JP2006239741A - ハイドロピアシング方法およびそれに用いられる装置、並びにハイドロピアシング加工製品 - Google Patents

ハイドロピアシング方法およびそれに用いられる装置、並びにハイドロピアシング加工製品 Download PDF

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Abstract

【課題】適切に軸押しオーバーランの発生を回避することができ、孔明き加工により寸法精度の優れた打ち抜き孔の成形加工が可能なハイドロピアシングを提供する。
【解決手段】金属素管を孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持し、内部に供給した加工液に圧力を負荷するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するハイドロピアシング方法であって、前記孔明け用ポンチでピアシングした際に、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とするハイドロピアシング方法および装置である。具体的には、軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えること、ハイドロピアシングの制御シーケンスを改善すること、または軸押しシリンダーを加工液の圧力変動にバランスさせる構造とすることができる。
【選択図】図9

Description

本発明は、管状の金属素材の内部に供給された加工液に圧力を負荷して膨出成形するハイドロフォームの工程内でピアシング(孔明け加工)を行うハイドロピアシング方法、およびその加工に用いられるハイドロピアシング装置、並びにその方法によって成形されるハイドロピアシング加工製品に関するものである。
通常、ハイドロフォームでは、素材となる金属管(以下、「金属素管」という)の内部に加工液を供給し、この加工液に圧力(以下、単に「内圧」という)を負荷し、金属素管を保持する金型形状にならって膨出成形することにより、種々の複雑形状の管状製品を加工することできる。このため、ハイドロフォームは自動車部品をはじめとして種々の加工分野の成形加工に広く利用されている。
図1は、一般的な金属管のハイドロフォームの加工工程を説明する図であり、(a)は加工前の状態を示し、(b)は加工後の状態を示している。図1(a)、(b)に示すように、ハイドロフォームでは、上下一対の金型1、2にセットされた金属素管3の内部に導入孔5を通じて加工液を導入し、この加工液の内圧を高めつつ、金属素管3の両端をシール工具を兼ねた軸押し工具4を図示しない油圧シリンダーで前進させ、軸押しを行うことにより金型キャビティ壁面1a、2aに接触するまで、金属素管3の膨出成形を行い、種々の断面形状を有する加工製品を得ることができる。
なお、軸押しは、膨出変形における金属素管のメタルフローを促進し、拡管限界を向上させることができることから、極めて重要な加工技術である。軸押しなしで加工液の内圧を高めるだけで成形する場合には、膨出にともなう肉厚減少が著しいために破断が生じやすく、限られた拡管しかできないことになる。このような技術的な要因から、ハイドロフォームにおいて軸押し加工は必須の技術要素となっている。
上記ハイドロフォームは、他の成形加工法に比べて種々の特長を発揮することができる。主なもののうち第1の特長としては、長手方向に断面形状の異なるやや複雑な形状を得ることができることから、従来の加工法では溶接で組み付けられていた部品を一体成形できることが挙げられる。
次に、第2の特長は、製品の全体に亘って加工硬化が得られ易いため、低強度の金属素管を用いても高強度の加工製品を得られることである。さらに、第3の特長は、加工後のスプリングバックが少ないため、製品の寸法精度が良好、すなわち形状凍結性に優れることから、手直しの工程が省略できる。
このようなハイドロフォームの優れた特長が評価され、近年においては、特に自動車部品の製造工程での主要な加工方法として採用されるようになっている。
ところで、自動車部品などの加工製品では、塗装時の液の出し入れ用の孔、他の部品を取り付けるための孔、位置決めをするための孔など各種の孔をあける必要がある。金属板のプレス成形品の場合には、プレス成形の後工程でダイスとポンチとを用いて、簡単に孔明け加工を行うことができる。
しかしながら、管のハイドロフォーム品の場合には閉断面形状であるため、後工程での工具による孔明けは難しく、管内部の所定位置にダイスを配置するのが困難な場合が多い。このため、ハイドロフォーム工程中の孔明け加工、すなわち「ハイドロピアシング」と呼ばれる孔明け加工法が用いられている。「ハイドロピアシング」は、金属素管を孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持し、内部に供給した加工液に圧力を負荷するとともに、管端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォームの工程内で加工液の内圧を利用してピアシング(孔明け加工)を行う加工方法である。
ハイドロピアシングには内向きピアシングと外向きピアシングの二つの方法がある。図2は、内向きピアシングを説明する図であり、(a)はピアシング前のハイドロフォーム状態を、(b)はピアシング後の孔周辺部の状態を示している。図2(a)では上型1のダイス孔1b内に収容された孔明け用ポンチ6は後退しないように保持され、ポンチ底面6aは上型キャビティ壁面1aの一部を構成いている。金属素管3を膨出成形した後、加工液の内圧を保ったまま油圧シリンダー100によって孔明け用ポンチ6を前進せしめ、金属素管3の内側に向かってピアシングを行う。
図2(b)では、シャープなポンチエッジ6bによって金属素管3に亀裂を発生させた状態を示し、ポンチ底板に接触していた材料は、抜き屑3bとなる。内向きピアシングの過程で金属素管内面を支えるのは加工液の内圧だけであり、打ち抜き孔周縁部3aが金属素管内部に向かって曲がる現象(以下、「孔縁曲がり」という)が現れる。加工液の内圧を増加することによって孔縁曲がりをある程度小さくすることはできるが、皆無にすることができない。
図3は、外向きピアシングを説明する図であり、(a)はピアシング前のハイドロフォーム状態を、(b)はピアシング後の孔周辺部の状態を示している。図3(a)では油圧シリンダー100を加圧前進させることによって孔明け用ポンチ6は後退しないように保持され、ポンチ底面6aは上型キャビティ壁面1aの一部を構成している。金属素管3を膨出成形した後、加工液の内圧を保ったまま油圧シリンダー100を後退させたときに、孔明け用ポンチ6が加工液の内圧によって高速後退し、金属素管3の外側に向かってピアシングを行う。
図3(b)では、シャープなダイス孔1cによって金属素管3に亀裂を発生させた状態を示し、ポンチ底板に接触していた材料は抜き屑3bとなって、ダイス孔1b内に入り込む。抜き屑3bは、金属素管3を型から抽出した後、油圧シリンダー100によって孔明け用ポンチ6を前進させることによって除去する。外向きピアシングでは、その過程で打ち抜き孔周縁部3aが常に上型キャビティ壁面1aに押し付けられているので、内向きピアシングで見られる孔縁曲がりは発生しない。
特開2001−18016号公報
前述の通り、自動車部品等のハイドロフォーム品には各種の孔明け加工が要求され、孔縁曲がりの要求精度、孔形状や寸法精度、抜き屑の処理などを考慮して、加工液の内圧負荷を利用した内向きハイドロピアシング、外向きハイドロピアシングが使い分けられている。
しかしながら、前記図2に示す内向きハイドロピアシング法または前記図3に示す外向きハイドロピアシングのいずれであっても、ピアシング後における打ち抜き孔の寸法精度が悪化したり、内向きピアシングの場合に孔明け用ポンチの寿命が短くなるという問題がある。特に、打ち抜き孔の寸法が大きい場合、若しくは異形形状の孔をピアシングする場合、または多数の孔を同時にピアシングする場合には、寸法精度の悪化が顕著になる。
このため、高精度が要求される打ち抜き寸法が大きな孔、若しくは異形形状の孔、または多数の孔を同時にピアシングする場合には、ハイドロピアシングを適用することができず、ハイドロフォーム後に新たな工程として孔明け加工を追加することが必要になる。前述したように、ポンチとダイスを用いた打ち抜きによる孔明け加工が困難であることから、エンドミルなどによる切削加工やレーザ切断などを採用せざるを得ない。
これらの切削加工やレーザ切断はいずれも非効率であるばかりではなく、前者の場合には切削による変形が生じやすい薄肉品には適用し難い。また、後者の場合には、レーザ切断時にスパッタとよばれる溶融した金属の粉が製品に付着し、このスパッタを除去するために新たな工程を追加しなければならないという問題も生じることになる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、自動車部品等の各種の孔明け加工に際し、高精度が要求される大寸法の孔、若しくは異形形状の孔、または多数の孔を同時にピアシングする場合であっても、ハイドロピアシングで加工された打ち抜き孔の寸法精度を向上させることができ、また内向きピアシングの場合には孔明け用ポンチの寿命を低下させない、ハイドロピアシング方法およびそれに用いられる装置、並びにハイドロピアシング加工製品を提供することを目的としている。
本発明者らは、前述の課題を達成するため、外向きピアシングで加工された打ち抜き孔の寸法精度が悪化する原因を調査すべく、各種の加工試験を繰り返した。
図4は、ハイドロピアシングによる孔寸法精度の調査に用いた試験装置の全体構成を示す図である。図5は、同試験装置の中央部の断面構造を示す図である。本試験装置は、外向きハイドロピアシングが可能な装置構成であり、ベッド201上には下金型2およびその両端に対面させた軸押しシリンダー7が設置され、昇降ラム200には上型1が取り付けられている。軸押しシリンダー7に接続される軸押し工具4は、油圧により前後進が可能である。
金型1には、前記図3と同様に孔明け用ポンチ6と油圧シリンダー100が内蔵されている。下金型2に金属素管3を載置し、上金型1を降下させて下金型2に所定の力で押し付けた後、軸押し工具4を前進させて金属素管3の管端に押しつけ、軸押し工具4内に設けられている導入孔5から金属素管3内に加工液を注入する。金属素管3の内部に充満した加工液の内圧を増加させながら、軸押し工具4を前進せしめ、金属素管3を図5に示すように、矩形断面に膨出加工する。
図6は、ハイドロピアシングにおけるダイスの孔形状(破線)とピアシング後の孔形状(実線)とを比較した図である。同図に示すように、金属素管3を図5に示すように、矩形断面に膨出加工した後、矩形孔を外向きピアシングしたところ、ダイス孔形状300に対して、打ち抜き孔301は歪んだ形状となった。
図7は、今回の試験装置におけるハイドロピアシングの制御シーケンスを示すフローチャートである。試験では、加工液の内圧を軸押し工具の導入孔5に連絡した圧力計202で測定するとともに、軸押しシリンダーに接続された軸押し工具の変位をベッド上に載置した変位計203で、孔明け用ポンチの変位を金型内に設置した変位計204で測定した。
図8は、試験で得られたハイドロピアシングの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。図8(a)〜(c)においては、上下一対の金型にセットされた金属素管の中に加工液が充満した時点を基準点とし、加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位を0(ゼロ)としている。
図8に示すように、加工時間の経過にともなって加工液の内圧が増大し、軸押し工具の変位が増大し、ハイドロフォームが進行していく。A点で所定の成形圧力に達して膨出成形は完了し、軸押し工具は一定位置に保持されている。この状態を所定の時間保持した後、B点から孔明け用ポンチを後退させ外抜きハイドロピアシングを開始する。C点でピアシングが完了し、その後加工液の内圧が急激に低下する。
ここで、本発明者らは、加工液の内圧が急激に低下した時点で、それまで一定位置に保持されていた軸押し工具が軸押し方向に前進する現象(以下、「軸押しオーバーラン」という)に注目し、この軸押しオーバーランが前記図6に示すピアス孔の形状のゆがみの原因と考えた。また、内向きピアシングにおける孔明け用ポンチの寿命低下の問題も軸押しオーバーランにより、孔明け用ポンチに局部的な力が加わることが原因と考えた。
そこで、軸押しオーバーランの具体的な防止手段として、(A)軸押しシリンダーに機械的なストッパーを設けること、(B)ハイドロピアシングによる孔明け加工の制御シーケンスを改善すること、および(c)軸押しシリンダーを加工液の圧力変動にバランスさせる構造にすることが有効であることを知見した。
また、軸押しオーバーランを抑制するには、さらに(d)軸押しシリンダーの前進端を軸押し終了ポイントとすること、(e)軸押しシリンダーの直近にチェッキ弁を設置することなども適用できることも知見した。
そもそも、ハイドロピアシングの打ち抜き孔に要求される寸法精度は、孔の用途によって異なることに加え、打ち抜き孔の寸法精度の悪化の程度も、加工製品の形状や軸押し量、孔形状、打ち抜き孔の位置によっても異なる。このため、必ずしも両側の軸押しシリンダーに軸押しオーバーランを防止する手段を施す必要はなく、片側の軸押しシリンダーに施すだけでも有効な場合が多いことも知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(3)のハイドロピアシング方法およびハイドロピアシング装置、並びに(4)のハイドロピアシング加工製品を要旨としている。
(1)金属素管を孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持し、内部に供給した加工液に圧力を負荷するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するハイドロピアシング方法であって、前記孔明け用ポンチでピアシングした際に、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とするハイドロピアシング方法である。
(2)孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持された金属素管の内部に供給した加工液を加圧するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するハイドロピアシング装置であって、前記押付け工具を押圧する軸押しシリンダーと、前記孔明け用ポンチでピアシングした際に、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段を具備していることを特徴とするハイドロピアシング装置である。
(3)上記(1)、(2)のハイドロピアシング方法および装置において、ピアシングした際に押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段として、押付け工具を保持する軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えることができる。
同様な手段として、ハイドロピアシングの制御シーケンスを改善することができ、具体的には、ハイドロフォームによる金属素管の膨出成形後であって、孔明け用ポンチ作動からの経過時間、孔明け用ポンチの変位量、または加工液の内圧低下量のうちいずれかを基準として、押付け工具を保持する軸押しシリンダーを後退させるように制御するのが望ましい。
さらに、同様な手段として、押付け工具を保持する軸押しシリンダーをピアシングした際の加工液の圧力変動にバランスさせる構造とすることができる。
(4)上記(1)または(3)のいずれかに記載されたハイドロピアシング方法によって成形されたことを特徴とするハイドロピアシング加工製品である。
本発明のハイドロピアシング方法およびハイドロピアシング装置によれば、自動車部品等の各種の孔明け加工に際し、高精度が要求される大寸法の孔、若しくは異形形状の孔、または多数の孔を同時にピアシングする場合であっても、適切に軸押しオーバーランの発生を回避することができ、孔明け加工により寸法精度の優れた打ち抜き孔の成形加工が可能になる。また、内向きピアシングについては、孔明け用ポンチの寿命の低下を防止することができる。これにより、付加的な工程が省略できるとともに、自動車部品等の加工効率やコスト低減を図ることができる。
本発明のハイドロフォーム方法は、金属素管を孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持し、内部に供給した加工液に圧力を負荷するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するに際し、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないこと、すなわち、軸押しオーバーランを防止することを特徴としている。以下に、本発明の具体的な構成および手段について、機械的なストッパーの設置、制御シーケンスの設定、および内圧バランスシリンダーの構成に区分して説明する。
1.機械的なストッパーの設置
図9は、ハイドロピアシング装置の軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えた構成を示す図である。図9に示す構成では、軸押し工具4を接続する軸押しシリンダー7にストッパー8を設置し、ハイドロフォームで加工製品を成形するのに必要な軸押し量に対応して、ストッパー8の長さLを決定している。
図10は、軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えた場合における、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。前記図8と同様に、一対の金型内にセットされた金属素管の内部に加工液を導入した時点を基準点とし、加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位を0(ゼロ)としている。
図10に示すように、加工時間の経過にともない、加工液の内圧と軸押し工具4の変位が増大しハイドロフォームが進行していく。A’点においてストッパー8が金型1、2の側面に当たり、軸押し工具4の変位は機械的に保持され一定の値で推移する。ストッッパー8の長さLは、予め必要な軸押し量を確保できるように設定されている。また、前述の通り、軸押しシリンダー7へ指令される軸押し量は、ストッパー8で制限される軸押し量より大きく設定されているため、A’点では軸押し工具は金属素管の管端を押圧する状態である。
引き続き、軸押し工具4の変位は一定で推移し、A点で加工液の内圧が所定圧力に達すると、ハイドロフォームによる膨出成形が完了し、B点からピアシングが開始され、孔明け用ポンチ6の作動にともない変位が増大する。そして、ピアシングが完了するC点から加工液の内圧が急激に低下しているが、軸押し工具4は金属素管3を押圧したままの状態であり、その変位が増加することがなく軸押しオーバーランを防止するこができる。
図9に示す構成において、軸押しシリンダー7に付加的なストッパー8を設置することなく、軸押しシリンダー7の前進端で軸押しシリンダーの変位量を制限するようにして、軸押しシリンダー7の前進端をA’点で示す変位量と一致するようにしてもよい。
2.制御シーケンスの設定
(孔明け用ポンチ作動からの経過時間を基準にする場合)
図11は、孔明け用ポンチ作動からの経過時間を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。図11に示す制御シーケンスでは、ピアシングの開始指令後であって、孔明け用ポンチ作動から所定時間の経過後に軸押しシリンダーへ後退指令を出すことにしている。
図12は、前記図11に示す制御シーケンスにおける、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。A点でハイドロフォームによる膨出成形が終了した後、孔明け用ポンチに作動指令(後退指令)が出され、その指令に基づき孔明け用ポンチが外側に移動し、B点からピアシングを開始し、C点でピアシングを完了する。
前記図11に示す制御シーケンスでは、ピアシングが完了するC点直後に軸押しシリンダーが後退するように、孔明け用ポンチ作動を基準にタイマーを設定し、所定時間の経過後に軸押しシリンダーへ後退指令を出す。
このため、ピアシング終了後に加工液の内圧が低下する場合であっても、軸押しオーバーランを防止でき、軸押し工具により加工製品を過大に押圧することがなく成形加工できる。通常、装置構成により応答速度が異なることから、孔明け用ポンチ作動時を基準にするタイマー設定は予め実験などにより決定する必要がある。
(孔明け用ポンチ変位量を基準にする場合)
図13は、孔明け用ポンチ変位量を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。図13に示す制御シーケンスでは、ピアシングの開始指令後であって、孔明け用ポンチ変位量が所定量に達した後に軸押しシリンダーへ後退指令を出すことにしている。
図14は、前記図13に示す制御シーケンスにおける、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。A点でハイドロフォームによる膨出成形が終了した後、孔明け用ポンチに作動指令が出され、その指令に基づき孔明け用ポンチが外側に移動し、B点からピアシングを開始し、C点でピアシングを完了する。
前記図13に示す制御シーケンスでは、ピアシングが完了するC点直後に軸押しシリンダーが後退するように、孔明け用ポンチ変位の測定信号に基づき、孔明け用ポンチの変位量が所定の設定量に達した後に軸押しシリンダーへ後退指令を出す。
このため、ピアシング終了後に加工液の内圧が低下する場合であっても、軸押しオーバーランを防止でき、軸押し工具により加工製品を過大に押圧することがなく、成形加工を完了することが可能になる。また、装置構成により応答速度が異なることから、孔明け用ポンチの変位量の設定は予め実験などにより決定する必要がある。
(加工液の内圧低下量を基準にする場合)
図15は、加工液の内圧低下量を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。図15に示す制御シーケンスでは、ピアシングの開始指令後であって、加工液の内圧低下量が所定量に達した後に軸押しシリンダーへ後退指令を出すことにしている。
図16は、前記図15に示す制御シーケンスにおけるハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。同様に、A点でハイドロフォームによる膨出成形が終了した後、孔明け用ポンチに作動指令が出され、その指令に基づき孔明け用ポンチが外側に移動し、B点からピアシングを開始し、C点でピアシングを完了する。
前記図15に示す制御シーケンスでは、ピアシングが完了するC点直後に軸押しシリンダーが後退するように、加工液の内圧の測定信号に基づき、例えばD点で示すように、加工液の内圧低下量が所定の設定量に達した後に軸押しシリンダーへ後退指令を出す。これにより、軸押しオーバーランを有効に防止することができる。さらに、加工液の内圧低下量の設定は予め実験などにより決定する必要がある。
3.内圧バランスシリンダーの構成
本発明方法では、軸押しシリンダーをピアシングした際の加工液の圧力変動にバランスさせる構造にすることにより、ハイドロピアシング後において、加工液の内圧が低下した場合でも、内圧の変化に追従することが可能となり、軸押しオーバーランを抑制することができる。
図17は、本発明で適用できる内圧バランスシリンダーの構成例を示す図である。内圧バランスシリンダー9は、ピストン10と、ピストン10を内装するシリンダー11とからなる複動シリンダー構造である。ピストン10は、前方で軸押し工具4と接続する接続端部10a、内部で圧力を受ける受圧面10b、および後方で図示しない油圧装置に連結する連結端部10cからなり、シリンダー11の内壁面とOリング13、13によりシールされる。
シリンダー11の内部には、シリンダー11のボア面11aとピストン10の受圧面10bとで区画され、ピストン10の移動にともなって容積が変化するバランス流体室12が形成されている。そして、軸押し工具4が金属素管3の管端を押圧する状態において、ピストン10および軸押し工具4の内部にバランス流体室12と金属素管3の内部とを導通する導入孔5が設けられる。さらに、その導入孔5でバランス流体室12に相当する位置に貫通孔5aが配置され、バランス流体室12と金属素管3の内部を導通し、加工液が自由に流通することができるようになっている。
ハイドロフォームに際しては、加工液が導入孔5を通して金属素管の内部に供給されるとともに、ピストン10が前進して軸押し工具4が金属素管3の管端を押圧することにより、バランス流体室12および導入孔5に加工液が充満する状態となる。
本発明の内圧バランスシリンダー9では、軸押し工具4が押圧する金属素管3の内径断面積D3と、バランス流体室12におけるピストン10の受圧面10bとが等しく設計されている。このため、ハイドロフォームおよびその後のピアシングによって加工液の内圧が変動した場合であっても、バランス流体室12には導入孔5によって加工液の内圧が導圧されており、常時、加工液の内圧とピストン10の軸押し力をバランスさせることができる。
このため、ピアシング終了後に加工液の内圧が低下する場合であっても、これに対応してピストン10の軸押し力を低減し、バランスさせることができるので、軸押し工具の変位を保持したままで軸押しオーバーランを防止することができる。これにより、寸法精度に優れる打ち抜き孔を成形加工できる。
本発明のハイドロピアシング方法による効果を確認するため、前記図3に示す試験装置を用いて、前記図6の破線で示す孔形状(孔寸法:w1=15mm、w2=15mm、w3=15mm)の外向きハイドロピアシングまたは内向きハイドロピアシングを実施し、打ち抜き孔の寸法精度を調査した。使用した金属素管は外径が60.5mm、肉厚2.0tの溶接鋼管であり、機械構造用鋼管STKM11Aとした。
(実施例1)
本発明例1では、外向きハイドロピアシングを行い軸押しシリンダーに機械的なストッパーを設置した(前記図9参照)。ハイドロフォームでの最大内圧は200Mpaとし、トータルの軸押し量は20mmした。ストッパーの長さLは、この軸押し量が確保できるように設定した。加工液の内圧が200MPaに達した後、孔明け用ポンチを外側に移動させることにより、外向きハイドロピアシングを実施した。
比較例は、前記図7に示す制御シーケンスに基づく外向きハイドロピアシングとした。すなわち、加工時間の経過にともない加工液の内圧が増大し、同時に軸押し工具の変位も増大させ、ハイドロフォームによる膨出成形を完了後、外向きハイドロピアシングを行い、ピアシングの完了後には加工液の内圧が急激に低下した。
比較例では、軸押し工具のオーバーランが約1.2mm発生したのに対して、本発明例1では、軸押し工具のオーバーランは皆無であった。
また、打ち抜き後の孔寸法は、比較例ではW1〜W3の偏差ΔWが0.8mmであったのに対し、本発明例では、ΔWが0.05mm以下となり、製品として問題のないレベルであった。
(実施例2)
本発明例2では、前記図11に示す制御シーケンスに基づく外向きハイドロピアシングとし、孔明け用ポンチ作動から所定時間の経過後に軸押しシリンダーへ後退指令を出し、軸押し工具の後退変位を1.5mmとした。トータルの軸押し量と加工液の最大内圧は実施例1と同様とした。比較例についても、実施例1の場合と同様とした。
比較例では、約1.2mmの軸押し工具のオーバーランが発生したのに対して、本発明例2では、軸押しオーバーランは発生しなかった。また、打ち抜き後の孔寸法は、比較例ではΔW=0.8mmであったのに対し、本発明例2では、ΔWが0.05mm以下となり、製品として問題のないレベルであった。
(実施例3)
本発明例3では、前記図13に示す制御シーケンスに基づく外向きハイドロピアシングとし、孔明け用ポンチ変位量を基準に軸押しシリンダーへ後退指令を出し、軸押し工具の後退変位を1.5mmとした。トータルの軸押し量と加工液の最大内圧は実施例1と同様とした。比較例についても、実施例1の場合と同様とした。
比較例では、約1.2mmの軸押し工具のオーバーランが発生したのに対して、本発明例3では、軸押しオーバーランは発生しなかった。また、打ち抜き後の孔寸法は、比較例ではΔW=0.8mmであったのに対し、本発明例3では、ΔWが0.05mm以下となり、製品として問題のないレベルであった。
(実施例4)
本発明例4は、前記図13に示す制御シーケンスに基づく外向きハイドロピアシングとし、加工液の内圧低下量を基準に軸押しシリンダーへ後退指令した。基準となる内圧低下量を15MPa(内圧値で185MPa)とし、軸押し工具の後退変位を1.5mmとした。トータルの軸押し量と加工液の最大内圧は実施例1と同様とした。比較例についても、実施例1の場合と同様とした。
比較例では、約1.2mmの軸押し工具のオーバーランが発生したのに対して、本発明例4では、0.3mmの軸押し工具のオーバーランが発生後、軸押し工具は後退している。また、打ち抜き後の孔寸法は、比較例ではΔW=0.8mmであるのに対し、本発明例4では、ΔWが0.15mm以下となり、製品として問題のないレベルであった。
(実施例5)
実施例5では、内向きピアシングを行い、孔明け用ポンチの寿命を測定した。他の条件は実施例1の場合と同様であり、本発明例5では軸押しオーバーランは発生しなかった。機械的なストッパーを設置しなかった比較例の孔明け用ポンチの寿命に対して、本発明例5の孔明け用ポンチの寿命は1.5倍となった。
本発明のハイドロピアシング方法およびハイドロピアシング装置によれば、自動車部品等の各種の孔明け加工に際し、高精度が要求される大寸法の孔、若しくは異形形状の孔、または多数の孔を同時にピアシングする場合であっても、適切に軸押しオーバーランの発生を回避することができ、孔明き加工により寸法精度の優れた打ち抜き孔の成形加工が可能になる。また、内向きピアシングについては孔明け用ポンチの寿命も向上する。これにより、付加的な工程が省略できるとともに、自動車部品等の加工効率やコスト低減を図ることができるので、自動車用部品の加工技術として広く適用できる。
一般的な金属管のハイドロフォームの加工工程を説明する図であり、(a)は加工前の状態を示し、(b)は加工後の状態を示している。 内向きピアシングを説明する図であり、(a)はピアシング前のハイドロフォーム状態を、(b)はピアシング後の孔周辺部の状態を示している。 外向きピアシングを説明する図であり、(a)はピアシング前のハイドロフォーム状態を、(b)はピアシング後の孔周辺部の状態を示している。 ハイドロピアシングによる孔寸法精度の調査に用いた試験装置の全体構成を示す図である。 ハイドロピアシングによる孔寸法精度の調査に用いた試験装置の中央部の断面構造を示す図である。 ハイドロピアシングにおけるダイスの孔形状(破線)とピアシング後の孔形状(実線)とを比較した図である。 ハイドロピアシングによる孔明け加工の制御シーケンスを示すフローチャートである。 ハイドロピアシングの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。 ハイドロピアシング装置の軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えた構成を示す図である。 軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備えた場合における、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。 孔明け用ポンチ作動からの経過時間を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。 前記図11に示す制御シーケンスにおける、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。 孔明け用ポンチ変位量を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。 前記図13に示す制御シーケンスにおける、ハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。 加工液の内圧低下量を基準にする場合の制御シーケンスのフローチャートである。 前記図15に示す制御シーケンスにおけるハイドロフォームの加工時間の経過にともなう加工液の内圧、軸押し工具の変位、および孔明け用ポンチの変位の関係を示す図である。 本発明で適用できる内圧バランスシリンダーの構成例を示す図である。
符号の説明
1:上金型、 2:下金型
1a、2a:金型キャビティ壁面、 1b、1c:ダイス孔
3:金属素管、 3a:抜き孔周縁部、 3b:抜き屑
4:軸押し工具、 5:導入孔
6:孔明け用ポンチ、 6a:ポンチ底面、 6b:ポンチエッジ
7:軸押しシリンダー、 8:ストッパー
9:内圧バランスシリンダー、 10:ピストン
11:シリンダー、 12:バランス流体室
13:Oリング、
100:油圧シリンダー、 200:昇降ラム
201:ベッド、 202:圧力計
203、204:変位計、 300:ダイス孔形状
301:打ち抜き孔

Claims (9)

  1. 金属素管を孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持し、内部に供給した加工液に圧力を負荷するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するハイドロピアシング方法であって、
    前記孔明け用ポンチでピアシングした際に、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とするハイドロピアシング方法。
  2. 前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーに機械的なストッパーを備え、少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とする請求項1に記載のハイドロピアシング方法。
  3. ハイドロフォームによる前記金属素管の膨出成形後であって、孔明け用ポンチ作動からの経過時間、孔明け用ポンチの変位量、または加工液の内圧低下量のうちいずれかを基準として、前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーを後退させ、少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とする請求項1に記載のハイドロピアシング方法。
  4. 前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーをピアシングした際の加工液の圧力変動にバランスさせる構造とし、少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させないことを特徴とする請求項1に記載のハイドロピアシング方法。
  5. 孔明け用ポンチを装備した一対の金型に保持された金属素管の内部に供給した加工液を加圧するとともに、両端から軸方向に押付け工具で軸押しを加えるハイドロフォーム工程で孔明け加工するハイドロピアシング装置であって、
    前記押付け工具を押圧する軸押しシリンダーと、
    前記孔明け用ポンチでピアシングした際に、前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段とを具備していることを特徴とするハイドロピアシング装置。
  6. 前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段として、前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーに機械的なストッパーを具備したことを特徴とする請求項5に記載のハイドロピアシング装置。
  7. 前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段として、孔明け用ポンチ作動からの経過時間、孔明け用ポンチの変位量、または加工液の内圧低下量のうちいずれかを基準として、前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーを後退させる制御シーケンスを具備したことを特徴とする請求項5に記載のハイドロピアシング装置。
  8. 前記押付け工具のうち少なくとも片側の押付け工具を軸押し方向に前進させない手段として、前記押付け工具を保持する軸押しシリンダーがピアシングした際の加工液の圧力変動にバランスさせる構造を具備したことを特徴とする請求項5に記載のハイドロピアシング装置。
  9. 上記請求項1〜4のいずれかに記載されたハイドロピアシング方法によって成形されたことを特徴とするハイドロピアシング加工製品。
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