JP2006220422A - タイヤの衝撃影響推定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 タイヤが衝撃を受けた場合に、その衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否かを精度よく迅速に推定するすることのできるタイヤの衝撃影響推定装置を提供する。
【解決手段】 タイヤの衝撃影響推定装置は、衝撃に対するタイヤの耐性を示す耐力指数を取得する耐力指数取得部32と、タイヤへ与えられる衝撃の有無を認識する衝撃認識部34と、耐力指数と認識された衝撃に基づき、タイヤが衝撃により影響を受けたか否かを推定する影響推定部42を含む。衝撃認識部34は、衝撃の有無をタイヤの加速度の変化が閾値|G|を越えるか否かに基づき認識し、影響推定部42は耐力指数取得部32の取得した耐力指数に基づき判定領域記憶部40から選択したピンチカット発生領域を示す領域線と車速とタイヤの加速度とに基づき、タイヤに付与された衝撃の大きさがピンチカット発生領域に属するか否かで衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否かを推定する。
【選択図】 図2
【解決手段】 タイヤの衝撃影響推定装置は、衝撃に対するタイヤの耐性を示す耐力指数を取得する耐力指数取得部32と、タイヤへ与えられる衝撃の有無を認識する衝撃認識部34と、耐力指数と認識された衝撃に基づき、タイヤが衝撃により影響を受けたか否かを推定する影響推定部42を含む。衝撃認識部34は、衝撃の有無をタイヤの加速度の変化が閾値|G|を越えるか否かに基づき認識し、影響推定部42は耐力指数取得部32の取得した耐力指数に基づき判定領域記憶部40から選択したピンチカット発生領域を示す領域線と車速とタイヤの加速度とに基づき、タイヤに付与された衝撃の大きさがピンチカット発生領域に属するか否かで衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否かを推定する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、タイヤの衝撃影響推定装置、特に、走行中タイヤへ与えられる衝撃がタイヤに配慮すべき影響を与えているか否かを推定するタイヤの衝撃影響推定装置に関する。
車両に装着されるタイヤは、安全に車両を走行させる最も重要な部品の一つであり、タイヤの状態は常に最適な状態にしておくことが必要である。したがって、タイヤに何らかの不具合が生じそうな場合には、その不具合を事前に検出し、運転者に報知して、速やかに点検を行わせる必要がある。このような、タイヤの不具合を事前に検出するシステムが従来から種々提案されている。
例えば、特許文献1には、タイヤ内圧や負荷荷重、タイヤの回転速度などに基づいてタイヤの危険度を推定する技術が記載されている。また、特許文献2には、走行中のタイヤの近傍音を収集して、この収集した音の変化に基づきタイヤにバーストの予兆があるか否かを推定する技術が記載されている。
特開2003−2017号公報
特開2004−155273号公報
上述したタイヤ不具合の推定技術は、タイヤの低内圧や高負荷走行の検出、また低内圧や高負荷走行に基づき発生する特徴音の検出などに基づいて不具合を推定するものである。しかし、これらの推定に用いる検出値は、車両の走行状態や走行環境により様々な外乱の影響を受ける。その結果、高い推定精度が得られないという問題がある。また上述したタイヤ不具合の推定技術は、何らかの原因によりタイヤに変化が生じたことに基づき行うものである。すなわち、どの時点で、タイヤに不具合原因が生じたか否かを推定するものではない。したがって、タイヤに何らかの現象が現れた後、はじめてその不具合またはその予兆の認識を行うものである。その結果、タイヤ不具合の推定が遅れる可能性があるという問題がある。例えば、タイヤが路面の凹凸などを越えた時に受ける衝撃が、タイヤに影響を及ぼしたか否かは、タイヤに何らかの現象が現れてから行われるので、迅速に認識することができなかった。特に、タイヤに瞬間的に衝撃が加わったときに発生するピンチカットは、顕著なタイヤ内圧の変化や走行音の変化を伴わないので、特許文献1や特許文献2の技術では、ピンチカットの発生を迅速に推定することができないという問題があった。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤが衝撃を受けた場合に、その衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否かを精度よく迅速に推定するすることのできるタイヤの衝撃影響推定装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のタイヤの衝撃影響推定装置は、タイヤに与えられる衝撃に対するタイヤの耐性を示す耐力指数を取得する耐力指数取得手段と、路面から前記タイヤへ与えられる衝撃の有無を認識する衝撃認識手段と、前記耐力指数と認識された衝撃に基づき、前記タイヤが前記衝撃により影響を受けたか否かを推定する影響推定手段と、を含むことを特徴とする。
この態様によると、衝撃認識手段によりタイヤが衝撃を受けたことを検出し、その衝撃を受けた時に、タイヤへの衝撃による影響の有無の推定を行うので、衝撃に基づくタイヤへの影響を迅速に推定することができる。また、このとき影響推定手段は、タイヤの耐性を考慮し衝撃による影響を推定するので精度のよい推定を行うことができる。
また、上記態様において、前記影響推定手段は、前記タイヤの速度と、前記タイヤの加速度に基づいて、前記タイヤに付与される衝撃の大きさを推定してもよい。タイヤに付与される衝撃は、タイヤの速度が低い場合、タイヤの加速度が大きくても小さい、すなわち衝撃のエネルギは小さく、タイヤへのダメージは小さい。逆に、タイヤの速度が高い場合、タイヤの加速度が小さくても衝撃は大きくなる。すなわち、タイヤへのダメージは大きい。したがって、影響推定手段でタイヤの速度とタイヤの加速度を考慮した推定を行うことにより正確にタイヤへの衝撃の影響を推定することができる。なお、タイヤの速度とは、車速でもよいし、タイヤの車輪速でもよい。
また、上記態様において、前記耐力指数取得手段は、タイヤの空気圧と予め記憶されたタイヤ特性に基づき影響推定時の耐力指数を取得してもよい。タイヤは、同じ構成、同じサイズなど同じタイヤ特性を有していても、タイヤの内圧が低い場合と高い場合とで衝撃に対する変形量が変わる。例えば、低圧のタイヤは、小さな衝撃力が付与された場合でも大きく変形し、タイヤ内部の構造体に大きなストレスを与える。逆に、高圧のタイヤの場合、大きな衝撃力が付与されてもあまり変形しない。つまり、タイヤ内部の構造物へのストレスが小さい。したがって、タイヤの影響推定時のタイヤ空気圧の応じた最適な耐力指数を取得することで、タイヤへの衝撃の影響の有無を精度よく推定することができる。
また、上記態様において、前記耐力指数取得手段は、さらに、タイヤに付加される荷重に基づき前記耐力指数を補正してもよい。タイヤ自体の形状、構造、材質などにより決まる固有の耐力指数は、車体側からタイヤに付与される荷重によって変化する。つまり、タイヤに対する荷重が大きいほどタイヤの耐力指数は小さくなる。この態様によれば、車両の使用状態、例えば搭乗人数や荷物の積載量などに応じて、適切な耐力指数を取得することが可能になり、タイヤへの衝撃の影響の有無をさらに精度よく推定することができる。
また、上記態様において、前記衝撃認識手段は、タイヤの加速度の変化に基づきタイヤに対する衝撃の有無を取得してもよい。タイヤが走行中に衝撃を受ける最も多い原因の一つに、タイヤが路面の段差や凹凸部を通過するときに受けるというものがある。例えば、タイヤが、登り段差や凸部に乗り上げる場合、まず減速する。また、段差を越え平坦な路面に戻った時や路面の凸部から降りる場合には、先の減速状態から加速する。逆に路面の下り段差や凹部を越える場合は、まず、加速しその後減速する。このときの加速度の大きさや減速度の大きさは、タイヤに付与される衝撃の大きさに応じて変化する。したがって、タイヤの加速度の変化を監視することより、タイヤに対する衝撃の発生のタイミングを精度よく取得することが可能となる。その結果、タイヤの加速度を監視することにより衝撃がタイヤに影響するか否かを適切なタイミングで推定することができる。
また、上記態様において、前記影響推定手段は、タイヤ内部でピンチカットが発生したか否かを推定してもよい。
本発明のタイヤの衝撃影響推定装置によれば、タイヤが衝撃を受けた場合に、その衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否かを精度よく迅速に推定することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
本実施形態の衝撃影響推定装置は、タイヤが衝撃を受けたことを検出し、その衝撃を受けた時に、その衝撃がタイヤへ影響を及ぼしたか否かを推定するものである。影響があるか否かの推定は、タイヤに与えられる衝撃に対するこのタイヤの耐性を示す耐力指数と、タイヤの与えられる衝撃に基づき行う。なお、本実施形態において、タイヤが衝撃による影響を受けたか否かの判断は、例えば、タイヤに「ピンチカット」が生じるか否かにより行う例を示す。ピンチカットとは、タイヤが突起などに乗り上げた際に、タイヤの変形によりサイドウォール部が変形し、その衝撃によりタイヤ内部のコードが切れてしまっている状態のことである。タイヤ表面に現れる現象としては、例えばサイドウォールの一部分が気泡のように盛り上がるような変形として現れる。
図1は、本実施形態のタイヤの衝撃影響推定装置を備える車両10の全体構成を示す図である。車両10は、車体12の右前に設けられた車輪14a、車体12の左前に設けられた車輪14b、車体12の右後ろに設けられた車輪14c、および車体12の左後ろに設けられた車輪14d、車両10のトランク下の収納スペースなどにスペア用の車輪14eを備える。以下、車輪を特定しない場合には、車輪14a、車輪14b、車輪14c、車輪14d、およびスペア用の車輪14eは、単に「車輪14」と呼ぶ。また、車輪14aに対応する機器類には符号の末尾に「a」を付し、車輪14bに対応する機器類には符号の末尾に「b」を付し、車輪14cに対応する機器類には符号の末尾に「c」を付し、車輪14dに対応する機器類には符号の末尾に「d」を付し、スペア用の車輪14eに対応する機器類には符号の末尾に「e」を付し、それらの機器類を特定しない場合には末尾の「a〜e」を省略した符号で表記する。本実施形態において、車輪14a、車輪14b、車輪14c、車輪14dは、個々に衝撃影響推定を行う必要があるが、各車輪14における推定処理は同じであるため、以下の説明では、代表して一つの車輪14のタイヤに対する推定を説明するが、並列処理で車輪14a、車輪14b、車輪14c、車輪14dに対する推定が行われている。
車輪14は、タイヤおよびホイールを含んだ構造を有している。また、車輪14は、タイヤの内部空間の圧力を検出する空気圧センサ16と、この空気圧センサ16で検出した情報を車体12側へ提供するための、車輪側通信機18を含んでいる。本実施形態では、空気圧センサ16と車輪側通信機18は一体的に設けられたユニット構造を呈している。このユニットは、例えば車輪14のホイールリム部の所定箇所に設置することができる。また、車輪14の近傍には、車輪14の車輪速を検出する車輪速センサ20が配置されている。さらに、各車輪14に対応するようにして設けられたサスペンションのアッパーマウント部分には、車輪14に作用する車体12側から受ける荷重を検出する荷重センサ22が配置され、この荷重センサ22の検出値を利用してタイヤに作用する荷重を検出している。
さらに、車体12には、電子制御装置24(「ECU24」と表記する)が配置されている。ECU24は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、マイクロコンピュータによる演算を行う演算ユニット、各種の処理プログラムを記憶するROM、一時的にデータやプログラムを記憶してデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、および各種信号の送受信を行うための入出力ポート等を有する。
このほか、ECU24には、車輪14の車輪側通信機18から提供される空気圧センサ16の情報を受信する車体側通信機26や、後述するがタイヤに影響を及ぼすような衝撃が加えられたと推定される場合に警報処理を行う警報装置28が接続されている。また。ECU24には、車輪速センサ20や荷重センサ22からの情報も順次提供されるようになっている。なお、前述したように、衝撃影響推定装置は、車輪14a、車輪14b、車輪14c、車輪14dに対し、それぞれ行う必要があるため、ECU24は、車体側通信機26で受信する情報が、どの車輪14から送信された情報であるか識別できるようになっている。
図2には、ECU24の機能を説明する機能ブロックが示されている。ECU24は、耐力記憶部30、耐力指数取得部32、衝撃認識部34、車輪加速度演算部36、車速演算部38、判定領域記憶部40、影響推定部42などを含んでいる。
車輪14のタイヤは、その種類やサイズにより、外部から与えられる衝撃に対する耐力は様々であり、種類、サイズごとに予め決まられている。したがって、耐力記憶部30は、車体12に装着された車輪14のタイヤ固有の耐力を記憶している。
図3には、タイヤの耐力の決定手法が示されている。図3(a)に示すように、車輪14は、タイヤ44とホイール46とで構成されている。この車輪14を図3(a)、図3(b)に示すように突起48の上に配置し上方より荷重Fを与える。すると、タイヤ44は、図3(c)に示すようにサイドウォール44a部分がたわんで変形する。この変形は、図3(d)に示すように、荷重Fの増加と共に比例的に増加する。そして、ある範囲を超えると急激に増加し、例えば破損点Sでタイヤ44の内部の構造体であるコード層などが切れる。その結果、ピンチカットを発生する。したがって、図3(d)のハッチング部分の積分値が、このタイヤ44の種類やサイズなどのタイヤ特性で規定される耐力と定義することができる。なお、ピンチカットの発生は、直ちにタイヤ44を使用不能とするものではないが、できるだけ早い段階でタイヤ44を交換することが望まれる。本実施形態のタイヤの衝撃影響推定装置は、このピンチカットの発生を迅速に推定するものである。
ここで、耐力指数とは、タイヤ44に与えられる衝撃に対するタイヤ44の耐性を示すものであり、耐力指数=タイヤ44固有の耐力/タイヤ44に付与される荷重で定義される。通常、各車輪14に対する車体12の分配荷重は決まっているので、耐力記憶部30に記憶されたタイヤ44ごとの耐力を規定荷重値で除算することにより耐力指数を求めることができる。
しかし、タイヤ44の耐力指数は、そのタイヤ44の使用状態によって変化する。例えば、同じ構成、同じサイズで同じタイヤ特性を有するタイヤ44でも、タイヤ44の内圧が低い場合と高い場合とで衝撃に対するタイヤ44の変形量が変化する。例えば、低圧状態のタイヤ44は、小さな衝撃力が付与された場合でも大きく変形する。その結果、タイヤ44内部の構造体、例えば、コード層に大きなストレスを与えことになる。つまり、タイヤ44に対する衝撃の影響力が大きいことになる。逆に、高圧状態のタイヤ44の場合、大きな衝撃力が付与されてもあまり変形しない。つまり、タイヤ44内部のコード層へのストレスが小さく、タイヤ44に対する衝撃の影響力は小さいことになる。したがって、タイヤ44の耐力指数とタイヤ44の空気圧Pとの間には、図4に示すような比例関係が成り立つ。つまり、耐力指数取得部32では、タイヤ44の現在の空気圧Pを取得することにより、タイヤ44の現在の状況に適した耐力指数αを取得している。言い換えれば、基準となるタイヤ空気圧に対する耐力指数をタイヤ44の空気圧Pで換算することによりタイヤ44の現在の状況に適した耐力指数αを取得することができる。なお、このとき、耐力指数取得部32は、車輪速センサ20から提供される現在のタイヤ44の空気圧Pを用いることになる。
なお、厳密には、車両10の搭乗者数や荷物の積載量などでタイヤ44に付与される荷重は変化する。そこで、本実施形態の耐力指数取得部32は、各車輪14のサスペンションのアッパーマウント部分などに配置された荷重センサ22からの荷重情報Wに基づき、耐力指数を補正する補正部32aを含んでいる。荷重センサ22から提供される荷重情報Wは車両10の重量に基づく荷重も含んでいるので、補正部32aは、例えば、タイヤ44固有の耐力を除算する規定荷重値を補正することになる。つまり、荷重が大きいほどタイヤの耐力指数は小さくなる。このように、車両10の使用状態、例えば搭乗人数や荷物の積載量などに応じて、耐力指数αを補正することにより、後述するタイヤ44への衝撃の影響の有無をさらに精度よく判断することができる。
もちろん、車両10の重量に対して、搭乗者や搭載荷物の重量が無視できる場合には、耐力記憶部30に車両10の重量で決まる耐力指数を記憶し、耐力指数取得部32で、タイヤ44の空気圧Pに応じた耐力指数を換算取得するようにしてもよい。
一方、衝撃認識部34は、タイヤ44が衝撃を受けたか否かの検出をタイヤ44の加速度の変化に基づいて認識する。タイヤ44が走行中に衝撃を受ける最も多い原因の一つにタイヤ44が路面の段差や凹凸部を通過したりする場合がある。巡航走行中の車両10が路面の登り段差や凸部を乗り越えようとすると、タイヤ44は、まず段差や凸部に乗り上げることなり減速する。また、段差を越え平坦な路面に戻った時や路面の凸部から降りる場合には、先の減速状態から加速する。逆にタイヤ44が路面の下り段差や凹部を越える場合は、まず、加速しその後減速する。図5には、巡航走行する車両10のタイヤ44が路面の凸部を乗り越えた時の加速度の変化が示されている。図5において、加速度aは上向きが制動側(−)で、下向きが加速側(+)を示している。このように、タイヤ44の加速度の変化を監視することにより路面の凹凸や段差により衝撃を受けたタイミングを容易に取得することができる。このとき、衝撃認識部34は、加速度の変化に対して所定の閾値|G|(絶対値G)を設定することにより、本実施形態のタイヤの衝撃影響推定装置が対象とする衝撃の有無を識別することができる。つまり、衝撃認識部34は加速度が所定の閾値|G|を越えて変化した場合に、タイヤ44に影響を及ぼす可能性のある衝撃がタイヤ44に付与されたと判断することができる。
なお、衝撃認識部34で利用する加速度aは、車輪加速度演算部36で車輪速センサ20から提供される車輪速に基づき公知の演算方法により演算した値を利用することができる。また、車輪速センサ20から提供される車輪速は、車速演算部38にも提供され、公知の演算方法により車両10の車速V0の算出に利用される。算出した車速V0は、影響推定部42に提供され、後述の推定処理に利用される。なお、本実施形態では、タイヤの速度として、車速演算部38で算出した車速V0を用いる例を示しているが、車輪速センサ20から得られるタイヤ44の回転速度、つまり車輪速を利用してもよい。この場合、衝撃影響推定装置のECU24における車速演算部38を省略することができる。
また、判定領域記憶部40には、図6に示すような耐力指数αごとのピンチカット発生領域を示す判定領域情報、すなわち、耐力指数取得部32で、タイヤ44の空気圧Pや荷重情報Wにより決定された耐力指数αに対応する領域線を複数記憶している。そして、耐力指数αに応じた領域線が影響推定部42に提供されるようになっている。なお、この領域線は、予めシミュレーションなどによりピンチカットの発生実験を行うことにより決めておくことができる。
影響推定部42では、図6において、各耐力指数αで規定される領域線の上の部分、すなわちハッチングを施した部分より上に、車両10の車速V0とタイヤ44の加速度aに基づき定まる値が存在する場合、その時、タイヤ44に付与された衝撃によりピンチカットが発生したと判断することができる。図6は説明のため、複数の耐力指数αに基づく領域線を示しているが、実際は耐力指数取得部32で取得された耐力指数αで決まる1本の領域線のみが利用され、影響推定部42に提供される。
図6から明らかなように、タイヤ44の加速度aが大きいほどタイヤ44に与える影響が大きく、その時の衝撃によりピンチカットが発生しやすいと判断することができる。また、車両10の車速V0が大きいほど、加えられた衝撃による影響が大きく、その時の衝撃によりピンチカットが発生しやすいと判断することができる。さらに、その時のタイヤ44の使用状態で決まる耐力指数αが小さいほど、小さな加速度aや低車速でもその時の衝撃によるタイヤ44はダメージを受け、ピンチカットが発生すると判断することができる。
影響推定部42は、耐力指数αと、車速V0と、加速度aとの関連に基づき、現在タイヤ44に付与された衝撃によりピンチカットが発生したと推定した場合には、警報装置28に対し警報処理信号を提供し、警報装置28を動作させる。警報装置28は例えば「今の衝撃によりタイヤにピンチカットが生じた可能性があります。至急確認してください。」などの警告メッセージを音声やディスプレイ表示で運転者に提示する。また、アラームや警報ランプを動作させてもよい。なお、前述したように、ECU24は、各車輪14のタイヤ44ごとに耐力指数αの取得、空気圧Pの取得、加速度aの取得を個別に行うことができるので、ピンチカットが発生したタイヤ44が前後左右のどのタイヤ44であるかを特定して警報することも可能である。
以上のように構成される本実施形態のタイヤの衝撃影響推定装置動作を図7のフローチャートを用いて説明する。なお、前述のように、ECU24は、各車輪14のタイヤ44ごとに、衝撃による影響を同様に推定することができるので、一例として図1において右前輪である車輪14aについて、そのタイヤへ衝撃が付与されたときの衝撃の有無を推定する手順を説明する。
まず、ECU24の耐力指数取得部32は、車両10が走行を開始した場合、荷重センサ22を介して、車輪14aのタイヤ44に付与されているタイヤ荷重Wを取得する(S100)。耐力指数取得部32は、取得したタイヤ荷重Wと耐力記憶部30から提供される車輪14aのタイヤ44の耐力に基づき耐力指数を補正する(S102)。つまり、現在の車両10の搭乗者や荷物の積載量を考慮した耐力指数の基準値を補正する。さらに、耐力指数取得部32は、車輪側通信機18および車体側通信機26を介して所定間隔で送信されてくる空気圧センサ16が検出した車輪14aのタイヤ44の空気圧Pを取得する(S104)。耐力指数取得部32は、補正された耐力指数を空気圧Pに基づいて変換し、現在の車輪14aのタイヤ44に適した耐力指数αを取得する(S106)。
一方、ECU24の車輪加速度演算部36および車速演算部38は車輪速センサ20aから提供される車輪14aの車輪速Vを取得し(S108)、車輪加速度演算部36は車輪14aのタイヤ44の加速度aを取得する(S110)。また、車速演算部38は、車両10の車速V0を取得する(S112)。車輪加速度演算部36は演算した加速度aを衝撃認識部34および影響推定部42に提供する。また、車速演算部38は影響推定部42に演算した車速を提供する。
衝撃認識部34は、入力される加速度aに対し、その加速度aが衝撃の有無を判断する絶対値|G|を越えるか否かの監視を常時行う(S114のYまたはN)。もし、入力された加速度aが絶対値|G|を越えない場合、ECU24はタイヤ44に注意すべき衝撃は加わっていないと判断し、ECU24の全体動作としてステップS100に戻り、再度ステップS100以降の処理を行い、次のタイミングの衝撃検出を行う。
一方、ステップS114で入力された加速度aが閾値|G|を越えた場合(S116のN)、ECU24は、タイヤ44に影響を及ぼす可能性のある衝撃がタイヤ44に加えられたと判断し、影響推定部42において、詳細な影響推定を行う。つまり、車両10の車速V0と、タイヤ44の加速度aにより規定される衝撃の大きさが、その時点のタイヤ44の耐力指数α、例えば、α=1.4で規定されるピンチカット発生領域に含まれるか否かの判断を行う(S116のYまたはN)。もし、車両10の車速V0と、タイヤ44の加速度aにより規定される衝撃の大きさがピンチカット発生領域に含まれる場合、影響推定部42は警報装置28に対して警報出力を行う(S118)。つまり、前述したように、音声メッセージや警告表示などにより、今タイヤ44に加えられた衝撃によりタイヤ44が許容範囲を超える衝撃を受け、ピンチカットが発生した可能性がある旨を運転者に直ちに通知する。
一方、ステップS116で、車両10の車速V0と、タイヤ44の加速度aにより規定される衝撃の大きさがピンチカット発生領域に含まれない場合(S116のN)、影響推定部42は、今の衝撃はタイヤ44の許容範囲内のものであり、ピンチカット発生の心配はないと判断し、ECU24の全体動作としてステップS100に戻り、再度ステップS100以降の処理を行い、次のタイミングの衝撃検出を行う。なお、このとき、影響推定部42は警報装置28を介して、「今の衝撃によるタイヤへの影響はありません。」などの出力を行ってもよい。
このように、本実施形態のタイヤの衝撃影響推定装置によれば、タイヤが衝撃を受けたことを検出し、その衝撃を受けた時に、タイヤへの衝撃による影響の有無の推定を行うので、衝撃に基づくタイヤへの影響を迅速に推定することができる。また、このときタイヤの耐性を考慮し衝撃による影響を推定するので精度のよい推定を行うことができる。さらに、タイヤに対する衝撃が検出された時に、直ちにその衝撃がタイヤに影響を及ぼすか否かを推定判断するので、運転者は、衝撃に対する認識がある間に、今感じた衝撃がタイヤに影響を及ぼしたか否か認識することができる。その結果、衝撃に対する不安感が解消されると共に、もし、タイヤに衝撃による影響が現れていると推定された場合には、早急に点検作業を行うことを心がけることができる。
なお、前述したように、ECUは、前後左右の車輪のタイヤに関し、ピンチカットの発生の有無の推定を並列処理で行っている。したがって、いずれか一つのタイヤにおいてピンチカットの発生が推定された場合には、ECUは警報装置を動作させることは言うまでもない。
本実施形態において、ECU24の内部構成は機能的に分類した状態で示したが、本実施形態と同等の処理を行うことができれば、内部構成は任意である。また、機能ごとの処理部を独立して設けたり、適宜機能を組み合わせて構成してもよい。さらに、車輪速センサから得られる車輪速を車輪加速度演算部36や車速演算部38に供給し、加速度や車速を算出しているが、例えば、ABSなどの他のシステムで算出する加速度や車速をそにまま流用してもよく、本実施形態と同様な効果を得ることができる。その場合、車輪加速度演算部36や車速演算部38を省略することができるので、タイヤの衝撃影響推定装置の構成を簡略化することができる。
また、タイヤ44に付与される荷重をサスペンションなどに配置した荷重センサ22で検出する例を示したが、タイヤトレッド部分に埋め込んだ圧力センサなどを用いて、タイヤ44に対する荷重検出を行ってもよい。この場合、圧力センサの検出情報は、車輪側通信機18、車体側通信機26を介してECU24に提供されることになる。
本実施形態において、タイヤ44に付与される衝撃の大きさを車速V0とタイヤ44の加速度aに基づいて推定しているが、車速V0は、各タイヤ44の車輪速の平均値や最大値に基づき算出しているので、車速V0の代わりに推定対象となるタイヤ44の車輪速をそのまま利用することも可能であり、本実施形態と同様の推定を行い同様の効果を得ることができる。
また、図1において、スペア用の車輪14eに対しても空気圧センサ16や車輪側通信機18を配置しているので、もし、ピンチカットが発生し、車輪14の交換を行った場合でも、交換後の車輪14のタイヤにおいても本実施形態と同様に、衝撃影響推定を行うことができる。
また、本実施形態においては、タイヤ44に対する衝撃による影響をピンチカットの発生の有無で判断したが、これに限らず、影響のレベルを種々設定し、そのレベルに達したか否かの推定を行うようにしてもよい。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
10 車両、 12 車体、 14 車輪、 16 空気圧センサ、 18 車輪側通信機、 20 車輪速センサ、 22 荷重センサ、 24 ECU、 26 車体側通信機、 28 警報装置、 30 耐力記憶部、 32 耐力指数取得部、 34 衝撃認識部、 36 車輪加速度演算部、 38 車速演算部、 40 判定領域記憶部、 42 影響推定部、 44 タイヤ、 46 ホイール、 48 突起。
Claims (6)
- タイヤに与えられる衝撃に対するタイヤの耐性を示す耐力指数を取得する耐力指数取得手段と、
路面から前記タイヤへ与えられる衝撃の有無を認識する衝撃認識手段と、
前記耐力指数と認識された衝撃に基づき、前記タイヤが前記衝撃により影響を受けたか否かを推定する影響推定手段と、
を含むことを特徴とするタイヤの衝撃影響推定装置。 - 前記影響推定手段は、前記タイヤの速度と、前記タイヤの加速度に基づいて、前記タイヤに付与される衝撃の大きさを推定することを特徴とする請求項1記載のタイヤの衝撃影響推定装置。
- 前記耐力指数取得手段は、タイヤの空気圧と予め記憶されたタイヤ特性に基づき影響推定時の耐力指数を取得することを特徴とする請求項1または請求項2記載のタイヤの衝撃影響推定装置。
- 前記耐力指数取得手段は、さらに、タイヤに付加される荷重に基づき前記耐力指数を補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタイヤの衝撃影響推定装置。
- 前記衝撃認識手段は、タイヤの加速度の変化に基づきタイヤに対する衝撃の有無を取得することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタイヤの衝撃影響推定装置。
- 前記影響推定手段は、タイヤ内部でピンチカットが発生したか否かを推定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のタイヤの衝撃影響推定装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2005031316A JP2006220422A (ja) | 2005-02-08 | 2005-02-08 | タイヤの衝撃影響推定装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005031316A JP2006220422A (ja) | 2005-02-08 | 2005-02-08 | タイヤの衝撃影響推定装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2006220422A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008174102A (ja) * | 2007-01-18 | 2008-07-31 | Toyota Motor Corp | 駐車支援装置 |
WO2018030000A1 (ja) * | 2016-08-12 | 2018-02-15 | 株式会社デンソー | タイヤマウントセンサ、ダイアグ履歴記憶装置およびダイアグ報知装置 |
JP2018028530A (ja) * | 2016-08-12 | 2018-02-22 | 株式会社デンソー | タイヤマウントセンサ、ダイアグ履歴記憶装置およびダイアグ報知装置 |
-
2005
- 2005-02-08 JP JP2005031316A patent/JP2006220422A/ja active Pending
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