JP2006244903A - 基体表面処理方法およびこれを用いた基体表面処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】大面積を均一に処理することが可能であると共に、これ以外の処理も容易且つ柔軟に行うことができる基体表面処理方法および基体表面処理装置を提供すること。
【解決手段】電源18に負荷抵抗14Aを介して接続され、電源18により電圧が印加される第1の電極12Aと、第1の電極12Aに対向配置された第2の電極13Aとの間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する方法および装置であって、第1の電極12Aが、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、負荷抵抗14Aが、2つ以上の電極12Aの各々に対応して設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、大気圧あるいは大気圧近傍の圧力下で発生させるプラズマを利用して、基体表面を処理する基体表面処理方法およびこれを用いた基体表面処理装置に関するものである。
従来より、アモルファスシリコンの製造や薄膜の形成法としては、真空中でのグロー放電を利用したプラズマCVD法が利用されており、また、固体表面の改質には、プラズマを利用した表面改質技術が利用されている。このようなプラズマを利用した産業用技術においては、近年、材料や適応分野の多様化、高品質化、一層の低価格化、効率化などが求められいるため、大気圧下でプラズマを発生させて利用しようという動きが活発である。
成膜や、表面処理(表面改質)のために、大気圧あるいは大気圧近傍の圧力下での放電によりプラズマを発生させる方法(以下、「大気圧プラズマ処理法」と称す)としては、従来より、Heなどの希ガスを用い、少なくとも一方の電極が誘電体で被覆された電極を用いて高周波放電を行うことが知られており、多くの提案がなされている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
大気圧での安定したグロー放電を持続させるための条件としては、(1)kHz以上の高周波電圧を用いること、(2)導電性材料の表面が誘電体で被覆された電極(以下、「誘電体被覆電極」と称す場合がある)を用いること、および、(3)希釈ガスとしてHeを使用することが必要とされている(非特許文献1参照)。特に、誘電体被覆電極表面を被覆する誘電体で発生した電荷により形成される電界が、プラズマを安定的に持続する役割を果たす効果が大きい。このため、大気圧プラズマ処理法においては、電極として誘電体被覆電極を使用することは欠かせない条件となっている(特許文献4参照)。
さらに、ランニングコストの低価格化を目指して、Heの代わりに窒素やArなどの低価格のガスを用いた大気圧プラズマ処理方法としては、パルス高周波電源を用いた方法が提案されている(特許文献5参照)。
この方法は誘電体被覆電極を用いる点では従来の大気圧プラズマ処理法と同様であるが、高周波電源としてパルス高周波電源を用いることによって、Heの代わりに窒素やArのようなガスを用いても大気圧下での安定したグロー放電を持続させることができる。これは、通常、大気圧下で窒素やArのようなガスを利用して放電を行った場合、僅かな時間発生するグロー放電からアーク放電へと直ぐに移行するが、パルス高周波を利用してアーク放電へと移行する前に高電圧印加を停止することにより安定なグロー放電を持続させることができるためである。
特開平2−80577号公報 特開平4−74525号公報 特開2003−3266号公報 特開2003−55771号公報 特開平10−154598号公報 岡崎ら、静電気学会誌15,p222−229,1991
しかしながら、誘電体被覆電極を用いて大気圧近傍下で発生させるプラスマを利用した処理を行う基体表面処理装置は、対向配置された2つの電極間で発生するプラズマが均一であるため、基体表面が大面積であっても処理対象となる面内を均一に処理できるが、高周波電圧を利用しなければならないため、装置に使用する電源が複雑且つ高価な高周波電源に限られてしまう。
加えて、面内の一の部分を処理し、他の部分を処理しないような単純なパターニング処理は、マスクを用いれば可能ではあるものの、これ以上複雑なパターニング処理を行うことは困難である。すなわち、複雑なパターニング処理を行うには、マスクを用いて複数回の処理を行ったり、フォトリソグラフィ等の利用が必要となる。
このため、誘電体被覆電極を用いた基体表面処理装置を、大面積を均一に処理する以外の用途で利用することは、困難である上に、生産性を大幅に低下させる。さらに、多品種少量生産に対応しなければならないような場合、特に、製品毎に、基体サイズが異なったり、ある製品では均一大面積処理が必要で、他の製品では複雑なパターニング処理が必要な場合等においては、フレキシビリティに欠ける。また、装置が大型である場合、この装置に対してサイズの小さい基体や、基体表面の限られた狭い領域のみを選択的に処理したい場合においても対向する2つの電極間全体で放電を行う必要がある。それゆえ、処理する基体のサイズや面積に応じた小型の装置を用いる場合と比べると処理に要するエネルギーのロスも大きい。
本発明は上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、大面積を均一に処理することが可能であると共に、これ以外の処理も容易且つ柔軟に容易に行うことができる基体表面処理方法およびこれを用いた基体表面処理装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、まず、高周波電圧を用いなくてもよい大気圧下でのプラズマを用いた基体表面処理方法について鋭意検討した。
この場合、誘電体被覆電極を用いると放電自体ができなくなるため、表面が導電性材料からなる電極を用いることになる。一方、大面積に対応するためには、対向する2つの電極の放電面は面状や線状のように広がりを持つ必要がある。しかし、表面が導電性材料からなる電極では、電圧が印加される側の電極(第1の電極)から、対向する電極(第2の電極)への放電は、大気圧近傍下では、真空下と異なり、第1の電極の放電面上の任意の点を起点として第2の電極側へと円錐状に広がるように放電が起こる。また、この放電が起こる起点は、時間と共に第1の電極上の任意の位置に移動する。このため、大面積の基体表面を均一に処理することは不可能である。
しかしながら、第1の電極の放電面上の任意の点を起点として発生する放電(以下、「点放電」と称す場合がある)により発生するプラズマも、極めて狭い領域に限定した場合には、均一性が確保されていると考えられる。従って、本発明者らは、点放電を面状あるいは線状に密集して発生させれば、全体として、擬似的に均一な面状あるいは線状の放電を行うことができ、第1の電極と第2の電極との間に均一なプラズマが形成できると考えられる。
すなわち、第1の電極を、各々が点放電を行う複数の電極に分割すれば、各々の電極の放電面で点放電が発生する位置が移動しても、点放電が発生する位置は極めて狭い領域に限定されるため、複数の点放電が重なって形成されるプラズマの均一性は十分に確保される。それゆえ、大面積であっても均一な処理が可能となる。
また、個々の点放電を独立して制御することができれば、第1の電極と第2の電極との間に発生するプラズマの状態を部分的に異なる状態に制御することができる。従って、これを利用すれば、パターニング処理等のような、大面積の均一処理以外の処理も容易且つ柔軟にも容易に対応することができると考えられる。
本発明者らは、以上に説明した知見に基づき、以下の本発明を見出した。すなわち、本発明は、
<1>
電源に負荷抵抗を介して接続され、前記電源により電圧が印加される第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理方法において、
前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、
前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられたことを特徴とする基体表面処理方法である。
<2>
前記第1の電極および前記第2の電極の表面が導電性材料からなり、前記第1の電極に直流電圧または低周波電圧が印加されることを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<3>
前記第1の電極に直流の負電圧を印加することを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<4>
前記プラズマが発生する領域、および、前記プラズマが発生する領域と前記基体表面との間の領域から選択される少なくともいずれかの領域に、補助ガスを供給することを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<5>
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、互いに隣接する一の電極と他の電極とを区切り、且つ、前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れるガスが前記基体表面側へと流れるように、仕切り板が設けられたことを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<6>
前記基体表面をパターニング処理することを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<7>
前記He含有ガスが、前記基体表面を修飾する元素を含むガス、炭素とフッ素とを含むガス、水素ガスおよび窒素ガスから選択される少なくともいずれかのガスを含むことを含むことを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<8>
前記補助ガスが、水素、窒素、酸素、炭素、フッ素、チタン、亜鉛、錫、および、インジウムからなる群より選択される元素を含むガスを1種類以上含むことを特徴とする<4>に記載の基体表面処理方法である。
<9>
前記処理が、表面処理であることを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<10>
前記表面処理が、前記基体表面のフッ素処理、または、シラノール処理であることを特徴とする<9>に記載の基体表面処理方法である。
<11>
前記処理が、薄膜の形成であることを特徴とする<1>又は<4>に記載の基体表面処理方法である。
<12>
前記薄膜が、炭素系化合物、フッ化炭素系化合物、非単結晶シリコン半導体、非単結晶窒化シリコン、非単結晶酸化シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム錫、および、13族元素を含む化合物から選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする<11>に記載の基体表面処理方法である。
<13>
前記基体の形状が、円筒状またはフィルム状であることを特徴とする<1>又は<4>に記載の基体表面処理方法である。
<14>
前記基体が、有機高分子からなることを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<15>
前記基体が、電子写真感光体であることを特徴とする<1>に記載の基体表面処理方法である。
<16>
第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極と、前記第1の電極に電圧を印加する電源と、該電源と前記第1の電極とを接続する負荷抵抗と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給するHe含有ガス供給手段とを備え、
前記電源により電圧が印加された第1の電極と、前記第2の電極との間に、前記He含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、前記基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理装置において、
前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、
前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられたことを特徴とする基体表面処理装置である。
<17>
前記第1の電極および前記第2の電極の表面が導電性材料からなり、前記第1の電極に直流電圧または低周波電圧が印加されることを特徴とする<16>に記載の基体表面処理装置である。
<18>
前記電源が直流電源であり、前記第1の電極が負電極であることを特徴とする<16>に記載の基体表面処理装置である。
<19>
前記第1の電極および前記第2の電極と、前記基体との間に、補助ガスを供給する補助ガス供給手段を設けたことを特徴とする<16>に記載の基体表面処理装置である。
<20>
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、互いに隣接する一の電極と他の電極とを区切り、且つ、前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れるガスが前記He含有ガス供給手段側から前記排気手段側へと流れるように、仕切り板が設けられたことを特徴とする<16>に記載の基体表面処理装置である。
<21>
前記第1の電極と前記第2の電極との間を通過し、前記基体表面近傍を通過した前記He含有ガスを含むガスを、廃ガスとして、前記第1の電極、前記第2の電極および前記基体を含む反応系外へと排気する排気手段を備え、
前記廃ガスが、前記Heガスと水素ガスとを少なくとも含む<16>に記載の基体表面処理装置であって、
前記Heガスおよび前記水素ガスを、前記He含有ガスとして再利用する廃ガス再生手段を有し、
前記廃ガス再生手段が、前記廃ガスを回収する廃ガス回収手段と、回収された前記廃ガス中に含まれる前記Heガスと水素ガスとのの混合比を測定するガス混合比測定手段と、前記Heガスと前記水素ガスとの混合比を一定割合に調整して再生ガスを得るガス混合比調整手段と、前記再生ガスを前記He含有ガス供給手段に供給する再生ガス供給手段とを含むことを特徴とする<16>に記載の基体表面処理装置である。
<22>
前記廃ガス再生手段が、前記廃ガスを液体窒素により冷却して、前記廃棄ガス中から前記液体窒素の液温よりも高い沸点を有するHe含有ガス成分を液化して除去する気液分離手段と、
前記He含有ガス成分が除去された廃ガス中の前記Heガスおよび前記水素ガス以外の補助ガス成分を吸着剤により除去する吸着手段とを有することを特徴とする<21>に記載の基体表面処理装置である。
以上に説明したように本発明によれば、大面積を均一に処理することが可能であると共に、これ以外の処理も容易且つ柔軟に行うことができる基体表面処理方法およびこれを用いた基体表面処理装置を提供することができる。
(基体表面処理方法)
本発明の基体表面処理方法は、電源に負荷抵抗を介して接続され、前記電源により電圧が印加される第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理方法において、前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられたことを特徴とする。
本発明において、第1の電極および第2の電極の表面(放電面)が誘電体被覆電極で被覆されない電極(すなわち、放電面が導電性材料からなる電極)である場合には、放電は点放電となる。しかし、第1の電極は、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2以上の電極からなるため、第1の電極の放電は、擬似的に2次元的な広がりを有する。このため、全ての電極における放電が一定となるように制御すれば、大面積を均一に処理することが可能である。また、各々の電極における放電を互いに異なるように制御すればパターニング処理等も可能である。
なお、互いに隣接する一の電極と他の電極との間隔は特に限定されないが、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることが更に好ましく、小さければ小さい程よい。間隔が20mmを超える場合には、如何様に放電条件を制御しても第1の電極と第2の電極との間に発生するプラズマが不均一とならざろう得ないため、大面積を均一に処理することができなくなる。また、間隔が20mm以下であれば微細で精緻なパターニング処理を行うこともできる。なお、電極のサイズや、これに接続される負荷抵抗のサイズの小型化の限界の点から、実用上、間隔は0.05mm以上であることが好ましい。
ここで、当該間隔とは、一の電極の放電面の中心点と、他の電極放電面の中心点との直線距離を意味する。
例えば、点放電が確率的に放電面のいずれの箇所でも等しく発生するような場合には、放電面内の中心点と中心点との直線距離を意味する。例えば、放電面が平たい円状であれば、円の中心と中心との直線距離を意味する。
また、点放電が確率的に放電面の特定の箇所に偏って発生するような場合には、当該箇所を中心点とみなす。すなわち、放電面内の特定の箇所と特定の箇所との直線距離を意味する。例えば、電極が、第2の電極側に向かって尖った突起部を1つ有する円錐状や、四角錐状等の突起点をひとつ有する立体的な形状の場合は、この突起点と突起点との直線距離を意味する。
また、互いに隣接する一の電極と他の電極とは絶縁されていることが必要である。両者が導通している場合には、点放電は、いずれか一方の電極でしか発生しなくなる。このため、大面積を均一に処理しようとしても、第1の電極と第2の電極との間に発生するプラズマが不均一となるため、大面積を均一に処理することができなくなる。
さらに、電源と、第1の電極を構成する各々の電極とは負荷抵抗を介して接続されている必要がある。全ての電極において、安定したグロー放電を行うために、電極に印加される電圧を制御するためである。
しかしながら、本発明においては、負荷抵抗が電極の各々に対応して設けられていることが必要である。これにより、各々の電極に印加される電圧を独立して制御することができるため、第1の電極と第2の電極との間に発生するプラズマ全体を均一にすることができるのみならず、第1の電極と第2の電極との間に発生するプラズマの発生状態を、両電極間の一の部分と他の部分とが異なるように任意に制御することができる。従って、後者の場合には、基体表面の複雑なパターニング処理や、基体表面の一部のみを選択的に処理することが極めて容易となる。
また、第1の電極および第2の電極の大きさに対して、処理する対象となる基体表面のサイズが小さい場合や、基体表面の一部の領域のみを処理したい場合には、第1の電極と第2の電極との間に、基体表面のサイズや、基体表面の処理したい領域に合わせて部分的にプラズマを発生させることもできる。それゆえ、基体の表面処理に際して、使用するエネルギーの浪費を抑制することもできる。
以上に説明したように本発明の基体処理方法は、従来の誘電体被覆電極を用いた基体表面処理方法と同様に、大面積を均一に処理することができる。加えて、従来の誘電体被覆電極を用いた基体表面処理方法では困難であった、複雑なパターニング処理等も容易に行うことができため、生産性に優れるのみならず、多品種少量生産への対応等、様々なニーズに応じた柔軟な基体表面処理が可能である。
なお、勿論、電極の放電面が誘電体で被覆され、高周波電圧を印加して放電を行う場合であっても、電極同士が上述したように互いに隣接して配置されているため、大面積を均一に処理することができる。
しかしながら、第1の電極に高周波電圧を印加するために必要な高周波電源は、複雑且つ高価であるため、本発明の基体表面処理方法を利用した基体表面処理装置の構成も複雑で、コストも高くなってしまう。
かような実用的観点からは、第1の電極に印加される電圧は、高周波電源よりも構成が単純で安価な電源である直流電源や低周波電源による直流電圧や低周波電圧であることが好ましい。なお、これらの電源は、誘電体被覆電極を用いない場合には、第1の電極における放電は点放電となるものの、本発明は、上述したような構成を有することから、大面積の基体表面を均一に処理することが出来ないという点放電特有のデメリットを回避することができる。
また、第1の電極に印加される電圧が直流電圧である場合、負電圧を印加することが好ましい。正電圧を印加する場合よりも放電をより安定させることができるからである。また、第2の電極は、通常、接地されるが、必要に応じてバイアス電圧を印加してもよい。
本発明においては、第1の電極と第2の電極との間に、Heを含むガス(He含有ガス)が供給される。Heガスの存在により、第1の電極と第2の電極との間において、放電が可能となりプラズマを発生させることができる。
ここで、He含有ガスは、放電を可能とし、プラズマを発生させることを主目的として用いられるガスであり、Heを主成分として含むものであるが、基体表面の処理に用いられ、プラズマにより活性化される対象となる物質を含むその他のガスを含んでいてもよい。
その他のガスとしては、特に限定されず、目的に応じて選択できるが、基体表面を修飾する元素を含むガス、炭素とフッ素とを含むガス、水素ガス、窒素ガス等が好適に利用できる。なお、プラズマにより活性化された物質(活性化物質)は、基板表面を改質したりそのまま堆積して薄膜を形成したり、あるいは、He含有ガスや後述する補助ガス中に含まれるその他の物質と反応して、これを活性化させたりする働きを有する。
また、プラズマの発生は、大気圧近傍の圧力下で行われる。当該大気圧近傍とは、100Torr(10000Pa)〜800Torr(106600Pa)の範囲内を意味する。
圧力が10000Pa未満の場合には、本発明の基体表面処理方法を利用した基体表面処理装置の気密性・耐圧性の向上や、高い真空環境を実現するための真空ポンプが必要となることなどから構成が複雑で高価なものになってしまう。また106600Paを超える場合には、本発明の基体表面処理方法を利用した基体表面処理装置の気密性・耐圧性の向上が必要となることなどから構成が複雑で高価なものになってしまう。すなわち、いずれの場合も、大気圧プラズマ処理法本来のメリットが失われてしまう。
また、本発明においては、He含有ガス以外に補助ガスを用いることができる。この補助ガスは、第1の電極と第2の電極との間においてプラズマが発生する領域や、プラズマが発生する領域と基体表面との間の領域の少なくともいずれか一方の領域に供給することができる。補助ガスを利用することにより、より多様な基体表面の処理が可能となる。
ここで、補助ガスとは、基体表面の処理に用いられ、プラズマにより活性化される対象となる物質を含むガスを含むものである。補助ガスとしては、特に限定されず、目的に応じて種々のガスが利用できるが、例えば、水素、窒素、酸素、炭素、フッ素、チタン、亜鉛、錫、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、シリコン、ゲルマニウム等から選択される元素を含むガスを1種類以上用いることができる。
さらに、本発明においては、第1の電極と第2の電極との間に、互いに隣接する一の電極と他の電極とを区切り、且つ、第1の電極と第2の電極との間を流れるガスが基体表面側へと流れるように、仕切り板が設けられていることが好ましい。
このように仕切り板を設けることにより、一の電極とこれに対向する第2の電極との間に発生するプラズマの発生状態が、一の電極に隣接する他の電極とこれに対向する第2の電極との間に発生するプラズマの発生状態の影響を受なくなる。それゆえ、各々の電極に対応して発生するプラズマの発生状態を独立して制御することがより容易となり、より微細で精緻なパターニング処理が可能となる。
本発明における基体表面の処理とは、表面処理(表面改質)、あるいは、薄膜の形成を意味する。
表面処理の場合、公知の表面処理が可能であるが、例えばフッ素処理やシラノール処理等を行うことができる。
また、薄膜の形成である場合、公知の有機材料や無機材料からなる膜を形成することができるが、例えば、炭素系化合物、フッ化炭素系化合物、非単結晶シリコン半導体、非単結晶窒化シリコン、非単結晶酸化シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム錫、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、窒化ガリウム、窒化インジウム等を含む薄膜を形成することができる。なお、これらの表面処理や薄膜形成の具体例については後述する。
本発明において、表面処理や薄膜形成の対象となる基体の形状は特に限定されないが、板状の他にも、例えば、円筒状やフィルム状であってもよい。また、基体を構成する材料は公知の無機材料、有機高分子等の有機材料など、一定の形状を保つことができる材料であれば特に限定されない。なお、基体材料の詳細については後述する。基体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、有機高分子樹脂や電子写真感光体等を挙げることができる。
(基体表面処理装置)
次に、本発明の基体表面処理装置について説明する。本発明の基体表面処理装置は、本発明の基体処理方法を利用した装置であればその構成は特に限定されないが、具体的には以下の構成を有する装置であることが好ましい。
すなわち、本発明の基体表面処理装置は、第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極と、前記第1の電極に電圧を印加する電源と、該電源と前記第1の電極とを接続する負荷抵抗と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給するHe含有ガス供給手段とを備え、前記電源により電圧が印加された第1の電極と、前記第2の電極との間に、前記He含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、前記基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理装置において、前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられた構成を有することが好ましい。
なお、本発明の基体表面処理装置は、実用上の観点から、第1の電極および第2の電極の表面が導電性材料からなり、第1の電極に直流電圧または低周波電圧が印加される(すなわち、電源が直流電源または低周波電源である)ことが好ましい。また、電源が直流電源である場合には、放電をより安定化できる点で、第1の電極が負電極であることが好ましい。
また、補助ガスを利用する場合には、第1の電極および第2の電極と、基体との間に、補助ガスを供給する補助ガス供給手段を設けることが好ましい。また、プラズマが発生する領域である第1の電極と第2の電極との間に補助ガスを供給する補助ガス供給手段を設けてもよい。
さらに、第1の電極と第2の電極との間に、互いに隣接する一の電極と他の電極とを区切り、且つ、第1の電極と第2の電極との間を流れるガスがHe含有ガス供給手段側から排気手段側へと流れるように、仕切り板を設けてもよい。
また、本発明の基体表面処理装置においては、プラズマの発生および基体表面処理の為にHeガスとこれ以外のガスとを使用するが、ランニングコストの面からは特に廃ガス中に含まれるHeガスのような高価なガス等については、回収し、再利用されることが好ましい。
このような場合、第1の電極と第2の電極との間を通過し、基体表面近傍を通過したHe含有ガスを含むガスを、廃ガスとして、第1の電極、第2の電極および基体を含む反応系外へと排気する排気手段を設けることが好ましい。なお、この場合は、装置全体を密閉系とすることが必要である。
なお、廃ガス中には、Heガス等、基体表面の処理に用いたガスに加えて、基体表面の処理に際して新たに生じた反応生成物等からなるガス、基体表面処理装置の内壁に吸着していた水分等の脱離により生じたガス等、種々の不純物ガスも含まれる。従って、廃ガスからHeガスを効率よく回収するためには、廃ガス中に含まれるその他のガス成分の水への溶解性や凝固点、蒸気圧の差を利用することが好適である。例えば、廃ガスを、バブリングさせた水や液体窒素の温度に冷やした冷却管に通じることで、Heガスやその他の凝固点の低い水素ガス等と、水や液体窒素の温度よりも凝固点の高い他ガス成分とを効率的に分離除去することができる。
なお、液体窒素温度で凝固しないガスとしてHeガスの他に水素ガスと窒素ガスがあるが、窒素ガスや水素ガスについては、たとえば吸着法や燃焼法を併用することによって取り除くことができる。廃ガス中から分離回収されたHeガスの純度は高ければ良いが、工程の複雑さやコストを考慮して、プラズマが安定して持続できる範囲で、基板表面の処理に際して影響を及ぼさない元素が低濃度で含まれていても良い。
また、基板表面の処理に際してHeガスの他に水素ガスも併用し、両者をHe含有ガスとして再利用する場合には、以下のような廃ガス再生手段を備えていることが好ましい。
すなわち、この廃ガス再生手段は、排気手段により反応系外へと排出された廃ガスを回収する廃ガス回収手段と、回収された廃ガス中に含まれるHeガスと水素ガスとのの混合比を測定するガス混合比測定手段と、Heガスと水素ガスとの混合比を一定割合に調整して再生ガスを得るガス混合比調整手段と、再生ガスをHe含有ガス供給手段に供給する再生ガス供給手段とを含むものであることが好ましい。
さらに、この廃ガス再生手段は、廃ガスを液体窒素により冷却して、廃棄ガス中から液体窒素の液温よりも高い沸点(凝固点)を有するHe含有ガス成分を液化して除去する気液分離手段と、He含有ガス成分が除去された廃ガス中のHeガスおよび水素ガス以外の補助ガス成分を吸着剤により除去する吸着手段とを有するものであることが好ましい。
−基体表面処理装置および基体表面処理の具体例−
次に、本発明の基体表面処理装置およびこれを用いた基体表面処理の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明の基体表面処理装置の一例を示す概略模式図であり、基体表面処理装置の内部を側面から見たものである。図1中、10は基体表面処理装置、11は筐体、12は第1の電極、13は第2の電極、14は負荷抵抗、15は絶縁部材、16はHe含有ガス導入管、17はガス排出口、18は電源、19は基体(基板)20は補助ガス導入管、21は廃ガス排気口を表す。
また、図2は、図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の一例を示す模式断面図であり、図3は、図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の他の例を示す模式断面図であり、図4は、図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の他の例を示す模式断面図であり、図2〜図4中、12Aは第1の電極(個々の電極)、13A,13Bは第2の電極、14Aは負荷抵抗(個々の電極12Aに対応した負荷抵抗)、22は仕切り板を表し、その他の符号は図1中に示すものと同様である。なお、これらの図中には、説明の都合上、基体表面処理装置内部の主要部のみを示し、装置の最外殻を構成する筐体部分等については記載を省略してある。
ここで、図1に示す基体表面処理装置10は、電気的およびガス雰囲気のシールドとなる箱状の筐体11を有しており、この筐体11の一方の面(以下、「上面」と称す場合がある)にはHe含有ガスを筐体11内に供給するためのHe含有ガス導入管16が設けられており、He含有ガス導入管16が設けられた面と対向する面(以下、「下面」と称す場合がある)には、筐体11内のガスを筐体11外へと排気するためのガス排出口17が設けられている。このため、筐体11は、He含有ガス導入管16およびガス排出口17以外からはガスが漏れない構造となっている。なお、He含有ガス導入管16は不図示のHe含有ガス供給源と接続されている。
筐体11内には、上面と下面とのほぼ真中辺り(図1中A1−A2方向上)に、第1の電極12と第2の電極13とが対向配置されている。第1の電極12は、絶縁部材15によって筐体11とは電気的に絶縁されると共に、筐体11外に設けられた負荷抵抗14を介して電源18に接続されている。
また、筐体11は絶縁性であっても導電性であってもよいが、導電性の場合には、筐体11と第1の電極12とを絶縁するように絶縁部材15を設ける必要がある。
なお、大気圧よりも減圧した圧力下で基体表面の処理を実施したり、基体表面の処理に用いた後に不要となった廃ガスを回収・再利用するような場合には、筐体11の下面側には、ガス排出口17に対向する位置に、排気ポンプや廃ガス再生手段等(図1中不図示)に接続された廃ガス排気口21が設けられていてもよい。また、この場合は、基体表面処理装置全体が密閉系となるように構成される。なお、大気圧下での基体表面処理を行う場合や、廃ガスを回収・再利用しない場合には、基体表面処理装置全体は開放系となるように構成されていてもよい。
また、基体19は、基体19表面の処理に際しては、筐体11の下面に設けられたガス排出口17と廃ガス排気口21との間に配置され、例えば、不図示の搬送手段によって、図1中A1−A2方向に搬送させることができる。
更に、必要に応じて、不図示の補助ガス供給源に接続された補助ガス導入管20を、基体19と筐体11下面との間に配置することもできる。この場合、補助ガス導入管20は、そのガス排出口が、ガス排出口17の近傍に位置するように配置される。なお、Heガス供給源や補助ガス供給源は、例えば、ガスボンベや圧力調整器や流量設定器などから構成される。
He含有ガス導入管16や、補助ガス導入管20は、1本であってもよいが、複数本であってもよい。また、これらのガス導入管は、1本の管にスリットを設けた構造を有し、このスリットからガスを供給するものであってもよい。
また、He含有ガス導入管16は、図1に示すように筐体11の上面に接続されていてもよいが、筐体11の側面に接続されていてもよい。この場合、A1−A2間よりも上面側の側面に接続されていることが好ましい。
一方、補助ガス導入管20も、図1に示すように筐体11の下面と基体19との間に設ける以外にも、筐体11の側面に接続されていてもよい。この場合、A1−A2間よりも下面側の側面に接続されていることが好ましい。
He含有ガスは、第1の電極12および第2の電極13間の放電により発生したプラズマによって活性化されたガスを、ガス排出口17を経て基体19の表面に運搬する働きも有する。このため、He含有ガスは、筐体11内を均一に流れるように供給されることが望ましい。このため、1本のHe含有ガス導入管16から筐体11内にHe含有ガスを供給する場合には、筐体11内にガス流を均一に拡散するため部材〜複数段に設けられた邪魔板や小球や粉体などの詰め物をつめた拡散部等を設けても良い。
次に、図1に示す第1の電極12や第2の電極13等の構成について、まず図2を用いてより詳細に説明する。図2に示す例では、第1の電極12は、第2の電極13Aと一定の間隔を保ち、且つ、複数の並列に配置された電極12Aから構成される。この電極12Aは、互いに隣接して配置されると共に、一の電極12Aとこれに隣接する他の電極12Aとは絶縁部材15により絶縁されている。また、電極12Aの各々には、これに対応する負荷抵抗14Aが各々接続されており、これら負荷抵抗14Aは、1つの電源18に接続されている。
また、電極12Aの第2の電極13Aと対向する側は、鋸刃状となっている。これに対し、第2の電極13Aは、第1の電極12と対向する側は平坦な形状である。
なお、図2に示す電極12Aの第2の電極13Aと対向する側は、鋸刃状で、先端が尖っているが、台形や丸みをおびた半円形であっても良い。また、網状の電極材料を鋸歯形状に加工したものでもよい。
基体表面処理装置10に用いられる第1の電極12,第2の電極13の表面(放電面)の誘電体による被覆の有無や、電源18の種類は特に限定されないが、本発明においては、既述したように第1の電極12,第2の電極13の表面は誘電体で被覆されていないことが好ましく、この場合、電源18としては直流電源あるいは低周波電源が用いられる。以下、誘電体で被覆されていない電極を用いることを前提として更に説明する。
この場合、放電は各々の電極12の鋸刃部分の先端部分で発生する。先端の幅(電極12Aの並び方向の幅)が極めて狭く、実質的に点状である場合には
、ここに集中して放電が起こる。また先端が幅がある程度ある場合(具体的には、先端部分が台形状を成す場合)には、放電は時間とともに電極12Aの先端部分を移動する。なお、大面積を均一に処理するという観点からは、既述したように2つの隣接する電極12の鋸刃部分の先端と先端との間隔は20mm以下であることが好ましい。
また、電極12Aの先端は、柱状のナノ結晶体などから形成された複数の針状体から形成されたものでも良い。さらに、電極12Aの先端の幅は特に限定されないが、1nmから10mmの範囲内であることが好ましい。電極12Aの先端の幅が10mmを超える場合には、放電位置の変動が大きすぎるため安定した放電が得られず、大面積を均一に処理することが困難となる場合がある。電極12Aの先端は厚さのある形でも良いし、鋭利な刃物状でも良い。
放電は電極12Aの先端から第2の電極13側に向かって広がりをもつため、電極12A間の間隔と、電極12Aの先端と第2の電極13との間隔によって、放電領域の均一性を制御することができる。電極12Aの先端と第2の電極13の間隔は1mmから30mmであることが好ましく、2mmから20mmの範囲内がより好ましい。間隔が1mm未満では放電により筐体11内に供給されたガスを活性化する効率が低くなり、また30mmを超えると安定したグロー放電が起こりにくくなる場合がある。
なお、図2に示す例では、第2の電極13Aの第1の電極12に対向する側は、平坦な形状であるが、図3に示すように、各々の電極12Aの鋸刃部分に対応するように、第1の電極12に対向する側が平坦な形状の第2の電極13Aの代わりに、第1の電極12に対向する側が鋸刃状の第2の電極13Bを設けてもよい。また、第2の電極13Aは、筐体11が導電性である場合には、第1の電極と対向する筐体11の側面であっても良い。
さらに、図4に示すように、図3に示す構成に対して、第1の電極12と第2の電極13との間に、互いに隣接する一の電極12Aと他の電極12Aとを区切り、且つ、第1の電極12と第2の電極13との間を流れるガスが筐体11上面に接続されたHe含有ガス導入管16側から筐体11下面に設けられたガス排出口17側へと流れるように、仕切り板22を設けてもよい。
この場合、He含有ガス導入管16や、ガス排出口17、補助ガス導入管20は、仕切り板22と仕切り板22とで区切られた個々の空間(以下、「放電セル」と称す場合がある)に対応するように、複数設けてもよい。なお、仕切り板22は、筐体11内の空間を完全に分割するように、筐体11の上面から下面まで連続して設けられていることが好ましい。
この場合、基体19表面の処理、例えばパターニング処理等に際しては、He含有ガス導入管16や、補助ガス導入管20から供給するガスの量や種類を、各々の放電セル毎に異なるものとすることができ、各々のセルにおける放電条件も異なるものすることができる。
従って、隣り合った放電セル間で、異なった条件で基体表面を処理することが可能となる。たとえば、基体表面の隣接する2つの領域について、一方に親水化処理し他方に撥水化処理したり、一方に親水化処理し他方に薄膜を形成するという組み合わせが容易になる上に、2つの領域の境界が明確となるように処理できる。
さらに放電セルの幅(仕切り板同士の間隔)を小さくすることによってより微細且つ精緻な処理も可能である。さらに、第1の電極に印加する電圧をパルス化したり、He含有ガスや補助ガスの供給をパルス化することによっても基体表面をパターニング処理することも可能である。上述した基体表面の隣接する2つの領域を各々親水化処理および撥水化処理するようなパターニング処理を、一度の基体表面処理によって実施することができる。なお、このようなパターニング処理の具体例としては、例えば、図5に示す市松模様や、図6に示すストライプ模様が挙げられる。
プラズマを発生させるためには、第1の電極12に電圧が印加される。直流電源を用いる場合には、第1の電極12には負電圧が印加されることが放電の安定のために好ましい。また、第1の電極12には1kHz以下の低周波電圧を印加してもよく、低周波電圧は半端整流されたものであっても良いし、バイアスされた低周波電圧でも良い。なお、印加する電圧は0.1kVから10kVであることが好ましい。
第1の電極12を構成する各々の電極12Aには、図2〜図4に示すように個別に電流を制限するための負荷抵抗14Aが各々接続されることが必要である。
これは、グロー放電が発生する場合、放電空間の抵抗が低下し電流が増加するとともに電離状態や温度などの変化によって、空間の抵抗が低下し印加電圧が一定でも電流が増加するので、負荷抵抗14Aが設けられない場合には、放電は一つの電極12Aに集中してしまうためである。
また、複数の電極12Aからなる第1の電極全体に渡って、広がりを持った安定な放電を起すためには、放電電流を制限する必要がある。したがって、負荷抵抗14Aは、電極12Aの放電電流が0.1mAから100mAとなるように設定されることが好ましい。なお、負荷抵抗14Aは、電源18の電圧の耐圧以上の性能のものであれば固定抵抗でもよいし、可変抵抗でも良い。
また、第1の電極12にパルス電圧を印加したり、基体19をガス排出口17に対して、あるいは、その逆に、筐体11を基体19に対して走査することによって、基体19表面をパターンニング処理することができる。
第1の電極12や第2の電極13の材料としては導電性の金属や半導体などを用いることができる。例えば、Mg,Al,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Mo,Pd,Ag,In,Sn,W,Au,Pt等の金属及びステンレススチール、銅タングステンなどの合金結晶が使用できる。また導電性の酸化物やGaAs、SiCなどの導電性の半導体や単結晶等も利用することができる。
第1の電極12および第2の電極13と、ガス排出口17との距離は1mmから30mmであることが好ましい。また補助ガス導入管20はガス排出口17に密着しても良いし、基体19表面に密着しても良い。
電極−ガス排出口17間の距離を調整することによって、放電している第1の電極12と第2の電極13との間を通過することにより活性化されたHe含有ガスと基体表面との反応や堆積の状態を制御することができる。
さらに、補助ガスを用いる場合には、補助ガス導入管20の位置を調整することにより、活性化されたHe含有ガスと補助ガスの反応状態や、これら2種類のガスが混合したガスと基体表面との反応や堆積の状態を制御することができる。
たとえば、ガス排出口17から筐体11外へと排出される活性化したHe含有ガスに、補助ガス導入管20から補助ガスを供給することにより、補助ガスに含まれる物質を活性化し、生成したラジカルを利用して基体表面で反応を起こさせる場合に上述したような電極−ガス排出口17間の距離の調整や補助ガス導入管20の位置の調整が有効である。この場合、例えば、活性化したHe含有ガスと補助ガスとの反応によりラジカルが発生する反応時間やガスの流速も考慮して、発生するラジカル濃度を最大となるように調整することできる。
Heガス導入管16から筐体11内に供給されるHe含有ガスは、Heガスのみが含まれていてもよいが、必要に応じて他のガスが混合されていてもよい。Heガスに混合されるガスとしては、例えば、Ar,Ne,Krなどの不活性ガスのほか、窒素、酸素、空気、水素、CO2、水蒸気などのほか、CF4,C26,C38などのガスが使用できる。
これらのガスはHeガスと単独で混合しても良いし、複数のガス種を混合しても良い。たとえばHeガスとCF4ガスとを混合して基体表面を処理した場合には、CF4ガスのみでは基体表面に固体生成物を形成しない。しかし、CF4ガスに加えて更に水素ガスを混合した場合には炭化水素膜や水素化炭素膜などの固体生成物を基体表面に形成することができる。なお、その他のガスとして、1種以上のガスを用いる場合には、放電を安定に持続させ、再現性の良いプラズマ発生状態を得るためには筐体11内で固体生成物を形成しないガス(2種以上のガスの場合は、固体生成物を形成しない組み合わも含む)が良い。
このようにすることで基体19の表面に活性化されたガスの原子や分子をイオンやラジカルなどの形で付着させることができ、基体19の表面や内部の元素と直接反応を起したり、重合の開始条件を形成できる。なお、基体19はガス排出口17と離して設置しても良いし、近接あるいは密着するように設置しても良い。
基体19表面の処理に際しては、基体19を例えば、A1−A2方向に連続的に搬送させたりすることによって二次元的な処理を行っても良い。また、基体19が、円筒状基体である場合は、その軸方向がA1−A2方向と一致するように配置して、周方向に回転させながら、A1−A2方向に連続的搬送させてもよい。
ガス排出口17の形状は特に限定されないが、点状であっても、円状で有っても、またスリット状であっても良く、加工処理する部分の面積や形状に合わせて選ぶことができる。円状や楕円状である場合の大きさとしては、直径(あるいは最大径)は例えば、0.1μmから30mmの範囲内とすることができ、各々の円状や楕円状のガス排出口17同士が連通した形状でもよい。
ガス排出口17の数も限定されず、1つの大きな穴であってもよく、複数の小さい穴であってもよい。なお、ガス排出口17がスリット状の場合のスリットの幅(第1の電極と第2の電極とが対向する方向の長さ;図1中のA1−A2方向の長さ)としては、0.1mmから10mmの範囲内であることが好ましい。また、スリットの長さは、第1の電極や第2の電極の幅とほぼ同等程度とするか、あるいは、処理する対象となる基体のサイズによって適宜選択し、例えば1mmから3000mmの範囲とすることができる。
スリットから吹き出すガス流を均一にするために、ガス流の流れを制御する仕切り板を筐体11の下面内壁側および/または下面外壁側に設けても良い。また、スリットは、直線状以外にも曲線状に設けても良い。
また、ガスの流れをスムーズにするために、He含有ガス供給管16の筐体11に接続された部分と、第1の電極12と第2の電極13との間の空間と、ガス排出口17とは、図1に示されるように直線上に配置されていることが好ましい。
補助ガス導入管20のガス排出口の形状は特に限定されないが、円状で有ってもよく、スリット状であっても良く、複数の小さい穴が設けられたものでもよい。具体的には、加工処理の対象となる基体の形状や、基体表面の面積に応じてガス排出口の形状を選択することができる。ガス排出口が円状や楕円状である場合の大きさとしては、直径(あるいは最大径)は例えば、0.1μmから30mmの範囲内とすることができ、各々の円状や楕円状のガス排出口同士が連通した形状でもよい。
ガス排出口の数も限定されず、1つの大きな穴であってもよく、複数の小さい穴であってもよい。なお、ガス排出口がスリット状の場合のスリットの幅としては、0.1mmから10mmの範囲内であることが好ましい。スリットから吹き出すガス流を均一にするために、ガス流の流れを制御する仕切り板を補助ガス導入管20内のガス排出口近傍に設けても良い。スリットの長さは処理する対象となる基体19のサイズによって適宜選択でき、例えば1mmから3000mmの範囲とすることができる。また、スリットは、直線状以外にも曲線状に設けても良い。
なお、図4に示すように、複数の放電セルを有し、各々の放電セルに対応して、補助ガスの供給が各々独立して行える複数の補助ガス導入管20を設けたような場合には、供給する補助ガスの種類や量を放電セル毎に異なるものとすることによってパターニング処理を行うことができる。さらに、特定の放電セルの電極12Aのみに電圧をパルス状に印加して、パターニング処理を行うこともできる。。
補助ガスとして、目的に応じて種々のガスが利用できる。例えば、炭素を含む膜(炭素系薄膜)を形成する場合には、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、アセチレン,ブタン等の炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を使用することができる。
炭素とフッ素を含む膜の形成や、表面処理を行う場合には、CH4,C26,C38,C410などの弗化炭素化合物を使用することができる。
シリコンと酸素からなる膜の形成や、表面処理を行う場合には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランおよびビニルトリクロルシランやビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤等のアルコキシシラン化合物が使用できる。
非単結晶シリコン半導体からなる膜を形成する場合には、モノシラン、ジシランなどを使用することができる。さらに、この非単結晶シリコン半導体に添加するドーパントを供給するために、ジボランやホスフィンなども併用することができる。
非単結晶窒化シリコンからなる膜を形成する場合には、モノシランおよび/またはジシランと、アンモニアとの混合ガスを使用することができる。また、He含有ガスには、Heガス以外に窒素が混合されていてもよい。
非単結晶酸化シリコンからなる膜を形成する場合には、モノシランおよび/またはジシランと、N2Oとの混合ガスを使用することができる。また、He含有ガスには、Heガス以外に酸素ガスが混合されていてもよい。
酸化チタンからなる膜を形成する場合には、トリメトキシチタン、トリエトキシチタン、トリイソプロポキチタン、等のアルコキシチタン化合物やジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトナート等のアセチルアセトンキレート錯体が使用できる。
これらのチタン化合物にアルコキシジルコニウム化合物やジルコニウムアセチルアセトナート錯体やアルコキシシラン化合物を混合することもできる。同時に酸素を混合しても良い。
酸化亜鉛からなる膜を形成する場合にはメトキシ、エトキシ亜鉛、イソプロポキ亜鉛、等のアルコキシ亜鉛化合物や亜鉛アセチルアセトナート等のアセチルアセトンキレート亜鉛錯体が使用できる。これらの亜鉛化合物にアルコキシジルコニウム化合物やアルコキシシラン化合物を混合することもできる。同時に酸素を混合しても良い。
13族元素を含む化合物半導体からなる膜を形成する場合には、13族族元素を含む有機金属化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、t−ブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、t−ブチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、t−ブチルインジウム等の液体や固体を気化したガスや、このガスとArガス等のキャリアガスとをバブリングにより混合したガスを利用することができる。さらに、アルシンやホスフィンなども利用することできる。
このようなガスを利用して、GaAsやAlGaAs,InGaAs,GaP,InP,InGaPなどからなる13族元素を含む化合物半導体からなる膜を形成することができる。
さらに、13族元素を含む窒化物半導体からなる膜を形成する場合には、上記に列挙したようなガスを補助ガスとして利用すると共に、He含有ガスに窒素やアンモニアガスを混合させても良い。この場合、GaN,InN,AlGaNなどからなる膜を形成できる。
He含有ガスや補助ガスの供給制御は、例えば、マスフローコントローラーを用いて外部信号によるオンオフ動作を行っても良いし、バルブの開閉、また弁の開閉、また弁の切替え等を利用して行うことが出来る。
また、これらガスの間欠供給する場合のパターンは、矩形波での駆動でもサインカーブのように滑らかに動作してもよく、パルス動作でも良い。
基体19表面を処理する際の基体温度は、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には−20℃〜600℃程度の範囲内で制御されることが好ましい。しかしながら、低温で基体表面を処理したい場合には、基体温度を20℃〜200℃の範囲内に制御することが好ましい。
基体19の特性は特に限定されず、導電性でも絶縁性でも良く、また、結晶性/非晶質性のいずれでも良い。
導電性の基体を用いる場合には、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、クロム等の金属及びその合金結晶、Si、GaAs、SiC、サファイア等の半導体や単結晶等からなる基体を用いることができる。特にSi,GaAs,SiC,サファイアの半導体結晶等からなる基板は、基体表面に結晶性の膜を形成する場合に好適である。このような基板の面方位、結晶型は目的に応じて選ぶことができる。
また、絶縁性の基体を用いる場合には、高分子フィルム、ガラス、セラミック等を挙げることができる。また、絶縁性基体の表面を、上記の金属や金、銀、銅等を、蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法等により成膜し導電化処理を施した基体を用いてもよい。
透光性の基体としては、ガラス、石英、サファイア等の透明な無機材料;ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明な有機樹脂のフィルム又は板状体等が使用できる。
さらに透光性の基体表面に透光性の電極を設けた基体も利用可能である。例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等を利用して透光性の基体表面に透光性の電極を設けた基体を作製することができる。この他にも、Al、Ni、Au等の金属を蒸着やスパッタリングにより半透明になる程度に薄く透光性の基体表面に形成してもよい。
基体の形状は、板状のものの他に、ロールフィルムや筒状、円筒状等様々な形状のものが使用できる。なお、基体表面の処理は、バッチ処理でも良いし、連続処理でも良い。
なお、基体として、具体的に用いるのが好適なものの一例としては電子写真感光体が挙げられる。
無機感光体としてはアモルファスシリコンを主体としたもの、アモルファスシリコンゲルマニウム、アモルファスシリコンカーバイドを層の構成要素として含むものが挙げられる。
また、有機感光体としては、感光層として電荷発生層と電荷輸送層とを含む機能分離型構成のものや、感光層が単層型の感光体を使用できる。機能分離型の場合には表面側に電荷発生層を設けたものでも良いし、表面側に電荷輸送層を設けたものでも良い。また、感光層の上に直接表面層を設けたものでも良い。
ここで、本発明の基体表面処理方法を用いて電子写真感光体の表面を処理する場合、例えば、電子写真感光体の最表面を構成する感光層や表面層の撥水性処理や硬化処理等を行うことが好適である。特に、電子写真感光体が有機感光体の場合には、プラズマ処理や真空処理、連続処理などの観点から本発明の基体表面処理方法が有効である。なお、表面層を撥水性処理や硬化処理する場合には、感光体の温度(基体温度)を20℃から200℃の範囲に保つことが好ましい。
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明する。
(実施例1)
−基体表面処理装置−
実施例1では、図1に示す基体表面処理装置において補助ガス導入管20を有さない構成の基体表面処理装置を用いた。なお、この装置は、外殻(図1中不図示)を持たず、開放系であるため、基体表面の処理は大気圧下で行われる。また、この基体表面処理装置のA1−A2間の構成は、図2に示す構成を有するものである。
ここで第1の電極12は、ステンレス製で、厚さ1mm、幅3mm、先端が正三角形の鋸刃状に加工された複数の電極12Aからなるものである。この電極に対向するアース電極(第2の電極13)は厚さ1mm、幅110mmのアルミニウム製の平板電極である。電極12Aの先端と、第2の電極13との電極間隔は7mmである。さらに隣り合う電極12A間の間隔は8mmであり、10本の電極を並列に配置して幅約100mmの放電部(第1の電極12)を形成した。各電極12Aには耐圧電圧5KV、抵抗値1Mオームの高電圧用抵抗器(負荷抵抗14)が接続されている。
電極12Aは互いに絶縁された状態で、アルミニウム製の筐体11内に取り付けられており、第2の電極13と導通する筐体11はアース電位となっている。また、筐体11の下面には、電極12Aの先端と、電極12Aに対向配置された第2の電極との間の中心位置に相当する位置に、第1の電極と第2の電極とが対向する方向(電極対向方向)の幅が2mmで、長さ(電極対向方向と直交する方向)が、第1の電極や第2の電極の幅とほぼ等しい100mmのスリット状のガス排出口17を設けた。なお、第1の電極12および第2の電極13とからなる電極対と、ガス排出口17との距離は3mmである。
−基体表面処理−
次に、第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16からHeガスを圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、500sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.5kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
この状態で、筐体11下面側で、ガス排出口17から2mm離れた位置に、直径100mmのシリコンウェハーを配置し、ガス排出口17から排出されるガスにシリコンウェハーの表面全体が均等に接触するように、約1min間かけて電極対向方向に一定速度で搬送しながら親水化処理を行った。
その結果、シリコンウェハー表面の水に対する接触角は、親水化処理前では約50度であったが、親水化処理後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、5点平均で9度となり、表面の濡れ性が改善された。また、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面が均一に親水化処理されていることが確認された。
なお、接触角の測定には、ハミルトン社製マイクロシリンジを用いた。測定は、10μlの蒸留水の水滴を水平に置かれた測定基板面に滴下し、水平横方向から画像の保存可能なデジタル式の画像撮影機を備えた顕微鏡を用いて観察し、水滴の接触角を求めた。
(実施例2)
−基体表面処理装置−
実施例1で用いた基体表面処理装置において、第1の電極をステンレスの代わりにステンレス製の300番メッシュにし、第2の電極を図3に示すような鋸歯状にした装置を用いた。なお、互いに対向する電極12Aの先端と、第2の電極の鋸歯部分の先端との距離は7mmである。これらを変更した以外は、その他の仕様は実施例1で用いたものと同様である。
−基体表面処理−
次に、第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16からHeガスを圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、500sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.2kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13の鋸歯部分の先端に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
この状態で、実施例1と同様にしてシリコンウェハーの親水化処理を行った。
その結果、シリコンウェハー表面の水に対する接触角は、親水化処理前では約50度であったが、親水化処理後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、5点平均で10度となり、表面の濡れ性が改善された。また、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面が均一に親水化処理されていることが確認された。
(実施例3)
−基体表面処理装置−
実施例1と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを500sccm、空気を10sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.0kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。なお、ガス排出口17付近からはオゾン臭がして、オゾンの発生が確認できた。
この状態で、シリコンウエハーの代わりに、100mm×50mmサイズのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、カプトン)を用いたこと以外は実施例1と同様にして親水化処理を行った。
その結果、ポリイミドフィルム表面の水に対する接触角は、親水化処理前では約55度であったが、親水化処理後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、5点平均で5度となり、表面の濡れ性が改善された。また、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面が均一に親水化処理されていることが確認された。
(実施例4)
−基体表面処理装置−
実施例1と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを500sccm、CF4ガスを10sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.0kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
この状態で、シリコンウエハーの代わりに、100mm×50mmサイズのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、カプトン)を用いたこと以外は実施例1と同様にして撥水化処理を行った。
その結果、ポリイミドフィルム表面の水に対する接触角は、撥水化処理前では約55度であったが、撥水化処理後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、5点平均で103度となり、表面の撥水性が改善された。また、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面が均一に撥水化処理されていることが確認された。
また、撥水化処理したポリイミドフィルム表面をXPS(X線光電子分光法)により測定したところ、表面にフッ素が結合していることが確認された。
(実施例5)
−基体表面処理装置−
図1に示すように補助ガス導入管20を設け、第1の電極12および第2の電極13とからなる電極対と、ガス排出口17との距離を2mmとした以外は、実施例1で用いた基体表面処理装置と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
なお、補助ガス導入管20のガス排出口は、幅(電極対向方向と直交する方向の長さ)が100mmであり、開口部の高さが0.5mmのスリット状である。また、補助ガス導入管20は、補助ガス供給源に接続された一本のガス供給管が分岐して、ガス排出口部分では10個所の穴から補助ガスが供給できる構造を有するものであり、筐体11の下面から1mm離れた位置に配置されている。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを500sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.5kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
次に、水素ガスをキャリアガスとして、テトラエトキシシランを30℃で保ったバブリング供給容器から、補助ガス導入管20を介して30sccm供給し、ガス排出口17から筐体11外へと排気される活性化したヘリウムガスと混合した。
この状態で、筐体11下面側で、補助ガス導入管20から2mm離れた位置に、直径100mmのシリコンウェハーを配置し、2種類のガスが混合した混合ガスにシリコンウェハーの表面全体が均等に接触するように、約1min間かけて電極対向方向に一定速度で搬送した。
その結果、シリコンウェハー表面に、薄膜が形成され、薄膜形成後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。
さらに、面内の中心および4隅の5点に予め貼っておいたマスキングテープを剥がして、膜厚を触針式の段差計(東京精密社製、サーフコム)により測定したところ、平均で60nmであり、面内の膜厚バラツキは平均値に対して最大で5%であった。
また、薄膜形成後の表面をXPS(X線光電子分光法)により測定したところ、Siおよび酸素のピークが確認され、表面に酸化シリコン膜が形成されていることがわかった。
以上のことから、シリコンウエハー表面には、膜厚および組成共に均一な酸化シリコン膜が形成されていることが確認された。
(実施例6)
−基体表面処理装置−
実施例5で用いた基体表面処理装置と同様の装置を用いた。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを500sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.5kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
次に、水素ガスをキャリアガスとして、10vol%アセチレンガスを補助ガス導入管20を介して20sccm供給し、ガス排出口17から筐体11外へと排気される活性化したヘリウムガスと混合した。
この状態で、筐体11下面側で、補助ガス導入管20から2mm離れた位置に、100mm×100mmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラー)を配置し、2種類のガスが混合した混合ガスにポリエステルフィルムの表面全体が均等に接触するように、約1min間かけて電極対向方向に一定速度で搬送した。
その結果、ポリエステルフィルム表面に、茶色い薄膜が形成され、薄膜形成後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。
さらに、面内の中心および4隅の5点に予め貼っておいたマスキングテープを剥がして、膜厚を触針式の段差計(東京精密社製、サーフコム)により測定したところ、平均で90nmであり、面内の膜厚バラツキは平均値に対して最大で5%であった。
また、薄膜形成後の表面をXPS(X線光電子分光法)により測定したところ、炭素が確認された。従って、膜の色やXPSの結果から、表面に非晶質炭素膜が形成されていることがわかった。
以上のことから、ポリエステルフィルム表面には、膜厚および組成共に均一な非晶質炭素膜が形成されていることが確認された。
(実施例7)
−基体表面処理装置−
実施例5で用いた基体表面処理装置と同様の装置を用いた。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを500sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.5kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
次に、水素ガスをキャリアガスとして、テトラエトキシチタンを30℃で保ったバブリング供給容器から補助ガス導入管20を介して30sccm供給し、ガス排出口17から筐体11外へと排気される活性化したヘリウムガスと混合した。
この状態で、筐体11下面側で、補助ガス導入管20から2mm離れた位置に、直径100mmのシリコンウェハーを配置し、2種類のガスが混合した混合ガスにシリコンウェハーの表面全体が均等に接触するように、約1min間かけて電極対向方向に一定速度で搬送した。
その結果、シリコンウェハー表面に、薄膜が形成され、薄膜形成後の接触角を面内の中心および4隅の5点について測定した結果、面内のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。
さらに、面内の中心および4隅の5点に予め貼っておいたマスキングテープを剥がして、膜厚を触針式の段差計(東京精密社製、サーフコム)により測定したところ、平均で110nmであり、面内の膜厚バラツキは平均値に対して最大で5%であった。
また、薄膜形成後の表面をXPS(X線光電子分光法)により測定したところ、Tiおよび酸素のピークが確認され、表面に酸化チタン膜が形成されていることがわかった。
以上のことから、シリコンウエハー表面には、膜厚および組成共に均一な酸化チタン膜が形成されていることが確認された。
(実施例8)
−電子写真感光体の作製−
円筒状のAl基体に下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した有機感光体を以下のように作製した。
まず、直径30mm、長さ340mmの円筒状Al基体の表面に、ジルコニウム化合物(商品名:マツモト製薬社製オルガノチックスZC540)20質量部、シラン化合物(商品名:日本ユニカー社製A1100)2.5質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)10質量部およびブタノール45質量部を攪拌混合した溶液を浸漬法により塗布し、150℃10分間加熱乾燥することにより膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合し、その混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を準備した。続いて、この分散液を浸漬法により下引き層の上に塗布し、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記構造式(1)で表される化合物を2質量部と、下記構造式(2)で表される高分子化合物(平均分子量=39000)3質量部とをクロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を準備した。
Figure 2006244903
Figure 2006244903
この塗布液を浸漬法で上記電荷発生層上に塗布し、110℃で40分間加熱して膜厚20μmの電荷輸送層を形成することにより有機感光体を得た。
−基体表面処理装置−
第1の電極12および第2の電極の幅を350mm、ガス排出口17の長さもこれに対応して350mmとした以外は、実施例1と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
−基体表面処理−
以下に説明するように、装置の大きさに応じてガスの流量や電流量を変えた以外は、実質的に実施例4と同様の条件で基体表面処理を実施した。
まず、第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを2000sccm、CF4ガスを40sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.0kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は30mAであり、放電は安定して持続した。
この状態で、有機感光体は、筐体11下面側で、ガス排出口17から2mm離れた位置に、ガス排出口17の長手方向と有機感光体の軸方向とが一致するように回転台に配置し、10回/minの割合で回転させた。
その結果、有機感光体表面の水に対する接触角は、撥水化処理前では約75度であったが、撥水化処理後の接触角を有機感光体の円周方向に90度毎に4点、軸方向に3点の合計12点測定し、12点平均で102度となり、表面の撥水性が改善された。また、周方向および軸方向のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面が均一に撥水化処理されていることが確認された。
(実施例9)
−基体表面処理装置−
第1の電極12および第2の電極の幅を350mm、ガス排出口17の長さもこれに対応して350mmとした以外は、実施例5と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
−基体表面処理−
以下に説明するように、装置の大きさに応じてガスの流量や電流量を変えた以外は、実質的に実施例5と同様の条件で基体表面処理を実施した。
第1の電極12を構成する全ての電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、Heガスを2000sccm供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.5kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各々の電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は30mAであり、放電は安定して持続した。
次に、水素ガスをキャリアガスとして、テトラエトキシシランを30℃で保ったバブリング供給容器から、補助ガス導入管20を介して100sccm供給し、ガス排出口17から筐体11外へと排気される活性化したヘリウムガスと混合した。
この状態で、実施例8で用いた有機感光体を、筐体11下面側で、補助ガス導入管20から2mm離れた位置に、ガス排出口17の長手方向と有機感光体の軸方向とが一致するように回転台に配置し、10回/minの割合で回転させた。その結果、有機感光体表面に薄膜が形成された。
なお、有機感光体の代わりに、実施例5と同様にしてシリコンウエハーを用いて、このウエハー表面に薄膜を形成して組成を調べたところ、酸化シリコン膜が形成されていることがわかった。
また、有機感光体表面の水に対する接触角は、処理前では約70度であったが、処理後の接触角を有機感光体の円周方向に90度毎に4点、軸方向に3点の合計12点測定し、12点平均で85度となった。加えて、周方向および軸方向のバラツキは殆ど無く、測定誤差の範囲内であった。従って、表面に均一に薄膜が形成されていることが確認された。
さらに、処理前の表面をステンレス鋼で擦ると容易に傷が付いたが、処理後の表面について同様に擦っても傷が付かなかった。
なお、処理前後での帯電特性には変化は無く、露光に用いる光源により光を照射した後の残留表面電位も5V以下の変化であり、実用上問題無いレベルであった。このことから、処理後の有機感光体は、耐久性のある表面層付きの電子写真感光体として使用できることがわかった。
(実施例10)
−基体表面処理装置−
実施例1と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。但し、本実施例においては、この装置全体を密閉容器内に格納して密閉系とし、廃ガス排気口21を介しての密閉容器内から排出される廃ガスからヘリウムを回収できるように、密閉容器を廃ガス回収装置に接続した。
なお、この廃ガス回収装置は、密閉容器内から排出される廃ガスを回収して純水でバブリングできるガラス容器と、このガラス容器でバブリング処理されたガスを、液体窒素で冷却し、Heガスとその他のガスとに気液分離するデュワー容器と、気液分離されたHeガスをコンプレッサーにより圧縮し保存するための高圧容器とを備えたものである。
ここで、この装置は、基体表面処理時には、密閉容器内の圧力を大気圧よりも若干高めに保ち、密閉容器内の圧力と、ガラス容器内の圧力との差を利用して、密閉容器側から廃ガス排気口21を介してガラス容器側へと廃ガスが排気できるようになっている。
−基体表面処理−
まず、Heガス源として、他の実施例で用いたのと同様の市販のHeガスを充填したボンベ(日本酸素社製、純度99.99%)を用いて、基体表面処理装置を実施例4と同様の条件で稼働させた。この際、発生した廃ガス中のHeガスは、廃ガス回収装置により回収し、高圧保存容器に蓄えた。
次に、高圧保存容器に蓄えたHeガスと、上記ボンベのHeガスとを、体積比で2:1の割合で混合させたHeガスを用いて、基体表面処理装置を実施例4と同様の条件で稼働させ、ポリイミドフィルム表面の撥水化処理を行った。その結果、撥水化処理後のポリイミドフィルム表面の接触角は5点平均で105度であり、回収したHeガスを用いて撥水化処理を行っても、実施例4とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例11)
−基体表面処理装置−
図4に示すように仕切り板22を設けて、各々の電極12Aに対応した複数の放電セルを形成し、各々の放電セル毎に対応するように複数のHe含有ガス導入管16を設けた以外は実施例1と同様の構成を有する基体表面処理装置を用いた。
なお、仕切り板22は筐体11内の空間を完全に分割するように筐体11の上面から下面まで連続的に設けられたものである。また、各々の放電セル毎に対応して設けられた各々のHe含有ガス導入管16には、それぞれにマスフローコントローラーが取り付けられている。これにより、各々の放電セル毎に、供給されるHe含有ガスの流量や、Heガス以外に使用するガスの種類を調整することが可能である。
−基体表面処理−
第1の電極12を構成する電極12Aに対して共通に負電圧を印加した。続いて、大気圧下で、筐体11内に、He含有ガス導入管16から圧力調整器とマスフローコントローラーを介して、各々の放電セルに対してHeガスを50sccm供給すると共に、放電セルの並び方向に対して、交互にCF4ガスと空気とを1sccmづつ供給した。ここで、第1の電極に印加する電圧を−1.0kVとすることにより、各電極12Aと第2の電極13との間にグロー放電を発生させた。各電極12Aの先端から、第2の電極13に向かって幅約8mmの広がりをもった三角状の放電が同時に発生した。この時の電流は9mAであり、放電は安定して持続した。
この状態で、実施例3および4と同様にして親水化処理と撥水化処理とを同時に実施した。
その結果、ポリイミドフィルム表面の水に対する接触角は、Heに加えCF4ガスも供給した放電セルの直下を通過させた領域の接触角は、いずれの部分も102度前後であり、Heに加え空気も供給した放電セルの直下を通過させた領域の接触角は、いずれの部分も5度前後であり、親水化処理と撥水化処理とが同時の行われていることが確認された。
また、親水・撥水同時処理後のポリイミドフィルム表面全体に、霧吹きで水を吹きかけたところ、濡れ性の良い領域と、極めて悪い領域とが、帯状且つ交互(図6に示すようにストライプ状)に観察された。また、互いに隣接する2つの領域の境界も極めて明確で、精緻なパターニング処理が、マスクを用いることなく1回の処理で容易に行えることがわかった。
また、一定の時間毎にCF4ガスと空気とを供給する放電セルを交互に入れ替えながら放電を行った以外は、上述した場合と同様に基体表面の親水・撥水同時処理を実施した。
その結果、処理後の親水・撥水同時処理後のポリイミドフィルム表面全体に、霧吹きで水を吹きかけたところ、濡れ性の良い領域と、極めて悪い領域とが、図5に示すような市松模様状に観察された。また、互いに隣接する2つの領域の境界も極めて明確で、精緻なパターニング処理が、マスクを用いることなく1回の処理で容易に行えることがわかった。
(実施例12)
電極12Aの並び方向のうち、片側半分の5つの電極12Aのみを放電させた以外は実施例3と同様にしてポリイミドフィルム表面を親水化処理した。その結果、第1の電極12と第2の電極13との間で部分的に放電させた領域の直下を通過した領域のみで、表面の濡れ性が改善された。処理された領域の接触角は平均で5度程度であり、均一に処理されていた。
従って、基体表面の所望の領域のみを選択的に処理することができる上に、このような処理に際しては、第1の電極12と第2の電極13との間の全領域で放電させる必要がない。それゆえ、処理しようとする基体のサイズや、処理対象となる領域が、基体表面処理装置が本来処理できるサイズに対して小さくても、これに応じて電力消費量を抑制できることがわかった。
本発明の基体表面処理装置の一例を示す概略模式図である。 図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の一例を示す模式断面図である。 図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の他の例を示す模式断面図である。 図1に示す基体表面処理装置のA1−A2間の断面の他の例を示す模式断面図である。 パターニング処理の一例(市松模様)を示す模式図である。 パターニング処理の他の例(ストライプ模様)を示す模式図である。
符号の説明
10 基体表面処理装置
11 筐体
12 第1の電極
12A 第1の電極(個々の電極)
13,13A,13B 第2の電極
14 負荷抵抗
14A 負荷抵抗(個々の電極12Aに対応した負荷抵抗)
15 絶縁部材
16 He含有ガス導入管
17 ガス排出口
18 電源
19 基体(基板)
20 補助ガス導入管
21 廃ガス排気口
22 仕切り板

Claims (2)

  1. 電源に負荷抵抗を介して接続され、前記電源により電圧が印加される第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理方法において、
    前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、
    前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられたことを特徴とする基体表面処理方法。
  2. 第1の電極と、該第1の電極に対向配置された第2の電極と、前記第1の電極に電圧を印加する電源と、該電源と前記第1の電極とを接続する負荷抵抗と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に、Heガスを含むHe含有ガスを供給するHe含有ガス供給手段とを備え、
    前記電源により電圧が印加された第1の電極と、前記第2の電極との間に、前記He含有ガスを供給しつつ大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させ、前記基体表面を前記プラズマにより活性化された活性化物質に曝して処理する基体表面処理装置において、
    前記第1の電極が、互いに隣接し且つ絶縁された状態で配置された2つ以上の電極からなり、
    前記負荷抵抗が、前記2つ以上の電極の各々に対応して設けられたことを特徴とする基体表面処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008140584A (ja) * 2006-11-30 2008-06-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 高温場用フレキシブル電極
JP2009170237A (ja) * 2008-01-16 2009-07-30 Hitachi Displays Ltd 局所プラズマ処理装置及び処理方法
US20140109832A1 (en) * 2012-10-23 2014-04-24 Asm Ip Holding B.V. Deposition apparatus

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