JP2006197206A - スピーカ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 時間の経過に関係なく、また十分なフィードバックゲインが得られなくてもスピーカから発生する歪を低減するスピーカ装置を提供する。
【解決手段】 力係数補正手段10aは、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10aで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11で出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動し、センサ14はスピーカ13の振動を検出する。センサ14の出力に基づく帰還信号はセンサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10aで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、センサ14の出力信号によって負帰還となるフィードバック処理が行われる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スピーカ装置に関し、より特定的には、スピーカから発生する歪を低減するスピーカ装置に関する。
従来から、スピーカを用いて電気信号を音波に変換する方法が知られている。入力とする電気信号に応じてスピーカの振動板などの振動系が振動し、電気信号は音波に変換される。ここで、電気信号から音波へ忠実に変換されることが望まれているが、実際のスピーカでは、その構造上の制限から忠実な変換を行うことは難しい。例えば、スピーカを構成する磁気回路の構造上、振動系が振動する中心位置からの変位(以下、振動変位という)が大きくなるにしたがい、磁気ギャップ内の磁束密度は減少する。そして、磁束密度の減少に伴って力係数も減少する。その結果、振動変位は入力される電気信号の大きさに比例しなくなる。また、スピーカを構成するダンパーやエッジなどの支持系のスティフネスは、その支持系の構造上、振動変位に対して変化する。その結果、振動変位は入力される電気信号の大きさに常に比例するとは限らない。
以上のように、実際のスピーカではその構造上の制限によって振動変位が入力の大きさに比例しなくなる(非線形となる)。この非線形となる範囲においてスピーカから歪(以下、非線形歪という)が発生するという問題がある。
そこで、上記非線形歪を低減させる方法として、従来からフィードフォワード処理(例えば、特許文献1参照。)やフィードバック処理(例えば、特許文献2参照。)などの電気信号処理を用いた方法が提案されている。
図27は、フィードフォワード処理を用いた従来のスピーカ装置200を示すブロック図である。図27において、スピーカ装置200は、非線形補正回路201、増幅器202およびスピーカ203を備える。図28は、スピーカ203の入力対振幅特性を示す図である。図28において、スピーカの入力対振幅特性は、振動変位xが大きいほど入力電圧と振動変位は比例せず、非線形の特性となる。電気信号が入力信号として非線形補正回路201に入力される。非線形補正回路201は、図28に示す入力対振幅特性に基づいて、その特性の非線形部分が線形となるように入力信号のレベルを補正する。なお、図28に示す入力対振幅特性は、スピーカ203がもつ固有の特性であり、予め求められる。増幅器202は、非線形補正回路201によって補正された入力信号を増幅する。スピーカ203はその増幅された入力信号に応じて振動系が振動することで入力信号を音波に変換する。以上のように、非線形補正回路201において入力信号のレベルを補正して出力するフィードフォワード処理を行うことによって、スピーカ装置200は、スピーカ203から発生する非線形歪を低減することができる。
図29は、フィードバック処理を用いた従来のスピーカ装置210を示すブロック図である。図29において、スピーカ装置210は、加算器211、フィルタ212、マイクロフォン用増幅器213、マイクロフォン214、増幅器202およびスピーカ203を備える。電気信号が入力信号として加算器211に入力される。増幅器202は加算器211において出力された信号を増幅する。スピーカ203はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。マイクロフォン214はスピーカ203の振動を検出する。そして、マイクロフォン214の出力信号は、マイクロフォン用増幅器213で増幅される。そして、その増幅された出力信号はフィルタ212を介して、入力信号に対して極性が反転するように、加算器211に入力される。このような負帰還となるフィードバック処理を行うことにより、スピーカ装置210は、上記非線形歪に限らず、スピーカ203から発生する様々な歪を低減することができる。
なお、フィルタ212は、マイクロフォン214の出力信号から特定周波数を除去して、発振を防止する。特定周波数とは、スピーカ203が特定環境に設置されることにより生じる音響系の共振の周波数である。スピーカ203で変換された音波は、その共振の周波数で位相が回転する。そして、マイクロフォン214の出力信号も共振の周波数において位相が回転している。したがって、上記共振の周波数において、マイクロフォン214の出力信号の位相が回転して位相の遅れが生じ、入力信号と同じ極性で加算器211に入力されることになる。このように入力信号に対して同じ極性で帰還する(正帰還となる)ことによって、発振が起こる。そのため、フィルタ212は、帰還されるマイクロフォン214の出力信号から正帰還となる共振の周波数付近の信号を除去し、発振を防止する。
特開昭60−196098号公報 特開昭60−232797号公報
ここで、スピーカを構成するエッジやダンパーなどの支持系は、一般的に布や樹脂などの材料で作られる。布や樹脂などの材料は、時間の経過とともにその特性が変化(経年変化)する。そのため、材料の経年変化とともに支持系の特性(例えばスティフネスなど)は変化する。また、環境温度や支持系にかかる応力などの条件によって、時間の経過とともに材料が伸びたり、柔らかくなったりする現象(クリープ現象)も起こる。このような経年変化やクリープ現象によって、図28に示すスピーカの入力対振幅特性は時間の経過とともに変化してしまう。すなわち、実際のスピーカの入力対振幅特性は常に一定とは限らない。ここで、上記フィードフォワード処理では、非線形補正回路201は予め求められた入力対振幅特性に基づいて補正する。したがって、スピーカの入力対振幅特性は時間の経過とともに変化するので、非線形補正回路201は実際のスピーカの入力振幅特性に基づいた補正を行うことができない。その結果、上記フィードフォワード処理では、時間の経過とともに非線形歪を低減させる効果が悪化するという課題があった。
また、実際のスピーカで変換される音波は、上記特定環境に設置されたことにより生じる音響系の共振以外に最低共振周波数foやその他様々な共振により位相が著しく回転している。したがって、上記フィードバック処理では、あらゆる周波数で発振しないように設計すると、フィードバックゲインが十分に得られない。その結果、上記フィードバック処理では歪を所望とされるレベルまで低減することが難しいという課題があった。
それ故に、本発明の目的は、時間の経過に関係なく、また十分なフィードバックゲインが得られなくてもスピーカから発生する歪を低減するスピーカ装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および図番号は、本発明の理解を助けるために図面との対応関係を示したものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
第1の発明は、力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する力係数補正手段(10a、10b)と、力係数補正手段において補正された電気信号を入力する加算器(11)と、加算器において出力された電気信号を増幅する増幅器(12)と、増幅器において増幅された電気信号に基づいて振動することにより、当該増幅された電気信号を音波に変換するスピーカ(13)と、スピーカの振動を検出し、当該振動に応じた特性を示す信号を出力する、少なくとも1つのセンサ(14)とを備え、センサの出力に基づく帰還信号を加算器に入力する、スピーカ装置である。
第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、センサの出力を入力とし、センサの出力信号の特性を所定の特性に変換して、加算器に入力する変換手段(15、15a、15b)をさらに備える。
第3の発明は、第1の発明に従属する発明であって、センサは、振動に応じた特性を示す信号を力係数補正手段にさらに入力し、力係数補正手段は、センサの出力信号を参照しながら、力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する(図13、図14、図15)。なお、力係数補正手段が参照する信号は、必ずしもセンサの出力信号そのものに限らず、その出力信号を変換フィルタなどで適宜に変換した信号であってもよい。
第4の発明は、第3の発明に従属する発明であって、センサの出力信号は、スピーカの振動変位を示す信号であることを特徴とする(図13、図15)。
第5の発明は、第3の発明に従属する発明であって、センサの出力を入力とし、センサの出力信号をスピーカの振動変位を示す信号に変換して、力係数補正手段に入力する変位変換フィルタ(16)をさらに備える(図14)。
第6の発明は、第1の発明に従属する発明であって、スピーカ装置は、入力される電気信号に基づいて、スピーカが線形で振動すると仮定したときの振動変位を示す信号を算出するフィルタ(100)をさらに備え、力係数補正手段は、フィルタで算出された信号を参照しながら、力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する(図16、図17)。
第7の発明は、第1の発明に従属する発明であって、スピーカ装置は、電気信号のレベルを変化させるイコライザ(18)をさらに備え、帰還信号は、スピーカの振動加速度を示す信号であることを特徴とする(図18、図19)。
第8の発明は、第1の発明に従属する発明であって、帰還信号は、スピーカの振動加速度を示す第1の帰還信号と、スピーカの振動速度を示す第2の帰還信号とを含む(図21、図22、図24)。
第9の発明は、第1の発明に従属する発明であって、力係数補正手段は、スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する力係数の値を示す特性の逆特性に基づいて、入力される電気信号のレベルを補正する(図6)。
第10の発明は、第9の発明に従属する発明であって、力係数補正手段は、スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する力係数の値を示す特性を近似化して求められる関数で表し、当該関数に基づく演算処理によって、入力される電気信号のレベルを補正する。
第11の発明は、第9の発明に従属する発明であって、力係数補正手段は、スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する力係数の値を示す特性を所定間隔に区切られた各変位に対応する力係数の各値を示す情報(図7)で表し、当該情報に基づく演算処理によって、入力される電気信号のレベルを補正する。
第12の発明は、第11の発明に従属する発明であって、力係数補正手段は、入力される電気信号のレベルまたは振動変位と、力係数に起因する歪を打ち消すように補正された電気信号のレベルとが対応付けされる予め作成されたテーブルを用いて、入力される電気信号を補正する。
第13の発明は、第1から第12のいずれかの発明に従属する発明であって、スピーカに所定のレベル以上の電気信号が入力されないように電気信号のレベルを制限する制限手段(17)をさらに備える。なお、制限手段は、力係数補正手段の中に組み込まれてもよい(図11)。
第14の発明は、第1から第13のいずれかの発明に従属する発明であって、増幅器は、定電流増幅器であることを特徴とする。
第15の発明は、電気信号を入力するための第1の入力端子と、スピーカ(13)の振動を検出するセンサ(14)の出力に基づく帰還信号を入力するための第2の入力端子と、力係数に起因する歪を打ち消すように、前記第1の入力端子を通じて入力される電気信号のレベルを補正する力係数補正手段(10a、10b)と、力係数補正手段において補正された電気信号を入力する加算器(11)と、加算器において出力された電気信号を増幅器に出力するための出力端子とを備え、帰還信号を第2の入力端子を通じて加算器に入力する、集積回路である。
第1の発明によれば、スピーカ装置は、力係数補正手段において力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号を補正することで、スピーカの振動変位が大きくなるにつれて力係数が減少し、スピーカの振動変位と入力される電気信号のレベルとが比例しなくなることによって生じる歪を低減させることができる。また、スピーカは力係数に起因する歪が除去された形で振動し、その振動をセンサが検出する。そのセンサの出力に基づく帰還信号を加算器に入力する帰還処理において、すでに力係数に起因する歪は力係数補正手段において除去されている。したがって、十分なフィードバックゲインが得られなくても、力係数に起因する歪以外の他の歪(例えば支持系の経年変化やクリープ現象によって生じる歪など)を大幅に低減することができる。
第2の発明によれば、センサの出力信号の特性を所定の特性に変換して加算器に入力することで、帰還処理の周波数帯域を自由に設定することができる。
第3の発明によれば、力係数補正手段はセンサの出力信号を参照することで、そのセンサの出力信号に応じた正確な補正が可能となる。
第4の発明によれば、力係数補正手段はスピーカの振動変位を示すセンサの出力信号を参照することで、実際のスピーカの振動変位に基づいた精度の高い補正をすることができる。
第5の発明によれば、変位変換フィルタによってセンサの出力信号をスピーカの振動変位を示す信号に変換することで、異なる信号を出力する様々なセンサを自由に選択して使用することができる。
第6の発明によれば、力係数補正手段はフィルタで算出された線形で振動すると仮定したときの振動変位を示す信号を参照することで、線形で振動するときの振動変位に基づいた精度の高い補正をすることができる。
第7の発明によれば、スピーカの振動加速度を示す帰還信号を加算器に入力する帰還処理をすることで、低域周波数範囲のみならず中高域周波数範囲においても低歪化を実現することができる。また、振動加速度を示す帰還信号を加算器に入力することで生じるスピーカから放射される音圧周波数特性の低域の盛り上がりを、イコライザによって電気信号のレベルを変化させることで改善し、低域から高域まで広範囲の周波数で平坦な特性にすることができる。
第8の発明によれば、スピーカの振動加速度を示す帰還信号を加算器に入力する帰還処理を行うことで、低域周波数範囲のみならず中高域周波数範囲においても低歪化を実現することができる。また、振動加速度を示す帰還信号を加算器に入力することで生じるスピーカから放射される音圧周波数特性の低域の盛り上がりを、スピーカの振動速度を示す帰還信号を加算器に入力する帰還処理を行うことで改善し、低域から高域まで広範囲の周波数で平坦な特性にすることができる。
第9の発明によれば、力係数補正手段は、力係数の値を示す特性の逆特性に基づいて力係数に起因する歪を打ち消すように補正することで、力係数に起因する歪を低減することができる。
第10の発明によれば、力係数補正手段は、力係数の値を示す特性を近似化して求められる関数で表し、その関数に基づく演算処理を行うことで、振動変位の大きさに応じて変化する力係数の値に正確に対応した補正をすることができる。
第11の発明によれば、力係数補正手段は、力係数の値を示す特性を所定間隔を有する各変位に対応する力係数の各値を示す情報で表し、その情報に基づく演算処理を行うことで、振動変位大きさに応じて変化する力係数の値に正確に対応した補正をすることができる。
第12の発明によれば、力係数補正手段において予め求められたテーブルが用いられることで、入力される電気信号を補正する処理負担を軽減することができる。
第13の発明によれば、スピーカ装置は、スピーカに所定のレベル以上の電気信号が入力されないように電気信号のレベルを制限する制限手段によって、過大入力によるスピーカの破損を防止できる。
第14の発明によれば、ボイスコイルの電気インピーダンスによる歪が予め除去されるので、さらなる歪の低減効果を得ることができる。
第15の発明によれば、第1の発明と同様の効果が得られる。
以下、本発明の種々の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスピーカ装置1について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るスピーカ装置1の構成を示すブロック図である。図1において、スピーカ装置1は、力係数補正手段10a、加算器11、増幅器12、スピーカ13およびセンサ14を備える。なお、スピーカ装置1の詳細を説明する前に、非線形歪が発生する要因について先に説明する。
図2は、一般的なスピーカ13の断面図である。図2において、スピーカ13は、ボイスコイル20、振動板21、マグネット22、磁気回路23、磁気ギャップ24、ダンパー25およびエッジ26を備える。磁気ギャップ24には磁束密度Bが発生する。そして、その磁束密度Bとボイスコイル20に流れる電流とでフレミングの左手の法則にしたがって、ボイスコイル20は振動板21と一体となり振動変位xの上下方向に振動する。そして、振動板21はダンパーおよびエッジに支持され、振動変位xの上下方向に安定して振動し、空気を動かすことによって音を放射する。なお、図2に示されるスピーカ13は一例であってこれに限定されない。例えばキャンセルマグネットを含む防磁タイプのスピーカであってもよいし、内磁型の磁気回路を構成するスピーカであってもよい。また、図2において、振動変位xが0となる位置は、ボイスコイル20や振動板21が振動する中心位置を示し、後述する図3、図4、図5、図6、図7、図11における振動変位xが0となる原点に相当する。
上記スピーカ13において、非線形歪が発生する主な要因が3つある。第1の要因としては、磁気ギャップ24に発生する磁束密度Bが要因として挙げられる。図3は、磁気ギャップ24付近の振動変位xに対する力係数Blの特性の一例を示す図である。磁気ギャップ24の内部(振動変位x=0付近)では磁束密度Bの大きさは概ね一定である。しかし、振動変位xが大きいときは、磁路が形成されにくいため急激に磁束密度Bが減少する。したがって、磁束密度Bによって求められる力係数Blとボイスコイル20の振動変位xとの関係は図3に示すような関係となる。このとき、図3に示す力係数Blの特性は、振動変位xの力係数関数Bl(x)として表現される。
また、ボイスコイル20を振動させるための駆動力F(t)は、ボイスコイル20に流れる入力信号の電流をI(t)とすると、以下の式で表現される。
F(t)=Bl(x)*I(t) (1)
したがって、ボイスコイル20の振動変位xが大きくなる(F(t)が大きくなる)場合、力係数Bl(x)の値は減少する(図3参照。)。そして、上式(1)より、駆動力F(t)は入力信号I(t)のレベルに比例しなくなる。また、後述するスティフネスKが一定であると仮定すると、振動変位xはF(t)に比例するので、結果的に振動変位xは入力信号I(t)のレベルに比例しなくなる。その結果、スピーカ13から非線形歪が発生する。
第2の要因としては、ダンパー25およびエッジ26などの支持系が要因として挙げられる。ダンパー25やエッジ26は、その形状上、無限に伸びることはなく、ある程度伸びたところで突っ張り始める。図4は、振動変位xに対する支持系のスティフネスKの特性の一例を示す図である。図4おいて、ボイスコイル20の振動変位xが小さい場合には、スティフネスKの値は略一定である。ボイスコイル20の振動変位xが大きくなる場合には、スティフネスKの値が大きくなる。したがって、振動変位xが大きくなるとスティフネスKの値は変化するので、振動変位xは駆動力F(t)に比例しなくなる。また、上記Bl(x)が一定であると仮定すると、駆動力F(t)は入力信号I(t)のレベルに比例するので、結果的に振動変位xは入力信号I(t)のレベルに比例しなくなる。以上の要因でスピーカ13から非線形歪が発生する。
また、図5は、入力信号の大きさに対するスティフネスKの特性の変化を示す図である。図5において、スティフネスKの特性は入力信号の大きさに応じて変化し、常に一定の曲線とはならない。また、ダンパー25やエッジ26は布や樹脂などの材料で作られるため、その材料の経年変化やクリープ現象によっても図4に示されるスティフネスKの特性は変化する。以上の要因によっても振動変位xは入力信号I(t)のレベルに比例しなくなる。その結果、スピーカ13から非線形歪が発生する。
第3の要因としては、ボイスコイル20の電気インピーダンス特性が要因として挙げられる。スピーカの磁気回路は一般的に、透磁率の高い鉄などを材料が使用されるため、振動変位の大きさによってボイスコイル20が有するインダクタンス成分が変化することになる。また振動変位の大きさには依存しないが、ボイスコイル20は電気信号が入力されると発熱するため、ボイスコイル20が有する抵抗成分が時間とともに変化する。したがって、ボイスコイル20の電気インピーダンス特性(抵抗成分やインピーダンス成分)が変化することによってボイスコイル20に流れる入力信号の電流が歪まされる。その結果、スピーカ13から非線形歪が発生する。
ここで、スピーカ13を定電圧駆動させた場合において、スピーカ13に入力される入力信号の電圧E(t)と振動変位x(t)の関係は下式(2)で表現される。
Bl*E(t)/Ze=K*x(t)+(r+Bl2/Ze)*dx(t)/dt+m*d2x(t)/dt2 (2)
ただし、支持系のスティフネスをK、スピーカの機械抵抗をr、ボイスコイルの電気インピーダンスをZeおよび振動系質量をmとする。なお、非線形歪が発生する3つの主な要因はそのほとんどが振動変位xに依存する。したがって、上式(2)において力係数BlやスティフネスKや電気インピーダンスZeを振動変位xの関数として表現すると下式(3)となる。
Bl(x)*E(t)/Ze(x)=K(x)*x(t)+(r+Bl(x)2/Ze(x))*dx(t)/dt+m*d2x(t)/dt2 (3)
次に、スピーカ装置1について説明する。図1において、電気信号は入力信号として力係数補正手段10aに入力される。力係数補正手段10aは、力係数Blに起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10aで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11において出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。センサ14は、スピーカ13の振動を検出し、その振動に応じた特性を示す信号を出力する。センサ14の出力に基づく帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10aで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、センサ14の出力信号によって負帰還となるフィードバック処理が行われる。
力係数補正手段10aは、あたかも力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正する。図6は、本発明における力係数Blの目標値の一例を示す図である。以下、具体的な補正方法を説明する。予め力係数の振動変位xについての力係数関数Bl(x)を算出しておく。力係数関数Bl(x)の算出方法としては、まず、スピーカ13において図6の実線に示されるような力係数Blの特性を測定する。そして、力係数関数Bl(x)は測定された力係数Blの特性に基づいて多項式近似を行い、下式(4)と算出される。なお式(4)において、各項の係数(A0、A1、…)は測定された力係数Blの特性に基づいて設定された係数である。
Bl(x)=A0+A1*x+A2*x2+A3*x3+… (4)
上式(4)を満たす力係数関数Bl(x)を予め算出しておく。
また、予め時間毎の入力信号u(t)のレベルに対するスピーカの振動変位xを求めておく。時間毎の入力信号u(t)のレベルに対するスピーカの振動変位xを求める方法としては、例えば十分に低い周波数の電気信号をスピーカ13に入力し、そのときの振動板21の振動変位xを測定する方法がある。また、スピーカ13に入力の大きさをステップ状に変化させた直流電気信号を入力して、直流電気信号の各ステップでの振動板の振動変位xを測定する方法などがある。
ここで、時間毎の入力信号u(t)のレベルに対するスピーカの振動変位xを求めることによって、振動変位xは入力信号uの関数としてx(u)と表現される。そして、振動変位xの関数である力係数関数Bl(x)は、入力信号uの関数である力係数関数Bl’(u)と表現される。すなわち、Bl’(u)は入力信号u(t)のレベルに応じて変化する力係数Blの関数となる。
以上により、力係数補正手段10aは、上記力係数関数Bl’(u)に基づいて、下式(5)を満たすように入力信号のレベルを補正する。なお、式(5)において、補正後の入力信号をum(t)、力係数Blの目標値をAとする。
um(t)=A/Bl’(u)*u(t) (5)
以上のように、力係数補正手段10aは、入力信号u(t)のレベルに応じて変化する力係数関数Bl’(u)の逆特性を示す関数を用いて、あたかも力係数Blが目標値A(一定値)となるように入力信号のレベルを補正する。これにより、力係数に起因する非線形歪(すなわち第1の要因に起因する非線形歪)を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。すなわち、振動変位xと入力信号u(t)が比例し、力係数に起因する非線形歪をなくすことができる。
なお、式(4)で示される力係数関数Bl(x)の代わりに、力係数Blの離散化したデータ(以下、離散化データという)を用いてもよい。図7は、離散化した力係数Blの特性を示す図である。図7において、力係数Blの離散化データは、振動変位xの所定範囲をN等分し、振動変位x1〜xnに対応する力係数Blの値をそれぞれBl1〜Blnとするデータである。また、離散化データは、測定や有限要素法を用いたシミュレーションで求められる。
また、上記離散化データを用いて、例えば式(5)を満たすように入力信号u(t)のレベルと補正後の入力信号um(t)のレベルとを対応させた変換テーブルを作成し、力係数補正手段10aに予め設定しておく。そして、力係数補正手段10aは、当該変換テーブルに基づいて入力信号のレベルを補正する方法であってもよい。
ここで、一般的なスピーカの振動変位とその位相は図8に示される特性となる。図8において、スピーカの振動変位は周波数fo以下の範囲で大きさが一定である。すなわち、fo以下の周波数帯域で時間毎の入力信号のレベルに対するスピーカの振動変位xと実際のスピーカの振動変位xとが一致する。また、周波数がfo以下の範囲で位相は0°となる。すなわち、fo以下の周波数帯域で入力信号の位相と実際のスピーカの振動変位xの位相とが一致する。また、fo以下の周波数帯域では、スピーカの振動変位xは大きくなるので非線形歪が多く発生しやすい帯域である。
したがって、上記力係数関数Bl’(u)に基づいて、下式(5)を満たすように入力信号のレベルを補正する本実施形態では、非線形歪が多く発生しやすいfo以下の周波数帯域において、スピーカ13から発生する非線形歪を低減することができる。また、非線形歪を低減させる範囲を拡大する場合は、例えばスピーカ自体のfoを所望される帯域に合わせて変化させる方法がある。また、図8に示す振動変位の周波数特性(以下、振動変位特性という)と近似するフィルタを用いて、fo以上の入力信号を除去する方法でもよい。
センサ14は、スピーカ13の振動を検出し、その振動に応じた特性を示す信号を出力する。またセンサ14は、例えばレーザなどの光ピックアップ、マイクロフォン、圧電ピックアップなどを用いる。また図1では、センサ14は、スピーカ13の外側に配置されているが、スピーカ13の内部に構成されてもよい。このとき、センサ14から出力される信号は、入力信号に対して反転した極性となるので、そのまま加算器11に入力すればよい。
なお、上記フィードバック処理が行われる周波数帯域は、センサ14から出力される振動に応じた特性を示す信号の種類によって変化する。ここで、振動に応じた特性を示す信号の種類について説明する。振動に応じた特性を示す信号として、振動変位xに比例する信号、振動速度dx/dtに比例する信号および振動加速度d2x/dt2に比例する信号がある。なお、センサ14のうちレーザ変位計や変位ピックアップなどのセンサは、振動変位に比例する信号を出力し、変位センサ14aと呼ぶとする。マイクロフォンや圧電加速度センサなどのセンサは、振動加速度に比例する信号を出力し、加速度センサ14bと呼ぶとする。また、レーザ速度計などのセンサは、振動速度に比例する信号を出力し、速度センサ14cと呼ぶとする。
各センサが出力する信号の特性を図9に示す。図9において、振動変位はスピーカのfoをカットオフとして、fo以上の周波数範囲で−12dB/octで減衰する特性である。振動速度はスピーカのfoをカットオフとして、fo以下の周波数範囲で−6dB/octで減衰し、fo以上の周波数範囲で−6dB/octで減衰する特性である。振動加速度はスピーカのfoをカットオフとして、fo以下の周波数範囲で−12dB/octで減衰する特性である。
ここで、ハイパスフィルタなどの微分回路やローパスフィルタなどの積分回路を用いて、センサが出力する信号の特性を相互に変換させることができる。図9において、例えば加速度センサ14bから出力される振動加速度に比例する信号を2次のローパスフィルタなどを用いて時間tについての2階積分を行うことで、振動変位に比例する信号に変換することができる。また、振動変位に比例する信号を1次のハイパスフィルタなどを用いて時間tについての1階微分を行い、振動速度に比例する信号に変換することができる。
したがって、図10に示すように、センサ14と加算器11との間に変換フィルタ15を挿入することにより、センサ14の出力信号を所望する特性を示す信号に変換してフィードバック処理を行うことが可能となる。図10は、第1の実施形態に係るスピーカ装置1に変換フィルタ15を挿入した構成を示すブロック図である。変換フィルタ15は、ローパスフィルタなどの積分回路やハイパスフィルタなどの微分回路などで構成され、所望する特性を示す信号に変換する。そして、その所望する特性を示す信号が加算器11に帰還入力されることにより、フィードバック処理を行う周波数帯域およびフィードバックゲインを自由に調整することができる。なお、変換フィルタ15において、バンドパスフィルタなどをさらに加えてもよい。その結果、フィードバック処理を行う周波数帯域を狭く調整することもできる。
以上、本実施例で説明したスピーカ装置1は、力係数補正手段10aにおいて、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号を補正する。その結果、1つ目の要因である、スピーカ13の振動変位が大きくなるにつれて力係数Blが減少し、スピーカの振動変位と入力信号のレベルとが比例しなくなることにより生じる非線形歪を低減させることができる。
また、本実施例で説明したスピーカ装置1では、力係数補正手段10aで補正された入力信号を増幅器12で増幅してスピーカ13に入力する。スピーカ13は力係数Blによる非線形性要因が除去された形で振動し、音波に変換する。そして、その振動をセンサ14で検出し、加算器11にその検出信号を負帰還させるフィードバック処理を行う。その結果、非線形歪が発生する要因の2および3つ目である、支持系のスティフネスKによる非線形歪と、ボイスコイルの電気インピーダンスによる非線形歪を除去することができる。また、力係数Blによる非線形歪が除去された信号に基づいてフィードバック処理を行うので、十分にフィードバックゲインが得られなくても、スピーカから発生する非線形歪を大幅に低減させることができる。なお、フィードバック処理により上記非線形歪に限らず、スピーカ13から生じる様々な歪を低減することができることはいうまでもない。
また、例えばスピーカの厚みが薄い(全高が低い)薄型スピーカにおいては、マグネットの厚みと支持系の振動変位が十分に確保されない。そのため、薄型スピーカにおいては力係数と支持系の線形性が著しく悪化する場合が多い。このような場合であっても本実施形態によれば、歪を低減させて高音質化を図ることができる。
また、力係数補正手段10aは、あたかも力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正するとしたが、力係数Blが図11の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正してもよい。図11は、振動変位xが大きいときに力係数Blを若干下げるようにした目標値を示す図である。図6の点線で示すように力係数Blを完全に一定となるようにした場合、振動変位xが大きいとき、さらにスピーカ13に大入力を加わることとなる。そして、大入力によってスピーカ13が破損する可能性がある。したがって、力係数補正手段10aは図11の点線に示される値を力係数Blの目標値とすることによって、スピーカ13への入力を制限することができる。その結果、大入力によるスピーカ13の破損を防止できる。
また、力係数補正手段10aにおいて力係数Blの目標値を図11の点線で示す値にするのではなく、リミッタ17を設けて大入力によるスピーカ13の破損を防止してもよい。図12は、スピーカ装置1にリミッタ17を設けた構成の一例を示すブロック図である。図12において、リミッタ17は入力信号の大きさをスピーカ13が破損するレベル以下に制限する。したがって、大きな入力信号が入力されても、スピーカ13にはリミッタ17で設定したレベル以上は入力されないのでスピーカ13の破損を防止できる。なお、リミッタ17の位置は、図12に示される位置に限定されず、例えば力係数補正手段10aの出力側にあってもよいし、増幅器12の中に組み込まれてもよい。すなわち、スピーカ13の入力を制限できる位置であればどこでもよい。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るスピーカ装置2について、図13を用いて説明する。図13は、本発明の第2の実施形態に係るスピーカ装置2の構成を示すブロック図である。図13において、スピーカ装置2は、力係数補正手段10b、加算器11、増幅器12、スピーカ13および変位センサ14aを備える。なお、加算器11、増幅器12およびスピーカ13は、第1の実施形態で説明した各構成と同一の機能を有し、同一の符号を付す。
図13において、電気信号は入力信号として力係数補正手段10bに入力される。力係数補正手段10bは、変位センサ14aで検出される振動変位に比例する信号を参照しながら、力係数Blに起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10bで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11において出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。変位センサ14aは、スピーカ13の振動を検出し、振動変位に比例した信号を出力する。そして、変位センサ14aの出力に基づく帰還信号は分岐され、一方の帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10bで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、変位センサ14aの出力信号によって負帰還となるフィードバック処理が行われる。また、帰還信号の他方は、力係数補正手段10bに入力される。
変位センサ14aは、例えばレーザ変位計などの変位ピックアップなどで構成され、スピーカ13の振動を検出し、振動変位に比例した信号を出力する。すなわち、変位センサ14aは、実際のスピーカ13の振動変位xに比例した信号を出力する。なお、図14に示すように変位センサ14aの代わりにセンサ14を用いてもよい。このとき、センサ14の出力信号は、変位変換フィルタ16によって振動変位に比例した信号に変換される。変位変換フィルタ16は、ローパスフィルタなどの積分回路で構成され、センサの種類によって異なる特性をもつ各出力信号を振動変位に比例する信号に変換する。なお、変位変換フィルタ16には、振動変位に比例する信号の特性を適宜調整または加工できるようにハイパスフィルタやバンドパスフィルタなどがさらに構成されてもよい。
また、第1の実施形態と同様に、図15に示すように変位センサ14aと加算器11との間に変換フィルタ15が挿入されてもよい。その結果、第1の実施形態と同等の効果が得られる。なお、図14において、図示しないがセンサ14と加算器11との間に変換フィルタ15が挿入されてもよいことはいうまでもない。また、図13〜図15のブロック図では、変位センサ14aおよびセンサ14をスピーカの外側に描いているが、スピーカの内部に構成してもかまわない。
力係数補正手段10bには、第1の実施形態と同様、予め力係数Blの振動変位xについての力係数関数Bl(x)を算出しておく。したがって、力係数補正手段10bは、変位センサ14aから出力される実際のスピーカ13の振動変位xに比例する信号を参照しながら、下式(6)を満たすように入力信号レベルを補正する。なお、式(6)において、式(5)と同様に補正後の入力信号をum(t)、力係数Blの目標値をAとする。
um(t)=A/Bl(x)*u(t) (6)
以上のように、力係数補正手段10bは、実際のスピーカ13の振動変位xに比例する信号を参照しながら、その振動変位xによって変化する力係数関数Bl(x)の逆特性を示す関数を用いて、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号のレベルを補正する。これにより、力係数に起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。すなわち、振動変位xと入力信号u(t)が比例し、力係数に起因する非線形歪をなくすことができる。
なお、第1の実施形態と同様に、式(6)で示される力係数関数Bl(x)の代わりに、力係数Blの離散化データ(図7参照。)を用いてもよい。また、例えば式(6)を満たすように振動変位xと補正後の入力信号um(t)のレベルとを対応させた変換テーブルを作成し、力係数補正手段10bに予め設定しておく。そして、力係数補正手段10bは、当該変換テーブルに基づいて入力信号のレベルを補正する方法であってもよい。
以上、本実施例で説明したスピーカ装置2は、力係数補正手段10bにおいて、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号を補正する。その結果、1つ目の要因である、スピーカ13の振動変位が大きくなるにつれて力係数Blが減少し、スピーカの振動変位と入力信号のレベルとが比例しなくなることにより生じる非線形歪を低減させることができる。また、力係数補正手段10bは実際のスピーカ13の振動変位xに比例する信号を参照しながら入力信号のレベルを補正するので、より正確な補正が可能となる。その結果、さらなる非線形歪の低減効果を得ることができる。
また、本実施例で説明したスピーカ装置2では、力係数補正手段10bで補正された入力信号を増幅器12で増幅してスピーカ13に入力する。スピーカ13は力係数Blによる非線形性要因が除去された形で振動し、音波に変換する。そして、その振動をセンサ14で検出し、加算器11にその検出信号を負帰還させるフィードバック処理を行う。その結果、非線形歪が発生する要因の2および3つ目である、支持系のスティフネスKによる非線形歪と、ボイスコイルの電気インピーダンスによる非線形歪を除去することができる。また、力係数Blによる非線形歪が除去された信号に基づいてフィードバック処理を行うので、十分にフィードバックゲインが得られなくても、スピーカから発生する非線形歪を大幅に低減させることができる。なお、フィードバック処理により上記非線形歪に限らず、スピーカ13から生じる様々な歪を低減することができることはいうまでもない。
なお、大入力によるスピーカ13の破損を防止するために、第1の実施形態と同様に力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正するとしたが、力係数Blが図11の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正してもよい。または、図12に示すようにリミッタ17を挿入してもよい。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るスピーカ装置3について、図16を用いて説明する。図16は、本発明の第3の実施形態に係るスピーカ装置3の構成を示すブロック図である。図16において、スピーカ装置3は、力係数補正手段10b、フィルタ100、加算器11、増幅器12、スピーカ13およびセンサ14を備える。なお、力係数補正手段10bは第2の実施形態で説明した機能と同一であり、同一の符号を付す。また、加算器11、増幅器12、スピーカ13およびセンサ14は、第1の実施形態で説明した各構成と同一の機能を有し、同一の符号を付す。
図16において、電気信号は入力信号として力係数補正手段10bおよびフィルタ100に入力される。フィルタ100は、入力信号に基づいて擬似的なスピーカの振動変位に比例する信号を生成する。力係数補正手段10bは、フィルタ100で擬似的に作られたスピーカの振動変位に比例する信号を参照しながら、力係数Blに起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10bで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11において出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。センサ14は、スピーカ13の振動を検出し、その振動に応じた信号を出力する。センサ14の出力に基づく帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10bで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、センサ14の出力信号によって負帰還となるフィードバック処理が行われる。
フィルタ100は、入力信号に基づいて擬似的なスピーカの振動変位に比例する信号を生成する。ここで、スピーカが線形で振動する振動変位の範囲(以下、線形範囲という)の入力電圧E(t)と振動変位x(t)の関係は、下式(7)で示される。なお、線形範囲の力係数をBlo、線形範囲の支持系スティフネスをKo、線形範囲のボイスコイルの電気インピーダンスをZeoとする。
Blo*E(t)/Ze=Ko*x(t)+(r+Blo2/Zeo)*dx(t)/dt+m*d2x(t)/dt2 (7)
ここで、上式(7)より、入力を入力信号の電圧E(t)、出力を振動変位x(t)と考えると、線形範囲の伝達関数H(s)はラプラス変換を行い下式(8)となる。なお、s=δ+jωとする。
H(s)=Blo/(Zeo(m*s2+r*s+Ko)+Blo2*s) (8)
以上のように、フィルタ100は、上式(8)となる伝達関数H(s)に基づいて線形範囲の擬似的な振動変位に比例した信号を算出し、力係数補正手段10bに出力する。また、伝達関数H(s)は、使用するスピーカ13がもつ振動変位の周波数特性となるように、式(8)に示される各パラメータが適宜調整される。
力係数補正手段10bは、第2の実施形態では変位センサ14aの出力信号を参照したが、本実施形態では、フィルタ100から出力される線形範囲の擬似的な振動変位に比例する信号を参照する。そして、力係数補正手段10bは、その線形範囲の振動変位に比例する信号によって変化する力係数関数Bl(x)の逆特性を示す関数を用いて、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号のレベルを補正する。すなわち、力係数補正手段10bは、計算された線形範囲の振動変位xを参照しながら、力係数に起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。
なお、第2の実施形態と同様に、式(6)で示される力係数関数Bl(x)の代わりに、力係数Blの離散化データ(図7参照。)を用いてもよい。
以上、本実施例で説明したスピーカ装置3は、力係数補正手段10bにおいて、あたかも力係数Blが目標値Aとなるように入力信号のレベルを補正する。その結果、1つ目の要因である、スピーカ13の振動変位が大きくなるにつれて力係数Blが減少し、スピーカの振動変位と入力信号のレベルとが比例しなくなることにより生じる非線形歪を低減させることができる。また、力係数補正手段10bはフィルタ100により、擬似的に作られる線形範囲の振動変位に比例する信号を参照する。したがって、線形範囲でのスピーカの動作状態に近似する補正が可能であり、著しく歪除去効果が増す。また、センサ14の出力を力係数補正手段10bに入力する必要がないので、装置全体を簡素化できる。
また、本実施例で説明したスピーカ装置3では、力係数補正手段10bで補正された入力信号を増幅器12で増幅してスピーカ13に入力する。スピーカ13は力係数Blによる非線形性要因が除去された形で振動し、音波に変換する。そして、その振動をセンサ14で検出し、加算器11にその検出信号を負帰還させるフィードバック処理を行う。その結果、非線形歪が発生する要因の2および3つ目である、支持系のスティフネスKによる非線形歪と、ボイスコイルの電気インピーダンスによる非線形歪を除去することができる。また、力係数Blによる非線形歪が除去された信号に基づいてフィードバック処理を行うので、十分にフィードバックゲインが得られなくても、スピーカから発生する非線形歪を大幅に低減させることができる。なお、フィードバック処理により上記非線形歪に限らず、スピーカ13から生じる様々な歪を低減することができることはいうまでもない。
なお、以上で説明したセンサ14は、第1の実施形態と同様に例えばレーザなどの光ピックアップ、マイクロフォン、圧電ピックアップなどを用いてもよい。また、第1の実施形態と同様に、図17に示すようにセンサ14と加算器11との間に変換フィルタ15が挿入されてもよい。その結果、第1の実施形態と同等の効果が得られる。また図16、図17では、センサ14は、スピーカの外側に配置されているが、スピーカの内部に構成されてもよい。このとき、センサ14で検出される検出信号は、入力信号に対して反転した極性となるので、そのまま加算器11に入力すればよい。
また、大入力によるスピーカ13の破損を防止するために、第1の実施形態と同様に力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正するとしたが、振動変位xが大きいときには、力係数Blが図11の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正してもよい。または、図12に示すようにリミッタ17を挿入してもよい。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るスピーカ装置4について、図18を用いて説明する。図18は、本発明の第4の実施形態に係るスピーカ装置4の構成を示すブロック図である。図18において、スピーカ装置4は、イコライザ18、力係数補正手段10a、加算器11、増幅器12、スピーカ13および加速度センサ14bを備える。なお、力係数補正手段10a、加算器11、増幅器12およびスピーカ13は、第1の実施形態で説明した各構成と同一の機能を有し、同一の符号を付し、説明を省略する。
図18において、電気信号は入力信号としてイコライザ18に入力される。イコライザ18は、入力信号の低域の特性を変化させる。力係数補正手段10aは、力係数Blに起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10aで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11において出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。加速度センサ14bは、スピーカ13の振動を検出し、振動加速度に比例した信号を出力する。加速度センサ14bの出力に基づく帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10aで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、加速度センサ14bの出力信号によって負帰還となるフィードバック処理が行われる。また、帰還信号は振動加速度に比例した信号であり、振動加速度によるフィードバック処理(以下、加速度フィードバック処理という)が行われる。
加速度センサ14bは、例えばマイクロフォンなどで構成され、スピーカ13の振動を検出し、振動加速度に比例した信号を出力する。なお、図19に示すように加速度センサ14bの代わりにセンサ14を用いてもよい。このとき、センサ14の出力信号は、加速度変換フィルタ15aによって振動加速度に比例した信号に変換される。加速度変換フィルタ15aは、ハイパスフィルタなどの微分回路で構成され、センサの種類によって異なる特性をもつ各出力信号を振動加速度に比例する信号に変換する。また、加速度変換フィルタ15aにおいて、ローパスフィルタやバンドパスフィルタなどをさらに加えて振動加速度に比例する信号の特性を適宜調整または加工できるようにしてもよい。
ここで、加速度フィードバック処理を行う場合について説明する。加速度フィードバック処理を行う場合、スピーカ13の音圧周波数特性はあたかもfoが低下し、foでの共振鋭度Qoが増加したようになる。ここで、図20は、加速度フィードバック処理を行った場合の一般的なスピーカの音圧周波数特性の変化を示す特性図である。図20において、音圧周波数特性が実線から点線で示される特性に変化する。すなわち、低域周波数範囲の音圧は盛り上がる問題はあるが、中高域周波数範囲の音圧は低下する。振動加速度に比例する信号によるフィードバック処理が行われることで、その振動加速度に比例する信号の特性(図9参照。)に対応した中高域周波数範囲において十分なフィードバックゲインが得られる。したがって、上記加速度フィードバック処理を行う場合には、低域周波数範囲のみならず中高域周波数範囲においても低歪化を実現させることができる。
イコライザ18は、低域周波数範囲の音圧の盛り上がりを抑えるように入力信号の低域の特性を変化させる。したがって、上記加速度フィードバック処理を行うに際し問題であった低域周波数範囲の音圧の盛り上がりを抑えることができる。以上のように、スピーカ13から放射される音圧周波数特性を、低域から高域まで広範囲の周波数で平坦な特性にすることができる。なお、イコライザ18の位置は、図18、図19において示される位置に限定されない。例えば、力係数補正手段10aの出力側に設けられてもよい。
以上、本実施形態で説明したスピーカ装置4は、加速度フィードバック処理を行うことで、中高域周波数範囲においてさらに低歪化を実現させることができる。すなわち、広い周波数範囲において、低歪化を図ることが可能となる。またスピーカ装置4は、イコライザ18を用いることによって低域周波数の音圧の盛り上がりを抑え、低域から高域まで広い範囲の周波数でスピーカ13から放射される音圧周波数特性を平坦な特性にすることができる。
図18において、力係数に基づく入力信号の補正方法としては、第1の実施形態と同様に力係数補正手段10aを用いる方法としているが、第2の実施形態で説明した力係数補正手段10bを用いる方法でもよい。力係数補正手段10bを用いる場合には、加速度センサ14bまたはセンサ14それぞれの出力信号は、図14に示すように変位変換フィルタ16を介して振動変位に比例した信号に変換され、力係数補正手段10bに入力される。その結果、第2の実施形態と同等の効果が得られる。また、力係数補正手段10bは、第3の実施形態と同様にフィルタ100による擬似的な線形範囲の振動変位を参照してもよい。その結果、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
また、大入力によるスピーカ13の破損を防止するために、第1の実施形態と同様に力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正するとしたが、力係数Blが図11の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正してもよい。または、図12に示すようにリミッタ17を挿入してもよい。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係るスピーカ装置5について、図21を用いて説明する。図21は、本発明の第5の実施形態に係るスピーカ装置5の構成を示すブロック図である。図21において、スピーカ装置5は、力係数補正手段10a、加算器11、増幅器12、スピーカ13、加速度センサ14bおよび速度センサ14cを備える。なお、力係数補正手段10a、加算器11、増幅器12およびスピーカ13は、第1の実施形態で説明した各構成と同一の機能を有し、同一の符号を付して説明を省略する。
図21において、電気信号は入力信号として力係数補正手段10aに入力される。力係数補正手段10aは、力係数Blに起因する非線形歪を打ち消すように入力信号のレベルを補正する。力係数補正手段10aで補正された入力信号は、加算器11に入力される。増幅器12は加算器11において出力された信号を増幅する。スピーカ13はその増幅された信号に応じて振動することでその増幅された信号を音波に変換する。加速度センサ14bは、スピーカ13の振動を検出し、振動加速度に比例した信号を出力する。加速度センサ14bの出力に基づく帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10aで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、加速度フィードバック処理が行われる。速度センサ14cは、スピーカ13の振動を検出し、振動速度に比例した信号を出力する。速度センサ14cの出力に基づく帰還信号は、センサ用の増幅器などを用いて適宜増幅されてから、力係数補正手段10aで補正された入力信号に対して極性が反転するように、加算器11に入力される。すなわち、振動速度によるフィードバック処理(以下、速度フィードバック処理という)が行われる。
加速度センサ14bは、例えばマイクロフォンなどで構成され、スピーカ13の振動を検出し、振動加速度に比例した信号を出力する。また、第4の実施形態と同様、図22に示すように加速度センサ14bの代わりにセンサ14を用いてもよい。センサ14の出力信号は、加速度変換フィルタ15aによって振動加速度に比例した信号に変換される。
速度センサ14cは、例えばレーザ速度計などで構成され、スピーカ13の振動を検出し、振動速度に比例した信号を出力する。なお、図22に示すように速度センサ14cの代わりにセンサ14を用いてもよい。このとき、センサ14の出力信号は、速度変換フィルタ15bによって振動速度に比例した信号に変換される。速度変換フィルタ15bは、ハイパスフィルタなどの微分回路やローパスフィルタなどの積分回路で構成され、センサの種類によって異なる特性をもつ各出力信号を振動速度に比例する信号に変換する。また、速度変換フィルタ15bにおいて、バンドパスフィルタなどをさらに加えて速度特性を適宜調整または加工できるようにしてもよい。
本実施形態では、第4の実施形態で説明したイコライザ18ではなく、速度センサ14cで検出された振動速度による速度フィードバック処理を行うことで、低域周波数の音圧の盛り上がりを抑える。図23は、速度フィードバック処理を行ったときの一般的なスピーカの音圧周波数特性の変化を示す特性図である。図23において、速度フィードバック処理を行うことで音圧周波数特性は、実線から点線で示される特性に変化する。
以上、本実施形態で説明したスピーカ装置5は、加速度フィードバック処理を行うことで、中高域周波数範囲においてさらに低歪化を実現させることができる。すなわち、広い周波数範囲において、低歪化を図ることが可能となる。またスピーカ装置5は、速度フィードバック処理を行うことで低域周波数の音圧の盛り上がりを抑え、低域から高域まで広い範囲の周波数でスピーカ13から放射される音圧周波数特性を平坦な特性にすることができる。
なお、図21において、力係数に基づく入力信号の補正方法として、第1の実施形態と同様の力係数補正手段10aを用いる方法としているが、第2の実施形態と同様の力係数補正手段10bを用いる方法でもよい。力係数補正手段10bを用いる場合、加速度センサ14b、速度センサ14cまたはセンサ14それぞれの出力信号は、図14に示すように変位変換フィルタ16を介して振動変位に比例した信号に変換され、力係数補正手段10bに入力される。その結果、第2の実施形態と同等の効果が得られる。また、力係数補正手段10bは、第3の実施形態と同様にフィルタ100による擬似的な線形範囲の振動変位を参照してもよい。その結果、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
また、加速度センサ14bおよび速度センサ14cは、図24に示すようにセンサ14として1つで構成されてもよい。図24において、センサ14は、その出力を分岐し、それぞれの出力に加速度変換フィルタ15a、速度変換フィルタ15bがそれぞれ接続される。そして、各出力は振動速度に比例した信号、振動加速度に比例した信号にそれぞれ変換される。したがって、1つのセンサ14を用いても図21に示すスピーカ装置5と同様の効果が得られる。
また、大入力によるスピーカ13の破損を防止するために、第1の実施形態と同様に力係数Blが図6の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正するとしたが、力係数Blが図11の点線で示す値となるように入力信号のレベルを補正してもよい。または、図12に示すようにリミッタ17を挿入してもよい。
なお、第1〜第5の実施形態において、スピーカ13を駆動する増幅器12は一般的には電圧増幅器を用いるが、電流増幅器を用いてもよい。増幅器12が電圧増幅器を用いた定電圧駆動の場合、スピーカ13の機械系等価回路は図25のようになる。図25において、スピーカの機械系等価回路は振動系重量30、支持系スティフネスの逆数であるコンプライアンス31、機械抵抗32、電磁制動抵抗33および定電圧駆動力源34aで表現される。ここで、電磁制動抵抗Rmeは以下の式(9)となる。なお、力係数をBl、ボイスコイル電気インピーダンスをZeとする。
Rme=Bl2/Ze (9)
また、上述した非線形歪が発生する3つの主な要因を考慮すると、入力信号の電圧E(t)と振動変位x(t)の関係は上述の式(3)となる。
増幅器12が電流増幅器を用いた定電流駆動の場合、スピーカ13の機械系等価回路は図26のようになる。図26において、スピーカ13の機械系等価回路は電磁制動抵抗33が省かれ、振動系重量30、支持系スティフネスの逆数であるコンプライアンス31、機械抵抗32および定電流駆動力源34bで表現される。したがって、増幅器12が定電流駆動の場合には、入力信号の電圧E(t)と振動変位x(t)の関係は、式(3)から電磁制動抵抗Zmeを取り除いた下式(10)となる。
Bl(x)*I(t)=K(x)*x(t)+r*dx(t)/dt+m*d2x(t)/dt2 (10)
式(3)と式(10)を比較すると明らかなように、増幅器12として電流増幅器を用いた式(10)では非線形項Ze(x)が省かれる。すなわち、非線形歪の3つ目の要因であるボイスコイルの電気インピーダンスによる歪が予め除去されるので、さらなる非線形歪の低減効果を得ることができる。
また、第1〜第5の実施形態で説明したスピーカ装置1〜スピーカ装置5において、力係数補正手段10a、10b、加算器11、フィルタ100、変換フィルタ15、加速度変換フィルタ15a、速度変換フィルタ15b、変位変換フィルタ16、リミッタ17およびイコライザ18は、集積回路で構成されてもよい。このとき集積回路は、増幅器12に出力する出力端子と、電気信号を入力する入力端子と、センサ14の出力信号を入力する入力端子とを備える。
本発明に係るスピーカ装置は、力係数に起因する歪をフィードフォワード処理で、それ以外の歪をフィードバック処理でそれぞれ低減することにより、時間の経過に関係なく、また十分なフィードバックゲインが得られなくても、歪の少ない音波への変換を可能とするスピーカ装置、薄型スピーカ等の用途にも適用できる。
本発明の第1の実施形態に係るスピーカ装置1の構成を示すブロック図 一般的なスピーカ13の断面図 磁気ギャップ24付近の振動変位xに対する力係数Blの特性の一例を示す図 振動変位xに対する支持系のスティフネスKの特性の一例を示す図 入力信号のレベルに対するスティフネスKの特性の変化を示す図 本発明における力係数Blの目標値の一例を示す図 離散化した力係数Blの特性を示す図 一般的なスピーカの振動変位とその位相の関係を示す図 各センサが出力する信号の特性を示す図 第1の実施形態に係るスピーカ装置1に変換フィルタ15を挿入した構成を示すブロック図 振動変位xが大きいときに力係数Blを若干下げるようにした目標値を示す図 スピーカ装置1にリミッタ17を設けた構成の一例を示すブロック図 本発明の第2の実施形態に係るスピーカ装置2の構成を示すブロック図 変位変換フィルタ16を設けたスピーカ装置2の構成を示すブロック図 変換フィルタ15を設けたスピーカ装置2の構成を示すブロック図 本発明の第3の実施形態に係るスピーカ装置3の構成を示すブロック図 変換フィルタ15を設けたスピーカ装置3の構成を示すブロック図 本発明の第4の実施形態に係るスピーカ装置4の構成を示すブロック図 加速度変換フィルタ15aを設けたスピーカ装置4の構成を示すブロック図 加速度フィードバック処理を行った場合の一般的なスピーカの音圧周波数特性の変化を示す特性図 本発明の第5の実施形態に係るスピーカ装置5の構成を示すブロック図 加速度変換フィルタ15aおよび速度変換フィルタ15bを設けたスピーカ装置5の構成を示すブロック図 速度フィードバック処理を行ったときの一般的なスピーカの音圧周波数特性の変化を示す特性図 センサ14を1つとした場合における加速度変換フィルタ15aおよび速度変換フィルタ15bを設けたスピーカ装置5の構成を示すブロック図 定電圧駆動の場合におけるスピーカ13の機械系等価回路 定電流駆動の場合におけるスピーカ13の機械系等価回路 フィードフォワード処理を用いた従来のスピーカ装置200を示すブロック図 スピーカの入力対振動変位特性を示す図 フィードバック処理を用いた従来のスピーカ装置210を示すブロック図
符号の説明
10a 力係数補正手段
10b 力係数補正手段
11 加算器
12 増幅器
13 スピーカ
14 センサ
14a 変位センサ
14b 加速度センサ
14c 速度センサ
15 変換フィルタ
15a 加速度変換フィルタ
15b 速度変換フィルタ
16 変位変換フィルタ
20 ボイスコイル
21 振動板
22 マグネット
23 磁気回路
24 磁気ギャップ
25 ダンパー
26 エッジ
30 振動系重量
31 コンプライアンス
32 機械抵抗
33 電磁制動抵抗
34a 定電圧駆動力源
34b 定電流駆動力源
100 フィルタ

Claims (15)

  1. 力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する力係数補正手段と、
    前記力係数補正手段において補正された電気信号を入力する加算器と、
    前記加算器において出力された電気信号を増幅する増幅器と、
    前記増幅器において増幅された電気信号に基づいて振動することにより、当該増幅された電気信号を音波に変換するスピーカと、
    前記スピーカの振動を検出し、当該振動に応じた特性を示す信号を出力する、少なくとも1つのセンサとを備え、
    前記センサの出力に基づく帰還信号を前記加算器に入力する、スピーカ装置。
  2. 前記センサの出力を入力とし、前記センサの出力信号の特性を所定の特性に変換して、前記加算器に入力する変換手段をさらに備える、請求項1に記載のスピーカ装置。
  3. 前記センサは、前記振動に応じた特性を示す信号を前記力係数補正手段にさらに入力し、
    前記力係数補正手段は、前記センサの出力信号を参照しながら、力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する、請求項1に記載のスピーカ装置。
  4. 前記センサの出力信号は、前記スピーカの振動変位を示す信号であることを特徴とする、請求項3に記載のスピーカ装置。
  5. 前記センサの出力を入力とし、前記センサの出力信号を前記スピーカの振動変位を示す信号に変換して、前記力係数補正手段に入力する変位変換フィルタをさらに備える、請求項3に記載のスピーカ装置。
  6. 前記スピーカ装置は、前記入力される電気信号に基づいて、前記スピーカが線形で振動すると仮定したときの振動変位を示す信号を算出するフィルタをさらに備え、
    前記力係数補正手段は、前記フィルタで算出された信号を参照しながら、力係数に起因する歪を打ち消すように、入力される電気信号のレベルを補正する、請求項1に記載のスピーカ装置。
  7. 前記スピーカ装置は、電気信号のレベルを変化させるイコライザをさらに備え、
    前記帰還信号は、前記スピーカの振動加速度を示す信号であることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
  8. 前記帰還信号は、前記スピーカの振動加速度を示す第1の帰還信号と、前記スピーカの振動速度を示す第2の帰還信号とを含む、請求項1に記載のスピーカ装置。
  9. 前記力係数補正手段は、前記スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する前記力係数の値を示す特性の逆特性に基づいて、入力される電気信号のレベルを補正する、請求項1に記載のスピーカ装置。
  10. 前記力係数補正手段は、前記スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する前記力係数の値を示す特性を近似化して求められる関数で表し、当該関数に基づく演算処理によって、入力される電気信号のレベルを補正する、請求項9に記載のスピーカ装置。
  11. 前記力係数補正手段は、前記スピーカの振動変位の大きさに応じて変化する前記力係数の値を示す特性を所定間隔に区切られた各変位に対応する力係数の各値を示す情報で表し、当該情報に基づく演算処理によって、入力される電気信号のレベルを補正する、請求項9に記載のスピーカ装置。
  12. 前記力係数補正手段は、入力される電気信号のレベルまたは前記振動変位と、前記力係数に起因する歪を打ち消すように補正された電気信号のレベルとが対応付けされる予め作成されたテーブルを用いて、入力される電気信号を補正する、請求項11に記載のスピーカ装置。
  13. 前記スピーカに所定のレベル以上の電気信号が入力されないように電気信号のレベルを制限する制限手段をさらに備える、請求項1から12のいずれかに記載のスピーカ装置。
  14. 前記増幅器は、定電流増幅器であることを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載のスピーカ装置。
  15. 電気信号を入力するための第1の入力端子と、
    スピーカの振動を検出するセンサの出力に基づく帰還信号を入力するための第2の入力端子と、
    力係数に起因する歪を打ち消すように、前記第1の入力端子を通じて入力される電気信号のレベルを補正する力係数補正手段と、
    前記力係数補正手段において補正された電気信号を入力する加算器と、
    前記加算器において出力された電気信号を増幅器に出力するための出力端子とを備え、
    前記帰還信号を前記第2の入力端子を通じて前記加算器に入力する、集積回路。
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