JP2006214314A - バルブリフター及びシムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 バルブリフター及びシムの冠面をラップ仕上げやバフ仕上げした後、多数のキズが残る。このキズのある冠面に非晶質硬質皮膜を施した場合、使用中、キズを起点とする剥離が生じ硬質皮膜が削り落とされる。
【解決手段】 摺動面に非晶質硬質炭素皮膜(2)を被覆したバルブリフター(1)及びシム(3)の製造方法において、ショットブラスト処理により基材表面(下地)の算術平均粗さをRa0.01〜0.03μmかつキズの最大長さを250μm以下とし、その後に非晶質硬質炭素皮膜を被覆する。
【選択図】 図6
【解決手段】 摺動面に非晶質硬質炭素皮膜(2)を被覆したバルブリフター(1)及びシム(3)の製造方法において、ショットブラスト処理により基材表面(下地)の算術平均粗さをRa0.01〜0.03μmかつキズの最大長さを250μm以下とし、その後に非晶質硬質炭素皮膜を被覆する。
【選択図】 図6
Description
本発明は内燃機関の動弁機構に使用される硬質皮膜を被覆したバルブリフター及びシムの製造方法に関する。
内燃機関の低燃費化及び高出力化への対応として、動弁系機構の摺動部におけるフリクション(摩擦)低減は有効な手段の一つである。このため、バルブリフターとカムとの摺動部のフリクション低減を目的として、摺動面に窒化チタン系皮膜(例えばTiN)、窒化クロム系皮膜(例えばCr2N、CrN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜などの硬質皮膜を被覆することが行われている。
例えば、フリクション低減を図るために、バルブリフター頂面に配されカムと摺動するシムの表面粗さをカムとシムとの間の油膜厚さと同じ程度に小さくする必要から十点平均粗さRz0.1μm(Raで0.025μm相当)以下とし、そのシム基材表面にTiN、TiC、TiCN、CrN、DLCなどの薄膜を被覆し、初期摺り合わせ運転中にシムと接するカム側の接触面を鏡面化するカム接触部構造が特許文献1(特開平5−163909号)に示されている。
また、DLC薄膜などの硬質炭素皮膜成膜前の基材表面粗さをRa0.03μm以下とし、その上に硬度及び膜厚から表面粗さを規定した皮膜を被覆することで、延性の少ない硬質薄膜の割れや剥離などを抑え、耐久信頼性且つ低摩擦係数を実現し、摩擦特性及び耐久性に優れたシム、リフター及びカムシャフトの組合せとすることが特許文献2(特開2002−309912号)に開示されている。
これら摺動部表面に被覆される硬質皮膜の中で、DLC皮膜は高硬度かつ低摩擦係数という特徴などから、直打式動弁系において耐摩耗性やフリクション低減効果が期待され実用化が検討されている。DLC皮膜にはダイヤモンド構造とグラファイト構造の構成比、水素や金属の含有などにより複数の種類があるが、一般的に非晶質硬質炭素皮膜のことを意味する。
このような非晶質硬質炭素皮膜の成膜方法としては、メタンやアセチレンなどの炭化水素系ガスを用いたCVD法と、グラファイトなどをターゲットに用いたPVD法が知られている。
このような非晶質硬質炭素皮膜の成膜方法としては、メタンやアセチレンなどの炭化水素系ガスを用いたCVD法と、グラファイトなどをターゲットに用いたPVD法が知られている。
CVD法により形成される非晶質硬質炭素皮膜は、PVD法に比べて水素を多く含有し、内部残留圧縮応力により鉄系基材に対して十分な密着性を確保することは困難であり、よって基材との密着性確保のため、金属や金属と炭化物からなる中間層を用いた構造とすることや非晶質硬質炭素皮膜中へ金属添加することで内部応力を緩和する方法が用いられている。
一方、真空アークイオンプレーティング法などのPVD法により形成される非晶質硬質炭素皮膜は、一般に不可避的に含有される水素(数原子%程度)を除いて実質的に水素フリーという特徴を有し、CVD法による非晶質硬質炭素皮膜に比べて高硬度で耐摩耗性が優位であると考えられている。
特許文献2や特許文献3(特開2004−137535号)によれば、水素フリー非晶質硬質炭素皮膜の具体的な特性としては、膜厚0.33〜1.90μm、表面ヌープ硬度1956〜4050、水素原子含有量0.5原子%以下であり、その時の基材硬度がHRC53〜60、基材の表面粗さはRa0.01〜0.03であった。また、基材の表面粗さは小さいほど好ましいがRa0.01μm程度にまで平滑にすれば、成膜後の皮膜の表面粗さが仕上げ加工なしでRa0.03μm程度になることも開示されている。
特許文献2や特許文献3(特開2004−137535号)によれば、水素フリー非晶質硬質炭素皮膜の具体的な特性としては、膜厚0.33〜1.90μm、表面ヌープ硬度1956〜4050、水素原子含有量0.5原子%以下であり、その時の基材硬度がHRC53〜60、基材の表面粗さはRa0.01〜0.03であった。また、基材の表面粗さは小さいほど好ましいがRa0.01μm程度にまで平滑にすれば、成膜後の皮膜の表面粗さが仕上げ加工なしでRa0.03μm程度になることも開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1による摺動部構造は、硬質皮膜被覆前の基材表面をRz0.1μm以下とし、その上に薄い硬質皮膜を被覆しているが、摺動によって相手材が鏡面化される頃に硬質皮膜が削り落とされてしまう構造であり、硬質皮膜が削り落とされた後の基材摺動面に摩耗が発生する問題がある。
特許文献2は、硬質炭素皮膜成膜前の基材表面粗さをRa0.03μm以下とし、その上に硬度と膜厚から表面粗さRyを規定した硬質薄膜をアークイオンプレーティング法により被覆し、割れや剥離などを抑える硬質皮膜としているが、硬質皮膜成膜前の基材表面を一般的な砥石を用いた研削や遊離砥粒を用いたラップ仕上げ又はバフ仕上げを施すと、基材表面に研磨材の硬質粒子による長く連続的に伸びた不可避な多数のキズが残存してしまう。
図4はSCM420材を使用したバルブリフター冠面をGC砥粒でJISR6001による粒度#3000の砥石(GC#3000)を用いた研削により超仕上げを行った後の表面状態を示したものであるが、表面に砥石による研削痕が多数残っていることが確認できる。このようなキズの残った基材表面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆した場合には、成膜前の脱脂洗浄や真空チャンバー内での成膜直前のメタルイオンボンバードによる基材表面の清浄化を行い、一定の密着性を確保した場合においても、実際にエンジンに組み込まれて使用されると硬質皮膜被覆前の表面のキズを起点とした微小な剥離が発生し、それらがキズに沿って拡大するという問題があった。
本発明はこれらの課題を解決するためになされたものであり、非晶質硬質炭素皮膜を摺動部に被覆したバルブリフター及びシムにおいて、基材と非晶質硬質炭素皮膜の密着性に優れ、フリクションを低減するバルブリフター及びシムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、本発明者等は非晶質硬質炭素皮膜を摺動面に形成したバルブリフターの皮膜の密着性について鋭意研究の結果、摺動部となる基材表面に存在する連続するキズをショットブラストにより除去して最大長さを規定することにより、キズを起点とした剥離発生を防止するとともに剥離が発生した場合の進展の抑制ができることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明によるバルブリフター及びシムの製造方法では、ショットブラスト処理によって非晶質硬質炭素皮膜を被覆する前の基材表面の面粗度を算術平均粗さRa0.01〜0.03μmとし、同時に摺動部の基材表面に存在する連続するキズの最大長さを250μm以下とすることにより、キズを起点とした剥離発生を防止するとともに剥離発生の場合における進展を抑制でき、基材表面と非晶質硬質炭素皮膜の密着性を大幅に向上することが可能となる。
本発明に係る基材表面のキズとは、硬質皮膜被覆前の基材表面を光学顕微鏡(倍率200倍)で観察して確認できる略直線的に伸びたスジ状のものであり、連続したキズとは前記の観察により明確につながった状態のものである。また、前記ショットブラスト後に被覆される非晶質硬質炭素皮膜は、CVD法或いはPVD法のいずれにより成膜されたものでも良く、特にPVD法、より詳しくはアークイオンプレーティング法によって形成された水素含有量が0.5原子%以下であるものが硬度及び耐摩耗性の観点からより好ましい。
一般にアークイオンプレーティング法により形成された水素含有量が0.5原子%以下の水素フリー非晶質硬質炭素皮膜の硬度は、ヌープ硬度(超硬基材上に成膜して荷重50gfで測定)でHk2500kg/mm2以上の高硬度である。また、皮膜の膜厚は、動弁部品のバルブリフターに適用する場合には、0.3〜1.5μmとすることが好適であり、より好ましくは0.3〜1.0μmである。
上記における非晶質硬質炭素皮膜を形成する基材には、SCM材やSKD材などの鋼材や鉄系合金或いは前記鋼材や鉄系合金に浸炭処理や焼入処理等の硬化熱処理を施し、表面硬度をHRC53以上としたものを用いることが好ましい。HRC53未満では、基材の変形に起因する非晶質硬質炭素膜の剥離が発生する可能性がある。
前記ショットブラスト処理には、弾性を有するコア材に粘着物質を介して硬質粒子を付着させた弾性砥粒、硬質粒子を分散させた樹脂、硬質粒子微粉を用いることができる。弾性砥粒の場合には、コア材にゴムやアクリルなどの合成樹脂、粘着物質にゴム系粘着剤等を用いることができ、硬質粒子にはダイヤモンド、炭化珪素やアルミナ等を好ましく使用することができる。このような弾性砥粒をバルブリフター冠面部に高速かつ低入射角で投射することで基材表面に弾性砥粒を適切に滑走させ、コア材に付着させた硬質粒子による研磨作用により前工程で基材表面に残されたキズを除去することができる。
また、ナイロンなどの弾性を有する合成樹脂にダイヤモンドなどの硬質粒子を分散させた硬質粒子分散樹脂を使用することも可能であり、更に、硬質粒子微粉、好ましくはダイヤモンド等の高硬度の硬質粒子微粉を直接投射して同様の効果を得ることもできる。
また、ショットブラスト効果により材料表面の酸化皮膜などが除去され清浄化されると同時に微細な窪みが形成され、梨子地状となるため表面積が増加するためより高い密着性が得られる。
本発明によれば水分を使用しないドライ加工であるためバルブリフター基材表面の加工中に錆が発生することが無く、硬質粒子の研磨効果により前加工のキズを除去するだけでなく、表面に存在する酸化皮膜も同時に除去することができるため、後で非晶質硬質炭素皮膜を形成する場合に安定した密着性を得ることができる。
このようにして、高硬度の非晶質硬質炭素皮膜をバルブリフターの摺動面に密着性良く形成することができ、フリクション低減効果が得られる。
このようにして、高硬度の非晶質硬質炭素皮膜をバルブリフターの摺動面に密着性良く形成することができ、フリクション低減効果が得られる。
本発明により、基材表面のキズを起点とした非晶質硬質炭素皮膜の剥離の発生を防止するとともに剥離の進展を抑制することができ、信頼性の高い密着性を有するバルブリフターを得ることができ、その製造が可能となる。
以下に、本発明に係るバルブリフターの実施態様の一例を説明する。
図1及び図2は本発明に関わるバルブリフターの断面図の例を示したもので、カムと摺動するバルブリフター1の冠面又はシム3の摺動面に非晶質硬質炭素皮膜2を形成している。前記のバルブリフターは、例えばSCM415材などの鋼材をバルブリフター基材とし、鍛造により成形した後に浸炭焼き入れを行い、その後の工程で冠面の超仕上げ等がなされる。
図4は、GC砥粒で粒度#3000の砥石(GC#3000)を使用して研削により超仕上げを施した冠面部の表面を光学顕微鏡(倍率200倍)で観察したものである。触針式の粗さ計により測定した面粗度はRa0.025μmであり、砥石による長く連続し且つ交差したキズが多数残っていることが確認できる。
図5は、超仕上げ後にアルミナや酸化クロムを研磨材として使用したバフ仕上げを行った表面について示したものである。前記と同様に測定した面粗度はRa0.015μmであり、キズ密度は前記の超仕上げのみ(図4)に比べて大幅に低くなっているが、連続した長いキズがまだ少し残っている。
図1及び図2は本発明に関わるバルブリフターの断面図の例を示したもので、カムと摺動するバルブリフター1の冠面又はシム3の摺動面に非晶質硬質炭素皮膜2を形成している。前記のバルブリフターは、例えばSCM415材などの鋼材をバルブリフター基材とし、鍛造により成形した後に浸炭焼き入れを行い、その後の工程で冠面の超仕上げ等がなされる。
図4は、GC砥粒で粒度#3000の砥石(GC#3000)を使用して研削により超仕上げを施した冠面部の表面を光学顕微鏡(倍率200倍)で観察したものである。触針式の粗さ計により測定した面粗度はRa0.025μmであり、砥石による長く連続し且つ交差したキズが多数残っていることが確認できる。
図5は、超仕上げ後にアルミナや酸化クロムを研磨材として使用したバフ仕上げを行った表面について示したものである。前記と同様に測定した面粗度はRa0.015μmであり、キズ密度は前記の超仕上げのみ(図4)に比べて大幅に低くなっているが、連続した長いキズがまだ少し残っている。
図3は、GC砥粒で粒度#3000の砥石(GC#3000)を使用した研削による超仕上げ後に、弾性砥粒を用いたショットブラスト処理により仕上げた表面を光学顕微鏡で観察したものである。面粗度はRa0.015μmであり、確認できる最大キズの長さは約200μmである。図6は弾性砥粒によるショットブラスト処理を模式的に示したものである。
本発明の実施例においては、平均粒径が0.1〜0.5mmのコア材にJISR6001による粒度で#6000以上、より好ましくは#8000〜9000の微細な粒度の硬質粒子を付着させた弾性砥粒を使用し、予め脱脂洗浄乾燥させたバルブリフター基材4を5〜10rpmで回転させながら冠面に対して投射角度θを20〜60度、好ましくは30〜40度、距離Lを600〜800mm、投射速度1〜10m/sec、好ましくは3〜6m/secで回転インペラー5から投射することにより行うことができる。
本実施例の硬質粒子にはGC砥粒の粒度#8000を用いたが、同じ粒度のダイヤモンド、炭化珪素、アルミナ等を使用してもよい。コア材は、平均粒径が0.1mm未満では投射速度が得られずショットブラスト処理を効果的に行うことが困難であり、平均粒径が0.5mmより大きいと表面の面粗度を悪化させる可能性があるため平均粒径0.1〜0.5mmが好ましい。コア材に付着させる硬質粒子は、JISR6001による粒度が#6000より粗いと処理面の面粗度を悪化させる可能性があり、製造性から粒度#8000〜9000がより好ましい。
投射角度は、20度未満では弾性砥粒が表面を滑走する際に十分な研磨効果が得られず、60度より大きいと弾性砥粒の衝突エネルギーが過大となり面粗度を低下させる可能性がある。製造性から30〜40度の投射角度がより好ましい。投射速度は、1m/sec未満では十分な研磨効果が得られず、10m/secより大きいと面粗度を低下させる可能性がある。3〜6m/secの投射速度が製造性からより好ましい。
尚、弾性砥粒は投射装置内部で回収されコンベア(図示しない)などにより回転インペラー5に連続的に循環することにより連続投射される。弾性砥粒によるショットブラスト処理の場合にはコア材に付着させた硬質粒子の脱落を抑制するため図6に示したような回転インペラー5により投射する方法が好ましい。キズの長さは弾性砥粒の投射時間により変化するが10〜60sec、より好ましくは15〜30sec投射することにより面粗度をほとんど変化させずに最大長さを250μm以下に仕上げることができる。
尚、処理に要する時間は投射する弾性砥粒のコア材の材質やサイズ、コア材に付着させた硬質粒子の材質やサイズ、投射角度、投射速度により変化する。
尚、処理に要する時間は投射する弾性砥粒のコア材の材質やサイズ、コア材に付着させた硬質粒子の材質やサイズ、投射角度、投射速度により変化する。
図7は硬質粒子分散樹脂を投射する場合について模式的に示したものである。粒度が#1000〜3000のナイロンなどの樹脂中に粒度が#6000〜10000の硬質粒子を分散させ、投射角度θを20〜60度、好ましくは30〜40度で、距離Lを50〜100mm程度から投射圧力0.1〜1.0MPa、より好ましくは0.2〜0.4MPaでバルブリフターを5〜10rpmで回転させながら10〜60sec、より好ましくは30〜60sec投射することにより同様な処理を行うことができる。
投射角度が20度未満の場合には加工が進みにくく、処理に時間を要する。また投射角度が60度以上では硬質粒子分散樹脂の衝撃力が増大するため面粗度を悪化させる。投射時間は投射圧力が高ければ短く、低い場合には長く設定する。本実施例においては、ナイロン樹脂中にダイヤモンド(粒度#8000)を分散させた硬質粒子分散樹脂(粒度#1000)を用いている。
尚、硬質粒子分散樹脂の場合には硬質粒子は樹脂中に分散しているため、前述の弾性砥粒の場合と異なり、硬質粒子の脱落が無いため、ノズル6から圧縮空気により投射することができる。
尚、硬質粒子分散樹脂の場合には硬質粒子は樹脂中に分散しているため、前述の弾性砥粒の場合と異なり、硬質粒子の脱落が無いため、ノズル6から圧縮空気により投射することができる。
硬質粒子微粉を直接使用する場合には図7に模式的に示したような方法により硬質粒子微粉、好ましくはダイヤモンドやGCなどの高硬度の硬質粒子微粉(粒度#2000〜#8000)を用い、投射角度θを10〜60度、距離Lを50〜100mm程度から投射圧力0.1〜1.0MPa、より好ましくは0.3〜0.4MPaでリフターを5〜10rpm程度で回転させながら10〜60sec、より好ましくは10〜20sec投射することにより同様な結果を得ることができる。硬質粒子の粒度が粗い場合には投射角度を10度〜30度程度に浅く、粒度が細かい場合には投射角度を30度から60度程度に深くする。投射角度が60度を超える場合には衝撃力が強くなりすぎる為、基材面粗度が粗くなる。
このような基材表面を持つバルブリフターを洗浄し、真空アークイオンプレーティング法により水素フリーの非晶質硬質炭素皮膜を膜厚0.3〜1.5μmで形成し、実施例1〜4、比較例1及び2、投射時間を10sec未満にした比較例3〜5を作成した。尚、真空アークイオンプレーティング法による非晶質硬質炭素皮膜を膜厚1.5μm以上の厚さとすると被覆後の面粗さが増大する傾向があった。真空アークイオンプレーティング法で成膜した非晶質硬質炭素皮膜表面の面粗度は、算術平均粗さRa0.08μm程度まで粗くなっているので研磨材を用いたラップ仕上げなど後処理により面粗度をRa0.01〜0.03μmに調整した。ここで実施例及び比較例に非晶質硬質炭素膜を成膜する際に超硬基材上に形成させた非晶質硬質炭素皮膜は、ヌープ硬度(測定荷重50gf)でHk3000kg/mm2であった。
上記により作成した実施例1〜4及び比較例1〜5について、モータリング耐久試験により基材と皮膜の密着性を評価した。モータリング耐久試験は、実機エンジンのシリンダーヘッドを組み込んだ装置を使用し、カム回転数を2000rpm、ヘルツ応力を560MPa、試験時間を約90時間として評価を行った。
表1にモータリング耐久試験結果を示す。非晶質硬質炭素皮膜被覆前の基材表面を、弾性砥粒、硬質粒子分散樹脂、硬質粒子を使用したショットブラスト処理によりキズ最大長さを250μm以下とした実施例1〜4では剥離が発生せず、特に弾性砥粒を用いた実施例1及び2は良好な密着性を有していることが確認された。
一方、非晶質硬質炭素皮膜被覆前の基材表面を、超仕上げのみを施した基材表面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆した比較例1はキズを起点とする剥離が多数発生し且つ剥離の進展が認められた。また、超仕上げ後に遊離砥粒を使用したバフ仕上げを行った比較例2も比較例1と同様にキズを起点とした剥離が発生し且つ一部が進展し、密着性及び剥離の進展抑制性が悪いことが確認された。
更に、弾性砥粒を使用したショットブラスト処理を行ったものにおいてキズ最大長さを300μmとなった比較例3や、硬質粒子分散樹脂を使用した場合においてキズの最大長さが400μmとなった比較例4、及び硬質粒子微粉(GC砥粒で粒度#3000)を直接用いたショットブラスト処理で最大キズ長さが450μmとなった比較例5についても一部に剥離が見られた。
更に、弾性砥粒を使用したショットブラスト処理を行ったものにおいてキズ最大長さを300μmとなった比較例3や、硬質粒子分散樹脂を使用した場合においてキズの最大長さが400μmとなった比較例4、及び硬質粒子微粉(GC砥粒で粒度#3000)を直接用いたショットブラスト処理で最大キズ長さが450μmとなった比較例5についても一部に剥離が見られた。
1 バルブリフター
2 非晶質硬質炭素皮膜
3 シム
4 バルブリフター基材
5 回転インペラー
6 ノズル
2 非晶質硬質炭素皮膜
3 シム
4 バルブリフター基材
5 回転インペラー
6 ノズル
Claims (6)
- 摺動面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆したバルブリフター及びシムの製造方法において、ショットブラスト処理により基材表面(下地)の算術平均粗さをRa0.01〜0.03μmかつキズの最大長さを250μm以下とし、その後に非晶質硬質炭素皮膜を被覆することを特徴とするバルブリフター及びシムの製造方法。
- 前記基材の硬度がHRC53以上であることを特徴とする請求項1記載のバルブリフター及びシムの製造方法。
- 前記非晶質硬質炭素皮膜が、アークイオンプレーティングにより水素含有量が0.5原子%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のバルブリフター及びシムの製造方法。
- 前記ショットブラスト処理において、コア材に粘着物質を介して硬質粒子を付着させた弾性砥粒を用いたことを特徴とする請求項1〜3記載のバルブリフター及びシムの製造方法。
- 前記ショットブラスト処理において、硬質粒子分散樹脂を用いたことを特徴とする請求項1〜3記載のバルブリフター及びシムの製造方法。
- 前記ショットブラスト処理において、硬質粒子微粉を用いたことを特徴とする請求項1〜3記載のバルブリフター及びシムの製造方法。
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