JP2006202704A - 導電性酸化スズ粉末及びそれを用いた導電性塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶内にリンを固溶した導電性酸化スズ粉末は保管中に少しずつ導電性が低下し易いため品質管理や長期間の保管が難しいという問題を解決する。
【解決手段】リン固溶導電性酸化スズ粒子の表面に式1で表される有機金属化合物またはその加水分解生成物を被覆して、導電性の経時安定性を改善する。
式1:(ROCO)(Mm+)Xm−(a+b)


(式1中、Rはアルキル基、Yはカルボン酸エステル基を除く非加水分解性官能基、Xは加水分解性基、Mはm価の金属元素を示す。aは1以上、bは0以上、mは2以上の整数で、m−(a+b)≧1を満たす。尚、a、b、m−(a+b)が2以上のとき、R、Y、Xのそれぞれは同一であっても異なっていても良い。)
【選択図】なし

Description

本発明は導電性酸化スズ粉末、及び、それを用いた導電性塗料に関する。
導電性酸化スズ粉末は、表示機器の表示面、その表面保護材料、フィルム等の基材の帯電防止に有用であり、また建材、車両等の窓材等の赤外線遮蔽としても有用である。例えば、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示機器の表示面、クリーンルーム等の窓材、ICパッケージ等の包装材として用いられるガラス、プラスチックス、あるいは、オーバーヘッドディスプレイ(OHP)、写真等に用いられるフィルムのような各種透明性基材は、一般的に絶縁体であるため静電気を帯び易い。このため、基材表面にゴミ、埃などが付着し易く、美観を損ねるばかりでなく、視認性の低下、製品への混入による不良品の発生、電子機器の誤動作等の問題が生じ易い。また、電子機器用途の場合、基材が帯びた静電気によって直接誤動作を起こし易い。これらの問題を解決するために、導電性酸化スズ粉末を配合した導電性塗料を基材表面に塗布したり、導電性酸化スズ粉末を基材に混練して、基材の帯電を防止している。
導電性酸化スズ粉末としては、安価で導電性、透明性に優れている、アンチモンを結晶内に固溶した酸化スズ粉末が広く用いられている。しかし、近年アンチモンの毒性が問題となっていることから、アンチモンフリーの導電材の開発が進められ、その結果、アンチモンに替えてリンを固溶した導電性酸化スズ粉末(特許文献1参照)が開発されている。また、導電性酸化スズ粉末の有機溶剤系分散体において、粉末を構成する導電性酸化スズ粒子の表面に、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等の有機金属化合物を被覆して有機溶剤に対する分散性を改良する技術(特許文献2)が知られており、本技術では導電性酸化スズ粒子がリンを含有していても良いことが開示されている。
特開平6−92636号公報 特開2001−148207号公報
前記の特許文献1記載のリン固溶導電性酸化スズ粉末は、従来のアンチモン固溶酸化スズ粉末と同程度の導電性を示すものの、粉末や塗料の保管中に少しずつ導電性が低下し易いため品質管理や長期間の保管が難しいという問題がある。また、基材等に塗布あるいは混練して使用した際にも徐々に導電性が低下して長期間にわたって使用すると帯電防止等の効果が低下するという問題がある。一方、特許文献2記載の技術は、導電性酸化スズ粉末の有機溶媒中での分散安定性を向上させるもので、リン固溶酸化スズの導電性の経時安定性を改良する方法については示唆されていない。そこで、本発明は以上のような従来技術の問題点を克服し、導電性の経時安定性に優れたリン固溶導電性酸化スズ粉末、及び、それを用いた導電性塗料を提供するものである。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、従来のリン固溶導電性酸化スズ粉末は粒子表面に酸素を吸着するが、この酸素により伝送電子がトラップされるために導電性が徐々に低下すると考え、酸素吸着を防止するためリン固溶導電性酸化スズ粒子の表面に有機化合物、特に特定の有機金属化合物またはその加水分解生成物を被覆して保護すると導電性の経時安定性を改良できること、しかも、絶縁性である有機化合物を被覆しても粉末の導電性はそれほど低下しないこと、このような有機化合物を表面に被覆したリン固溶導電性酸化スズ粉末を硬化性樹脂成分と混合して導電性塗料とすれば、透明性と導電性が高く、しかも、導電性の経時的低下がより少ない塗料が得られることなどを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、結晶内にリンが固溶された導電性酸化スズ粒子の表面に式1で表される有機金属化合物またはその加水分解生成物の被覆を有することを特徴とする導電性酸化スズ粉末である。
式1:(ROCO)(Mm+)Xm−(a+b)


(式1中、Rはアルキル基、Yはカルボン酸エステル基を除く非加水分解性官能基、Xは加水分解性基、Mはm価の金属元素を示す。aは1以上、bは0以上、mは2以上の整数で、m−(a+b)≧1を満たす。尚、a、b、m−(a+b)が2以上のとき、R、Y、Xのそれぞれは同一であっても異なっていても良い。)
また、本発明は、前記のリン固溶導電性酸化スズ粉末と硬化性樹脂成分とを少なくとも含むことを特徴とする導電性塗料である。
本発明の導電性酸化スズ粉末は、初期の導電性が高く、導電性の経時安定性にも優れ、低毒性である。しかも、品質管理が容易であり長期間の保管も可能である。また、本発明の導電性酸化スズ粉末を硬化性樹脂成分と混合、撹拌して優れた透明性、導電性、密着性を有する導電性塗料が得られる。このため、本発明は、経済的に有利に、例えばCRT、クリーンルーム用窓材、フィルム等の帯電防止材料を提供することができる。
本発明の導電性酸化スズ粉末は、結晶内にリンが固溶された導電性酸化スズ粒子の表面に有機化合物を含む被覆を有する。リン固溶導電性酸化スズ粒子は後述する公知の方法で製造したもので良く、その粒子形状は、真球状、略球状等の球状形状や、針状、棒状、紡錘状、樹枝状、板状等の異方性形状、あるいは粒塊状等の不定形状等、特に制限はない。粒子の大きさを比表面積で表すと、10〜150m/gの範囲にあるのが好ましい。比表面積が少なくともこの範囲であれば、透明性に優れた塗膜を作製することができるが、前記範囲より小さいと塗膜にした際の平滑性が低下し易く、また前記範囲より大きいと表面エネルギーが大きくなり、分散性が低下し透明性が得られ難いばかりでなく、所望の効果を得るのに、有機化合物を多量に被覆する必要があり経済的に不利になり易い。好ましい粒子径は、粒子形状によって異なるが、例えば、球状粒子であれば、平均粒子径が0.005〜0.1μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.03μmの範囲であり、針状粒子であれば、平均短軸径が0.005〜0.1μm、平均長軸径が0.1〜10μmの範囲が好ましく、平均短軸径が0.01〜0.02μm、平均長軸径が0.2〜2μmの範囲が更に好ましい。尚、比表面積はBET法で測定したもので、粒子径はいずれも電子顕微鏡法による50%粒子径である。
リンの固溶量は、SnO換算の酸化スズに対してPとして1〜7重量%の範囲であるのが好ましく、より好ましい範囲は2〜5重量%である。リン以外にも、例えば、分散性改善の目的で、ケイ素、タングステン、ジルコニウム、アルミニウムなどの異種の元素を結晶中に固溶させても良く、もしくは、それらの酸化物または水和酸化物を、粒子表面に被覆しても良い。
リン固溶導電性酸化スズ粒子を調製するには公知の方法を適用でき、例えば、前記特許文献1に開示される、(1)塩化スズ、スズ酸アルカリ金属塩等のスズ化合物と、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、またはそれらの塩等のリン化合物とを中和し共沈させた後、中和生成物を800〜1300℃の範囲の温度で加熱焼成する方法、(2)前記のスズ化合物を中和し、更に前記のリン化合物を加え中和した後、中和生成物を800〜1300℃の範囲の温度で加熱焼成する方法、を用いることができる。ケイ素等のリン以外の元素を、更に結晶中に固溶させる場合は、例えば、スズやリンを中和する際に、ケイ素等の化合物を加えても良い。また、ケイ素、アルミニウム等の酸化物または水和酸化物を、粒子表面に被覆する場合は、例えば、(1)や(2)の方法で得られた導電性酸化スズ粒子をスラリー化し、それらの化合物を添加し中和すれば良い。加熱焼成または表面被覆した後は、気流式粉砕機、衝撃式粉砕機、摩砕機等の粉砕機により、適宜粉砕することができる。
前記のリン固溶導電性酸化スズ粒子に被覆する有機化合物としては、例えば、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物等の有機金属化合物またはその加水分解生成物や、多価アルコール類、アルカノールアミン類またはその誘導体、高級脂肪酸類またはその金属塩、高級炭化水素類またはその誘導体等が挙げられ、これらから選ばれる1種を用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。具体的には、
(I)有機金属化合物としては、(イ)有機チタニウム化合物((a)アミノアルコキシチタニウム(例えば、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等)、(b)リン酸エステルチタニウム(例えば、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等)、(c)カルボン酸エステルチタニウム(例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等)、(d)スルホン酸エステルチタニウム(例えば、イソプロピル−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート等)、(e)チタニウムキレート(例えば、チタニウムジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタニウムジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート、オクチレングリコールチタネート等)、(f)亜リン酸エステルチタニウム錯体(例えば、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等)等)、(ロ)有機ジルコニウム化合物((a)カルボン酸エステルジルコニウム(例えば、ジルコニウムトリブトキシステアレート等)、(b)ジルコニウムキレート(例えば、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等)等)、(ハ)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート(例えば、アルミニウムアセチルアセトネートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、オクタデシレンアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等)等)、または、それらの加水分解生成物等が挙げられる。また、(ニ)有機ケイ素化合物としては、(1)オルガノポリシロキサン類((a)ストレート型ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、(b)変性型ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン、側鎖または両末端アミノ変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端エポキシ変性ポリシロキサン、両末端または片末端メタクリル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端カルボキシル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端カルビノール変性ポリシロキサン、両末端フェノール変性ポリシロキサン、側鎖または両末端メルカプト変性ポリシロキサン、両末端または側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル変性ポリシロキサン、側鎖メチルスチリル変性ポリシロキサン、側鎖カルボン酸エステル変性ポリシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル・カルビノール変性ポリシロキサン、側鎖アミノ・両末端カルビノール変性ポリシロキサン等)等、または、それらの共重合体)、(2)オルガノシラン類((a)アミノシラン(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、(b)エポキシシラン(例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、(c)メタクリルシラン(例えば、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、(d)ビニルシラン(例えば、ビニルトリエトキシシラン等)、(e)メルカプトシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、(f)クロロアルキルシラン(例えば、3−クロロプロピルトリエトキシシラン)、(g)アルキルシラン(例えば、n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン等)、(h)フェニルシラン(例えば、フェニルトリエトキシシラン等)、(i)フルオロアルキルシラン(例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等)等、または、それらの加水分解生成物)、(3)オルガノシラザン類(例えば、ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)等が挙げられる。
(II)多価アルコール類としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
(III)アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が、それらの誘導体としては、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
(IV)高級脂肪酸類としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が、それらの金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
(V)高級炭化水素類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が、それらの誘導体としては、パーフルオロ化物等が挙げられる。
尚、有機金属化合物、オルガノシラン類の加水分解生成物とは、これらが有する加水分解性基が加水分解されて水酸基に転位したもの、加水分解されたモノマー同士が縮重合してダイマー、オリゴマー、ポリマーになったもの等を言う。
本発明では、リン固溶導電性酸化スズ粒子の表面に、特に、式1で表される少なくとも1個のカルボン酸エステル基(−OCOR)を有する加水分解性有機金属化合物、または、その加水分解生成物の被覆を有すると導電性の経時安定性が優れ、長期的な導電性の低下を防ぐことができるため好ましい。
式1:(ROCO)(Mm+)Xm−(a+b)


(式1中、Rはアルキル基、Yはカルボン酸エステル基を除く非加水分解性官能基、Xは加水分解性基、Mはm価の金属元素を示す。aは1以上、bは0以上、mは2以上の整数で、m−(a+b)≧1を満たす。尚、a、b、m−(a+b)が2以上のとき、R、Y、Xのそれぞれは同一であっても異なっていても良い。)
上記の式1で表される有機金属化合物が有する加水分解性基(式1中のX)は、粒子表面に存在する水酸基と強い親和性を示すか、または、加水分解され水酸基に転化すると粒子表面の水酸基と脱水縮合するので、カルボン酸エステル基(−OCOR)が粒子表面から外側へ配向していると考えられる。リン固溶導電性酸化スズ粉末の導電性が不安定であったのは、粒子表面へ酸素が吸着し、伝送電子がこの酸素によりトラップされることによるものと考えられ、カルボン酸エステル基が粒子表面を保護し、酸素吸着を抑制するのに最も適した官能基であるので、経時安定性が改善されるものと推測される。例えば、本発明の導電性酸化スズ粉末の経時安定性を指標で表すと、初期の粉体抵抗値をr、80±1℃の温度で10日間加熱した後の粉体抵抗値をrとした場合、粉体抵抗値の変化量(r−r)を100Ωcm以下にすることができる。しかも、初期粉体抵抗値rを500Ωcm以下にすることができ、帯電防止用途して十分な性能を有している。尚、前記有機金属化合物またはその加水分解生成物は、粒子表面に均一に被覆されている必要はなく、本発明の効果を阻害しない範囲で、粒子表面に未被覆の部分があっても良い。また、加水分解生成物とは、前記有機金属化合物が有する加水分解性基(式1中のX)の一部または全部が加水分解され水酸基になったものであり、水酸基同士が脱水縮合したオリゴマー、ポリマー等も含まれる。
式1中のMは、金属元素を示し、mはその原子価を示し、2以上の整数である。金属元素としては2価以上のものであれば、種々のものを用いることができるが、特に、チタニウム(原子価:4)、ジルコニウム(原子価:4)であれば、本発明の効果が得られ易いので好ましい。
式1中のaはカルボン酸エステル基(−OCOR)の個数を示し、1以上の整数である。Rはアルキル基を示し、aが2以上のとき、Rは同種のアルキル基であっても、異種のアルキル基であっても良い。Rで表されるアルキル基の形態は直鎖状、分枝状、環状のいずれであっても良く、特に制限されない。アルキル基に含まれる炭素数が少ないと、例えば、アセトキシ基(−OCOCH)のように加水分解性基としても作用する場合があり、本発明の効果が得られ難くなる。このため、Rとしては炭素数が6個以上のアルキル基が好ましく、8個以上であれば更に好ましい。また、Rの炭素数が多過ぎると、これを配合した導電性塗料の粘度が非常に高くなり、塗装に適さなくなる場合があるので、30個以下とするのが望ましい。
式1中のYはカルボン酸エステル基以外の非加水分解性官能基を、例えば、アルキル基、アリール基、アミノ基、ビニル基、メタクリル基等を表す。bはその個数を表し、0以上の整数であり、bが2以上のとき、Yは同種の官能基であっても、異種の官能基あっても良い。但し、bは0であるのが望ましい。
式1中のXは、アルコキシ基(−OR)、アミド基(−NHCOR)、オキシム基(−ONCHR、−ONCR等)、ハロゲン基(−Cl、−Br等)等の加水分解性基を表す。m−(a+b)はXの個数を示し、1以上の整数である(前述のように、aは1以上の整数、bは0以上の整数、mは2以上の整数である)。m−(a+b)が2以上のとき、Xは同種の官能基であっても、異種の官能基あっても良い。これらの加水分解性基に含まれる炭素数が少ないと、導電性酸化スズ粒子との親和性が更に高くなるで、炭素数が少ないものが好ましく、炭素数が1〜4個であるのが特に好ましい。加水分解性基の少なくとも1つがアルコキシ基であれば、導電性酸化スズ粒子との親和性が非常に強いため、特に加水分解を行わなくても本発明の効果が得られ易いので好ましく、加水分解性基が全てアルコキシ基であれば更に好ましい。
本発明で用いる有機金属化合物を具体的に挙げると、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等が挙げられ、これらから選ばれる1種を用いても、2種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの効果が高く好ましく、この有機化合物は味の素(株)からプレンアクトKR−TTSの商品名で販売されている。
有機化合物、特に式1で表される有機金属化合物またはその加水分解生成物の被覆量は、SnO換算の導電性酸化スズ粉末に対して0.01〜30重量%の範囲が好ましく、0.05〜15重量%の範囲がより好ましい。被覆量が0.01重量%以上であれば、優れた経時安定性が得られ易い。また、前記有機金属化合物は絶縁性であるので、30重量%以下であれば、高い導電性が得られ易くなる。
リン固溶導電性酸化スズ粒子の表面に、有機化合物、特に式1で表される有機金属化合物またはその加水分解生成物を被覆するには所謂乾式法、湿式法のいずれを用いても良く、適宜選択できる。乾式法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速撹拌機を用い、前記導電性酸化スズを撹拌しながら、あるいは、ジェットミル等の気流式粉砕機を用い、前記導電性酸化スズ粒子を粉砕しながら、有機化合物を添加する等の方法が挙げられる。前記式1で表される有機金属化合物は前記酸化スズ粒子との親和性が高く、その加水分解生成物は粒子表面に存在する水酸基と脱水縮合して強固に結合するので、湿式法を適用する場合には、スラリー中で前記酸化スズ粒子と前記有機金属化合物またはその加水分解生成物を混合すれば、被覆できる。前記有機金属化合物またはその加水分解生成物を添加する際には、アルコール等の有機溶剤に溶解した溶液を用いても良い。
次に、本発明は導電性塗料であって、前記導電性酸化スズ粉末と硬化性樹脂成分とを少なくとも含むものである。本発明の導電性塗料により、あらゆる基材上に、導電性の経時安定性に優れた、透明性の導電性塗膜が得られる。特に、アクリル板、塩ビ板、フィルム、ガラス板等の透明性基材に塗布することにより、基材本来の透明性を損なうことなく、帯電を防止することができる。導電性塗料の塗布には、バーコート、ハケ塗り、ローラーコート、スプレーコート、静電塗装、スピンコート、ディップコート等の、常用される塗布方法を用いることができる。
本発明に用いることのできる硬化性樹脂成分としては、通常塗料に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル−スチレン共重合体等を必要に応じて適宜選択することができる。硬化性樹脂成分の量は、導電性塗料中に5〜90重量%の範囲が好ましく、5〜50重量%の範囲が更に好ましい。
本発明の導電性塗料には、導電性酸化スズ粉末と硬化性樹脂成分以外にも、通常塗料に用いられる各種の添加剤が配合されていても良く、目的に応じて適宜選択することができる。そのような添加剤として、例えば、硬化剤、硬化助剤、可塑剤、乳化剤、消泡剤、増粘剤、流動性調整剤、皮張り防止剤、色分れ防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、増量剤等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、4級アンモニウム等のカチオン系、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン系、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等のノニオン系等の分散剤を配合しても良い。
本発明の導電性塗料は、前記の導電性酸化スズ粉末と硬化性樹脂成分とに、水または有機溶剤等の溶媒、添加剤を適宜配合し、羽根型撹拌機、ディスパー、ホモミキサー、ディゾルバー、インペラーミル、サンドミル、ペイントシェイカー等を用いて撹拌・混合し、分散させることにより、製造することができる。導電性酸化スズ粉末を分散媒としての水または有機溶剤等に予め分散させた分散体とした後、塗料化に供することもできる。分散体を用いると、本発明の導電性塗料を工業的、経済的に有利に提供できるので好ましい。分散体には分散媒の種類に応じて各種の分散剤を配合すると、分散体に含まれる導電性酸化スズ粉末の分散安定性が向上するので好ましい。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実施例1
1.リン固溶導電性酸化スズ粒子の調製
塩化第二スズ(SnCl・5HO)500g及び85%オルトリン酸(HPO)8.8gの3規定塩酸溶液200ミリリットルを、90℃の温度の水に添加し、同時に水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7〜7.5に維持するように中和し、中和生成物を得た。次いで、塩酸にてpHを3に調整し中和生成物を固液分離、洗浄、110℃で12時間乾燥し、電気炉にて1000℃で1時間加熱焼成した後、気流粉砕機を用いて粉砕し、リン固溶導電性酸化スズ粒子を得た。このものはSnO換算の導電性酸化スズ粒子に対し、リンをP換算で2.5重量%含み、43m/gの比表面積を有していた。
2.有機化合物の被覆
前記のリン固溶導電性酸化スズ粒子100gをジュースミキサーで撹拌しながら、有機化合物としてイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(プレンアクトKR−TTS:味の素製)2.5gを添加し、撹拌・混合後、150℃の温度で20分間乾燥して、本発明の導電性酸化スズ粉末(試料A)を得た。
比較例1
有機化合物(KR−TTS)を用いないこと以外は、実施例1と同様にして導電性酸化スズ粉末(試料B)を得た。
評価1
先ず、実施例1、比較例1の導電性酸化スズ粉末(試料A、B)の初期の粉体抵抗値(r)を測定した。試料1gを9.8MPaの圧力で円柱状(18mmφ)に成形し、直流抵抗をデジタルマルチメーター(Model 75501−1−D型:横河電気製)を用いて測定し、粉体抵抗値を式2により算出した。その後、試料を80℃の温度に設定した乾燥機中に入れ、10日後に試料を取りだし、それぞれ前記の方法と同様にして、粉体抵抗値(r)を測定した。結果を表1に示す。
式2:粉体抵抗値=測定値×円柱の断面積/円柱の厚み
Figure 2006202704
本発明の導電性酸化スズ粉末は、初期の導電性が高く、導電性の経時安定性にも優れ、低毒性である。しかも、品質管理が容易であり長期間の保管も可能である。また、本発明の導電性酸化スズ粉末を硬化性樹脂成分と混合、撹拌して優れた透明性、導電性、密着性を有する導電性塗料が得られる。このため、本発明は、経済的に有利に、例えばCRT、クリーンルーム用窓材、フィルム等の帯電防止材料を提供することができる。

Claims (4)

  1. 結晶内にリンが固溶された導電性酸化スズ粒子の表面に式1で表される有機金属化合物またはその加水分解生成物の被覆を有することを特徴とする導電性酸化スズ粉末。
    式1:(ROCO)(Mm+)Xm−(a+b)


    (式1中、Rはアルキル基、Yはカルボン酸エステル基を除く非加水分解性官能基、Xは加水分解性基、Mはm価の金属元素を示す。aは1以上、bは0以上、mは2以上の整数で、m−(a+b)≧1を満たす。尚、a、b、m−(a+b)が2以上のとき、R、Y、Xのそれぞれは同一であっても異なっていても良い。)
  2. 初期の粉体抵抗値をr、80±1℃の温度で10日間加熱後の粉体抵抗値をrとすると、r≦500Ωcm且つr−r≦100Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性酸化スズ粉末。
  3. 有機金属化合物がイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ジルコニウムトリブトキシステアレートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性酸化スズ粉末。
  4. 請求項1に記載の導電性酸化スズ粉末と硬化性樹脂成分とを少なくとも含むことを特徴とする導電性塗料。


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