JP2006205557A - 平版印刷版用支持体 - Google Patents

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Abstract

【課題】放置払い性に優れ、疲労破断が生じにくい平版印刷版原版を得ることができる平版印刷版用支持体の提供。
【解決手段】Feを0.2〜0.5質量%、Siを0.01〜0.2質量%、Cuを0.001〜0.01質量%、Znを0.02質量%を超えて0.08質量%以下、Tiを0.002〜0.04質量%、およびMgを0.020質量%を超えて0.05質量%未満含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金板に、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って、平版印刷版用支持体を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版用支持体に関し、詳しくは、放置払い性が良好で疲労破断が生じにくい平版印刷版用支持体に関する。
アルミニウム板を支持体(平版印刷版用支持体)とする感光性平版印刷版原版はオフセット印刷に幅広く使用されている。平版印刷版原版は、一般的に、アルミニウム板の表面に、機械的粗面化処理や電気化学的粗面化処理などの粗面化処理を施し、更に陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成した後、感光液を塗布し乾燥させて感光層(以下、画像記録層ともいう。)を形成することによって製造される。平版印刷版原版は、画像に露光された後、現像液によって現像され、ポジ型の平版印刷版原版では露光部が、ネガ型の平版印刷版原版では非露光部が除去され、製版されて平版印刷版となる。
このようにして得られた平版印刷版は、その後、印刷機の版胴に取り付けられ、その表面にインクと湿し水が供給され、印刷に供されることで、感光層の残った部分は親インク性を示して画像部となり、感光層が除去された部分は親水性を示して非画像部となって、ブランケット胴に転写した上で紙に印刷される。
印刷をするときには印刷を一時停止する場合があるが、この場合、平版印刷版は、版胴に取り付けられた状態で放置され、雰囲気中の汚染の影響などにより、非画像部が汚れてしまう。
このため、印刷を一時停止して再開したときに、正常な印刷が行われるまで何枚か印刷する必要が生じてしまい、印刷用紙の無駄が生じるなどの不都合がある。この不都合は、塩酸を含む酸性溶液中で電気化学的粗面化が施された平版印刷版に、特に顕著であることが判明している。なお、以下では、印刷を一時停止して再開したときに生じる損紙の枚数を放置払い性ともいい、損紙の枚数が少ないことを放置払い性が良好であるという。
また、平版印刷版は、版胴に取り付けられる際に、その両端が折り曲げられ、折り曲げられた部分が、それぞれ版胴のくわえ部、くわえ尻部と呼ばれる2箇所のクランプに、平版印刷版を版胴に密着させるように張力を加えた上で固定される。このとき、両端の折り曲げられた部分で、疲労破断が生じやすい。
ところで、平版印刷版では、アルミニウム板に添加する微量成分を調整することによる各種性能の向上が図られている。この方法は、特定の成分をアルミニウム合金に極微量だけ添加するものであるため、平版印刷版原版の物理特性に何ら影響を与えないという点で優れている。
例えば、本出願人は、特許文献1において、アルミニウム板に、Fe:0.05〜0.5質量%、Si:0.03〜0.15質量%、Cu:0.006〜0.03質量%、Ti:0.010〜0.040質量%を含有させ、さらに、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Nb、Ta、Mo、W、Tc、Re、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、C、Ge、P、As、S、Se、TeおよびPoからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を1〜100ppm含有させることで、アルミニウム板の電気化学的粗面化処理の効率を向上させている。
また、本出願人は、特許文献2において、上記元素に加えて、アルミニウム板にMgを10〜200ppm含有させることにより、電気化学的粗面化処理の効率を更に向上させて、これによりレーザ直描型の平版印刷版において画像記録層と平版印刷版用支持体との密着性を向上させ、耐刷性を向上させている。
また、本出願人は、特許文献3において、上記元素を含有させることに加えて、アルミニウム板の表層近傍の深さ方向のCu濃度と、Cu含有量、Si含有量、およびTi含有量の関係とを限定することにより、電気化学的粗面化処理の効率と耐刷性とを向上させている。
また、本出願人は、特許文献4において、平版印刷版用支持体として、Fe含有量が0.1〜1質量%、Si含有量が0.02〜1質量%、Cu含有量が0.2質量%以下、Mg含有量が0.1質量%以下、Mn含有量が0.1質量%以下であり、さらに、下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種を下記含有量範囲で含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム板を用いることで、耐苛酷インキ汚れ性を向上させている。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
ここで、「苛酷インキ汚れ」とは、例えば特開2002−103842号公報の実施例に記載されている評価方法であり、印刷を何度も中断しつつ行った場合に、平版印刷版の非画像部表面部分にインキが付着しやすくなった結果、印刷された紙等に表れる点状または円環状の汚れをいう。
また、特許文献5には、重量%で、Fe:0.1〜0.6%、Si:0.01〜0.2%、Cu:0.001〜0.01%、Zn:0.01〜0.08%、Ti:0.002〜0.03%、残部がAlおよび不可避不純物からなり、金属組織中に複数の金属間化合物粒子を有し、前記金属間化合物の粒径が0.1μm以上、1.0μm未満の粒子の含有量をD、1.0μm以上の粒子の含有量をEとした場合に、(D/E)×100の値が0.20以上であることを特徴とする印刷版用アルミニウム合金板について記載されている。
また、特許文献6には、重量%でFe:0.11〜0.60%、Si:0.01〜0.20%、Ni:0.005〜0.075%、Zn:0.005〜0.075%、Cu:0.05%未満、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、Zn(%)≦0.08−Ni(%)、Fe(%)≧0.1+Si(%)の関係を満たすとともに、晶・析出物の円相当径をd、個数をnとすると、0.01≦d≦2(μm:2×10-6m)の晶・析出物がそのマトリックス中に1×103≦n≦3×105(個/mm2)存在することを特徴とする印刷版用アルミニウム合金支持体について記載されている。
特開2000−37965号公報 特開2001−162958号公報 特開2002−301878号公報 特開2003−82426号公報 特開2003−253366号公報 特開2002−219662号公報
しかしながら、これらの微量成分の調整に対する提案は、放置払い性の改善や疲労破断の低減を目的としたものではないため、放置払い性の改善や疲労破断の低減を十分に実現できるものではない。
また、特許文献5および6に記載のアルミニウム板は、使用後にリサイクルするために溶解して、新たなアルミニウム原材料とするときに、過剰なMgやMnが含まれるために、Alの純度が低いものにしかリサイクルできない。
一方、本出願人は、特開2003−80857号公報において、疲労破断を生じにくくするために、MgおよびMnのうち少なくとも1種を、Mg:0.1〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.5質量%の範囲で含有し、Fe含有量が1質量%以下、Si含有量が0.5質量%以下、Cu含有量が0.2質量%以下であり、さらに、上記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種類を上記含有量範囲で含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム板に、粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られる平版印刷版用支持体を提案している。
また、特開2004−250794号公報には、Mg:0.10〜0.30%を含有させることによりアルミニウム板の強度を高める提案がされている。
しかしながら、上述のアルミニウム板も、過剰なMgやMnが含まれるために、Alの純度が低いものにしかリサイクルできない。
また、特開2003−80857号公報の平版印刷版用支持体および平版印刷版原版は、製造工程で切断する際に、その切り口近傍において陽極酸化皮膜に割れが生じる。陽極酸化皮膜に割れが生じて露光後にその部分が非画像部となった場合、陽極酸化皮膜の割れにインキが付着し、これが起点となって汚れの原因になる。
したがって、本発明は、アルミニウム板に特定の成分を極微量添加することにより、放置払い性が良好であり、疲労破断が生じにくく、かつ陽極酸化皮膜の割れが生じにくい平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、アルミニウム板に特定の合金成分を極微量添加することで、放置払い性が良好であり、かつ疲労破断が生じにくく、かつ陽極酸化皮膜の割れが生じにくい平版印刷版用支持体を得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
(1)Feを0.2〜0.5質量%、Siを0.01〜0.2質量%、Cuを0.001〜0.01質量%、Znを0.02質量%を超えて0.08質量%以下、Tiを0.002〜0.04質量%、およびMgを0.020質量%を超えて0.05質量%未満含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金板に、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体。
(2)前記アルミニウム板は、更に、下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種を下記含有量範囲で含有している、前記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
(3)表面に、直径0.1〜0.4μmのピットが形成されている、前記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
本発明によれば、平版印刷版としたときに、放置払い性に優れ、疲労破断が生じにくく、また、陽極酸化皮膜の割れが生じにくい平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体には、アルミニウム合金が用いられる。本発明では、アルミニウム合金における必須の合金成分は、Al、Fe、Si、Cu、Zn、Ti、Mgである。
Feは、新地金においても0.1〜0.2質量%前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があるが、上記範囲で含有している場合には、圧延途中に割れが発生しにくくなり、かつ、機械的強度が十分に強く、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に版切れを起こしにくくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしにくくなる。
金属間化合物としては、Al3Fe、Al6Fe、AlFeSi系化合物、AlFeSiMn系化合物等が代表的である。
本発明においては、Feが、0.2〜0.5質量%の範囲で含有される。Feの含有量は、0.25〜0.40質量%であるのが好ましく、0.25〜0.35質量%であるのがより好ましい。
Siは、新地金においても0.02〜0.1質量%前後含有される元素である。Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、または、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。また、平版印刷版用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。本発明者らの知見によれば、単体Siが過剰の場合、耐苛酷インキ汚れ性が低下する。また、Si含有量は、アルミニウム板の電気化学的粗面化性に影響を及ぼす。具体的には、Siが含有されることにより、アルミニウム板は、比抵抗が上がるので、電気化学的粗面化が均一に行われる。
金属間化合物としては、AlFeSi系化合物、AlFeSiMn系化合物、Mg2Si等が代表的である。
本発明においては、Siが、0.01〜0.2質量%の範囲で含有される。Siの含有量は、0.05〜0.15質量%であるのが好ましく、0.05〜0.10質量%であるのがより好ましい。
Tiは、通常、結晶微細化材として添加される元素である。Tiは、主として、Alとの金属間化合物またはTiB2として添加される。Tiが過剰に含有されると、アルミニウム板の電気化学的粗面化性に影響を及ぼすことがある。
本発明においては、Tiの含有量が0.002〜0.04質量%であれば、本発明の効果を損なわない。
Cuは、比較的アルミニウム中に固溶しやすい。Cuは、アルミニウム板の電気化学的粗面化性に大きく影響を及ぼす。
本発明においては、Cuは、0.001〜0.01質量%の範囲で含有される。Cuの含有量は、0.001〜0.008質量%であるのが好ましく、0.001〜0.005質量%であるのがより好ましい。
Znは、比較的アルミニウム中に固溶しやすい。Znは、アルミニウム板の電気化学的粗面化性に影響を及ぼす。また、本発明者らの知見によれば、アルミニウム板にZnが含有されることにより、放置払い性が向上する。
本発明においては、Znが、0.02質量%を超えて0.08質量%以下の範囲で含有される。Znの含有量は、0.03〜0.08質量%であるのが好ましく、0.04〜0.06質量%であるのがより好ましい。
Mgは、アルミニウム板の耐熱軟化性および疲労強度を含む機械的強度を向上させることができる。また、Mgは、比較的アルミニウム中に固溶しやすく、Siと金属間化合物を形成する。Mgは、アルミニウム板の電気化学的粗面化に大きく影響を及ぼす。
本発明においては、Mgが、0.020質量%を超えて0.05質量%以下の範囲で含有される。Mgの含有量は、0.025〜0.05質量%であるのが好ましく、0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。
Mgの含有量が上述した範囲である場合には、アルミニウム板を溶解して、新たなアルミニウム原材料を作成した場合に、新たなアルミニウム原材料中のMgの含有量とAlの含有量とが少なくなる。したがって、アルミニウム板を、Alの純度が高いものにもリサイクルできる。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、Znの含有量と、Mgの含有量と、Cuの含有量が上記範囲である場合に、放置払い性が向上し、疲労破断が生じにくくなり、陽極酸化皮膜が割れにくくなることを見出した。また、後述する塩酸を含有する酸性水溶液中での電気化学的粗面化(以下、塩酸電解ともいう。)を施すことにより、表面に0.1〜0.4μmのピットが生成され、放置払い性が良好なものとなる。
また、Al、Fe、Si、Cu、Zn、TiおよびMgを含有するアルミニウム板に、塩酸電解を施すときに、高速度で行うと、処理効率が低下する。
これに対して、本発明者は、検討を重ね、Cuの含有量が多くなるに従って塩酸電解の処理効率が低下し、ZnおよびMgの含有量が多くなるに従って、塩酸電解の処理効率が向上することを見出した。
また、本発明者は、さらなる検討を重ね、Cu、Zn、Mgの含有量が上述した範囲である場合には、塩酸電解の処理効率の低減が抑制されることを見出した。
なお、本発明においては、Bが含有されていてもよい。Bは、結晶微細化材として、Tiとともに添加されることがある。
Bは、含有量が0.05質量%以下であれば、本発明の効果を損なわない。
また、本発明においては、アルミニウム板が、下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種を、特定の含有量で含有していることが好ましい。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種以上の元素。
これらの元素は、比較的微量の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。効果を示すために必要な含有量は、それぞれ1ppm以上である。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を100ppm以下とするが、コストを抑制する観点から10ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、1〜100ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種以上の元素。
これらの元素は、いずれも極微量の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。効果を示すために必要な含有量は、0.1ppm以上である。
これらの元素は、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を10ppm以下とするが、コストを抑制する観点から5ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、0.1〜10ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種以上の元素。
これらの元素は、10ppm以上の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を500ppm以下とするが、コストを抑制する観点から100ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、10〜500ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種以上の元素。
これらの元素は、50ppm以上の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示す。
また、含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、含有量を1000ppm以下とするが、コストを抑制する観点から500ppm以下とするのが好ましい。
したがって、含有量は、50〜1000ppmである。なお、アルミニウム板がこれらの元素のうち2種以上を含有する場合は、少なくとも1種が上記範囲を満たしていればよい。
アルミニウム板の残部は、Alと不可避不純物からなる。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
上記合金成分の組成は、アルミニウム地金を溶解した後、各元素を含有するアルミニウム合金(母合金)または各元素からなる合金を溶解することで、所定の合金成分含有量に調整することができる。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理においては、溶湯中に混入している水素等の不要ガスや、固形の不純物を除去する。不要ガスを除去する清浄化処理としては、例えば、フラックス処理;アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理が挙げられる。また、固形の不純物を除去する清浄化処理としては、例えば、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理が挙げられる。また、脱ガス処理とフィルタリング処理とを組み合わせた清浄化処理を行うこともできる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐため、実施されるのが好ましい。溶湯のフィルタリング処理としては、例えば、特開平6−57342号公報、特開平3−162530号公報、特開平5−140659号公報、特開平4−231425号公報、特開平4−276031号公報、特開平5−311261号公報および特開平6−136466号公報に記載されている方法を用いることができる。また、溶湯の脱ガス処理としては、例えば、特開平5−51659号公報、特開平5−51660号公報、特開平5−49148号公報および特開平7−40017号公報に記載されている方法を用いることができる。
ついで、アルミニウム合金溶湯を、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる鋳造法、および、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる鋳造法のいずれかにより鋳造する。
DC鋳造法を用いる場合には、1〜300℃/秒の範囲の冷却速度で凝固される。冷却速度が1℃/秒未満であると、粗大な金属間化合物が多数形成される場合があるので好ましくない。
連続鋳造法としては、双ロール法および3C法に代表される冷却ロールを用いる方法と、双ベルト法およびアルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトまたは冷却ブロックを用いる方法とが工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、100〜1000℃/秒の範囲の冷却速度で凝固される。一般的に連続鋳造法は、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミニウムマトリックスに対する合金成分の固溶度を高くできるという特徴がある。連続鋳造法に関しては、例えば、特開平3−79798号公報、特開平5−201166号公報、特開平5−156414号公報、特開平6−262203号公報、特開平6−122949号公報、特開平6−210406号公報および特開平6−262308号公報に記載されている方法を用いることができる。
DC鋳造法の場合、板厚300〜800mmの鋳塊が製造されるので、常法に従い、面削により表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmが切削される。その後、必要に応じて、均熱化処理が行われる。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。1時間未満の場合は、均熱化処理の効果が不十分となることがある。金属間化合物の安定化の必要がない場合、均熱化処理は省略することができる。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム合金板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。冷間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。その条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10℃/秒以上の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。熱間圧延終了時点で、結晶組織が微細であれば、中間焼鈍は省略してもよい。冷間圧延に関しては、例えば、特開平6−210308号公報に記載されている方法を用いることができる。
所定の厚さ、例えば、0.1〜0.7mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。
また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。
連続鋳造の場合、例えば、双ロール法等の冷却ロールを用いる方法によれば、板厚1〜10mmの鋳造板を直接連続鋳造圧延することができ、熱間圧延の工程を省略することができるという利点がある。また、双ベルト法等の冷却ベルトを用いる方法によれば、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを用いて連続的に圧延することにより、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの方法により得られた連続鋳造圧延板は、DC鋳造の場合において述べたように、冷間圧延、中間焼鈍、平面性改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、板厚0.1〜0.7mmに仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍および冷間圧延の条件については、例えば、特開平6−220593号公報、特開平6−210308号公報、特開平7−54111号公報および特開平8−92709号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明の平版印刷版用支持体は、上記アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して特定の表面形状を設けて得られるが、この平版印刷版用支持体の製造工程には、粗面化処理および陽極酸化処理以外の各種の工程が含まれていてもよい。
以下、アルミニウム板に施される各種の表面処理について説明する。
<粗面化処理(砂目立て処理)>
上記アルミニウム板は、好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。
ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択することによって、平版印刷版用支持体表面の長い波長成分(大波)の凹部の平均深さを制御することができる。ブラシグレイン法により得られる凹部は、平均波長が2〜30μmであるのが好ましく、平均深さが0.3〜1μmであるのが好ましい。
電気化学的粗面化方法としては、塩酸電解液中または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法が好ましい。好ましい電流密度は、陽極時電気量50〜400C/dm2である。更に具体的には、例えば、0.1〜50質量%の塩酸または硝酸を含む電解液中で、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100〜400C/dm2の条件で直流または交流を用いて行われる。電解粗面化処理によれば、表面に微細な凹凸を付与することが容易であるため、画像記録層と支持体との密着性を高くすることができる。
本発明によれば、塩酸電解液を用いた電気化学的粗面化を高速で行うときにも、処理効率が維持される。塩酸電解液は、0.5〜30g/Lのものを用いることが好ましく、3〜20g/Lのものを用いることがより好ましく、5〜15g/Lのものを用いることがさらに好ましい。また、温度は、10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
また、本発明では、塩酸電解液を用いた電気化学的粗面化を行うことにより、アルミニウム板の表面に、平均直径約0.1〜0.4μmのピットが生成される。このようなピットが設けられることにより、平版印刷版の放置払い性が良好になる。
<アルカリエッチング処理>
このように砂目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化学的にエッチングされるのが好ましい。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。
アルカリエッチング処理の条件は、Alの溶解量が0.05〜5.0g/m2となるような条件で行うのが好ましく、特に、電解粗面化処理の後に行う場合は、Alの溶解量が0.5g/m2以下となるような条件で行うのが好ましい。また、他の条件も、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましく、また、アルカリの温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
アルカリエッチング処理は、1種の方法に限らず、複数の工程を組み合わせることができる。
アルカリエッチング処理は、1段階の処理に限られない。例えば、機械的粗面化処理を施した後に、アルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理(後述するスマット除去のための酸洗い)を行い、更に電解粗面化処理を施した後に、再びアルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理を行うなど、アルカリエッチング処理およびデスマット処理は、いずれも複数回組み合わせて行うことができる。
このアルカリエッチングにより中波構造を構成するピットの径をある程度好ましい範囲に制御すると同時に、ピットの内部に微細な凹凸からなる小波構造を形成することができる。微細な凹凸は、不定形であり、その円相当径(面積円相当径)は、0.01〜0.2μmである。
アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。特に、電解粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法が挙げられる。
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。この際、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアは、画像記録層との密着性を向上させる効果がある一方、マイクロポアの径が大きすぎると感度低下を生じさせる場合があるため、適度な大きさのマイクロポアが必要である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸を主成分とし、必要に応じて、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の組み合わせた水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すことで、アルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜15質量%、液温−5〜40℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜200V、電解時間10〜200秒であるのが適当である。
本発明においては、陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。
<アルカリ金属ケイ酸塩処理>
上記のように処理して得られる陽極酸化皮膜が形成された平版印刷版用支持体を、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を用いて浸せき処理する。
処理条件は、特に限定されないが、例えば、濃度0.01〜5.0質量%の水溶液を用いて、温度5〜40℃で、1〜60秒間浸せきし、その後、流水により洗浄する。より好ましい浸せき処理温度は10〜40℃であり、より好ましい浸せき時間は2〜20秒間である。
本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定され、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けることによって、平版印刷版が作製される。画像記録層としては、例えば、以下の感光性組成物を含有する材料が、好適に用いられる。
<画像記録層>
本発明の平版印刷版用支持体上に形成される画像記録層は、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物(以下、単に「感光性組成物」ともいう。)を含有する。
画像記録層に含まれる赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物は、少なくとも、(A)アルカリ可溶性高分子化合物、(B)該アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、および(C)光を吸収して発熱する化合物を含有し、更に必要に応じて、(D)その他の成分を含有する。
(A)アルカリ可溶性高分子化合物
本発明に使用されるアルカリ可溶性高分子化合物は、特に限定されず従来公知のものを用いることができるが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、および(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であるのが好ましい。例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル;ヒドロキシスチレンが挙げられる。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、例えば、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO2−と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基またはビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、下記式で表される活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
更に、本発明に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物としては、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、および活性イミド基を有する重合性モノマーのうちの2種以上を重合させた高分子化合物、またはこれら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が好適に挙げられる。
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマーおよび/または活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合質量比は50:50から5:95の範囲にあるのが好ましく、40:60から10:90の範囲にあるのがより好ましい。
アルカリ可溶性高分子化合物が前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、または活性イミド基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むものが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、または活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(1)〜(12)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドおよびメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、または活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体または共重合体である場合、重量平均分子量が2,000以上であり、数平均分子量が500以上であるものが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000であり、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10であるものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000であるものが好ましい。
これらアルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよく、画像記録層の全固形分中、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性高分子化合物の添加量が30質量%未満であると画像記録層の耐久性が悪化し、また、99質量%を超えると感度および耐久性の両面で好ましくない。
(B)前記アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物
この(B)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、(A)アルカリ可溶性高分子化合物との相溶性が良好であり、均一な塗布液を形成し得るとともに、(A)成分との相互作用により、該高分子化合物のアルカリ可溶性を抑制する機能を有する化合物を指す。
また、この化合物は加熱によりこの溶解性低下作用が消滅するが、(B)成分自体が加熱により分解する化合物である場合、分解に十分なエネルギーがレーザの出力や照射時間等の条件によって付与されないと、溶解性の抑制作用の低下が不十分となり、感度が低下するおそれがあるため、(B)成分の熱分解温度は150℃以上であることが好ましい。
本発明に用いられる好適な(B)成分としては、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の前記(A)成分と相互作用する化合物が挙げられる。(B)成分は、上述したように、(A)成分との相互作用を考慮して適宜選択されるべきであり、具体的には、例えば、(A)成分としてノボラック樹脂を単独で用いる場合、後に例示するシアニン染料A等が好適に用いられる。
(A)成分と(B)成分との配合比は、通常、99/1〜75/25の範囲であるのが好ましい。99/1よりも(B)成分が少ない場合、(A)成分との相互作用が不十分となり、アルカリ可溶性を阻害できず、良好な画像形成ができにくい。また、75/25よりも(B)成分が多い場合、相互作用が過大であるため著しく感度が低下し、いずれも好ましくない。
(C)光を吸収して発熱する化合物
本発明における光を吸収して発熱する化合物とは、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域があり、この範囲の波長の光において、光/熱変換能を発現するものを指す。具体的には、この波長域の光を吸収し熱を発生する種々の顔料または染料を用いることができる。前記顔料としては、市販の顔料またはカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラックを用いることができる。
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
前記顔料の粒径は、0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあるのがより好ましく、0.1〜1μmの範囲にあるのが特に好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを超えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
前記顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、例えば、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダーが挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料等の染料を用いることができる。
本発明においては、これらの顔料または染料の中でも、赤外光または近赤外光を吸収するものが、赤外光または近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に好ましい。
そのような赤外光または近赤外光を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光または近赤外光を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許第5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料を挙げることができる。
また、前記染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、特開昭58−220143号公報、特開昭59−41363号公報、特開昭59−84248号公報、特開昭59−84249号公報、特開昭59−146063号公報、特開昭59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、特公平5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight IV−62A等は特に好ましく用いられる。
また、前記染料として特に好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)または(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの顔料または染料は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは3.1〜10質量%の割合で前記感光性組成物中に添加することができる。顔料または染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また、50質量%を超えると画像記録層の均一性が失われ、画像記録層の耐久性が悪くなる。
これらの染料または顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが好ましい。
また、染料または顔料とアルカリ可溶性高分子化合物は同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
(B+C)成分
本発明においては、(B)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して発熱する化合物とに代えて、双方の特性を有する一つの化合物(以下、「(B+C)成分」ともいう。)を含有することもできる。
前記(B+C)成分は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(C)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの赤外域に吸収域をもち、更にアルカリ可溶性高分子化合物との相溶性も良好であり、塩基性染料であり、分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(B)成分の特性を有する)ために、該高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ可溶性を制御することができ、本発明に好適に用いることができる。
本発明において、(B)成分および(C)成分に代えて、前記のシアニン染料のような双方の特性を兼ね備える化合物(B+C)成分を用いる場合、この化合物の添加量は、(A)成分に対して、99/1〜70/30の範囲であるのが感度の観点から好ましく、99/1〜75/25の範囲であるのがより好ましい。
(D)その他の成分
本発明に用いられる前記感光性組成物には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類を併用することもできる。
環状酸無水物としては、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4´−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4´,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4´,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3´,5´−テトラメチルトリフェニルメタンが挙げられる。
有機酸類としては、例えば、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類が挙げられる。具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸、ビスヒドロキシフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジフェニルジスルホンが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類、有機酸類およびスルホニル化合物類の前記感光性組成物の固形分中に占める割合は、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのが特に好ましい。
また、本発明における前記感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報や特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
前記非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
前記両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の前記感光性組成物の固形分中に占める割合は、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明に用いられる前記感光性組成物中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例示される。具体的には、特開昭50−36209号公報、特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組み合わせや、特開昭53−36223号公報、特開昭54−74728号公報、特開昭60−3626号公報、特開昭61−143748号公報、特開昭61−151644号公報および特開昭63−58440号公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料が挙げられる。具体的には、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)が挙げられる。また、特開昭62−293247号公報および特開平5−313359号公報に記載されている染料は特に好ましい。
これらの染料は、前記感光性組成物の固形分に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の割合で前記感光性組成物中に添加することができる。
また、本発明に用いられる前記感光性組成物中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマーが用いられる。
更に、本発明に用いられる前記感光性組成物中には必要に応じ、キノンジアジド類、ジアゾ化合物等の光により分解する化合物を添加してもよい。これらの化合物の添加量は、前記感光性組成物の固形分に対し、1〜5質量%であるのが好ましい。
本発明にかかる画像記録層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独でまたは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また、塗布乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、0.5〜5.0g/m2であるのが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布が挙げられる。塗布量が少なくなるにつれて、見掛けの感度は大きくなるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
前記画像記録層中に、塗布性を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は前記画像記録層の全固形分に対して0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
<中間層>
赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物が含まれる画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が挙げられる。特願9−264309号出願の[0020]〜[0042]に記載のような酸基とオニウム基を含む共重合ポリマーとその形成方法も好適に用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の製造
(実施例1〜6、比較例1〜6)
第1表に示す組成のアルミニウム合金の溶湯をろ過した後、DC鋳造法により、厚さ500mm、幅1200mmの鋳魂を作製した。アルミニウム合金の組成は、99.7%地金を溶解した後、各元素を含むAl合金(母合金という)または各元素からなる合金を溶解することで調整を行った。得られた鋳塊の表面の平均10mmを面削機で削り取った後、550℃で約5時間加熱して、均熱化処理を行った。温度が400℃まで低下したところで、熱間圧延機を用いて、厚さ2.7mmの圧延板とし、更に、連続焼鈍機を使って500℃で熱処理を行った後、冷間圧延により、厚さ0.24mmとして、アルミニウム合金板(ベース合金1〜12)を得た。このアルミニウム合金板を幅1030mmにした後、以下に示す粗面化処理と陽極酸化処理とを施し、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例6の平版印刷版用支持体を得た。
(実施例7〜52)
第1表に示す組成のアルミニウム合金の代わりに、第1表中ベース合金6の組成に、さらに第3表に示す特定元素を、第3表に示す含有量となるように添加した組成のアルミニウム合金を用いた以外は、実施例1〜6および比較例1〜6と同じようにアルミニウム合金板を得た。このアルミニウム合金板を幅1030mmにした後、以下に示す粗面化処理と陽極酸化処理とを施し、実施例7〜実施例52の平版印刷版用支持体を得た。
(1)粗面化処理
粗面化処理は、以下の(b)〜(f)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理の後には、スプレーによる水洗を行い、また、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板を、カセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液(液温70℃)をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は5g/m2であった。
(c)デスマット処理
つぎに、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、濃度300g/L、液温35℃であった。デスマット処理は、このデスマット液をスプレーで4秒間吹き付けて行った。
(d)電気化学的粗面化処理
液温50℃、塩酸濃度10g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加して、アルミニウムイオン濃度を5g/Lに調整した電解液を用いた。
サイン波交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。交流電流の周波数は60Hz、電流のゼロからピークに達するまでの時間Tpは0.8msecであった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピークがアルミニウム板のアノード反応時で60A/dm2であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で400C/dm2であった。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板を、カセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液(液温45℃)をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は0.5g/m2であった。
(f)デスマット処理
硫酸濃度300g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液(液温60℃)を用い、4秒間デスマット処理を行った。前記デスマット処理に用いた硫酸水溶液は、陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
(2)陽極酸化処理
粗面化処理が施されたアルミニウム板に、液温35℃、濃度170g/Lの硫酸液中で、電流密度が25A/dm2になるように直流電解を行って陽極酸化皮膜を設けた。この際、陽極酸化皮膜が2.5g/m2となるように通電時間を調整した。
2.平版印刷版用支持体の表面の観察
実施例1〜52で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を走査型電子顕微鏡(JSM−5500、日本電子社製。以下同じ。)で倍率10000倍で観察したところ、その表面に直径0.1〜0.4μmの微細な凹凸が均一かつ緻密に生成していた。
これに対して、比較例1〜6で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を同様にして観察したところ、その表面に凹凸が生成していたが、実施例1〜6の場合に比べて、直径0.1μm未満の極小ピットや、直径0.5μm以上の粗大ピットが形成されており、不均一であった。
3.平版印刷版原版の作成
上記のようにして得られたアルミニウム支持体(平版印刷版用支持体)上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成した。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100 g
・水 1 g
Figure 2006205557
ついで、下記組成の感光層塗布液1を調製し、下塗りしたアルミニウム支持体に、この感光層塗布液1を乾燥後の塗布量(感光層塗布量)が1.0g/m2になるよう塗布し、乾燥して画像記録層を形成させ、実施例1の平版印刷版を得た。
<感光層塗布液1組成>
・カプリン酸 0.03 g
・後述する特定の共重合体1 0.75 g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量3,500、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.25 g
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03 g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.017g
Figure 2006205557
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.015g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製)
0.05 g
・γ−ブチルラクトン 10 g
・メチルエチルケトン 10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1 g
<特定の共重合体1>
かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた500mL容の三つ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36mol)、クロロギ酸エチル39.lg(0.36mol)およびアセトニトリル200mLを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物をかくはんした。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36mol)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物をかくはんした。
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30mol)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間かくはんした。反応終了後、この混合物を水1Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分間得られた混合物をかくはんした。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mLでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
次いで、かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた20mL容の三つ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g(0.0192mol)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258mol)、アクリロニトリル0.80g(0.015mol)およびN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物をかくはんした。この混合物に「V−65」(和光純薬社製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下で、混合物を2時間かくはんした。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミドおよび「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、更に、得られた混合物を65℃で2時間かくはんした。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分混合物をかくはんした後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体の特定の共重合体1を得た。
得られた特定の共重合体1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、53,000(ポリスチレン標準)であった。
4.平版印刷版原版の評価
平版印刷版の耐刷性、耐苛酷インキ汚れ性、疲労強度、陽極酸化皮膜の割れ、放置払い性を、下記の方法で評価した。なお、疲労強度とは、疲労破断の生じやすさをいい、疲労破断が生じやすい場合には、疲労強度が弱いといい、疲労破断が生じにくい場合には、疲労強度が強いという。
(I)耐刷性
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
<アルカリ現像液組成>
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000)
0.5 質量%
・水 96.15質量%
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業株式会社製のF−Values(N)墨のインキを用い、湿し水として富士写真フイルム株式会社製のIF−102 4%を用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。
◎:60000枚以上
△:40000枚以上50000枚未満
(II)耐苛酷インキ汚れ性
上記(I)と同様にして得られた平版印刷版を、ハマダ社製の900CDXで、大日本インキ工業株式会社製のF−Values(N)墨のインキを用い、湿し水としてKClを1質量%添加した富士写真フイルム株式会社製のIF−102 4%を用いて印刷し、1000枚印刷後、印刷機上で30分間放置することを5回繰り返し、印刷物の非画像部に生じた点状あるいは円環状の汚れの程度を目視で確認し、◎、○、△、△×、×の5段階で評価した。結果を第2表および第3表に示す。なお、◎、○または△であることが、実用上好ましい。
(III)疲労強度
平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで、画像部の面積が全面積の50%となるように網点状の画像部を前面に焼き付けた。次いで、上記(I)と同様に現像し、平版印刷版を得た。
得られた平版印刷版を切断して、幅20mm、長さ100mmのサンプルを各10枚切り出した。
次いで、各サンプルに、断面積あたりの張力が1.0kg/mm2となるように、軽度の張力をかけ、一端を固定した上で、他端の振動が5mm程度となるように振動を与え、破断するまでの振動回数によって、疲労強度を測定した。
結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。なお、◎、○または△であることが、実用上好ましい。
◎:40000回以上
○:30000回以上40000回未満
△:20000回以上30000回未満
△×:10000回以上20000回未満
×:5000回以上10000回未満
(IV)陽極酸化皮膜の割れ
最初に、各平版印刷版原版を裁断した。
次いで、裁断の切り口近傍の画像記録層を、γ−ブチルラクトンを用いて除去し、露出した陽極酸化皮膜の割れの程度を、目視で確認し、顕著な割れが生じている場合を×、実用上問題がない場合を○と評価した。結果を第2表および第3表に示す。
(V)放置払い性
上記(I)と同様にして得られた平版印刷版を、ハイデルベルク社製のSOR−M印刷機で、大日本インキ工業化学社製のDIC−GEOS(H)墨のインキを用いて印刷後、印刷機上で1時間放置して、印刷を再開させたときに生じた損紙の枚数により、放置払い性を評価した。結果を第2表および第3表に示す。第2表および第3表中の記号の意味は以下のとおりである。
○:30枚未満
△:30枚以上60枚未満
△×:60枚以上
Figure 2006205557
Figure 2006205557
Figure 2006205557
Figure 2006205557
第2表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版(実施例1〜実施例6)は、いずれも耐刷性、耐苛酷インキ汚れ性、放置払い性が良好で、疲労強度が強く、陽極酸化皮膜の割れが生じていなかった。
これに対して、CuおよびZnの含有量が少なすぎる場合(比較例1)は、耐刷性と放置払い性が劣り、疲労強度が不十分であった。
また、Mgの含有量が少なすぎる場合(比較例2)は、疲労強度が不十分であった。
また、Znの含有量が少なすぎる場合(比較例3)は、放置払い性が劣り、疲労強度が不十分であり、また、陽極酸化皮膜の割れも発生していた。
また、Siの含有量が多すぎる場合(比較例4)は、耐苛酷インキ汚れ性が劣っていた。これは、Si量の含有量が多すぎるために、汚れの起点が増えたためと考えられる。
また、Mgの含有量が少なすぎ、かつZnの含有量が非常に少なすぎる(0.003質量%以下である)場合(比較例5)は、放置払い性が劣り、疲労強度が不十分であった。なお、比較例5の平版印刷版用支持体の組成は、特開2003−82426号公報の実施例の表3中ベース合金1である。
また、Znが非常に少なすぎ、Mgの含有量が多すぎる場合(比較例6)は、放置払い性が劣っており、また、陽極酸化皮膜の割れも生じていた。なお、比較例6の平版印刷版用支持体の組成は、特開2003−80857号公報の実施例の表3中試料ベース合金2である。特開2003−80857号公報の実施例にはZnの含有量についての記載がないが、通常の方法でAl99.7%の地金を用いて作製したところ、Znの含有量は0.003質量%以下であった。
また、第3表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体に、さらに下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種類を下記含有量範囲で含有させた場合(実施例7〜実施例52)は、いずれも耐苛酷インキ汚れ性が向上していた。
(a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。
(b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
(c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
(d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。

Claims (3)

  1. Feを0.2〜0.5質量%、Siを0.01〜0.2質量%、Cuを0.001〜0.01質量%、Znを0.02質量%を超えて0.08質量%以下、Tiを0.002〜0.04質量%、およびMgを0.020質量%を超えて0.05質量%未満含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金板に、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体。
  2. 前記アルミニウム板は、更に、下記(a)〜(d)に列挙された元素のうち少なくとも1種を下記含有量範囲で含有している、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
    (a)Li、Be、Sc、Mo、Ag、Ge、Ce、Nd、DyおよびAuからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各1〜100ppm。
    (b)K、Rb、Cs、Sr、Y、Hf、W、Nb、Ta、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、In、Tl、As、Se、Te、Po、Pr、SmおよびTbからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各0.1〜10ppm。
    (c)Ba、Co、Cd、BiおよびLaからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各10〜500ppm。
    (d)Na、Ca、Zr、Cr、V、PおよびSからなる群から選ばれる1種類以上の元素:各50〜1000ppm。
  3. 表面に、直径0.1〜0.4μmのピットが形成されている、請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
JP2005021112A 2005-01-28 2005-01-28 平版印刷版用支持体 Pending JP2006205557A (ja)

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