JP2006205023A - 炭酸ガス吸収・脱離ベッド - Google Patents

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Abstract

【課題】 リチウムシリケート粒子が液相の溶融塩に懸濁したスラリー状炭酸ガス吸収剤層を反応塔内に形成することにより、原料ガスから炭酸ガスを高効率で吸収分離する。
【解決手段】 炭酸カリウム(アルカリ炭酸塩)の配合により吸収温度:700℃でもK2CO3/Li3CO3の混合溶融塩11にリチウムシリケート粒子12が懸濁したスラリー状の炭酸ガス吸収層を反応塔内に形成する。吸収側の反応塔10aでは原料ガス(H2, CO2)が吸収剤に気液固接触するので吸収反応(Li4SiO4+CO2→Li2SiO3+LiCO3)が効率よく進行し、脱離側の反応塔10bでは脱離反応(Li2SiO3+LiCO3→Li4SiO4+CO2)に従って活性種(Li4SiO4)12が再生されCO2が放出される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、工場,内燃機関等から多量発生する高温の炭酸ガスを分離・回収する炭酸ガス回収プラントに好適な炭酸ガス吸収・脱離ベッドに関する。
炭酸ガスを多量発生させる火力発電所,石炭ガス化発電所,製鉄工場,セメント工場等のプラントでは、地球温暖化を防止する観点から炭酸ガス排出量の削減が強く求められている。しかし、炭酸ガス排出がエネルギーの利用に密接に関連しているため、削減に向けた具体的アクションの進展が緩慢である。そこで、発生した炭酸ガスを回収し、海洋や地底で固化(固定)する方法が開発されている。
大半の炭酸ガス回収技術は、常温や比較的低温の炭酸ガスを回収対象としており、各種プラントから排出される高温炭酸ガスには不向きである。炭酸ガスの回収に先立って高温ガスを一旦冷却すると炭酸ガスの分離回収が可能になるが、エネルギーロスが多く、総括的な収支バランスからみると却って炭酸ガスの排出量増加が懸念される。
高温炭酸ガスを回収可能にした吸収剤として、リチウムオルソシリケートが知られている(特許文献1)。リチウムシリケートは、一般式LixSiyz(x,y,zはx+4y−2z=0を満足する自然数)で表され、比較的安価に製造できるセラミック粒子である。リチウムシリケートのうち、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)は、高温炭酸ガスの分離に高性能を示し、セラミック粒子の体積に比較して400倍にも達する量の炭酸ガスを吸収でき、選択吸収性も高いため、各種プラントで多量発生する高温炭酸ガスの吸収剤として有望視されている。
特開2000-262890号公報
リチウムオルソシリケートを約700℃の高温で炭酸ガスと接触させると、式(1)の平衡反応が右側に進み炭酸ガスが吸収され、リチウムメタシリケート(Li2SiO3),炭酸リチウム(Li2CO3)が生成する。
Li4SiO4(s)+CO2(g)⇔Li2SiO3(s)+Li2CO3(s) ・・・(1)
式(1)の平衡反応は可逆反応であり、850℃の高温域では平衡反応(1)が左側に進み、リチウムメタシリケートと炭酸リチウムの反応で炭酸ガスが脱離し、リチウムオルソシリケートが再生される。高い選択吸収性,吸収・脱離反応の可逆性は、効率の良い炭酸ガス連続回収プロセスを可能にする。また、炭酸ガスの吸収・脱離が700〜850℃の高温反応であるため、プロセス熱源を直接利用でき、より効率的な炭酸ガス排出削減対策としての期待が高い。
リチウムシリケートは、高温炭酸ガスに対して優れた吸収能を呈するものの1μm程度の微粒子で使用されるため、高温炭酸ガスとの固気接触に有効な反応装置が未解決である。固定床(充填層),固気流動床等の反応塔の利用が考えられるが、粒径の非常に小さなリチウムシリケートが通気ガス流に随伴して外部に放出されやすい。
反応塔外部への放出は、適当なバインダを用いてリチウムシリケートを造粒することにより抑えられるが、700℃と850℃との高温域を温度スイングする反応塔内で長期にわたり必要な結合力を維持するバインダがない。
炭酸カリウムを配合して炭酸リチウムの融点を下げ、Li2CO3+K2CO3の液相で吸収剤粒子のペレット化状態を維持することも知られている(非特許文献1)が、この場合でも炭酸ガスの吸収に固気接触反応を利用しているので、微細なリチウムシリケート粒子と炭酸ガスとの接触が十分に図れない。しかも、吸収剤粒子の一部表面が液相で覆われるため、接触反応に有効な活性表面も減少する。
東芝レビュー Vol. 56, No. 8 (2001), pp. 11-14
炭酸ガスの吸収・脱離は700℃⇔850℃の温度スイングで進行するが、融点:730℃の炭酸リチウムは、吸収温度:700℃で固化し、脱離温度:850℃で融解する。炭酸ガスの脱離工程では塔内温度を850℃に上げて式(1)の平衡反応を左に進めるが、溶融・液化した炭酸リチウムがリチウムオルソシリケートから離れると、式(1)の平衡反応を繰り返せなくなる。溶融炭酸リチウムがリチウムメタシリケート粒子に接して保持される場合でも、粒子間隙に侵入した炭酸リチウムの液相でリチウムシリケートが液橋凝集すると、塔内の通風抵抗が局部的に増大して偏流を生じ、炭酸ガスの吸収・脱離に必要な固気接触が塔内で不均質になる。
本発明は、700℃⇔850℃の温度スイングが繰り返される反応塔内における炭酸リチウムの挙動に関する調査・検討から見出されたものであり、リチウムオルソシリケートを活性種として使用し、温度スイングの全域でリチウムシリケート粒子が懸濁した液相の溶融塩(スラリー)を維持し、従来の固気接触に代えて気液固接触状態を採用することにより、炭酸ガスの吸収・脱離反応を安定化させ、高温排ガスから炭酸ガスを一層高い効率で回収することを目的とする。
本発明は、炭酸カリウム(K2CO3)及び/又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)と炭酸リチウム(Li2CO3)との混合溶融塩(液相)にリチウムシリケート粒子が懸濁しており、炭酸カリウム(K2CO3)及び/又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)と炭酸リチウム(Li2CO3)との配合比率によって混合溶融塩の融点が700℃以下に下げられている炭酸ガス吸収・脱離ベッドで特徴付けられる。
炭酸ガスの吸収に有効なリチウムシリケート粒子は、SiO2:Li2O=1:2(モル比)のリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)であり、炭酸カリウム,炭酸ナトリウム等のアルカリ炭酸塩を含まず、或いは4.9モル%以下のアルカリ炭酸塩を含むものでも良い。リチウムシリケート粒子は、液相となる混合溶融塩に体積比(混合溶融塩,リチウムシリケート粒子の合計に対するリチウムシリケート粒子の比率):0.01〜0.74で懸濁している。
混合溶融塩は、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムと炭酸リチウムとの混合物であり、K2CO3濃度:15〜86モル%,Na2CO3濃度:15〜73モル%又はK2CO3+Na2CO3濃度:15〜73モル%となる配合割合で炭酸カリウム,炭酸ナトリウム等のアルカリ炭酸塩を炭酸リチウムと配合することにより融点:700℃以下に調整されている。
本発明は、リチウムシリケートを炭酸ガス吸収剤に使用している。たとえば、リチウムオルソシリケートは、SiO2とLi2CO3を1:2のモル比で配合した混合物を高温長時間焼成(たとえば、1000℃×8時間)することにより合成されるが、炭酸カリウム,炭酸ナトリウム等のアルカリ炭酸塩を添加せず、或いはリチウムオルソシリケートのモル数に対して最大4.9モル%以下のアルカリ炭酸塩を添加して焼成した粒子も使用できる。得られるリチウムシリケート粒子は、粒径約1μmのセラミック粒子であり、式(1)の平衡反応に従って炭酸ガスを吸収・脱離する。
CO2吸収反応で生成する炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸カリウム(K2CO3)及び/又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)との混合溶融塩が吸収温度:700℃でも液相になるように、炭酸カリウム,炭酸ナトリウム(以下、"アルカリ炭酸塩"で総称する)の脱離量を取り込んだ配合割合でアルカリ炭酸塩がリチウムシリケートに配合されている。CO2吸収反応で生成するアルカリ炭酸塩が融点:700℃以下を達成するのに不足する場合、予め必要量のアルカリ炭酸塩を混合溶融塩に配合しておく。
アルカリ炭酸塩は炭酸リチウムの融点降下剤として働き、混合溶融塩のK2CO3濃度が15モル%以上,Na2CO3濃度が15モル%以上,K2CO3+Na2CO3濃度が15モル%以上になるとK2CO3(及び/又はNa2CO3)・Li2CO3混合系の融点が700℃以下に降下する。生成した液相の混合溶融塩にリチウムシリケートが懸濁し、スラリー状態に維持される。
リチウムシリケート粒子が混合溶融塩に懸濁したスラリーを炭酸ガス吸収・脱離ベッドに使用するとき、リチウムシリケート粒子をペレット化した従来の吸収剤とは全く異なる反応形態で炭酸ガスを吸収・脱離する。
塔内温度:700℃でリチウムシリケートが懸濁しているスラリーにCO2含有排ガスが接触すると、排ガスは微細気泡となってスラリー中を浮上し、浮上する過程で式(1)の平衡反応に従ってCO2がリチウムシリケートに吸収される。このときのCO2吸収反応は、微細気泡とリチウムシリケートとの接触頻度,接触面積が増加している気液固接触反応であるため、液相のない固気接触に比較して格段に高い反応効率を示す。また、CO2の吸収反応で生成したLi2CO3はスラリー中のアルカリ炭酸塩との接触により融点が降下して直ちに液化し、吸収剤粒子表面からスラリーに拡散するため、吸収剤粒子表面に常に新しい活性表面が露出する。このことも、CO2の吸収効率を上げる原因である。
生成したLi2CO3は、吸収剤粒子表面から分離しても反応系外に放散されることなく混合溶融塩の一部となる。しかも、スラリーでトラップされているので、微粉にも拘わらずリチウムシリケートが反応塔から溢流しなくなる。この点、気液固接触でCO2を吸収する反応塔の操作は、液相のない固気流動床の操作に比較して容易で安定性に優れている。
塔内温度が脱離温度:850℃では、スラリー中のLi2CO3がリチウムメタシリケートと反応して式(1)の平衡反応が左側に進み、リチウムオルソシリケートが再生される。脱離した炭酸ガスは、微細気泡となってスラリー中を浮上するとき微細気泡の上昇運動でスラリーを攪拌し、結果としてスラリー中Li2CO3と懸濁粒子・Li2SiO3との接触頻度を増加させる。
このように送り込まれた炭酸ガス含有気体や脱離した炭酸ガスでスラリーが常時攪拌されるため均一な濃度分布,温度分布が得られ、均一な反応場が維持され、炭酸ガス/リチウムシリケート粒子又はスラリー中炭酸リチウム/懸濁粒子との接触頻度が格段に向上し、従来のペレット化した固形吸収剤から予想できない吸収・脱離能が得られる。
実施の形態
吸収剤を用いた炭酸ガスの分離には、二基の反応塔を並列配置した炭酸ガス回収システム(図1)や反応塔内を吸収ゾーン,脱離ゾーンに区分した単塔型炭酸ガス回収システム(図2)の何れも採用できる。
並列配置型炭酸ガス回収システム(図1)では、並列配置した二基の反応塔10a,10bそれぞれにアルカリ炭酸塩をリチウムシリケートに配合した炭酸ガス吸収剤を充填する。アルカリ炭酸塩(以下の説明では、炭酸カリウムで代表させる)の配合量は、反応塔10a,10bが温度幅(700℃⇔850℃)で温度スイングされることから、炭酸ガスの吸収温度:700℃でも液相の溶融塩11が保たれる量に定められる。
具体的には、Li2CO3/K2CO3の二元状態図〔図3:W. Eitel and W. Skaliks, Z, anorg. u. allgem. Chem., 183, 263 (1929)〕から、700℃以下の融点はK2CO3:15モル%以上で達成されることが判る。Na2CO3でも15モル%以上で、K2CO3/Na2CO3/Li2CO3の三元系でも図4の斜線領域にK2CO3+Na2CO3濃度を維持することにより、混合溶融塩の融点が700℃以下になる。融点降下に及ぼすアルカリ炭酸塩の影響はK2CO3:Na2CO3=1:1の場合が最も強く現れ、K2CO3:Na2CO3=1:1の三元系でK2CO3+Na2CO3濃度:15モル%以上で混合溶融塩の融点が700℃以下になる。
しかし、過剰量のアルカリ炭酸塩を配合すると、式(1)の平衡反応が左側に進むときに必要な混合溶融塩中の炭酸リチウムの供給不足が生じるので、アルカリ炭酸塩濃度の上限をK2CO3:86モル%,Na2CO3:73モル%,K2CO3+Na2CO3:73モル%とする。好ましくは、それぞれK2CO3:15〜61モル%,Na2CO3:15〜51モル%,K2CO3+Na2CO3:15〜61モル%の範囲にK2CO3濃度,Na2CO3濃度又はK2CO3+Na2CO3濃度を維持する。
炭酸カリウム,炭酸リチウムの混合溶融塩に懸濁させるリチウムシリケート粒子は、平均粒径:100μm以下の微粒子が好ましい。粒径が小さくなるほど炭酸ガスの吸収反応に有効な比表面積が増加する。他方、リチウムシリケート粒子をペレット化した従来の炭酸ガス吸収剤ではペレット体積当りの比表面積が小さく、本発明で使用しているリチウムシリケート粒子とは基本的に相違する。しかし、過度に微細な粒径では、製造コストが高くなり、取扱いにも支障をきたすので、平均粒径:0.1〜10μmの微粒子が実用的である。
適正量のアルカリ炭酸塩の配合により、吸収温度:700℃,脱離温度:850℃の何れでもアルカリ炭酸塩/炭酸リチウムの混合溶融塩にリチウムシリケート粒子12が懸濁したスラリー11が塔内に保たれる。
混合溶融塩,リチウムシリケート粒子の合計量に対するリチウムシリケート粒子の体積比:0.01以上でリチウムシリケート粒子が懸濁していると、炭酸ガスの吸収・脱離に有効な気液固接触反応が促進される。しかし、体積比:0.74を超える過剰量のリチウムシリケート粒子が懸濁すると、気液固接触反応に必要な液相が不足しがちになる。リチウムシリケート粒子の好ましい懸濁量は、体積比:0.05〜0.6の範囲にある。
図1では、第一反応塔10aの塔内温度を吸収温度:700℃として吸収塔に、第二反応塔10bの塔内温度を脱離温度:850℃として脱離塔に使用している。CO2含有被処理ガスは、燃料を水蒸気改質塔13で処理することにより得られた改質燃料ガスが代表的な原料ガスであるが、燃料以外の種々のCO2含有ガスも同様に使用される。図1の方式は、燃焼用空気で希釈される前の高濃度の改質燃料ガスからCO2を分離するので、分離に必要なエネルギーを大幅に削減できる。更に、後続の燃焼プロセスにCO2が持ち込まれないため、燃焼器の容積や配管系のサイズを縮小でき、制作費の削減も可能になる。勿論、燃焼後の排ガスからCO2を分離することにも適用可能である。
水蒸気改質塔13は、給気主管14から分岐した給気支管14a,14bで反応塔10a,10bに接続される。反応塔10a,10bはそれぞれ、排気支管15a,15bが合流する排気主管15で炭酸ガス貯蔵タンク16に接続される。CO2分離後の燃料(製品ガス)は、排気支管15a,15b間を連絡する基管17から製品取出し管18を経てガスタービン等の燃料消費サイト19(製品ガス貯留サイト)に送られる。
給気支管14a,14bには、水蒸気改質塔13からの改質ガス供給先を第一反応塔10a又は第二反応塔10bに切り替えるガス供給弁V14a,V14bが設けられている。反応塔10a,10bから排ガス(分離後の炭酸ガス)を炭酸ガス貯蔵タンク16に送り出す排気支管15a,15bには排ガス放出弁V15a,V15b、排気支管15a,15bと製品取出し管18との間の基管17には製品取出し弁V17a,V17bがそれぞれ設けられている。なお、水蒸気改質塔13から反応塔10a,10bへの流路を切り替えるため、ガス供給弁V14a,V14bに代えて三方弁を使用でき、製品取出し弁V17a,V17bも三方弁に置換可能である。
第一反応塔10aが炭酸ガス吸収期(図1)にあるとき、第一反応塔10aの塔内温度を吸収温度:700℃に保持し、ガス供給弁V14aを開放しガス供給弁V14bを閉じて水蒸気改質ガス(原料ガス)を第一反応塔10aに送り込む。水蒸気改質ガスは微細気泡となってK2CO3,Li2CO3のスラリー11内を浮上し、浮上過程で吸収反応(Li4SiO4+CO2→Li2SiO3+Li2CO3)に従ってリチウムシリケート粒子12に炭酸ガスが吸収される。
このとき、排気支管15aの製品取出し弁V17aを開放し、排ガス放出弁V15aを閉じているので、炭酸ガスが除去された改質ガスは第一反応塔10aから排気支管15a,基管17,製品取出し管18を経て燃料消費サイト19に送り出される。
第一反応塔10aが炭酸ガス吸収期(図1)にあるとき、第二反応塔10bを炭酸ガス脱離状態にする。そのため、第二反応塔10bの塔内温度を脱離温度:850℃まで上げ、基管17の製品取出し弁V17bを閉じ、排気支管15bの排ガス放出弁V15bを開放する。第二反応塔10b内では脱離反応(Li2SiO3+Li2CO3→Li4SiO4+CO2)が進行し、リチウムオルソシリケート粒子12(活性種)が再生されると共に炭酸ガスが脱離される。生成した炭酸ガスは、微細気泡となってスラリー11から浮上・分離し、排気支管15b,排気主管15を経て炭酸ガス貯蔵タンク16に送り出される。
第一反応塔10aでは、反応(1)が平衡に達する段階又は直前の段階まで継続される。具体的には、製品取出し管18から送り出される製品ガスを連続的又は断続的に分析して炭酸ガス濃度C1を求め、該炭酸ガス濃度C1を未処理の水蒸気改質ガス(原料ガス)の炭酸ガス濃度C0と比較することにより、第一反応塔10a内にあるリチウムシリケート粒子12の炭酸ガス吸収能を把握できる。
濃度差ΔC(C0−C1)が閾値を下回ったとき、第二反応塔10bの塔内温度を吸収温度:700℃まで下げ、給気支管14aのガス供給弁V14aを閉じ、給気支管14bのガス供給弁V14bを開放して水蒸気改質塔13から第二反応塔10bに水蒸気改質ガスの供給を開始する。また、排ガス放出弁V15bを閉じ製品取出し弁V17bを開放することにより、排気支管15b,基管17,製品取出し管18を介して第二反応塔10bを燃料消費サイト19に接続する。
他方の第一反応塔10aでは、塔内温度を脱離温度:850℃まで上げ、製品取出し弁V17aを閉じ排ガス放出弁V15aを開放することにより、排気支管15a,排気主管15を経由して炭酸ガス貯蔵タンク16に第一反応塔10aを接続する。
反応塔10a,10bの温度制御や各種弁の開閉は検出濃度差ΔCに基づいて実施されるが、このような操作には種々の自動制御を採用できる。たとえば、検出濃度差ΔCを制御システム(図示せず)に入力し、制御システムで検出濃度差ΔCから反応塔10a,10bの降温,昇温タイミング及び各種弁の開閉タイミングを演算し、演算結果を制御信号として反応塔10a,10bの加熱・冷却機構や弁開閉機構に出力する。
その結果、第二反応塔10bで式(1)の平衡反応が右側に進行し、水蒸気改質ガスから炭酸ガスがリチウムオルソシリケート粒子12に吸収され、第一反応塔10aで式(1)の平衡反応が左側に進行しリチウムオルソシリケート粒子12の再生,炭酸ガスの脱離が開始される。炭酸ガスの吸収とリチウムシリケート粒子12の再生,炭酸ガスの脱離とを反応塔10a,10bで交互に繰り返すことにより、水蒸気改質ガスから炭酸ガスを連続的に除去でき、炭酸ガス濃度の低い水蒸気改質ガスが燃料消費サイト19に送り出される。
反応塔内を吸収ゾーン,脱離ゾーンに区分した炭酸ガス回収システム(図2)では、仕切り板21を塔内に配置した反応塔20が使用される。この場合にも、炭酸カリウムを配合したリチウムシリケート粒子を炭酸ガス吸収剤22に使用するので、液相の混合溶融塩にリチウムシリケート粒子が懸濁したスラリーが塔内に維持される。
仕切り板21は、反応塔20の内部を垂直方向に延び、上部に開口21aが形成され、反応塔20の底面との間に隙間21bのある位置にセットされる。仕切り板21で反応塔20の内部が吸収ゾーン20a,脱離ゾーン20bに区分されるが、吸収ゾーン20a、脱離ゾーン20bは開口21a,隙間21bで相互に連通している。
吸収ゾーン20a、脱離ゾーン20bは、反応塔20を取り囲む加熱保持機構(図示せず)でそれぞれ吸収温度:700℃,脱離温度:850℃に保持される。ゾーン20a,20bの温度制御は、加熱保持機構の出力を調整することによって実現される。
CO2含有原料ガス(被処理ガス)を反応塔20に送り込むため、原料ガス源(水蒸気改質塔)23から延びた原料ガス供給管24を吸収ゾーン20aの低部近傍に開口させる。ガス供給管24から吸収ゾーン20aに吹き込まれた原料ガスは、微細気泡となって吸収ゾーン20aを上昇し、上昇過程で吸収反応(Li4SiO4+CO2→Li2SiO3+Li2CO3)に従って炭酸ガスがスラリーに吸収される。スラリーも、微細気泡の浮上によって上昇力を与えられ、吸収ゾーン20aを上昇する。
炭酸ガスが吸収分離された製品ガスは、吸収ゾーン20aの上方に開口した製品取出し管28で補集され、燃料消費サイト29(製品ガス貯留サイト)に送り出される。
吸収ゾーン20aを上昇したスラリーは、開口21aから脱離ゾーン20bに溢流する。スラリーの上昇,溢流により、吸収ゾーン20a→開口21a→脱離ゾーン20b→隙間21b→吸収ゾーン20aのスラリー循環流が反応塔20の内部に形成される。
脱離温度:850℃に保持された脱離ゾーン20bでは、スラリー中のリチウムシリケート粒子から脱離反応(Li2SiO3+Li2CO3→Li4SiO4+CO2)に従って炭酸ガスが脱離し、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)が再生される。
再生したリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)は、スラリー循環流に載って吸収ゾーン20aに送り込まれる。そのため、吸収ゾーン20aには、常に活性なリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)が懸濁したスラリーが保持される。
脱離反応で生成した炭酸ガスは、脱離ゾーン20bを浮上し、脱離ゾーン20bの上方に開口している排気管25で補集され、熱交換器35を経て炭酸ガス貯蔵タンク26に送り出される。脱離ゾーン20bのスラリー中を脱離炭酸ガスが浮上する際、原料ガスの吹込み量に比較して炭酸ガスの脱離量が少ないため、脱離炭酸ガスの上昇に伴う逆流が生じることなく、吸収ゾーン20a→開口21a→脱離ゾーン20b→隙間21b→吸収ゾーン20aのスラリー循環流が反応塔20の内部に維持される。
排気管25で取り出される炭酸ガスは、脱離温度:850℃に保持された脱離ゾーン20bから排出されることから、吸収ゾーン20aからの製品ガスに比較して高温である。そこで、炭酸ガス,製品ガスを熱交換させると、炭酸ガスによって系外に持ち去られる熱が回収され、熱収支の良いプラントになる。排気される炭酸ガスからの熱回収は、排気主管15,製品取出し管18を熱交換器に導き、炭酸ガス,製品ガス間で熱交換させるとき図1の回収プラントでも可能である。
次いで、実施例によって本発明を具体的に説明するが、実施例の記述が本発明の技術的範囲に何ら影響を及ぼすものでないことは勿論である。なお、実施例では、炭酸カリウムをアルカリ炭酸塩に使用したが、炭酸ナトリウム単独又は炭酸カリウムと混合したアルカリ炭酸塩を使用しても同様に炭酸ガスが吸収・脱離される。
平均粒径:1μmのリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)粒子を炭酸ガス吸収剤に使用し、Li4SiO4:K2CO3:Li2CO3のモル比が0.16:0.52:0.32となるように炭酸カリウム,炭酸リチウムと配合した。調整された混合物は、700℃に加熱された状態では液相の混合溶融塩(K2CO3+Li2CO3,融点:500℃)にリチウムシリケート粒子が13体積%懸濁したスラリーとなる。
本実施例では、内部を仕切り板21で等分の吸収ゾーン20a,脱離ゾーン20bに区分した容量:4リットルの実験用反応塔20(図5)を使用した。幅:50mm,長さ:750mmのステンレス鋼板で、長手方向一端から350mmの個所に幅:40mm,長さ:50mmの開口21aを形成した仕切り板21を用いた。
炭酸ガス吸収剤22を反応塔20に5200g充填し、未溶融状態の厚みで500mmの吸収ゾーン20a,脱離ゾーン20bを形成した。炭酸ガス吸収剤22の充填後、仕切り板21を吊り下げた蓋体20cを反応塔20の上部開口に装着し、反応塔20の内部を大気から遮断した。蓋体20cが装着された状態では、反応塔20の底面と仕切り板21の下端との間に50mmの隙間21bができた。
原料ガス源23(炭酸ガス供給源23a,窒素ガス供給源23b)から延びた原料ガス供給管24を蓋体20cに刺し通し、反応塔20の底面から50mmの高さに先端開口が達するまで原料ガス供給管24を吸収ゾーン20aの炭酸ガス吸収剤22に刺し込んだ。また、蓋体20cに製品取出し管28,排気管25を刺し通し、吸収ゾーン20a,脱離ゾーン20bそれぞれの上方空間に開口させた。
反応塔20を蓋体20cで密閉した後、環状電気炉31a,31bで吸収ゾーン20aを吸収温度:700℃,脱離ゾーン20bを脱離温度:850℃に保持すると、炭酸ガス吸収剤22の炭酸リチウム,炭酸カリウムが溶融して混合溶融塩となり、リチウムシリケート粒子が懸濁した厚み:500mmのスラリーとなった。スラリーが形成された後では、仕切り板21の開口21aはスラリー表面から50mmの深さに位置した。なお、吸収ゾーン20a,脱離ゾーン20bを温度制御するため、環状電気炉31a,31bへの投入電力をコントローラ32a,32bで制御した。
スラリーが安定状態に達した段階で原料ガス供給管24から流量:1リットル/分で原料ガスを吸収ゾーン20aに吹き込んだ。原料ガスとしては、反応塔20の炭酸ガス分離回収能を調査するためCO2:N2=20:80(体積比)の混合ガスを用い、原料ガス供給管24に設けた流量調整器24a,24bでCO2,N2それぞれの流量を調節しながら反応塔20に送り込んだ。
原料ガスは微細気泡となって吸収ゾーン20aを浮上し、浮上過程で炭酸ガスが分離された。シミュレーション試験の結果から、吸収ゾーン20aを浮上する原料ガスの微細気泡は0.05〜1mmのサイズであり、スラリー中の活性種(Li4SiO4)に対して十分な接触頻度をもつことが判った。微細気泡の浮上に伴い流速:10mm/分で吸収ゾーン20aのスラリーが上昇し、吸収ゾーン20a→開口21a→脱離ゾーン20b→隙間21b→吸収ゾーン20aのスラリー循環流が反応塔20内に生じた。
吸収ゾーン20aから製品取出し管28を経て送り出される製品ガスF(CO2分離後の窒素ガス)の流量,CO2濃度を流量計33a,CO2濃度計34aで測定したところ、流量:0.8リットル/分,CO2濃度:2体積%であった。また、製品ガスFの温度は700℃近傍にあった。
脱離ゾーン20bから排気管25を経て送り出される排ガスWの流量,CO2濃度を流量計33b,CO2濃度計34bで測定したところ、流量:0.2リットル/分,CO2濃度:95体積%であり、原料ガスから効率よく炭酸ガスが分離されていることが判る。しかし、排ガスWは800℃近傍の高いガス温度を示し、そのまま自然冷却させると熱収支が悪くなる。
そこで、製品ガスF,排ガスWを熱交換器35に送り込み熱交換させたところ、排ガスWが750℃まで降温し、製品ガスFが720℃に昇温した。製品ガスFの昇温は、製品ガスFが燃料であるとき、顕熱が燃焼熱に加算された熱エネルギーが得られることを意味し、熱収支が改善された炭酸ガス回収プラントとなる。
同じ条件下で原料ガス源23から反応塔20に原料ガスを送り込みながら炭酸ガスの吸収・脱離を継続したところ、6時間経過後にも製品ガス貯留サイト29に送り出される製品ガスFの流量変動幅が0.8±0.08リットル/分,炭酸ガス貯蔵タンク26に送り出される炭酸ガスの流量変動幅が0.2±0.02リットル/分の範囲に留まっていた。製品ガスFの流動変動幅が小さいことは吸収ゾーン20aのリチウムシリケートが長時間にわたって活性状態(Li4SiO4)に保たれ、炭酸ガスの流動変動幅が小さいことは脱離ゾーン20bで脱離反応(Li2SiO3+Li2CO3→Li4SiO4+CO2)が継続されたことを意味する。すなわち、炭酸ガスが効率よく吸収・脱離され、耐久性のある炭酸ガス回収プラントであることが確認される。
以上に説明したように、炭酸ガスの吸収温度:700℃でもアルカリ炭酸塩と炭酸リチウムとの混合溶融塩に活性種(Li4SiO4)が懸濁したスラリー状態の炭酸ガス吸収・脱離ベッドは、気液固接触反応で原料ガスからCO2を効率よく吸収分離する。しかも、リチウムシリケート粒子の表面が固相の炭酸リチウムで覆われないため、脱離反応(Li2SiO3+Li2CO3→Li4SiO4+CO2)も支障なく進行する。したがって、原料ガス又は脱離炭酸ガスによるスラリーのバブリングと相俟って炭酸ガスの吸収・脱離効率が向上し、耐久性に優れた炭酸ガス回収プラントが構築される。
二基の反応塔を並列配置した炭酸ガス回収システムの概略図 一基の反応塔内を吸収ゾーン,脱離ゾーンに区分した炭酸ガス回収システムの概略図 2CO3/Li2CO3の二元状態図 2CO3/Na2CO3/Li2CO3の三元状態図 実施例で用いた実験プラントの説明図
符号の説明
10a,10b:反応塔 11:スラリー(K2CO3・Li2CO3の混合溶融塩) 12:リチウムシリケート粒子 13:水蒸気改質塔 14:給気主管 14a,14b:給気支管 15:排気主管 15a,15b:排気支管 16:炭酸ガス貯蔵タンク 17:基管 18:製品取出し管 19:燃料消費サイト(製品ガス貯留サイト) V14a,V14b:ガス供給弁 V15a,V15b:排ガス放出弁 V17a,V17b:製品取出し弁
20:反応塔 20a:吸収ゾーン 20b:脱離ゾーン 20c:蓋体 21:仕切り板 21a:開口 21b:隙間 22:炭酸ガス吸収剤 23:原料ガス源 24:原料ガス供給管 24a,24b:流量調整器 25:排ガス管 26:炭酸ガス貯蔵タンク 28:製品取出し管 29:燃料消費サイト(製品ガス貯留サイト) 31a,31b:環状電気炉 32a,32b:コントローラ 33a,33b:流量計 34a,34b:CO2濃度計 35:熱交換器
F:製品ガス(CO2除去後の燃料) W:排ガス

Claims (4)

  1. 炭酸カリウム(K2CO3)及び/又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)と炭酸リチウム(Li2CO3)との混合溶融塩(液相)にリチウムシリケート(LixSiyz:x,y,zはx+4y−2z=0を満足する自然数)粒子が懸濁しており、混合溶融塩の融点が700℃以下になる比率で炭酸カリウム(K2CO3)及び/又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)と炭酸リチウム(Li2CO3)が配合されていることを特徴とする炭酸ガス吸収・脱離ベッド。
  2. リチウムシリケート粒子がSiO2:Li2O=1:2(モル比)のリチウムオルソシリケートである請求項1記載の炭酸ガス吸収・脱離ベッド。
  3. 液相の混合溶融塩にリチウムオルソシリケート粒子が体積比:0.01〜0.74で懸濁している請求項1又は2記載の炭酸ガス吸収・脱離ベッド。
  4. 2CO3濃度:15〜86モル%,Na2CO3濃度:15〜73モル%又はK2CO3+Na2CO3濃度:15〜73モル%で炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムが混合溶融塩に配合されている請求項1〜3何れかに記載の炭酸ガス吸収・脱離ベッド。
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