JP2006234232A - 多管式熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の目的は、缶胴内の空隙を可能な限り減少させ、以って缶胴内の洗浄性に優れることから衛生的要求を満足するとともにコンパクト化が可能な多管式熱交換器を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、缶胴と、管板と、伝熱管とを少なくとも備えた多管式熱交換器であって、該缶胴は、中空構造の外被となるものであって、その両端部に上記管板が各々取り付けられており、該伝熱管は、複数本存在し、その各々のいずれか一の端部が少なくとも一の上記管板に複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、該伝熱管の上記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って上記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明は、缶胴と、管板と、伝熱管とを少なくとも備えた多管式熱交換器であって、該缶胴は、中空構造の外被となるものであって、その両端部に上記管板が各々取り付けられており、該伝熱管は、複数本存在し、その各々のいずれか一の端部が少なくとも一の上記管板に複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、該伝熱管の上記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って上記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、気体(混合気体を含む)や液体(溶液や分散液を含む)等の流体、特に液体の熱交換に好適に用いられる多管式熱交換器に関する。さらに詳細には、飲料間で熱交換を行なうことが可能な、シェル・アンド・チューブ型熱交換器に関する。
従来より、流体の熱交換を効率良く行なう装置として多管式熱交換器が知られている。この多管式熱交換器は、シェルと呼ばれる大径の円筒型缶胴内においてチューブと呼ばれる複数の小径の伝熱管が管板と呼ばれる2枚の支持体間に架設された構造となっており、このためシェル・アンド・チューブ型熱交換器とも呼ばれる。
この多管式熱交換器は、熱交換される流体を該伝熱管内に流し、高温または低温の熱媒または冷媒(以下単に熱媒と記す)を該缶胴内に流すことにより、伝熱管の管壁を介して間接的に該流体と該熱媒間で熱交換を行なうものであった。このようにかかる熱交換は、複数本の小径の伝熱管を通して行なわれるため、結果的に熱媒との接触面積が増大されたものとなり極めて交換効率に優れたものとなる。このため、殺菌等を目的とする飲料の熱処理時においても、この種の多管式熱交換器は飲料の加熱または冷却手段として使用されてきた。
しかしながら、流体としてこのような飲料を使用する場合、この種の多管式熱交換器は、缶胴内を十分に洗浄することが困難なことから、熱媒として缶胴内に飲料を流すことは衛生的見地から好ましくなく、飲料以外の流体を熱媒として用いざるを得ない状況であった。このため、飲料間で熱交換を行なうことができず熱交換にロスを生じ、多管式熱交換器の高い熱交換効率を十分に活かしきれない状況にあった。
このような問題を解決することを目的として、缶胴内における空隙を可能な限り少なくし、雑菌等の繁殖の温床となるそのような空隙の洗浄不良の問題を解消することにより衛生的に優れた多管式熱交換器を提供する試みが種々なされている。たとえば、図5に示したように管板2の伝熱管3挿入部において、管板2の両外表面側に開先構造(管板の開口径が管板の厚み方向外側に向かって大きくなる構造)を形成し、伝熱管3の外周に沿って1箇所のみを外部から溶接4により接続した構造の多管式熱交換器が提案されている(特許文献1)。
この構造によっては、開先構造の採用により極小な空隙は減少するかもしれないが、溶接により接続されない側の開先構造は依然として洗浄不良になる可能性がある。しかも、この開先構造は管板の厚みが厚くなれば必然的に大きな開口径となるため伝熱管同士の挿入間距離(ピッチ)も大きくならざるを得ず、その結果管板の単位面積に占める伝熱管の挿入本数は減少し効率の悪い装置形状となるとともに装置全体のコンパクト化も困難となる。さらに、溶接量および溶接入熱が増加するとともに溶接歪みも大きくなるという不都合を生じる。
特開平9−133492号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、缶胴内の空隙を可能な限り減少させ、以って缶胴内の洗浄性に優れることから衛生的要求を満足するとともにコンパクト化が可能な多管式熱交換器を提供することにある。
本発明は、缶胴と、管板と、伝熱管とを少なくとも備えた多管式熱交換器であって、該缶胴は、中空構造の外被となるものであって、その両端部に上記管板が各々取り付けられており、該伝熱管は、複数本存在し、その各々のいずれか一の端部が少なくとも一の上記管板に複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、該伝熱管の上記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って上記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることを特徴とするものである。
ここで、上記伝熱管は、複数本存在し、その各々の両端部が上記管板に各々複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、該伝熱管の上記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って上記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることが好ましい。
また、上記伝熱管の上記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所のうちのいずれか1箇所が上記伝熱管の内側より溶接されていることが好ましい。また、上記開口部は、上記伝熱管が架設される側の周縁部において突起部が形成され、その突起部において上記伝熱管の内側から上記伝熱管の外周に沿って溶接されているものとすることができる。
また、上記伝熱管の上記開口部への挿入部分において、上記伝熱管の管壁と、上記開口部を構成する管板の内壁面と、上記挿入部分の両端2箇所の溶接部とにより空隙部が形成され、その空隙部において外部に通じる孔が形成されていることが好ましい。この孔は、複数の該空隙部を連通するようにして外部と通ずることができ、また複数の上記空隙部を連通するようにして上記缶胴と管板との間に生じる空間まで開孔され、その空間を介して上記缶胴に形成された検知孔により外部と通ずるようにすることもできる。
また、上記伝熱管の上記開口部への挿入部分において、上記伝熱管が拡管されているものとすることができる。また、本発明の多管式熱交換器においては、上記缶胴内と上記伝熱管内との双方を飲料が流れることにより、その飲料間で熱交換がされるようにすることができる。
また、本発明の管板と伝熱管との接続方法は、該伝熱管を該管板の開口部へ挿入するステップと、該伝熱管の該開口部への挿入部分の両端2箇所を各々該伝熱管の外周に沿って該開口部を構成する管板と溶接により接続するステップと、を備えることができる。
本発明の多管式熱交換器は、上述の通りの構成を有することにより、缶胴内の空隙を可能な限り減少させ、以って缶胴内の洗浄性に優れることから衛生的要求を満足するとともにコンパクト化が可能となった。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
<多管式熱交換器>
本発明の多管式熱交換器の概略断面図を図1に示す。図1に示されるように、本発明の多管式熱交換器100は、缶胴1と、管板2、21と、伝熱管3とを基本的に備えたものである。
本発明の多管式熱交換器の概略断面図を図1に示す。図1に示されるように、本発明の多管式熱交換器100は、缶胴1と、管板2、21と、伝熱管3とを基本的に備えたものである。
ここで、上記缶胴1は、中空構造の外被となるものであって、その両端部に上記管板2、21が各々取り付けられている。この2枚の管板2、21は、上記缶胴1の長手方向において屈曲部がない場合には、互いに対向するように取り付けられることになる。また、上記伝熱管3は、複数本存在し、その各々の両端部が上記管板2、21に各々複数形成されている開口部25の一に挿入されることにより架設されている。
本発明の多管式熱交換器100は、このような基本構成を有することにより、缶胴1内と伝熱管3内とを互いに温度の異なる流体が流れることにより、伝熱管3の管壁31を介して間接的にそれらの流体間で熱交換を行なうものである。
なお、ここでは各伝熱管の両端部が2枚の両管板の各々に複数形成されている開口部に挿入される態様を例として説明するが、本発明の態様はこれのみに限られるものではなく、両管板のうちのいずれか一の管板の開口部に対して上記伝熱管のいずれか一の端部のみが挿入され、他の端部はもう一方の管板に対して異なった接続方法により接続されるような態様も含まれる。このような態様においても本発明の上記効果は示される。
<缶胴>
上記缶胴1は、シェルとも呼ばれるものであり、中空構造の外被となるものであって多管式熱交換器の言わば本体となるものである。通常、その形状は、外径が30mm〜700mm、長さが2m〜6mの円筒状の形状を有している。しかし、その断面形状はこのように円形のもののみに限られるものではなく、四角形や六角形等の多角形の形状としたり、楕円形の形状とすることもでき、その断面形状は何等制限されない。
上記缶胴1は、シェルとも呼ばれるものであり、中空構造の外被となるものであって多管式熱交換器の言わば本体となるものである。通常、その形状は、外径が30mm〜700mm、長さが2m〜6mの円筒状の形状を有している。しかし、その断面形状はこのように円形のもののみに限られるものではなく、四角形や六角形等の多角形の形状としたり、楕円形の形状とすることもでき、その断面形状は何等制限されない。
このような缶胴1は、その両端部において後述の2枚の管板2、21が取り付けられ、複数本の伝熱管3が支持されている。なお、缶胴1の材質は、特に限定されるものではないが好ましくはステンレス鋼である。
缶胴1には、通常、ノズル15が形成されており、上記缶胴1内に流体を供給し、または上記缶胴1内から流体を排出できる構造となっている。このようなノズル15は、たとえば図1に示したように上記缶胴1の両端付近に各々1箇所ずつ計2個形成されるものとすることができる。すなわち、このように2個のノズルのうち、その一のノズルにより缶胴1内に流体が供給され、他の一のノズルによりその流体は排出されることになる。
そして、このようなノズルの各々は、上記缶胴1の両端付近であって、特に管板2、21の各々に近接させて配置させることが好ましい。缶胴の長手方向において各ノズルが配置される位置よりもさらに端側に管板2、21は配置されることになるが、各ノズルとこれらの管板との間に一定の距離をもった空間が形成されるとその部分に缶胴内を流れる流体が淀むことになるからである。
また、上記缶胴1は、それ自体が一体となった一体構造のものとすることができるが、たとえば図1に示したように上記ノズルの一を含む部分を短管状に分割するような分割式の構造とすることもできる。このように上記ノズルの一を含む部分を短管状に分割することにより、管板を容易に観察したり洗浄したりすることができ、汚れや不具合を有効に防止することができる点、衛生的見地からも好ましいものである。
なお、このように短管状に分割する部分がノズルの一を含むのは、仮にこのノズルの一と管板との間に接合部5を形成するとこの接合部5の形成に伴い缶胴内に不必要な空間を生じることになり、この空間に缶胴内の流体が淀むことを防止するためである。
一方、上記のように短管状に分割する部分と缶胴との接合部5には、ヘルール構造の三角溝を有する継手部が用いられ、この継手部にはパッキンとしてOリング55(合成ゴム等の弾性体でできたリング状の封止材)を用いることが好ましい。
<管板>
本発明の管板は、上記缶胴1の両端部に各々取り付けられることから、少なくとも2枚配置されるものである。すなわち、図1に示されるように2枚の管板2、21が、上記缶胴1の両端部に各々取り付けられる。この取り付け方法は特に限定されるものではなく、たとえば図1に示した管板2のように接合部5により固定して取り付けることができるとともに、管板21のように可動状態として取り付けることもできる。通常、固定して取り付けられる管板を固定管板と呼び、可動状態として取り付けられる管板を遊動管板と呼ぶ。2枚の管板2、21は、両者を固定管板としても良いし、いずれか一方を遊動管板とすることもできる。なお、固定管板とする場合は、図1に示した接合部5により取り外し可能な状態で固定する場合の他、溶接等により缶胴1と一体化させることもできる。しかし、缶胴1内の洗浄性等を考慮すると、取り外し可能な状態で固定することが好ましい。この点、上記接合部5には上記缶胴1の接合部5と同様にヘルール構造を採用することが好ましい。
本発明の管板は、上記缶胴1の両端部に各々取り付けられることから、少なくとも2枚配置されるものである。すなわち、図1に示されるように2枚の管板2、21が、上記缶胴1の両端部に各々取り付けられる。この取り付け方法は特に限定されるものではなく、たとえば図1に示した管板2のように接合部5により固定して取り付けることができるとともに、管板21のように可動状態として取り付けることもできる。通常、固定して取り付けられる管板を固定管板と呼び、可動状態として取り付けられる管板を遊動管板と呼ぶ。2枚の管板2、21は、両者を固定管板としても良いし、いずれか一方を遊動管板とすることもできる。なお、固定管板とする場合は、図1に示した接合部5により取り外し可能な状態で固定する場合の他、溶接等により缶胴1と一体化させることもできる。しかし、缶胴1内の洗浄性等を考慮すると、取り外し可能な状態で固定することが好ましい。この点、上記接合部5には上記缶胴1の接合部5と同様にヘルール構造を採用することが好ましい。
上記遊動管板(管板21)は、たとえば管板の厚み方向の両端部の各々の外周に沿って第1溝部27と第2溝部28とを有するとともに、この第1溝部27と第2溝部28とに各々Oリング55を挿入することによって、上記缶胴1内の内壁10と接触しながら任意方向に移動可能な状態とすることができる。
このような管板2、21は、複数の開口部25を備えることにより、その開口部25に後述の伝熱管3を挿入することによって伝熱管3を架設(支持)する作用を有するものである。このような管板2、21は、固定管板の場合はその外形が缶胴1の外形とほぼ等しくなるものであり、その厚みが20mm〜100mmの形状を有する。また、遊動管板の場合は、その外径が缶胴1の内径(約30〜700mm)とほぼ等しくなるものであり、その厚みが20mm〜100mmの形状を有する。また、管板2、21の材質は、特に限定されるものではないが好ましくはステンレス鋼である。
<伝熱管>
上記伝熱管3は、チューブとも呼ばれるものであり、上記缶胴1内に複数本存在するものである。その本数は、より好ましくは4〜120本である。
上記伝熱管3は、チューブとも呼ばれるものであり、上記缶胴1内に複数本存在するものである。その本数は、より好ましくは4〜120本である。
このような伝熱管3の形状は、外径が10mm〜40mmの円筒状の形状を有しており、その長さは上記缶胴1の長さとほぼ同じである。また、その断面形状は缶胴1と同様、円形のもののみに限られるものではなく、四角形や六角形等の多角形の形状としたり、楕円形の形状とすることもでき、その断面形状は制限されない。しかし、伝熱管3は上記管板2、21の開口部25に挿入されるものであるため、その断面形状は該開口部の形状と一致する必要があり、該開口部の形状が通常加工容易な円形を呈することからこの伝熱管3の断面形状も円形とすることが好ましい。なお、伝熱管3の材質は、特に限定されるものではないが好ましくはステンレス鋼である。
このような伝熱管3は、上記の通り複数本存在するものであるが、その各々の両端部が上記2枚の管板2、21に各々複数形成されている開口部25の一に挿入されることにより架設(支持)されている。
<管板(開口部)と伝熱管との接続>
本発明の伝熱管3は、上述の通り、その両端部が上記2枚の管板2、21に各々複数形成されている開口部25の一に挿入されることにより架設されている。そして、伝熱管3のその開口部25への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って開口部を構成する管板と溶接4により接続されている。以下、この接続について図2および図3を参照してさらに詳細に説明する。
本発明の伝熱管3は、上述の通り、その両端部が上記2枚の管板2、21に各々複数形成されている開口部25の一に挿入されることにより架設されている。そして、伝熱管3のその開口部25への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々伝熱管の外周に沿って開口部を構成する管板と溶接4により接続されている。以下、この接続について図2および図3を参照してさらに詳細に説明する。
図2は、管板2の開口部25への伝熱管3の挿入部分を拡大して示した概略断面図であり、図3はそれをさらに拡大した概略断面図である。当該挿入部分において、伝熱管3の管壁31は開口部25を構成する管板の内壁面29に対向し、その挿入部分における両端2箇所(図3において矢印A、Bで示された箇所)が各々伝熱管3の外周に沿って開口部を構成する管板2と溶接4により接続されている。このように両端2箇所(矢印A、B)が溶接により接続されたことにより、缶胴1内を流れる流体と伝熱管3内を流れる流体の空隙(管板2と伝熱管3との間で生じる空隙)への浸入を極めて有効に防止することができるようになった。すなわち、矢印A側の溶接4は伝熱管3内を流れることになる流体の浸入を防止し、矢印B側の溶接4は缶胴1内を流れる流体の浸入を防止するのに効果を発揮する。
ここで、当該溶接の方法としては、従来公知の溶接方法ならばいかなる方法でも採用することができる。たとえば、ガス溶接、アーク溶接、電気抵抗溶接、電子ビーム溶接などが挙げられる。また、当該溶接は、管板2、21を構成する金属と伝熱管3を構成する金属とが当該溶接部41で渾然一体となることが好ましい。なお、所望により、溶接棒等の第3の金属を使用することもできる。また、この溶接部における管板2、21側において、必要により面取りや開先構造を採用して溶接強度の向上を図ることもできる。しかし、この面取りや開先構造は、従来のように大きくとる必要はなく、以って伝熱管同士の挿入間距離(ピッチ)も大きくならず装置全体のコンパクト化に資するものとなる。さらに、溶接量および溶接入熱が増加することもなく溶接歪みが大きくなるという不都合を防止することができる。
また、上記溶接部41の溶接範囲は、伝熱管3の外径、伝熱管の管壁31の厚み、管板の厚み等に応じて適宜選択すれば良く特に制限されるものではないが、伝熱管の長さ方向の距離で表すと0.5〜5.0mm、より好ましくは0.7〜3.0mmの範囲とすることができる。
そして、さらに好ましい溶接方法としては、上記挿入部分の両端2箇所(矢印A、B)のうちのいずれか1箇所を上記伝熱管の内側より溶接する方法が挙げられる。特に、伝熱管3が架設される側の端部(図3における矢印B側)が、伝熱管3の内側より溶接されていることが好ましい。伝熱管3が架設される側は缶胴1の内部側となるため、外部からの溶接が困難となるからである。
またこの場合、上記開口部25において、伝熱管3が架設される側の周縁部において突起部26が形成され、その突起部26において伝熱管3の内側から伝熱管3の外周に沿って溶接することが特に好ましい。少量の熱量で、管板2の金属と伝熱管3の金属とを渾然一体となるように溶接することができるからである。すなわち、上記伝熱管3内に溶接ヘッドを図3の矢印A側から挿入し、矢印B側において溶接トーチを伝熱管3の内側から当てることにより、突起部26と伝熱管3との両者が実質的に完全に溶け合うようにして溶接接合させることができる。
ここで、この突起部26の形状としては、その高さhが、2mm〜10mmとすることが好ましく、さらに好ましくは4mm〜6mmであり、その肉厚tは0.3mm〜3mmとすることが好ましく、さらに好ましくは0.5mm〜1mmである。
上記から明らかなように本発明の管板と伝熱管との接続方法は、該伝熱管を該管板の開口部へ挿入するステップと、該伝熱管の該開口部への挿入部分の両端2箇所を各々該伝熱管の外周に沿って該開口部を構成する管板と溶接により接続するステップと、を備えるものである。なお、管板と伝熱管との接続方法は、上記のような溶接による接続とともに、拡管(セートル)法を採用することもできる。すなわち、上記伝熱管の上記開口部への挿入部分において、上記伝熱管が拡管されていることが好ましい。これにより、管板と伝熱管との接続強度をさらに向上させることができるとともに、空隙の低減にも資するものとなる。
さらにこの場合、図3に示したように管板2の内壁面29において、凹部48を一乃至複数形成することにより上記拡管による接続をより強固なものとすることができる。おそらく、伝熱管3の管壁31の一部が拡管によりこの凹部48に入り込むためではないかと考えられる。
<空隙部、孔、検知孔>
本発明は、上述のように管板の開口部への伝熱管の挿入部分においてその挿入部分の両端2箇所が溶接されたことにより缶胴1内に生じる空隙(特に管板と伝熱管との間に生じる空隙)を可能な限り低減させたものであるが、図3に示したように伝熱管の管壁31と、開口部25を構成する管板2の内壁面29と、挿入部分の両端2箇所(矢印A、B)の溶接部41とにより空隙部45が形成され、その空隙部45において外部に通じる孔46が形成されることにより、次のような効果を示すことができる。
本発明は、上述のように管板の開口部への伝熱管の挿入部分においてその挿入部分の両端2箇所が溶接されたことにより缶胴1内に生じる空隙(特に管板と伝熱管との間に生じる空隙)を可能な限り低減させたものであるが、図3に示したように伝熱管の管壁31と、開口部25を構成する管板2の内壁面29と、挿入部分の両端2箇所(矢印A、B)の溶接部41とにより空隙部45が形成され、その空隙部45において外部に通じる孔46が形成されることにより、次のような効果を示すことができる。
すなわち、この空隙部45において図3および図4に示したように外部に通じる孔46を形成することにより、その孔46を通して流体の漏れ(浸入)を検知することができ、万一溶接4が破損して缶胴1内を流れる流体か伝熱管3内を流れる流体のいずれかがこの空隙部45に浸入してもすぐに発見することが期待できる。したがって、管板が上記図1に示した遊動管板(管板21)である場合(すなわち管板21の外周に缶胴1が配置される場合)は、孔46は図4に示したように複数の当該空隙部45を連通するようにして缶胴1と管板21との間に生じる空間49(すなわち図1における第1溝部27に挿入されているOリング55と、第2溝部28に挿入されているOリング55と、管板21と、缶胴1とにより囲まれた空間49)まで開孔させ、その空間49を介して缶胴1に形成された検知孔47により外部と通ずるようにすることが好ましい。一方、管板が上記図1に示した固定管板(管板2)である場合(すなわち管板2の外周に缶胴1が外被として配置されない場合)は、孔46は複数の当該空隙部45のみを連通するようにして外部(この場合、管板の最表面部の孔が上記検知孔47と同様の作用を示す)と通ずるようにすることが好ましい(この態様は、図4において缶胴1が存在しない態様に相当する)。
さらに、この空隙部45および孔46の作用により、缶胴1内を流れる流体と伝熱管3内を流れる流体との混合を極めて有効に防止することもできる。缶胴1内を流れる流体の流体圧も伝熱管3内を流れる流体の流体圧もかなり高圧(大気圧よりも高い)となるが、空隙部45は孔46により外部と通ずるため、その圧力は大気圧に等しく、以って万一空隙部45に浸入した流体はもう一方の流体と混合することなく(もう一方の流体の方へ流れることなく)この空隙部45と孔46を通って外部に排出されることとなり、よって両流体の混合は防止されることになる。
なお、孔46は、図1や図4においては最終的に2箇所において外部と通ずるように示されているが、このような態様のみに限られるものではなく、1箇所のみにおいて外部と通ずるようにしたり3箇所以上で外部と通ずるようにすることも可能である。
<熱交換方法>
本発明の多管式熱交換器100は、上述のように、缶胴1内と伝熱管3内とを互いに温度の異なる流体が流れることにより、伝熱管3の管壁31を介して間接的にそれらの流体間で熱交換を行なうものである。この場合、缶胴1内を流れる流体の方向と、伝熱管3内を流れる流体の方向は、互いに対向させることが好ましいが、並行させることもできる。
本発明の多管式熱交換器100は、上述のように、缶胴1内と伝熱管3内とを互いに温度の異なる流体が流れることにより、伝熱管3の管壁31を介して間接的にそれらの流体間で熱交換を行なうものである。この場合、缶胴1内を流れる流体の方向と、伝熱管3内を流れる流体の方向は、互いに対向させることが好ましいが、並行させることもできる。
そして、特に本発明の多管式熱交換器100は、上述の通りの構成を有することにより、上記缶胴1内と上記伝熱管3内との双方において流体として飲料を流すことが可能であるため、これらの飲料間での熱交換を行なうことができるようになった。このため、従来のように缶胴1内は熱媒たる飲料以外の流体を流し、伝熱管内にのみ熱交換の対象となる飲料を流す場合に比べ、加熱操作と冷却操作の両者を含む飲料の通常の処理工程において該工程全体の熱エネルギーの損失を飛躍的に低減させることに成功したものである。
また、複数の本発明の多管式熱交換器100を組み合せて用いることにより、伝熱管3内を流れる飲料と缶胴1内を流れる飲料とが保有している熱エネルギーを有効に利用するようなプラントを構築すれば、プラントそのものをコンパクト化することができ、飲料の加熱殺菌消毒等の用途においてその産業上の利用性を飛躍的に向上させることができる。なお、缶胴1内を従来のように飲料以外の熱媒を流すことも勿論可能であり、これと上記のように缶胴1内を熱媒として飲料を流すものとを組み合せてプラントを構築することもできる。
このように伝熱管3内だけでなく缶胴1内にも飲料を流すことができるようになったのは、本願発明の多管式熱交換器100が上述の通りの構成を有するからに他ならず、缶胴1内の空隙を可能な限り低減させ優れた洗浄性が得られるようになったからである。
なお、本発明の多管式熱交換器100を用いて熱交換される飲料(液状食品を含む)は、特に限定されるものではなく、広範囲のものに適応することができる。たとえば、牛乳、乳性飲料、果汁飲料、コーヒー、紅茶、緑茶、炭酸飲料、アルコール、ミネラルウォーター、栄養ドリンク、だし、たれ、麺汁、あるいはこれらの飲料の製造過程で用いられる調合用や抽出用の水等を挙げることができる。
なお、本発明の多管式熱交換器100を用いて熱交換される流体は、このように飲料のみに限られるものではなく、各種液状医薬品(目薬等)をはじめ種々の化学品等の液体が含まれる。また、この流体は、液体のみに限られるものではなく、気体も含まれる。
<その他>
本発明の多管式熱交換器100は、上記のように缶胴1と、管板2、21と、伝熱管3とを備えたものである限り、これら以外の任意の構成を付加することができる。たとえば、上記伝熱管3は、補助支持材等によりさらに支持されたものとすることもできる。また、上記ノズル15や管板2、21等を介して複数の多管式熱交換器と接続することにより、多段の熱交換システムを構築することもできる。
本発明の多管式熱交換器100は、上記のように缶胴1と、管板2、21と、伝熱管3とを備えたものである限り、これら以外の任意の構成を付加することができる。たとえば、上記伝熱管3は、補助支持材等によりさらに支持されたものとすることもできる。また、上記ノズル15や管板2、21等を介して複数の多管式熱交換器と接続することにより、多段の熱交換システムを構築することもできる。
このように本発明の多管式熱交換器100は、複数の本発明の多管式熱交換器100と組み合せて用いることができるとともに、加熱装置や冷却装置または熱媒供給装置や冷媒供給装置、あるいはこれらとポンプとを組み合せて用いることができる。
また、本発明の多管式熱交換器100は、これら以外の他の配管と組み合せて用いることも当然可能である。たとえば、上記の缶胴1と同一の内径を有する配管を上記管板2、21側に接続することにより、上記伝熱管3内を流れる流体を供給または排出することができる。また、上記ノズル15と同一の内径を有する配管を上記ノズル15に接続することにより、上記缶胴1内を流れる流体を供給または排出することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の各実施の形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 缶胴、10 内壁、15 ノズル、2,21 管板、25 開口部、26 突起部、27 第1溝部、28 第2溝部、29 内壁面、3 伝熱管、31 管壁、4 溶接、41 溶接部、45 空隙部、46 孔、47 検知孔、48 凹部、49 空間、5 接合部、55 Oリング、100 多管式熱交換器。
Claims (10)
- 缶胴と、管板と、伝熱管とを少なくとも備えた多管式熱交換器であって、
前記缶胴は、中空構造の外被となるものであって、その両端部に前記管板が各々取り付けられており、
前記伝熱管は、複数本存在し、その各々のいずれか一の端部が少なくとも一の前記管板に複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、
前記伝熱管の前記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々前記伝熱管の外周に沿って前記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることを特徴とする多管式熱交換器。 - 前記伝熱管は、複数本存在し、その各々の両端部が前記管板に各々複数形成されている開口部の一に挿入されることにより架設されており、
前記伝熱管の前記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所が各々前記伝熱管の外周に沿って前記開口部を構成する管板と溶接により接続されていることを特徴とする請求項1記載の多管式熱交換器。 - 前記伝熱管の前記開口部への挿入部分は、その挿入部分の両端2箇所のうちのいずれか1箇所が前記伝熱管の内側より溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多管式熱交換器。
- 前記開口部は、前記伝熱管が架設される側の周縁部において突起部が形成され、その突起部において前記伝熱管の内側から前記伝熱管の外周に沿って溶接されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多管式熱交換器。
- 前記伝熱管の前記開口部への挿入部分において、前記伝熱管の管壁と、前記開口部を構成する管板の内壁面と、前記挿入部分の両端2箇所の溶接部とにより空隙部が形成され、その空隙部において外部に通じる孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多管式熱交換器。
- 前記孔は、複数の前記空隙部を連通するようにして外部と通ずることを特徴とする請求項5記載の多管式熱交換器。
- 前記孔は、複数の前記空隙部を連通するようにして前記缶胴と管板との間に生じる空間まで開孔されており、その空間を介して前記缶胴に形成された検知孔により外部と通ずることを特徴とする請求項5記載の多管式熱交換器。
- 前記伝熱管の前記開口部への挿入部分において、前記伝熱管が拡管されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多管式熱交換器。
- 前記缶胴内と前記伝熱管内との双方を飲料が流れることにより、その飲料間で熱交換がされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多管式熱交換器。
- 管板と伝熱管との接続方法であって、
前記伝熱管を前記管板の開口部へ挿入するステップと、
前記伝熱管の前記開口部への挿入部分の両端2箇所を各々前記伝熱管の外周に沿って前記開口部を構成する管板と溶接により接続するステップと、
を備えることを特徴とする管板と伝熱管との接続方法。
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090217 |
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A521 | Written amendment |
Effective date: 20090401 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090602 |