内側の槽にメタンハイドレートスラリー、外側の槽に二酸化炭素、硫化水素ハイドレートスラリーを入れ、それぞれの圧力を調節する方法が挙げられる。この方法によれば、メタンハイドレートの分解をほぼ100%防止することが可能になる(槽内圧力によって温度は決定される。)。外側の槽からは二酸化炭素と硫化水素がハイドレート分解によって放散するため、ガス放散口に脱硫装置(例えば、生物脱硫装置)を取り付けて、硫化水素の大気放散を防止することが好ましい。
水・ガス系からのハイドレート生成熱はメタンが58.1kJ/mol(102.7kcal/kg)、二酸化炭素が65.2kJ/mol(90.0kcal/kg)と同程度に大きく、二酸化炭素ハイドレート乖離熱を利用したメタンハイドレート保存は両槽の圧力を制御(ある値に設定)するだけで容易に実現できる。圧力の制御はガス放散口に調整弁を設けることによって実現できる。例えば、外側の二酸化炭素、硫化水素ハイドレート槽の圧力を1.2MPaに調整すると、その槽内温度はほぼ0℃になり、内側の槽内圧力を2.8MPaに調整すれば、メタンハイドレートの分解は防止できる。外側の槽に共存する硫化水素ハイドレートは二酸化炭素ハイドレートに比べて一般に量がかなり少ないため、平衡温度にほとんど影響しない。
上記第三成分を用いた系においては、例えば外側の槽内圧を0.5MPaで、内側の槽内圧を0.9MPaに設定して、メタンハイドレートの分解を防止することが可能である。第三成分の添加は生成し得るハイドレート濃度を低下させるが、メタンハイドレートを比較的薄い濃度のスラリーとして扱う場合は実質的にそれが支障になることはない。
本発明に用いる具体的な貯槽としては、図1に示すものが挙げられる。内槽1、外槽2間は熱伝導率の高い物質(金属類)による仕切り10があり、外槽2の外部に接した壁は十分な保温材9を用いることが好ましい。また、管理上、圧力計、温度計を持つことが好ましい。
なお、貯槽をそのままハイドレート生成槽とすることもできる(第2図)。
また、圧力調整弁類、即ち、ばねや重量物を利用したリリースバルブなどの圧力調整弁を設けることが好ましい。
貯槽内の圧力は、ハイドレートの種類によって異なるが、例えば、二酸化炭素ハイドレートを外槽に入れる場合は0.20〜0.95MPaが好ましく、特に0.50〜0.95MPa程度が好ましい。メタンハイドレートを内槽で貯蔵する場合は、外槽のハイドレートの種類によっても変わるが、二酸化炭素ハイドレートのとき、0.70〜0.95MPa程度が好ましく、特に0.80〜0.95MPa程度が好ましい。温度は各圧力によって、平衡曲線からほぼ一義的に決定される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
バイオガス−純水系のハイドレート化システムでメタンの精製、貯蔵(輸送)を行った。ガス組成および精製、貯蔵条件は以下の通りとした。
バイオガス組成:メタン58%、二酸化炭素42%、硫化水素:0.05%
精製条件:
5L気液混合攪拌(完全混合槽)型リアクターによる二酸化炭素・硫化水素ハイドレート生成・・・5MPa、5℃、約20%スラリーとして抜き出した。
気液混合攪拌型(完全混合槽)型リアクターによる二酸化炭素・硫化水素吸収・・・5MPa、10℃、吸収後の液は大気開放して放散してから再使用した。放散ガスは空気を混合して消化液を間歇的に降らせた炭素繊維フェルト充填層を通して脱硫し、大気放散した。本リアクター後のガス組成はメタン95%、二酸化炭素5%、硫化水素10ppmであった。
メタンハイドレート生成条件:
上記と同じ5Lリアクターを用いて、5MPa、2℃にてメタンハイドレートを生成した。本リアクターでは導入ガス全量をハイドレートとして取り込むため、非常用を除いてガスの出口は設けていない。
約15%のメタンハイドレートスラリーを抜き出し、本発明用の2重式の輸送用貯蔵タンクに入れた。(図1、内槽容積125L、外槽容積90L、外槽の大気と接する面は100mmのグラスウールを中心とする保温材で保温。)
貯蔵効果の確認:図1に示す貯蔵槽の外槽に二酸化炭素ハイドレートスラリー約75L、内槽にメタンハイドレートスラリー約80Lを入れて放置した。圧力は、外槽1MPa、内槽5MPaとした。放置期間中それぞれのリリースバルブに積算型流量計を取り付けて、放出されるガスの量を、また、ガスクロマトグラフでその組成を1週間ごとに測定した。1週間後から5週間後までは外槽からの二酸化炭素はほぼ一定量ずつ放散したが、内槽からのガス発生は測定できなかった。6週間後からは二酸化炭素の放散量が低下する傾向が顕著に見られ、それに伴って、内槽からのメタン発生が明瞭に見られるようになった。本試験において、5週間後までは二酸化炭素ハイドレート乖離による冷温の保持ができていたが、二酸化炭素ハイドレートがほぼなくなったと考えられる6週間後からは温度の維持ができなくなり、メタンハイドレートの乖離が始まったものと考えられる。
なお、両槽ともにメタンハイドレートスラリーを入れた場合は、貯蔵開始直後から外槽からメタンが放散し、外槽からのメタン発生量が低下した4週間後からは内槽からのメタン発生を検出した。
実施例2
実施例1と同様な試験をバイオガス−15%四級テトラブチルアンモニウム塩化物水溶液系で行った。今回はハイドレート生成圧を0.95MPaに低下させた。今回の場合は二酸化炭素放散量低下とメタン放散の発生が5週間後から見られた他は実施例1と同じく、低圧で良好なメタン保持性能を示した。
本発明方法によれば、低圧で効率よく、ガスの貯蔵、輸送ができる。また、混合ガスの精製、貯蔵、輸送を統一的に行い、ガスの効率的な利用システム実現することができる。特にバイオガスの場合は二酸化炭素ハイドレート冷熱でメタンハイドレートを保冷し、その結果、一部の二酸化炭素は大気中に放散するが、これはバイオマス由来の二酸化炭素であり、新たな地球温暖化ガスの放散とはならない。
本発明に用いる貯槽の断面を示す図である。 ハイドレート生成を兼ねた貯槽を示す図である。
符号の説明
1 内槽
2 外槽
3 内槽側ハイドレート投入口
4 外槽側ハイドレート投入口
5 内槽側リリース弁
6 外槽側リリース弁
7 内槽側ハイドレート取出口
8 外槽側ハイドレート取出口
9 保温材
10 内槽,外槽の隔離板
11 内槽側ハイドレート生成用攪拌機
12 外槽側ハイドレート生成用攪拌機
13 内槽へのガス導入管
14 外槽へのガス導入管

Claims (5)

  1. 混合ガスの成分を分割するハイドレート化を行い、複数のハイドレートを得、このうち一部のハイドレートを、他のハイドレートの冷熱を利用して保冷し、貯蔵及び/又は輸送することを特徴とするハイドレートの貯蔵、輸送方法。
  2. 混合ガスがメタン発酵ガスであり、一部のハイドレートがメタンハイドレートであり、他のハイドレートが二酸化炭素ハイドレートあることを特徴とする請求項1記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
  3. 内槽とそれを囲む外槽とを有する2重式の槽を用い、一部のハイドレートを内槽に、他のハイドレートを外側の槽に入れて、貯蔵及び/又は輸送することを特徴とする請求項1又は2記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
  4. 内槽及び外槽の夫々のガス放出口に圧力調整機能を持たせて各槽内圧を調整することを特徴とする請求項3記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
  5. ハイドレートが、ハイドレート−水−第三成分の混合物スラリーであって、該第三成分が酸、アルカリ、四級アミン類又は/及びテトラヒドロフラン類である請求項1〜4の何れか1項記載のハイドレートの貯蔵、輸送方法。
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