JP2006219950A - 長尺な木製構造材の製造方法およびそれによって得られる長尺通し材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低品質材による大断面高強度長尺通し柱や長尺梁を、フィンガージョイントにより安価かつ建築工事現場等で生産ができるようにする。
【解決手段】 縦継ぎされる木質構造材2,3のそれぞれの木口に、接合するためのフィンガー2a,3aを形成しておく。そのフィンガーに接着剤を塗布した後に木質構造材相互を突き合わせる。そして、両木質構造材2,3をワークホルダ7に載せて芯を出し、木質構造材2,3の相互を密着させるべく約0.98〜1.96MPaの軸加圧力を及ぼし続けて、フィンガー相互の噛み込みの完全を図ると共に接着強度の発現を促す。仕口部にほぞ穴を設けても部分的な強度低下をきたすことなく、耐力バランスの図られた長尺通し材が得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 縦継ぎされる木質構造材2,3のそれぞれの木口に、接合するためのフィンガー2a,3aを形成しておく。そのフィンガーに接着剤を塗布した後に木質構造材相互を突き合わせる。そして、両木質構造材2,3をワークホルダ7に載せて芯を出し、木質構造材2,3の相互を密着させるべく約0.98〜1.96MPaの軸加圧力を及ぼし続けて、フィンガー相互の噛み込みの完全を図ると共に接着強度の発現を促す。仕口部にほぞ穴を設けても部分的な強度低下をきたすことなく、耐力バランスの図られた長尺通し材が得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は長尺な木製構造材の製造方法およびそれによって得られる長尺通し材に係り、詳しくは、木質構造材の木口に形成されたフィンガージョイントを介して縦継ぎすることにより、長尺な木製構造材を得る方法およびそれによって製造された長尺通し柱等に関するものである。
柱や梁に使われる建築用の長い構造材は、「一本もの」の材料から製材するか、薄板材を積み重ねた集成材が用いられる。「一本もの」は材径が大きくなると、特に檜では国産品が不可能と言われるくらい入手は難しくなってきているのが現状である。集成材では繊維方向を板材の長さ方向に並行にした品質が高くばらつきの少ないラミナが使用され、それを合成樹脂で接着・加圧処理する関係で価格は高くならざるを得ない。ましてや国産材を使用した場合には歩留りが悪く、低廉化は簡単に望めない。
ところで、近年、木材を長手方向に接続して長尺材を得るために、集成材を対象としてそれを縦継ぎする要求が高まってきている。これには、例えば特開平10−140658号公報や特開平10−219849号公報にも記載されているごとく、図17の(a)のように各集成材40,40の木口に相補形状のフィンガー接続部41,41を形成して、(b)のように相互に嵌めあい接着するフィンガージョイント形式の継手構造が適用される。このフィンガージョイントは例えば角材といった単一材相互の接続にも適用することができなくはないが、その需要は集成材に比べて格段に少ない。
角材等は柱や梁として使用される場合、例えば6メートルといったように予め長尺材として提供されることが多く、継ぎ足す必要性が乏しいこと、仮にフィンガージョイント構造等により接続しようとしてもどこの製材所でも接続し得るというものでないこと、設備が整い管理の行き届いた工場での接着工程を経なければ量産化が難しいこと、その後の消費地までの陸上輸送を考慮して、長尺化に制限を加えざるを得ないことなど、メリットの少ないことによる。
一方、集成材は例えば2〜3メートル程度の図17に示す薄い板(ラミナ)40Aを積層して接着される工場大量生産品であるゆえ、設備の整っていることが要求されるフィンガー継手接続処理も製造工程に組み入れやすく、従って一貫した量産体制を敷きやすい。しかし、運搬容易な長さにとどめなければならないことには変わりはなく、例えば木造三階建て用の通し柱としての長さ(例えば10メートル)を与えるといったようなことは想定外となってしまう。
ところで、フィンガージョイントによる集成材の縦継ぎには多くの時間を充てることができないことも、集成材長尺化のネックの一つとなっている。すなわち、十分な養生時間を与えれば接着品質は向上するが、工場生産としては能率が低下し、量産には不向きとなる。養生時間の短縮は接着部の約4.9〜6.9MPa(約50〜70kgf/cm2 )の高面圧化で対処させるにしても、圧縮力解放時に高面圧であったがゆえのスプリングバックが生じることは避けられず、僅かとは言え、フィンガー先端とフィンガーつけ根の間に生じさせることになる空隙はジョイントの信頼性をおおいに損なう。
観点を構築構造に移せば、長尺な構造材を柱として使用する場合、梁の接合のためにほぞ穴が形成されることに注目しなければならない。ほぞ穴は言うまでもなく断面欠損を与えるものであるから、仕口部における耐力を考慮すれば、「一本もの」の柱の場合、断面欠損を無視できる程度に断面寸法の大きい部材を採用するか、別の手だてを講じることが要求される。仕口部は最も大きな応力が作用する箇所であるからである。
その別の手だての一例として、先に示した特開平10−219849号公報に記載の構造(公報第4頁の図4)を挙げることができる。すなわち、交差部を略菱形面にして中心部面積を拡げた十字状接続材を柱と梁の交差部に配置し、下柱の上端を接続材の下部に接続し、上柱の下端を接続材の上部に、左梁の右端を接続材の左部に、右梁の左端を接続材の右部に接続する。この十字状接続材の中心にほぞ穴を形成すれば、柱・梁を含む面に垂直な方向へ延びる別の梁を、断面欠損の影響を少なくして接続することができる。
上記したが、フィンガージョイントによる接合を達成するためには、高面圧作用操作と十分な養生時間を必要とする。ましてや、十字状接続材を上下左右に配置される建造中の柱・梁に接合することは容易なことでない。不十分な接合となれば荷重の集中する部位での信頼性は望め得ず、かと言って、工場においての十字接合は以後の運搬上の支障をきたす。これから分かるように、着想と実現との間には大きな隔たりのあることが分かる。
以上は集成材を対象として述べたが、仕口に断面欠損がある場合は、角材や丸材の場合でもほぞ穴形成による耐力低下や耐力バランスの崩れは否定しがたい。ちなみに、製材所から持ち込まれるこれらの木材は集成材より安価であることが一般的であるが、設備の整いにくい建築現場もしくはその近傍でのフィンガージョイント処理において信頼性を高く確保できる加圧操作を実現することは容易でない。工事現場での縦継ぎ作業が困難であると運搬容易な中尺材の使途まで狭まり、ましてや低品質材や間伐材の建築資材としての消費の拡大も図りにくくなる。
特開平10−140658号公報
特開平10−219849号公報
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、フィンガージョイントによる縦継ぎを高い軸力やそれを可能にする高級な設備の導入なくしても長尺材の建築工事現場等における製造を実現し、長尺物の運搬を回避するだけでなく製造のための時間的制約を少なくし、低品質材による大断面高強度長尺通し柱や長尺梁の生産を普及させることができるようにすること、長尺材の一部にほぞ穴を持った仕口を形成しても部分的強度の低下をきたすことなく、耐力バランスの図られた長尺材となるようにする木製構造材の製造方法およびそれによって得られる長尺通し材を提供することである。
本発明は、フィンガージョイント形式で縦継ぎされた長尺木質構造材の製造方法に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、縦継ぎされる木質構造材2,3のそれぞれの木口に、接合するためのフィンガー2a,3aを形成しておく。そのフィンガーに接着剤を塗布した後に木質構造材相互を突き合わせて芯出しする。そして、両木質構造材2,3をワークパッド9で押さえて芯出し状態を保ち、木質構造材2,3の相互を密着させるべく軸方向に約0.98〜1.96MPa(=約10〜20kgf/cm2 )の加圧力を及ぼし続けて、フィンガー相互の噛み込みの完全を図ると共に所定の接着強度の発現を促すようにしたことである。
図15に示すように、木質構造材2A,2Dはともに断面同一寸法であるが一方が他方より高強度材質であり、その高強度材2Dには梁を接合するためのほぞ穴4を穿設しておく。
図2にあるように、木質構造材2,3の一方は他方と同一もしくは略同質とするが断面寸法が大きく与えられ、その断面寸法が大きい木質構造材3には、梁を接合するためのほぞ穴4が穿設される。なお、図9の(a)に示すように、断面寸法が大きく与えられている木質構造材3に、他方の木質構造材2と同一形状同一寸法の木口を持った接合用端部31を形成しておいてもよい。以上のいずれの方法によっても得られる長尺物は、柱や梁などの通し材として使用することができる。
木質構造材の接着剤が塗布されたフィンガージョイント部を突き合わせて芯を出し、これに約0.98〜1.96MPaの軸方向加圧力を及ぼすだけで密着させ続ければ長尺材を得ることができる。約4.9〜6.9MPaといった高軸力を作用させるための設備を整えた工場等は必要でなく、すなわち建築現場近くで製材品から縦継ぎ材を簡単に作ることができる。
現場近くであれば路上搬送することはほとんどないから、その場の工事に必要な長さまで次々と縦継ぎして長尺材が得られる。また、製材品さえ搬入しておけば、長尺材の使用時期や接着のための十分な養生時間を見計らって、縦継ぎ作業に着手しておくことができる。短時間処理とならざるを得ない量産工場での縦継ぎ上の問題、すなわち養生不足や発現強度不足の懸念から解放される。
一方の木質構造材の断面寸法を他の木質構造材と同じとするが高強度質としておけば、それにほぞ穴を形成しても他の木質構造材と同等もしくはそれに近似した強度を持たせることができ、耐力の均等化が図られた長尺通し材とすることができる。
木質構造材の一方を他方と同一もしくは略同質とするが断面寸法を大きく与えるなら、ほぞ穴を形成しても他の木質構造材と同等もしくはそれに近似した強度の長尺通し柱等を得ることができる。
断面寸法が大きく与えられる木質構造材に、他方の木質構造材と同一形状同一寸法の木口を持った接合用端部を形成しておけば、接合後の周縁部不使用フィンガーの切除が不要となる。フィンガージョイント部を含めた仕上げ処理の軽減が図られる。
以上の方法によって製造された長尺通し柱等は、運搬の必要のない建築工事現場もしくはその近傍において縦継ぎ処理して製造することができる。任意の長さの構造材が高価な設備やツールを使用することなく簡便に現場提供可能となるが、その際に十分な養生時間を与えるにもさしたる障害はなく、安定した高品質な接合材が得られる。ほぞ穴を設けるにしても、断面欠損の程度を勘案して適宜寸法や材質の縦継ぎ材を選定すればよいから、材径が大きい高価な木材に頼らなくてもよいようになる。低品質材や間伐材の消費が促進されれば、地場の木材消費も積極的に進められる。
以下に、本発明に係る長尺な木製構造材の製造方法およびそれによって得られる長尺通し材を、その実施の形態を表した図面をもとにして詳細に説明する。図2は、フィンガージョイント形式で縦継ぎされた木質長尺通し柱1の一例であり、横置き状態で表されている。これには、縦継ぎされる同一材質、同一断面寸法の角形柱材2A,2Bの間に断面寸法が大きい角形繋ぎ材3が介装され、ほぞ穴4が穿設されることによって、図3の(a)のように梁5を接合することができるようになっている。
この長尺通し柱1は、図4の(a)に示すように、木質繋ぎ材3の両端面および角形柱材2A,2Bのそれぞれの対向端面にフィンガー3a,3b,2a,2bが形成され、(b)のように密着させて接合されたものであり、その後に木質繋ぎ材3の周囲部分の噛み合わせ残りのフィンガー3h(図5の(a)または(b)中の影を施した箇所)を落として整形したものである。
この長尺通し柱1の角形柱材2(図2を参照)は例えば12センチメートル角、繋ぎ材3は18センチメートル角で、その全ては例えば檜材である。このような長尺通し柱は以下のようにして製作されるが、その説明においては、上記した角形柱材のうちの一方の柱材2Aと繋ぎ材3をともに木質構造材と称し、縦継ぎされる二本の部材を対象にして述べる。もう一つの角形柱材2Bと繋ぎ材3との縦継ぎは全く同じ要領であるため、その説明を省く。
図1に示す装置により長尺木質構造材2,3をフィンガージョイント形式により縦継ぎするにあたり、まずそれぞれの木口にフィンガー2a,3aを形成しておく(図4の(a)を参照)。フィンガージョイント部6は適宜のピッチや位相が定められた切削刃(図示せず)によって各木口の全面に形成される。そのための専用具は今日小型のものもあり、建築現場へ持ち込んだり屋外で稼働させることに特に支障はない。なお、フィンガーは一方向へのみ延びる突起であり、図4の例では奥行き方向に与えられている。
次に、フィンガーのスカーフ面にエポキシ樹脂など常温で硬化する樹脂の接着剤を筆塗りするなどし、その後に図4の(b)のように木質構造材2,3の相互を突き合わせる。この状態を保持して芯出しすべく、図1に示すアングル状の金属製ワークホルダ7に載せる。その際、木質構造材2,3がホルダの内隅部に当たらないように、木板などの緩衝材8a,8bがかまされる(図1では木板8bがホルダ7の蔭に隠れて僅かに見えるにすぎない)。もちろん、木質構造材2,3の断面形状に違いがあるので、緩衝材8aを厚みのある芯出し用スペーサとしても機能させ、芯ずれしないように配慮される。
次に、フィンガージョイント部6を含んで両木質構造材2,3に跨がるようにワークパッド9で押さえ、芯出し状態にある突き合わせ姿を保持する。パッド9も金属製のアングル品であり、この場合も木質構造材2,3がワークパッド9の内隅と干渉しないように木板10a,10bが緩衝材として使用される。前者は木質構造材断面寸法の違いを吸収するために厚くなっており、芯出し用スペーサとしても機能することは、ワークホルダ7の場合と同じである。このパッド9は次に述べる軸力を作用させるにあたり、対向する木質構造材2,3の姿勢が崩れないようにするためのもので、パッド9とホルダ7とは、それぞれの背後に固定された挟持プレート11a,11b,12a,12b,13a,13bを介して挟持力が及ぼされる。
最後に、二つの木質構造材2,3に対して、これを密着させるべく約0.98〜1.96MPa(=約10〜20kgf/cm2 )の軸方向加圧力σが掛けられる。これによってフィンガージョイント部6における接着作用を促進するが、その加圧時間を大きく確保できる時点を見計らって処理を始めておけば、すなわち工事の進行を追いつつ十分な養生時間をあてがうことができるように配慮する。
このようにしておけば、量産工場のような高面圧(約4.9〜6.9MPa)を作用させる必要はなくなり、上記した器具をもってして長尺材を製作することができるようになる。十分な加圧時間(少なくとも4〜5時間)は、フィンガー相互の噛み込みの完全を促し、所望する接着強度を発現させる。加圧力は高くないから力を解放したときのスプリングバックもほとんど起こることがない。
この軸力作用操作のためのグリッピング機構は実質的に先に述べたホルダ・パッド機構と同じものでよい。この例においては、各グリッパユニット14,15の姿勢がホルダ・パッド機構と90度違えられ、挟持プレート11a,11b,12a,12b,13a,13bと干渉することなく装着できるように配慮される。各グリッパ14a,14b,15a,15bには木質構造材2,3を把持するための力を掛ける挟圧プレート17a,17b,18a,18bが設けられることはホルダ・パッド機構と同じであるが、このプレートとグリッパとに加圧プレート19a,19b,20a,20bが溶接されるなどしている点が異なる。
この張り出して設けられた加圧プレートはフィンガージョイント部6を挟んで長手方向に隔たって配置されることになり、PC鋼棒16を左右で各一本を渡してナット21で締めあげるか、PC鋼棒に代わる図示しないケーブルに張力を掛ければ、フィンガージョイント部6に圧接力を作用させることができる。
ところで、上記の軸加圧力は約0.98MPaより小さいと、フィンガージョイント相互の噛み込みが不十分となってフィンガー先端に空隙が生じ、耐力の低下をきたすことがある。約1.96MPaより大きいと、加圧器具に過大な堅牢さや精密さが要求され、また人力操作も不可能となる。本製造装置では約0.98〜1.96MPaの軸加圧力を発生させればよいことが確認されたので、量産工場における加圧操作ほどに高圧な油圧ジャッキやアクチュエータ等は必要とならず、もちろん、グリッピングのための挟圧力をさして大きくしておく必要もないから、熟練技能者や強腕者に頼らなければ作業が進まないということはない。
以上の方法によって製造された長尺通し柱は、運搬の必要のない建築工事現場もしくはその近傍において縦継ぎ処理して製造されることになる。任意の長さの構造材が高価な設備やツールを使用することなく簡便な製作過程をたどるだけで可能となるのみならず、十分な養生時間も確保され、接着品質は極めて安定しまた高いものとなる。ほぞ穴を設けるにしても、断面欠損の程度を勘案して縦継ぎ材の寸法を選定すればよいから、材径が大きい高価な木材の導入は長尺物でなくてもよいことになる。
工事現場近くであれば一般道を搬送する必要もないから、その場の工事に必要となる長さまで次々と縦継ぎして長尺材を得ることができる。すなわち、所望長さの作業ヤードさえ確保できていれば、長尺材の使用時期や接着のための十分な養生時間を見計らっての縦継ぎ作業を進めることができる。必要ならビニルシートを被せるなどするだけで露天での養生を一時保管を兼ねてすることもでき、短時間処理とならざるを得ない量産工場での縦継ぎ上の問題、すなわち養生不足や発現強度不足といったことは解消される。
今述べた例では、細い木質構造材2を太い構造材3と一体化させることになるから、図3の(a)のごとき接合を念頭においたほぞ穴4を形成しても、全長にわたって木質構造材2と同等もしくはそれに近似した強度の長尺通し柱1を得ることができる。仕口部分における断面欠損の影響を無くすか少なくしたいという要望は本発明によって解決されることになるが、仕口部での耐力低下を考慮しておく必要がなくなるから、仕口部以外の部分は従前よりも小さな断面積の角材を使用することさえ可能となる。
以下に、建築工事現場でなされる操作を、一部繰り返しとなるが説明する。これにより高品質材を縦継ぎしたい場合のみならず低品質材や間伐材も対象とすることができ、後者の消費が促進されることになれば地場の木材消費が捗る。まず、フィンガージョイントを木質構造材の端部に形成すると、そのフィンガー面すなわちスカーフ面を必要に応じてメチルアルコール(メタノールCH3 OH)で拭き、表層を脱脂する。これは筆塗りによればよく、表面の油脂分や油性ごみを溶かして除去することができれば十分である。ちなみに、エチルアルコールで代替してもよく、接着性を確保できる程度の脱脂がなされればよい。
脱脂操作が済めば接着剤を塗布し、フィンガーを図4の(b)のように対面させる。芯を出すため水平な支持台22(図1を参照)に置かれたワークホルダ7に載せ、ワークパッド9で押さえる。この木質構造材の保持操作に先立ち、これらの金具と接触するエリアの大部分をポリエチレンフィルム23で覆う(図1を参照)。このようにしておけば、木質構造材2,3に押さえ疵がつかないようにしておくことができる。
ポリエチレンフィルムは酸やアルカリ、溶剤に耐えることもあって、接着剤が付着しても変質するものでない。従って、フィンガージョイント部6からにじみ出た接着剤がホルダ7,パッド9に無闇に付着することはなく、それぞれの押さえ面の平滑性が阻害されないようにしておくことができる。接着剤に対する遊離性、木面や金属面からの剥離性もよく、除去操作に要する手間が少なく、廃棄処理も容易である。ちなみに、ポリエチレンは焼却してもダイオキシンの発生がないことはよく知られている。
緩衝材8a,8bで芯出し操作しながらワークホルダ7に載せ、緩衝材10a,10bを載せてワークパッド9を被せ、ねじ棒24にナット25を掛けて止め、ホルダ7とパッド9とで木質構造材2,3を挟持する。その際、木質構造材2,3は全ての木面が傾斜するように設置される。これは、フィンガージョイント部6のいかなる面から接着剤がにじみ出そうとも、それが伝い落ちやすようにしておくためである。なお、ナット25を回すにあたっては適度な手応えが感じられる程度の締め方でよい。
長い木質構造材に軸力を掛けるために、図1の例ではグリッパユニット14,15が使用されることはすでに述べた。対をなすグリッパの一方はスペーサ26aを介して木質構造材2の胴部を握り、他方の対は緩衝材26bを介して木質構造材3を握る。その挟圧力はホルダ・パッド機構よりは大きく、木質構造材を強く締めつける。
グリッパのそれぞれの加圧プレート19a,19b,20a,20bに、PC鋼棒16が渡される。ナット21を掛けるなどして、約0.98〜1.96MPa(=約10〜20kgf/cm2 )の軸方向加圧力を及ぼし、二つの木質構造材を密着させて噛み込みを助長し、フィンガージョイント部6における接着作用を促す。木口面積の小さい方の木質構造材2の断面積を12×12cmとすれば、例えば144cm2 ×15kgf/cm2 =2,160kgとなり、約2トンすなわちPC鋼棒一本当たり1トン前後の力を作用させる程度でよいことが分かる。これは、レンチ等を使って作業者が手作業で処理できる範囲のものである。ちなみに、油圧ジャッキ等による場合の50kgf/cm2 は一本当たり約4トンとなり、到底人力のレンチ操作で及ぶ大きさでない。
フィンガージョイント部6からは、余剰の接着剤がにじみ出る。はみ出した接着剤は表面を伝うようにして垂れ、フィンガージョイント部6の直下に位置するワークホルダ7に設けた図示しない抜き孔を通して、支持台22内のピットへでも排出されるようにしておけばよい。十分な養生時間が経過した頃を見計らって加圧器具を外す。木質構造材2,3の間には断面サイズの違いによる不使用フィンガーが残る。これは図5に影を施した部分のフィンガー3hに相当する部分であり、全周にわたり丸鋸等によって切除される。その後は木質構造材2,3の全面をプレーナ掛けするなどして、表面が平滑な長尺通し材1(図2を参照)となるように仕上げられる。
上記した木質構造材3は繋ぎ材であるが、それは木質構造材2とは同一もしくは略同質であるとはいえ断面寸法が大きく与えられているものであり、その断面寸法が大きいゆえに梁5(図3を参照)を接合するためのほぞ穴4が穿設される。そのほぞ穴4は木質構造材2との接合後に穿ってもよいし、接合前に図4の(a)のように予め穿孔しておいてもよい。いずれにしても、梁材などのほぞを嵌着させる準備がなされる。ちなみに、梁として図6に示すように、何本かの長尺材5A,5B,5Cを重ねてラグスクリュー27により固定したものを使用すれば、梁にも低品質材を使用することができる。
図7は、木質構造材2,3を挟持するワークホルダ7は一本であるが、ワークパッドが分割されている例である。木質構造材2,3を同時に押さえる場合に比べれば、第一パッド9Aで断面寸法の大きい木質構造材3を挟持した後に第二パッド9Bで木質構造材2を押さえることになる。それぞれ独立しての挟み込みは、操作上の負担軽減を図る利点がある。
ところで、突き合わされている木質構造材2,3に軸力を及ぼす方策として、図8に示すような軸力作用機構とすることもできる。それは、上記したグリッパユニット14,15に代えてプレスプレート28,29を用いた形態である。すなわち、各木質構造材2,3の自由端面にプレスプレート28,29をあてがい、このプレスプレート間にPC鋼棒16もしくはケーブルを掛け渡し、両木質構造材2,3に軸圧縮力を及ぼしてフィンガージョイント部6におけるフィンガーの噛み込みを助長させるようにしておく。この場合、その加圧面となる木口に滑らか面を持ったクラフト紙30を張りつけておけば、その滑りの良さが加圧の一様化を促す。
ちなみに、板材を重ねてフィンガージョイントを使用している例が集成材において多数見られるところであるが(図17を参照)、角材や丸材においては従来の技術の項に記載した理由でほとんどが実用化されるに到っていない。本発明の完成は、従来から目の向けられなかったところに敢えて挑んだ所産であるが、軽負荷簡易加圧装置を建築工事現場に導入することを企図した点で、画期的であると言える。なぜなら、最近建造が増えてきた木造三階建て用の長尺通し柱等に対して、低品質材でも対応し得るようにしたという意義は大きく、安価な住宅の供給におおいに寄与するからである。
図9は、木質繋ぎ材としての木質構造材3の端部に、角形柱材としての木質構造材2と同一形状同一寸法の木口を持せた接合用端部31が形成された例である。このようにしておくと、不使用フィンガーの切除は必要でなくなり、仕上げ処理が軽減される。図9の(a)は接合用端部31Aの断面形状が長さ方向に一定となっている例であり、(b)は接合用端部31Bの基部側が錐状をなした例である。(c)は木質構造材2A,2Cの断面寸法が異なる例を表す。なお、木質繋ぎ材3に木質構造材2を超える上質材、高強度材を使用しても差し支えないことは述べるまでもない。
図10は、角形柱材に代えて円柱材2M,3Mを使用した例である。ほぞ穴4を図示しないが放射状に幾つも配置するなら、例えば5本や6本の梁を接合するといったようなことも可能となる。(a)はフィンガージョイント部を図5のような切除処理した後のものであり、(b)は図9の(a)に、(c)は図9の(b)に対応する例である。
図11の(a)は円柱材2Pと角形繋ぎ材3Pとの接合態様を表し、断面形状が異なる例となっている。図12の(a)に示すように円柱形であってもフィンガー2pは二次元的に形成され、(b)のように角形繋ぎ材3Pのフィンガー3pと合致可能としていることは言うまでもない。このような長尺材は図13または図14のようなグリッパユニット32A,32Bを備えた加圧装置を使用すればよい。
図13では円柱材2Pを掴むためスペーサ兼緩衝材33の内面が円弧となっており、図14ではグリップパッド32a,32bもスペーサ34もともに同心の円弧形状とされている。図11の(b)には、角形の柱材2Qに円柱形繋ぎ材3Qを接合した例が示されている。余剰フィンガーは切除された後の状態で描かれているが、フィンガージョイント部は図12の(b)と本質的に変わらない。
図15の(a)は、フィンガージョイント形式で縦継ぎされた木質長尺通し柱1Aである。これは縦継ぎされるのが(b)のように木質構造材2A,2Dであって、断面寸法が同じであるものの異なる材質の接合体としたものである。これは上述の例とは異なり、断面積や外形において変化を持たない真直な「一本もの」としての長尺通し材となるが、例えば、松に檜が、杉に檜が接合されるという従前では考えられもしない組み合わせを実現する。加圧装置においては、ホルダもパッドでも図16のように同一厚みの緩衝材35が使用されることになる。
このようにしておけば階下の柱を檜、階上の柱は松といったように、柱に掛かる負担に応じて耐力の異なる資材をあてがうことができる。ちなみに、図15の(b)に示す木質構造材2Dを仕口部としてのみ機能させることにして、その両側を木質構造材2とするなら、仕口部だけが耐力の大きい図3の(b)に示した長尺通し柱36となる。この場合、柱の大部分を占めることになる木質構造材2に低品質材を適用することにすれば、その消費はおおいに促進される。
ところで、同種同断面寸法の木質構造材をフィンガージョイントする場合、ジョイント部は全強接合を実現するほどに強固とすることができる。その場合、ほぞ穴の位置選定にあたって神経質になる必要はなく、例えば図3の(c)の長尺通し柱37のように、フィンガージョイント部6にほぞ穴4がかかることになっても差し支えない。ちなみに、同一断面寸法の構造材を図16の装置によって縦継ぎすれば、図6に表された重ね梁の各長尺材5A,5B,5Cを供給することもできる。
以上の説明から分かるように、本発明によれば、接着剤が塗布されたフィンガージョイント部を持つ木質構造材を突き合わせ状態で芯合わせし、これに約0.98〜1.96MPaの軸方向加圧力を及ぼし密着させ続ければ、設備の整った工場でなくても長尺材を得ることができる。約4.9〜6.9MPaなる高軸圧力を作用させることに比べれば、建築現場等で製材品から縦継ぎ材を簡単に作ることができるという実用上極めて高い利便性が発揮される。なお、加圧装置として木質構造材の端面に油圧ジャッキをあてがうようにしてもよく、その使用を敢えて排斥しようとする意図のものではない。もちろん、加える軸力は上記したとおりの大きさとして、量産工場におけるような大きな加圧力を作用させる必要はない。
1,1A…木質長尺通し柱(長尺通し材)、2,2A,2B,2C,2D…角形柱材(木質構造材)、2M…円柱材、2P…柱材(丸形柱材)、2Q…柱材(角形柱材)、2a,2b,2p…フィンガー、3…木質繋ぎ材(木質構造材)、3M…円柱材、3P…繋ぎ材(角形繋ぎ材)、3Q…繋ぎ材(円柱形繋ぎ材)、3a,3b,3p…フィンガー、4…ほぞ穴、5…梁、5A,5B,5C…長尺材、6…フィンガージョイント部、9…ワークパッド、9A…第一パッド、9B…第二パッド、31,31A,31B…接合用端部、36,37…長尺通し柱、σ…軸方向の加圧力。
Claims (5)
- フィンガージョイント形式で縦継ぎされた長尺木質構造材の製造方法において、
縦継ぎされる木質構造材のそれぞれの木口に、接合するためのフィンガーを形成しておき、
該フィンガーに接着剤を塗布した後に木質構造材相互を突き合わせて芯出しし、
両木質構造材をワークパッドで押さえて芯出し状態を保ち、
木質構造材相互を密着させるべく軸方向に約0.98〜1.96MPaの加圧力を及ぼし続けて、フィンガー相互の噛み込みの完全を図ると共に接着強度の発現を促すようにしたことを特徴とする長尺な木製構造材の製造方法。 - 前記木質構造材はともに断面同一寸法であるが一方が他方より高強度材質であり、その高強度材には、梁を接合するためのほぞ穴が穿設されることを特徴とする請求項1に記載された長尺な木製構造材の製造方法。
- 前記木質構造材の一方は他方の木質構造材と同一もしくは略同質とするが断面寸法が大きく与えられ、その断面寸法が大きい木質構造材には、梁を接合するためのほぞ穴が穿設されることを特徴とする請求項1に記載された長尺な木製構造材の製造方法。
- 断面寸法が大きく与えられている前記木質構造材には、他方の木質構造材と同一形状同一寸法の木口を持った接合用端部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載された長尺な木製構造材の製造方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された製造方法により製造されたことを特徴とする長尺通し材。
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