JP2006205557A - 平版印刷版用支持体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Feを0.2〜0.5質量%、Siを0.01〜0.2質量%、Cuを0.001〜0.01質量%、Znを0.02質量%を超えて0.08質量%以下、Tiを0.002〜0.04質量%、およびMgを0.020質量%を超えて0.05質量%未満含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金板に、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って、平版印刷版用支持体を得る。
【選択図】なし
Description
このため、印刷を一時停止して再開したときに、正常な印刷が行われるまで何枚か印刷する必要が生じてしまい、印刷用紙の無駄が生じるなどの不都合がある。この不都合は、塩酸を含む酸性溶液中で電気化学的粗面化が施された平版印刷版に、特に顕著であることが判明している。なお、以下では、印刷を一時停止して再開したときに生じる損紙の枚数を放置払い性ともいい、損紙の枚数が少ないことを放置払い性が良好であるという。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
また、特許文献5および6に記載のアルミニウム板は、使用後にリサイクルするために溶解して、新たなアルミニウム原材料とするときに、過剰なMgやMnが含まれるために、Alの純度が低いものにしかリサイクルできない。
また、特開2003−80857号公報の平版印刷版用支持体および平版印刷版原版は、製造工程で切断する際に、その切り口近傍において陽極酸化皮膜に割れが生じる。陽極酸化皮膜に割れが生じて露光後にその部分が非画像部となった場合、陽極酸化皮膜の割れにインキが付着し、これが起点となって汚れの原因になる。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
[平版印刷版用支持体]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体には、アルミニウム合金が用いられる。本発明では、アルミニウム合金における必須の合金成分は、Al、Fe、Si、Cu、Zn、Ti、Mgである。
金属間化合物としては、Al3Fe、Al6Fe、AlFeSi系化合物、AlFeSiMn系化合物等が代表的である。
本発明においては、Feが、0.2〜0.5質量%の範囲で含有される。Feの含有量は、0.25〜0.40質量%であるのが好ましく、0.25〜0.35質量%であるのがより好ましい。
金属間化合物としては、AlFeSi系化合物、AlFeSiMn系化合物、Mg2Si等が代表的である。
本発明においては、Siが、0.01〜0.2質量%の範囲で含有される。Siの含有量は、0.05〜0.15質量%であるのが好ましく、0.05〜0.10質量%であるのがより好ましい。
本発明においては、Tiの含有量が0.002〜0.04質量%であれば、本発明の効果を損なわない。
本発明においては、Cuは、0.001〜0.01質量%の範囲で含有される。Cuの含有量は、0.001〜0.008質量%であるのが好ましく、0.001〜0.005質量%であるのがより好ましい。
本発明においては、Znが、0.02質量%を超えて0.08質量%以下の範囲で含有される。Znの含有量は、0.03〜0.08質量%であるのが好ましく、0.04〜0.06質量%であるのがより好ましい。
本発明においては、Mgが、0.020質量%を超えて0.05質量%以下の範囲で含有される。Mgの含有量は、0.025〜0.05質量%であるのが好ましく、0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。
Mgの含有量が上述した範囲である場合には、アルミニウム板を溶解して、新たなアルミニウム原材料を作成した場合に、新たなアルミニウム原材料中のMgの含有量とAlの含有量とが少なくなる。したがって、アルミニウム板を、Alの純度が高いものにもリサイクルできる。
これに対して、本発明者は、検討を重ね、Cuの含有量が多くなるに従って塩酸電解の処理効率が低下し、ZnおよびMgの含有量が多くなるに従って、塩酸電解の処理効率が向上することを見出した。
また、本発明者は、さらなる検討を重ね、Cu、Zn、Mgの含有量が上述した範囲である場合には、塩酸電解の処理効率の低減が抑制されることを見出した。
Bは、含有量が0.05質量%以下であれば、本発明の効果を損なわない。
これらの元素は、比較的微量の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。効果を示すために必要な含有量は、それぞれ1ppm以上である。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を100ppm以下とするが、コストを抑制する観点から10ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、1〜100ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
これらの元素は、いずれも極微量の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。効果を示すために必要な含有量は、0.1ppm以上である。
これらの元素は、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を10ppm以下とするが、コストを抑制する観点から5ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、0.1〜10ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
これらの元素は、10ppm以上の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を500ppm以下とするが、コストを抑制する観点から100ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、10〜500ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
これらの元素は、50ppm以上の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を1000ppm以下とするが、コストを抑制する観点から500ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、50〜1000ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
DC鋳造法を用いる場合には、1〜300℃/秒の範囲の冷却速度で凝固される。冷却速度が1℃/秒未満であると、粗大な金属間化合物が多数形成される場合があるので好ましくない。
連続鋳造法としては、双ロール法および3C法に代表される冷却ロールを用いる方法と、双ベルト法およびアルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトまたは冷却ブロックを用いる方法とが工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、100〜1000℃/秒の範囲の冷却速度で凝固される。一般的に連続鋳造法は、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミニウムマトリックスに対する合金成分の固溶度を高くできるという特徴がある。連続鋳造法に関しては、例えば、特開平3−79798号公報、特開平5−201166号公報、特開平5−156414号公報、特開平6−262203号公報、特開平6−122949号公報、特開平6−210406号公報および特開平6−262308号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。
これらの方法により得られた連続鋳造圧延板は、DC鋳造の場合において述べたように、冷間圧延、中間焼鈍、平面性改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、板厚0.1〜0.7mmに仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍および冷間圧延の条件については、例えば、特開平6−220593号公報、特開平6−210308号公報、特開平7−54111号公報および特開平8−92709号公報に記載されている方法を用いることができる。
以下、アルミニウム板に施される各種の表面処理について説明する。
上記アルミニウム板は、好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。
本発明によれば、塩酸電解液を用いた電気化学的粗面化を高速で行うときにも、処理効率が維持される。塩酸電解液は、0.5〜30g/Lのものを用いることが好ましく、3〜20g/Lのものを用いることがより好ましく、5〜15g/Lのものを用いることがさらに好ましい。また、温度は、10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
このように砂目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化学的にエッチングされるのが好ましい。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。
アルカリエッチング処理の条件は、Alの溶解量が0.05〜5.0g/m2となるような条件で行うのが好ましく、特に、電解粗面化処理の後に行う場合は、Alの溶解量が0.5g/m2以下となるような条件で行うのが好ましい。また、他の条件も、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましく、また、アルカリの温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
アルカリエッチング処理は、1種の方法に限らず、複数の工程を組み合わせることができる。
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。この際、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアは、画像記録層との密着性を向上させる効果がある一方、マイクロポアの径が大きすぎると感度低下を生じさせる場合があるため、適度な大きさのマイクロポアが必要である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸を主成分とし、必要に応じて、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の組み合わせた水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すことで、アルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
上記のように処理して得られる陽極酸化皮膜が形成された平版印刷版用支持体を、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を用いて浸せき処理する。
処理条件は、特に限定されないが、例えば、濃度0.01〜5.0質量%の水溶液を用いて、温度5〜40℃で、1〜60秒間浸せきし、その後、流水により洗浄する。より好ましい浸せき処理温度は10〜40℃であり、より好ましい浸せき時間は2〜20秒間である。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
本発明の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けることによって、平版印刷版が作製される。画像記録層としては、例えば、以下の感光性組成物を含有する材料が、好適に用いられる。
本発明の平版印刷版用支持体上に形成される画像記録層は、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物(以下、単に「感光性組成物」ともいう。)を含有する。
画像記録層に含まれる赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物は、少なくとも、(A)アルカリ可溶性高分子化合物、(B)該アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、および(C)光を吸収して発熱する化合物を含有し、更に必要に応じて、(D)その他の成分を含有する。
本発明に使用されるアルカリ可溶性高分子化合物は、特に限定されず従来公知のものを用いることができるが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、および(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であるのが好ましい。例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマーおよび/または活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合質量比は50:50から5:95の範囲にあるのが好ましく、40:60から10:90の範囲にあるのがより好ましい。
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000であるものが好ましい。
この(B)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、(A)アルカリ可溶性高分子化合物との相溶性が良好であり、均一な塗布液を形成し得るとともに、(A)成分との相互作用により、該高分子化合物のアルカリ可溶性を抑制する機能を有する化合物を指す。
また、この化合物は加熱によりこの溶解性低下作用が消滅するが、(B)成分自体が加熱により分解する化合物である場合、分解に十分なエネルギーがレーザの出力や照射時間等の条件によって付与されないと、溶解性の抑制作用の低下が不十分となり、感度が低下するおそれがあるため、(B)成分の熱分解温度は150℃以上であることが好ましい。
本発明における光を吸収して発熱する化合物とは、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域があり、この範囲の波長の光において、光/熱変換能を発現するものを指す。具体的には、この波長域の光を吸収し熱を発生する種々の顔料または染料を用いることができる。前記顔料としては、市販の顔料またはカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
これらの染料または顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが好ましい。
また、染料または顔料とアルカリ可溶性高分子化合物は同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
本発明においては、(B)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して発熱する化合物とに代えて、双方の特性を有する一つの化合物(以下、「(B+C)成分」ともいう。)を含有することもできる。
本発明に用いられる前記感光性組成物には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類を併用することもできる。
環状酸無水物としては、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4´−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4´,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4´,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3´,5´−テトラメチルトリフェニルメタンが挙げられる。
前記非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
前記両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の前記感光性組成物の固形分中に占める割合は、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例示される。具体的には、特開昭50−36209号公報、特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組み合わせや、特開昭53−36223号公報、特開昭54−74728号公報、特開昭60−3626号公報、特開昭61−143748号公報、特開昭61−151644号公報および特開昭63−58440号公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
これらの染料は、前記感光性組成物の固形分に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の割合で前記感光性組成物中に添加することができる。
更に、本発明に用いられる前記感光性組成物中には必要に応じ、キノンジアジド類、ジアゾ化合物等の光により分解する化合物を添加してもよい。これらの化合物の添加量は、前記感光性組成物の固形分に対し、1〜5質量%であるのが好ましい。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物が含まれる画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が挙げられる。特願9−264309号出願の[0020]〜[0042]に記載のような酸基とオニウム基を含む共重合ポリマーとその形成方法も好適に用いることができる。
(実施例1〜6、比較例1〜6)
第1表に示す組成のアルミニウム合金の溶湯をろ過した後、DC鋳造法により、厚さ500mm、幅1200mmの鋳魂を作製した。アルミニウム合金の組成は、99.7%地金を溶解した後、各元素を含むAl合金(母合金という)または各元素からなる合金を溶解することで調整を行った。得られた鋳塊の表面の平均10mmを面削機で削り取った後、550℃で約5時間加熱して、均熱化処理を行った。温度が400℃まで低下したところで、熱間圧延機を用いて、厚さ2.7mmの圧延板とし、更に、連続焼鈍機を使って500℃で熱処理を行った後、冷間圧延により、厚さ0.24mmとして、アルミニウム合金板(ベース合金1〜12)を得た。このアルミニウム合金板を幅1030mmにした後、以下に示す粗面化処理と陽極酸化処理とを施し、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例6の平版印刷版用支持体を得た。
第1表に示す組成のアルミニウム合金の代わりに、第1表中ベース合金6の組成に、さらに第3表に示す特定元素を、第3表に示す含有量となるように添加した組成のアルミニウム合金を用いた以外は、実施例1〜6および比較例1〜6と同じようにアルミニウム合金板を得た。このアルミニウム合金板を幅1030mmにした後、以下に示す粗面化処理と陽極酸化処理とを施し、実施例7〜実施例52の平版印刷版用支持体を得た。
粗面化処理は、以下の(b)〜(f)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理の後には、スプレーによる水洗を行い、また、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
アルミニウム板を、カセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液(液温70℃)をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は5g/m2であった。
つぎに、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、濃度300g/L、液温35℃であった。デスマット処理は、このデスマット液をスプレーで4秒間吹き付けて行った。
液温50℃、塩酸濃度10g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加して、アルミニウムイオン濃度を5g/Lに調整した電解液を用いた。
サイン波交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。交流電流の周波数は60Hz、電流のゼロからピークに達するまでの時間Tpは0.8msecであった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピークがアルミニウム板のアノード反応時で60A/dm2であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で400C/dm2であった。
アルミニウム板を、カセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液(液温45℃)をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は0.5g/m2であった。
硫酸濃度300g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液(液温60℃)を用い、4秒間デスマット処理を行った。前記デスマット処理に用いた硫酸水溶液は、陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
粗面化処理が施されたアルミニウム板に、液温35℃、濃度170g/Lの硫酸液中で、電流密度が25A/dm2になるように直流電解を行って陽極酸化皮膜を設けた。この際、陽極酸化皮膜が2.5g/m2となるように通電時間を調整した。
実施例1〜52で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を走査型電子顕微鏡(JSM−5500、日本電子社製。以下同じ。)で倍率10000倍で観察したところ、その表面に直径0.1〜0.4μmの微細な凹凸が均一かつ緻密に生成していた。
これに対して、比較例1〜6で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を同様にして観察したところ、その表面に凹凸が生成していたが、実施例1〜6の場合に比べて、直径0.1μm未満の極小ピットや、直径0.5μm以上の粗大ピットが形成されており、不均一であった。
上記のようにして得られたアルミニウム支持体(平版印刷版用支持体)上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成した。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100 g
・水 1 g
・カプリン酸 0.03 g
・後述する特定の共重合体1 0.75 g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量3,500、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.25 g
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03 g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.017g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製)
0.05 g
・γ−ブチルラクトン 10 g
・メチルエチルケトン 10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1 g
かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた500mL容の三つ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36mol)、クロロギ酸エチル39.lg(0.36mol)およびアセトニトリル200mLを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物をかくはんした。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36mol)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物をかくはんした。
得られた特定の共重合体1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、53,000(ポリスチレン標準)であった。
平版印刷版の耐刷性、耐苛酷インキ汚れ性、疲労強度、陽極酸化皮膜の割れ、放置払い性を、下記の方法で評価した。なお、疲労強度とは、疲労破断の生じやすさをいい、疲労破断が生じやすい場合には、疲労強度が弱いといい、疲労破断が生じにくい場合には、疲労強度が強いという。
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000)
0.5 質量%
・水 96.15質量%
結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。
◎:60000枚以上
△:40000枚以上50000枚未満
上記(I)と同様にして得られた平版印刷版を、ハマダ社製の900CDXで、大日本インキ工業株式会社製のF−Values(N)墨のインキを用い、湿し水としてKClを1質量%添加した富士写真フイルム株式会社製のIF−102 4%を用いて印刷し、1000枚印刷後、印刷機上で30分間放置することを5回繰り返し、印刷物の非画像部に生じた点状あるいは円環状の汚れの程度を目視で確認し、◎、○、△、△×、×の5段階で評価した。結果を第2表および第3表に示す。なお、◎、○または△であることが、実用上好ましい。
平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで、画像部の面積が全面積の50%となるように網点状の画像部を前面に焼き付けた。次いで、上記(I)と同様に現像し、平版印刷版を得た。
得られた平版印刷版を切断して、幅20mm、長さ100mmのサンプルを各10枚切り出した。
次いで、各サンプルに、断面積あたりの張力が1.0kg/mm2となるように、軽度の張力をかけ、一端を固定した上で、他端の振動が5mm程度となるように振動を与え、破断するまでの振動回数によって、疲労強度を測定した。
結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。なお、◎、○または△であることが、実用上好ましい。
◎:40000回以上
○:30000回以上40000回未満
△:20000回以上30000回未満
△×:10000回以上20000回未満
×:5000回以上10000回未満
最初に、各平版印刷版原版を裁断した。
次いで、裁断の切り口近傍の画像記録層を、γ−ブチルラクトンを用いて除去し、露出した陽極酸化皮膜の割れの程度を、目視で確認し、顕著な割れが生じている場合を×、実用上問題がない場合を○と評価した。結果を第2表および第3表に示す。
上記(I)と同様にして得られた平版印刷版を、ハイデルベルク社製のSOR−M印刷機で、大日本インキ工業化学社製のDIC−GEOS(H)墨のインキを用いて印刷後、印刷機上で1時間放置して、印刷を再開させたときに生じた損紙の枚数により、放置払い性を評価した。結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。
○:30枚未満
△:30枚以上60枚未満
△×:60枚以上
また、Mgの含有量が少なすぎる場合(比較例2)は、疲労強度が不十分であった。
また、Znの含有量が少なすぎる場合(比較例3)は、放置払い性が劣り、疲労強度が不十分であり、また、陽極酸化皮膜の割れも発生していた。
また、Siの含有量が多すぎる場合(比較例4)は、耐苛酷インキ汚れ性が劣っていた。これは、Si量の含有量が多すぎるために、汚れの起点が増えたためと考えられる。
また、Mgの含有量が少なすぎ、かつZnの含有量が非常に少なすぎる(0.003質量%以下である)場合(比較例5)は、放置払い性が劣り、疲労強度が不十分であった。なお、比較例5の平版印刷版用支持体の組成は、特開2003−82426号公報の実施例の表3中ベース合金1である。
また、Znが非常に少なすぎ、Mgの含有量が多すぎる場合(比較例6)は、放置払い性が劣っており、また、陽極酸化皮膜の割れも生じていた。なお、比較例6の平版印刷版用支持体の組成は、特開2003−80857号公報の実施例の表3中試料ベース合金2である。特開2003−80857号公報の実施例にはZnの含有量についての記載がないが、通常の方法でAl99.7%の地金を用いて作製したところ、Znの含有量は0.003質量%以下であった。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
Claims (3)
- Feを0.2〜0.5質量%、Siを0.01〜0.2質量%、Cuを0.001〜0.01質量%、Znを0.02質量%を超えて0.08質量%以下、Tiを0.002〜0.04質量%、およびMgを0.020質量%を超えて0.05質量%未満含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金板に、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体。
- 前記アルミニウム板は、更に、下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種を下記含有量範囲で含有している、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。 - 表面に、直径0.1〜0.4μmのピットが形成されている、請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
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