JP3964816B2 - 平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用支持体及び画像記録層を設けた平版印刷版原版に関する。詳しくは、傷付き難さ(耐キズ性)及び感度に優れ、更に、印刷時の汚れ難さ(耐汚れ性)及び耐刷性にも優れる、平版印刷版原版及びそれに用いられる平版印刷版用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像形成技術の発展に伴い、細くビームを絞ったレーザ光をその版面上に走査させ、文字原稿、画像原稿等を直接版面上に形成させ、フィルム原稿を用いず直接製版することが可能となりつつある。
例えば、レーザ光照射により記録層中で光熱変換を起こすことによって記録層のアルカリ可溶化を引き起こしポジ画像を形成する、いわゆるサーマルポジタイプの平版印刷版原版においては、画像形成原理としてレーザ露光による記録層中のバインダーの分子間相互作用の微妙な変化を利用しているために、露光/未露光部分のアルカリ可溶化のオン/オフの程度の差が小さくなっている。このため、実用に耐える明確なディスクリミネーションを得る目的で、現像液に対する表面難溶化層を記録層の最上層として設けて未露光部の現像溶解性を抑えた記録層構造を形成するという手段が用いられている。
【0003】
しかしながら、表面難溶化層が何らかの原因で損傷すると、本来画像部となる部分でも、現像液に溶解しやすくなってしまう。つまり、実用上非常に傷付きやすい印刷版になってしまっている。このため、印刷版のハンドリング時のぶつかり、合紙での微妙な擦れ、版面への指の接触等の些細な接触によってもキズ状の画像抜けが発生してしまうので、刷版作業時の取り扱いが難しいのが現状である。この傷付きやすさを改善する目的で、記録層表面にフッ素系の界面活性剤やワックス剤の層を設けて摩擦係数を下げることが試みられているが、未だ十分な対策とはなっていない。
【0004】
一方、ディスクリミネーションを上げるために、現像性を上げることも検討されており、記録層と支持体との間にシリケート処理による親水性層やアルカリ可溶性下塗層(アルカリ可溶化層)を設けることが試みられている。これらの方法によれば、確かに現像性はある程度確保することができ、実用範囲の現像ラチチュードは得られるものの、記録層と支持体との密着性が低下する。その上、汚れ難さを向上させるために、残膜の原因となる支持体表面に存在する深い凹部をなくそうとして支持体表面の形状を平滑化していくと、耐刷性が大幅に低下し、実用上使えなくなってしまう。このため、耐刷性に優れ、しかも汚れ難いという、印刷のしやすさの点で満足することができるレベルにある平版印刷版原版は、未だ実現されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、傷付き難さ(耐キズ性)及び感度に優れ、更に、印刷時の汚れ難さ(耐汚れ性)及び耐刷性にも優れる、平版印刷版原版及びそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。特に、傷付き難さ(耐キズ性)及び感度に優れ、更に、印刷時の汚れ難さ(耐汚れ性)及び耐刷性にも優れる、レーザ光の光熱変換によってアルカリ可溶化する感熱層を有するポジ型平版印刷版原版及びそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した。以下に詳細に説明する。
例えば、サーマルポジタイプの平版印刷版原版においては、上述したように、現像ラチチュードの領域を実用範囲分だけ確保するために、記録層と支持体界面に親水性層やアルカリ可溶化層を設けている。このため、汚れ難さを向上させようとして支持体表面の形状を平滑化すると、耐刷性が大幅に低下する。
ここで、耐刷性は記録層と支持体との密着性に大きく依存し、密着性は記録層と支持体との間の接触面積にほぼ相関して変化するため、サーマルポジ型ばかりではなく広く平版印刷版原版において、耐刷性を向上させるためには、支持体の表面積を大きくして、記録層と支持体との間の接触面積を大きくすればよいと考えた。
一方、汚れ難さを向上させるには、印刷時にインキのミストが版面の非画像部に保持されにくくなればよいが、本発明者は、そのためには支持体表面の先鋭な部分を少なくすればよいと考えた。
そこで、本発明者らは、種々の粗面化処理及び支持体の表面形状について検討したところ、粗面化処理前のアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面粗さ、特に、最大高さRy が、現像性(感度等)及び汚れ難さの原因と考えられる深い凹部の形成に大きく影響し、その結果、粗面化処理後の平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版の性能に影響することを見出した。つまり、粗面化処理前のアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面粗さ(最大高さRy )を所定の範囲にすること、及び、粗面化処理前の最大高さRy に対する前記粗面化処後の最大高さRy ’(Ry ’/Ry )を所定の範囲にすることにより、平版印刷版としたときの感度及び汚れを防止でき、さらに耐キズ性をも改善できることを見出した。
なお、上記の条件を満たす最大高さとするには、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理を行えば容易に調整できることも見出し、該処理により耐刷性及び耐汚れ性をも改善できることを見出した。
【0007】
さらに、本発明者らは、上記した先鋭な部分の形状を定量化したところ、支持体上の傾斜角が45°以上の部分の面積率(急峻度a45)に汚れ難さ(耐汚れ性)が対応することが分かり、この物性値に注目して汚れ難さと耐刷性とを両立する形状として、上記最大高さの条件を満たす表面に、特定の平均開口径を有する、大波構造と中波波長と小波構造とを重畳した三重構造の砂目形状を有する(形成させる)のが特に有効であることを見出した。
【0008】
さらにまた、本発明者らは、アルミニウム板に含まれる元素の含有量を特定の範囲に制御することにより、電気化学的粗面化処理により生じるピットの開口径を0.5〜5μmの範囲にでき、さらに径の均一性を向上できるため、優れた耐刷性と耐汚れ性を両立できるうえ、さらに、耐キズ性及び感度により優れることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
【0010】
(1)最大高さRy1.5〜3.0μmのアルミニウム又はアルミニウム合金板に、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体であって、
前記粗面化処理が、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含み、
前記粗面化処理前の最大高さRyに対する前記粗面化処後の最大高さRy’(Ry’/Ry)が2.0〜3.5であり、かつ、前記粗面化処後の最大高さRy’が4.0〜7.5μmである表面を有し、
前記表面が、平均開口径5〜30μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有する、平版印刷版用支持体。
ここで、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。
【0011】
ここで、最大高さは、JIS B0601−1994に準拠してカットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm、基準長さ3.0mm、触針径2μm、走査速度0.3mm/秒で測定できる。装置は、例えば、東京精密 (株)製、Surfcom575を用いることができる。
また「酸を主体とする電解液」とは、酸溶液の濃度が0.1〜50質量%である、後述する電解液をいい、「異なる」とは、主体となる酸が異なるものをいう。
【0012】
(2)前記粗面化処理が、機械的粗面化処理、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含む、上記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
ここで、前記粗面化処理は、順に、機械的粗面化処理、アルカリ水溶液による化学的溶解処理、酸によるデスマット処理、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理及び塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理であるのが好ましい。
また、硝酸及び/又は塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理の後に、アルカリ水溶液による化学的溶解処理及び/又は酸によるデスマット処理をするのが好ましく、更に、陽極酸化処理するのが好ましい。
【0013】
(3)前記アルミニウム又はアルミニウム合金板が、Feを0.20〜0.50質量%、Siを0.05〜0.15質量%、Tiを0.040質量%以下、かつ、Cuを0.040質量%以下含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム板である上記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
本発明においては、上記アルミニウム板を用いるのが、耐刷性と耐汚れ性を両立できるうえ、さらに、耐キズ性及び感度にも優れる点で特に好ましいが、該アルミニウム板としては他にも以下に記載するアルミニウム板AL1〜AL6も好ましい。
(4)サーマルポジタイプの画像記録層を設ける平版印刷版原版に用いられる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
【0014】
(5)最大高さRy1.5〜3.0μmのアルミニウム又はアルミニウム合金板に、少なくとも、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に施し、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法。
(6)更に、前記硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理の前に、機械的粗面化処理を施す上記(5)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【0015】
(7)上記(1)〜(4)に記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けることを特徴とする平版印刷版原版。
(8)前記画像記録層が、サーマルポジタイプである上記(7)に記載の平版印刷版原版。
【0016】
(9)前記平版印刷版原版を、本質的にシリケートを含まない現像液で現像することを特徴とする上記(7)または(8)に記載の平版印刷版原版の現像方法。
【0017】
本発明で用いるアルミニウム板として、上記アルミニウム板の他に、以下のアルミニウム合金板(AL1〜AL6)が好適に用いられる。
アルミニウム合金板AL1:再生地金、スクラップ材の少なくとも1種を1質量%以上原料に含む、アルミニウム含有率が94〜99.4質量%であるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL2:Feを0.1〜0.5質量%、Siを0.02〜0.10質量%、Cu50ppm以下、Ti500ppm以下、その他Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL3:Fe:0.2〜1.0、Si:0.05〜0.20、Cu:0.000〜0.40、任意成分としてMg:0.001〜0.03、Ti:0.001〜0.04、(全て質量%)を含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL4:Mn:0.1〜1.5質量%及び/又はMg:0.1〜1.5質量%を必須成分として含むアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL5:Fe:0.1〜1.0質量%、Si:0.02〜1.0質量%、を含み、下記の(a)〜(d)元素のいずれか1種以上を含むアルミニウム合金板
(a)Li,Be,Sc,Mo,Ag,Ge,Ce,Nd,Dy,Auからなる群より選択される1種以上の元素 1〜100ppm
(b)K,Rb,Cs,Sr,Y,Hf,W,Nb,Ta,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,In,Tl,As,Se,Te,Po,Pr,Sm,Tbからなる群より選択される1種以上の元素 0.1〜10ppm
(c)Ba,Co,Cd,Bi,Laからなる群より選択される1種以上の元素 10〜500ppm
(d)Na,Ca,Zr,Cr,V,P,Sからなる群より選択される1種以上の元素 50〜1000ppm
アルミニウム合金板AL6:Mn:0.1〜1.5質量%及び/又はMg:0.1〜1.5質量%を必須成分として含み、任意成分として、下記の(a)〜(d)元素のいずれか1種以上を含むアルミニウム合金板
(a)Li,Be,Sc,Mo,Ag,Ge,Ce,Nd,Dy,Auからなる群より選択される1種以上の元素 1〜100ppm
(b)K,Rb,Cs,Sr,Y,Hf,W,Nb,Ta,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,In,Tl,As,Se,Te,Po,Pr,Sm,Tbからなる群より選択される1種以上の元素 0.1〜10ppm
(c)Ba,Co,Cd,Bi,Laからなる群より選択される1種以上の元素 10〜500ppm
(d)Na,Ca,P,Sからなる群より選択される1種以上の元素 50〜1000ppm
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
[アルミニウム支持体(平版印刷版用支持体)]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
【0019】
本発明で用いるアルミニウム又はアルミニウム合金板(本発明において、「アルミニウム板」という。)は、その最大高さRy1.5〜3.0μmであり、好ましくは1.5〜2.8μmであり、より好ましくは1.5〜2.5μmである。この範囲であれば、後述する粗面化処理において均一で緻密な表面が得られ、粗面化処理による深い凹部の形成を抑えることができる。
ここで、最大高さRyは、JIS B0601−1994に準拠して、測定装置は、東京精密(株)製、Surfcom575)を用い、カットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm、基準長さ3.0mm、触針径2μm、走査速度0.3mm/秒で測定する。
【0020】
以下、本発明で用いるアルミニウム又はアルミニウム合金板について説明する。
本発明の平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0021】
本明細書においては、上述したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。銅の含有量が0.005質量%以下であるアルミニウムも好ましい。
【0022】
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JISA1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、JIS A3005、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
【0023】
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号及び特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
【0024】
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号及び特開平8−92679号の各公報に記載されている。
【0025】
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号及び特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
【0026】
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号及び特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
【0027】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報及び特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
【0028】
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報及び特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
【0029】
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
【0030】
これらのアルミニウム板のなかでも本発明に好適に用いられるアルミニウム板としては、具体的には、例えば、以下のAL1〜AL6が挙げられる。
アルミニウム合金板AL1:再生地金、スクラップ材の少なくとも1種を1質量%以上原料に含む、アルミニウム含有率が94〜99.4質量%であるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL2:Feを0.1〜0.5質量%、Siを0.02〜0.10質量%、Cu50ppm以下、Ti500ppm以下、その他Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL3:Fe:0.2〜1.0、Si:0.05〜0.20、Cu:0.000〜0.40、任意成分としてMg:0.001〜0.03、Ti:0.001〜0.04、(全て質量%)を含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL4:Mn:0.1〜1.5質量%及び/又はMg:0.1〜1.5質量%を必須成分として含むアルミニウム合金板
アルミニウム合金板AL5:Fe:0.1〜1.0質量%、Si:0.02〜1.0質量%、を含み、下記の(a)〜(d)元素のいずれか1種以上を含むアルミニウム合金板
(a)Li,Be,Sc,Mo,Ag,Ge,Ce,Nd,Dy,Auからなる群より選択される1種以上の元素 1〜100ppm
(b)K,Rb,Cs,Sr,Y,Hf,W,Nb,Ta,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,In,Tl,As,Se,Te,Po,Pr,Sm,Tbからなる群より選択される1種以上の元素 0.1〜10ppm
(c)Ba,Co,Cd,Bi,Laからなる群より選択される1種以上の元素 10〜500ppm
(d)Na,Ca,Zr,Cr,V,P,Sからなる群より選択される1種以上の元素 50〜1000ppm
アルミニウム合金板AL6:Mn:0.1〜1.5質量%及び/又はMg:0.1〜1.5質量%を必須成分として含み、任意成分として、下記の(a)〜(d)元素のいずれか1種以上を含むアルミニウム合金板。
(a)Li,Be,Sc,Mo,Ag,Ge,Ce,Nd,Dy,Auからなる群より選択される1種以上の元素 1〜100ppm
(b)K,Rb,Cs,Sr,Y,Hf,W,Nb,Ta,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,In,Tl,As,Se,Te,Po,Pr,Sm,Tbからなる群より選択される1種以上の元素 0.1〜10ppm
(c)Ba,Co,Cd,Bi,Laからなる群より選択される1種以上の元素 10〜500ppm
(d)Na,Ca,P,Sからなる群より選択される1種以上の元素 50〜1000ppm
【0031】
これらの中でも、電気化学的粗面化処理により生じるピットの開口径を0.5〜5μmの範囲にでき、さらに径の均一性を向上できるため、アルミニウム板AL3がより好ましく、特にピットの均一性が高く、耐刷性と耐汚れ性を両立できるうえ、さらに、耐キズ性及び感度にも優れる点で、Feを0.20〜0.50質量%、Siを0.05〜0.15質量%、Tiを0.040質量%以下、かつ、Cuを0.040質量%以下含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム板(AL3−2)であるのが好ましい。
【0032】
以下、該アルミニウム板AL3−2に含有される異種金属元素について説明する。該アルミニウム板における必須の合金成分は、Al、Fe及びSiであり、好ましくはTi及びCuを含有する。
【0033】
Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があり、支持体の強度に大きく影響を与える。強度が低すぎると、印刷機の版胴に取り付ける際、または印刷中に版切れを起こしやすくなってしまう。逆に強すぎても、印刷機の版胴に取り付ける際のフィットネス性に劣り版切れを起こしやすくなる。
Fe含有量は、0.20〜0.50質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.4質量%である。
【0034】
Siは不可避化合物であり、製造過程の加熱によって単体Siとして析出することがある。この量が過剰の場合、耐過酷インキ汚れ性が低下するためよくない。逆に材料差のばらつきをなくすためには0.02質量%以上の含有が望ましい。そこで、0.05〜0.15質量%の含有量が好ましい。より好ましくは、0.06〜0.10質量%である。
【0035】
Tiは、以前より鋳造時の結晶組織を微細にするために結晶微細化材として、通常0.01〜0.04質量%含有されている。Tiが過剰に含有されると、電気化学的粗面化処理において裏面酸化被膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されないことがある。そこで、0.040質量%までの範囲が効果的である。より好ましくは0.005〜0.030質量%である。
【0036】
Cuは電気化学的粗面化に大きな影響を与える非常に重要な元素である。Cu量が多すぎるとピットが不均一になりすぎるためにベタ画像部の着肉性が悪くなる場合があり、Cu含有量の上限を0.040質量%に規定することが効果的であって好ましい。より好ましくは0.015〜0.035質量%であり、特に好ましくは0.020〜0.030質量%である。
【0037】
該アルミニウム板の残部は、Alと不可避不純物からなる。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
アルミニウム合金に含有される不可避不純物としては、例えば、Mg、Mn、Zn、Cr等が挙げられ、これらはそれぞれ0.05質量%以下含まれていてもよい。これら以外の元素については、従来公知の含有量で含まれていてもよい。
【0038】
上記したアルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0039】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
【0040】
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
【0041】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、又はその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
【0042】
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
【0043】
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
【0044】
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
【0045】
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件及び冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
【0046】
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質及び微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
【0047】
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
【0048】
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
【0049】
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
【0050】
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
【0051】
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材又は板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
【0052】
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mm程度であり、0.15〜0.4mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0053】
本発明では、上記の最大高さRy を持つアルミニウム板を用いる。該アルミニウム板の製造条件は、上記する方法の各工程で任意の条件を選定することができる。好ましくは、上記圧延工程において、鏡面処理した圧延ロールを用いることにより、特定の最大高さRy を持つアルミニウム板を得ることができる。最大高さRy を上記の範囲内とすると、現像性(感度等)及び汚れ難さの原因と考えられる深い凹部の形成を抑えることができる。またこれにより、耐キズ性を向上させることができる。
【0054】
<平版印刷版用支持体の表面>
本発明の平版印刷版用支持体は、粗面化処理前の最大高さRyに対する前記粗面化処理後の最大高さRy’(Ry’/Ry)が2.0〜3.5であり、かつ、前記粗面化処後の最大高さR y ’が4.0〜7.5μmである表面を有することを特徴とする。この範囲であれば、アルミニウム板への粗面化処理が均一に行われ最終仕上がり表面が均一になって平版印刷版としたときの感度の低下及び汚れやすさを抑えて、画像記録層との密着性、耐キズ性及び耐刷性をも向上させられる。Ry’/Ryが1.5未満であると、粗面化処理する前の深い凹部の影響が残り耐汚れ性、耐キズ性に劣り、圧延スジ状の部分的な感度低下の原因となる場合がある。Ry’/Ryが5.0超であると、耐キズ性に劣り、汚れが著しく発生し耐汚れ性に劣り、また感度が低下する場合がある。
なお、Ry及びRy’の測定は、上記したようにJIS B0601−1994に準拠して行う。
上記最大高さに関する条件を上記範囲にするには、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理を行うのが好ましい。このような粗面化処理を行うと、アルミニウム板表面を均一に粗面化でき、最大高さに関する条件を容易に上記範囲に調整することができる。
【0055】
また、本発明の平版印刷版用支持体は、上記最大高さの条件を満たす表面に、平均開口径5〜30μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した三重構造の砂目形状を有する(形成させる)のが、耐刷性及び耐汚れ性を改善できる点で、好ましい。
本発明において、平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって画像記録層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm未満であると、上層に設けられる画像記録層との密着性が低下し、平版印刷版の耐刷性が低下する場合がある。また、中波構造のピットの平均開口径が5μmを超えると、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数が減るため、やはり耐刷性が低下する場合がある。
【0056】
上記中波構造に重畳される平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。中波構造に小波構造を組み合わせることで、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm未満であると、水膜形成に大きな効果が得られない場合がある。また、小波構造のピットの平均開口径が0.2μmを超えると、中波構造が崩れてしまい、上述した中波構造による耐刷性向上の効果が得られない場合がある。
【0057】
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。即ち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
【0058】
上記の中波構造と小波構造とを重畳した構造は、更に平均波長5〜30μmの大波構造と重畳した構造とする。
この大波構造は、平版印刷版の非画像部の表面の保水量を増加させる効果を有する。この表面に保持された水が多いほど、非画像部の表面は雰囲気中の汚染の影響を受けにくくなり、印刷途中で版を放置した場合にも汚れにくい非画像部を得ることができる。また、大波構造が重畳されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、平版印刷版の検版性が優れたものとなる。大波構造の平均波長が5μm未満であると、中波構造との差がなくなる場合がある。大波構造の平均波長が30μmを超えると、均一な画像形成ができなくなる場合があり、また、露光現像後、露出された非画像部がぎらついて見えてしまい、検版性を損なう場合がある。大波構造の平均波長は、5〜20μmであるのが好ましい。
【0059】
本発明の平版印刷版用支持体において、表面の中波構造の平均開口径、小波構造の平均開口径及び開口径に対する深さの平均、ならびに、大波の平均波長の測定方法は、以下の通りである。
【0060】
(1)中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を法線方向から30度傾斜させて表面を倍率10000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも30個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。
【0061】
(2)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0062】
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
【0063】
(4)大波構造の平均波長
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から30度傾斜させて、倍率2000倍で観測し、特定成分を水平方向に少なくとも30点測定し、その平均値を大波構造の平均波長とした。
【0064】
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、上述のアルミニウム板に異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理を施すことによって、上述した表面及び砂目形状をアルミニウム板に形成させることを特徴とする。本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に該粗面化処理を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、該粗面化処理以外の各種の工程(例えば陽極酸化処理等)を含んでいてもよい。
異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理としては、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含むものであれば特に限定されない。
【0065】
本発明では、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理は、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理および塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含むものであれば、これらの電気化学的粗面化処理を連続して行ってもよいし、また、これらの電気化学的粗面化処理の間に通常用いられる粗面化処理を複数行ってもよい。
以下に、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理及び塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理及び塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理及び酸によるデスマット処理を施してもよい。
【0066】
これらの方法により得られた本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、汚れ難さに寄与する先鋭な部分を減らしつつ、支持体表面積を大きくできるため、平版印刷版としたときの耐汚れ性及び耐刷性のいずれにも優れる。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0067】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜30μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報及び特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0068】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0069】
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方又は両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシ及びスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2 、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2 であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径及び胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
【0070】
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
【0071】
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
【0072】
ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択することによって、アルミニウム支持体表面の大波構造の凹部の平均深さを制御することができる。ブラシグレイン法により得られる凹部は、その平均深さが0.3〜1μmであるのが好ましい。平均深さが0.3未満であると保水性が保てず、1超であると印刷時に汚れやすくなる場合がある。
【0073】
<電気化学的粗面化処理>
本発明では、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上行う。この2回以上行う電気化学的粗面化処理は、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理および塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含むものであれば特に限定されず、その具体例としては、硝酸主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理および塩酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理のみをこの順で施した処理(以下、「硝酸−塩酸処理」とする。)、塩酸−硝酸−塩酸処理、硝酸−塩酸−硝酸処理等が挙げられる。この中でも、硝酸−塩酸処理が好ましい。
【0074】
電気化学的粗面化処理(電解粗面化処理)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1及び第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報及び英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書及び同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0075】
電解槽及び電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0076】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0077】
酸性溶液の濃度は0.1〜50質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.5〜20.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜100℃であるのが好ましく、30〜80℃であるのがより好ましい。
【0078】
塩酸又は硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸又は硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物又は塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸又は硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸又は硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0079】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0080】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波又は台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.3〜3msecであるのが好ましい。0.3msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
【0081】
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0082】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図5に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図5において、211はアルミニウム板であり、212はラジアルドラムローラであり、213a及び213bは主極であり、214は電解処理液であり、215は電解液供給口であり、216はスリットであり、217は電解液通路であり、218は補助陽極であり、219a及び219bはサイリスタであり、220は交流電源であり、240は主電解槽であり、250は補助陽極槽である。整流素子又はスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0083】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0084】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2 であるのが好ましく、50〜400C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2 であるのが好ましい。
また、高濃度又は高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0085】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜70C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2 であるのが好ましい。
【0086】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dm2 と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。したがって、この場合、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を重畳させられないため、本発明の特徴である表面の砂目形状を作ることができない。
本発明においては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。即ち、本発明は、粗面化処理として少なくともアルミニウム板に硝酸電解及び塩酸電解を順次施し、更に陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法も提供する。
【0087】
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1及び第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2 、より好ましくは5〜30C/dm2 で行われる。陰極電気量が3C/dm2 未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2 を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1及び第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
<アルカリエッチング処理>
このように砂目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化学的にエッチングされるのが好ましい。
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0089】
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0090】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜15g/m2 であるのが好ましく、1〜10g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2 未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜15g/m2 超であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0091】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2 であるのが好ましく、5〜15g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2 未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2 を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0092】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2 であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0093】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点及び安価である点から、カセイアルカリの溶液、及び、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0094】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、3〜30質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0095】
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0096】
このアルカリエッチングにより中波ピットのピットの径をある程度好ましい範囲に制御すると同時に中波ピット内部に小波に相当する0.01〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.2μmピッチの凹凸構造からなる微細構造を形成することができる。以上の処理を組合わせると、本発明の大中小三重構造を形成するようにエッチング条件を選択することができる。
【0097】
<デスマット処理>
電解粗面化処理又はアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、又は、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウム及びアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
特に、電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法が挙げられる。
【0098】
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0100】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温−5〜60℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜200V、電解時間10〜200秒であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0101】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0102】
中でも、特開昭54−12853号公報及び特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0103】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2 であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2 又はそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2 程度である。
【0104】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2 を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2 以下になるように行うのが好ましい。
【0105】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図6に示す装置が好適に用いられる。図6は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図6中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424及びローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424及び428により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0106】
図6の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型及び逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型及び逆U字型に搬送することによって、各槽412及び414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412及び414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0107】
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置及び方法で封孔処理を行ってもよい。
【0108】
<親水化処理>
陽極酸化処理後又は封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書及び英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報及び特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
【0109】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機又は有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基又はヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族又は芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0110】
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマー又は親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0111】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書及び米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法及び手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩又は4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩及び4族(第IVA族)金属塩は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0112】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を用いて浸せき処理する条件は、特に限定されないが、例えば、濃度0.01〜5.0質量%の水溶液を用いて、温度5〜40℃で、1〜60秒間浸せきし、その後、流水により洗浄する。より好ましい浸せき処理温度は10〜40℃であり、より好ましい浸せき時間は2〜20秒間である。
【0113】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0114】
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報及び特開昭60−149491号公報に記載されている条件及び手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
【0115】
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0116】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層は、特に限定されず、例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイプが挙げられ、特に、サーマルポジタイプが好ましい。
以下、サーマルポジタイプの画像記録層について、詳細に説明する。
【0117】
[画像形成層]
サーマルポジタイプの画像記録層は、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料とを含有し、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する感熱層である。
このような感熱層としては、2層以上からなる感熱層が好ましい。アルカリ可溶層と表面難溶化層とを別々に設けることができるため、 より大きなデイスクリミネーションが得られる。2層以上からなる感熱層としては、例えば、アルカリ易溶性の中間層及び加熱によりアルカリ可溶化する感熱層を順次設けてなる感熱層及び中間層とは別に重層構造をとる感熱層を設けたものが好ましい。以下、アルカリ易溶性の中間層及び加熱によりアルカリ可溶化する感熱層について説明する。なお、本発明の平版印刷版原版には、以下に説明する「中間層」及び「感熱層」のような2層構成をとるもののほか、1層の感熱層において、アルミニウム支持体側におけるアルカリに対する溶解性が、表面側における溶解性より高くなっているような構成のものが含まれる。
【0118】
<中間層>
本発明の平版印刷版原版におけるアルカリ易溶性の中間層は、アルカリ易溶性の層であれば特に限定されないが、酸基を有するモノマーを有する重合体を含有するのが好ましく、酸基を有するモノマー及びオニウム基を有するモノマーを有する重合体を含有するのがより好ましい。
以下、中間層に含有される重合体について詳しく説明する。中間層に含有される重合体は、少なくとも酸基を有するモノマーを重合してなる化合物であり、好ましくは、酸基を有するモノマー及びオニウム基を有するモノマーを重合してなる化合物である。
ここで、酸基としては、酸解離指数(pKa)が7以下の酸基が好ましく、より好ましくは−COOH、−SO3 H、−OSO3 H、−PO3 2 、−OPO3 2 、−CONHSO2 、−SO2 NHSO2 −であり、特に好ましくは−COOHである。
また、オニウム基として好ましいものは、周期律表15族(第VB族)又は16族(第IVB族)の原子を含有するオニウム基であり、より好ましくは窒素原子、リン原子又はイオウ原子を含有するオニウム基であり、特に好ましくは窒素原子を含有するオニウム基である。
【0119】
本発明に用いられる重合体は、好ましくは、主鎖構造がアクリル樹脂やメタクリル樹脂やポリスチレンのようなビニル系ポリマー、ウレタン樹脂、ポリエステル又はポリアミドであることを特徴とする重合体化合物である。より好ましくは、この重合体の主鎖構造がアクリル樹脂やメタクリル樹脂やポリスチレンのようなビニル系ポリマーであることを特徴とする重合体化合物である。特に好ましくは、酸基を有するモノマーが下記の一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物であり、オニウム基を有するモノマーが後記の一般式(3)、一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする重合体化合物である。
【0120】
【化1】
Figure 0003964816
【0121】
式中、Aは2価の連結基を表す。Bは芳香族基又は置換芳香族基を表す。D及びEはそれぞれ独立して2価の連結基を表す。Gは3価の連結基を表す。X及びX´はそれぞれ独立してpKaが7以下の酸基又はそのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩を表す。R1 は水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。a、b、d及びeはそれぞれ独立して0又は1を表す。tは1〜3の整数である。
酸基を有するモノマーの中でより好ましくは、Aは単結合、−COO−又は−CONH−を表し、Bはフェニレン基又は置換フェニレン基を表し、その置換基は水酸基、ハロゲン原子又はアルキル基である。D及びEはそれぞれ独立してアルキレン基又は分子式がCn 2nO、Cn 2nS又はCn 2n+1Nで表される2価の連結基を表す。Gは分子式がCn 2n-1、Cn 2n-1O、Cn 2n-1S又はCn 2nNで表される3価の連結基を表す。ただし、ここで、nは1〜12の整数を表す。X及びX´はそれぞれ独立してカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノエステルを表す。R1 は水素原子又はアルキル基を表す。a、b、d及びeはそれぞれ独立して0又は1を表すが、aとbは同時に0ではない。酸基を有するモノマーの中で特に好ましくは一般式(1)で示す化合物であり、Bはフェニレン基又は置換フェニレン基を表し、その置換基は水酸基又は炭素数1〜3のアルキル基である。D及びEはそれぞれ独立して炭素数1〜2のアルキレン基又は酸素原子で連結した炭素数1〜2のアルキレン基を表す。R1 は水素原子又はアルキル基を表す。Xはカルボン酸基を表す。aは0であり、bは1である。
【0122】
酸基を有するモノマーの具体例を以下に示す。ただし、本発明はこの具体例に限定されるものではない。
(酸基を有するモノマーの具体例)
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸
【0123】
【化2】
Figure 0003964816
【0124】
【化3】
Figure 0003964816
【0125】
【化4】
Figure 0003964816
【0126】
つぎに、オニウム基を有するモノマーである、下記一般式(3)、(4)又は(5)で表されるモノマーについて説明する。
【0127】
【化5】
Figure 0003964816
【0128】
式中、Jは2価の連結基を表す。Kは芳香族基又は置換芳香族基を表す。Mはそれぞれ独立して2価の連結基を表す。Y1 は周期律表15族(第VB族)の原子を表し、Y2 は周期律表16族(第VIB族)の原子を表す。Z- は対アニオンを表す。R2 は水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。R3 、R4 、R5 及びR7 はそれぞれ独立して水素原子又は、場合によっては置換基が結合してもよいアルキル基、芳香族基もしくはアラルキル基を表し、R6 はアルキリジン基又は置換アルキリジンを表すが、R3 とR4 又はR6 とR7 はそれぞれ結合して環を形成してもよい。j、k及びmはそれぞれ独立して0又は1を表す。uは1〜3の整数を表す。
オニウム基を有するモノマーの中でより好ましくは、Jは−COO−又は−CONH−を表し、Kはフェニレン基又は置換フェニレン基を表し、その置換基は水酸基、ハロゲン原子又はアルキル基である。Mはアルキレン基又は分子式がCn 2nO、Cn 2nSもしくはCn 2n+1Nで表される2価の連結基を表す。ただし、ここで、nは1〜12の整数を表す。Y1 は窒素原子又はリン原子を表し、Y2 はイオウ原子を表す。Z- はハロゲンイオン、PF6 - 、BF4 - 又はR8 SO3 - を表す。R2 は水素原子又はアルキル基を表す。R3 、R4 、R5 及びR7 はそれぞれ独立して水素原子又は、場合によっては置換基が結合してもよい炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基もしくはアラルキル基を表し、R6 は炭素数1〜10のアルキリジン基又は置換アルキリジンを表すが、R3 とR4 、及び、R6 とR7 はそれぞれ結合して環を形成してもよい。j、k及びmはそれぞれ独立して0又は1を表すが、jとkは同時に0ではない。R8 は置換基が結合してもよい炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基又はアラルキル基を表す。オニウム基を有するモノマーの中で特に好ましくは、Kはフェニレン基又は置換フェニレン基を表し、その置換基は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。Mは炭素数1〜2のアルキレン基又は酸素原子で連結した炭素数1〜2のアルキレン基を表す。Z- は塩素イオン又はR8 SO3 - を表す。R2 は水素原子又はメチル基を表す。jは0であり、kは1である。R8 は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0129】
オニウム基を有するモノマーの具体例を以下に示す。ただし、本発明はこの具体例に限定されるものではない。
(オニウム基を有するモノマーの具体例)
【0130】
【化6】
Figure 0003964816
【0131】
【化7】
Figure 0003964816
【0132】
【化8】
Figure 0003964816
【0133】
酸基を有するモノマーは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、また、オニウム基を有するモノマーは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。更に、本発明に用いられる重合体は、モノマー、組成比又は分子量の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。この際、酸基を有するモノマーを重合成分として有する重合体は、酸基を有するモノマーを1モル%以上含むのが好ましく、5モル%以上含むのがより好ましく、また、オニウム基を有するモノマーを重合成分として有する重合体は、オニウム基を有するモノマーを1モル%以上含むのが好ましく、5モル%以上含むのがより好ましい。
【0134】
更に、これらの重合体は、以下の(1)〜(14)に示す重合性モノマーから選ばれる少なくとも1種を共重合成分として含んでいてもよい。
(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド又はN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−又はm−ブロモ−p−ヒドロキシスチレン、o−又はm−クロル−p−ヒドロキシスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルアクリレート又はメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びビドロキシスチレン類、
(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びそのハーフエステル、イタコン酸、無水イタコン酸及びそのハーフエステル等の不飽和カルボン酸、
【0135】
(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミド等のアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミド等のメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレート等のアクリル酸エステル類等の不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレート等のメタクリル酸エステル類等の不飽和スルホンアミド、
【0136】
(4)トシルアクリルアミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルアミド、及びトシルメタクリルアミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルアミド、
(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等の(置換)アクリル酸エステル、
(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の(置換)メタクリル酸エステル、
【0137】
(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド及びN−エチル−N−フェニルメタクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド、
(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
【0138】
(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、
(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類、
(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類、
(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、
(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0139】
なお、ここで使用する重合体には酸基を有するモノマーを1モル%以上含むのが好ましく、5モル%以上含むのがより好ましく、また、オニウム基を有するモノマーを1モル%以上含むのが好ましく、5モル%以上含むのがより好ましい。更に、酸基を有するモノマーが20モル%以上含まれると、アルカリ現像時の溶解除去が一層促進され、オニウム基を有するモノマーが1モル%以上含まれると酸基との相乗効果により密着性が一層向上される。また、酸基を有する構成成分は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、また、オニウム基を有するモノマーは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。更に、本発明に用いられる重合体は、モノマー、組成比又は分子量の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。つぎに、本発明に用いられる重合体の代表的な例を以下に示す。なお、ポリマー構造の組成比はモル百分率を表す。
【0140】
【化9】
Figure 0003964816
【0141】
【化10】
Figure 0003964816
【0142】
【化11】
Figure 0003964816
【0143】
【化12】
Figure 0003964816
【0144】
【化13】
Figure 0003964816
【0145】
【化14】
Figure 0003964816
【0146】
【化15】
Figure 0003964816
【0147】
【化16】
Figure 0003964816
【0148】
【化17】
Figure 0003964816
【0149】
本発明に用いられる重合体は、一般にはラジカル連鎖重合法を用いて製造することができる(“Textbook of Polymer Science”3rd ed.(1984)F.W.Billmeyer,A Wiley−Interscience Publication参照)。
【0150】
本発明に用いられる重合体の分子量は広範囲であってもよいが、光散乱法を用いて測定したとき、重量平均分子量(Mw )が500〜2,000,000であるのが好ましく、1,000〜600,000の範囲であるのがより好ましい。また、NMR測定における末端基と側鎖官能基との積分強度より算出される数平均分子量(Mn )が300〜500,000であるのが好ましく、500〜100,000の範囲であるのがより好ましい。分子量が上記の範囲よりも小さいと、基板との密着力が弱くなり、耐刷性の劣化が生じる場合がある。一方、分子量が上記の範囲を超えて大きくなると、支持体への密着力が強くなりすぎ、非画像部の感熱層残渣を十分に除去することができなくなる場合がある。また、この重合体中に含まれる未反応モノマー量は広範囲であってもよいが、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0151】
上記範囲の分子量を有する重合体は、対応する単量体を共重合する際に、重合開始剤及び連鎖移動剤を併用し、添加量を調整することより得ることができる。なお、連鎖移動剤とは、重合反応において連鎖移動反応により、反応の活性点を移動させる物質のことをいい、その移動反応の起こりやすさは、連鎖移動定数Csで表される。本発明で用いられる連鎖移動剤の連鎖移動定数Cs×104 (60℃)は、0.01以上であるのが好ましく、0.1以上であるのがより好ましく、1以上であるのが特に好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合の際に一般によく用いられる過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤をそのまま利用することができる。これらの中でアゾ化合物が特に好ましい。
【0152】
連鎖移動剤の具体例としては、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化合物、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、2−メチル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等のオレフィン類、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタン、フェネチルメルカプタン等の含イオウ化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
より好ましくは、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタン、フェネチルメルカプタンであり、特に好ましくは、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィドである。
【0153】
また、この重合体中に含まれる未反応モノマー量は広範囲であってもよいが、20質量%以下であることが好ましく、また10質量%以下であることが更に好ましい。
【0154】
つぎに、本発明に用いられる重合体の合成例を示す。
〔合成例1〕
重合体(No.1)の合成p−ビニル安息香酸(北興化学工業社製)50.4g、トリエチル(p−ビニルベンジル)アンモニウムクロリド15.2g、メルカプトエタノール1.9g及びメタノール153.1gを2L容の三つ口フラスコに取り、窒素気流下攪拌しながら、加熱し60℃に保った。この溶液に2,2´−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.8gを加え、そのまま30分間攪拌を続けた。その後、この反応液に、p−ビニル安息香酸201.5g、トリエチル(p−ビニルベンジル)アンモニウムクロリド60.9g、メルカプトエタノール7.5g及び2,2´−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル11.1gをメタノール612.3gに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、温度を65℃に上げ、窒素気流下10時間攪拌を続けた。反応終了後、室温まで放冷すると、この反応液の収量は1132gであり、その固形分濃度は30.5質量%であった。更に、得られた生成物の数平均分子量(Mn )を13C−NMRスペクトルより求めた結果、その値は2100であった。
【0155】
〔合成例2〕
重合体(No.2)の合成トリエチル(p−ビニルベンジル)アンモニウムクロリドの代わりに、トリエチル(ビニルベンジル)アンモニウムクロリドのm/p体(2/1)混合物を用い、メルカプトエタノールの代わりにメルカプトプロピオン酸エチルを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、数平均分子量(Mn )4,800の重合体を得た。
【0156】
〔合成例3〕
重合体(No.25)の合成p−ビニル安息香酸(北興化学工業社製)146.9g(0.99mol)、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド44.2g(0.21mol)及び2−メトキシエタノール446gを1L容の三つ口フラスコに取り、窒素気流下攪拌しながら、加熱し75℃に保った。つぎに、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.76g(12mmol)を加え、攪拌を続けた。2時間後、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.76g(12mmol)を追加した。更に、2時間後、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.76g(12mmol)を追加した。2時間攪拌した後、室温まで放冷した。この反応液を攪拌下、12Lの酢酸エチル中に注いだ。析出する固体をろ取し、乾燥した。その収量は189.5gであった。得られた固体は光散乱法で分子量測定を行った結果、重量平均分子量(Mw )は3.2万であった。
【0157】
本発明に用いられる他の重合体も同様の方法で合成される。
【0158】
また、本発明の平版印刷版原版の中間層には、前記重合体に加え、下記一般式(6)で示される化合物を添加することもできる。
【0159】
【化18】
Figure 0003964816
【0160】
(式中、R1 は炭素数6〜14のアリーレン基を表し、m及びnは独立して1〜3の整数を表す。)
上記一般式(6)で示される化合物について、以下に説明する。R1 で表されるアリーレン基の炭素数は6〜14であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。R1 で表されるアリーレン基として具体的には、例えば、フェニレン基、ナフチル基、アンスリル基、フェナスリル基が挙げられる。R1 で表されるアリーレン基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜10のアリール基、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸エステル基、スルホニルアミド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、トリエチルアンモニウムクロライド基等で置換されていてもよい。
【0161】
一般式(6)で示される化合物の具体的な例としては、例えば、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、2−ヒドロシキー3−ナフトエ酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、10−ヒドロキシ−9−アントラセンカルボン酸が挙げられる。ただし、上記の具体例に限定されるものではない。また、一般式(6)で示される化合物を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0162】
本発明に用いられる上記重合体と、必要に応じて添加される上記一般式(6)で示される化合物を含む中間層は、上述したアルミニウム支持体上に種々の方法により塗布して設けられる。
【0163】
この中間層を設ける方法としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤又はこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に本発明に用いられる重合体及び必要に応じて添加される一般式(6)で示される化合物を溶解させた溶液をアルミニウム支持体上に塗布し乾燥して設ける塗布方法、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤又はこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明に用いられる重合体及び必要に応じて添加される一般式(6)で示される化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム支持体を浸せきした後、水洗又は空気等によって洗浄し乾燥して設ける方法を挙げることができる。
【0164】
前者の方法では、上記化合物の合計で0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等のいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.005〜20質量%、好ましくは0.01%〜10質量%であり、浸せき温度は0℃〜70℃、好ましくは5〜60℃であり、浸せき時間は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜120秒である。
【0165】
上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機スルホン酸、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸等種々有機酸性物質、ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド等の有機クロライド等によりpHを調整し、pH=0〜12、より好ましくはpH=0〜6の範囲で使用することもできる。
また、平版印刷版の調子再現性改良のために紫外光や可視光、赤外光等を吸収する物質を添加することもできる。
【0166】
本発明の平版印刷版原版の中間層を構成する化合物の乾燥後の被覆量は、合計で1〜100mg/m2 が適当であり、好ましくは2〜70mg/m2 である。上記被覆量が1mg/m2 よりも少ないと十分な効果が得られない場合がある。また、100mg/m2 よりも多い場合も同様である。
【0167】
<感熱層1>
本発明の平版印刷版原版における加熱によりアルカリ可溶化する感熱層は、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物(以下、単に「感光性組成物」ともいう。)を含有する。
感熱層に含まれる赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物は、少なくとも、(A)アルカリ可溶性高分子化合物、(B)該アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、及び(C)光を吸収して発熱する化合物を含有し、更に必要に応じて、(D)その他の成分を含有する。
【0168】
(A)アルカリ可溶性高分子化合物
本発明に使用されるアルカリ可溶性高分子化合物は、特に限定されず従来公知のものを用いることができるが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、及び(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であるのが好ましい。例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−及びm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合させ、又は、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0170】
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル;ヒドロキシスチレンが挙げられる。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0171】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合させ、又は、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、例えば、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO2 −と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、下記一般式(I)〜(V)で示される化合物が挙げられる。
【0172】
【化19】
Figure 0003964816
【0173】
式中、X1 及びX2 は、それぞれ−O−又は−NR7 −を示す。R1 及びR4 は、それぞれ水素原子又は−CH3 を表す。R2 、R5 、R9 、R12及びR16は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3 、R7 及びR13は、水素原子又はそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6 及びR17は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R8 、R10及びR14は、水素原子又は−CH3 を表す。R11及びR15は、それぞれ単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基を表す。Y1 及びY2 は、それぞれ単結合又は−CO−を表す。具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0174】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、下記式で表される活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合させ、又は、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0175】
【化20】
Figure 0003964816
【0176】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0177】
更に、本発明に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物としては、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちの2種以上を重合させた高分子化合物、又はこれら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が好適に挙げられる。
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマー及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合質量比は50:50から5:95の範囲にあるのが好ましく、40:60から10:90の範囲にあるのがより好ましい。
【0178】
アルカリ可溶性高分子化合物が前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むものが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
【0179】
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(1)〜(12)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0180】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド及びメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0181】
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0182】
本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体又は共重合体である場合、重量平均分子量が2,000以上であり、数平均分子量が500以上であるものが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000であり、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10であるものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000であるものが好ましい。
【0183】
これらアルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよく、感熱層の全固形分中、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性高分子化合物の添加量が30質量%未満であると感熱層の耐久性が悪化し、また、99質量%を超えると感度及び耐久性の両面で好ましくない。
【0184】
(B)前記アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物
この(B)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、(A)アルカリ可溶性高分子化合物との相溶性が良好であり、均一な塗布液を形成し得るとともに、(A)成分との相互作用により、該高分子化合物のアルカリ可溶性を抑制する機能を有する化合物を指す。
また、この化合物は加熱によりこの溶解性低下作用が消滅するが、(B)成分自体が加熱により分解する化合物である場合、分解に十分なエネルギーがレーザの出力や照射時間等の条件によって付与されないと、溶解性の抑制作用の低下が不十分となり、感度が低下するおそれがあるため、(B)成分の熱分解温度は150℃以上であることが好ましい。
【0185】
本発明に用いられる好適な(B)成分としては、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の前記(A)成分と相互作用する化合物が挙げられる。(B)成分は、上述したように、(A)成分との相互作用を考慮して適宜選択されるべきであり、具体的には、例えば、(A)成分としてノボラック樹脂を単独で用いる場合、後に例示するシアニン染料A等が好適に用いられる。
【0186】
(A)成分と(B)成分との配合比は、通常、99/1〜75/25の範囲であるのが好ましい。99/1よりも(B)成分が少ない場合、(A)成分との相互作用が不十分となり、アルカリ可溶性を阻害できず、良好な画像形成ができにくい。また、75/25よりも(B)成分が多い場合、相互作用が過大であるため著しく感度が低下し、いずれも好ましくない。
【0187】
(C)光を吸収して発熱する化合物
本発明における光を吸収して発熱する化合物とは、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域があり、この範囲の波長の光において、光/熱変換能を発現するものを指す。具体的には、この波長域の光を吸収し熱を発生する種々の顔料又は染料を用いることができる。前記顔料としては、市販の顔料又はカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)及び「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0188】
前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラックを用いることができる。
【0189】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0190】
前記顔料の粒径は、0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあるのがより好ましく、0.1〜1μmの範囲にあるのが特に好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感熱層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを超えると感熱層の均一性の点で好ましくない。
【0191】
前記顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、例えば、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダーが挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0192】
前記染料としては、市販の染料及び文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料等の染料を用いることができる。
【0193】
本発明においては、これらの顔料又は染料の中でも、赤外光又は近赤外光を吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に好ましい。
【0194】
そのような赤外光又は近赤外光を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光又は近赤外光を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許第5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料を挙げることができる。
【0195】
また、前記染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、特開昭58−220143号公報、特開昭59−41363号公報、特開昭59−84248号公報、特開昭59−84249号公報、特開昭59−146063号公報、特開昭59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、特公平5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight IV−62A等は特に好ましく用いられる。
【0196】
また、前記染料として特に好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)又は(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0197】
これらの顔料又は染料は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは3.1〜10質量%の割合で前記感光性組成物中に添加することができる。顔料又は染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また、50質量%を超えると感熱層の均一性が失われ、感熱層の耐久性が悪くなる。
これらの染料又は顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが好ましい。
また、染料又は顔料とアルカリ可溶性高分子化合物は同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
【0198】
(B+C)成分
本発明においては、(B)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して発熱する化合物とに代えて、双方の特性を有する一つの化合物(以下、「(B+C)成分」ともいうう。)を含有することもできる。そのような化合物としては、例えば、下記一般式(Z)で表されるものが挙げられる。
【0199】
【化21】
Figure 0003964816
【0200】
前記一般式(Z)中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基もしくはアリール基を表し、R1 とR2 、R3 とR4 はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。ここで、R1 〜R4 としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
5 〜R10は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、ここで、R5 〜R10としては、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0201】
11〜R13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、ここで、R12は、R11又はR13と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR12同士が結合して環構造を形成していてもよい。R11〜R13としては、具体的には、塩素原子、シクロヘキシル基、R12同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、mは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3である。
14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、R14はR15と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR14同士が結合して環構造を形成していてもよい。R14及びR15としては、具体的には、塩素原子、シクロヘキシル基、R14同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、mは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0202】
前記一般式(Z)において、X- は、アニオンを表す。アニオンとなる化合物の具体例としては、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。これらの中でも、特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましく用いられる。
【0203】
前記一般式(Z)で表される化合物は、一般にシアニン染料と呼ばれる化合物であり、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明はこの具体例により限定されるものではない。
【0204】
【化22】
Figure 0003964816
【0205】
前記(B+C)成分は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(C)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの赤外域に吸収域をもち、更にアルカリ可溶性高分子化合物との相溶性も良好であり、塩基性染料であり、分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(B)成分の特性を有する)ために、該高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ可溶性を制御することができ、本発明に好適に用いることができる。
【0206】
本発明において、(B)成分及び(C)成分に代えて、前記のシアニン染料のような双方の特性を兼ね備える化合物(B+C)成分を用いる場合、この化合物の添加量は、(A)成分に対して、99/1〜70/30の範囲であるのが感度の観点から好ましく、99/1〜75/25の範囲であるのがより好ましい。
【0207】
(D)その他の成分
本発明に用いられる前記感光性組成物には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類を併用することもできる。
環状酸無水物としては、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4´−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4´,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4´,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3´,5´−テトラメチルトリフェニルメタンが挙げられる。
【0208】
有機酸類としては、例えば、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類が挙げられる。具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸、ビスヒドロキシフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジフェニルジスルホンが挙げられる。
【0209】
上記の環状酸無水物、フェノール類、有機酸類及びスルホニル化合物類の前記感光性組成物の固形分中に占める割合は、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのが特に好ましい。
【0210】
また、本発明における前記感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報や特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
前記非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
前記両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の前記感光性組成物の固形分中に占める割合は、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0211】
本発明に用いられる前記感光性組成物中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例示される。具体的には、特開昭50−36209号公報、特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組み合わせや、特開昭53−36223号公報、特開昭54−74728号公報、特開昭60−3626号公報、特開昭61−143748号公報、特開昭61−151644号公報及び特開昭63−58440号公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0212】
画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料が挙げられる。具体的には、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)が挙げられる。また、特開昭62−293247号公報及び特開平5−313359号公報に記載されている染料は特に好ましい。
これらの染料は、前記感光性組成物の固形分に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の割合で前記感光性組成物中に添加することができる。
【0213】
また、本発明に用いられる前記感光性組成物中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマーが用いられる。
更に、本発明に用いられる前記感光性組成物中には必要に応じ、キノンジアジド類、ジアゾ化合物等の光により分解する化合物を添加してもよい。これらの化合物の添加量は、前記感光性組成物の固形分に対し、1〜5質量%であるのが好ましい。
【0214】
本発明にかかる感熱層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で又は混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0215】
また、塗布乾燥後に得られる支持体上の感熱層塗布量(固形分)は、0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。
【0216】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布が挙げられる。塗布量が少なくなるにつれて、見掛けの感度は大きくなるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
【0217】
前記感熱層中に、塗布性を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は前記感熱層の全固形分に対して0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0218】
<感熱層2>
また、本発明の平版印刷版原版に好適に用いられる感熱層としては、積層構造を有し、表面(露光面)に近い位置に設けられている感熱層と、支持体に近い側に設けられているアルカリ可溶性樹脂を含有する下層とを有する感熱層が挙げられる。
これらの層には、いずれも水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂を含有し、かつ、上部に位置する感熱層には赤外線吸収染料を含有する。以下、この感熱層の各構成成分について説明する。
【0219】
[アルカリ可溶性高分子]
本発明において、感熱層及び下層に使用される水不溶性かつアルカリ水溶性の高分子化合物(以下、適宜、アルカリ可溶性高分子と称する)とは、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。従って、本発明に係る高分子層は、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものである。
本発明の下層、及び感熱層に使用されるアルカリ可溶性高分子は、従来公知のものであれば特に制限はないが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であることが好ましい。例えば以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0220】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0221】
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0222】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO2 −と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
【0223】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に活性イミド基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0224】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0225】
更に、本発明のアルカリ可溶性高分子化合物としては、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちの2種以上を重合させた高分子化合物、或いはこれら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を使用することが好ましい。フェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホンアミド基を有する重合性モノマー及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合には、これら成分の配合重量比は50:50から5:95の範囲にあることが好ましく、40:60から10:90の範囲にあることが特に好ましい。
【0226】
本発明において、アルカリ可溶性高分子が前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性を付与するモノマーは10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
【0227】
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0228】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0229】
アルカリ水可溶性高分子化合物としては、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0230】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ水可溶性高分子化合物としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0231】
アルカリ水可溶性高分子化合物の共重合の方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0232】
本発明においてアルカリ可溶性高分子が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0233】
下層で用いられるアルカリ可溶性高分子としては、アクリル樹脂が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするアルカリ現像液に対して下層の溶解性を良好に保持し得るため、現像時の画像形成の観点から好ましい。更に、このアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましい。
また、感熱層で用いられるアルカリ可溶性高分子としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点、及び、本発明に用いる非シリケート現像液に対して、未露光部、露光部の現像製の差が大きい点から、画像形成性が向上するため、フェノール性水酸基を有する樹脂が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
【0234】
これらアルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、前記感熱層全固形分中、30〜99質量%、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性高分子の添加量が30質量%未満であると感熱層の耐久性が悪化し、また、99質量%を超えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
【0235】
〔赤外線吸収染料〕
本発明において、感熱層に用いられる赤外線吸収染料は、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収染料として知られる種々の染料を用いることができる。
【0236】
本発明に係る赤外線吸収染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0237】
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0238】
また、染料として米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が、特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0239】
これらの赤外線吸収染料は、感熱層のみならず、下層にも添加することができる。下層に赤外線吸収染料を添加することで下層も感熱層として機能させることができる。下層に赤外線吸収染料を添加する場合には、上部の感熱層におけるのと互いに同じ物を用いてもよく、また異なる物を用いてもよい。
また、これらの赤外線吸収染料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。別の層とする場合、感熱層に隣接する層へ添加するのが望ましい。また、染料と前記アルカリ可溶性樹脂とは同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
添加量としては、印刷版材料全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を超えると感熱層の均一性が失われ、感熱層の耐久性が悪くなる。
【0240】
〔その他の成分〕
前記ポジ型感熱層又は下層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤は下層のみに含有させてもよいし、感熱層のみに含有させてもよい。更に、両方の層に含有させてもよい。以下に、添加剤の例を挙げて説明する。
例えばオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。
【0241】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974) 、T. S. Bal et al, Polymer, 21, 423(1980) 、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号、特開平3-140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468(1984)、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号に記載のホスホニウム塩、J. V.Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977) 、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31 (1988)、欧州特許第104,143 号、米国特許第339,049 号、同第410,201 号、特開平2-150848号、特開平2-296514号に記載のヨードニウム塩、J. V.Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985) 、J. V. Crivello et al. J. Org.Chem., 43, 3055 (1978) 、W. R. Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer Bull.,14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 14(5) ,1141(1981)、J. V. Crivello etal, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877 (1979)、欧州特許第370,693 号、同233,567 号、同297,443 号、同297,442 号、米国特許第4,933,377 号、同3,902,114 号、同410,201 号、同339,049 号、同4,760,013 号、同4,734,444 号、同2,833,827 号、独国特許第2,904,626 号、同3,604,580 号、同3,604,581 号に記載のスルホニウム塩、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979) に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, Teh,Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988) に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものが挙げられる。
【0242】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0243】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403 号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120 号及び同第3,188,210 号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0244】
更にナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802 号、特開昭48−63803 号、特開昭48−96575 号、特開昭49−38701 号、特開昭48−13354 号、特公昭41−11222 号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481 号、米国特許第2,797,213 号、同第3,454,400 号、同第3,544,323 号、同第3,573,917 号、同第3,674,495 号、同第3,785,825 号、英国特許第1,227,602 号、同第1,251,345 号、同第1,267,005 号、同第1,329,888 号、同第1,330,932 号、ドイツ特許第854,890 号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0245】
o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは層を形成する全固形分に対し、1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0246】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。本発明の添加剤とアルカリ可溶性高分子とは、同一層へ含有させることが好ましい。
【0247】
また、画像のディスクリミネーションの強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318明細書に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することが好ましい。このような化合物は、下層、感熱層のどちらに含有させてもよいが、より効果的なのは上部に位置する感熱層に含有させることである。
添加量としては、感熱層材料中に占める割合が0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0248】
本発明における印刷版材料中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、US6117913号公報に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルなどを挙げることが出来る。このような化合物は、下層、感熱層のどちらに含有させてもよいが、より効果的なのは上部に位置する感熱層に含有させることである。添加量として好ましいのは、層を形成する材料中に占める割合が0.1〜10質量%。より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0249】
また、本発明における下層或いは感熱層中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでもよい。酸性基としてはスルホン酸、カルボン酸、リン酸基を挙げることが出来る。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることが出来る。
このような化合物は、下層、感熱層のどちらに含有させてもよい。添加量として好ましいのは、層を形成する材料中に占める割合が0.05〜5質量%。より好ましくは0.1〜3質量%である。5%より多いと各層の現像液に対する溶解性が増加してしまい、好ましくない。
【0250】
また、本発明においては、下層或いは感熱層の溶解性を調節する目的で種々の溶解抑制剤を含んでもよい。溶解抑制剤としては、特開平11−119418公報に示されるようなジスルホン化合物又はスルホン化合物が好適に用いられ、具体例として、4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホンを用いることが好ましい。
このような化合物は、下層、感熱層のどちらに含有させてもよい。添加量として好ましいのは、それぞれ層を構成する材料中に占める割合が0.05〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0251】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128 号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942 号、特開平2−96755 号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の層を構成する材料中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0252】
また、本発明に係る下層或いは感熱層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の塗布液材料中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0253】
本発明における下層或いは感熱層中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0254】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、印刷版材料全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。更に本発明の印刷版材料中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0255】
以上で説明した重層構造を形成する感熱層及び下層の製造方法は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
また、塗布に用いる溶剤としては、感熱層に用いるアルカリ可溶性高分子と下層に用いるアルカリ可溶性高分子に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましい。つまり、下層を塗布した後、それに隣接して上層である感熱層を塗布する際、最上層の塗布溶剤として下層のアルカリ可溶性高分子を溶解させうる溶剤を用いると、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、重層にならず均一な単一層になってしまう場合がある。このように、隣接する2つの層の界面で混合が生じたり、互いに相溶して均一層の如き挙動を示す場合、2層を有することによる本発明の効果が損なわれる虞があり、好ましくない。このため、上部の感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれるアルカリ可溶性高分子に対する貧溶剤であることが望ましい。
各層を塗布する場合の溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感熱層は0.05〜1.0g/m2 であり、下層は0.3〜3.0g/m2 であることが好ましい。感熱層が0.05g/m2 未満である場合には、画像形成性が低下し、1.0g/m2 を超えると感度が低下する可能性がでてくる。また、下層の塗布量は上記の範囲を外れると少なすぎる場合も、多すぎる場合にも画像形成性が低下する傾向がある。また、前記の2層の合計で0.5〜3.0g/m2 であることが好ましく、塗布量が0.5g/m2 未満であると被膜特性が低下し、3.0g/m2 を超えると感度が低下する傾向にある。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
【0256】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明における感熱層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、下層或いは感熱層全固形分中0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0257】
本発明の平版印刷版原版は、感熱層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされるが、以下のようにして、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像する方法により、平版印刷版とするのが好ましい。即ち、本発明の平版印刷版原版は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液により処理されるための平版印刷版であるのが好ましい。なお、本方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、本発明においては、該公報に記載されている内容を用いることができる。
【0258】
(下塗層)
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、必要に応じて、下塗層を設けることができる。
下塗層に含有される成分としては種々の有機化合物が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0259】
下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持体上に塗布し乾燥させて設ける方法と、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸せきさせて上記化合物を吸着させ、その後水等によって洗浄し乾燥させて設ける方法である。
前者の方法では、上記の有機化合物の好ましくは0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布することができる。また、後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%であり、浸せき温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸せき時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。
上記方法に用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質により、pH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を含有することもできる。
下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが適当であり、5〜100mg/m2 であるのが好ましい。被覆量が2mg/m2 未満であると、十分な耐刷性が得られない場合がある。また200mg/m2 を超えても同様である。
【0260】
上記のようにして作成されたサーマルポジタイプの感熱層を有する平版印刷版原版は、通常、像露光及び現像処理が施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、中でも、固体レーザ、半導体レーザが好ましい。発光波長としては、760〜850nmが好ましい。
【0261】
上記のようにして作成されたポジ型平版印刷版原版は、本発明に係る製版方法に従って画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、近赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0262】
本発明の方法において平版印刷版原版の現像に用いる現像液及び補充液としては、従来から知られている、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とし、実質上、二酸化ケイ素を含有しないアルカリ現像液を用いることを要する。本発明では、このような現像液を以下、「非シリケート現像液」と称する。なお、ここで「実質上」とは不可避の不純物及び副生成物としての微量の二酸化ケイ素の存在を許容することを意味する。
本発明の画像形成方法において、前記平版印刷版原版の現像工程に、このような非シリケート現像液を適用することで、傷の発生抑制効果は発現され、画像部に欠陥のない、良好な平版印刷版を得ることができる。アルカリ水溶液としては、特にpH12.5〜13.5のものが好ましい。
【0263】
本発明の製版方法に用いる「非シリケート現像液」は、前記したように緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするものである。緩衝作用を有する有機化合物としては、特開平8−220775号公報に緩衝作用を有する化合物として記載されている糖類(特に一般式(I)又は(II)で表されるもの)、オキシム類(特に一般式(III)で表されるもの)、フェノール類(特に一般式(IV)で表されるもの)及びフッ素化アルコール類(特に一般式(V)で表されるもの)等が挙げられる。一般式(I)〜(V)で表される化合物のなかでも、好ましいものは、一般式(I)又は(II)で表される糖類、一般式(V)で表されるフェノール類であり、更に好ましくは一般式(I)又は(I)で表される糖類のうち、サッカロース等の非還元糖又はスルホサリチル酸である。非還元糖には、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコール等が包含される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いられる。
【0264】
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。
前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−アンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。
更には、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等も好適に挙げることができる。
【0265】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが、適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は、単独でも、二種以上を組合せてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0266】
前記緩衝作用を有する有機化合物には、塩基としてアルカリ剤を、従来公知のものの中から適宜選択して組合せることができる。
前記アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルァミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソブロパノールアミシ、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
これらのアルカリ剤は、単独で用いても、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0267】
なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。
また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0268】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0269】
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0270】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0271】
本発明に係る平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0272】
以上のようにして本発明の製版方法により得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0273】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2 (乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版原版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0274】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0275】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の作成
<アルミニウム板>
下記第1表に示す組成のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、鏡面処理した冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げた。
なお、第1表に示すアルミニウム板AL1〜6は、上記した、本発明に好適に用いられるアルミニウム板(6種)に対応した組成を有するアルミニウム板であり、AL3−2及びAL3−3は、特に好適に用いられるアルミニウム板(1種)に対応した組成を有するアルミニウム板である。
【0276】
【表1】
Figure 0003964816
【0277】
得られたアルミニウム板AL1〜6の最大高さRy (μm)を、下記方法により測定した。その結果を第1表に示す。
測定方法;JIS B0601−1994に準拠して、カットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm、基準長さ3.0mm、触針径2μm、走査速度0.3mm/秒の条件で測定した。装置は、東京精密 (株)製、Surfcom575を用いた。
【0278】
上記アルミニウム板を幅1030mmに調整した後、以下に示す表面処理に供した。
<粗面化処理方法A>
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液(比重1.1g/cm3 )を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。図1において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は25μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0279】
(b)アルカリ剤によるエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板を苛性ソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0280】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0281】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。図3において、11はアルミニウム板、12はラジアルドラムローラ、13a及び13bは主極、14は電解処理液、15は電解液供給口、16はスリット、17は電解液通路、18は補助陽極、19a及び19bはサイリスタ、20は交流電源、40及び41は主電解槽、50及び51は補助陽極槽である。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0282】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を60℃で行い、アルミニウム板を3.0g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0283】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸2.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。図3において、11はアルミニウム板、12はラジアルドラムローラ、13a及び13bは主極、14は電解処理液、15は電解液供給口、16はスリット、17は電解液通路、18は補助陽極、19a及び19bはサイリスタ、20は交流電源、40及び41は主電解槽、50及び51は補助陽極槽である。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で30C/dm2 であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0284】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2 溶解し、前段の交流を用いての電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0285】
(j)陽極酸化処理
図4に示す構造の二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電電極長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0286】
図4において、11はアルミニウム板、62aは第一給電部、62bは第二給電部、63aは第一電解部、63bは第二電解部、64a及び64bはニップローラ、65aは第一給電電極、65bは第二給電電極、66a、66b、66c及び66dは電解電極、67a、67b、67c及び67dは電源である。
前記陽極酸化装置においては、電源67a及び67bからの電流は、第一給電部62aに設けられた第一給電電極65aに流れ、電解液を介してアルミニウム板11に流れ、第一電解部63aでアルミニウム板11の表面に酸化皮膜を生成させ、第一電解部63aに設けられた電解電極66a及び66bを通り、電源67a及び67bに戻る。
一方、電源67c及び67dからの電流は、第二給電部62bに設けられた第二給電電極65bに流れ、前記と同様に電解液を介してアルミニウム板11に流れ、第二電解部63bでアルミニウム板11の表面に酸化皮膜を生成させる。第二電解部63bに設けられた電解電極66c及び66dを通り、電源67c及び67dに戻る。
【0287】
電源67a及び67bから第一給電部62aに給電される電気量と、電源67c及び67dから第二給電部62bに給電される電気量とは等しく、また、第一電解部63a及び第二電解部63bにおける電流密度はともに約30A/dm2 であった。第二給電部62bでは、第一電解部63aで生成した1.35g/m2 の酸化皮膜面を通じて給電したことになる。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。
【0288】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。
【0289】
<粗面化処理方法B>
粗面化処理方法Bは、粗面化処理方法Aにおいて、(a)機械的粗面化処理の替わりに順に(b)、(c)、(g)(該処理の電解波形をsin波とし陽極時電気量を400C/dm2 に変更)、更に(i)を行った後、(b)から(k)までの処理を行った粗面化処理方法である。
<粗面化処理方法C>
粗面化処理方法Cは、(a)機械的粗面化処理の替わりに下記記載の粗面化処理C’を順に行いその後(b)から(k)までの処理を行った粗面化処理方法である。
(粗面化処理C’)
下記の各工程の粗面化処理の後には水洗処理を行った。粗面化処理及び水洗処理の後にはニップローラのよる液切りを行った。
(アルカリ水溶液中でのエッチング処理)
アルミニウム板をNaOH27質量%、アルミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液を70℃でスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は6g/m2 であった。その裏面のアルミニウム板の溶解量は1g/m2 であった。
(酸性水溶液中でのデスマット)
次に、硝酸水溶液中でのデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次の工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は50℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて4秒間デスマット処理を行った。
(硝酸水溶液中での直流を用いた電気化学的な粗面化処理)
電解液中に進行方向の長さ100mmの陽極と陰極を100mmの間隔を保ってそれぞれ12本を交互に配置し、直流電源が接続された陽極と陰極に対して一定間隔を保ってアルミニウム板を走行させる連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。アルミ板の移動速度は12m/minであった。
液温50℃、硝酸濃度10g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度4.5g/Lに調整した電解液を用いた。アノードにはフェライト、 カソードにはチタンを用いた。直流にはメッキ用に用いられるリップル率20%以下の汎用の直流電源を用いた。電流密度はアルミニウム板のアノード反応時、 カソード反応時それぞれ50A/dm2 であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板の陽極時の電気量の総和で400C/dm2 であった。
(アルカリ水溶液中でのエッチング処理)
アルミニウム板をNaOH5質量%、アルミニウムイオン0.5質量%含有する水溶液を45℃でスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は1g/m2 であった。その裏面のアルミニウム板の溶解量は0.1g/m2 であった。
(酸性水溶液中でのデスマット)
次に、硫酸300g/L水溶液(アルミニウムイオン1g/L含む)、60℃の液をスプレーにて吹き付けて4秒間デスマット処理を行った。
【0290】
<粗面化処理方法D>
粗面化処理方法Dは、(d)電気化学的粗面化処理において、図3の電解層を第1槽のみ使用し、電解温度を35℃、電気量を250C/dm2 とした以外は粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
<粗面化処理方法E>
粗面化処理方法Fは、(d)電気化学的粗面化処理において、電解温度を80℃、電解波形を矩形波、電気量を100C/dm2 とした以外は粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
<粗面化処理方法F>
粗面化処理方法Fは、(g)電気化学的粗面化処理において、周波数を120Hz、電気量を30C/dm2 とした以外は粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
【0291】
<粗面化処理方法G>
粗面化処理方法Gは、(g)電気化学的粗面化処理において、周波数を30Hz、電気量を80C/dm2 とした以外は粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
<粗面化処理方法H>
粗面化処理方法Hは、(a)機械的粗面化処理を行なわなかった以外は粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
<粗面化処理方法I>
粗面化処理方法Iは、(a)機械的粗面化処理において、ナイロンブラシの毛の直径を0.74mm、モーターの負荷を8kwプラス、ブラシの回転数を250rpmに変更した以外は、粗面化処理方法Aと同様に行った粗面化処理方法である。
【0292】
[実施例1〜16及び比較例1〜3]
アルミニウム板AL1〜AL6(第2表中「AL材」と表記する。)と粗面化処理方法A〜Iを第2表に示す組合わせで、上記各アルミニウム板を粗面化処理し、実施例1〜16及び比較例1〜3の各平版印刷版用支持体を得た。
【0293】
2.平版印刷版用支持体の表面形状の測定
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面の凹部について、下記(1)〜(3)の測定を行った。
結果を第2表に示す。なお、第2表中、「−」は、該当する波長の凹部がなかったことを示す。
【0294】
(1)小波構造の平均開口径
後述する平版印刷版原版をγブチロラクトンで感熱層を溶解除去して支持体を露出した後、支持体表面を垂直方向から倍率50000倍でSEM観察し、撮影した写真上でピットの直径を100点測定しその平均値を平均波長とした。この際、日立製作所製S−900を使用した。
なお、ここで言う小波とは、支持体表面を50000倍に拡大したSEM画像において、輪郭のハッキリするピット形状においてその長径及び短径の平均値が0.01〜0.3μmのものを小波とし、小波を200個計測してその平均値をもって小波の波長とした。
【0295】
(2)大波の平均波長及び中波の平均開口径
後述する平版印刷版原版をγブチロラクトンで感光層を溶解除去して支持体を露出した後、日本電子社製T−20型走査電子顕微鏡を用いて、法線方向から30度傾斜させて表面を倍率2000倍で観測し、1μmより大きい最も長波長の成分を水平方向に30点測定しその平均値を大波の平均波長とした。
また、同様に10000倍で観測した画像を用い、3μmより小さく0.2μmより大きい開口径を持った凹凸成分を水平方向に30点読み取りその平均値を中波の平均開口径とした。
【0296】
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において開口径0.3μm以下の小波ピットを20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出した。
【0297】
なお、平版印刷版用支持体表面(粗面化処理後のアルミニウム板)の最大高さRy ’(μm)は、上記した方法と同様にして測定した。その結果を第2表の「粗面化処理」の欄に示す。
また、これらの測定値から、Ry ’/Ry を算出し、第2表に示した。
【0298】
2.平版印刷版原版の作成
上記平版印刷版用支持体に、下記中間層及び感熱層を順次設けて平版印刷版原版とした。
なお、実施例1〜12、15及び16、ならびに、比較例1〜3は下記中間層(l)を設けた後感熱層Aを、実施例13及び14は下記中間層(l)を設けた後感熱層Bを設けた。
【0299】
(l)下塗層(中間層)の形成
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2 であった。
【0300】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0301】
【化23】
Figure 0003964816
【0302】
(m)感熱層Aの形成
ついで、下記組成の感熱層塗布液1を調製し、上記下塗層を設けたアルミニウム支持体に、この感熱層塗布液1を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.0g/m2 になるよう塗布し、乾燥して感熱層Aを形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0303】
Figure 0003964816
【0304】
【化24】
Figure 0003964816
【0305】
Figure 0003964816
【0306】
<特定の共重合体1>
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500mL容の三つ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36mol)、クロロギ酸エチル39.lg(0.36mol)及びアセトニトリル200mLを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36mol)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。
【0307】
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30mol)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1Lにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mLでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0308】
次に、攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20mL容の三つ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g(0.0192mol)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258mol)、アクリロニトリル0.80g(0.015mol)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に下記に示す「V−65」(和光純薬社製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下で、混合物を2時間攪拌した。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、更に、得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2Lにこの水を攪拌しながら投入し、30分混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体の特定の共重合体1を得た。
得られた特定の共重合体1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、53,000(ポリスチレン標準)であった。
【0309】
【化25】
Figure 0003964816
【0310】
(n)感熱層Bの形成
上記下塗層を設けたアルミニウム支持体に、以下の下層用塗布液を塗布量が0.85g/m2 になるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140度で50秒間乾燥し、その後、感熱層用塗布液を塗布量が0.15g/m2 になるよう塗布したのち、120度で1分間乾燥した。
【0311】
Figure 0003964816
【0312】
【化26】
Figure 0003964816
【0313】
Figure 0003964816
【0314】
5.現像方法
a:富士フイルム製PS版用現像液DT−1(Siを含まない現像液)を、自動現像機900NPを用いて標準使用条件で現像処理を行った。
b:富士フイルム製PS版用現像液DP−4(Siを含む現像液)を、自動現像機900NPを用いて標準使用条件で現像処理を行った。
c:下記組成の非シリケート現像液(現像液1)を、自動現像機900NPを用いて標準使用条件で現像処理を行った。
〔現像液1(非シリケート現像液)〕
非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウム(K2 O)よりなるカリウム塩45%水溶液1リットルに、両性界面活性剤パイオニンC−158G(竹本油脂(株)製)20gと消泡剤オルフィンAK−02(日信化学(株)製)2.0gを添加して濃縮液を作製した。この濃縮液を水で9倍に希釈したものを現像液1とした。この現像液1の電導度は45mS/cmであった。
【0315】
6.平版印刷版原版の傷付き難さ(耐キズ性)の評価
上記で得られた各平版印刷版原版について、傷付き難さの評価を行った。
平版印刷版原版の感熱層表面に合紙を置き、その上下を段ボール紙で挟み、25℃、50%RHの環境下で3日間放置した。その後、CREO社製TrenndSetter3244を用いて版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光し、上記a、b又はcのいずれかの現像方法(第2表に示す。)で現像した。擦った部分が傷付いて白く抜けている程度を目視で観察して評価した。
現像前と全く変化なかったものを「◎」、ほぼ支持体が見えてしまい感熱層の色がほとんど見えなかったものを「×」、その中間レベルを順に「○」、「○△」、「△」、「△×」で表し、6段階評価とした。
結果を第2表に示す。
【0316】
7.平版印刷版原版の耐汚れ性の評価
上記で得られた各平版印刷版原版をCREO社製TrenndSetter3244を用いて版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光し、その後上記a、b又はcのいずれかの現像方法(第2表に示す。)で現像した。三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS紅(s)のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
ほとんど汚れていなかったものを「◎」、顕著に汚れていたものを「×」、その中間レベルを順に「○」、「○△」、「△」、「△×」で表し、6段階評価とした。
結果を第2表に示す。
【0317】
8.平版印刷版原版の耐刷性の評価
上記耐汚れ性の評価と同様の方法により平版印刷版を得た。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS墨(N)のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を第2表に示す。
【0318】
9.平版印刷版原版の感度の評価
上記で得られた各平版印刷版原版をCREO社製のTrendSetter3244を用いて版面エネルギー量を変更して全面露光し、上記a,b又はcのいずれかの現像方法(第2表に示す。)で現像した。感熱層が完全に除去されたと目視で観察されたときの版面エネルギー量により感度を評価した。数値が小さいほど感度が優れる。
結果を第2表に示す。
【0319】
【表2】
Figure 0003964816
【0320】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、耐キズ性及び感度に優れ、更に、耐汚れ性及び耐刷性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版原版に用いられるアルミニウム支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版原版に用いられるアルミニウム支持体の作成における電気化学的な粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版原版に用いられるアルミニウム支持体の作成における電気化学的な粗面化処理に用いられる二つ以上のラジアルドラムローラを連結した装置の概略構成図である。
【図4】 本発明の平版印刷版原版に用いられるアルミニウム支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる二段給電電解法の陽極酸化処理装置の概略図である。
【図5】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【図6】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11、211 アルミニウム板
12、212 ラジアルドラムローラ
13a、13b、213a、213b 主極
14、214 電解処理液
15、215 電解液供給口
16、216 スリット
17、217 電解液通路
18、218 補助陽極
19a、19b、219a、219b サイリスタ
20、220 交流電源
40、41、240 主電解槽
50、51、250 補助陽極槽
62a 第一給電部
62b 第二給電部
63a 第一電解部
63b 第二電解部
64a、64b ニップローラ
65a 第一給電電極
65b 第二給電電極
66a、66b、66c、66d 電解電極
67a、67b、67c、67d 電源
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (8)

  1. 最大高さRy1.5〜3.0μmのアルミニウム又はアルミニウム合金板に、異なる酸を主体とする電解液を用いる電気化学的粗面化処理を2回以上含む粗面化処理を行って得られる平版印刷版用支持体であって、
    前記粗面化処理が、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含み、
    前記粗面化処理前の最大高さRyに対する前記粗面化処後の最大高さRy’(Ry’/Ry)が2.0〜3.5であり、かつ、前記粗面化処後の最大高さRy’が4.0〜7.5μmである表面を有し、
    前記表面が、平均開口径5〜30μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有する、平版印刷版用支持体。
  2. 前記粗面化処理が、機械的粗面化処理、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に含む請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  3. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金板が、Feを0.20〜0.50質量%、Siを0.05〜0.15質量%、Tiを0.040質量%以下、かつ、Cuを0.040質量%以下含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム板である請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
  4. サーマルポジタイプの画像記録層を設ける平版印刷版原版に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  5. 最大高さRy1.5〜3.0μmのアルミニウム又はアルミニウム合金板に、少なくとも、硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理、および、塩酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理をこの順に施し、請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法。
  6. 更に、前記硝酸を主体とする電解液による電気化学的粗面化処理の前に、機械的粗面化処理を施す請求項5に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
  8. 前記画像記録層が、サーマルポジタイプである請求項7に記載の平版印刷版原版。
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