JP2006223033A - R−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石及びボイスコイルモータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 円筒状ヨークと、前記ヨークの周囲に配設された界磁用コイルを有するステータ部材と、界磁用コイルと空隙を介して対向するR−Fe−B系(RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種である)ラジアル異方性焼結リング磁石と、前記リング磁石を支持する支持部材とを有する可動磁石部材とを備え、前記リング磁石は上側及び下側端面からそれぞれ少なくとも1つのスリットが軸方向に沿って形成され、前記スリットは前記リング磁石の軸方向長さ(L)より短い長さ(Ls)を有するボイスコイルモータ。
【選択図】 図2
Description
特許文献2の提案は回転電機のロータ用希土類焼結磁石体の渦電流低減のために2対でかつ異なる方向にスリットを形成している点で本発明とは異なる。即ち、本発明では往復動するボイスコイルモータ用の可動磁石部材を構成するR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石の渦電流を低減するのを目的としているが、特許文献2ではこの考慮は何らされていない。
特許文献3の提案は熱応力割れの防止が目的であり、後述の比較例3に示す通り、実用性に乏しい。
特許文献4の提案は回転電機のロータの渦電流低減のためにロータの回転方向に沿ってスリットを形成している点で本発明のボイスコイルモータ及びそれに用いるR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石とは異なるものである。
前記リング磁石をその軸方向に対して垂直な平面上に投影して見た時、前記スリットは円周方向に等角度間隔で形成されており、前記スリットの幅(W)は0.2〜1mmの範囲にあり、前記スリットの軸方向長さ(Ls)と前記リング磁石の軸方向長さ(L)との比率(Ls/L)は0.2〜0.8の範囲にあるのが好ましい。
前記リング磁石は、内周面がN極でかつ外周面がS極であるか、あるいは内周面がS極でかつ外周面がN極であるように着磁してボイスコイルモータに組み込むのが実用的である。
前記界磁用コイルは前記リング磁石の磁束と鎖交する方向に巻回された巻線を有するとともに交流電源に接続して使用するのが実用的である。
図1は本発明の実施の形態に係わるボイスコイルモータの概略断面図、図2は可動磁石部材を構成するR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石の斜視図、図3は図2のリング磁石に渦電流が発生する状態を模式的に示す斜視図である。
スリット51,52の長さ(Ls1、Ls2)はリング磁石5の軸方向途中まで形成されているのが好ましく、例えばリング磁石5の軸方向長さ(L)の0.2〜0.8倍の範囲に収まるようにする。スリットの幅(W)は、0.2〜1mm、好ましくは0.2〜0.5mmの範囲に収まるように設定することが好ましい。Ls1,Ls2及びWが前記範囲を外れるとリング磁石5の機械的強度の低下やボイスコイルモータ100の推力不足を招来し、実用に耐えなくなる。また、(Ls1/Ls2)=1が理想であるが、(Ls1/Ls2)=0.7〜1.3が許容できる。これは(Ls1/Ls2)が前記範囲内であれば前述した通り、渦電流の発生するドメインのサイズの不均一度が抑制されて実用上支障の無いレベルのボイスコイルモータの推力が得られるからである。
スリット51,52はリング磁石5の軸方向に沿って形成するのが理想であるが、渦電流の発生するドメインのサイズの不均一度を抑制し、かつ実用的なスリットの形成を行うために、リング磁石5の軸方向に対するスリット51,52の形成角度のずれを20°以内、好ましくは10°以内にすることが望ましい。
本発明の焼結リング磁石のスリットは、磁場中成形工程において、スリット付き成形体を成形することにより形成するのが好ましい。あるいはリング状焼結体に内周刃あるいは外周刃切断機、またはワイヤーソー等で溝切りしてスリットを形成しても良い。この場合は、実用上、例えばワイヤーソーにより0.2〜0.5mmの幅(W)のスリットを形成でき、ダイヤモンドカッターにより0.2〜1.0mmの幅(W)のスリットを形成できる。
界磁用コイル3を商用交流電源(図示を省略)に接続し、界磁用コイル3に例えば単相の交流電流(100V、60Hz)を印加すると、リング磁石5から発生した磁場中に置かれた界磁用コイル3(導体)にはフレミングの左手の法則により軸方向にトルクが発生するので、その反作用により、可動磁石部材4が軸方向に(トルク発生方向と反対側)に移動する。例えば可動磁石部材4がS1方向に移動し、センサ磁石8が磁界検出センサ9に近接した場合には、磁界検出センサ9の出力信号が電流切換回路(図示を省略)に入力されて、逆向きの電流が界磁用コイル3に供給されるので、可動磁石部材4はS2方向に移動する。このように可動磁石部材4の位置情報を磁界検出センサ9で検出し、その位置情報により駆動電流の向きを切り替えることにより、可動磁石部材4の往復移動が可能となる。ボイスコイルモータ100の界磁用コイル3に通電すると、図3に示すように、リング磁石5の表面(表層部)には渦電流55が発生するものの、渦電流55はスリット51,52で仕切られた極めて狭い領域を流れるだけなので、渦電流55による発熱が大幅に低減され、ボイスコイルモータ100の効率を向上することができる。なお、実際の渦電流は破線55で示される渦電流路の方向に分布して流れ、リング磁石5を有する可動磁石部材4の移動方向に対してほぼ垂直の細長いループ状渦電流を発生する傾向にあるが、1つの破線で代表して図示している。
図1のボイスコイルモータ100用のリング磁石5として、表面をエポキシ樹脂で被覆したスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石(NEOMAX社製、商品名:NMX−30ER、外径30mm、内径24mm、(Di/Do)=0.8、軸方向長さ(L)=20mm)を準備した。このリング磁石には、上側端面からのスリットが1箇所、及び下側端面からのスリットが1箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計2箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に180°間隔で形成されている。前記合計2箇所のスリットはいずれも幅(W)=0.5mm、軸方向長さ(Ls1)=(Ls2)=10mm、(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.5とした。このリング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
上側端面からのスリットが2箇所、及び下側端面からのスリットが2箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計4箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に90°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとが該リング磁石の円周方向に交互に形成されている以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石の(Ls1/L)、(Ls2/L)、及び全スリットのWの寸法を表1に示す。得られたスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
上側端面からのスリットが3箇所、及び下側端面からのスリットが3箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計6箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に60°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとが該リング磁石の円周方向に交互に形成されている以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石の(Ls1/L)、(Ls2/L)、及び全スリットのWの寸法を表1に示す。得られたスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
上側端面からのスリットが4箇所、及び下側端面からのスリットが4箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計8箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に45°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとが該リング磁石の円周方向に交互に形成されている以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石の(Ls1/L)、(Ls2/L)、及び全スリットのWの寸法を表1に示す。得られたスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
上側端面からのスリットが4箇所、及び下側端面からのスリットが4箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計8箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に45°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとは該リング磁石の円周方向に交互に形成されており、Ls1とLs2の寸法を変更した以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。実施例5ではLs1=Ls2=4mm、実施例6ではLs1=Ls2=8mm、実施例7ではLs1=Ls2=12mm、実施例8ではLs1=Ls2=16mmとした。各実施例のリング磁石の(Ls1/L)、(Ls2/L)、及び全スリットのWの寸法を表1に示す。これらの各リング磁石をそれぞれ用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
上側端面からのスリットが4箇所、及び下側端面からのスリットが4箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計8箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に45°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとが該リング磁石の円周方向に交互に形成されており、全スリットのWの寸法を変更した以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。実施例9ではW=0.2mm、実施例10ではW=0.6mm、実施例11ではW=1mmとした。各実施例のリング磁石の(Ls1/L)、(Ls2/L)、及びWの寸法を表1に示す。これらの各リング磁石をそれぞれ用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
スリットを設けない以外は実施例1と同様にしてスリット無しNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
スリット数を8個とし、(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.1、W=0.5mmとした以外は実施例1と同様にしてスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
図7と同様の、W=1mmの軸方向に貫通したスリットを形成したNd−Fe−B系ラジアル異方性C字形焼結磁石を準備した。このC字形焼結磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた。
出力(J/s)=[2π×回転数(r.p.m.)×回転トルク(Nm)]÷60
効率(%)=出力÷入力電力×100
各実施例及び比較例のモータ効率を表1に示す。
比較例3では実施例5に近い効率を得られたが、比較例3のC字形磁石は軸方向に貫通したスリットを形成したことにより同軸度が悪くなっており、シャフト62に偏心した状態で取り付けざるを得ず長期信頼性に乏しいのがわかった。
図1のボイスコイルモータ100用のリング磁石5として、表面をエポキシ樹脂で被覆したスリット付きNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石(NEOMAX社製、商品名:NMX−30ER、外径50mm、内径47.5mm、(Di/Do)=0.95、軸方向長さ(L)=20mm)を準備した。このリング磁石には、上側端面からのスリットが4箇所、及び下側端面からのスリットが4箇所、それぞれ該リング磁石の軸方向に沿って形成されているとともに、前記合計8箇所のスリットは該リング磁石の円周方向に45°間隔で、かつ上側端面からのスリットと下側端面からのスリットとが該リング磁石の円周方向に交互に形成されており、Ls1とLs2を下記の寸法とし、全スリットのW=0.5mmとした。
実施例12では(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.2、実施例13では(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.4、実施例14では(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.6、実施例15では(Ls1/L)=(Ls2/L)=0.8とした。
各実施例のリング磁石をそれぞれ用いて図1のボイスコイルモータ100を組立てた後、実施例1と同様にしてモータ効率を測定した。その結果、各実施例でいずれも92.0%を超えるモータ効率が得られた。
(比較例4)
スリット無しとした以外は実施例12と同様にしてスリット無しのNd−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石を準備した。このリング磁石を用いて図1のボイスコイルモータ100を組立て、モータ効率を測定した結果、モータ効率は約90%であった。
Claims (4)
- R−Fe−B系(RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種である)ラジアル異方性焼結リング磁石であって、
前記リング磁石は上側端面及び下側端面からそれぞれ少なくとも1つのスリットが軸方向に沿って形成されており、前記スリットは前記リング磁石の軸方向長さ(L)より短い長さ(Ls)を有して軸方向に貫通していないことを特徴とするR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石。 - 前記リング磁石をその軸方向に対して垂直な平面上に投影して見た時、前記スリットは円周方向に等角度間隔で形成されており、前記スリットの幅(W)は0.2〜1mmの範囲にあり、前記スリットの軸方向長さ(Ls)と前記リング磁石の軸方向長さ(L)との比率(Ls/L)は0.2〜0.8の範囲にある請求項1に記載のR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石。
- 前記リング磁石は、内周面がN極でかつ外周面がS極であるか、あるいは内周面がS極でかつ外周面がN極である請求項1または2に記載のR−Fe−B系ラジアル異方性焼結リング磁石。
- 強磁性体からなる円筒状のヨークと、前記ヨークの周囲に配設された界磁用コイルとを有するステータ部材と、
前記界磁用コイルと空隙を介して対向するR−Fe−B系(RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種である)ラジアル異方性焼結リング磁石と、前記リング磁石を支持する支持部材とを有する可動磁石部材とを備えたボイスコイルモータであって、
前記リング磁石は上側端面及び下側端面からそれぞれ少なくとも1つのスリットが軸方向に沿って形成されており、前記スリットは前記リング磁石の軸方向長さ(L)より短い長さ(Ls)を有して軸方向に貫通していないことを特徴とするボイスコイルモータ。
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