JP2006228598A - 有機elパネルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機EL素子の発光効率を高めることが可能な有機ELパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 所定の形状に形成された透明電極30と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層である各層を有する有機層32と、非透光性の背面電極33と、を透光性の支持基板8上に順次積層形成してなる有機ELパネルの製造方法であって、透明電極30の形成された支持基板8上に有機層32及び背面電極33を成膜するように有機層32及び背面電極33に対応する複数の蒸着室a2〜a5,b1〜b4を備えた蒸着装置Aを用意し、前記各層の形成後、及び背面電極33の形成後に複数の蒸着室a2〜a5,b1〜b4にて前記各層表面及び背面電極33表面における光電子放出特性の測定を行う工程、を含むものである。
【選択図】 図3

Description

本発明は、少なくとも発光層を有する有機層を一対の電極で挟持した有機EL素子を透光性の支持基板上に配設してなる有機ELパネルの製造方法に関する。
従来、有機ELパネルとしては、例えばガラス材料からなるガラス基板(透光性の支持基板)上に、ITO(indium tin oxide)等によって陽極となる透明電極と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層からなる有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等の非透光性の背面電極とを順次積層して積層体である有機EL素子を形成し、この有機EL素子の配設されたガラス基板と前記有機EL素子を覆うガラス材料からなる封止部材とを接着剤を介して接着固定してなるものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。
特開2004−31182号公報
かかる有機ELパネルの製造方法は、有機EL素子を構成する各部(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,背面電極)に対応する複数の蒸着室を有する真空雰囲気中の蒸着装置に予め別工程で透明電極のパターニングされてなる支持基板を投入し、前記蒸着装置に備えられる各蒸着室を制御するコントロール装置によって設定される蒸着温度及び前記各部の膜厚等の生産条件に基づいて、前記透明電極の形成された前記支持基板上に前記各部を形成する。尚、前記各部を形成する前段階において、前記透明電極の形成された前記支持基板には、前記蒸着装置に備えられる前処理室でプラズマ洗浄等による表面処理が施されている。そして、前記各部の形成により前記有機EL素子の形成された前記支持基板を封止装置に備えられる封止室内に投入し、この封止室内に設けられる重ね合わせ機構によって前記支持基板と前記封止部材とを例えば紫外線硬化型の接着剤を用いて接合することで有機ELパネルが得られる。
また、このように有機ELパネルを製造するにあたって、有機EL素子(前記各部)の形成前に予め透明電極が形成され、その後、前記表面処理の施されてなる支持基板に対して透明電極側表面に紫外光を照射し、前記透明電極表面から放出される光電子をカウンタ等の光電子検出器によって検出することで、前記表面処理後における前記支持基板表面(透明電極表面)の仕事関数(光電子放出特性)を測定することが知られている(例えば下記特許文献2参照)。そして、この光電子放出特性が所定の条件を満たしている場合には次なる製造処理を実行し、前記表面処理後の前記支持基板上には前記有機EL素子が形成され、また前記光電子放出特性が所定の条件を満たしていない場合には、次なる製造処理を実行せず、前記表面処理後の前記支持基板を製造ラインから取り除いていた。
特開2000−277256号公報
ところで、有機EL素子を構成する前記各部は、本来、真空雰囲気中の蒸着装置における各蒸着室でそれぞれ蒸着形成されることになるが、例えば外部からの水分や気体(ガス)等の不純物が前記蒸着装置内における正孔注入層に対応する蒸着室に僅かに侵入し、この不純物の侵入によって前記正孔注入層に対応する蒸着室における真空の度合い(質)が低下してしまう場合があった。そして、このように真空度の低下した前記正孔注入層に対応する蒸着室において透明電極の形成された支持基板上に前記正孔注入層を積層形成すると、前記正孔注入層自体の通電性が低下してしまう(つまり、前記正孔注入層表面から所定数の光電子を放出させるのに要するエネルギー値が著しく増大する)という現象が生じる。従って、前記正孔注入層以外の前記各部が絶縁化されることなく前記正孔注入層上に積層形成されたとしても、前記正孔注入層における通電性が低下していることで前記各部間の電荷伝搬がスムーズに行われなくなるため、電荷(キャリア)バランスが崩れて有機EL素子(有機ELパネル)の発光効率が低下してしまう虞があった。
また、蒸着装置内に僅かに侵入する不純物は、前記蒸着装置内に備えられる各蒸着室を連結する搬送室中にも存在してしまう場合があり、例えば仮に光電子放出特性が所定条件を満たしている正孔注入層形成後の支持基板を,前記搬送室を通じて前記正孔注入層に対応する蒸着室から前記正孔輸送層に対応する蒸着室に搬送した場合には、前記不純物によって前記搬送室の真空度が低下していることで、前記支持基板の搬送中に前記搬送室において前記正孔注入層表面の通電性が低下してしまいという現象が生じる。これにより前記各部形成後における前記各部間の電荷伝搬がスムーズに行われなくなるため、有機EL素子の発光効率が低下してしまう虞があり、以上の点で更なる改良の余地が残されていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、有機EL素子の発光効率を高めることが可能な有機ELパネルの製造方法の提供を目的とするものである。
本発明は、所定の形状に形成された透光性の前面電極と、少なくとも発光層を有する有機層と、非透光性の背面電極と、を透光性の支持基板上に順次積層形成してなる有機ELパネルの製造方法であって、前記有機層を構成する所定の層の形成後、前記有機層を構成する各層の形成後、もしくは前記背面電極の形成後の何れかに前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記各層を形成するための複数の蒸着室を備え、前記蒸着室にて前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記各蒸着室を繋ぐ搬送室を備え、前記搬送室にて前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、初期の目的を達成でき、有機EL素子の発光効率を高めることが可能な有機ELパネルの製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1,図2は、有機ELパネルを製造するための製造装置の一例を示すものである。かかる有機ELパネルの製造装置は、蒸着装置Aと、封止装置Bと、コントロール装置Cと、ライン端末Dと、支持基板投入装置Eと、接着剤塗布装置Fと、封止基板投入装置Gと、取出装置Hとから構成されている。
蒸着装置Aは、第1,第2のブロックa,bを有しており、各ブロックa,b内は真空状態が確保されている。第1のブロックaは、プラズマ処理工程である前処理室a1と、正孔注入層形成工程である第1蒸着室a2と、正孔輸送層形成工程である第2蒸着室a3と、第1発光層形成工程である第3蒸着室a4と、第2発光層形成工程である第4蒸着室a5と、第1ブロックaの各蒸着室a2,a3,a4,a5における有機ELパネルの表示形態に応じた蒸着マスクを保管する第1蒸着マスク保管室a6と、支持基板投入装置Eに接続され後述する支持基板を蒸着装置A内に投入するための投入室a7とを有している。前述した各部屋間の前記支持基板もしくは後述する蒸着マスクの搬送は、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、前記各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボットa8が用いられている。また、各蒸着室a2,a3,a4,a5、前処理室a1及び第1蒸着マスク保管室a6には、メンテナンスを行うための開閉扉a9がそれぞれ設けられている。
蒸着装置Aの第2のブロックbは、第3発光層形成工程である第5蒸着室b1と、第4発光層形成工程である第6蒸着室b2と、電子輸送層形成工程である第7蒸着室b3と、背面電極形成工程である第8蒸着室b4と、第2のブロックbの各蒸着室b1,b2,b3,b4における有機ELパネルの表示形態に応じた蒸着マスクを保管する第2蒸着マスク保管室b5とを有している。前述した各部屋間の前記支持基板もしくは前記蒸着マスクの搬送は、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、前記各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボットb6が用いられいる。また、各蒸着室b1,b2,b3,b4及び第2蒸着マスク保管室b5には、メンテナンスを行うための開閉扉b7がそれぞれ設けられている。
また、蒸着装置Aの第1,第2のブロックa,b間には、各部ブロックa,bを接続する第1受渡室Jが設けられている。第1受渡室Jには、第1のブロックa側及び第2のブロックb側にそれぞれ設けられるシャッター機構と、これらシャッター機構間に設けられ前記支持基板を第1のブロックa側から第2のブロックb側へと搬送するスライド機構とが設けられ、各ブロックa,bにそれぞれ設けられる搬送ロボットa8,b6によって前記支持基板の受け渡しがなされる。
ここで、図3を用いて、蒸着装置Aの第1,第2ブロックa,bに備えられる各蒸着室(a2〜a5,b1〜b4)について説明する。各蒸着室は、排気ポート1を介して図示しない真空ポンプで真空状態に排気された真空室2を有している。真空室2の下方には、蒸着材料3を収納するルツボ4が配設されており、このルツボ4には、加熱コイル5が捲回されるとともに、加熱コイル5による加熱温度を正確にルツボ4に伝達するための熱遮蔽板6がルツボ4及び加熱コイル5を取り巻くように配設される。また、ルツボ4には、ルツボ4の温度を検出するための熱電対等からなる温度センサ7が設けられている。温度センサ7は、各蒸着室の蒸着温度制御を行うためのコントロール装置Cへ蒸着温度データを出力するもので、コントロール装置Cは、ルツボ4の温度が所定の蒸着温度になるように加熱コイル5に対してフィードバック制御(電流量調整)を行い、ルツボ4の温度を適正温度になるように制御するものである。
一方、真空室2の上方には、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層及び背面電極を形成するためのガラス材料からなる透光性の支持基板8を備えた基板ホルダ9と、支持基板8に所定の蒸着パターンを形成するための蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11とを、ルツボ4が配設される蒸着源に対し位置決め保持するための保持機構12が備えられている。
また、真空室2内において、ルツボ4と支持基板8との間には、成膜される各層(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層及び背面電極)の厚みを制御するシャッター13と、膜の厚みをモニタする膜厚計14とが配設される。従って、コントロール装置Cは、成膜領域15を膜厚計14によってモニタし、この膜厚計14によって得られた成膜データに基づいて所定の演算を行い、この演算結果から支持基板8に形成される膜厚を算出するとともに、シャッター13を動作(開閉動作)させることで膜厚を管理する。
さらに、前記各層に対応する各真空室2内において、ルツボ4と支持基板8との間には、前記各層形成時に最表面に位置する所定の層の仕事関数(光電子放出特性)を測定するための測定手段Lが備えられている。かかる測定手段Lは、重水素ランプ等からなる紫外光源L1と、マスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態の支持基板8表面に光を照射させることによって前記所定の層から放出される光電子を検出する光電子検出器L2とを備えている。かかる測定手段Lによれば、紫外光源L1から発せられる光が、図示しない分光器によって分光された状態で支持基板8表面に照射され、この光照射によって前記光電子が対象物表面(前記所定の層表面)から放出される際の光の波長に基づいて前記光電子放出特性を得ることができる。
封止装置Bは、後述する封止部材と支持基板8とを紫外線硬化型接着剤(以下、UV硬化型接着剤という)を介して接合するため、両部材を重ね合わせた状態で紫外線を照射させる封止室B1と、有機ELパネルの表示形態に応じた紫外線照射マスク(以下、UV照射マスクという)を保管するUV照射マスク保管室B2と、前記封止部材を封止装置B内に投入するための投入室B3と、封止室B1を経て得られた有機ELパネルを外部に搬出する取出装置Hと接続される排出部B4と、投入室B3と接着剤塗布装置Fとの間に設けられ前記封止部材に吸湿部材を塗布する吸湿部材塗布室B5とを有しており、封止装置B内は窒素によって満たされている。また、前述した各部屋間の前記封止部材もしくは後述するUV照射マスクの搬送は、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、前記各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボットB6が用いられる。また、封止室B1及びUV照射マスク保管室B2には、メンテナンス用の開閉扉B7がそれぞれ設けられている。
ここで、図4を用いて、封止装置Bに備えられる封止室B1について説明する。封止室B1は、排気ポート20を介して図示しない真空ポンプで室内が略真空状態になるように排気され、窒素導入口21から窒素が導入されることで、酸素の濃度が100ppm以下及び露点が−70度以下の窒素室22が設けられている。窒素室22の略中央には、支持基板8上に形成される後述する有機EL素子を気密的に覆うためのガラス材料からなる封止基板(封止部材)23を載置するための載置台24をシリンダー等の駆動手段によって上方に移動させる上昇機構25が設けられている。なお、載置台24と封止基板23との間には、ゴム等からなる弾性部材Mが介在している。弾性部材Mは、封止基板23と支持基板8とを接合させる際に、上昇機構25側から支持基板8側に対し所定の圧力が付与されることになるが、この圧力付与による封止基板23の破損を防止するとともに、載置台24から封止基板23への加圧分布を均一なものとし良好な封止を得るために配設されている。
一方、窒素室22の上方には、支持基板8と封止基板23とを後述するUV硬化型接着剤を介して接合させるべく、紫外線を照射するための紫外線照射装置(以下、UV照射装置という)26が配設され、このUV照射装置26の下方には、マスクホルダ27を介して配設されるUV照射マスク28と、基板ホルダ9を介して配設される支持基板(有機EL素子が形成された状態の支持基板)8とを保持するための保持機構29が設けられている。
かかる封止室B1は、上昇機構25によって封止基板23を上昇させ、支持基板8に対し所定の圧力を付与した状態で封止基板23を当接させた後、UV照射装置26からの紫外線をUV照射マスク28を介して前記UV硬化型接着剤の塗布位置に照射させることで、支持基板8と封止基板23とを気密性良く封止するものである。
尚、封止装置Bと蒸着装置Aの第2のブロックbとの間には、蒸着装置Aと封止装置Bを接続する第2受渡室Kが設けられている。第2受渡室Kには、蒸着装置A側及び封止装置B側にそれぞれ設けられるシャッター機構と、これらシャッター機構間に設けられ支持基板8を第2のブロックbから封止装置B側へと搬送するスライド機構とが設けられ、第2のブロックb及び封止装置Bにそれぞれ設けられる搬送ロボットb6,B6によって支持基板8の受け渡しがなされる。
コントロール装置Cは、蒸着装置A及び封止装置Bを制御するものである。具体的には、コントロール装置Cは、蒸着装置Aの第1のブロックaの前処理室a1のプラズマ処理に伴う制御、第1のブロックaの各蒸着室a2,a3,a4,a5及び第2のブロックbの各蒸着室b1,b2,b3,b4における蒸着温度調整や成膜の膜厚調整、各搬送ロボットa8,b6,B6の駆動制御、封止装置Bの封止室B1における封止処理等を行わせるものであり、蒸着装置A及び封止装置Bにおける駆動系全般の制御を行うものである。
ライン端末Dは、生産数量、有機EL素子の形成パターンに基づく蒸着マスクの種類及びUV照射マスクの種類、支持基板8及び封止基板23の投入枚数、蒸着装置Aの各蒸着室a2,a3,a4,a5,b1,b2,b3,b4における蒸着温度(各蒸着室のルツボの温度),有機EL素子を構成する各層の膜厚及び前記発光層の種類等の蒸着に関する生産条件等の生産管理情報を有機ELパネルの種類(機種)毎に設定するとともに、前記機種毎に前記生産管理情報を記憶するもので、パーソナルコンピュータやシーケンサ等によって構成されている。
また、ライン端末Dは、コントロール装置Cと支持基板投入装置Eと接着剤塗布装置Fと封止基板投入装置Gとにネットワーク接続され、コントロール装置Cには、機種及び前記機種に伴う各蒸着室の生産条件に関するデータを転送し、支持基板投入装置E,接着剤塗布装置F及び封止基板投入装置Gには、前記機種及び生産数量に関するデータが転送される。
支持基板投入装置Eは、ライン端末Dから転送される前記生産管理情報に基づいて、後述する透明電極及び絶縁層が形成された支持基板8を蒸着装置Aに投入するためのものであり、支持基板8をコンベア等の搬送手段を介して徐々に真空雰囲気にするための複数のブロック(部屋)を有するとともに、蒸着装置Aにおける第1ブロックaの投入室a7に接続される。
接着剤塗布装置Fは、ライン端末Dから転送される前記生産管理情報に基づいて、封止基板23の前記接合部に例えばX−Y−Z方向(縦、横、高さ方向)に移動可能な移動手段を備えたディスペンサを用いて前記UV硬化型接着剤を塗布するものである。この接着剤塗布装置Fは、ライン端末Dから転送される機種データに基づいて、適正なる塗布パターンを選定し、この塗布パターンによって前記UV硬化型接着剤を封止基板23と支持基板8との接合面である前記接合部に塗布してなるものである。
封止基板投入装置Gは、ライン端末Dから転送される前記生産管理情報に基づいて、封止基板23を接着剤塗布装置Fに投入するためのものである。
取出装置Hは、封止装置Bの排出部B4に接続され、コンベア等の搬送手段によって後述する製造工程により得られる有機ELパネルを外部に取り出すためのものである。
以上の各部によって有機ELパネルの製造装置が構成されている。
次に、図2から図6を用いて、有機ELパネルの製造方法を説明する。
まず、ライン端末Dにおいて、有機ELパネルの製造装置によって製造される有機ELパネルの生産管理情報を設定する(ステップS1)。
生産管理情報は、有機ELパネルの形状や発光パターン等によって分類される機種毎に設定されるものである。ライン端末Dによって設定される生産管理情報としては、蒸着装置Aの各蒸着室a2,a3,a4,a5,b1,b2,b3,b4における蒸着温度(各蒸着室のルツボの温度),有機EL素子を構成する各層の膜厚,前記発光層の種類(材料)等の蒸着に関する生産条件と、生産数量と、支持基板8及び封止基板23の投入枚数等がある。
前記生産管理情報の生産条件において、有機EL素子を構成する各層の膜厚は、図3で示すように各蒸着室のシャッター13の開閉タイミングによって管理される。また前記生産条件によって前記発光層の材料が選定されると、蒸着装置Aにおける第3,第4,第5,第6蒸着室a4,a5,b1,b2の何れかの蒸着室が選択され、支持基板8の搬送ルートが決定される。尚、ここで説明する製造装置は、発光層を形成する工程が4工程(第3,第4,第5,第6蒸着室a4,a5,b1,b2)用意され、それぞれの発光層形成工程における発光層の種類は異なる。
次に、前記生産管理情報が設定されたライン端末Dは、製造装置によって有機ELパネルの製造を開始させるべくスタート指令(スタートスイッチの入力)が入力されると、コントロール装置Cに対し機種に応じた段取り換え指令を出力するとともに、支持基板投入工程である支持基板投入装置E,UV接着剤塗布工程である接着剤塗布装置F及び封止基板投入工程である封止基板投入装置Gに機種及び生産数量の機種切り換え指令を出力する。
この段取り換え指令を受けたコントロール装置Cは、蒸着装置Aにおける第1,第2のブロックa,bの搬送ルートに位置する各蒸着室に配設されている蒸着マスク10を所定の機種に応じた蒸着マスク10に交換させるべく各搬送ロボットa8,b6を動作させる(ステップS2)。このとき、蒸着装置Aにおける第1,第2のブロックa,bの第1,第2蒸着マスク保管室a6,b5に保管されている蒸着マスク10は、マスクホルダ11に取り付けられた状態で保管されているため、各搬送ロボットa8,b7による蒸着マスク10の交換はマスクホルダ11を含めた交換となる。
さらにコントロール装置Cは、封止装置Bにおける封止室B1に配設されるUV照射マスク28を前記所定の機種に応じたUV照射マスク28に交換させるべく搬送ロボットB6を動作させる(ステップS2)。このとき、封止装置BのUV照射マスク保管室B2に保管されているUV照射マスク28は、マスクホルダ27に取り付けられた状態で保管されているため、搬送ロボットB6によるUV照射マスク28の交換はマスクホルダ27を含めた交換となる。
次に、ライン端末Dにより前記機種切り換え指令を受けた支持基板投入装置E,接着剤塗布装置F及び封止基板投入装置Gは、前記機種に応じた支持基板8及び封止基板23の供給を開始する(ステップ3)。尚、支持基板8には、スパッタリング法によってITOを形成した後、前記機種に応じた所定パターンになるようにパターニング処理されることで透明電極(前面電極)30が形成され(図6(a))、さらにスピンコート等の手段によって絶縁部材を形成し、この絶縁部材を前記所定パターンに沿うようにパターニング処理することで絶縁層31が形成される(図6(b))。かかる透明電極30及び絶縁層31は、本製造装置とは別工程によって予め形成される。尚、図6で示される支持基板8は、複数の有機ELパネルを得るためのマルチ基板(多数個取り基板)である。
次に、支持基板投入装置Eに投入されてなる支持基板8は、コンベア等の搬送手段を介して搬送され、その後、蒸着装置Aの投入室a7に供給される。尚、支持基板投入装置Eは、複数の部屋にシャッター機構によって分割されており、支持基板投入装置E側は大気となっているが、蒸着装置A側に向かうに従って真空状態となっている。
次に、支持基板8は、搬送ロボットa8によってプラズマ洗浄工程である前処理室a1に搬送される(ステップS4)。
次に、支持基板8は、前記プラズマ洗浄工程終了後に、搬送ロボットa8によって前処理室a1から正孔注入層形成工程である第1蒸着室a2に搬送され、支持基板8に形成される透明電極30上には、蒸着マスク10の所定パターンに応じた正孔注入層が形成される(ステップS5)。そして、蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態で、前記正孔注入層が形成された支持基板8に対し、前記正孔注入層表面に紫外光源L1により分光された光を照射して前記正孔注入層表面における光電子放出特性(仕事関数)を測定する。
次に、支持基板8は、前記正孔注入層表面における前記光電子放出特性が所定条件を満足していた場合に、搬送ロボットa8によって第1蒸着室a2から正孔輸送層形成工程である第2蒸着室a3に搬送され、前記正孔注入層上には、蒸着マスク10の所定パターンに応じた正孔輸送層が形成される(ステップS6)。そして、蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態で、前記正孔輸送層が形成された支持基板8に対し、前記正孔輸送層表面に紫外光源L1により分光された光を照射して前記正孔輸送層表面における光電子放出特性を測定する。
次に、支持基板8は、前記正孔輸送層表面における前記光電子放出特性が所定条件を満足していた場合に、搬送ロボットa8によって第2蒸着室a3から所定の搬送ルートに沿って発光層の形成を行うための蒸着室である第3,第4,第5,第6蒸着室a4,a5,b1,b2の何れかの蒸着室に搬送され、前記正孔輸送層上に蒸着マスク10の所定パターンに応じた発光層が形成される(ステップS7)。そして、蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態で、前記発光層が形成された支持基板8に対し、前記発光層表面に紫外光源L1により分光された光を照射して前記発光層表面における光電子放出特性を測定する。
尚、第3,第4蒸着室a4,a5の発光層形成工程において、支持基板8の搬送は、蒸着装置Aの第1のブロックa内における搬送ロボットa8によって、前記正孔注入層形成工程である第2蒸着室a3から第3蒸着室a4もしくは第4蒸着室a5の搬送となるが、第5,第6蒸着室b1,b2の発光層形成工程において、支持基板8は、蒸着装置Aの第1のブロックa内における搬送ロボットa8によって正孔注入層形成工程である第2蒸着室a3から第1受渡室Jへ搬送され、第1受渡室Jによって蒸着装置Aの第2のブロックbに移し替えられ、第2のブロックbによる搬送ロボットb6によって、第5,第6蒸着室b1,b2の何れかの蒸着室に搬送されることになる。
次に、支持基板8は、前記発光層表面における前記光電子放出特性が所定条件を満足していた場合に、搬送ロボットa8によって第3,第4蒸着室a4,a5の何れかの蒸着室、もしくは搬送ロボットb6によって第5,第6蒸着室b1,b2の何れかの蒸着室から電子輸送層形成工程である第7蒸着室b3に搬送され、前記発光層上に蒸着マスク10の所定パターンに応じた電子輸送層が形成され(ステップS8)、透明電極30上に正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層が順次積層形成された有機層32が得られることになる(図6(c))。そして、蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態で、有機層32が形成された支持基板8に対し、前記電子輸送層表面に紫外光源L1により分光された光を照射して前記電子輸送層表面における光電子放出特性を測定する。
次に、支持基板8は、前記電子輸送層表面における前記光電子放出特性が所定条件を満足していた場合に、搬送ロボットb6によって第7蒸着室b3から背面電極形成工程である第8蒸着室b4に搬送され、前記電子輸送層上に蒸着マスク10の所定パターンに応じた非透光性の背面電極33が形成される(ステップS9)。従って、透明電極30上に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層を順次積層形成して有機層32を得た後、背面電極33を形成することで有機EL素子34を有する支持基板8が得られることになる(図6(d))。そして、蒸着マスク10を備えたマスクホルダ11を保持機構12から取り外した状態で、有機EL素子34が形成された支持基板8に対し、背面電極33表面に紫外光源L1により分光された光を照射して背面電極33表面における光電子放出特性を測定する。
次に、支持基板8は、背面電極33表面における前記光電子放出特性が所定条件を満足していた場合に、搬送ロボットb7によって第2受渡室Kに搬送され、この第2受渡室Kによって封止装置Bに移し替えられる。その後、支持基板8は、封止装置B内において封止装置Bの搬送ロボットB6によって封止室B1に搬送されるとともに、封止室B1の保持機構29に配設される。尚、この場合、支持基板8は、基板ホルダ9に配設された状態で保持機構29に固定されるようになっている。
一方、ステップS1を経て、封止基板投入装置Gから供給される封止基板23は、UV接着剤塗布工程である接着剤塗布装置Fに供給される。この際、供給される封止基板23には、有機EL素子34を収納するための凹部形状からなる収納部35と、この収納部35を取り囲むように設けられ、支持基板8と接合するための接合部36とが形成されている(図6(e))。尚、この場合、収納部35は、熱プレス成型法,エッチング法,サンドブラスト法及び切削法の何れかの手段により形成されている。そして、封止基板23は、UV接着剤塗布工程である接着剤塗布装置Fに配設される前記ディスペンサによって接合部36にUV硬化型接着剤37が塗布されることになる(ステップS10,図6(e))。
次に、封止基板23は、前記UV接着剤塗布工程終了後に、吸湿部材塗布工程である吸湿部材塗布室B5にコンベア等の搬送手段によって搬送され、吸湿部材塗布室B5に配設される前記ディスペンサによって封止基板23の収納部35の底面(底部側内壁面)に吸湿部材38が塗布される(ステップS11,図6(e))。この場合、吸湿部材38は、活性アルミナ,モレキュラシーブス,酸化カルシウム及び酸化バリウム等の物理的あるいは化学的に水分を吸着する10μm以下の吸着剤(固体の吸着剤)を含有するもので、前記吸着剤が流動しない程度の粘性を有する白色のクリーム状部材である。尚、接着剤塗布装置Fと吸湿部材塗布室B5との間には、封止基板23の前記底面に吸湿部材38を塗布する環境を窒素雰囲気とするため、真空引きされ、且つ窒素が導入される置換室が設けられ、これにより前記吸湿部材塗布工程は窒素雰囲気中に設けられることになる。
次に、封止基板23は、前記吸湿部材塗布工程終了後に、封止装置Bの投入室B3に供給される。投入室B3は、シャッター機構によって複数の部屋に分割されており、これら各部屋は吸湿部材塗布室B5側とは反対側に向かうに従って酸素濃度が100ppm以下及び露点が−70度以下の窒素雰囲気になるように構成されており、封止基板23は、コンベア等の搬送手段によって吸湿部材塗布室B5から投入室B3内へと搬送される。その後、投入室B3に搬送された封止基板23は、封止装置Bの搬送ロボットB6によって、封止工程である封止室B1に搬送され、その収納部35が有機EL素子34と対向するように封止室B1における載置台24上に載置される。
封止工程である封止室B1は、支持基板8が基板ホルダ9を介して保持機構29に配設され、且つ封止基板23が弾性部材Mを介して載置台24上に配設されている場合に、封止基板23が支持基板8に対して所定の圧力を付与するように封止基板23が載置された載置台24を上昇機構25によって上昇させて封止基板23の収納部35によって有機EL素子34を収納すべく封止基板23の接合部36を支持基板8に当接させ、その状態にてUV照射装置26を動作させて紫外線をUV照射マスク28を介してUV硬化型接着剤37が塗布されている接合部36に所定時間照射することで、支持基板8と封止基板23とを気密的に接合させる。そして、上昇機構25を下降させることで封止工程が終了する(ステップS12,図6(f))。
前記封止工程終了後、支持基板8と封止基板23とを接合することで得られた有機ELパネル39を、搬送ロボットB6によって封止室B1から排出部B4に搬送し、排出部B4に連結されている取出装置Hによって有機ELパネル39を取り出すことで、一連の製造工程が終了する(ステップS13)。
尚、有機EL素子34を構成する前記各部形成時において、例えば前記各部のうち発光層形成後に測定される前記発光層表面の前記光電子放出特性が、所定条件を満たしていない場合(つまり、前記発光層表面から所定数の光電子を放出させるのに要するエネルギー値が著しく増大する場合)には、その時点で製造ラインを一旦、停止して、前記光電子放出特性が所定条件を満たさないと判定された支持基板8に対しては前記発光層以降の各層の形成は行わない。
かかる実施形態においては、所定の形状に形成された透明電極30と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層を有する有機層32と、非透光性の背面電極33と、を透光性の支持基板8上に順次積層形成してなる有機ELパネルの製造方法であって、透明電極30の形成された支持基板8上に有機層32及び背面電極33を成膜するように有機層32及び背面電極33に対応する複数の蒸着室a2〜a5,b1〜b4を備えた蒸着装置Aを用意し、有機層32を構成する正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層の形成後、及び背面電極33の形成後に複数の蒸着室a2〜a5,b1〜b4にて有機層32を構成する各層表面及び背面電極33表面の光電子放出特性の測定を行う工程、を含むものである。従って、支持基板8上には、有機EL素子34を構成する前記各部(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層並びに背面電極33)における前記光電子放出特性が所定条件を満たすように、前記各部が順次積層形成されていることで、前記各部の絶縁化が抑制され、これにより前記各部間における電荷伝搬がスムーズに行われるため、前記各部により構成される有機EL素子の発光効率を良好にすることが可能となる。
また本実施形態では、支持基板8上に形成される前記各部(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層並びに背面電極33)表面に対して、光電子放出特性をそれぞれ測定する場合について説明したが、例えば前記光電子放出特性が所定条件を満たさないような傾向のある層(例えば正孔注入層)だけに対して前記光電子放出特性を測定するようにしてもよい。このことは前記各部のうち少なくとも1つの層(膜)表面に対して前記光電子放出特性を測定すればよいことを意味している。
また本実施形態では、前記光電子放出特性が前記各部を成膜するための複数の蒸着室a2〜a5,b1〜b4にて各々測定される例について説明したが、例えば各蒸着室a2〜a5,b1〜b4に加えて、支持基板8が第1のブロックaの蒸着室a2〜a5間を移動する途中である搬送室において支持基板8の前記光電子放出特性を測定するとともに、支持基板8が第2のブロックbの蒸着室b1〜b4間を移動する途中である搬送室において支持基板8の前記光電子放出特性を測定するようにしてもよい。かかる各蒸着室を繋ぐ搬送室における前記光電子放出特性の測定は、前記光電子放出特性が所定条件を満たさないような傾向のある工程についてだけ行うようにしてもよい。尚、前記光電子放出特性の測定は、各蒸着室a2〜a5,b1〜b4ではなく、各ブロックa,bに別途、設けられる測定手段Lを備えた専用の測定室にて行うこともできる。
尚、支持基板8上に形成される前記各部(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層並びに背面電極33)のうち所定の層(膜)表面における光電子放出特性測定時に、少なくとも1つの前記所定の層及び絶縁層31から露出している透明電極30の露出部分(例えば透明電極30における電極部)の光電子放出特性を測定することも可能である。例えば、前記各部のうち前記電子輸送層に対応する第7蒸着室b3にて前記電子輸送層表面の光電子放出特性測定時に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び絶縁層31から露出している前記露出部分の光電子放出特性を測定するようにしてもよい。
本発明の実施形態による有機ELパネルの製造装置を示すブロック図である。 同実施形態による有機ELパネルの製造装置を示す図である。 同実施形態による蒸着装置の蒸着室を示す図である。 同実施形態による封止装置の封止室を示す図である。 同実施形態による有機ELパネルの製造工程を示すブロック図である。 同実施形態による有機ELパネルの製造工程を示す図である。
符号の説明
8 支持基板
23 封止基板
30 透明電極30
31 絶縁層
32 有機層
33 背面電極
34 有機EL素子
35 収納部
36 接合部
37 UV硬化型接着剤
38 吸湿部材
39 有機ELパネル
A 蒸着装置
B 封止装置
a2〜a5,b1〜b5 蒸着室
L 測定手段
L1 紫外光源
L2 光電子検出器

Claims (3)

  1. 所定の形状に形成された透光性の前面電極と、少なくとも発光層を有する有機層と、非透光性の背面電極と、を透光性の支持基板上に順次積層形成してなる有機ELパネルの製造方法であって、
    前記有機層を構成する所定の層の形成後、前記有機層を構成する各層の形成後、もしくは前記背面電極の形成後の何れかに前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
  2. 前記各層を形成するための複数の蒸着室を備え、前記蒸着室にて前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする請求項1記載の有機ELパネルの製造方法。
  3. 前記各蒸着室を繋ぐ搬送室を備え、前記搬送室にて前記所定の層表面、前記有機層表面、前記背面電極表面、もしくは前記前面電極表面の仕事関数の測定を行う工程、を含むことを特徴とする請求項2記載の有機ELパネルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102709491A (zh) * 2008-09-25 2012-10-03 株式会社日立高新技术 有机el器件制造装置

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