以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明に係るマルチハイブリッドエンジンENGを図1〜図2に示している。このマルチハイブリッドエンジンENGは、第1内燃機関1および第2内燃機関2と、この第1内燃機関1および第2内燃機関2と平行に並ぶ第1スチーム機関3および第2スチーム機関4とを主体に構成される。
第1内燃機関1は、天然ガス(水素ガスを用いてもよい)を燃料とする4サイクル内燃機関であり、燃焼ガスの圧力を利用して作動する第1ピストン機構10を主体に構成される。第1ピストン機構10は、図2に示すように、第1クランクシャフト160を挟むようにして左右一対の第1シリンダ101,102が対向配設されて構成されている。左第1シリンダ101および右第1シリンダ102は、それぞれ内端同士が対向して結合された左右の第1シリンダボディ110,120と、各シリンダボディ110,120の外端に取り付けられた左右の第1シリンダヘッド112,122とからなる。
左第1シリンダヘッド112には、左吸気ポート113および左排気ポート114が形成され、左吸気ポート113の端部に吸気側ロータリーバルブ117が回転自在に取り付けられるとともに、左排気ポート114の端部に排気側ロータリーバルブ118が回転自在に取り付けられている。吸気側ロータリーバルブ117は、直径方向に貫通する連通孔117aを有するロータリー式のバルブであり、第1クランクシャフト160の1/4の回転数で回転することにより、左吸気ポート113を所定のタイミングで開閉するようになっている。排気側ロータリーバルブ118も、直径方向に貫通する連通孔118aを有するロータリー式のバルブであり、第1クランクシャフト160の1/4の回転数で回転することにより、左排気ポート114を所定のタイミングで開閉するようになっている。また、左第1シリンダヘッド112の中央には、点火プラグ119が図示のように取り付けられている。
右第1シリンダヘッド122には、右吸気ポート123および右排気ポート124が形成され、左第1シリンダヘッド112と同様に、右吸気ポート123の端部に連通孔127aを有する吸気側ロータリーバルブ127が回転自在に取り付けられるとともに、右排気ポート124の端部に連通孔128aを有する排気側ロータリーバルブ128が回転自在に取り付けられている。また、右第1シリンダヘッド122の中央には、点火プラグ129が図示のように取り付けられている。なお、各吸気ポート113,123および排気ポート114,124の内面にはセラミック(耐熱樹脂でもよい)が溶着されており、断熱効果を高めている。これにより、排気ガスの温度は上昇するが、この排気ガスは後述する第1および第2スチーム機関3,4の水蒸気を発生させるための熱源として使用されるため、エンジンの熱効率の向上が期待できる。
左右の第1シリンダボディ110,120にはそれぞれ、第1クランクシャフト160の回転中心軸C11(以下、第1クランク中心軸C11と称する)に対して直角な方向に貫通する同一径の第1シリンダボア110a,120aが形成されており、これら左右の第1シリンダボア110a,120aが左右の第1シリンダヘッド112,122にそれぞれ覆われて、第1クランクシャフト160を挟んで対向する左第1シリンダ室115および右第1シリンダ室125が形成されている。これら左右の第1シリンダ室115,125は同軸上に位置して形成されている。
左右の第1シリンダ室115,125内に第1ピストンアセンブリ103が摺動自在に嵌合配設されている。この第1ピストンアセンブリ103は、第1連結体130と、この第1連結体130の左右端部にピン158により結合された左右一対の第1ピストン150,150と、第1連結体130内に回転自在に配設された第1ローターアセンブリ140とから構成される。左右一対の第1ピストン150,150はそれぞれ左右の第1シリンダボア110a,120aに摺合して第1シリンダ室115,125内に挿入されており、第1連結体130に結合された状態で一体となって、第1シリンダ室115,125内をシリンダ中心軸方向に往復移動可能となっている。
左右一対の第1ピストン150,150は同一形状であり、図5に示すように形成されている。第1ピストン150は、各シリンダボア110a,120aと摺合する円筒状のヘッド部151と、ヘッド部151の上下両側から後方に延びた円弧状の一対のスリッパ部152,152と、これら一対のスリッパ部152,152の間を結んでヘッド部151の後側に形成されたリブ153,153とから一体形成されている。ヘッド部151の外周面には3個のリング溝151a,151b,151c(ピストンリング溝およびオイルリング溝)が形成されている。また、リブ153には上下に延びた挿入溝153aが形成されるとともに、この挿入溝153aを横切って上下一対の連結孔153bが形成されている。なお、ヘッド部151の外周面とスリッパ部152の外周面とは、各シリンダボア110a,120aと摺合する円筒面を形成している。
第1連結体130(なお、連結体はピストンコネクターとも称される)は、図6〜図8に示すように、リング状リム部131と、リム部131から左右両側に延びた各一対の連結アーム壁133とを有する。リム部131は円筒状開口を有し、この円筒状開口の内周面131aにおける厚さ方向片側には内周側に突出するショルダー部132が一体形成され、このショルダー部132の内面における上下二カ所にそれぞれ複数枚の歯からなる内歯ギヤ132aが形成されている。また、各連結アーム壁133には上下一対の連結孔133aが形成されている。さらに、リム部131の外周側における上下二カ所には、各シリンダボア110a,120aに摺合する円弧状のガイド部135が形成されている。このガイド部135の一端には切り欠き135aが設けられ、この切り欠き135aとリム部131の内周面131aとを連通する第1潤滑孔135bがそれぞれ形成されている。
ピストン150のリブ153に形成された挿入溝153aに連結アーム壁133を挿入させるとともに、連結孔133a,153bにピン158を挿入して図2に示すように、第1ピストン150が第1連結体130の両側に結合される。このとき、各ピストン150のスリッパ部152が第1連結体130のガイド部135に当接する。この状態で、ピストンヘッド部151と、スリッパ部152と、ガイド部135の外周面とは同一円周上に並び、シリンダボア110a,120aに摺合可能となっている。
第1ローターアセンブリ140は、図9に示すように、メインローター部材141とサブローター部材142とを左右一対のボルト143により結合して構成され、円筒外周面145を有する円筒状に形成されている。この円筒外周面145の中心軸C13(以下、第1ローター中心軸C13と称する)から距離e1だけ偏心した中心軸C12(以下、第1ピン中心軸C12と称する)を有する第1偏心孔144がこの第1ローターアセンブリ140(各ローター部材141,142)に形成されている。なお、メインローター部材141とサブローター部材142との結合面と第1ピン中心軸C12とは重なる。サブローター部材142にはボルト143のヘッドのための座ぐり142bが形成されているが、この座ぐり142bから第1偏心孔144に貫通する小さな潤滑孔142aがサブローター部材142に形成されている。また、円筒外周面145には全周にわたる潤滑溝145aが形成されている。
メインローター部材141には片側側面に開口した左右一対のローラ配設空間141aが左右対称形状に形成されている。各ローラ配設空間141a内には、支持ピン146aにより回転自在に支持されたメインローラ146と、それぞれ支持ピン147aにより回転自在に支持された一対のサブローラ147とが配設されている。これら左右一対のローラ配設空間141,141を覆ってメインローター部材141の側面にカバー149がボルト149aにより固定されている。ここで、メインローラ146の支持ピン146aはボルト146bによりメインローター部材141およびカバー149に固定されており、この支持ピン146aの上にメインローラ146が回転自在に緩嵌合して取り付けられている。
また、カバー149の上においてボルト146bに捻りコイルバネ148が取り付けられており、両側脚部148a,148aがカバー149の開口を通ってローラ配設空間141内に突出し、サブローラ147の支持ピン147aと係合している。捻りコイルバネ148(板バネ等を使用するようにしてもよい)は脚部148a,148aが閉じる方向、すなわち、図9(A)において矢印Aで示す方向に付勢力が作用するバネであり、一対のサブローラ147,147を互いに近づけるように付勢する。なお、ローラ配設空間141には、メインローター部材141の第1偏心孔144に開口してメインローラ146の外周面を露出させるメイン開口141aと、円筒外周面145に開口してサブローラ147の外周面を露出させるサブ開口141b,141bとが形成されている。また、サブ開口141bは、サブローラ147が矢印Aで示す方向にスライド移動可能なように長穴状に形成されている。なお、各ローラ146,147および捻りコイルバネ148により、第1クランクピン161の回転に連動して第1ローターアセンブリ140を回転させる連動回転機構を構成している。
第1ローターアセンブリ140の円筒外周面145は第1連結体130のリム部131の内周面131aに回転自在に摺合する寸法であり、第1偏心孔144は第1クランクシャフト160の第1クランクピン161を回転自在に摺合させる寸法である。このため、図1に示すように、第1偏心孔144内に第1クランクピン161を回転自在に摺合させるようにして第1ローターアセンブリ140が第1クランクピン161に取り付けられ、且つこの第1ローターアセンブリ140は第1連結体130のリム部131の内周面131aに回転自在に摺合される。この結果、第1ピストンアセンブリ103は、第1連結体130および第1ローターアセンブリ140を介して第1クランクピン161に連結されるとともに、第1シリンダ室115,125内に軸方向に移動自在に挿入配設された状態となる。
なお、このように第1偏心孔144内に第1クランクピン161を回転自在に摺合させるとともに第1ローターアセンブリ140が第1連結体130の内周面131aに回転自在に摺合されたとき、メインローラ146の外周面がメイン開口141aを介して第1クランクピン161の外周面に当接し、サブローラ147,147の外周面がサブ開口141b,141bを介して第1連結体130の内周面131aと当接する。このとき、捻りコイルバネ148の付勢により、サブローラ147,147が互いに近づくように押され、メインローラ146の外周面と第1クランクピン161の外周面との当接およびサブローラ147,147の外周面と第1連結体130の内周面131aとの当接状態が維持される。
このように捻りコイルバネ148によりサブローラ147,147を付勢することにより、第1クランクピン161に対する第1ローターアセンブリ140の位置を所望の位置に保持することができる。例えば、第1クランクピン161が回転駆動されると、支持ピン146aとメインローラ146との隙間および支持ピン147aとサブローラ147との隙間に対応する分だけ、第1クランクピン161の回転角と第1ローターアセンブリ140の回転角とに差(進角差)が生じるが、回転駆動力が解放された時点で捻りコイルバネ148の付勢力により両ローラ146,147が所定の位置に戻され、所望位置にリセットされる。また、第1クランクピン161から軸直角方向に作用する力は、各ローラ146,147を介して第1連結体130の内周面131aにより受け止められる、すなわち、各ローラがベアリングとしての役割を果たすため、第1クランクピン161の強度、耐久性を向上することができる。なお、第1クランクピン161の回転時には、メインローラ146による巻き込み効果によりサブローラ147,147がそれぞれサブ開口141b,141bの一端側に締め付けられる。
第1クランクシャフト160を図10に詳細に示しており、この第1クランクシャフト160は第1クランク中心軸C11を中心として回転自在となって左右の第1シリンダボディ101,102により支持されている。第1クランクピン161の中心軸である第1ピン中心軸C12は第1クランク中心軸C11から距離e1だけ偏心しており、第1クランクピン161の片側には複数の歯を有する外歯ギヤ162が形成されている。なお、第1クランク中心軸C11と第1ピン中心軸C12との偏心距離e1は、第1ローターアセンブリ140における第1ピン中心軸C12と第1ローター中心軸C13との偏心距離e1と等しい。また、第1クランクピン161の径は第1連結体130における内周面131aの径の1/2である。
以上のような構成の第1ピストン機構10(第1内燃機関1)では、第1クランクシャフト160の回転が第1クランクピン161に取り付けられた第1ローターアセンブリ140を介して、第1連結体130、すなわち第1ピストンアセンブリ103を左右の第1シリンダ室115,125内で往復動させる運動に変換されるようになっている。なおこのとき、第1ローターアセンブリ140は第1クランクシャフト160と反対方向に相対回転するが、各ローラ146,147および捻りコイルバネ148からなる回転連動機構により、第1クランクシャフト160の回転駆動力が第1ローターアセンブリ140を反対方向へ回転するように伝達されるので、第1クランクシャフト160の回転が第1ピストンアセンブリ103を往復動させる運動にスムーズに変換される。なお、第1ピストンアセンブリ103の往復幅は、第1ローターアセンブリ140が第1クランクシャフト160と反対方向に相対回転するため、偏心距離e1の4倍となる。
また、第1ピストン機構10は、上述したように、第1クランクシャフト160を挟むようにして左第1シリンダ室115および右第1シリンダ室125が対向配設され、左右の第1シリンダ室115,125内に第1ピストンアセンブリ103、すなわち左右の第1ピストン150,150が摺動自在に嵌合配設された、いわゆるダブルアクティングピストン機構であり、これにより、同一排気量の従来の内燃機関(ピストン機構)と比較して1/5〜1/6程度の小型化が可能になる。そのため、低出力ではあるが高効率な運転領域で使用しても、本実施形態では1/3程度の小型化が可能になる。
第2内燃機関2は、天然ガス(水素ガスを用いてもよい)を燃料とする4サイクル内燃機関であり、燃焼ガスの圧力を利用して作動する第2ピストン機構20を主体に構成される。第2ピストン機構20は、第1ピストン機構10と同様の構成であり、詳細な図示および説明を省略する。
第1スチーム機関3は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)からの排気ガスの熱を利用して発生させた水蒸気を利用して作動する機関であり、詳細は後述する水蒸気発生システム5(図4を参照)により発生した水蒸気の圧力を利用して作動する第3ピストン機構30を主体に構成される。これにより、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。第3ピストン機構30は、第1ピストン機構10と同様の構成であり、図2に示すように、第3クランクシャフト360を挟むようにして左右一対の第3シリンダ301,302が対向配設されて構成されている。左第3シリンダ301および右第3シリンダ302は、それぞれ内端同士が対向して結合された左右の第3シリンダボディ310,320と、各シリンダボディ310,320の外端に取り付けられた左右の第3シリンダヘッド312,322とからなる。
左第3シリンダヘッド312には、左吸気ポート313や、互いに途中で繋がる上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bが形成され、左吸気ポート313の端部にロータリースチームバルブ317が回転自在に取り付けられるとともに、上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bの端部に排気側ロータリーバルブ318がそれぞれ回転自在に取り付けられている。左吸気ポート313は水蒸気発生システム5(図4を参照)に繋がっており、水蒸気発生システム5から液化された水蒸気(高温高圧の水)が供給されるようになっている。
ロータリースチームバルブ317は、直径方向に貫通する連通孔317aおよび、この連通孔317aに中央に形成された略球形の水溜めである空間部317bを有するロータリー式のバルブであり、第3クランクシャフト360の1/2の回転数で回転することにより、左吸気ポート313を所定のタイミングで開閉するようになっている。排気側ロータリーバルブ318は、直径方向に貫通する連通孔318aを有するロータリー式のバルブであり、第3クランクシャフト360の1/2の回転数で回転することにより、上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bを所定のタイミングで開閉するようになっている。
右第3シリンダヘッド322には、右吸気ポート323や、互いに途中で繋がる上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bが形成され、左第3シリンダヘッド312と同様に、右吸気ポート323の端部に連通孔327aおよび略球形の水溜めである空間部327bを有するロータリースチームバルブ327が回転自在に取り付けられるとともに、上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bの端部に連通孔328aを有する排気側ロータリーバルブ328がそれぞれ回転自在に取り付けられている。また、右吸気ポート323は水蒸気発生システム5(図4を参照)に繋がっており、水蒸気発生システム5から液化された水蒸気(高温高圧の水)が供給されるようになっている。なお、各吸気ポートおよび排気ポートの内面にはセラミックが溶着されており、断熱効果を高めている。
左右の第3シリンダボディ310,320にはそれぞれ、第3クランクシャフト360の回転中心軸C31(以下、第3クランク中心軸C31と称する)に対して直角な方向に貫通する同一径の第3シリンダボア310a,320aが形成されており、これら左右の第3シリンダボア310a,320aが左右の第3シリンダヘッド312,322にそれぞれ覆われて、第3クランクシャフト360を挟んで対向する左第3シリンダ室315および右第3シリンダ室325が形成されている。これら左右の第3シリンダ室315,325は同軸上に位置して形成されている。
左右の第3シリンダ室315,325内に第3ピストンアセンブリ303が摺動自在に嵌合配設されている。この第3ピストンアセンブリ303は、第1ピストンアセンブリ103と同様に、第3連結体330と、この第3連結体330の左右端部にピン358により結合された左右一対の第3ピストン350,350と、第3連結体330内に回転自在に配設された第3ローターアセンブリ340とから構成される。
左右一対の第3ピストン350,350は、第1ピストン150,150と同様に、左右の第3シリンダボア310a,320aにそれぞれ摺合して第3シリンダ室315,325内に挿入されており、第3連結体330に結合された状態で一体となって、第3シリンダ室315,325内をシリンダ中心軸方向に往復移動可能となっている。第3連結体330は第1連結体130と同様に形成され、第3連結体330に形成される円筒状開口の内周面331aには、第3ローターアセンブリ340が第3ローター中心軸C33を中心に回転自在に摺合されている。
第3ローターアセンブリ340は、第1ローターアセンブリ140と同様に円筒外周面(図示せず)を有する円筒状に形成され、この第3ローターアセンブリ340には、円筒外周面の中心軸となる第3ローター中心軸C33から距離e3だけ偏心した中心軸C32(すなわち、第3ピン中心軸C32)を有する第3偏心孔344が形成されている。そして、第3偏心孔344内に第3クランクピン361を回転自在に摺合させるようにして第3ローターアセンブリ340を第3クランクピン361に取り付けることで、第3ピストンアセンブリ303が第3連結体330および第3ローターアセンブリ340を介して第3クランクピン361に連結されるようになっている。
第3クランクシャフト360は第1クランクシャフト160と同様に形成され、第3クランク中心軸C31を中心として回転自在となって左右の第3シリンダボディ301,302により支持されている。第3クランクピン361の中心軸である第3ピン中心軸C32は第3クランク中心軸C31から距離e3だけ偏心しており、この第3クランク中心軸C31と第3ピン中心軸C32との偏心距離e3は、第3ローターアセンブリ340における第3ピン中心軸C32と第3ローター中心軸C33との偏心距離e3と等しくなっている。
そして、以上のような構成の第3ピストン機構30(第1スチーム機関3)では、第1ピストン機構10と同様に、第3クランクシャフト360の回転が第3クランクピン361に取り付けられた第3ローターアセンブリ340を介して、第3連結体330、すなわち第3ピストンアセンブリ303を左右の第3シリンダ室315,325内で往復動させる運動にスムーズに変換されるようになっている。また、第3ピストンアセンブリ303の往復幅は、第3ローターアセンブリ340が第3クランクシャフト360と反対方向に相対回転するため、偏心距離e3の4倍となる。なお、本実施形態において、第3ピストン350の面積(径)は、第1ピストン150の面積(径)と等しくなっているが、必要に応じて変えるようにしてもよい。
また、第3ピストン機構30は、上述したように、第3クランクシャフト360を挟むようにして左第3シリンダ室315および右第3シリンダ室325が対向配設され、左右の第3シリンダ室315,325内に第3ピストンアセンブリ303、すなわち左右の第3ピストン350,350が摺動自在に嵌合配設された、いわゆるダブルアクティングピストン機構であり、これにより、同一排気量の従来の内燃機関(ピストン機構)と比較して1/5〜1/6程度の小型化が可能になる。そのため、低出力ではあるが高効率な運転領域で使用しても、本実施形態では1/3程度の小型化が可能になる。
第2スチーム機関4は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)からの排気ガスの熱を利用して発生させた水蒸気を利用して作動する機関であり、詳細は後述する水蒸気発生システム5(図4を参照)により発生した水蒸気の圧力を利用して作動する第4ピストン機構40を主体に構成される。これにより、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。第4ピストン機構40は、第3ピストン機構30と同様の構成であり、詳細な図示および説明を省略する。
ところで、図3に示すように、第1クランクシャフト160は、第1クランク中心軸C11と第2ピストン機構20の第2クランク中心軸C21とが同軸となるように、第2ピストン機構20を構成する第2クランクシャフト260と連結されるように構成されており、第1クランクシャフト160と第2クランクシャフト260とが同軸上で連結されて第1クランクシャフトアセンブリ60が形成されるようになっている。これにより、図1に示すように、第1クランクシャフトアセンブリ60の軸線上(すなわち、第1および第2クランク中心軸C11,C21上)で第1ピストン機構10(第1内燃機関1)と第2ピストン機構20(第2内燃機関2)とが並んで配置される。なお、図3に示すように、第1ピン中心軸C12(第1クランクピン161)が第2ピストン機構20の第2ピン中心軸C22(第2クランクピン261)に対して第1クランク中心軸C11(第2クランク中心軸C21)を中心に180度だけ相対回転した位置に位置するように、第1クランクシャフト160と第2クランクシャフト260とが連結される。
また、図3に示すように、第3クランクシャフト360は、第3クランク中心軸C31と第4ピストン機構40の第4クランク中心軸C41とが同軸となるように、第4ピストン機構40を構成する第4クランクシャフト460と連結されるように構成されており、第3クランクシャフト360と第4クランクシャフト460とが同軸上で連結されて第2クランクシャフトアセンブリ65が形成されるようになっている。これにより、図1に示すように、第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線上(すなわち、第3および第4クランク中心軸C31,C41上)で第3ピストン機構30(第1スチーム機関3)と第4ピストン機構40(第2スチーム機関4)とが並んで配置される。なお、図3に示すように、第3ピン中心軸C32(第3クランクピン361)が第4ピストン機構40の第4ピン中心軸C42(第4クランクピン461)に対して第3クランク中心軸C31(第4クランク中心軸C41)を中心に180度だけ相対回転した位置に位置するように、第3クランクシャフト360と第4クランクシャフト460とが連結される。
そして、図1に示すように、第1クランクシャフトアセンブリ60の軸線(第1および第2クランク中心軸C11,C21)が第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線(第3および第4クランク中心軸C31,C41)に対して平行となり、且つ、第1ピストン機構10が第3ピストン機構30に対して第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線と直角な方向に並んで配置されるとともに、第2ピストン機構20が第4ピストン機構40に対して第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線と直角な方向に並んで配置されるように構成されている。これにより、エンジンの重心G(図1を参照)をエンジンの中央に位置させることができるため、バランサー等が不要となり、エンジンの小型化が可能になる。
なお、各ピストン機構に構成される第1シリンダ101,102(第1ピストン機構10)、第2シリンダ201,202(第2ピストン機構20)、第3シリンダ301,302(第3ピストン機構30)、そして第4シリンダ401,402(第4ピストン機構40)は、互いに一体的に形成されてシリンダアッセンブリ70を構成する。また、シリンダアッセンブリ70の外部に突出する第1および第3クランクシャフト160,360の端部には、第1および第2クランクシャフトアセンブリ60,65を同期回転させることが可能なシンクロドライブギヤ(図示せず)等がそれぞれ取り付けられる。
続いて、第1スチーム機関3および第2スチーム機関4に水蒸気を供給するための水蒸気発生システム5について図4を参照しながら説明する。なお、図4において、説明容易化のため、第1内燃機関1および第1スチーム機関3が上下方向に反転して記載されている。水蒸気発生システム5は、水が貯留されたリザーブタンク501と、リザーブタンク501から供給される水を加熱するための一次熱交換器510および二次熱交換器520とを主体に構成される。
一次熱交換器510は、後述するタービンユニット550から排出された排気ガスが通過する排気管511の肉厚部に、螺旋状に形成されたステンレス製の第1熱交換パイプ512が鋳込まれた構成となっており、リザーブタンク501からの水が第1熱交換パイプ512を通過するときに、排気管511を通過する排気ガスの熱を利用して第1熱交換パイプ512を通過する水を加熱することで、一次熱交換器510によりリザーブタンク501からの水が加熱されるようになっている。そして、一次熱交換器510を用いて加熱された水は、第1加圧ポンプ502を用いて二次熱交換器520に送られるようになっている。このとき、第1加圧ポンプ502を用いて二次熱交換器520に送られる水の圧力は、例えば、6〜16kgf/cm2程度に設定される。なお、排気管511の肉厚部に螺旋状の第1熱交換パイプ512を鋳込むことにより、第1熱交換パイプ512の破裂を防止している。また、第1加圧ポンプ502は図示しないモーターで駆動されるギアポンプであり、例えば、第1スチーム機関3の第3ピストンアセンブリ303が一往復する間に0.05〜0.2ml程度の(高圧の)水を送るようになっている。
二次熱交換器520は、第1内燃機関1の左排気ポート114および右排気ポート124(並びに、第2内燃機関2の排気ポート)から排出された排気ガスが通過するエキゾーストマニホールド521の肉厚部に、螺旋状に形成されたステンレス製の第2熱交換パイプ522が鋳込まれた構成となっており、一次熱交換器510(第1加圧ポンプ502)からの高圧の水が第2熱交換パイプ522を通過するときに、エキゾーストマニホールド521を通過する排気ガスの熱を利用して第2熱交換パイプ522を通過する水を加熱することで、二次熱交換器520により一次熱交換器510からの水が加熱されるようになっている。そして、二次熱交換器520を用いて加熱された高温高圧の水は、第1スチーム機関3の左吸気ポート313および右吸気ポート323(並びに、第2スチーム機関4の吸気ポート)に送られるようになっている。このようにして、左吸気ポート313および右吸気ポート323に送られた高温高圧の水は、相対的に圧力が低下する左右の第3シリンダ室315,325(並びに、第2スチーム機関4の各シリンダ室)で水蒸気に気化するようになっている。なお、エキゾーストマニホールド521の肉厚部に螺旋状の第2熱交換パイプ522を鋳込むことにより、第2熱交換パイプ522の破裂を防止している。
ところで、タービンユニット550は、タービンシャフト552の一端側に設けられた排気タービン551と、タービンシャフト552の他端側に設けられたインペラ553と、排気タービン551を回転駆動した排気ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離装置560とを主体に構成される。排気タービン551は、第1内燃機関1(および、第2内燃機関2)の各排気ポートから排出された排気ガスを利用して回転駆動されるように構成されており、この排気タービン551の回転力を利用してタービンシャフト552およびインペラ553が回転するようになっている。なお、第1内燃機関1(および、第2内燃機関2)の各排気ポートから排出された排気ガスは、前述の二次熱交換器520および排気ガスを浄化するキャタライザー508を通過したのち排気タービン551に達するようになっている。
タービンシャフト552は、図示しない歯車機構等を利用して第1または第2クランクシャフトアセンブリ60,65と連結されており、排気タービン551の回転力を利用して各クランクシャフトアセンブリ60,65を(補助的に)駆動可能に構成される。これにより、エンジンの出力向上が期待できる。
インペラ553は、前述したように、排気タービン551により回転駆動され、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)における各シリンダ室内の気体をシリンダ室の外部へ向けて吸引可能に構成される。そして、例えば、第1スチーム機関3(第3ピストン機構30)の上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bが開放されたときに、第1スチーム機関3における右シリンダ室325内の気体(水蒸気)がこのインペラ553に吸引されて、上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bからリザーブタンク501へ送られるようになっている。
これにより、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)における排気行程において、インペラ553によりシリンダ室内の気体(水蒸気)を効率よくシリンダ室の外部へ排出させることができるため、第1および第2内燃機関1,2(第1および第2ピストン機構10,20)から排出された排気ガスを有効利用しつつ、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)の出力を向上させることが可能になる。なお、リザーブタンク501内の圧力は2〜3kgf/cm2程度に設定され、インペラ553を利用してリザーブタンク501へ送られた水蒸気は、水に液化した状態でリザーブタンク501内に貯留される。
水蒸気分離装置560は、例えば、遠心分離の原理を用いて、排気タービン551を回転駆動して高速回転する排気ガスから水蒸気(水)を分離する構成となっており、排気ガスから分離された水蒸気(水)は冷却装置504を通過して集水タンク505に送られるようになっている。なお、排気ガスから分離された水蒸気は冷却装置504で水に液化する。そして、集水タンク505に貯留された水は、第2加圧ポンプ506を用いてリザーブタンク501に送られる。これにより、水蒸気分離装置560を用いて外部(排気ガス)からリザーブタンク501に水が供給されるため、リザーブタンク501に水を補充する手間を省くことができ、メンテナンス性が向上する。さらに、リザーブタンク501に水を補充するための大型の装置を別途設ける必要がなく、エンジンの小型化が可能になる。特に、移動を伴う自動車や航空機用エンジンに有効である。なお、第2加圧ポンプ506は図示しないモーターで駆動され、リザーブタンク501内の水量が所定値以下となった場合に、集水タンク505に貯留された水をリザーブタンク501に送り補給するようになっている。また、集水タンク505の上部でガス抜きが行われる。
なお、水蒸気分離装置560を通過した排気ガスは、一次熱交換器510の排気管511を通過したのち外部に排出される。これからわかるように、水蒸気発生システム5の一次熱交換器510および二次熱交換器520は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガスの熱を利用して水を加熱する構成となっており、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用している。
このように構成されるマルチハイブリッドエンジンENGにおいて、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第1スチーム機関3(第3ピストン機構30)の作動について図11〜図18を参照しながら説明する。なお、各ピストン機構は左右対称であり、左右で同様の動作を行うので、本実施形態では各ピストン機構の右側部分の作動を中心に説明する。また、第2内燃機関2(第2ピストン機構20)は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)と同様の構成であり、同様の動作を行うため本実施形態では説明を省略する。さらに、第2スチーム機関4(第4ピストン機構40)は、第1スチーム機関3(第3ピストン機構30)と同様の構成であり、同様の動作を行うため本実施形態では説明を省略する。
図11においては、第1内燃機関1に構成される右側の第1ピストン150が上死点に位置しており、このときのクランク角を0度とする。第1内燃機関1の吸入行程では、図11〜図13に順に示すように、クランク角が0度〜180度になるまで第1クランクシャフト160が回転し、右側の第1ピストン150が上死点から下死点まで(左方へ)移動して天然ガスと空気の混合ガスが右吸気ポート123から右第1シリンダ室125内に吸入される。このあいだ、吸気側ロータリーバルブ127は、連通孔127aを介して右吸気ポート123を開放しつつ45度(すなわち、第1クランクシャフト160の1/4)だけ回転し、排気側ロータリーバルブ128は、右排気ポート124を閉鎖しつつ45度(すなわち、第1クランクシャフト160の1/4)だけ回転する。なお、吸気側ロータリーバルブ127は、クランク角が第1ピストン150の上死点より手前20度の時点から右吸気ポート123を開放し始め、クランク角が第1ピストン150の下死点より30度だけ進んだ時点で右吸気ポート123を閉鎖する。
一方、図11において、第1スチーム機関3に構成される右側の第3ピストン350が下死点に位置しており、図11〜図13に順に示すように、クランク角が0度〜180度になるまで第1内燃機関1の第1クランクシャフト160が回転すると、右側の第3ピストン350が下死点から上死点まで(右方へ)移動して、第3シリンダ室325内の気体(水蒸気)が上下の右排気ポート324a,324bから水蒸気発生システム5のリザーブタンク501へ排出される。すなわち、第1内燃機関1が吸入行程のとき、第1スチーム機関3は排気行程となる。
このあいだ、ロータリースチームバルブ327は右吸気ポート323を閉鎖しつつ90度(すなわち、第3クランクシャフト360の1/2)だけ回転し、各排気側ロータリーバルブ328,328は、連通孔328aを介して上下の右排気ポート324a,324bをそれぞれ開放しつつ90度(すなわち、第3クランクシャフト360の1/2)だけ回転する。なお、排気側ロータリーバルブ328,328は、クランク角が第3ピストン350の下死点より手前30度の時点から上下の右排気ポート324a,324bをそれぞれ開放し始め、クランク角が第3ピストン350の上死点より30度だけ進んだ時点で右排気ポート324a,324bをそれぞれ閉鎖する。
なお、図11〜図13に示すように、第1内燃機関1の右側部分が吸気行程のとき、第1内燃機関1の左側部分は圧縮行程となる。また、第1スチーム機関3の右側部分が排気行程のとき、第1スチーム機関3の左側部分は膨張行程となる。
第1内燃機関1の圧縮行程では、図13〜図15に順に示すように、クランク角が180度〜360度になるまで第1クランクシャフト160が回転し、右側の第1ピストン150が下死点から上死点まで(右方へ)移動して右第1シリンダ室125内の混合ガスが圧縮される。このあいだ、吸気側ロータリーバルブ127は右吸気ポート123を閉鎖しつつ45度だけさらに回転し、排気側ロータリーバルブ128は右排気ポート124を閉鎖しつつ45度だけさらに回転する。
一方、第1スチーム機関3では、図13〜図15に順に示すように、クランク角が180度〜360度になるまで第1内燃機関1の第1クランクシャフト160が回転すると、水蒸気発生システム5により右吸気ポート323から右第3シリンダ室325内に水蒸気が供給されて、右側の第3ピストン350がこの水蒸気の圧力を受けつつ、上死点から下死点まで(左方へ)移動する。すなわち、第1内燃機関1が圧縮行程のとき、第1スチーム機関3は膨張行程となる。このあいだ、ロータリースチームバルブ327は、連通孔327aを介して右吸気ポート323を開放しつつ90度だけさらに回転し、各排気側ロータリーバルブ328,328は、上下の右排気ポート324a,324bをそれぞれ閉鎖しつつ90度だけさらに回転する。
そして、ロータリースチームバルブ327が右吸気ポート323を開放したとき、右吸気ポート323に送られた高温高圧の水は、ロータリースチームバルブ327の連通孔327aを通過して右第3シリンダ室325内に達し、相対的に圧力が低下する右第3シリンダ室325内で水蒸気に気化する。このようにして、水蒸気発生システム5により水蒸気が右第3シリンダ室325内に供給される。なお、ロータリースチームバルブ327は、第3ピストン350が上死点に位置する時点から右吸気ポート323を開放し始め、クランク角が第3ピストン350の上死点より90度だけ進んだ時点で右吸気ポート323を閉鎖する。
なお、図13〜図15に示すように、第1内燃機関1の右側部分が圧縮行程のとき、第1内燃機関1の左側部分は燃焼行程となる。また、第1スチーム機関3の右側部分が膨張行程のとき、第1スチーム機関3の左側部分は排気行程となる。
第1内燃機関1の燃焼行程では、図15〜図17に順に示すように、クランク角が360度〜540度になるまで第1クランクシャフト160が回転し、右側の第1ピストン150が燃焼ガスの圧力を受けつつ上死点から下死点まで(左方へ)移動する。このあいだ、吸気側ロータリーバルブ127は右吸気ポート123を閉鎖しつつ45度だけさらに回転し、排気側ロータリーバルブ128は右排気ポート124を閉鎖しつつ45度だけさらに回転する。
一方、第1スチーム機関3では、図15〜図17に順に示すように、クランク角が360度〜540度になるまで第1内燃機関1の第1クランクシャフト160が回転すると、右側の第3ピストン350が下死点から上死点まで(右方へ)移動して、第3シリンダ室325内の気体(水蒸気)が上下の右排気ポート324a,324bから水蒸気発生システム5のリザーブタンク501へ排出される。すなわち、第1内燃機関1が燃焼行程のとき、第1スチーム機関3は排気行程となる。このあいだ、ロータリースチームバルブ327は右吸気ポート323を閉鎖しつつ90度だけさらに回転し、各排気側ロータリーバルブ328,328は、連通孔328aを介して上下の右排気ポート324a,324bをそれぞれ開放しつつ90度だけさらに回転する。
なお、図15〜図17に示すように、第1内燃機関1の右側部分が燃焼行程のとき、第1内燃機関1の左側部分は排気行程となる。また、第1スチーム機関3の右側部分が排気行程のとき、第1スチーム機関3の左側部分は膨張行程となる。
第1内燃機関1の排気行程では、図17〜図18、および図11に順に示すように、クランク角が540度〜720度になるまで第1クランクシャフト160が回転し、右側の第1ピストン150が下死点から上死点まで(右方へ)移動して、右第1シリンダ室125内の燃焼ガスが右排気ポート124から排気ガスとして水蒸気発生システム5の二次熱交換器520へ排出される。このあいだ、吸気側ロータリーバルブ127は右吸気ポート123を閉鎖しつつ45度だけさらに回転し、排気側ロータリーバルブ128は連通孔128aを介して右排気ポート124を開放しつつ45度だけさらに回転する。なお、排気側ロータリーバルブ128は、クランク角が第1ピストン150の下死点より手前20度の時点から右排気ポート124を開放し始め、クランク角が第1ピストン150の上死点より30度だけ進んだ時点で右排気ポート124を閉鎖する。
一方、第1スチーム機関3では、図17〜図18、および図11に順に示すように、クランク角が540度〜720度になるまで第1内燃機関1の第1クランクシャフト160が回転すると、水蒸気発生システム5により右吸気ポート323から右第3シリンダ室325内に再び水蒸気が供給されて、右側の第3ピストン350がこの水蒸気の圧力を受けつつ、上死点から下死点まで(左方へ)移動する。すなわち、第1内燃機関1が排気行程のとき、第1スチーム機関3は膨張行程となる。そして、第1内燃機関1は排気行程の後に吸気行程を繰り返し、同様に、第1スチーム機関3は膨張および排気行程を繰り返す。
この膨張行程のあいだ、ロータリースチームバルブ327は、連通孔327aを介して右吸気ポート323を開放しつつ90度だけさらに回転し、各排気側ロータリーバルブ328,328は、上下の右排気ポート324a,324bをそれぞれ閉鎖しつつ90度だけさらに回転する。なお、クランク角が0度〜720度になるまで第1クランクシャフト160が回転するあいだ、第1内燃機関1では、吸気側ロータリーバルブ127および排気側ロータリーバルブ128が180度だけ回転し、第1スチーム機関3では、ロータリースチームバルブ327および排気側ロータリーバルブ328が360度だけ回転する。
なお、図17〜図18、および図11に示すように、第1内燃機関1の右側部分が排気行程のとき、第1内燃機関1の左側部分は吸気行程となる。また、第1スチーム機関3の右側部分が膨張行程のとき、第1スチーム機関3の左側部分は排気行程となる。
そして、以上のような構成のマルチハイブリッドエンジンENGによれば、第1ピストン機構10(および第2ピストン機構20)から排出された排気ガスの熱を利用して水蒸気を発生させる水蒸気発生システム5を有し、第3ピストン機構30(および第4ピストン機構40)が水蒸気発生システム5により発生した水蒸気の圧力を利用して作動するように構成されることで、第1ピストン機構10(および第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。
また、第1ピストン機構10(および第2ピストン機構20)から排出された排気ガスを利用して回転駆動されるタービン551と、タービン551の回転力を利用して作動し、第3ピストン機構30(および第4ピストン機構40)におけるシリンダ室内の気体をシリンダ室の外部へ向けて吸引することが可能なインペラ553とを備えて構成されることで、第3ピストン機構30(および第4ピストン機構40)における排気行程において、インペラ553によりシリンダ室内の気体(水蒸気)を効率よくシリンダ室の外部へ排出させることができるため、第1ピストン機構10(および第2ピストン機構20)から排出された排気ガスを有効利用しつつ、第3ピストン機構30(および第4ピストン機構40)の出力を向上させることが可能になる。
なお、上述の実施形態において、各ピストン機構がいわゆるダブルアクティングピストン機構の構造となっているが、これに限られるものではない。例えば、各ピストン機構において、左側のシリンダの代わりに、導線がシリンダの軸線と平行な筒状に巻かれたコイルを右側のシリンダに対しクランクシャフトを挟んで対向配設するとともに、左側のピストンの代わりに、コイルの内部空間を往復移動自在な永久磁石を、連結体を介して右側のピストンと連結させるようにしてもよい。このようにすれば、右側のピストンと連結された永久磁石をコイルの内部空間で往復移動させて発電を行うことができるため、コンパクトなエンジン式発電機を得ることが可能になる。
また、上述の実施形態において、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)に加えて第2内燃機関2(第2ピストン機構20)が設けられているが、これに限られるものではなく、内燃機関(第1もしくは第2ピストン機構)が1つだけ設けられるようにしてもよく、内燃機関が3つ以上設けられるようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態において、第1スチーム機関3(第3ピストン機構30)に加えて第2スチーム機関4(第4ピストン機構40)が設けられているが、これに限られるものではなく、スチーム機関(第3もしくは第4ピストン機構)が1つだけ設けられるようにしてもよく、スチーム機関が3つ以上設けられるようにしてもよい。
また、上述の実施形態において、排気ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離装置560が設けられているが、これに限られるものではなく、この水蒸気分離装置560を設けなくてもよい。
さらに、上述の実施形態において、ロータリースチームバルブ317,327に略球形の空間部317b,327bが形成されているが、これに限られるものではなく、例えば、シリンダ状に形成されてもよく、さらに容積可変に形成されるようにしてもよい。
また、上述の実施形態において、連結体における円筒状開口の内周面に内歯同期ギヤを形成するとともに、クランクピンの外周面に外歯同期ギヤを形成し、ローターアセンブリの各ローラに前述の内歯同期ギヤおよび外歯同期ギヤと噛合する外歯同期ギヤを形成するようにしてもよい。
例えば、第1ピストン機構10においては、図19〜図22に示すように、第1連結体130′のリム部131に形成された円筒状開口の内周面131aの端部に内歯同期ギヤ131bが形成されるとともに、第1クランクシャフト160′における第1クランクピン161の端部外周面に外歯同期ギヤ161aが形成される。さらに、図23〜図24に示すように、第1ローターアセンブリ140′を構成するメインローラ146′およびサブローラ147′に、円筒状のローラ外周面146b,147bが形成されるとともに、その端部に外歯同期ギヤ146c,147cが形成される。
そして、メインローラ146′のローラ外周面146bが第1クランクピン161の外周面に当接するとともに、サブローラ147′のローラ外周面147bが第1連結体130′の内周面131aに当接し、上述の実施形態と同様に連動回転機構を構成する。このとき、メインローラ146′の外歯同期ギヤ146cが第1クランクピン161の内歯同期ギヤ131bと噛合するとともに、サブローラ147′の外歯同期ギヤ147cが第1連結体130′の内歯同期ギヤ131bと噛合し、メインローラ146′およびサブローラ147′のすべり回転が規制されるようになっている。
このようにすれば、第1クランクシャフト160′および第1クランクピン161の回転に連動して第1ローターアセンブリ140′をより確実に(すなわち、メインローラ146′およびサブローラ147′がすべり回転をすることなく)連動回転させることができる。なおこのとき、第1クランクピン161の回転時にメインローラ146′による巻き込み効果が確実に生じるため、捻りコイルバネ148を設けなくてもよい。