JP2006242691A - 鉛濃度の測定法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 吸光度法による鉛濃度測定において、吸収スペクトルを取得することなしに複数の金属イオンが存在する試料中に含まれる鉛イオンの濃度を簡便かつ高精度に測定するための方法を提供。
【解決手段】 鉛及び他の金属を含有する試料にポルフィリン化合物を添加した溶液に、波長の異なる2種以上の光を照射してそれぞれの光の吸光度を測定することを特徴とする当該試料中の鉛濃度の測定法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、焼却灰、焼却飛灰の灰抽出水等の鉛及び他の金属を含有する試料中の鉛濃度を簡便に測定する方法に関する。
環境及び人体に種々の悪影響を及ぼす鉛は、土壌、浄水において含有量の厳しい法規制がなされている。また、一般廃棄物及び産業廃棄物を焼却した際に発生する主灰及び飛灰といった焼却灰には、鉛をはじめとして種々の金属が含有されるが、特に飛灰において鉛の含有量は非常に高濃度となっており、金属基レート剤処理により水への溶解を抑制して管理処分されている。従って、焼却灰の管理及び処理の対策において、正確な鉛濃度の測定は重要課題となっている。
一般に、鉛濃度の測定は、原子吸光度法、プラズマ発光分析法(ICP法)、鉛と反応する各種金属指示薬による吸光度法のいずれかにより測定されている。このうち、原子吸光度法ならびにプラズマ発光分析法は、複数の金属イオンが存在する試料中であっても、正確に鉛イオンの測定が可能であるが、測定装置が高価であり、設備に配管、排気等の設備を必要とするなど、汎用性に欠ける。これに対し、吸光度法は比較的容易な装置で測定できかつ安価である反面、試料中の複数の共存物による影響を受けやすいという欠点がある。また、鉛のみに反応する金属指示薬は存在しないため、正確な試料中の鉛濃度を測定するためには、鉛以外の金属イオンを除去する煩雑な前処理を行うか又は前処理を行わない場合は、主に多成分定量法が用いられる。多成分定量法は、ランバートベールの法則において、複数の成分の吸収が重ね合わさっている場合の式
A(ν)=ΣiCiαi(ν)
Ci・・・・・・各成分に対する濃度
ν・・・・・・・波長
αi(ν)・・・νにおける各成分に対する単位濃度の吸光度
を利用し、校正段階において予め測定しておいた各成分のαi(ν)を用い、測定される未知混合物の周波数スペクトルA(ν)からCiを推定するものである。この方法を適用することにより、複数の金属イオンが存在する試料中から、鉛イオンの濃度を吸光度法により正確に測定することが可能である。しかし、この方法では鉛以外の金属イオンの濃度を別途測定し、その影響を多数のデータから算出し、校正する必要があり、共存する金属イオンごとに測定を行わなくてはならず、操作が煩雑であるという問題がある。
本発明者らは、既に吸光度法による特定金属の濃度測定をより簡便なものとする方法として、特定のポルフィリン核導入ポリマーと金属イオンとの錯体形成反応による吸光度変化を測定することにより試料中の微量重金属濃度を測定する方法、及び複数の金属反応性の異なるポルフィリン核導入ポリマーを組み合わせて用い、同時に多種類の微量重金属を測定する方法を報告している(特許文献1、特許文献2)。
米国特許第6,437,067号 米国特許第6,515,089号
しかしこの方法では、複数の金属イオンが存在する試料中において、鉛イオンのみの濃度を測定する場合でも、複数のポルフィリンポリマーを使用し、試料中の金属イオンそれぞれに対しある波長範囲の吸収スペクトルを分光光度計で計測し、その結果をコンピュータにより重回帰分析して計測結果を算出するという、複雑な工程を経なければならない。
本発明は、吸光度法による鉛濃度測定において、吸収スペクトルを取得することなしに複数の金属イオンが存在する試料中に含まれる鉛イオンの濃度を簡便かつ高精度に測定するための方法を提供することを目的とする。
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、焼却灰、焼却飛灰の灰抽出水等の鉛及び他の金属を含有する試料にポルフィリン化合物を添加した後、最低2つの波長範囲の光を照射し、その吸光度を測定し、それらの吸光度を演算することにより、多種類のポルフィリン化合物の使用や煩雑なデータ測定及び算出過程を必要とすることなく、当該試料中に含まれる鉛イオンの濃度を高精度に測定することができることを見出した。
すなわち、本発明は、鉛及び他の金属を含有する試料にポルフィリン化合物を添加した溶液に、波長の異なる2種以上の光を照射してそれぞれの光の吸光度を測定することを特徴とする当該試料中の鉛濃度の測定法を提供するものである。
本発明によれば、多種類のポルフィリン化合物の使用や煩雑なデータ測定及び算出過程を必要とすることなく、焼却灰や焼却飛灰の灰抽出水等の複数の金属を含む試料中の鉛濃度を高精度に測定することができる。また、本発明測定法は、大型の測定装置やコンピュータ等の計算機を必要としない簡易な測定装置で実施可能である。
本発明の測定法に用いられるポルフィリン化合物としては、鉛を含む金属イオンと反応し錯体形成するものであればよいが、例えば、TPPS(5,10,15,20−Tetraphenyl−21H,23H−porphinetetrasulfonic acid,disulfuric acid,tetrahydrate)、TMPyP(5,10,15,20−Tetrakis(N−methylpyridinium−4−yl)−21H,23H−porphine,tetrakis(p−toluenesulfonate))、TTMAPP(5,10,15,20−Tetrakis{4−〔N−(trimethyl)ammonio〕phenyl}−21H,23H−porphine,tetrakis(p−toluenesulfonate))、米国特許第6,437,067号、同第6,515,089号に記載のポルフィリン核導入ポリマーなどの水溶性ポルフィリン化合物、あるいは、ポルフィリンそのものやTPP(5,10,15,20−Tetraphenyl−21H,23H−porphine)などの水溶性の低いポルフィリン化合物などが挙げられる。
このうち、水溶性ポルフィリン化合物が好ましく、特にTPPS及び前記ポルフィリン核導入ポリマーが好ましい。ここで、ポルフィリン核導入ポリマーは、ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル重合させて得られるポリマーである。ここで、ビニル基を有するポルフィリン化合物としては、特に限定されないが、例えば以下の式(1)〜(5)に示すものが挙げられる。
〔式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
なかでも、式(1)においてR=HであるプロトポルフィリンIX(以下、「PPfacid」と略称する)、式(1)においてR=メチル基であるプロトポルフィリンIX ジメチルエステル(以下、「PPDE」と略称する)、式(2)で表される5,10,15,20−テトラキス[4−(アリロキシ)フェニル]−21H,23H−ポルフィリン(以下、「TAPP」と略称する)が好適なものとして挙げられる。これらのポルフィリン化合物は市販品として入手でき、又は市販品の官能基を変換することにより合成できる。
また、ラジカル重合性単量体としては、特に限定されないが、例えば次の一般式(6)
〔式中、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−(CH2nCOOR5、−(CH2nOCOR5、−(CH2nN(R5)(R6)、−(CH2nCON(R5)(R6)、−(CH2nA(R5及びR6は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシメチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはフェニルアルキル基を示し、Aはハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、シアノ基又はハロゲン化カルボニル基を示し、nは0〜6の整数を示す)、又は置換基を有してもよいイミダゾリル基、ピリジル基若しくはフェニル基を示す。〕
で表される化合物が挙げられる。
具体的な化合物としては、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、5−ヘキセン酸、アリルアミン、3−ブテン酸、β−メタリルアルコール、アリルアルコール、N,N−ジメチルアクリルアミド、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、塩化アリル、酢酸ビニル、マレアミド、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレインアミド酸、マレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、フマルアミド、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸水素エチル、フマロニトリル、塩化フマリル、クロトンアミド、クロトン酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトノニトリル、臭化クロトノイル、塩化クロトノイル、クロチルアルコール、臭化クロチル、塩化クロチル、イソクロトン酸、トランス−1,2−ジクロロエチレン、シトラコン酸、シトラコン酸ジメチル、メサコン酸、アンゲリカ酸、アンゲリカ酸メチル、チグリン酸、チグリン酸メチル、チグリン酸エチル、塩化チグロイル、チグリックアルデヒド、N−チグロイルグリシン、シンナムアルデヒド、シンナムアミド、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、シンナモニトリル、塩化シンナモイル、臭化シンナミル、塩化シンナミル、3−メチル−2−ブテナール、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ブテンニトリル、3−メチル−2−ブテン−1−オール、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン等が挙げられる。
使用するビニル基を有するポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体との量比は、ポルフィリン化合物:ラジカル重合性単量体の重量比で、1:100〜1:10,000、特に1:200〜1:1,000が好ましい。
ビニル基を有するポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体とのラジカル共重合により得られるポルフィリン核導入ポリマーの分子量は特に限定されないが、光散乱法による重量平均分子量で5万〜500万、特に10万〜100万が好ましい。
ビニル基を有するポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体とのラジカル共重合は、有機溶媒中、重合開始剤を添加して行われる。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラハイドロフラン(THF)、ベンゼン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられるが、特に、ポルフィリン化合物としてPPfacid又はPPDEを使用するときはDMSO、ポルフィリン化合物としてTAPPを使用するときはTHFが好適に使用される。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
反応時間は、5〜30時間、特に15〜25時間が、反応温度は30〜80℃、特に55〜65℃が好ましい。反応後は、透析等により、ポリマーを単離及び洗浄すればよい。
これらのポルフィリン化合物のうち、TPPS及びPPDE−AAm(プロトポルフィリンIXジメチルエステル−アクリルアミドポリマー)が特に好ましい。
本発明の測定法に用いられる試料は、鉛及び他の金属を含有する試料である。ここで、他の金属としては、亜鉛、銅、カドミウム、ナトリウム、カルシウム等が挙げられる。当該試料としては、焼却灰または焼却飛灰の灰抽出水が好ましい。これらの焼却灰中には、通常、鉛、亜鉛、銅、カドミウム、ナトリウム、カルシウム等が含まれているが、ナトリウム、カルシウムの含有量は非常に多く、亜鉛及び鉛の含有量がそれに続き、銅の含有量は僅かであり、カドミウムはほとんど含有されない。これらの金属のなかで、ポルフィリン化合物と反応するものは、鉛、亜鉛、銅及びカドミウムであり、ナトリウムやカルシウムは反応しない。このことから、ポルフィリンと鉛の反応に影響を及ぼす金属は亜鉛であることが分かる。
当該被検試料に添加するポルフィリン化合物の量は、ポルフィリン化合物が金属イオンと錯体を形成する量であればよいが、焼却灰等の環境試料の場合、試料と混和後の濃度として通常0.1〜100μmol/L、さらに1〜30μmol/Lとなる量が好ましい。
被検試料にポルフィリン化合物を添加した水溶液は、錯体形成反応を十分なものとするため、加熱するのが好ましい。加熱温度は40〜100℃、さらに60〜80℃が好ましい。加熱時間は3〜60分、さらに5〜30分が好ましい。
次に前記水溶液に、波長の異なる2種以上の光を照射してそれぞれの光の吸光度を測定する。照射する光としては、青色光及び緑色光が好ましい。ここで青色光としては、ピーク波長が440〜495nmにあるもの、特にピーク波長が450〜480nmにあるものが好ましい。また緑色光としては、ピーク波長が495〜550nmにあるもの、特にピーク波長が500〜530nmにあるものが好ましい。光源としてはレーザーのように単一波長のみを出力するものであっても発光ダイオードのようにピーク波長を中心に波長に幅を持った光を出力するものであってもよい。
光を照射し、それぞれの光の吸光度の差は、試料中の鉛とポルフィリン化合物の反応による吸光度であり、当該吸光度の差から試料中の鉛濃度を算出することができる。
以下、本発明の測定法についてより詳細に説明する。
図1に鉛のみを含む水溶液を試料として、光源に青色光源を用いた場合のPPDE−AAm(pH11)の吸光度変化と鉛濃度との関係の経時変化を示した。青色光源を用いた場合のポルフィリンの吸光度変化は図示したように鉛の濃度依存的に増加することが認められた。
しかしながら、ここに他の金属、特に亜鉛を夾雑させると鉛濃度による吸光度変化量は亜鉛濃度依存的に抑制された(図2)。これは他の金属の夾雑により、鉛が反応できるポルフィリン化合物の相対量が減少したことと、鉛が反応した際のポルフィリンの最大吸収波長に対して亜鉛の吸収ピークの裾野の部分が負に重なること、鉛のポルフィリンとの反応速度が低下することの3つの原因が相互に関わっていると考えられる。
それぞれの金属により反応時のポルフィリンの最大吸収波長が異なるとはいえ、焼却灰抽出水のように特に亜鉛を多量に含む試料の場合、鉛以外の夾雑金属が鉛の最大吸収波長に影響してしまうのは図2からも明らかである。青色光源の場合、吸光度変化は鉛濃度依存的に増加し、夾雑金属(亜鉛)濃度依存的に抑制が認められた。これとは別の波長において夾雑金属(亜鉛)濃度依存的に増加し、鉛濃度依存的に抑制が起こる吸収波長を見出すことが出来れば、少なくとも2波長以上の吸光度を演算することにより夾雑金属の影響を相殺することが可能である。そこで、亜鉛が反応した際に、ポルフィリンの吸光度の変化が上記の条件を満たす波長を調べたところ、510nm付近が該当した。図3には鉛と亜鉛の両者を種々の濃度含有する試料の青色ならびに緑色光源にそれぞれにおける吸光度の時間変化を示した。図3に示すように青色光源を用いた場合のポルフィリンの吸光度変化とは逆に、緑色光源を用いた場合のポルフィリンの吸光度変化は、亜鉛濃度遺族的に増加するが、鉛濃度依存的に抑制されることが分かった。
そこで、青色光源でのポルフィリンの吸光度変化ΔABSBLUEと緑色光源でのポルフィリンの吸光度変化ΔABSGREENから式1によって、夾雑金属の存在を相殺した鉛による吸光度変化ΔABSPb[C]を算出した。
(式1)
ΔABSPb[C]=ΔABSBLUE−f・ΔABSGREEN
この場合のfは実験を重ねて得た経験値であり、本発明の条件では0.65程度になったが、条件により異なるものであり、実験により求めることができる。
本発明の測定法は、簡便な操作で行うことができるため、用いる装置も簡便になる。本発明の測定法を実施できる自己完結型測定装置について説明する(図4)。
装置は投光手段、受光手段、加熱手段、出力手段、通信手段、制御手段、演算手段、入力手段、データ保存手段のいずれかあるいは全てを含むものとする。投光手段として図4ならびに本発明では発光ダイオードを用いたが、これに限定されるものではない。また、本発明では受光手段についてはフォトダイオードを使用したが、他にフォトトランジスタや安価なCdSセルなどを用いても良い。受光手段から得られた信号は必要に応じて適切な手段により増幅され、演算手段内部あるいは外部に設けたアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)を通して演算手段に渡される。加熱器には抵抗器をマイコンで制御して加熱する例示をしたが、PTCヒーターなど素子自体が温度制御を行う機能を持つものであっても良い。本発明では、出力手段には液晶表示器を用いたが小型プリンタを内蔵して結果を印字したり、通信手段と組み合わせて携帯電話やパーソナルコンピュータに結果を送信したりする方法でも良い。制御手段ならびに演算手段は装置の小型化のためマイコンを利用したが、通信手段により無線あるいは有線でLANに接続し、サーバーから装置を制御するものであっても良い。入力手段には押しボタンを使用したが、マウスのような装置を用いても良い。データ保存手段にはマイコン内部あるいは外部のメモリを使用したが、通信手段と組み合わせて外部装置に保存する方法でも良い。いずれにおいても、本例示により発明の実施手段が限定されるものではない。
実施例1.発光ダイオード光源による夾雑金属存在下での鉛濃度測定
使用したポルフィリン化合物:PPDE−AAm(pH11)
PPDE−AAmはpH11において鉛、銅、亜鉛、カドミウムに反応し、それぞれの金属が反応した際の吸光度変化が見られる最大吸収波長は、銅:402nm付近、亜鉛:413nm付近、カドミウム:425nm付近、鉛:465nm付近である。鉛の濃度を測定するためには465nm付近にピークを持つ光源が望ましく、ここでは青色発光ダイオード(ピーク波長470nm)を用いた。
ポルフィリンが金属と反応した際の青色光源における吸光度の変化量ΔABSBLUEは反応開始前において青色光源の光が試料を通過した光量IBLUE[S]と反応終了後において青色光源の光が試料を通過した光量IBLUE[E]から以下の式2で表される。
(式2)
ΔABSBLUE=−Log(IBLUE[E]/IBLUE[S])
また、同様に、夾雑金属の存在を相殺するには510nm付近にピークを持つ光源を青色光源と併用するのが望ましく、ここでは緑色発光ダイオード(ピーク波長は505nmであり、実際には青緑色に見えるが、ここでは、緑色と表現する)を用いた。ポルフィリンが金属と反応した際の緑色光源における吸光度の変化量ΔABSGREENは反応開始前において緑色光源の光が試料を通過した光量IGREEN[S]と反応終了後において緑色光源の光が試料を通過した光量IGREEN[E]から以下の式3で表される。
(式3)
ΔABSGREEN=−Log(IGREEN[E]/IGREEN[S])
得られた青色光の吸光度ΔABSBLUEと緑色光の吸光度ΔABSGREENから夾雑金属の影響を相殺した鉛濃度を表す吸光度ΔABSPb[C]を式4で定義した。この場合のfは種々の濃度の鉛ならびに夾雑金属を含む溶液を測定した場合に最も誤差が少なくなる係数である。
(式4)
ΔABSPb[C]=ΔABSBLUE−f・ΔABSGREEN
反応時間が短い場合(5分から10分)鉛の反応速度が夾雑金属によって抑制されるため、式4を満たすfの値は大きく、反応時間が長いと鉛の反応が平衡に達するためfの値は小さくなる。また、同時に、式から導かれるΔABSPb[C]と鉛のみの溶液により得られる真の値ΔABSPb[T]との最小自乗誤差は反応時間と共に減少する。
この条件においてはf=0.65付近に収束した(図5)。このfの値は無限に反応時間を与えられる理想実験系では最終的に収束するが、現実的には誤差等から許容できる値を経験的に決定する必要がある。また、測定系で用いる波長が異なればfの値も変化するので、用いる光源ごとに最適な数値を求める必要がある。図3にはポルフィリンが金属と反応した際の青色光源における吸光度の変化量ΔABSBLUEおよび、緑色光源における吸光度の変化量ΔABSGREENならびにf=0.65の時の式4より得られるΔABSPb[C]について示した。
実施例2.焼却灰抽出水中の鉛濃度測定
本発明による測定では夾雑金属を含まない鉛濃度が0ppmおよび1.0ppmの水溶液検量試料、ならびに、試験試料について実施例1中の式4より求められるΔABSPb[C](試料中の鉛濃度により区別するために、ここではそれぞれ順番に、ΔABSPb[C_0]、ΔABSPb[C_1]、ΔABSPb[C_S]と表記する)をそれぞれ求め、式5により、試験試料中の鉛の濃度[Pb_S]を算出できる。
実稼働している一般廃棄物焼却場より焼却灰を入手し、環境省勧告13号試験法に基づき、焼却灰中の金属イオンを水に抽出した。すなわち、焼却灰50gを水500mLに懸濁させ、6時間180rpmにて水平方向にレシプロ振盪し、上澄を1μmの孔サイズの濾紙で濾過して焼却灰抽出水を得た。本発明による焼却灰抽出水中の鉛の濃度測定と同時に、同試験法により公定法として認められている原子吸光度法により試料中の鉛、銅、亜鉛の濃度を測定し、両者の結果を比較した(表1)。
鉛のみを含む水溶液をポルフィリンポリマー(PPDE−AAm)と反応させた時のPPDE−AAmの青色光(ピーク波長470nm)に対する吸光度を示す図である。 鉛と亜鉛を含む水溶液をポルフィリンポリマー(PPDE−AAm)と反応させた時のPPDE−AAmの青色光(ピーク波長470nm)に対する吸光度を示す図である。 鉛と亜鉛を含む水溶液をポルフィリンポリマー(PPDE−AAm)および青色光(ピーク波長470nm)および緑色光(ピーク波長505nm)に対する吸光度ならびに式4より得た両者の演算値を示す図である。 本発明の装置の模式を示す図である。 本発明において式4中のfの値を決定するために用いた図である。グラフ中の数値(0.01〜0.06)は最小自乗誤差を示す。斜線範囲は最も誤差が少ない範囲。

Claims (5)

  1. 鉛及び他の金属を含有する試料にポルフィリン化合物を添加した溶液に、波長の異なる2種以上の光を照射してそれぞれの光の吸光度を測定することを特徴とする当該試料中の鉛濃度の測定法。
  2. 波長の異なる2種の光が、青色光及び緑色光である請求項1記載の測定法。
  3. 青色光のピーク波長が450nmから480nmに存在するものであり、緑色光のピーク波長が500nmから530nmに存在するものである請求項2記載の測定法。
  4. 得られたそれぞれの光の吸光度の差を、試料中の鉛とポルフィリン化合物の反応による吸光度とするものである請求項1〜3のいずれか1項記載の測定法。
  5. 鉛及び他の金属を含有する試料が、焼却灰または焼却飛灰の灰抽出水である請求項1〜4のいずれか1項記載の測定法。
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