JP2006233280A - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板を、調質圧延前または後に表面活性化処理を施し、次いで、pH緩衝剤を有する酸性処理液に接触させた後、水洗、乾燥を行うことによりめっき表面にZnを主体とする酸化物層を形成させる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記酸性処理液中に硝酸イオンを0.5g/l〜100g/l含有し、前記鋼板を酸性処理液に相対流速0.3m/秒以上で接触させることを特徴とする。また、上記製造方法により生産され、Znを主体とする酸化物層を、調質圧延により形成される凹部を除く、凸部または平坦部表層に平均15nm以上の膜厚で有する溶融亜鉛めっき鋼板。
【選択図】図1
Description
このような観点から、厚目付け化には溶融亜鉛めっき鋼板が有効である。しかしながら、溶融亜鉛めっき鋼板を自動車用パネルにプレス成形する際には前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると、金型との摺動抵抗が大きく、また表面の融点が低いことにより金型と鋼板表面の凝着を生じやすく、プレス割れが起こりやすいという問題がある。
すなわち、特許文献10は溶融亜鉛めっき鋼板特有のAl酸化物と、Zn系酸化物を共存させることにより広範な摺動条件で良好なプレス成形性を得る手法である。
[1]めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板を、調質圧延前または後に表面活性化処理を施し、次いで、pH緩衝剤を有する酸性処理液に接触させた後、水洗、乾燥を行うことによりめっき表面にZnを主体とする酸化物層を形成させる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記酸性処理液中に硝酸イオンを0.5g/l〜100g/l含有し、前記鋼板を酸性処理液に相対流速0.3m/秒以上で接触させることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記酸性処理液がpH緩衝作用を有し、かつ0.1リットルの酸性処理液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液の量(ml)で定義するpH上昇度が5〜45の範囲にある酸性処理液を用いることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]又は[2]において、前記酸性処理液として、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、前記各成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜3.5、液温が20〜70℃の範囲にある酸性処理液を用いることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記表面活性化処理に用いる薬液がpH11以上であるアルカリ性溶液であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記表面活性化処理により、溶融亜鉛めっき鋼板表面のAl濃度を20at%未満とすることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記酸性処理液に接触させた後の前記鋼板表面に形成する酸性処理液の液膜量が3g/m2以下であり、かつ、酸洗処理後水洗までの保持時間が1〜30秒であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、酸性処理液に接触させた後に、アルカリ性の溶液に接触させ、表面に残存した酸性処理液の中和処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により生産され、Znを主体とする酸化物層を、調質圧延により形成される凹部を除く、凸部または平坦部表層に平均15nm以上の膜厚で有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
(基体)
板厚0.8mmの冷延鋼板上に通常の手法を用いて溶融亜鉛めっきを施した。その後調質圧延を行った後、表面活性化処理を行った。表面活性化処理による表面Al濃度の変化を調査するために酸化物層形成処理を行わないものと、引き続き図1に示す構成の処理設備を用いて酸化物層形成処理を行ったものを作製した。尚、一部は溶融亜鉛めっきを施し、表面活性化処理後に調質圧延を行い、酸化物層を形成した。
表面活性化処理は活性化槽1で所定濃度の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。尚、一部比較例として表面活性化処理を施さないものも作成した。
酸化物の形成処理は以下に示す通りである。
酸性溶液は酸性処理液層2では流動させず、鋼板と酸性処理液との相対速度は鋼板のスピードを変更することにより変化させた。
プレス成形性
(1−A)摺動特性評価(摩擦係数の測定)
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料11が試料台12に固定され、試料台12は、水平移動可能なスライドテーブル13の上面に固定されている。スライドテーブル13の下面には、これに接したローラ14を有する上下動可能なスライドテーブル支持台15が設けられ、これを押上げることにより、ビード16による摩擦係数測定用試料11への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル17が、スライドテーブル支持台15に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル13を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル18が、スライドテーブル13の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料11の表面に塗布して試験を行った。
(1−B)耐型かじり性評価
実プレス時のビード通過部を想定した面圧の高い条件下での耐かじり性を評価するため、図2の摩擦係数測定装置を用い、上記記載の摩擦係数測定と同様の測定手順で試験に供した。
○:型かじりによる擦り傷が無い、又は調質圧延による凹凸が残存している。
×:型かじりによる擦り傷が発生している。
(2)化成処理性
化成処理性については、以下の方法により評価した。試料に防錆油(パーカー興産製、ノックスラスト550HN)を約1g/m2塗布し、引き続きアルカリ脱脂(日本パーカライジング(株)製 FC-E2001、スプレー処理、スプレー圧1kgf/cm2)、水洗、表調処理(日本パーカライジング(株)製 PL-Z)、化成処理(日本パーカライジング(株)製 PB-L3080)の手順で、化成処理皮膜を形成した。このとき、化成処理時間は標準条件(2分)としたが、アルカリ脱脂では、脱脂液濃度を1/2、脱脂時間を15秒とし、標準条件より弱い脱脂条件とした。
○:スケがなく緻密に全面をリン酸塩結晶が被覆する。
×:広い範囲でリン酸塩結晶が形成されない領域がある。
(3)接着接合性
25×100mmサイズの試験片、2本に油(スギムラ化学プレトンR352L)を塗布し、塩ビ系樹脂マスチックシーラーを25×10mmの領域に塗布、接着剤を塗布した部分を重ね合わせ、170℃×20分の乾燥炉で乾燥させ接着し、I型の1組の試験片とした。本試験片を引っ張り試験機で、5mm/分の速度で接着位置で破断するまで引っ張り、引き抜き時の最大荷重を測定、荷重を接着面積で割り、接着強度とした。
接着強度が、0.2MPa未満であれば ×
として評価した。
(4)酸化膜厚の測定
オージェ電子分光法(AES)を用い、Ar+スパッタリングとAESスペクトルの測定を繰り返すことで、めっき皮膜表面部分の組成の深さ方向分布を測定した。スパッタリングの時間から深さへの換算は、膜厚既知のSiO2膜を測定して求めたスパッタリングレートにより行った。組成(at%)は、各元素のオージェピーク強度から相対感度因子補正により求めたが、コンタミネーションの影響を除くためにCは考慮に入れなかった。酸化物、水酸化物に起因するO濃度の深さ分布は表面近傍で高く、内部へ行くに従って低下して一定となる。最大値と一定値との和の1/2となる深さを、酸化物の厚さとした。平坦な部分の2μm×2μm程度の領域を分析の対象とし、任意の2〜3点で測定した結果の平均値を平均酸化膜厚とした。なお、予備処理として30秒のArスパッタリングを行って、供試材表面のコンタミネーションレイヤーを除去した。
(5)活性化処理後の表面状態測定(酸化膜形成処理前のAl濃度の測定)
活性化処理の効果を確認するため、前記(5)と同様の方法で、活性化処理後の表面の平坦部における酸化物厚さとAl濃度の深さ方向分布を測定した。酸化物の厚さに相当する深さまでの範囲におけるAl濃度の最大値を、活性化処理の効果の指標とした。
以上より得られた試験結果を表1に示す。
(1)No.1は酸性処理液による処理を行っていないため、平坦部に摺動性を向上させるのに十分な酸化膜が形成されず、面圧の低い条件1において摩擦係数が高く、耐型かじり性試験において摩擦係数が高く、型かじりが確認された。
(2)No.2〜5は硝酸イオンを含有し、pH緩衝剤を含有しないため、酸化膜が充分に形成されず、摺動特性、耐型かじり性に劣ることが分かる。
(3)No.6、10、14、18、22、49、53は酸性処理液による酸化膜形成処理は行っているが、表面活性化処理を行っていないため、平坦部に摺動性を向上させるのに十分な酸化皮膜が形成されておらず、摩擦係数、耐型かじり性評価において、No.1と同様、高い値となった。尚、耐型かじり性評価においてすべてのサンプルで型かじりが確認された。
(4)No.7〜9は酸性処理液による酸化膜形成処理は行っているが、酸性処理液中に硝酸イオンを含まない溶液を用いた例である。No.7は溶液中での酸化膜が充分に形成されずためにロール絞り後即水洗を行ったためにプレス成形性に劣ることが分かる。No.8.9においては摺動特性は良好であるものの、耐型かじり性に劣ることが分かる。
(5)No.11〜13、No.15〜17、No.19〜21、No.23、25、26、No.50〜52、No.54〜56は酸性処理液に硝酸イオンを含有させ、酸性処理液中の硝酸イオン濃度を増加させた例である。No.11〜13浴においては、硝酸イオン濃度が低いためにその効果が認められない。一方、No.15〜17、No.19〜21、No.23、25、26、No.50〜52浴においては、適正な硝酸イオン濃度であるためにプレス成形性に有効な酸化皮膜が形成されており、化成処理性、接着接合性にも優れていることが分かる。No.54〜56浴においては、硝酸イオン濃度が高い例であり、プレス成形性は良好であるが表面にムラがあり外観を損なっているだけではなく、接着接合性が劣化していることが分かる。
(6)No.26、及び29〜32は鋼板と酸性処理液との相対流速を変化させた例であるが、No.29は相対流速が低いために酸性処理液との接触にムラがあり、酸化膜厚に大きな違いが認められ、安定したプレス成形性が得られていないことが分かる。一方、No.26及び30〜32はプレス成形性、化成処理性、接着接合性に優れていることが分かる。
(7)No.26及びNo.33〜37は処理液温度を変化させた例であるが、処理液温度の低いNo.26はそれ以外の例と比較してプレス成形性への効果がやや低い。一方、No.37はそれ以外の例と比較して摩擦係数及び最大成形高さの効果は高いが、外観にわずかにムラが認められた。
(8)No.25、26及びNo.39〜44は液膜量を変化させた場合の例であるが、液膜量が多い場合はやや摩擦係数が高くなっている。
(9)No.45〜47は酸化皮膜形成処理後、水洗、乾燥を行った後、中和槽を用いた例を示しているが、6ヶ月放置後にも点錆の発生は認められず、酸化物層を形成した鋼板コイルが使用前に長期保管されることがあっても錆発生を防止する能力に優れていることが分かる。
(10)No.48は活性化処理を調質圧延後に行った場合の例であるが、その他の条件が同じであるNo.26と比べ、プレス成形性、化成処理性、接着接合性に違いは無く、同等の性能が得られていることが分かる。
2 酸性処理液槽
3 絞りロール
4 シャワー水洗装置
5 洗浄槽
6 中和槽
7 洗浄槽
8 ドライヤー
S 鋼板
11 摩擦係数測定用試料
12 試料台
13 スライドテーブル
14 ローラ
15 スライドテーブル支持台
16 ビード
17 第1ロードセル
18 第2ロードセル
19 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力
Claims (8)
- めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板を、調質圧延前または後に表面活性化処理を施し、次いで、pH緩衝剤を有する酸性処理液に接触させた後、水洗、乾燥を行うことによりめっき表面にZnを主体とする酸化物層を形成させる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記酸性処理液中に硝酸イオンを0.5g/l〜100g/l含有し、前記鋼板を酸性処理液に相対流速0.3m/秒以上で接触させることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性処理液がpH緩衝作用を有し、かつ0.1リットルの酸性処理液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液の量(ml)で定義するpH上昇度が5〜45の範囲にある酸性処理液を用いることを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性処理液として、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、前記各成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜3.5、液温が20〜70℃の範囲にある酸性処理液を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記表面活性化処理に用いる薬液がpH11以上であるアルカリ性溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記表面活性化処理により、溶融亜鉛めっき鋼板表面のAl濃度を20at%未満とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性処理液に接触させた後の前記鋼板表面に形成する酸性処理液の液膜量が3g/m2以下であり、かつ、酸洗処理後水洗までの保持時間が1〜30秒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 酸性処理液に接触させた後に、アルカリ性の溶液に接触させ、表面に残存した酸性処理液の中和処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により生産され、Znを主体とする酸化物層を、調質圧延により形成される凹部を除く、凸部または平坦部表層に平均15nm以上の膜厚で有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
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