JP2006210294A - 車両用灯具および車両用前照灯装置 - Google Patents
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- F21Y2115/10—Light-emitting diodes [LED]
Abstract
【課題】任意の方向に伸延させたスポット配光パターンが得られない点にある。
【解決手段】発光体5から構成されている半導体型光源1と、発光体5からの光を、発光体5の形状を任意の方向に伸延した像I1〜I5であって、スポット配光パターンSPとして出射するレンズ2と、を備える。このレンズ2が、基本レンズ2Aの光軸Z−Zを基本レンズ2Aの焦点F0を中心として発光体5の形状を伸延させたい方向に回転させ、中心を中心とする発光体5からの光の最大入射角θ扇を等立体角で複数個に分割したテンプレートにより、光軸Z−Zを回転させた複数個の基本レンズ毎に該当する部分S1〜S5を切り取り、切り取った部分S1〜S5を一体化して1つの焦点F0を共有する多光軸の複合レンズから構成されている。この結果、任意の方向に伸延させたスポット配光パターンSPが得られる。
【選択図】 図4
【解決手段】発光体5から構成されている半導体型光源1と、発光体5からの光を、発光体5の形状を任意の方向に伸延した像I1〜I5であって、スポット配光パターンSPとして出射するレンズ2と、を備える。このレンズ2が、基本レンズ2Aの光軸Z−Zを基本レンズ2Aの焦点F0を中心として発光体5の形状を伸延させたい方向に回転させ、中心を中心とする発光体5からの光の最大入射角θ扇を等立体角で複数個に分割したテンプレートにより、光軸Z−Zを回転させた複数個の基本レンズ毎に該当する部分S1〜S5を切り取り、切り取った部分S1〜S5を一体化して1つの焦点F0を共有する多光軸の複合レンズから構成されている。この結果、任意の方向に伸延させたスポット配光パターンSPが得られる。
【選択図】 図4
Description
この発明は、LEDやEL(有機EL)などの半導体型発光素子を光源とする車両用灯具に関するものである。特に、この発明は、ヘッドランプから出射(放射、照射、投影)される基本配光パターンに対して、スポット配光パターンを出射する車両用灯具に関するものである。また、この発明は、基本配光パターンとスポット配光パターンとをそれぞれ出射する車両用前照灯装置に関するものである。
この種の車両用灯具および車両用前照灯装置(以下、「車両用前照灯システム」と称する)は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、この車両用前照灯システムについて説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1、特許文献2にそれぞれ対応する。前者の車両用前照灯システム(特許文献1)は、発光ダイオード(11)、(21)を光源とする凸型発光体(10)と扇型発光体(20)とから構成されている。凸型発光体(10)は、スポット的な配光を外部に出射する。扇型発光体(20)は、幅広な配光を外部に出射する。前記の配光を合成することにより、カットライン(CL)を有するロービームの配光が得られる。一方、後者の車両用前照灯システム(特許文献2)は、発光ダイオード(32)、(52A)、(52B)、(72)を光源とする灯具ユニット(20)、(40A)、(40B)、(60)から構成されている。前記灯具ユニット(20)は、水平および斜めカットオフライン(CL1)、(CL2)を有するカットオフライン形成用パターン(Pa)を外部に出射する。前記灯具ユニット(40A)は、水平カットオフライン(CL1)に沿った直線状の上端縁を有する略半円状のホットゾーン形成用パターン(Pb1)を外部に出射する。前記灯具ユニット(40B)は、斜めカットオフライン(CL2)に沿った直線状の上端縁を有する略半円状のホットゾーン形成用パターン(Pb2)を外部に出射する。前記灯具ユニット(60)は、拡散領域形成用パターン(Pc)を外部に出射する。前記のパターン(Pa)、(Pb1)、(Pb2)、(Pc)を合成することにより、所定のロービーム用配光パターン(PL)が得られる。
ところが、前者は、凸型発光体(10)からスポット的な配光がただ単に外部に出射されだけであり、また、後者は、灯具ユニット(40A)、(40B)からホットゾーン形成用パターン(Pb1)、(Pb2)がただ単に外部に出射されるだけである。このために、両者は、任意の方向に伸延させたスポット的な配光またホットゾーン形成用パターン(Pb1)、(Pb2)が得られないという課題がある。
この発明が解決しようとする問題点は、任意の方向に伸延させたスポット配光パターンが得られない点にある。
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、発光体から構成されている半導体型光源と、前記発光体からの光を、前記発光体の形状を任意の方向に伸延した像であって、スポット配光パターンとして出射するレンズと、を備え、前記レンズが、基本レンズの光軸を前記基本レンズの焦点もしくはその近傍を中心として前記発光体の形状を伸延させたい方向に回転させ、前記中心を中心とする前記発光体からの光の最大入射角扇を任意の立体角で複数個に分割したテンプレートにより、光軸を回転させた複数個の基本レンズ毎に該当する部分を切り取り、切り取った部分を一体化して1つの焦点を共有する多光軸の複合レンズから構成されている、ことを特徴とする。また、この発明(請求項5にかかる発明)の車両用前照灯装置は、基本配光パターンを外部に出射するヘッドランプと、任意の方向に伸延させたスポット配光パターンを外部に出射する前記の車両用灯具と、を備えることを特徴とする。
この発明の車両用前照灯システムは、レンズの作用により、半導体型光源の発光体からの光を、発光体の形状を任意の方向に伸延させた像であってスポット配光パターンとして出射させることができる。この結果、この発明の車両用前照灯システムは、任意の方向に伸延させたスポット配光パターンが得られるので、車両用前照灯システムに適した配光パターンが簡単にかつ確実に得ることができる。
以下、この発明にかかる車両用前照灯システムの実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。この実施例は、車両(自動車)が左側通行の場合の車両用前照灯システムについて説明する。車両が右側通行の場合の車両用前照灯システムは、構造や配光パターンなどがほぼ左右逆となる。図5、図10、図17、図18は、コンピュータのシミュレーションで得られたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図であって、中央の等光度曲線は、高光度帯であって、その他の曲線は、外に行くにしたがって低くなる光度帯である。たとえば、図5、図17の中央の等光度曲線は、10000(cd)であり、以下、5000(cd)、2000(cd)、300(cd)である。また、図10(A)、図18(A)の中央の等光度曲線は、10000(cd)であり、以下、5000(cd)、2000(cd)、1000(cd)、300(cd)である。さらに、図10(B)、図18(B)の中央の等光度曲線は、10000(cd)であり、以下、2000(cd)、300(cd)である。さらにまた、図10(C)、図18(C)の中央の等光度曲線は、20000(cd)であり、以下、10000(cd)、5000(cd)、2000(cd)、1000(cd)、300(cd)である。
この明細書および図面において、符号「U」は、ドライバー側から見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前側を見た場合の右側を示す。符号「HL−HR」は、左右の水平線(左右水平方向)、もしくは、配光パターンが出射される25m先のスクリーン上の左右の水平線を示す。符号「VU−VD」は、同じく、上下の垂直線(上下垂直方向)、もしくは、配光パターンが出射される25m先のスクリーン上の上下の垂直線を示す。符号「HF−HB」は、前後の水平線(前後水平方向)を示す。また、この特許請求の範囲中の「左側」、「右側」、「左右」、「下側」「上」「下」は、この明細書および図面中の「左側」、「右側」、「左右」、「下側」「上」「下」と同意である。
図1〜図14は、この発明にかかる車両用前照灯システムの実施例1を示す。図中、符号LSは、この実施例1における車両用前照灯システムである。前記車両用前照灯システムLSは、車両の前部の左右両側にそれぞれ装備されるものである。以下、車両の前部の右側に装備される前記車両用前照灯システムLSの構成について説明する。なお、車両の前部の左側に装備される前記車両用前照灯システムLSの構成は、右側の前記車両用前照灯システムLSの構成とほぼ同様である。
前記車両用前照灯システムLSは、図1に示すように、ヘッドランプとしてのヘッドランプユニットL0と、車両用灯具としてのスポットランプユニットSLと、を備えるものである。前記ヘッドランプユニットL0と前記スポットランプユニットSLとは、ランプハウジング11とランプレンズ(図示せず、たとえば、素通しのアウターレンズなど)とにより区画されている灯室12内にそれぞれ配置されている。
前記ヘッドランプユニットL0は、基本配光パターンとしてのすれ違い用配光パターンLPを外部に出射するものである。前記すれ違い用配光パターンLPは、図10(A)に示すように、左右の水平線HL−HRより若干上位に位置する上位の水平のカットオフラインCL1と、斜めカットオフラインCL2と、左右の水平線HL−HRよりも若干下位に位置する下位の水平のカットオフラインCL3と、上下の垂直線VU−VD上の前記斜めカットオフラインCL2と前記下位の水平カットオフラインCL3との交点であるエルボー点EPと、を有する。前記すれ違い用配光パターンLPにおいて、エルボー点EPから斜めカットオフラインCL2に沿って斜め左上の部分は、遠方視認を担う部分である。
前記ヘッドランプユニットL0は、図1に示すように、前記スポットランプユニットSLの上下にそれぞれ配置された上側のヘッドランプユニット群L0Uと下側のヘッドランプユニット群L0Dとからなる。前記上側のヘッドランプユニット群L0Uは、LEDなどの半導体型光源からなる4個のヘッドランプユニットからなり、前記すれ違い用配光パターンLPの下側の部分の拡散配光を主に担うものである。一方、前記下側のヘッドランプユニット群L0Dは、同じくLEDなどの半導体型光源からなる3個のヘッドランプユニットからなり、前記すれ違い用配光パターンLPの上側の部分のカットオフラインCL1、CL2、CL3の配光を主に担うものである。
前記スポットランプユニットSLは、図10(C)に示すように、前記すれ違い用配光パターンLPに対して、所定の位置にスポット配光パターンSPを外部に出射するものである。前記スポット配光パターンSPは、図10(B)に示すように、左右方向に伸延した配光パターンであって、上下幅が約2°で左右幅が約12°の左右に細長い長方形形状をなす配光パターンである。
前記スポットランプユニットSLは、図1〜図4に示すように、半導体型光源1と、レンズ2と、ホルダ3とを備えるものである。前記半導体型光源1は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例1ではLED)を使用する。前記半導体型光源1は、基板4と、前記基板4の一面に固定された光源チップ(半導体チップ)の発光体5と、前記発光体5を覆う光透過部材6と、前記基板4の他面に固定された放熱部材7とから構成されている。前記発光体5は、基本的には微小な四角形、すなわち、1辺が約1mm程度の4つの直線の辺からなる矩形形状(この例では、正方形形状)をなす。前記発光体5の1辺は、前記すれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3に対応する。
前記レンズ2は、図3に示すように、非球面レンズ(屈折レンズ、投影レンズ)であって、入射面(前記発光体5からの光が入射する面)が非球面の平面をなし、かつ、出射面(前記発光体5からの光が出射する面)が非球面の凸面をなす。また、前記レンズ2は、有効径L1、L2が異なる凸状の第1非球面レンズ部21と第2非球面レンズ部22とから一体に構成されている。すなわち、有効径L1が小さい前記第1非球面レンズ部21は、有効径L2が大きい前記第2非球面レンズ部22により取り囲まれている。さらに、前記レンズ2は、前記第1非球面レンズ部21の光軸と前記第2非球面レンズ部22の光軸とが同一の光軸Z−Zを共有する。さらにまた、前記レンズ2は、前記第1非球面レンズ部21の焦点と前記第2非球面レンズ部22の焦点とが前記光軸Z−Zに対して垂直な平面上において同一の焦点F0を共有する。さらにまた、前記レンズ2は、前記第1非球面レンズ部21の高さH1は、前記第2非球面レンズ部22の高さH2と同等もしくは高い。
前記レンズ2は、図4に示すように、前記発光体5からの光を、前記発光体5の形状を左右方向に伸延した像I1、I2、I3、I4、I5であって、前記スポット配光パターンSPとして出射するものである。
以下、前記レンズ2の構成について、図6〜図9を参照して説明する。まず、図3の垂直断面図(上下方向の断面図)に示すレンズ2を基本レンズ2Aとする。前記基本レンズ2Aの光軸Z−Zを前記基本レンズ2Aの焦点F0もしくはその近傍を中心として前記発光体5の形状を伸延させたい方向、この例では左右方向に回転させる。たとえば、図6(A)の一番右側の図のように、光軸Z1−Z1を光軸Z−Zに対して右側に回転させる。また、図6(A)の右側から二番の図のように、光軸Z2−Z2を光軸Z−Zに対して一番右側の図の光軸Z1−Z1よりも小さい角度で右側に回転させる。さらに、図6(A)の右側から三番の図のように、光軸Z3−Z3を光軸Z−Zに対して回転させない。一方、図6(A)の右側から四番の図のように、光軸Z4−Z4を光軸Z−Zに対して左側に回転させる。また、図6(A)の右側から五番の図のように、光軸Z5−Z5を光軸Z−Zに対して右側から四番の図の光軸Z4−Z4よりも大きい角度で左側に回転させる。
つぎに、前記中心(前記基本レンズ2Aの焦点F0もしくはその近傍)を中心とする前記発光体5からの光の最大入射角θ扇を任意の立体角(この例では、最大入射角θに対応する等立体角ω/5)で複数個(この例では5個)に分割したテンプレート(図6(A)の右側から三番の図を参照)により、光軸Z−Z(Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5)を回転させた複数個(この例では5個)の基本レンズ2A毎に該当する部分(セクタ)S1、S2、S3、S4、S5を切り取る(図6(B)を参照)。
そして、切り取った部分S1、S2、S3、S4、S5を一体化することにより、前記レンズ2が構成される。前記レンズ2は、図7および図9に示すように、1つの焦点F0を共有する多光軸(Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5)の複合レンズから構成される。前記複合レンズから構成される前記レンズ2は、入射面(前記発光体5からの光が入射する面であって、底面)23を図7中の二点鎖線に示すように同一の非球面の平面により共有する。
なお、この実施例1においては、有効径L1、L2が異なる2つの凸状の第1非球面レンズ部21と第2非球面レンズ部22とから一体に構成されているレンズ2を使用するものである。ところが、この発明においては、図8に示すように、有効径が1つの凸状の非球面レンズからなる通常の凸レンズであるレンズ20を使用しても良い。前記レンズ20の場合でも、同様に、基本レンズの光軸を前記基本レンズの焦点もしくはその近傍を中心として前記発光体の形状を伸延させたい方向に回転させ、前記中心を中心とする前記発光体からの光の最大入射角扇を任意の立体角で複数個に分割したテンプレートにより、光軸を回転させた複数個の基本レンズ毎に該当する部分S21、S22、S23、S24、S25を切り取り、切り取った部分S21、S22、S23、S24、S25を一体化して1つの焦点を共有する多光軸の複合レンズから構成されているレンズ20でもよい。
前記ホルダ3は、前記半導体型光源1と前記レンズ2とを所定の相対位置関係で保持する。この例では、図2〜図4に示すように、前記半導体型光源1の発光体5と前記レンズ2の焦点F0とがほぼ一致する相対位置関係で前記半導体型光源1と前記レンズ2とを保持する。この結果、前記レンズ2からの出射像は、最も集光された像として配光される。このように、前記スポットランプユニットSLは、前記半導体型光源1の発光体5からの光を前記レンズ2により直接配光する直射型光学系から構成されているものである。
この実施例1における車両用前照灯システムLSは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用効果について説明する。
スポットランプユニットSLを点灯する。すると、スポットランプユニットSLの半導体型光源1の発光体5からの光は、図3〜図5に示すように、レンズ2から、発光体5の形状を左右方向に伸延させた左右方向に細長い長方形形状の像I1〜I5であって、スポット配光パターンSPとして出射される。この結果、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、左右方向に伸延させたスポット配光パターンSPが得られるので、車両用前照灯システムに適した配光パターンが簡単にかつ確実に得ることができる。
すなわち、図5に示すスポット配光パターンSPを上下左右方向に調整することにより、図10(B)に示すスポット配光パターンSPを簡単にかつ確実に得ることができる。この図10(B)に示すスポット配光パターンSPは、図10(A)に示すすれ違い用配光パターンLPに合成されることにより、図10(C)に示す理想の配光パターン(すれ違い用配光パターンLPとスポット配光パターンSPとが合成された配光パターン)が得られる。この理想の配光パターンは、スポット配光パターンSPがすれ違い用配光パターンLPの所定の位置、すなわち、上位の水平のカットオフラインCL1より下側で、かつ、エルボー点EPおよび斜めカットオフラインCL2から右側の位置に配置されている。この位置は、遠方視認を担う部分であるから、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、対向車や先行車のドライバーおよび同乗者、また、歩行者などにグレアを与えることがなく、遠方の視認性を確実に確保することができ、交通安全に確実に貢献することができる。
特に、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、1つの焦点F0を共有する多光軸(5軸)の複合レンズ(等立体角で分割された5個のセクタS1〜S5)から一体に構成されているレンズ2を使用する。この結果、この実施例1における車両用前照灯システムLSにおいては、レンズ2の5個のセクタS1〜S5が等立体角で分割されているので、この5個のセクタS1〜S5から出射される像I1〜I5がほぼ等しい光量(光度、照度)で5個に左右に複製分散され、また、1つの焦点F0すなわち1つの光源点(半導体型光源1の発光体5)を共有するので、左右に複製分散された5個の像I1〜I5の形状が崩れることがない。これにより、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、左右方向に伸延されたスポット配光パターンSPが得られ、しかも、このスポット配光パターンSPの上辺をすれ違い用配光パターンLPの上位の水平のカットオフラインCL1に沿って配置することができる。また、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、半導体型光源1の発光体5が高出力であれば、1個のスポットランプユニットSLで左右方向に伸延されたスポット配光パターンSPを得ることが可能であり、その分、部品点数が軽減されて製造コストを安価にすることができる。しかも、1個のスポットランプユニットSLの場合、収納スペースが大幅に低減すことができ、スポットランプユニットSLに付随するスイブル機構やスライド機構の部品点数を大幅に低減することができ、デザインの自由度が増す。
また、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、有効径L1、L2が異なる凸状の第1非球面レンズ部21と第2非球面レンズ部22とから一体に構成されているレンズ2、すなわち、有効径L1が小さい第1非球面レンズ部21を有効径L2が大きい第2非球面レンズ部22で取り囲んだレンズ2を使用するものである。このために、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、前記レンズ2を使用することにより、半導体型光源1の発光体5からの光を効率良く入射することができるので、高光度(高密度)の像(配光パターン)が得られ、しかも、球面収差や色収差による像ボケを防止して像の周囲のシャープな輪郭が得られる。
上記の作用効果について図11を参照して説明する。まず、図11(A)に示すただ単なる凸レンズの非球面レンズL1において、適切な厚みT1で適切なサイズの像I11を投影する非球面レンズL1の最大入射角θ1は、半導体型光源1の発光体5からの光の放射角θ3に対して小さい(θ1<<θ3)ので、この非球面レンズL1の光入射効率が低い。なお、図11(A)中の符号F1は、非球面レンズL1の焦点であり、この焦点F1に半導体型光源1の発光体5が位置する。
ここで、光入射効率を高めるために、焦点F3から入射面までの距離が前記非球面レンズL1と同じでかつ有効径が前記非球面レンズL1よりも大きい非球面レンズL3(図11(B)を参照)を考える。すると、この非球面レンズL3の最大入射角θは、半導体型光源1の発光体5からの光の放射角θ3とほぼ同じになり、高い光入射効率が得られる。しかしながら、この非球面レンズL3の厚みT3は、前記非球面レンズL1の厚みT1よりも増大して、成形上非現実的なものであり、しかも、狙いとする配光パターンを達成する適切なサイズの像I11よりも小さいサイズの像I31となる。しかも、非球面レンズL3の球面収差が発生して像ボケI30(図11(B)の点線を参照)を起こす。このために、像の一辺を基本配光パターンのカットオフラインに沿って配光することには問題がある。なお、図11(B)中の符号F3は、非球面レンズL3の焦点であり、この焦点F3に半導体型光源1の発光体5が位置する。
そこで、この実施例1においては、前記非球面レンズL1(第1非球面レンズ部21)を取り囲むように前記非球面レンズL3(第2非球面レンズ部22)を配置して一体化したレンズ2(基本レンズ2A)を使用する。これにより、図11(C)に示すように、適切な厚みT1で適切なサイズの像I11のままでありながら、このレンズ2の最大入射角θを前記非球面レンズL3の最大入射角θとほぼ同等、すなわち、光入射効率を高めることができる。一方、球面収差を伴なう増分(θ−θ1に相当)のサイズの像I20を前記非球面レンズL1(第1非球面レンズ部21)の適切なサイズの像I11の中に納めることができる。この結果、像I11の輪郭はシャープなまま、像I11、I20内が高光度(高密度)となるような高効率の配光が得られる。これにより、前記のように、高光度(高密度)の左右方向に伸延されたスポット配光パターンSP、SPL、SPRが高効率で得られる。
また、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、複合レンズから構成されるレンズ2の入射面23を同一の非球面の平面により共有する。すなわち、第1非球面レンズ部21の入射面と第2非球面レンズ部22の入射面とを同一の非球面の平面により共有する。このために、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、レンズ2の入射面23に入射した光のほとんどは、第1非球面レンズ部21および第2非球面レンズ部22の出射面の非球面の凸面から狙い通りに配光される。すなわち、レンズ2に入射した光は光損失がほとんどなく配光される。
さらに、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、第1非球面レンズ部21の高さH1が第2非球面レンズ部22の高さH2とほぼ同等もしくは高いレンズ2、すなわち、第2非球面レンズ部22の凸面(凸部)の最高点が第1非球面レンズ部21の凸面(凸部)の最高点よりも低くいレンズ2を使用する。このために、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、図12に示すように、レンズ2の成形金型8において、第2非球面レンズ部22を成形する凹部82の最深点が第1非球面レンズ部21を成形する凹部81の最深点よりも浅い。この結果、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、レンズ2の成形金型8を加工する際に、NC加工カッターチャック部80の逃げ場を確保することができ、安定した高精度の加工が可能となる。
ここで、レンズ2の第1非球面レンズ部21の凸面の出射面および第2非球面レンズ部22の凸面の出射面から出射する光は、この出射面において散乱光を伴なう。特に、第1非球面レンズ部21の凸面の出射面のうち第2非球面レンズ部22との接合部分付近において発生する散乱光は、第2非球面レンズ部22の境界壁面(第1非球面レンズ部21の凸面と第2非球面レンズ部22の凸面との間の面であって、理論的には、入射面23から入射した正屈折光がこの面から外部に出射しない面)24から再び入射してこの第2非球面レンズ部22の凸面の出射面から出射する際に迷光25となる場合がある。そこで、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、レンズ2の第2非球面レンズ部22の境界壁面24に、光透過率を低下させる表面処理(図13中の太い実線を参照)、たとえば、シボやフロストや塗装などを施すことにより、迷光の問題を解決することができ、しかも、新規な外観が得られる。
また、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、図14に示すように、レンズ2において、第2非球面レンズ部22の焦点F22を通る軸Z22−Z22を、第1非球面レンズ部21の焦点F21を通る軸Z21−Z21に対して、鉛直方向上側にオフセットさせた状態で、第1非球面レンズ部21と第2非球面レンズ部22とを一体化する。これにより、この実施例1における車両用前照灯システムLSは、第1非球面レンズ部21の焦点F21にもしくはその近傍に半導体型光源1の発光体5が位置する場合において、第2非球面レンズ部22により得られる像I22を、第1非球面レンズ部21により得られる像I11に対して鉛直方向上側にオフセットさせることができる。すなわち、レンズ2から出射される像I11、I22内において、高密度帯を鉛直方向上側、すなわち、基本配光パターンのカットオフライン側にシフトさせることができるので、遠方視認性をさらに改善することができる。
図15〜図18は、この発明にかかる車両用前照灯システムの実施例2を示す。図中、図1〜図14と同符号は、同一のものを示す。
この実施例2における車両用前照灯システムは、前記の実施例1における車両用前照灯システムLSに使用されるレンズ2とほぼ同様のレンズ200を使用する。すなわち、この実施例2における車両用前照灯システムに使用されるレンズ200は、図15に示すように、前記の実施例1における車両用前照灯システムLSに使用されるレンズ2の左側の部分と右側の部分とを互い違いに鉛直方向にずらしたものである。すなわち、レンズ200の左側の部分200L(セクタS3、S4、S5)に対して、レンズ200の右側の部分200R(セクタS1、S2)を下側にずらす。なお、セクタS3は、大部分が左側の部分200Lに属し、一部分が右側の部分200Rに属する。また、セクタ2は、大部分が右側の部分200Rに属し、一部分が左側の部分200Lに属する。
この実施例2における車両用前照灯システムは、以上のごとき構成からなるので、スポットランプユニットSLを点灯する。すると、スポットランプユニットSLの半導体型光源1の発光体5からの光は、図16および図17に示すように、レンズ200から、発光体5の形状を左右方向に伸延させた左右方向に細長い長方形形状の像I1〜I5であって、スポット配光パターンSPL、SPRとして出射される。この像は、レンズ200の右側の部分200Rに対応する像I1、I2と、レンズ200の左側の部分200Lに対応する像I3、I4、I5とが上下にずれており、その結果、スポット配光パターンも、右側の像I1、I2に対応する右側のスポット配光パターンSPRと、左側の像I3、I4、I5に対応する左側のスポット配光パターンSPLとが上下にずれている。
そして、図17に示すスポット配光パターンSPL、SPRを上下左右方向に調整することにより、図18(B)に示す左右の部分が上下若干ずれているスポット配光パターンSPL、SPRを簡単にかつ確実に得ることができる。この図18(B)に示すスポット配光パターンSPL、SPRは、図18(A)に示すすれ違い用配光パターンLPに合成されることにより、図18(C)に示す理想の配光パターン(すれ違い用配光パターンLPとスポット配光パターンSPL、SPRとが合成された配光パターン)が得られる。この理想の配光パターンは、スポット配光パターンSPL、SPRがすれ違い用配光パターンLPの所定の位置、すなわち、左側の部分SPLが上位の水平のカットオフラインCL1より下側で、かつ、エルボー点EPおよび斜めカットオフラインCL2から右側の位置に配置され、また、右側の部部SPRが下位の水平のカットオフラインCL3よりも下側に配置されている。この位置は、遠方視認を担う部分であるから、この実施例2における車両用前照灯システムは、対向車や先行車のドライバーおよび同乗者、また、歩行者などにグレアを与えることがなく、遠方の視認性を確実に確保することができ、交通安全に確実に貢献することができる。しかも、スポット配光パターンSPL、SPRを若干上側に上げれば、モータウエイ用配光パターン(図示せず。先行車や対向車と遭遇する確率は高く、かつ、車両が高速走行するのに適した配光パターン)が得られる。
この実施例2における車両用前照灯システムは、前記の実施例1における車両用前照灯システムLSとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
なお、前記の実施例1、2においては、ヘッドランプユニットL0として、LEDを光源とするランプユニットを複数個使用するものである。ところが、この発明においては、ヘッドランプユニットして、放電灯、ハロゲンバルブ、白熱バルブなどを光源とするランプユニットを複数個もしくは1個使用しても良い。
1 半導体型光源
2、20、200、200L、200R レンズ
2A 基本レンズ
21 第1非球面レンズ部
22 第2非球面レンズ部
23 入射面
24 境界壁面
25 迷光
3 ホルダ
4 基板
5 発光体
6 光透過部材
7 放熱部材
8 成形金型
80 NC加工カッターチャック部
81 第1非球面レンズ部成形用の凹部
82 第2非球面レンズ部成形用の凹部
11 ランプハウジング
12 灯室
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線
HF−HB 前後の水平線
SL スポットランプユニット
LS 車両用前照灯システム
L0 ヘッドランプユニット
L0U 上側のヘッドランプユニット群
L0D 下側のヘッドランプユニット群
LP すれ違い用配光パターン
CL1 上位の水平のカットオフライン
CL2 斜めのカットオフライン
CL3 下位の水平のカットオフライン
EP エルボー点
F0、F1、F3、F21、F22 レンズの焦点
SP、SPL、SPR スポット配光パターン
Z−Z、Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5 光軸
Z21−Z21、Z22−Z22 軸
L1、L2 有効径
H1、H2 高さ
I1、I2、I3、I4、I5、I11、I20、I22、I30、I31 像
S1、S2、S3、S4、S5、S21、S22、S23、S24、S25 セクタ
θ、θ1 最大入射角
θ3 光の放射角
L1、L3 レンズ
T1、T3 厚さ
2、20、200、200L、200R レンズ
2A 基本レンズ
21 第1非球面レンズ部
22 第2非球面レンズ部
23 入射面
24 境界壁面
25 迷光
3 ホルダ
4 基板
5 発光体
6 光透過部材
7 放熱部材
8 成形金型
80 NC加工カッターチャック部
81 第1非球面レンズ部成形用の凹部
82 第2非球面レンズ部成形用の凹部
11 ランプハウジング
12 灯室
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線
HF−HB 前後の水平線
SL スポットランプユニット
LS 車両用前照灯システム
L0 ヘッドランプユニット
L0U 上側のヘッドランプユニット群
L0D 下側のヘッドランプユニット群
LP すれ違い用配光パターン
CL1 上位の水平のカットオフライン
CL2 斜めのカットオフライン
CL3 下位の水平のカットオフライン
EP エルボー点
F0、F1、F3、F21、F22 レンズの焦点
SP、SPL、SPR スポット配光パターン
Z−Z、Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5 光軸
Z21−Z21、Z22−Z22 軸
L1、L2 有効径
H1、H2 高さ
I1、I2、I3、I4、I5、I11、I20、I22、I30、I31 像
S1、S2、S3、S4、S5、S21、S22、S23、S24、S25 セクタ
θ、θ1 最大入射角
θ3 光の放射角
L1、L3 レンズ
T1、T3 厚さ
Claims (5)
- ヘッドランプから出射される基本配光パターンに対して、スポット配光パターンを出射する車両用灯具において、
発光体から構成されている半導体型光源と、
前記発光体からの光を、前記発光体の形状を任意の方向に伸延した像であって、前記スポット配光パターンとして出射するレンズと、
を備え、
前記レンズは、
基本レンズの光軸を前記基本レンズの焦点もしくはその近傍を中心として前記発光体の形状を伸延させたい方向に回転させ、
前記中心を中心とする前記発光体からの光の最大入射角扇を任意の立体角で複数個に分割したテンプレートにより、光軸を回転させた複数個の基本レンズ毎に該当する部分を切り取り、
切り取った部分を一体化して1つの焦点を共有する多光軸の複合レンズから構成されている、
ことを特徴とする車両用灯具。 - 前記レンズは、有効径が異なる凸状の第1非球面レンズ部と第2非球面レンズ部とから一体に構成されており、
有効径が小さい前記第1非球面レンズ部は、有効径が大きい前記第2非球面レンズ部により取り囲まれている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。 - 前記基本配光パターンは、上位の水平のカットオフラインと斜めのカットオフラインと下位の水平のカットオフラインとを有するすれ違い用の配光パターンであり、
前記発光体は、4つの直線の辺からなる矩形形状をなし、
前記レンズは、前記発光体からの光を、前記発光体の矩形形状を前記上位の水平カットオフラインに沿って左右に伸延させた長方形形状の像であって、前記上位の水平カットオフラインよりも下側でかつ前記斜めのカットオフラインと前記下位のカットオフラインとの交点から左側または右側に位置する前記スポット配光パターンとして出射する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。 - 前記レンズは、左側の部分と右側の部分とが互い違いに鉛直方向にずれており、
前記スポット配光パターンは、左側の部分と右側の部分とが互い違いに鉛直方向にずれている、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。 - 基本配光パターンとスポット配光パターンとをそれぞれ出射する車両用前照灯装置において、
前記基本配光パターンを外部に出射するヘッドランプと、
前記スポット配光パターンを外部に出射する前記の請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯装置。
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JPS60230601A (ja) * | 1984-05-01 | 1985-11-16 | Masayasu Negishi | 膜処理方法 |
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- 2006-01-23 EP EP06001343A patent/EP1686313B1/en not_active Expired - Fee Related
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