以下、図面を参照して、本発明に係る光検出素子の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明の実施形態に係るホトダイオードの断面構成を示す断面図である。ホトダイオード(光検出素子)1は、N型半導体基板(半導体層)10及びファイバガイド13等を主に備えて成り、光ファイバから出力される光信号が一方の面から入射すると、この光信号を吸収してキャリアを生成し、この生成したキャリアを電気的な検出信号として他方の面側から出力するものである。
N型半導体基板10としては、例えば、リン等のN型不純物が添加されたシリコン基板を用いることができる。N型半導体基板10の不純物濃度は、例えば1012〜1015/cm3である。また、N型半導体基板10の厚さt1は、例えば200〜500μmである。
N型半導体基板10の面S1側における表層の一部には、P+型不純物半導体領域11とN+型高濃度不純物半導体領域22とが形成されている。
P+型不純物半導体領域11は、例えばボロン等のP型不純物が添加されており、N型半導体基板10とpn接合を構成している。P+型不純物半導体領域11の不純物濃度は、例えば1015〜1020/cm3である。また、P+型不純物半導体領域11の厚さは、例えば0.1〜20μmである。
N+型高濃度不純物半導体領域22は、N型半導体基板10の面S1の表層に、P+型不純物半導体領域11と所定の距離を隔てて形成されている。N+型高濃度不純物半導体領域22は、N+型高濃度不純物半導体層21と同様にN型不純物が高濃度に添加されており、後述するカソード電極26とのコンタクト層になっている。N+型高濃度不純物半導体領域22の不純物濃度は、例えば1015〜1020/cm3である。また、N+型高濃度不純物半導体領域22の厚さは、例えば0.1〜30μmである。
N型半導体基板10の面S1の表面には絶縁膜23が形成されている。絶縁膜23はSiO2やSiN等によって成り、厚さは、例えば0.1〜2μmである。また、絶縁膜23には、開口23a,23bが形成されており、開口23aはP+型不純物半導体領域11の部分に、また、開口23bはN+型高濃度不純物半導体領域22の部分に設けられている。
開口23a,23bを含む絶縁膜23の表面には、それぞれアノード電極25とカソード電極26とが形成されている。アノード電極25及びカソード電極26の厚さは、例えば1μmである。また、アノード電極25、カソード電極26は、それぞれ開口23a,23bを充填するように設けられている。これにより、アノード電極25が開口23aを介してP+型不純物半導体領域11と電気的に接続されるとともに、カソード電極26が開口23bを介してN+型高濃度不純物半導体領域22と電気的に接続されている。アノード電極25及びカソード電極26としては、例えばAlが用いられる。
さらに、ホトダイオード1の面S1側には、パッシベーション膜31、支持膜32、充填電極33a,33b、UBM(Under Bump Metal)34a,34b、及びバンプ35a,35bが形成されている。パッシベーション膜31は、絶縁膜23、アノード電極25及びカソード電極26を覆うように形成されている。また、パッシベーション膜31のうち、アノード電極25及びカソード電極26に対応する部分には、充填電極33a,33bが充填される貫通孔31aが形成されている。
パッシベーション膜31は、N型半導体基板10の面S1を保護するためのものであり、例えば、ポリイミド、SiO2やSiN等から成る。パッシベーション膜31は、例えばプラズマCVD法により形成することができる。また、パッシベーション膜31の厚さは、例えば1μm程度である。
更に、パッシベーション膜31の表面には、支持膜32が形成されている。支持膜32は、N型半導体基板10を支持するためのものである。支持膜32のうち貫通孔31aに対応する部分に、貫通孔31aと共に充填電極33a,33bが充填される貫通孔32aが形成されている。支持膜32は、例えば、樹脂、或いはプラズマCVD、スピンオンガラス(SOG)、スパッタ等により形成可能なSiO2等である。また、支持膜32の厚さは、例えば2〜100μmであり、好ましくは50μm程度である。
充填電極33a,33bは、例えば、Cu等の導体が貫通孔31a,32aに充填されるとともに、一端がそれぞれアノード電極25及びカソード電極26に接している。これにより、充填電極33a,33bは、それぞれ、P+型不純物半導体領域11、N+型高濃度不純物半導体領域22と電気的に接続される。また、充填電極33a,33bの他端は、ともに支持膜32の表面に露出している。すなわち、充填電極33a,33bは、パッシベーション膜31及び支持膜32を貫通して、それぞれアノード電極25、カソード電極26から支持膜32の表面まで延びている。また、充填電極33a,33bは、例えば、略円柱状となっている。貫通孔31a,32aの直径は、例えば10〜200μmであり、好ましくは100μm程度である。
そして、充填電極33a,33bの支持膜32表面に露出する部分には、UBM34a,34bが形成されている。UBM34a,34bは、例えばNiやAuの積層膜からなる。UBM34a,34bの厚さは、例えば0.1〜10μmである。
UBM34a,34bの表面にはバンプ35a,35bがそれぞれ形成され、バンプ35a,35bは、アノード電極25、カソード電極26とそれぞれ電気的に接続されている。バンプ35a,35bは、UBM34a,34bとの接触面を除いては略球状となっている。バンプ35a,35bは、例えば、半田、金、Ni−Au、Cu、金属フィラーを含む導電性樹脂、或いは、これらの複合(積層)素材等によって成る。
また、N型半導体基板10の面S2側におけるP+型不純物半導体領域11に対向する領域には凹部12が形成されている。凹部12は、間口が光ファイバFの断面径よりも大きく、面S2から面S1に向かってテーパ状に狭くなっており、底部の近傍では、光ファイバFよりも断面径の小さな略角錐台形状(或いは、円錐台形状)となっている。凹部12の厚さは、例えば2〜400μmである。
N型半導体基板10の面S2側の表層(凹部12内部の底面及び側面を含む)の全体にはN+型高濃度不純物半導体層21が形成されている。さらに、N+型高濃度不純物半導体層21の表面全体には絶縁膜24が形成されている。
N+型高濃度不純物半導体層21には、N型不純物がN型半導体基板10よりも高濃度に添加されている。N+型高濃度不純物半導体層21の不純物濃度は、例えば1015〜1020/cm3である。また、N+型高濃度不純物半導体層21の厚さは、例えば0.1〜50μmである。
絶縁膜24は、例えばSiO2やSiN等によって成り、厚さは、例えば0.05〜1μmである。
また、N+型高濃度不純物半導体層21の表面には、凹部12を取り囲むようにファイバガイド13が貼り合わされている。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(ファイバガイド13がガラスの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。ここで、ダイレクトボンディングとは、N型半導体基板10等の半導体層の清浄な面と、スペーサ10a等の凹部構成層の清浄な面とを直接密着させて熱を加える等により接合する処理を意味する。
ファイバガイド13は、凹部12内に光ファイバFの端部を案内するものであり、例えば、パイレックス(登録商標)等のガラスや、セラミック、シリコン等の素材によって成る。そして、ファイバガイド13には、凹部12に連通する貫通孔40が設けられ、貫通孔40は、光ファイバFが挿入され易いように、光ファイバFよりも大きな断面径を有する。
そして、凹部12内には、ファイバガイド13の貫通孔40内を挿通した光ファイバFが挿入され、この光ファイバFの端部からは光信号が出力される。凹部12により、N型半導体基板10のうち凹部12の底面及びP+型不純物半導体領域11で挟まれた領域(光検出領域)は、凹部12内に挿入された光ファイバFの端部から出力される光信号の入射により発生したキャリアが面S1側表層に設けられたP+型不純物半導体領域11付近まで達し易くなるように、他の領域よりも薄板化されている。この光検出領域の厚さは、例えば、10〜200μmである。
光ファイバFは、図中符号Aに示す箇所で凹部12内部の側面に当接している(図2(a)参照)。図2(a)は、N型半導体基板10を光ファイバFの挿入方向から見た図である。図示のように、光ファイバFの端部は、凹部12内部の側面に対し4点で当接している。
また、図2(b)は、N型半導体基板10を光ファイバFの挿入方向とは逆方向から見た図である。図示のように、平面視で、光検出領域に重なるP+型不純物半導体領域11はN型半導体基板10の略中央に位置し、さらに、その外側には、P+型不純物半導体領域11を囲むように、N+型高濃度不純物半導体領域22が閉じた帯状に形成されている。また、N+型高濃度不純物半導体領域22の形成領域にはバンプ35a,35bが、それぞれ少なくとも一つ以上設けられている。バンプ35a,35bの各形成位置は、それぞれ、必ずしもN+型高濃度不純物半導体領域22の形成領域に限るわけでなく、例えば、P+型不純物領域11の形成領域でもよいし、他の箇所であってもよい。
また、特に図示しないが、ホトダイオード1の表面(特に、ファイバガイド13やN型半導体基板10)には、外光を遮光してノイズ増加を抑制するための遮光膜が設けられている。そして、光ファイバFは、半田接合や樹脂接合によりファイバガイド13内の側面に固着されている。この場合、少なくとも、光ファイバFの外周面と凹部12内の側面との間に遮光膜が形成され、この遮光膜により凹部12内が遮光されている。これにより、外光がファイバガイド13等を介して凹部12内に進入し、この外光によるノイズが生じる、ということが生じにくくなる。また、光ファイバFがメタライズド光ファイバ或いは金属フェルール型光ファイバであって、ファイバガイド13の貫通孔40内の側面が金属膜で覆われているような構成の場合には、光ファイバFは半田接合によりファイバガイド13内の側面に固着される。これにより、凹部12内部が高気密で遮光性に優れ、信頼性の高いホトダイオード1が実現できる。ここで、上記の金属膜は、例えば、ニッケル、チタン、白金或いは金等である。
更に、この光ファイバFに対する半田接合によってホトダイオード1の機械的強度の向上が図られる。なお、ファイバガイド13の貫通孔40内の側面を覆う金属膜を、上記遮光膜(この場合、金属膜)に連続させて設けることも可能である。このようにすれば、金属膜がホトダイオード1の表面を覆うため、機械的強度が更に向上するとともに、凹部12内部がより高気密で遮光性に優れ、より信頼性の高いホトダイオード1が実現できることとなる。
ここで、図3に、上記構成のホトダイオード1の斜視図を示す。図3に示すように、ホトダイオード1は、UBM34a,34b及びバンプ35a,35bを除く全体形状が略直方体となるようにダイシングされたものとなっている。なお、図3では、N型半導体基板10の側面に露出するN+型高濃度不純物半導体層21、N+型高濃度不純物半導体領域22の図示を省略している。
次に、ホトダイオード1の動作について説明する。ここでは、ホトダイオード1に逆バイアス電圧が印加されており、N型半導体基板10には、光検出領域を中心に空乏層が生じているものとする。
凹部12内で光ファイバFからN型半導体基板10に入射した光信号は、主に光検出領域で吸収され、この領域でキャリア(正孔及び電子)が発生する。発生した正孔及び電子は、逆バイアス電界に従って、それぞれP+型不純物半導体領域11及びN+型高濃度不純物半導体領域22へと移動する。P+型不純物半導体領域11及びN+型高濃度不純物半導体領域22に達した正孔及び電子は、充填電極33a,33b及びUBM34a,34bを介してバンプ35a,35bへと移動し、バンプ35a,35bから検出信号として出力される。
次に、図4〜図8を参照して、ホトダイオード1の製造方法の一例を説明する。まず、面S1及び面S2が(100)面であるN型シリコンウエハからなるN型半導体基板10を準備する。このN型半導体基板10に熱酸化を施すことにより、N型半導体基板10の面S1に対し、SiO2からなる絶縁膜を形成する。次に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からN型半導体基板10にリンを添加することによりN+型高濃度不純物半導体領域22を形成する。その後、N型半導体基板10を酸化させて、面S1に絶縁膜を形成する。同様に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からN型半導体基板10にボロンを添加することによりP+型不純物半導体領域11を形成する。その後、N型半導体基板10を酸化させて、面S1に絶縁膜23を形成する。次に、N型半導体基板10の面S2を研磨する(図4(a))。次に、N型半導体基板10の面S2上に、LP−CVDによりSiN84を堆積させる(図4(b))。そして、凹部12を形成するために、面S2上のSiN84に開口85を形成する(図4(c))。
さらに、開口85からKOH等によるエッチングを行うことにより凹部12を形成し、その後、表面に残ったSiN84を除去する(図5(a))。次に、凹部12が形成されたN型半導体基板10の面S2に対しイオン注入等を用いてN型不純物を添加することにより、面S2側における表層全体にN+型高濃度不純物半導体層21を形成する(図5(b))。その後、熱酸化を施すことによりN+型高濃度不純物半導体層21の表面全体に絶縁膜24を形成する(図5(c))。なお、絶縁膜24の形成後に、N+型高濃度不純物半導体層21を形成するようにしても良い。
その後、面S1の絶縁膜23に電極のためのコンタクトホールを形成し、面S1にアルミニウムを堆積させてから所定のパターニングを施すことにより、アノード電極25及びカソード電極26を形成する(図6(a))。次に、予め、N型半導体基板10と略同型の基板(例えば、パイレックス(登録商標)等のガラスや、セラミック、シリコン等)に対し、凹部12に対応する箇所に、貫通孔40を設けたファイバガイド13を用意する。そして、貫通孔40が凹部12に連通するように、このファイバガイド13をN型半導体基板10の表面に貼り合わせる(図6(b))。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(ファイバガイド13がガラスの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。次に、N型半導体基板10の面S1に、SiNからなるパッシベーション膜31をプラズマCVD法により堆積させる。そして、パッシベーション膜31におけるバンプ35a,35bに対応する部分に貫通孔31aを形成する(図6(c))。
さらに、面S1に樹脂や無機絶縁膜からなる厚い支持膜32を形成するとともに、パッシベーション膜31の貫通孔31aに対応する部分に貫通孔32aを形成する。このとき、支持膜32としては、樹脂であれば、例えばエポキシ系、アクリル系、又はポリイミド系のものを用いることができ、無機絶縁膜であれば、例えばCVDやSOG(Spin On Glass)等により形成可能なSiO2等を用いることができる。また、支持膜32の貫通孔32aは、例えば樹脂として感光性のものを用いてフォトリソグラフィー法で形成するか、或いはエッチング等によるパターニングで形成することができる(図7(a))。次に、貫通孔31a及び貫通孔32aを充填するように、面S1上にCuからなる導電性部材33を堆積させる。これは、例えば、貫通孔31a及び貫通孔32aから露出するアノード電極25及びカソード電極26の表面にCuシード層等をスパッタ等により堆積させた後、そのCuシード層上にメッキによりCu等を堆積させることにより行うことができる。なお、アノード電極25及びカソード電極26上には、導電性部材33との接合を良好にするための仲介金属(図示せず)が設けられている(図7(b))。
次に、導電性部材33の表面を研磨することにより、支持膜32の表面に堆積した導電性部材33を除去する。これにより、充填電極33a,33bが形成される(図8(a))。
次に、充填電極33a,33bの表面に、それぞれNiとAu等の積層膜からなるUBM34a,34bを無電解メッキにより形成する。そして、UBM34a,34b上に、半田等からなるバンプ35a,35bを印刷又はボール搭載法等により形成する(図8(b))。次に、個片化されたホトダイオード1を得るために、ダイシングを行う。このダイシングは、鎖線Lに示す方向で行われる。具体的には、図8(b)に示すウエハは、支持膜32、パッシベーション膜31、絶縁膜23、N型半導体基板10及びファイバガイド13の順にダイシングされる。これにより、図8(b)に示すウエハは個片化され、P+型不純物半導体領域11と凹部12とを1対有するホトダイオード1を得る。
次に、各個片化されたホトダイオード1に対し、ファイバガイド13の貫通孔40を介して光ファイバFが凹部12内に至るまで挿入される。この際、光ファイバFの端部は、凹部12の側面(絶縁膜24)に対し4点で当接する。そして、この光ファイバFは、貫通孔40の内面との間で、樹脂接合や半田接合等によって固着される。
N型半導体基板10、ファイバガイド13等に対する遮光膜も必要に応じて形成される。この場合、少なくとも、光ファイバFの外周面と凹部12内の側面との間に遮光膜が形成され、この遮光膜により凹部12内が遮光されている。
なお、ファイバガイド13をN型半導体基板10に接合する工程は、上述したタイミングよりも後で良く、特に、バンプ35a,35bの形成後であっても良い。
上記説明したように、本実施形態に係るホトダイオード1は、ファイバガイド13の貫通孔40を介して、凹部12の内部に至るまで光ファイバFが挿入され、この光ファイバFがファイバガイド13に半田接合や樹脂接合等によって固着されている。そして、ホトダイオード1の表面は金属膜等の遮光膜で覆われている。このため、従来では、機械的強度や遮光性の点から、ホトダイオードをセラミックパッケージ等の外部パッケージに格納する必要があったが、本実施形態に係るホトダイオード1では、ファイバガイド13や遮光膜等によって機械的強度や遮光性の向上が図られているため、ホトダイオード1を格納する外部パッケージを用いなくとも十分な機械的強度や遮光性が得られ、チップサイズのホトダイオード1が実現できる。また、外部パッケージを用いなくて良いため、ホトダイオード1の製造コストが低減できる。
そして、ホトダイオード1は、機械的強度が高く、破損しにくいため、ダイシングが容易となる。これに伴い、ホトダイオード1の製造効率の向上が図られる。
そして、ファイバガイド13が設けられているため、光ファイバFが光検出領域内に確実に装着可能となる。このため、光ファイバFからの出力光が確実に光検出領域に照射可能となり、高い光感度が実現できるとともに、高い信頼性が得られることとなる。そして、光ファイバFがファイバガイド13内の側面と半田接合や樹脂接続等により固着されているため(少なくとも、光ファイバFの外周面と凹部12内の側面との間に遮光膜が形成され、この遮光膜により凹部12内が遮光されているため)、高気密で信頼性の高いホトダイオード1が実現できる。
また、凹部12の間口は光ファイバFの断面径より大きく、光ファイバFを凹部12に挿入させるのは容易となっている。その一方で、凹部12の形状が、奥に延びる方向に(すなわち、底部に近づくにつれて)断面径が小さくなり、底部近傍では光ファイバFよりも小さな断面径のテーパ形状となっているため、光ファイバFの端部は、底部近傍まで進入できるが、底部(光検出領域)に接触するまでは進入できない構造となっている。このため、凹部12の底部が光ファイバF端部との接触により物理的ダメージ(結晶欠陥等)を受けるような場合が少なくなる。これにより、暗電流(ノイズ)が抑制され、高精度な光検出が可能となる。
また、充填電極33a,33bが設けられていることにより、検出信号をアノード電極25、カソード電極26から外部に容易に取り出すことができる。なお、充填電極33a,33bは、貫通孔31a,32aの側壁に形成され、アノード電極25及びカソード電極26に電気的に接続されるものであってもよい。
また、N型半導体基板10の面S2側の表層全体にはN+型高濃度不純物半導体層21が形成されている。このN+型高濃度不純物半導体層21は、アキュームレーション層として好適に機能する。これにより、N型半導体基板10で発生したキャリアをその電界分布により効果的に面S1側のPN接合部へと導くことができる。このため、高感度なホトダイオード1が実現できる。このとき、N+型高濃度不純物半導体層21の不純物濃度は、1015/cm3以上であることが好ましい。
また、面S2側の表層に当接するファイバガイド13や光ファイバFの端部によってN型半導体基板10にダメージ(結晶欠陥等)が加えられた場合であっても、このようなダメージ(結晶欠陥等)に起因して発生するキャリア(暗電流)は、N+型高濃度不純物半導体層21によって十分捕獲され得る。これにより、面S2側の表層で生じる暗電流が十分に抑制できる。このため、高いSN比で検出信号が得られることとなる。この場合も、N+型高濃度不純物半導体層21の不純物濃度は、1015/cm3以上が好ましい。
また、凹部12の形状が角錐台(四角錐台)となっているため、断面形状が円形の光ファイバFの端部が、凹部12の側面(絶縁膜24)に対し、4点のみで当接することとなる。このため、凹部12の側面が光ファイバFの端部によって物理的ダメージ(結晶欠陥等)を受け得る箇所が少なくて済み、凹部12の側面で発生する暗電流の低減化が図られることとなる。
<第1の変形例>
以下、図面を参照して、上述の実施形態に対する第1の変形例について説明する。
図9は、本実施形態に対する第1の変形例としてのホトダイオードの断面構成を示す断面図である。
図9に示すように、第1の変形例としてのホトダイオード1aは、凹部12がスペーサ10aによって形成されたものである。スペーサ10aは、パイレックス(登録商標)等のガラス、セラミック、シリコン等によって成り、厚さは、200μm程度である。
スペーサ10aは、面S2側において、絶縁膜24aを介してN型半導体基板10に貼り合わされている。このスペーサ10aの貼り合わせは、陽極接合(スペーサ10aがガラスの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。
また、スペーサ10aの表層には、ファイバガイド13が貼り合わされている。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(ファイバガイド13、スペーサ10aの一方がガラスで他方がシリコンの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。このため、光ファイバFの端部によってスペーサ10a(凹部12内部の側面)に物理的ダメージ(結晶欠陥等)が加えられ、このダメージに起因してキャリア(暗電流)が発生しても、光検出領域を有するN型半導体基板10とは絶縁膜24aによって電気的に絶縁されているため、この暗電流によるノイズがN型半導体基板10に流れて外部に出力される、ということが生じにくくなる。これにより、高いSN比で検出信号が得られることとなる。この場合、N+型高濃度不純物半導体層21aの不純物濃度は、1015/cm3以上が好ましい。
また、N+型高濃度不純物半導体層21aは、アキュームレーション層として好適に機能することができる。このため、高い光感度が実現できる。
次に、図10〜図13を参照してホトダイオード1aの製造方法の一例について説明する。
まず、面S1及び面S2が(100)面であるN型シリコンウエハからなるN型半導体基板10を準備する。このN型半導体基板10に熱酸化を施すことにより、N型半導体基板10の面S1に対し、SiO2からなる絶縁膜を形成する。次に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からN型半導体基板10に対し、例えばリンを添加することによりN+型高濃度不純物半導体領域22を形成する。その後、N型半導体基板10を酸化させて、面S1に絶縁膜を形成する。同様に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からN型半導体基板10に対し、例えばボロンを添加することによりP+型不純物半導体領域11を形成する。その後、N型半導体基板10を酸化させて、面S1に絶縁膜23を形成する。次に、N型半導体基板10の面S2を研磨する(図10(a))。次に、N型半導体基板10の面S2に対し、例えばリンを添加することによりN+型高濃度不純物半導体層21aを形成する(図10(b))。更に、N+型高濃度不純物半導体層21aの表面全体に対し熱酸化を施すことにより、絶縁膜24aを形成する(図10(c))。なお、絶縁膜24aの形成後に、N+型高濃度不純物半導体層21aを形成するようにしても良い。
その後、面S1の絶縁膜23に電極のためのコンタクトホールを形成し、面S1にアルミニウムを堆積させてから所定のパターニングを施すことにより、アノード電極25及びカソード電極26を形成する。更に、予め、N型半導体基板10と略同型の基板(例えば、パイレックス(登録商標)等のガラスや、セラミック、シリコン等)に対し、凹部12を設けたスペーサ10aを用意する。そして、このスペーサ10aを、絶縁膜24aの表面に対し、P+型不純物半導体領域11に対応する箇所に凹部12が位置するように貼り合わせる(図11(a))。このスペーサ10aの貼り合わせは、陽極接合(スペーサ10aがガラスの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。次に、予め、N型半導体基板10と略同型の基板(例えば、パイレックス(登録商標)等のガラスや、セラミック、シリコン等)に対し、凹部12に対応する箇所に、貫通孔40を設けたファイバガイド13を用意する。そして、貫通孔40が凹部12に連通するように、このファイバガイド13をN型半導体基板10の表面に貼り合わせる(図11(b))。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(スペーサ10a、ファイバガイド13のうち一方がガラスで他方がシリコンの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。次に、N型半導体基板10の面S1に、SiNからなるパッシベーション膜31をプラズマCVD法により堆積させる。また、パッシベーション膜31におけるバンプ35a,35bに対応する部分に貫通孔31aを形成する(図11(c))。
さらに、面S1に樹脂や無機絶縁膜からなる厚い支持膜32を形成するとともに、パッシベーション膜31の貫通孔31aに対応する部分に貫通孔32aを形成する。このとき、支持膜32としては、樹脂であれば、例えばエポキシ系、アクリル系、又はポリイミド系のものを用いることができ、無機絶縁膜であれば、例えばCVDやSOG等により形成可能なSiO2等を用いることができる。また、支持膜32の貫通孔32aは、例えば樹脂として感光性のものを用いてフォトリソグラフィー法で形成するか、或いはエッチング等によるパターニングで形成することができる(図12(a))。次に、貫通孔31a及び貫通孔32aを充填するように、面S1上にCuからなる導電性部材33を堆積させる。これは、例えば、貫通孔31a及び貫通孔32aから露出するアノード電極25及びカソード電極26の表面にCuシード層等をスパッタ等により堆積させた後、そのCuシード層上にメッキによりCu等を堆積させることにより行うことができる。なお、アノード電極25及びカソード電極26上には、導電性部材33との接合を良好にするための仲介金属(図示せず)が設けられている(図12(b))。
次に、導電性部材33の表面を研磨することにより、支持膜32の表面に堆積した導電性部材33を除去する。これにより、充填電極33a,33bが形成される(図13(a))。次に、充填電極33a,33bの表面に、それぞれNiとAu等の積層膜からなるUBM34a,34bを無電解メッキにより形成する。そして、UBM34a,34b上に、半田等からなるバンプ35a,35bを印刷又はボール搭載法等により形成する(図13(b))。次に、個片化されたホトダイオード1aを得るために、ダイシングを行う。このダイシングは、鎖線Lに示す方向で行われる。具体的には、図13(b)に示すウエハは、支持膜32、パッシベーション膜31、絶縁膜23、N型半導体基板10及びファイバガイド13の順にダイシングされる。これにより、図13(b)に示すウエハは個片化され、P+型不純物半導体領域11と凹部12とを1対有するホトダイオード1aを得る。
次に、各個片化されたホトダイオード1aに対し、ファイバガイド13の貫通孔40を介して光ファイバFが凹部12内に至るまで挿入される。この際、光ファイバFの端部は、凹部12の側面(絶縁膜24a)に四点で当接する。そして、この光ファイバFは、貫通孔40の内面との間で、樹脂接合や半田接合等によって固着される。
N型半導体基板10、ファイバガイド13等に対する遮光膜も必要に応じて形成される。この場合、少なくとも、光ファイバFの外周面と凹部12内の側面との間に遮光膜が形成され、この遮光膜により凹部12内が遮光されている。
なお、ファイバガイド13をN型半導体基板10に接合する工程は、上述したタイミングよりも後で良く、特に、バンプ35a,35bの形成後であっても良い。
<第2の変形例>
以下、上述の実施形態に対する第2の変形例について説明する。図14は、本実施形態に対する第2の変形例としてのホトダイオードの断面構成を示す断面図である。
第2の変形例としてのホトダイオード1bは、SOIウェハを用いて、N型半導体基板10とスペーサ10bとを構成したものである。N型半導体基板10の表面に形成された絶縁膜24bの表面にはスペーサ10bが積層されている。このスペーサ10bによって凹部12が形成されている。N型半導体基板10における絶縁膜24bの内側であって、凹部12に対応する領域にはN+型高濃度不純物半導体層21bが形成されている。このN+型高濃度不純物半導体層21bは、アキュームレーション層として好適に機能するため、高い光感度が実現できる。
また、スペーサ10bの表層には、ファイバガイド13が貼り合わされている。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(ファイバガイド13、スペーサ10bの一方がガラスで他方がシリコンの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。このため、光ファイバFの端部によってスペーサ10b(凹部12内部の側面)に物理的ダメージ(結晶欠陥等)が加えられ、このダメージに起因してキャリア(暗電流)が発生しても、光検出領域を有するN型半導体基板10とは絶縁膜24bによって電気的に絶縁されているため、この暗電流によるノイズがN型半導体基板10に流れて外部に出力される、ということが生じにくくなる。これにより、高いSN比で検出信号が得られることとなる。この場合、N+型高濃度不純物半導体層21bの不純物濃度は、1015/cm3以上が好ましい。
次に、図15〜図18を参照してホトダイオード1bの製造方法の一例について説明する。
まず、面S1及び面S2が(100)面であるN型シリコンウエハからなるSOIウェハを準備する。このSOIウェハに熱酸化を施すことにより、SOIウェハの面S1に対し、SiO2からなる絶縁膜を形成する。次に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からSOIウェハに対し、例えばリンを添加することによりN+型高濃度不純物半導体領域22を形成する。その後、SOIウェハを酸化させて、面S1に絶縁膜を形成する。同様に、この絶縁膜の所定部分に開口を形成し、開口からSOIウェハに対し、例えばボロンを添加することによりP+型不純物半導体領域11を形成する。その後、SOIウェハを酸化させて、面S1に絶縁膜23を形成する。次に、SOIウェハの面S2にSiN84を堆積させる(図15(a))。そして、凹部12(スペーサ10b)を形成するために、面S2上のSiN84に開口85を形成する(図15(b))。さらに、開口85からKOH等によるエッチングを行うことにより凹部12(スペーサ10b)を形成し、表面に残ったSiN84を除去する(図15(c))。
次に、N型半導体基板10における絶縁膜24bの内側に対し、例えばリンを添加することによりN+型高濃度不純物半導体層21bを形成する。更に、面S1の絶縁膜23に電極のためのコンタクトホールを形成し、面S1にアルミニウムを堆積させてから所定のパターニングを施すことにより、アノード電極25及びカソード電極26を形成する(図16(a))。次に、予め、N型半導体基板10と略同型の基板(例えば、パイレックス(登録商標)等のガラスや、セラミック、シリコン等)に対し、凹部12に対応する箇所に、貫通孔40を設けたファイバガイド13を用意する。そして、貫通孔40が凹部12に連通するように、このファイバガイド13をN型半導体基板10の表面に貼り合わせる(図16(b))。このファイバガイド13の貼り合わせは、陽極接合(スペーサ10b、ファイバガイド13のうち一方がガラスで他方がシリコンの場合)、半田接合(接合部同士が金属形成されている場合)、樹脂接合、又はダイレクトボンディング等によって行われる。次に、N型半導体基板10の面S1に、SiNからなるパッシベーション膜31をプラズマCVD法により堆積させる。また、パッシベーション膜31におけるバンプ35a,35bに対応する部分に貫通孔31aを形成する(図16(c))。
さらに、面S1に樹脂や無機絶縁膜からなる厚い支持膜32を形成するとともに、パッシベーション膜31の貫通孔31aに対応する部分に貫通孔32aを形成する。このとき、支持膜32としては、樹脂であれば、例えばエポキシ系、アクリル系、又はポリイミド系のものを用いることができ、無機絶縁膜であれば、例えばCVDやSOG等により形成可能なSiO2等を用いることができる。また、支持膜32の貫通孔32aは、例えば樹脂として感光性のものを用いてフォトリソグラフィー法で形成するか、或いはエッチング等によるパターニングで形成することができる(図17(a))。次に、貫通孔31a及び貫通孔32aを充填するように、面S1上にCuからなる導電性部材33を堆積させる。これは、例えば、貫通孔31a及び貫通孔32aから露出するアノード電極25及びカソード電極26の表面にCuシード層等をスパッタ等により堆積させた後、そのCuシード層上にメッキによりCu等を堆積させることにより行うことができる。なお、アノード電極25及びカソード電極26上には、導電性部材33との接合を良好にするための仲介金属(図示せず)が設けられている(図17(b))。
次に、導電性部材33の表面を研磨することにより、支持膜32の表面に堆積した導電性部材33を除去する。これにより、充填電極33a,33bが形成される(図18(a))。次に、充填電極33a,33bの表面に、それぞれNiとAu等の積層膜からなるUBM34a,34bを無電解メッキにより形成する。そして、UBM34a,34b上に、半田等からなるバンプ35a,35bを印刷又はボール搭載法等により形成する(図18(b))。次に、個片化されたホトダイオード1aを得るために、ダイシングを行う。このダイシングは、鎖線Lに示す方向で行われる。具体的には、図18(b)に示すウエハは、支持膜32、パッシベーション膜31、絶縁膜23、N型半導体基板10及びファイバガイド13の順にダイシングされる。これにより、図18(b)に示すウエハは個片化され、P+型不純物半導体領域11と凹部12とを1対有するホトダイオード1bを得る。
次に、各個片化されたホトダイオード1bに対し、ファイバガイド13の貫通孔40を介して光ファイバFが凹部12内に至るまで挿入される。この際、光ファイバFの端部は、凹部12の側面(絶縁膜24b)に四点で当接する。そして、この光ファイバFは、貫通孔40の内面との間で、樹脂接合や半田接合等によって固着される。
N型半導体基板10、ファイバガイド13等に対する遮光膜も必要に応じて形成される。この場合、少なくとも、光ファイバFの外周面と凹部12内の側面との間に遮光膜が形成され、この遮光膜により凹部12内が遮光されている。
なお、ファイバガイド13をN型半導体基板10に接合する工程は、上述したタイミングよりも後で良く、特に、バンプ35a,35bの形成後であっても良い。