以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態のメス付きミシン1の全体像を示す斜視図、図2はミシン本体部の斜視図である。この実施の形態のメス付きミシン1は、縫製を行いながら被縫製物を切断していく機能の他に、本発明の特徴である、縫製部の運転停止後にメスの運動を制動する機能、並びに、重ね縫いを行う際にメスの運動を停止させる機能を有するミシンである。
このメス付きミシン1は、ミシン本体部2、ミシンテーブル4、ミシン駆動装置としての縫製部駆動装置5、制御装置7、メス駆動部100およびメス機構200等から構成されている。ミシン本体部2には縫製部としてのミシン針3aや布押え3bが設けられ、ミシンテーブル4にはペダル8やひざ上げパッド9が設けられている。また、制御装置7にはペダル8に連動してオン/オフする縫製部起動スイッチ7aやメス起動スイッチ7bなどが設けられ、ミシン本体部2の内部には、布押え3bの上昇を感知する布押えセンサ7c(図5)が設けられている。
図3には、メス機構200の部分の拡大側面図を示す。メス機構200は、ミシンのフレームに固定された軸受け20、アーム21、動メス22、ミシンのフレームに固定された固定メス23並びにメス駆動軸27からなり、メス駆動軸27の揺動(往復回転運動)によって動メス22が上下に揺動することで、動メス22と固定メス23との間に布(被縫製物)を挟んで、この布を切断するようになっている。ここで、動メス22が最も上がった位置が上死点、最も下がった位置が下死点である。
固定メス23は、その上端に刃部を備え、この刃部が針板24の上面とほぼ同位置になるように配置されている。動メス22は、固定メス23に対向する刃部22aと、布を刃部22aまで導く上側の上爪22bと下側の下爪22cとを備えている。上爪22bは、刃部22aの先に設けられている。この動メス22は、アーム21を止着しているネジ21a,21aを緩めることで前後方向(図中、左右方向)に位置調整可能になっている。
図4には、メス駆動部100の内部機構の側面図を示す。メス駆動部100は、メス駆動装置としてのメス駆動モータ31や、メス駆動モータ31の運動をメス機構200に伝達する伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)、並びに、動メス22の揺動量を変更するための調節機構(支持杆45、連結リンク43、レバー42(図2))、メス駆動部100の運動を制動する制動機構(ブレーキパッド54、ブレーキリング55、ブレーキアーム52、連結リンク57、アクチュエータ50)、メス駆動部100の停止時に動メス22の位置を上死点に誘導するバネ材47などから構成されている。
メス駆動モータ31は、ミシンの縫製部(ミシン針3aや布押え3b)を駆動する縫製部駆動装置5とは別個に独立して設けられており、制御装置7に設けられたメス起動スイッチ7bのオン/オフにより、回転駆動の開始/停止を行うようになっている。このメス駆動モータ31は、非通電時のトルクが比較的軽いものを使用しており、非通電時には、バネ材47の作用力がまさって、メス駆動モータ31の回転部の回転位置がバネ材47の作用力方向に戻されたり進められたりするようになっている。
伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)は、メス駆動モータ31の回転運動を揺動運動に変換してメス機構200に伝達するものである。揺動挺34は連結ピン35を介して支持杆45に回動可能に支持されている。駆動ロッド33、揺動挺34および連結リンク39は、連結ピン36により互いに回動可能な状態に連結されている。二つの連結リンク38,39は、連結ピン40により回動可能に連結されている。メス駆動軸27は軸受け20(図3)等に回動可能に支持されている。
調節機構(支持杆45、連結リンク43、レバー42(図2))は、レバー42を上下に操作することで、揺動挺34を支持している支持杆45の位置を変更し、この位置の変更により上記伝動機構の揺動挺34の軌道を変更して、上記伝動機構の運動の伝達量を変更するものである。レバー42は連結ピン41を介して、支持杆45は連結ピン44を介して、それぞれ回動可能な状態で基枠に支持されている。そして、連結リンク43がレバー42と支持杆45を連結している。つまり、この調節機構と上記の伝動機構とが合わさって可変伝動機構を構成している。
制動機構(ブレーキパッド54、ブレーキリング55、ブレーキアーム52、連結リンク57、アクチュエータ50)は、アクチュエータ50の作動によりブレーキリング55とブレーキパッド54とを接触させて、この接触部の摩擦抵抗を利用してメス駆動部100の慣性運動を制動するものである。ブレーキリング55はメス駆動モータ31の回転部に取り付けられる一方、ブレーキパッド54は、ブレーキアーム52と連結リンク57を介して、アクチュエータ50の作動子51に連結され、そのブレーキアーム52は、連結ピン53を介して回動可能な状態で基枠に支持されている。
上記のアクチュエータ50は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、バネ材56の作用によりその作動子51を引っ込めた状態、即ち、ブレーキパッド54とブレーキリング55とを離らせた状態にあるが、布押えセンサ7cによる布押え3b上昇の検出出力に基づき通電された場合には、作動子51を押し出す方向に作動して、ブレーキパッド54とブレーキリング55とを接触させるようになっている。
なお、アクチュエータ50の作動力は、メス駆動モータ31の慣性動を停止させる程度の強度で良く、更に、メス駆動モータ31の通電時の駆動に影響を与えない程度の強さにしておくことで、布押え3bを上昇させたまま動メス22を駆動させたい場合でも、該駆動を行うことが出来る。
バネ材47は、その一端側が基枠に、他端側が駆動ロッド33上に設けられたピン46に固定され、常時、駆動ロッド33に力を及ぼすようになっている。このバネ材47の作用力は、メス駆動モータ31の非通電時のトルクより大きく、通電時のトルクより小さいものになっている。このようなトルクにより、メス駆動モータ31への通電時には、メス駆動モータ31の回転駆動に支障を与えない一方、メス駆動モータ31への非通電時には、バネ材47の作用力により該バネ材47が最も縮むところまでメス駆動モータ31の回転部を回転させ、伝動機構の位相を所定の位相位置に戻す(或いは進める)ようになっている。そして、この所定の位相位置が動メス22がほぼ上死点になる位置に設定されている。
図5には、布押え3bの昇降機構の概略模式図を示す。布押え3bは、布を正しい方向に送るために縫製中に布を押さえる従来の一般的なもので、例えば、ひざ上げパッド9に連結され、該ひざ上げパッド9を操作することで上昇して布を解放したり下降して布を押えたりするようになっている。
詳細には、布押え3bは、バネ材2aの作用により下方に押圧された状態で且つ上下動可能な状態に、軸受け2bに支持されている。ひざ上げパッド9は、押し棒9a、リンク9b、連結棒9c、引上げリンク9dに連結されており、ひざ上げパッド9を左に回動させることで、引上げリンク9dが押え棒抱き2cを引っ掛けて布押え3bを上昇させるようになっている。
布押えセンサ7cは、上記布押え3bの昇降機構の途中に配設され、例えば光センサや磁気センサなどにより、布押え3bの上昇を検出するものである。
また、図示しないが、制御装置7には、縫製部を起動させる縫製部起動スイッチ7a、メス駆動部100を起動させるメス起動スイッチ7b、布押えセンサ7c、縫製部駆動装置5の駆動モータ、メス駆動モータ31、並びに、アクチュエータ50などが接続されており、上記の各スイッチからのスイッチ信号やセンサからのセンサ信号が入力されると共に、これら信号に基づき、上記各モータやアクチュエータへの通電/非通電の制御を行うようになっている。
つまり、上記布押えセンサ7cと制御装置7とが、布押え3bの上昇に連動させてメス制動モータ31を作動させる連動手段を構成している。
次に、上記のような構成のミシン1の動作について説明する。先ず、縫製物をミシン1の縫製部に載置し布押え3bを下げて縫製物をセットした後、作業者がペダル8を踏み込むことで、縫製部起動スイッチ7aとメス起動スイッチ7bとがほぼ同時にオン操作されて、これらスイッチのオン信号がほぼ同時に制御装置7に入力される。
制御装置7に縫製部起動スイッチ7aのオン信号が入力されると、このオン信号の入力に基づき制御装置7で制御がなされて、縫製部駆動装置5の駆動モータに通電が行われミシン1の縫製部が駆動する。また、制御装置7にメス起動スイッチ7bのオン信号が入力されると、このオン信号の入力に基づく制御装置7の制御により、メス駆動モータ31に通電が行われてメス駆動部100が駆動する。
メス駆動部100が駆動すると、該メス駆動部100の運動がメス駆動軸27を介してメス機構200に伝達されて、動メス22が上下に揺動運動する。上記のような、縫製部の駆動および動メス22の揺動により、縫製物に例えば縁かがり縫いなどの縫製が行われていくと共に、縫製物の動メス22と固定メス23とで挟まれた部分に切断が行われていく。
縫製の終了時や縫製箇所の変更時には、作業者がペダル8を上げることで、縫製部起動スイッチ7aとメス起動スイッチ7bとがほぼ同時にオフ操作されて、これらスイッチのオフ信号がほぼ同時に制御装置7に入力される。そして、このオフ信号に基づく制御装置7の制御により、縫製部駆動モータおよびメス駆動モータ31への通電が停止される。
縫製部駆動モータへの通電が停止すると、直ちに縫製部(ミシン針3aや布送りなど)の動きが停止する。一方、メス駆動モータ31は非通電時のトルクが比較的に小さいものを使用しているため、メス駆動モータ31の通電が停止しただけでは、メス機構200等の慣性により動メス22の動きは縫製部の停止の後も若干続いてしまう。
縫製の終了時や縫製箇所の変更時には、作業者は縫製作業を効率良く行うべく、ペダル8を上げて縫製部を停止させた後、すぐにひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させる。布押え3bが上昇すると、該布押え3bが上昇したことを布押えセンサ7cが検出して、この検出信号を制御装置7に出力する。
布押えセンサ7cから検出信号が入力されると、制御装置7の制御によりメス駆動部100のアクチュエータ50へ通電が行われ、該アクチュエータ50が縮む方向に作動してブレーキパッド54とブレーキリング55が接触する。そして、この接触によりメス駆動部100の動作が停止して、動メス22の慣性による動作が停止される。
つまり、メス駆動モータ31の通電の停止後に動メス22の動きが慣性により続いてしまう場合でも、布押え3bを上昇させることでメス駆動部100の動きが制動されて上記慣性による動メス22の動作が直ちに停止される。
また、メス駆動部100の動きが停止する際には、バネ材47が作用して駆動ロッド33が引き戻されて伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)の位相が所定位置に戻され、動メス22がほぼ上死点の位置で停止される。
なお、アクチュエータ50の作動力は、メス駆動モータ31の慣性動を停止させる程度の強度で良く、更に、メス駆動モータ31の通電時の駆動に影響を与えない程度の強さにしておくことで、布押え3bを上昇させたまま動メス22を駆動させたい場合でも、該駆動を行うことが出来る。
以上のように、この実施の形態のミシン1によれば、メス駆動モータ31の運転停止後に制動機構(ブレーキパッド54やブレーキリング55など)が動メス22の運動を制動するので、メス駆動モータ31および伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)等の慣性力による動メス22の余分な運動が制止されることとなって、従来のミシンにあった、縫製部の停止後にメスがしばらく動き続けてしまうと言った不具合を解消することが出来る。
即ち、メスがしばらく動いてしまうことで作業者に違和感を与え、作業効率を低下させてしまうといった不具合や、縫製停止後に間違えて布を切断してしまうといった不具合を解消することが出来る。
また、制動機構による動メス22の運動の制動は、メス駆動モータ31の運転の停止時の全てではなく、布押さえ3bの上昇に連動させて行われるので、制動機構の作動回数が必要最小限の数になり、特にブレーキパッド54やブレーキリング55などの制動機構の長寿命化が計れる。
なお、本発明は、この実施の形態のメス付きミシン1に限られず、例えば、メスの種類としては、動メスと固定メスとで布を挟んで切断するタイプの他、布に対して上下に摺動して切断するのこぎりタイプのものでも良いし、その他、伝動機構や制動機構の構成や配置など、具体的に示した細部構造等は、発明の主旨に逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態のメス付きミシンは、第1の実施の形態のメス付きミシン1とその制動機構の構成のみ異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図6は、第2の実施の形態のメス駆動部100Aの内部機構を上方から眺めた図である。この実施の形態の制動機構は、メス駆動モータ31の回転部に対し該回転部のスラスト方向(回転軸線方向)から接触して(詳細には偏心カム32に接触して)制動作用を及ぼすものであり、図6に示すように、アクチュエータ60、リンク63、リンク65、ブレーキリンク66、ブレーキ部材67、および、制動機構に介在する弾性部材としてのバネ材69などから構成される。
アクチュエータ60は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、バネ材62の作用によりその作動子61を引っ込めた状態、即ち、ブレーキ部材67のパッド部67Bと偏心カム32とを離らせた状態にあるが、布押えセンサ7cによる布押え3b上昇の検出主力に基づき通電された場合には、作動子61を引っ込む押し出す方向に作動して、ブレーキ部材67のパッド部67Bを偏心カム32に接触させるようになっている。
リンク63は、回動ピン64により回動可能に支持され、一端側をアクチュエータ60の作動子61に、他端側をリンク65に接続されている。リンク65は、一端側をリンク63に他端側をブレーキリンク66に接続されている。ブレーキリンク66は、回動ピン68により回動可能に支持され、一端をリンク65に、他端をブレーキ部材67に接続されている。
上記のリンク65とブレーキリンク66との接続は、リンク65に設けられた長孔65aを介して、該長孔65aの長さだけ可動な状態で行われている。また、ブレーキリンク66にはバネ材69が掛けられていて、該バネ材69の押圧力により、上記ブレーキリンク66とリンク65との接続点が、長孔65aの一端側、即ち、ブレーキ部材67が偏心カム32に接触する側になっている。
つまり、ブレーキリンク66とリンク65との接続点は、通常は、バネ材69の押圧力(弾性力)により押され且つ長孔65aの一端に当接して静止した状態にあるが、ブレーキ部材67を偏心カム32側から押した場合、バネ材69の押圧力を負荷した状態で長孔65aの一端から他端に架けて移動するようになっている。
ブレーキ部材67は、偏心カム32と接触して摩擦抵抗により偏心カム32の運動を制動させるものである。ブレーキ部材67の先端側には偏心カム32と接触するブレーキパッド67Bが設けられ、他端側には双股に割れた双股部67A,67Aが設けられている。この双股部67A,67Aは、ブレーキ部材67を一定の方向に向かせておくためのもので、ブレーキリンク66に設けられた爪片66Aに係止されてブレーキ部材67を一定の方向に係止するようになっている。
次に、この実施の形態のメス付きミシン1、主に、上記構成のメス駆動部100Aの動作について説明する。
縫製の終了時や縫製箇所の変更時に、作業者がペダル8を上げて縫製部を停止させた後、ひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させると、この布押え3bの上昇を検出した布押えセンサ7cの検出出力に基づく制御装置7の制御により、メス駆動部100Aのアクチュエータ60への通電が行われる。
アクチュエータ60に通電が行われると、該アクチュエータ60の作動子61が引っ込む方向に作動して、リンク63,65を介して該運動が伝達される。リンク65が図中右方向に移動すると、リンク65とブレーキリンク66との接続点が長孔65aの一端側から他端側に移動して、ブレーキリンク66がバネ材69に押圧され、ブレーキ部材67が偏心カム32にバネ材69の押圧力(弾性力)で押圧される。
そして、ブレーキパッド67Bと偏心カム32との接触抵抗により、メス駆動部100Aの運動に制動が働いて動メス22の動作が直ちに停止される。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシン1によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、動メス22の制動がバネ材69の弾性力を介して行われるので、制動力が衝撃的でなく、緩衝されて及ぼされることとなって、制動により機構全体に及ぼされる負担をやわらげることが出来る。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態のメス付きミシンは、第1の実施の形態のメス付きミシン1とその制動機構の構成のみ異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図7は、第3の実施の形態のメス付きミシンのテーブル4の内部機構を上方から眺めた上面透視図である。同図中、3cは布送り、22は動メス、23は固定メス、27はメス駆動軸、100Bはメス駆動部である。この実施の形態の制動機構は、動メス22と固定メス23との接触圧力(メス圧)を高めることで動メス22の制動を行うもので、弾性部材としてのメス圧バネ70、スラスト受け71、可動式バネ受け板72、並びに、アクチュエータ73等から構成される。
メス駆動軸27は、軸線方向に可動的に支持される共に、一端側がバネ材70により押圧された状態にあり、他端側が動メス22を介して固定メス23に当接した状態にある。バネ材70は、メス駆動軸27に設けられたスラスト受け71と可動式バネ受け板72とに挟まれており、このバネ受け板72がアクチュエータ73の作動により位置可変になっている。
アクチュエータ73は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、バネ受け板72を押し出した状態、即ち、メス圧バネ70の押圧力により動メス22と固定メス23とが通常のメス圧で接触した状態にあるが、布押え3bが上昇したことに基づき通電された場合には、バネ受け板72を引張る方向に作動して、メス圧バネ70の押圧力を高めるようになっている。
このアクチュエータ73は、ネジ75,75の止着位置を長孔に沿ってずらすことで、その固定位置をメス駆動軸27の軸線方向に調整可能になっていると共に、作動ストロークも調整可能になっている。つまり、これら2つの調整機構が、弾性力調整手段を構成しており、この2つの調整により、アクチュエータ73が作動した時のメス圧バネ70の押圧力の調整が可能になっている。
このような構成の制動機構によれば、縫製の終了時や縫製箇所の変更時に、作業者がひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させると、布押えセンサ7cの検出出力に基づく制御装置7の制御により、アクチュエータ73へ通電が行われ、バネ受け板72が移動してメス圧バネ70の押圧力が高くなる。そして、このメス圧バネ70の押圧力が高くなることで、動メス22が固定メス23に強く押圧されて、動メス22の運動が制動され直ちに停止される。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシンによれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、動メス22の制動がメス圧バネ70の弾性力を介して行われるので、制動力が衝撃的でなく、緩衝されて及ぼされることとなって、制動により機構全体に及ぼされる負担をやわらげることが出来る。
更に、アクチュエータ73の固定位置の調整および作動ストロークの調整により、メス圧バネ70の弾性力を調整することが可能であるので、メス機構、メス駆動モータ31、伝動機構、および制動機構などの各部品のバラツキ等により制動特性が変化した場合でも、上記メス圧バネ70の弾性力を変化させて、その制動特性の変化に対応した適切な制動力に設定することが出来る。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態のメス付きミシンは、第1の実施の形態のメス付きミシン1とその制動機構の構成のみ異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図8は、第4の実施の形態のメス駆動部100Cの内部機構を示す側面図である。この実施の形態の制動機構は、切欠部80Aに係止爪としてのブレーキ腕81を係合させて動メス22の運動を停止させるもので、ブレーキ板80、ブレーキ腕81、第1停止手段としてのアクチュエータ84、および、リンク83等から構成される。
ブレーキ板80は、メス駆動モータ31の回転部に固定されており、その回転方向の所定の位相位置に切欠部80Aが設けられている。この切欠部80Aの形成位置は、切欠部80Aとブレーキ腕81とが係合した状態で動メス22がほぼ上死点に来る位置になっている。
ブレーキ腕81は、その先端部が切欠部80Aと係合する係止爪になっており、支軸82に回動可能に支持されてリンク83によりアクチュエータ84の作動子84aと連結されている。
アクチュエータ84は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、戻しバネ85の作用により作動子84aを押し出した状態、即ち、ブレーキ腕81の先端部をブレーキ板80から離らせた状態にあるが、通電された場合には、作動子84aを引張る方向に作動して、ブレーキ腕81の先端部とブレーキ板80とを接触させるようになっている。
このような構成の制動機構によれば、縫製の終了時や縫製箇所の変更時に、作業者がひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させると、布押えセンサ7cの検出出力に基づく制御装置7の制御により、アクチュエータ84へ通電が行われ、ブレーキ腕81の先端部がブレーキ板80に接触する。
ブレーキ腕81の先端部がブレーキ板80に接触した後、ブレーキ板80は切欠部80Aがブレーキ腕81の位置に来るまで回転を続け、その後、ブレーキ腕81の先端部と切欠部80Aとが係合されて、メス駆動モータ31の回転が停止される。即ち、布押え3bを上げた後、動メス22がほぼ上死点にきた状態で直ちに停止される。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシンによれば、第1の実施の形態のメス付きミシンと同様の効果に加え、ブレーキ腕81と切欠部80Aとの係合によりメス駆動モータ31の回転部が停止するので、動メス22の停止を極めて短時間に行うことが可能となり、しかも、その停止位置は確固に決まるので、動メス22の停止位置を確実にほぼ上死点にすることが出来る。
なお、本発明は、この実施の形態のメス付きミシンに限られず、例えば、切欠部の設けられる箇所は、メス駆動装置(メス駆動モータ31)の回転部に限られず、該メス駆動装置にリンクされた機構に設けても良い。そして、該切欠部と係止爪を係合させることでリンク機構を停止するようにすれば良い。
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態のメス付きミシンは、第1の実施の形態のメス付きミシン1とその制動機構の構成のみ異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図9には、第5の実施の形態のメス駆動部100Dの内部機構の側面図を示す。この実施の形態の制動機構は、メス駆動モータ31の回転運動を動メス22に伝達する伝動機構に対して、メスを駆動させる方向と反対の向きに力を及ぼすことで動メス22の運動を制動させるもので、アクチュエータ90、および、弾性部材としてのバネ材47D等から構成される。
バネ材47Dは、一端がアクチュエータ90の作動子91上のピン92に、他端がメス駆動ロッド33のピン46に掛けられ、揺動運動するメス駆動ロッド33に対して該揺動運動の所定の位相位置に向かって作用力を及ぼすようになっている。ここで、上記所定の位相位置は、動メス22がほぼ上死点にくる位置に設定されている。
このバネ材47Dのバネ力は、アクチュエータ90が作動していない場合、メス駆動モータ31の非通電時のトルクより強く、メス駆動モータ31の通電時のトルクより弱いものになっている。また、アクチュエータ90が作動してその作動子91が引っぱられた場合、メス駆動モータ31の非通電時のトルクに対してより強い(メス駆動モータ31の慣性動がすぐに停止する程度に強い)バネ力になっている。
アクチュエータ90は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、バネ材47Dの作用により作動子91を押し出した状態にあるが、布押え3bの上昇に基づき通電された場合には、作動子91を引張る方向に作動させて、メス駆動ロッド33に対するバネ材47Dの作用力を増加させるようになっている。
また、このアクチュエータ90は、取付け板94の長孔94a,94aを介して基枠に固定されており、その固定位置を作動子91の作動方向に変更可能にしている。また、このアクチュエータ90には、作動子91の動作距離を調整する調整手段(調整ナット)93が設けられている。
つまり、これら長孔94a,94aと調整手段93とが弾性力調整手段を構成しており、長孔94a,94aを介してアクチュエータ90の固定位置および作動子91の動作距離を調整することで、アクチュエータ90の非通電時におけるバネ材47Dのバネ力と、通電時におけるバネ材47Dのバネ力とが調整可能になっている。
このような構成の制動機構によれば、縫製の終了時や縫製箇所の変更時に、作業者がひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させると、布押えセンサ7cの検出出力に基づく制御装置7の制御により、アクチュエータ90へ通電が行われ、作動子91が作動してバネ材47Dの引張力が増加する。
バネ材47Dの引張力が増加すると、メス駆動ロッド33の慣性運動が進まず、バネ材47Dが最もメス駆動ロッド33を引っ張った位置で停止する。即ち、布押え3bを上げた後、動メス22の運動が直ちにほぼ上死点で停止する。
以上のように、この第5の実施の形態のメス付きミシンによれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、動メス22の制動がバネ材47Dの弾性力を介して行われるので、制動力が衝撃的でなく、緩衝されて及ぼされることとなって、制動により機構全体に及ぼされる負担をやわらげることが出来る。
更に、アクチュエータ90の固定位置の調整および調整ナット93による作動子の作動量の調整により、バネ材47Dの弾性力を調整することが可能であるので、メス機構、メス駆動モータ31、伝動機構、および制動機構などの各部品のバラツキ等により制動特性が変化した場合でも、上記バネ材47Dの弾性力を変化させて、その制動特性の変化に対応した適切な制動力に設定することが出来る。
また、制動機構の制動力によって動メス22の停止位置が上死点になるように制動されるので、動メス22の停止時に確実に動メス22を上死点にもっていくことが出来る。従って、ミシン停止時における縫製物のミシンへの出し入れや縫製物の取り扱いを簡単にすることが出来る。
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態のメス付きミシンは、第1の実施の形態のメス付きミシン1とその制動機構の構成のみ異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図10には、第6の実施の形態のメス駆動部100Eの内部機構の側面図を示す。この実施の形態の制動機構は、ブレーキパッド101Aを偏心カム32の側面に接触させることで動メス22の運動を制動させると共に、該ブレーキパッド101Aの押圧により偏心カム32の停止位置を所定の位相位置にするもので、アクチュエータ104、リンク103、および、ブレーキ腕101等から構成される。
ブレーキ腕101は、その先端にブレーキパッド101Aが設けられ、回動軸102により回動可能に支持されている。このブレーキ腕101はリンク103を介してアクチュエータ104の作動子104aに連結されている。また、ブレーキ腕101の回動によるブレーキパッド101Aと偏心カム32との接触位置は、ブレーキパッド101Aが偏心カム32を最も押した位置が、動メス22がほぼ上死点にくる位置に設定されている。
アクチュエータ104は、例えばソレノイドなどから構成され、非通電時には、バネ材105の作用により作動子104aを押しだした状態、即ち、ブレーキパッド101Aを偏心カム32から離らせた状態にあるが、布押え3bの上昇に基づき通電された場合には、作動子104を引張る方向に作動させて、ブレーキパッド101Aを偏心カム32の側面に押圧するようになっている。
このような構成の制動機構によれば、縫製の終了時や縫製箇所の変更時に、作業者がひざ上げパッド9を操作して布押え3bを上昇させると、布押えセンサ7cの検出出力に基づく制御装置7の制御により、アクチュエータ104へ通電が行われて、作動子104aが作動しブレーキパッド101Aが偏心カム32の側面に押圧される。
ブレーキパッド101Aが偏心カム32の側面に押圧されると、その接触抵抗により偏心カム32の回転に制動が負荷されると共に、偏心カム32を最も押した位相位置で停止させる。即ち、布押え3bを上げた後、動メス22の運動が直ちにほぼ上死点で停止する。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシンによれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、制動機構の制動力によって動メス22の停止位置が上死点になるように制動されるので、動メス22の停止時に確実に動メス22を上死点にもっていくことが出来る。従って、ミシン停止時における縫製物のミシンへの出し入れや縫製物の取り扱いを簡単にすることが出来る。
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態のメス付きミシンは、新たな構成として、動メス22の停止位置を下死点側に押し下げる停止機構が備わっている点で、第1の実施の形態のメス付きミシン1と異なり、その他の構成はほぼ同様のものである(第1の実施の形態の制動機構は省略している)。従って、第1の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成およびその作用のみ説明を行う。
この実施の形態のメス付きミシンは、縫製を行いながら被縫製物を切断していく機能や、縫製物の送りを逆転して返し縫いを行う機能に加え、本発明の特徴である、返し縫いが行われた際にメスの運転を停止すると共にメスの停止位置を下死点側に下げる機能を有するミシンである。
このメス付きミシンには、図示しない逆送りスイッチや逆送りレバーなどが設けられ、該スイッチ又はレバーを操作することで、布送りの動きを逆転させるようになっている。また、このメス付きミシンには、図示しない逆送りセンサーが設けられており、布送りが逆転した場合に、この逆転を検出して制御装置7に出力するようになっている。
また、この実施の形態のメス付きミシンの制御装置7は、布送りセンサーからの検出出力に基づき、布送りの運動が逆転した場合に、メス駆動モータ31への通電を停止して後述のアクチュエータ111に通電を行うようになっている。即ち、この制御装置7が、布の送り方向が逆転したことに連動させて動メス22の駆動を停止させる第2停止手段を構成している。また、この制御装置7によるメス駆動モータ31への通電の停止は、布送りの運転が逆転してから開始され、この逆転から再び通常の向きに戻されるまでの2倍の時間間隔行われるようになっている。
図11には、第7の実施の形態のメス駆動部100Fの内部機構の側面図を示す。この実施の形態のメス駆動部100Fには、メス駆動装置としてのメス駆動モータ31や、メス駆動モータ31の運動をメス機構200に伝達する伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)、メス駆動部100の停止時に動メス22の位置を上死点に誘導するバネ材47、動メス22の揺動量を変更するための調節機構(支持杆45、連結リンク43、レバー42)、並びに、動メス22を下死点側に押し下げて停止させる第2停止手段を構成する停止機構(アクチュエータ111、押し下げ板110)などが設けられている。
停止機構(アクチュエータ111、押し下げ板110)は、メス駆動モータ31から動メス22側に運動を伝達するメス駆動ロッド33に対して、所定の方向(図示例では左上から右下)に力を作用させることで、動メス22を下死点側に停止させるものである。
押し下げ板110は、アクチュエータ111に接続されて該アクチュエータ111の作動によりその位置を変化させるようになっている。この押し下げ板110には、案内リング110Aが設けられ、該案内リング110Aにメス駆動ロッド33上のピン46が挿入されている。この案内リング46は、ピン46に比べて大きく形成されており、通常時(動メス22の駆動時)には、ピン46と接触せずにメス駆動ロッド33の運動に支障を与えないようになっているが、アクチュエータ111が作動した際には、ピン46を案内してメス駆動ロッド33の停止位置を確実に所定の位置まで押し込むようになっている。
アクチュエータ111は、非通電時には、戻しバネ112の作用により押し下げ板110を引き戻した状態、即ち、案内リング110Aをピン46と接触させない状態にしているが、通電時には、押し下げ板110を押し出す方向に作動させて、該押し下げ板110でピン46を所定の方向(図示例では左上から右下)に押圧するようになっている。
このアクチュエータ111は取付基部114を基枠に止着されて固定されていると共に、この固定位置がアクチュエータ111の作動方向に調整可能になっている。また、調整ナット113は、アクチュエータ111の作動ストロークを調整するものである。これらアクチュエータ111の固定位置の調整機構および作動ストロークの調整機構は、刃部停止位置調整手段を構成しており、これらの調整により、メス駆動ロッド33の押し下げ位置すなわち動メス22の停止位置を調整可能になっている。
次に、この実施の形態のメス付きミシンの動作について説明する。例えば、縫製の縫い始めや縫い終わりなどに重ね縫いを行う場合、作業者は縫製中に逆送りスイッチや逆送りレバーを操作して、布の送りを反転させる。布の送りが反転されると、布送りセンサーが布送りの反転を検出してこの検出信号を制御装置7に出力し、該検出信号に基づき制御装置7が、メス駆動モータ31への通電を停止すると共に(或いは比較的短い時間間隔をおいて)、アクチュエータ111に通電を開始する。
メス駆動モータ31への通電が停止されると、比較的短い時間間隔をおいてメス駆動モータ31や伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)の駆動が停止される。更に、アクチュエータ111の通電が開始されると、押し下げ板110がメス駆動ロッド33を所定の位置まで押し下げる。そして、動メス22が下死点側の所定の位置まで下げられて停止する。
ここで、動メス22の停止位置は、動メス22の刃部22aが針板24の上面より沈んだ位置で、且つ、動メス22の案内爪22bが針板24の上面より浮いた位置に設定されている。この設定により、動メス22の側面部が布の縁に接して布をガイドすると共に、案内爪22bが布をガイドして、再び動メス22を駆動させる際に布を押し上げて動メス22から外してしまうのを防止する。
布の送りを反転させて返し縫いを所定ストローク行った後、作業者が逆送りスイッチや逆送りレバーを操作するか、或いは、自動的に、布送りの運動が順転方向に戻される。その後、上記逆転から順転に戻されるまでの時間が更に経過するまで、メス駆動モータ31への通電が停止されると共に、アクチュエータ111への通電が続けられる。
上記の動メス22が停止している間に、同じ縫製箇所において片道で1.5往復の重ね縫いが行われる。
布送りの運動が順転方向に戻されて、更に上記逆転から順転に戻されるまでの時間が経過すると、制御装置7の制御により、メス駆動モータ31への通電が再び開始されると共に、アクチュエータ111への通電が停止される。そして、通常の縫製に戻される。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシンによれば、布の送り方向が逆転した場合に動メス22の駆動が停止されるので、例えば重ね縫いを行う際など、切断した箇所が再びメスの横を往復するときにメスの運動が停止することとなり、この往復する間に間違った所を切断してしまうといった不具合を防ぐことが出来る。
また、布送りが逆転されて布の切断箇所がメスの横を往復する際、動メス22はその刃部22aを布の送り面より下方に位置させた状態で停止し、動メス22の側面が布の切断箇所に沿ってガイドの役割をするので、布が動メス22の刃部22aに引っかかることなく、スムーズに動メス22の横を往復することが出来る。
また、アクチュエータ111の固定位置や作動ストローク量を調整することで、布送りが逆転される際の動メス22の停止高さが調整可能であるので、多種多様な縫製に合わせて動メス22の停止高さを適切なものにすることが出来る。
なお、本発明は、この実施の形態のメス付きミシンに限られず、例えば、動メス22を下死点側で停止させる停止機構は、メス駆動ロッド33に力を作用させることで上記の停止を行っているが、メス駆動モータ31や伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)並びにメス機構200などに力を作用させることで上記の停止を行うようにしても良い。また、布送りの逆転に伴う動メス22の停止を、メス駆動モータ22への通電の停止により行っているが、メス駆動モータ31や伝動機構を制動することで停止させるようにしても良い。その他、具体的に示した細部構造等は、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態のメス付きミシンは、第7の実施の形態と、動メス22の停止位置を下死点側に押し下げる停止機構の構成のみが異なり、その他の構成はほぼ同様のものである。従って、第7の実施の形態と同様の構成については、同符号を振って説明を省き、異なる構成のみ説明を行う。
図12は、第8の実施の形態のメス駆動部の内部機構を示す側面図である。この実施の形態の停止機構(第3停止手段)は、メス駆動モータ31からメス機構200に伝達される運動量を変更する伝動量変更機構(支持杆45、連結リンク43)や、モータ120、並びに、駆動アーム122等から構成される。
上記の伝動量変更機構(支持杆45、連結リンク43)は、上述したように揺動梃35の支点位置を変更することで、伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)の伝動量を変更するものである。
この伝動量変更機構は、動メス22の動きを所定の位置を中心に拡大縮小するように設定されており、この所定の位置が、動メス22の刃部22aが布板23より低くなり、動メス22の案内爪22bが布板23より高くなる位置になっている。
モータ120は、パルスモータ等のサーボモータから構成されており、回転軸121および駆動アーム122をその回転位置を制御可能に回転させるものである。このモータ120は、制御装置7に接続され、該制御装置7の制御により所定の回転位置で回転制御されるようになっている。駆動アーム122はリンク43に連結され、該駆動アーム122の回動により上記伝動量変更機構を動かして伝動機構の伝動量を変化するようになっている。
次に、この実施の形態のメス付きミシンの動作について説明する。例えば、重ね縫いを行う際に、作業者は縫製中に逆送りスイッチや逆送りレバーを操作して、布の送りを反転させると、布送りセンサーが布送りの反転を検出してこの検出信号を制御装置7に出力し、該検出信号に基づき制御装置7が、モータ120に制御信号を出力して、モータ120を所定量だけ回転させる。
モータ120が所定量だけ回転すると、リンク43を介して支持杆45が回動し、揺動梃34の支持軸35の位置が所定量だけ移動して、伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)の伝動量が変更される。ここで、前記モータ120の回転量および支持軸35の位置の移動量は、上記伝動機構の伝動量がほぼ「0」になる量に設定されている。
即ち、動メス22が、動メス22の刃部22aが針板24の上面より沈んだ位置で、且つ、動メス22の案内爪22bが針板24の上面より浮いた位置にほぼ停止される。
布の送りを反転させて返し縫いを所定ストローク行った後、作業者が逆送りスイッチや逆送りレバーを操作するか、或いは、自動的に、布送りの運動が順転方向に戻される。その後、上記逆転から順転に戻されるまでの時間が更に経過するまで、モータ120の回転制御は行われない。
そして、動メス22が停止している間に、同じ縫製箇所において片道で1.5往復の重ね縫いが行われる。
布送りの運動が順転方向に戻されて、更に上記逆転から順転に戻されるまでの時間が経過すると、制御装置7の制御により、動メス22に回転軸121および駆動アーム122を元の位置まで戻す制御信号が出力され、伝動機構(偏心カム32、駆動ロッド33、連結リンク38,39、揺動梃34、メス駆動軸27)の伝動量が元に戻されて、通常の縫製に戻る。
以上のように、この実施の形態のメス付きミシンによれば、第7の実施の形態と同様の効果に加え、動メス22の停止が、メス駆動モータ31から動メス22まで運動の伝達を行う伝動機構の伝動量を小さくすることで行われるので、メス駆動モータ31を運転を停止することなく動メス22だけをほぼ停止することが出来る。従って、重ね縫いを行う際など、布送りの送り方向を短時間で逆転・再逆転する場合に、メス駆動モータ31への負担を軽減できて都合が良い。
なお、本発明は、この実施の形態のメス付きミシンに限られず、例えば、伝動量変更機構を動かす手段としてサーボモータを使用しているが、回転量の制御が効かないモーターやソレノイドなどのアクチュエータを用いても良く、伝動量変更機構の移動量の制御は例えばストッパーを設けて、該ストッパーを伝動量変更機構に当接することでその移動量を制御するようにしても良い。また、第1〜第6の実施の形態では、布押え3bの上昇に連動させて動メス22の運動を制動したり強制停止したりしたが、この第1〜第6の実施の形態で示した、動メス22の運動を制動したり強制停止したりする手段を用いて、布送りの逆転時に動メス22の運動を制動したり強制停止しても良い。また、第7、第8の実施の形態では、布送りの逆転時に動メス22の運動の停止(又は揺動量の縮小)および停止位置の強制移動を行っていたが、この第7、第8の実施の形態で示した、動メス22の運動の停止(又は揺動量の縮小)および停止位置の強制移動を、布押え3bの上昇に連動させて行うようにしても良い。但し、布押え3bの上昇と連動させる場合には、動メス22の停止位置を上支点側に設定すると良く、そうすることで、布のセット・交換等が行い易く都合が良い。