JP2009100343A - 信号再生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡易な構成により固体伝導音の明瞭度を高めることができる信号再生装置を提供する。
【解決手段】 固体伝導音を検出して検出信号を出力する検出手段10と、検出信号を順次サンプリングして得られたサンプリング値の差分に基づいて差分信号を出力する差分処理手段22と、差分信号の雑音スペクトルを推定して得られた雑音信号を差分信号から減算する減算処理手段23とを備える信号再生装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、信号再生装置に関し、より詳しくは、骨導音などの固体伝導音の検出信号を再生する信号再生装置に関する。
音声を収音する装置として、空気中の振動を検出する気導マイクロフォンが広く知られているが、雑音環境下においては音声に雑音が重畳されて聞き取りにくくなるため、発声により生じる骨の振動を人体の表面で検出する骨導マイクロフォンも知られている。
骨導マイクロフォンは、環境音の影響を受けにくい一方で、入力信号の高周波数帯域が減衰し易い傾向にある。したがって、高周波数帯域のレベル補正が必要となるが、高域レベルを増幅すると環境雑音もあわせて増幅されるため、明瞭な音声を得にくいという問題がある。
一例として、話者から「旭(あさひ)」という単語が発せられた場合、気導音による音声速度信号、および、骨伝導による骨伝導加速度信号を測定したところ、それぞれ図9および図10に示す結果となった。なお、図9および図10において、上図は波形、下図はスペクトログラムを表している。
両者の波形を比較すると、図9の音声速度信号においては、フォルマント周波数や韻律情報を確認できるのに対し、図10に示す骨伝導加速度信号においては、2kHz以上の周波数特性が損失していると共に、フォルマント周波数や韻律情報も悪化している。このため、図10に示す骨伝導加速度信号を直接積分して骨伝導速度信号を求めようとしたところ、図11に示すように、積分処理による低域強調の効果により雑音がより大きくなってしまい、音声信号を抽出することが困難であった。
そこで、特許文献1には、骨導音が入力される骨導マイクと、雑音が入力される雑音マイクとを備え、各マイクに入力された信号のスペクトルに基づいて雑音成分を除去するマイクシステムが開示されている。しかし、このマイクシステムは、骨導音の明瞭度を高めるために、骨導マイク以外に雑音マイクが必須となるため、構成が煩雑なものとなっていた。
特開平9−284877号公報
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、簡易な構成により固体伝導音の明瞭度を高めることができる信号再生装置の提供を目的とする。
本発明の前記目的は、固体伝導音を検出して検出信号を出力する検出手段と、 検出信号を順次サンプリングして得られたサンプリング値の差分に基づいて差分信号を出力する差分処理手段と、差分信号の雑音スペクトルを推定して得られた雑音信号を差分信号から減算する減算処理手段とを備える信号再生装置により達成される。
この信号再生装置は、前記減算処理手段による減算処理後の差分信号を積分する積分処理手段を更に備えることが好ましい。更に、前記検出手段は、人体表面に当接するように装着されて、骨導音の加速度信号を出力するように構成可能であり、前記積分処理手段は、差分信号を積分して変位信号に変換するように構成可能である。
また、前記積分処理手段により積分処理が施された変位信号のフィルタ処理を行うフィルタ処理部を更に備えることが好ましい。
本発明の信号再生装置によれば、簡易な構成により固体伝導音の明瞭度を高めることができる。
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号再生装置のブロック図である。図1に示すように、信号再生装置1は、固体伝導音を検出して検出信号を出力する検出装置10と、検出信号から雑音信号を除去する処理を行う信号処理装置20とを備える。本実施形態の信号再生装置1は、発話者の骨導音から騒音を除去して明瞭な音声情報を得るための装置であり、検出装置10としては、乳様突起などの人体表面に当接するように装着される加速度ピックアップを使用している。
信号処理装置20は、A/D変換部21と、差分処理部22と、減算処理部23と、積分処理部24と、D/A変換部25と、出力部26とを備えている。
A/D変換部21は、検出装置10の検出信号をデジタル信号に変換し、所定の時間間隔でサンプリングして出力する。差分処理部22は、時系列で隣接する各サンプリング値の差分をとり差分信号を生成する。減算処理部23は、差分信号に含まれる雑音信号を除去する。積分処理部24は、雑音信号が除去された差分信号を3回積分して変位信号を出力する。この速度信号は、D/A変換部25においてアナログ信号に変換された後、スピーカなどの出力部26から出力される。
次に、上記の構成を備える信号再生装置1の作動を説明する。例えば、話者から音声が発せられると、これに伴う振動が骨伝導加速度信号として検出装置10により検出され、A/D変換部21を経て差分処理部22に入力される。
差分処理部22においては、骨伝導加速度信号におけるサンプリング値同士の差分を求め、骨伝導差分信号を生成する。一例として、図10に示す骨伝導加速度信号について、差分処理部22により差分処理を行って得られた骨伝導差分信号を図2に示す。
図2に示す骨伝導差分信号は、図10に示す骨伝導加速度信号と比較して、2kHz以上の高周波数域で周波数特性が回復しており、骨伝導加速度信号では表現できていなかった原信号の直流成分および位相成分を高精度に表現することができる。一方、骨伝導差分信号の全体にわたって雑音信号が含まれている。すなわち、加速度信号から加速度差分信号に領域変換することにより、無音部が雑音部となり、発話部は雑音部+発話部となる。そこで、減算処理部23は、骨伝導差分信号に含まれる雑音信号を求め、骨伝導差分信号から雑音信号を減算して雑音を除去する。
減算処理部23における雑音除去の手法としては、公知のスペクトルサブトラクション法(以下「SS法」という)を好ましく用いることができる。SS法は、目的信号の無音区間を利用して定常な雑音のスペクトルを推定し、雑音を除去する方法であり、本実施形態においては、図10に示す骨伝導加速度信号から無音部を把握し、図2に示す骨伝導差分信号において、この無音部に対応する雑音部から、強調された雑音信号スペクトルを推定することができる。
SS法によって推定可能な信号S(ω)は、以下の数式1で表すことができる。数式1において、X(ω)は入力信号の振幅スペクトル、W(ω)は推定雑音振幅スペクトル、αはサブトラクション係数を、それぞれ表している。
α を変化させることによりミュージカルノイズを低減することができるが、今回は1として計算した。フレーム幅および反復回数については、種々検討したところ、反復回数7回、フレーム幅128の場合に、最も良い結果を得ることができた。こうして雑音が除去された骨伝導差分信号を図3に示す。
雑音除去の手法としては、上述したSS法に限定されるものではなく、例えば、ウィナー法など他の手法を適用することも可能である。ウィナー法は、ウィナーフィルタを用いて雑音に埋もれた信号を抽出する手法であり、音声処理に広く用いられている。ウィナー法のアルゴリズムは、図4に示す概念図を参照しながら説明すると、以下のとおりである。
1. 骨伝導加速度信号を読み込む
2. 読み込んだ信号列:Acc(1) … Acc(N) が格納される
3. Acc_diff(n) = Acc(n + 1) - Acc(n) を計算する
4. 加速度差分信号(雑音混入信号音声) の雑音部信号から雑音自己相関係数を求める
5. 雑音自己相関係数をFFT(高速フーリエ変換) しHNoise(ω) を求める
6. 加速度差分信号の音声信号部から線形予測係数を求め,FFT しHSpeech(ω) を求める
7. 雑音混入信号に対してFFT しHacc_diff (ω) を求める
8. ウィナーフィルタ法で求まったHPredict(ω) をIFFT(逆フーリエ変換) し,Acc_diff_pre(n) を得る
9. 必要に応じてAcc_diff_pre(n) から線形予測係数を計算し,ウィナー法を繰り返す
10. Acc_diff_pre(n) から2 回積分を行いVelo_pre(n) を推定
11. Velo_pre(n) から骨導-音声間の伝達関数を用いてVelo(n) を推定(オプション)
ウィナー法において、雑音除去反復回数および線形予測係数をパラメータとして、検討を行った。なお、自己相関係数は、線形予測係数と同じものを用いた。この結果、雑音除去反復回数については、3回で雑音信号が概ね除去された。また、線形予測係数については、1の場合で良好な結果が得られており、音声に近い状態で聞くことができた。線形予測係数および自己相関係数が1で、フレーム幅が748の場合における、ウィナー法による雑音除去後の差分信号を、図5に示す。
減算処理部23において雑音が除去された差分信号は、積分処理部24に入力される。積分処理部24においては、差分信号を3回積分して、加速度信号、速度信号および変位信号に順次変換する。こうして、音声情報を認識可能な骨伝導変位信号を得ることができる。図5に示す差分信号を積分して得られた加速度信号を図6に示す。また、この加速度信号を積分して得られた速度信号を図7に示す。
積分処理部24において得られた変位信号は、減算処理部23における雑音除去により周波数特性が改善されており、本実施形態においては、D/A変換部25においてアナログ信号に変換された後、出力部26から出力される。積分処理部24で生成された変位信号は、パーソナルコンピュータ、ナビゲーション装置、音声認識装置などの外部機器に直接入力されるように構成することも可能であり、音声インターフェースとして利用することができる。
以上説明したように、本実施形態の信号再生装置1における信号処理の流れは、図8に示すとおりである。すなわち、検出装置10において検出された骨伝導加速度信号は、差分処理部22における差分処理により、骨伝導加速度差分信号に変換される。これにより、高周波成分の強調と同等の効果を得ることができる。そして、減算処理部23において、差分処理によって生じた雑音信号を除去することにより、周波数特性が良好で且つ明瞭な処理後加速度差分信号を得ることができる。このように、目標となる音声信号が不要であるため、従来のように雑音検出用の検出装置を別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。処理後加速度差分信号は、積分処理部24において3回積分することにより、処理後加速度信号、処理後速度信号および処理後変位信号を得ることができ、音声情報としての利用を容易にすることができる。
本実施形態の信号再生装置1は、気導音を用いることなく信号を再生可能であることから、特に騒音が大きい環境において有効である。一例として、図12に示す気導マイクの波形データを有する98dBSPL:−20dBSNRの騒音環境下において、検出装置10を額および上唇のそれぞれに装着して骨伝導加速度信号を検出した結果を、図13(a)および(b)に示す。図12および図13を比較すると、骨伝導加速度信号を検出することにより、騒音下においても音声情報を取得できていることがわかる。そして、この加速度信号をウィナー法により雑音除去した結果を、図14(a)および(b)に示す。図13および図14を比較すると、骨伝導加速度差分信号は、雑音除去と共に高周波域が強調され、明瞭度の高い音声情報を取得できていることがわかる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図15に示すように、積分処理部24において得られた変位信号をフィルタ処理するフィルタ処理部30を設けることも可能である。なお、図15において、図1と同様の構成部分には同一の符号を付している。
フィルタ処理部30は、騒音のない静寂下であらかじめ気導音を録音しておき、この気導音の変位信号と、信号再生装置1により推定した変位信号との伝達関数を予め推定してメモリに格納しておくことにより、積分処理部24において得られた変位信号を伝達関数で処理する。伝達関数の推定には、高速フーリエ変換(FFT)によるクロススペクトル法の他、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムやRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムなどを用いる適応フィルタ法を例示することができる。フィルタ処理部30を設けることにより、音質を改善することができ、骨導音の更なる明瞭化を図ることができる。
また、本実施形態においては、検出装置10として加速度ピックアップを使用しているが、速度型や変位型の振動ピックアップを使用することも可能である。この場合も、検出された速度信号または変位信号を順次サンプリングして得られたサンプリング値の差分に基づいて差分信号を生成することにより、本実施形態と同様に、骨導音の明瞭度を高めることができる。また、積分処理部24は、本実施形態では3回積分を行っているが、積分回数は特に限定されず、利用する信号の種類に応じて適宜設定可能である。積分処理が必要でない場合には、積分処理部24は、必ずしも設ける必要はない。
また、差分処理部22における検出信号の差分処理は、本実施形態のように1回のみに限定されるものではなく、検出信号の高周波成分をより強調するために差分信号に対して更に差分を行うように、差分処理を繰り返してもよい。
また、本実施形態の信号再生装置1は骨導音の検出を想定しているが、高周波数帯域の減衰の問題は、骨導音に限らず、壁材、板材、配管、ハウジング、容器などを伝播する固体伝導音全般に生じうる問題であることから、例えば、エンジン内部や室内などの検査用として本発明の信号再生装置を使用することも可能である。
本発明の信号再生装置は、検出信号の高周波成分を強調可能であることから、これを応用して、低周波数域の信号から高周波数域の信号を推定することができる。例えば、電話回線を流れる4kHz以下の音声データを高周波信号に変換して再生することにより、明瞭な音声を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る信号再生装置のブロック図である。 骨伝導差分信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 雑音が除去された骨伝導差分信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 ウィナー法のアルゴリズムを説明するための概念図である。 ウィナー法による雑音除去後の差分信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 差分信号を積分して得られた加速度信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 加速度信号を積分して得られた速度信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 信号処理の流れを示す図である。 気導音による音声速度信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 骨伝導加速度信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 骨伝導加速度信号を直接積分して得られた骨伝導速度信号の波形およびスペクトログラムを示す図である。 騒音環境下における気導音の波形を示す図である。 骨伝導加速度信号の波形を示す図である。 骨伝導加速度差分信号の波形を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る信号再生装置のブロック図である。
符号の説明
1 信号再生装置
10 検出装置
20 信号処理装置
21 A/D変換器
22 差分処理部
23 減算処理部
24 積分処理部
25 D/A変換器
26 出力部
30 フィルタ処理部

Claims (4)

  1. 固体伝導音を検出して検出信号を出力する検出手段と、
    検出信号を順次サンプリングして得られたサンプリング値の差分に基づいて差分信号を出力する差分処理手段と、
    差分信号の雑音スペクトルを推定して得られた雑音信号を差分信号から減算する減算処理手段とを備える信号再生装置。
  2. 前記減算処理手段による減算処理後の差分信号を積分する積分処理手段を更に備える請求項1に記載の信号再生装置。
  3. 前記検出手段は、人体表面に当接するように装着されて、骨導音の加速度信号を出力するように構成されており、
    前記積分処理手段は、差分信号を積分して変位信号に変換する請求項2に記載の信号再生装置。
  4. 前記積分処理手段により積分処理が施された変位信号のフィルタ処理を行うフィルタ処理部を更に備える請求項3に記載の信号再生装置。












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