JP2006218359A - 重金属除去剤および重金属の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、As,CdまたはPb等の有害重金属に汚染された土壌等からこれら有害重金属を効率よく吸着し、除去することができる重金属除去剤を提供することを課題とする。また、これら有害重金属を低コストで且つ簡便に、効率よく除去することができる方法を提供することも目的としている。
【解決手段】 本発明の重金属除去剤は、As,CdおよびPb等の有害重金属を除去するための除去剤であって、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の重金属除去剤は、As,CdおよびPb等の有害重金属を除去するための除去剤であって、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする。
Description
本発明は、重金属に汚染された物質から当該重金属を除去するための除去剤、および当該物質から重金属を除去するための方法に関するものである。
As(砒素),Cd(カドミウム)およびPb(鉛)といった重金属は、鉱山や工場からの排水等に含まれることがあり、土壌や地下水を汚染する可能性がある。さらには、これら重金属が作物等を介して人体に取り込まれ、様々な障害を起こし得る。
例えば、Asは合金や半導体、防腐剤などに利用されるが、その高い毒性から、環境基準値が0.01 mg/L以下と定められている。Cdはめっきや塗料等に用いられるが、発癌性を示し、特に富山県神通川流域におけるイタイイタイ病の原因となったことは有名である。また、Pbも古くから利用されてきた一方で、その毒性も認識されていた。CdとPbの環境基準値も、Asと同じく0.01 mg/L以下である。
これら重金属は、その高い利便性から様々な用途に用いられてきたが、環境に与える悪影響が認識されるまでは、特に制限なく使用されていた。その結果、厳しい環境基準値が定められている今日でさえも、土壌や地下水は汚染されたまま放置されている場合がある。そこで、汚染土壌等を効率よく浄化できる技術が求められており、開発が進んでいる。
例えば、本発明者らは、環境汚染物質であるSe(セレン)を除去する技術を開発し、特許出願している(特許文献1)。しかし当該文献には、あくまでSeを除去するための技術しか開示されておらず、Asをはじめとする他の有害重金属についての記載はない。
特開2004−89924号公報
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、As,CdまたはPbに汚染された土壌等からこれら有害重金属を効率よく吸着し、除去することができる重金属除去剤を提供することにある。また、本発明では、これら有害重金属を低コストで且つ簡便に、効率よく除去することができる方法を提供することも目的としている。
本発明者らは、上記特許文献1で開示した除去剤につきさらに検討を加えた結果、当該除去剤が、Se以外にも、As,CdやPbといった重金属に対しても吸着能を示すことを見出して、本発明を完成した。
即ち、本発明の重金属除去剤は、重金属を除去するための除去剤であって、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする。但し、本発明における「重金属」の定義からは、Seを除く場合がある。前述した通り、本発明者らは、非晶質水酸化鉄(III)によりSeを除去する技術について、既に特許出願しているからである。
上記重金属除去剤としては、その比表面積が250m2/g以上であるものが好適である。重金属の吸着能がより一層優れているからである。
上記重金属としては、As,CdおよびPbからなる群より選択される1以上を挙げることができる。これら重金属は、本発明により効率よく除去できることが後述する実施例で実証されている。
また、本発明に係る重金属の除去方法は、重金属を除去するための方法であって、上記重金属除去剤を当該物質と接触させることを特徴とする。
上記方法の処理対象である汚染物質としては、土壌を挙げることができる。有害重金属に汚染された土壌を浄化する技術が切望されており、また、後述する実施例の通り、本発明方法によって、汚染土壌の浄化を簡便に行なえることが実証されているからである。
上記方法においては、AsおよびCdの少なくとも一方による汚染物質を処理する場合、汚染物質をpH7〜8の水中で上記重金属除去剤と混合することが好ましい。同様に、Pbに汚染された物質を処理する場合には、汚染物質をpH4〜6.5の水中で上記重金属除去剤と混合することが好ましい。除去すべき重金属の種類に応じて、適切なpHの水中で汚染物質を処理することによって、より高度で効率的な処理が可能になるからである。
本発明の重金属除去剤は、安価で簡便に製造することができる上に、As,CdおよびPb等に対する吸着能が非常に優れている。また、本発明の重金属除去剤を用いた重金属の除去方法は、低コストで簡便、安全かつ効率的に重金属を除去できるものである。従って、本発明は、これら有害重金属に汚染された土壌を浄化できる技術として、産業上有用である。
本発明の重金属除去剤は、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする。当該重金属除去剤は、As,CdおよびPb(以下、「As等」とする場合がある)といった有害重金属に対する吸着能に優れ、これら重金属を効率よく除去することができる。
本発明の「非晶質水酸化鉄(III)」は、“amorphous iron(hydr)oxide", “amorphous ferric (III) iron(hydr)oxide", “amorphous ferric hydroxide oxide"等と呼ばれている非晶質の鉄(III)化合物であり、Fe2O3・nH2Oの組成を有する含水酸化鉄の一種である。より具体的には、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3),オキシ水酸化鉄(III)(FeO(OH))および水素化酸化鉄(III)(FeHO2)が混在した無定形のものである。
この「非晶質水酸化鉄(III)」は天然にも存在する化合物であり、アルミニウムや有害な重金属を含んでいないので、安全に使用することができる。
本発明において、「非晶質水酸化鉄(III)を含有する」とは、非晶質水酸化鉄(III)を主要な或いは必須の構成成分として含めば、他の吸着剤等を併用したり、非晶質水酸化鉄(III)が担体に担持されていてもよいとの意である。但し、もちろん、実質的に単独で非晶質水酸化鉄(III)を用いてもよい。
本発明に係る非晶質水酸化鉄(III)の処理対象である有害重金属は、As,Cd,Pbの他、Cu,Zn,Crなどを挙げることができる。
本発明の非晶質水酸化鉄(III)の比表面積としては、250m2/g以上が好ましい。比表面積が大きいほど吸着能が向上し、As,CdおよびPbを効率よく除去できるからである。斯かる観点からは、当該比表面積は、270m2/g以上がより好ましい。
「非晶質水酸化鉄(III)」の比表面積は、一般的に、他の(水)酸化鉄(III)類(Fe2O3・nH2O)である針鉄鉱や赤鉄鉱および鱗鉄鉱よりも大きいといえる。しかし、硝酸鉄(III)水溶液を中和することにより得られる非晶質水酸化鉄(III)であれば、その比表面積は十分に高い。具体的には、硝酸鉄(III)水溶液に水酸化ナトリウム等を添加し、pHを約7に調節することにより沈殿した非晶質水酸化鉄(III)を濾別したものは、高い比表面積を有することが、本発明者らにより確認されている。
本発明に係る重金属の除去方法は、重金属に汚染された物質を、上記重金属除去剤と接触させることによって、重金属を除去剤に吸着させて不溶化するものである。
本発明の処理対象となる物質は、有害重金属に汚染されたものであれば特に制限されず、固体,液体,気体のいずれの状態にあるものであってもよい。斯かる汚染物質としては、例えば、As,CdおよびPbからなる群より選択される1以上の重金属により汚染された土壌,汚染された地下水,鉱山や工場からの排水,工場から排出される煤煙等を挙げることができる。
As,CdおよびPbといった有害重金属は、環境中で金属として存在する場合もあり得るが、ほとんどは塩やイオンの状態で存在する。本発明方法では、これら重金属をイオン状態で吸着する性能に優れているので、処理すべき対象に応じた処理態様を取る必要がある。例えば、煤煙を処理する場合には、本発明除去剤をフィルターに担持したものに煤煙を通すことも考えられる。しかし、一般的には、汚染物質が固体または気体である場合には、重金属をいったん水で抽出した上で、本発明除去剤により吸着することが好ましい。水に抽出されない重金属は既に不溶化されているものであり、環境へ溶出するおそれは少ないからである。
具体的な処理方法としては、例えば汚染土壌を処理する場合には、水に汚染土壌と本発明除去剤を加え攪拌することによって、いったん水中へ溶出した重金属を、本発明除去剤に吸着して不溶化させる。処理対象が液体である場合は、本発明除去剤をそのまま添加した上で攪拌してもよい。
処理中の温度は、特に制限されるものではないが、例えば5〜50℃程度でよい。5℃以上とすることで、重金属の水中への溶出効率や、本発明除去剤への吸着効率を高くできるからである。また、50℃以下にすることで、処理対象物質の変質を抑制し、再利用を可能にできる。
媒体として水を用いて処理する場合や、液体である汚染物質を処理する場合におけるpHの適値は、除去すべき重金属の種類により異なる。例えば、AsおよびCdの少なくとも一方に汚染されている物質を処理する場合には、pH7〜8の水中で本発明除去剤と汚染物質とを混合することが好ましい。当該範囲内の条件では、土壌の植物生育能等は失活することはなく、また、後述する実施例により、As(III),As(V)およびCdは効率よく吸着されることが実証されているからである。
また、Pbに汚染されている物質を処理する場合には、pH4〜6.5(より好ましくはpH5〜6)の水中で本発明除去剤と汚染物質とを混合することが好ましい。pH4以上であれば、土壌の植物生育能等は失活することはなく、また、pH6.6以下においてPb(OH)2からPb2+が溶出することので、この溶出Pb2+を本発明除去剤により効率よく吸着し、不溶化することができるからである。その上、当該範囲内における本発明除去剤および本発明方法の優れた効果は、後述する実施例で実証されているからである。
本発明方法における本発明除去剤の使用量、例えば、処理すべき汚染物質に対する本発明除去剤の割合等は、特に制限されないが、具体的な使用量は、例えば予備実験により決定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 非晶質水酸化鉄(III)の製造
硝酸鉄(III)9水和物(Fe(NO3)3・9H2O)の0.1 mol/L水溶液(5000 mL)を室温で攪拌しつつ、pHが7に達するまで0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿を生成させた。続いて、室温でそのまま3時間静置した。当該混合液のpHが低下していたことから0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、再度pHを7に調整して、さらに室温で4時間静置した。生成した沈殿(非晶質水酸化鉄(III))を透析チューブに詰め、電気伝導度が純水の電気伝導度に等しくなるまで毎日2度ずつ純水を取り替えながら透析した後、凍結乾燥することにより精製した。
硝酸鉄(III)9水和物(Fe(NO3)3・9H2O)の0.1 mol/L水溶液(5000 mL)を室温で攪拌しつつ、pHが7に達するまで0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿を生成させた。続いて、室温でそのまま3時間静置した。当該混合液のpHが低下していたことから0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、再度pHを7に調整して、さらに室温で4時間静置した。生成した沈殿(非晶質水酸化鉄(III))を透析チューブに詰め、電気伝導度が純水の電気伝導度に等しくなるまで毎日2度ずつ純水を取り替えながら透析した後、凍結乾燥することにより精製した。
実施例2 非晶質水酸化鉄(III)によるAs,Pb,Cdの吸着実験
ヒ酸二水素カリウムを脱イオン水に溶解してヒ素水溶液を得た。また、原子吸光用鉛標準液とカドミウム標準液(島津製作所製)を希釈することによって、PbおよびCdの水溶液を調製した。各水溶液に0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液または0.1 N塩酸を添加することによって、吸着に適しているpHであるpH5.5〜6.0に調製した。各水溶液へ上記実施例1で製造した非晶質水酸化鉄(III)を表1に示す濃度で懸濁し、室温で24時間攪拌した。その後、各水溶液のpHを測定したところ、表1に示す通りであった。
ヒ酸二水素カリウムを脱イオン水に溶解してヒ素水溶液を得た。また、原子吸光用鉛標準液とカドミウム標準液(島津製作所製)を希釈することによって、PbおよびCdの水溶液を調製した。各水溶液に0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液または0.1 N塩酸を添加することによって、吸着に適しているpHであるpH5.5〜6.0に調製した。各水溶液へ上記実施例1で製造した非晶質水酸化鉄(III)を表1に示す濃度で懸濁し、室温で24時間攪拌した。その後、各水溶液のpHを測定したところ、表1に示す通りであった。
また、上記処理後、非晶質水酸化鉄(III)を濾別し、ろ液のAs,Pb,Cd濃度を高周波誘導プラズマ発光分光光度法により測定し、非晶質水酸化鉄(III)1 g当たりの各元素吸着量を算出した。結果を図1に示す。
表1の通り、処理後における各溶液のpHは、吸着に適するpH範囲(pH5.5〜6.0)に含まれているか、この範囲に近いものであった。従って、非晶質水酸化鉄(III)の各元素に対する吸着特性評価において、pH変化の影響は少なく、元素吸着量の測定結果は非晶質水酸化鉄(III)の元素吸着特性をそのまま表すと考えられる。
また、図1の結果によれば、本発明の非晶質水酸化鉄(III)はPbに対して特に高い吸着特性を示し、用量依存的に吸着能は上昇している。本実施例で用いた最大溶液含有率である500 mg/Lより高い濃度で用いても、より一層の吸着効果を示すであろうと考えられる。
Asに対しても、溶液含有率100 mg/LまではPbと同様に高い吸着効果を示した。但し、溶液含有率200 mg/L以上では次第に吸着効果が弱まっていき、溶液含有率400 mg/Lと500 mg/Lの吸着量がほぼ同じことから、溶液含有率500 mg/Lで限界吸着量に達したと考えられる。従って、本発明の非晶質水酸化鉄(III)をAsの吸着に用いる場合には、過剰に用いても効果は飽和することを考慮して使用量を決定すべきである。
Cdに対しては、Pbの場合と同様に用量依存的に吸着量は高くなっているが、その吸着能はPbに対するものほどではない。従って、実際にCdの吸着に使用する場合には、対象となる汚染物質のCd濃度にもよるが、非晶質水酸化鉄(III)を所定量使用する必要がある。
実施例3 汚染土壌の調製
As,Pb,Cd汚染土壌を調製するための材料として、高知大学農学部付属フィールドサイエンスセンターの畑土壌を採取した。その一般的理化学特性を表2に示す。
As,Pb,Cd汚染土壌を調製するための材料として、高知大学農学部付属フィールドサイエンスセンターの畑土壌を採取した。その一般的理化学特性を表2に示す。
上記土壌へ、表3に示す各濃度となる様にヒ酸に水素カリウム、亜ヒ酸ナトリウム,塩化鉛,塩化カドミウムを添加してよく混合し、室温で24時間静置した。水溶液を添加した場合は、風乾した後に粉砕した。各汚染土壌について、汚染状況を検討した。結果を表3に示す。
表3中、「溶出含有率」は、汚染土壌(3.00 g)を蒸留水(30 L)に加えてよく攪拌し、濾過することにより得られた濾液に含まれる各元素の濃度を示す。「pH」は、当該濾液のpHである。また、「溶出率」は、土壌中に含まれる各元素のうち当該濾液へ溶出された元素の割合をいう。
表3によれば、As(III)に比べて、As(V)汚染土壌の溶出含有率は少し低
い。これは、As(III)の水溶性がAs(V)よりも高いためである。As(V),A
s(III),As(V)+As(III)汚染土壌の溶出率をみると、3つとも添加含有率が
高くなるにつれて溶出率も高くなっている。このことから、汚染土壌に含まれるAs量が多ければ、溶出するAsの割合も高くなると考えられる。
い。これは、As(III)の水溶性がAs(V)よりも高いためである。As(V),A
s(III),As(V)+As(III)汚染土壌の溶出率をみると、3つとも添加含有率が
高くなるにつれて溶出率も高くなっている。このことから、汚染土壌に含まれるAs量が多ければ、溶出するAsの割合も高くなると考えられる。
Pb汚染土壌の溶出率をみると、As汚染土壌とは逆に添加含有率が高くなるにつれて溶出率は低くなっている。溶出含有率をみても、添加含有率100 mg/kgと500 mg/kgでは溶出含有率がほとんど変わらないことから、高い添加含有率でも、溶出するPbは1.5 mg/L付近にとどまると考えられる。
Cd汚染土壌の溶出率をみると、添加含有率が低くても高くても0.40%付近である。このことから、汚染土壌に含まれるCdの量に比例して、溶出するCdは増加すると考えられる。
実施例4
上記実施例3で調製したAs(V)汚染土壌を用いて、本発明に係る非晶質水酸化鉄(III)のAs吸着特性を測定した。先ず、各As(V)汚染土壌(9.9 g)へ、実施例1で製造した非晶質水酸化鉄(III)を脱イオン水(4 mL)に懸濁したものを加え、よく混合して室温で15時間静置した。その後、濾過することにより得られた濾液について、As(V)の含有率とpHを測定した。また、脱イオン水の代わりに0.1 M塩酸を用いて、同様の条件で測定を行なった。さらに、0.1 M塩酸により非晶質水酸化鉄(III)を添加して処理した後に、土壌をいったん風乾し、その3.00 gを30 mL水に懸濁したものについても、同様に測定した。結果を図2と表4に示す。
上記実施例3で調製したAs(V)汚染土壌を用いて、本発明に係る非晶質水酸化鉄(III)のAs吸着特性を測定した。先ず、各As(V)汚染土壌(9.9 g)へ、実施例1で製造した非晶質水酸化鉄(III)を脱イオン水(4 mL)に懸濁したものを加え、よく混合して室温で15時間静置した。その後、濾過することにより得られた濾液について、As(V)の含有率とpHを測定した。また、脱イオン水の代わりに0.1 M塩酸を用いて、同様の条件で測定を行なった。さらに、0.1 M塩酸により非晶質水酸化鉄(III)を添加して処理した後に、土壌をいったん風乾し、その3.00 gを30 mL水に懸濁したものについても、同様に測定した。結果を図2と表4に示す。
図2によれば、本発明の非晶質水酸化鉄(III)によるAs(V)汚染土壌の吸
着処理では、非晶質鉄水酸化物を脱イオン水に懸濁して添加した吸着処理が最もAs(V)を吸着した。これは、処理中におけるpHに起因していると思われる。つまり、Di
ckensらによる報告によれば、非晶質鉄水酸化物によるAs(III)の吸着の最高点はp
H7〜8の間であるから(DickensおよびHiltbold,Weeds,第15巻,第299〜304頁(1967年))、As(V)の吸着でも同様にpH7〜8の間で最も吸着効果が高くなると
推察され、脱イオン水により非晶質鉄水酸化物(III)を添加した後のpHは7付近であることによる。
着処理では、非晶質鉄水酸化物を脱イオン水に懸濁して添加した吸着処理が最もAs(V)を吸着した。これは、処理中におけるpHに起因していると思われる。つまり、Di
ckensらによる報告によれば、非晶質鉄水酸化物によるAs(III)の吸着の最高点はp
H7〜8の間であるから(DickensおよびHiltbold,Weeds,第15巻,第299〜304頁(1967年))、As(V)の吸着でも同様にpH7〜8の間で最も吸着効果が高くなると
推察され、脱イオン水により非晶質鉄水酸化物(III)を添加した後のpHは7付近であることによる。
また、0.1 M塩酸で非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合と、さらに風乾した場合におけるAs含有率を比較すると、風乾した場合の方が濾液に溶出したAs(V)の割合が高い。これは、いったん吸着されたAsが、風乾している間、僅かに再溶出したのではないかと推察される。
実施例5
上記実施例3で調製したAs(III)汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図3と表5に示す。
上記実施例3で調製したAs(III)汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図3と表5に示す。
図3によれば、As(III)汚染土壌の吸着処理でも、非晶質鉄水酸化物(III)を
脱イオン水で添加した場合において、As(III)が最も吸着された。このことは、As
(V)汚染土壌の場合と同様に、処理中pHに起因しているものであると考えられる。
また、0.1 M塩酸を媒体として非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合も、風乾した場
合の方がAs(V)の溶出割合が高かった。やはり、As(V)汚染土壌の場合と同様
の理由によるものと推察される。
脱イオン水で添加した場合において、As(III)が最も吸着された。このことは、As
(V)汚染土壌の場合と同様に、処理中pHに起因しているものであると考えられる。
また、0.1 M塩酸を媒体として非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合も、風乾した場
合の方がAs(V)の溶出割合が高かった。やはり、As(V)汚染土壌の場合と同様
の理由によるものと推察される。
実施例6
上記実施例3で調製したAs(V)とAs(III)の混合汚染土壌を用いて、上記実施
例4と同様の測定を行なった。結果を図4と表6に示す。
上記実施例3で調製したAs(V)とAs(III)の混合汚染土壌を用いて、上記実施
例4と同様の測定を行なった。結果を図4と表6に示す。
図4によれば、As(V)のみの汚染土壌およびAs(III)のみの汚染土壌の場
合と同様に、非晶質鉄水酸化物(III)を脱イオン水で添加した場合において、Asが最
も吸着された。このことは、やはり処理中pHに起因しているものであると考えられる。また、0.1 M塩酸を媒体として非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合も、風乾した
場合の方がAsの溶出割合が高かった。やはり、As(V)汚染土壌の場合と同様の理
由によるものと推察される。
合と同様に、非晶質鉄水酸化物(III)を脱イオン水で添加した場合において、Asが最
も吸着された。このことは、やはり処理中pHに起因しているものであると考えられる。また、0.1 M塩酸を媒体として非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合も、風乾した
場合の方がAsの溶出割合が高かった。やはり、As(V)汚染土壌の場合と同様の理
由によるものと推察される。
実施例7
上記実施例3で調製したPb汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図5と表7に示す。
上記実施例3で調製したPb汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図5と表7に示す。
図5によれば、Pb汚染土壌の吸着処理では、0.1 M塩酸を媒体として非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合が、脱イオン水の場合よりも、湿潤状態および風乾状態ともに高い吸着効果を示した。従って、非晶質鉄水酸化物(III)によるPbの吸着は、pH5〜6付近で最も効果を発揮するのではないかと考えられる。
0.1 M塩酸で非晶質鉄水酸化物(III)を添加した場合を比較すると、湿潤状態と風乾状態による顕著な違いはみられなかった。これは、通常、Pb(OH)2からのPb2+の溶出は、溶液のpHが約6.6以下であるときに起こることから(Elkhatibら,Environment Pollution,第69巻,第269〜276頁(1991年);Spositoら,Soil Sci Soc Am J,第46巻,第260〜264頁(1982年))、湿潤状態と風乾状態共に、処理中において溶出したPb2+を吸着できたことによると考えられる。
実施例8
上記実施例3で調製したCd汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図6と表8に示す。
上記実施例3で調製したCd汚染土壌を用いて、上記実施例4と同様の測定を行なった。結果を図6と表8に示す。
図6によれば、Cd汚染土壌の吸着処理では、脱イオン水で非晶質鉄水酸化物を添加した吸着処理では水溶性Cdをよく吸着し、高い吸着効果を示したことが分かる。しかし、0.1 M塩酸で非晶質鉄水酸化物を添加した吸着処理では、非晶質鉄水酸化物を添加したにもかかわらず、非晶質鉄水酸化物を添加しなかった場合における水溶性Cd含有率を大きく上回っている。これは、土壌中のCdの可溶性はpHが上昇するにつれて減少する(Santillan-Medorano JとJ. J. Jurinak,Soil Sci Soc Am J Proc,第39巻,第851〜856頁(1975年))ことから、表8に示すように、0.1 M塩酸でpHを5付近に下げたため、pH7付近の時には溶出していなかった水溶性Cdが大量に溶出したことによる考えられる。
0.1 M塩酸で非晶質鉄水酸化物を添加した場合について、湿潤状態と風乾状態を比較すると、湿潤状態より風乾状態の水溶性Cd含有率が低い。これは、風乾により汚染土壌のpHが湿潤状態より少し上昇したことで、水溶性Cdが汚染土壌に少し固定されたのではないかと推察される。
Claims (7)
- 重金属を除去するための除去剤であって、非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする重金属除去剤。
- その比表面積が250m2/g以上である請求項1に記載の重金属除去剤。
- 上記重金属が、As,CdおよびPbからなる群より選択される1以上である請求項1または2に記載の重金属除去剤。
- 重金属に汚染された物質から当該重金属を除去するための方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の重金属除去剤を当該物質と接触させることを特徴とする重金属の除去方法。
- 上記汚染物質が土壌である請求項4に記載の重金属の除去方法。
- 上記汚染物質のうちAsおよびCdの少なくとも一方に汚染されているものを、pH7〜8の水中で上記重金属除去剤と混合する請求項4または5に記載の重金属の除去方法。
- 上記汚染物質のうちPbに汚染されているものを、pH4〜6.5の水中で上記重金属除去剤と混合する請求項4または5に記載の重金属の除去方法。
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