JP4568193B2 - 収音装置とその方法とそのプログラムとその記録媒体 - Google Patents
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Description
従来、雑音抑圧、残響抑圧する技術としては、特許文献1に示すような技術が開示されている。図9に特許文献1の構成を示しその動作を以下に説明する。特許文献1に示された技術は、残響のある部屋に目的音源70と複数の雑音源71、72、73からなる音源があり、N個のマイクロホンを用いて目的音源70からの音声信号のみを収音するものである。
まず、相関関数計算部75において各マイクロホンのN個の入力信号Xj(n)をある区間n=0,…,M-1から相関関数を式1で計算する。
そこで、ブラインド逆フィルタ計算部76においてB=RC(式3)の方程式をCについて解き、ディジタルフィルタのフィルタ係数ci(n)を求める。
ここでCは、フィルタ係数ベクトルで式4に示すようにN個のタップ長Lのフィルタ係数ci(n)から構成されるNL元の列ベクトルである。
そもそも従来においてはマイクロホンの出力信号を逆フィルタ処理しているが、逆フィルタのフィルタ係数を常に十分精度よく推定できなかった問題がある。
この発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、逆処理フィルタを用いる問題を解決した収音装置を提供することを目的とする。
この発明による収音装置の他面によれば、上記周波数領域信号のパワーから推定残響成分パワーを減算してゲインを計算することに代えて、上記周波数領域信号のパワーから推定残響成分パワーを引き算した結果に対し開平演算を行い、その開平演算結果に対し、対応する周波数領域信号の位相を付加する。
振幅スペクトル制御部10の構成を図2に示す。収音部(ブラインド収音装置)90において、ある程度残響が抑圧された音声信号が入力信号y(n)として周波数分析部20に入力される。音声入力信号y(n)は、周波数分析部20で例えば短時間離散フーリエ変換されて周波数領域の信号に変換される。周波数分析部20よりの周波数領域信号は、残響成分パワー推定部21と、残響抑圧ゲイン計算部22と、ゲイン制御部23に入力される。ゲイン制御部23の出力信号が周波数合成部24において例えば逆短時間離散フーリエ変換されて時間領域の信号に変換され、振幅スペクトル制御部10の出力信号z(n)となる。
振幅スペクトル制御部10を構成する各部の動作を順に説明する。
周波数分析部20では、入力信号y(n)に窓関数、例えばハニング窓関数w(n)を掛けてフレームに分け、フレーム時刻m(フレーム番号)で入力信号y(n)を離散フーリエ変換し、周波数領域信号の各周波数成分Y(ω,m)を求める。ここでωは周波数である。フレームの長さは、周波数分析部20内に設けられるアナログ信号をディジタル信号に変換する図示しないA/D変換器のサンプリング周波数とデータのサンプル数によって決定される。
例えば、サンプリング周波数は12KHzや16KHz、サンプル数は128〜1024個程度が想定される。今、例えばサンプリング周波数を16384Hzでサンプル数を1024個の条件とするとフレームの幅は62.5msとなる。このフレームの時間間隔で、音声入力信号y(n)を周波数成分に分解したY(ω,m)が求められる。更に周波数分析部20では、振幅の絶対値|Y(ω,m)|を絶対値変換部20aで、また位相∠Y(ω,m)を位相計算部20bでそれぞれ計算する。振幅|Y(ω,m)|と位相∠Y(ω,m)は、残響成分パワー推定部21と残響抑圧ゲイン計算部22とゲイン制御部23に出力される。
残響パワー推定部21では、残響成分パワーの推定値P(ω,m)を、Tフレーム前からの振幅|Y(ω,m)|と重み係数αiとを用いて式(7)で計算する。
重み係数αiは、事前に実験などにより決めた値を初期設定しておいてもよい。この例では重み係数αiは残響成分パワー推定部21内の重み係数計算部21aにおいて、式(8)で計算される。
式(7)に示したように、さらに周波数成分ごとに更に複数フレーム過去の周波数領域信号からの影響を重み付け加算和したものを残響パワーの推定値としている。
式(9)に示すように残響成分パワー推定部21の入力信号Y(ω,m)には、残響が重畳される前の直接音信号S(ω,m)と残響成分ΣR(ω,m−i)が重なっている。
また、重み係数αiは式(12)のような変形が可能である。
この重み係数αiは、式(8)の計算結果の絶対値をとった値としてもよい。
残響抑圧ゲイン計算部22は、残響成分パワー推定部21からの残響成分パワーの推定値P(ω,m)とを、対応する周波数成分の周波数領域信号のパワーから減算して、これに基づきゲインG(ω,m)を求める。例えば式(13)で計算する。
式(13)から明らかなように、残響抑圧ゲイン計算部22で計算されるゲインは、残響成分パワーの推定値P(ω,m)が現在の信号成分|Y(ω,m)|2に対する割合を表す。例えばP(ω,m)=|Y(ω,m)|2、つまり現在の信号が残響成分パワーのみからなる場合は、全て残響成分であるからゲインG(ω,m)は0となる。逆にP(ω,m)=0、つまり残響成分がない場合、ゲインG(ω,m)は1となる。
指数γは、このゲインGを強調するパラメータであり、γを大にする程強調される。聴感による実験では、0.5≦γ≦1の範囲が好ましい。
ゲイン制御部23では、式(14)に示すように周波数分析部20の出力信号の各周波数成分Y(ω,m)にゲインG(ω,m)を掛けて、各周波数成分の出力信号Z(ω,m)を求める。
Z(ω,m)=Y(ω,m)G(ω,m) 式(14)
周波数領域の出力信号であるゲイン制御部23の出力は、周波数合成部24に伝達される。
周波数合成部では、ゲイン制御部23の出力信号Z(ω,m)をフレームごとに逆短時間離散フーリエ変換して、時間領域の信号に戻し出力信号z(n)を得る。
以上述べたように、残響成分パワーを推定して抑圧するゲインを計算し、そのゲインを周波数領域信号に掛けることで、消し残りの残響成分を抑圧することが可能となった。
以上述べてきたように、この実施例によれば振幅スペクトル制御部10において消し残り残響成分のパワーを推定し、パワー推定値から残響を抑圧するゲインを計算し、そのゲインを入力信号の各周波数成分に掛けることで、消し残り成分を抑圧することが可能となった。更に、ディジタルフィルタのフィルタ長を短くして演算量を減らした場合に生じる残響抑圧性能の劣化を、振幅スペクトル制御部10でカバーできるので、収音装置全体として演算量を減らす効果もある。
周波数分析部20と残響成分パワー推定部21の動作は、実施例1と全く同じである。減算部40において、周波数分析部20からの振幅|Y(ω,m)|と、残響成分パワー推定部21で推定した残響成分パワーの推定値P(ω,m)との2つの値を用いて式(15)に示す演算を行う。
減算部40において、各周波数成分の信号の振幅のパワーから夫々の周波数成分における残響パワーの推定値を引き算する。
次にこの減算部40の出力信号Y0は、開平演算部41において開平演算され、各周波数成分の振幅データ√(Y0)に変換される。各周波数成分の振幅データ√(Y0)に、周波数分析部20からの各周波数成分の位相データ∠Y(ω,m)を、位相付加部42で付加し、残響成分が抑圧された周波数領域の信号Z(ω,m)を得る。例えば∠Y(ω,m)をθ(ω,m)とすると、√(Y0)exp(jθ(ω,m))の計算により位相付けを行う。
以上述べた実施例2の動作をフローチャートに整理して図5に示す。図4で説明済みの動作と同じ動作ステップには同一の参照符号を付け説明を繰り返さない。ステップ2において求められた周波数成分ごとの残響パワーの推定値を、周波数領域のパワーから引き算する減算過程が行われる(ステップS60)。次に各周波数のパワーを振幅データに変換するために、ステップ60で求められた結果の平方根を演算する開平演算過程が行われる(ステップS61)。ステップ61で求められた結果は、残響成分の推定値が差し引かれた周波数領域の振幅データであるので、それぞれ対応した周波数の位相データをこの振幅データの付加する位相付加工程が行われる(ステップS62)。最後に残響パワーの推定値分が差し引かれた各周波数の周波数領域信号を時間領域信号に変換する周波数合成過程が行われる(ステップS5)。
また、実施例1及び2では、複数のマイクロホンからの収音信号を逆フィルタにより処理して残響抑圧をしたブラインド収音装置による収音部90の出力端に振幅スペクトル制御部10を接続した例で説明を行ったが、この発明はこの実施例に限定されない。収音部90としては例えば独立成分分析による分離フィルタで構成したものでもよい。また、例えばアレーマイクロホンに線形フィルタにより比較的鋭い指向性を持たせ、その指向方向を目的音源方向とする収音部を構成し、その収音部の出力端に振幅スペクトル制御部10を接続した収音装置としてもよい。要はフィルタ処理を伴う収音装置にこの発明は適用することができる。
〔実施例3〕
元の信号に雑音や残響が少ない場合、実施例1及び2に示した振幅スペクトル制御部10を単独で用いて残響抑圧することもできる。図7に示すように収音装置を構成する振幅スペクトル制御部10の入力端に直接マイクロホン1を接続し、そのマイクロホンの入力をy(n)とする方法である。
〔実験結果〕
この発明の収音装置を用いた残響抑圧の実験結果を図8に示す。図8の実験結果は、図1に示したブラインド収音装置の出力端にこの発明の収音装置10を接続した収音装置で採取したデータである。図8(a)は目的音源70が発する源音声の音声波形、図8(b)は源音声に残響音声が重なった音声波形、図8(c)はブラインド収音装置による収音部90の出力波形、図8(d)が収音装置10の出力信号Z(n)の音声波形である。横軸は時間(ms)であり、縦軸は図8(a)を基準にした相対的な振幅であり無次元数である。
図8(b)の源音声と残響音声が合成された音声波形に対して、図8(c)のブラインド収音装置による収音部の出力音声波形の残響は、図8(b)に対して横軸の約200ms付近の約±1にも及ぶ残響が約0.1以下、また、約580ms付近では約0.3の振幅が約0.1以下に残響が抑圧されている。
このようにこの発明の収音装置によれば、効果的に残響を抑圧することが可能である。
Claims (11)
- 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を所定時間間隔(以下フレームという)ごとに、周波数領域信号に変換する周波数分析部と、
上記周波数分析部の出力信号中の各周波数成分について、各i(i=1,2,…,T)フレーム離れた2つのフレーム間の相関を、iフレーム前の上記周波数領域信号のパワーで正規化し、その正規化値を所定区間で累積し、上記累計を上記所定の区間で平均化した値を重み係数として求める重み係数計算部と、
上記周波数領域信号が入力され、上記重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム(Tは1以上の整数)分行った結果を残響成分パワーとする残響成分パワー推定部と、
上記残響パワーと上記周波数領域信号が入力され、周波数成分ごとの上記周波数領域信号のパワーから残響成分パワーを減算し、その結果に基づいてゲインを計算する残響抑圧ゲイン計算部と、
上記残響ゲイン計算部の計算結果と上記周波数領域信号との積を周波数成分ごとに計算するゲイン制御部と、
上記ゲイン制御部の出力信号を時間領域信号に変換する周波数合成部と、
を備える収音装置。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を所定時間間隔(以下フレームという)ごとに、周波数領域信号に変換する周波数分析部と、
上記周波数領域信号が入力され、予め定数としてプリセットされている重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム(Tは1以上の整数)分行った結果を残響成分パワーとする残響成分パワー推定部と、
上記残響パワーと上記周波数領域信号が入力され、周波数成分ごとの上記周波数領域信号のパワーから残響成分パワーを減算し、その結果に基づいてゲインを計算する残響抑圧ゲイン計算部と、
上記残響ゲイン計算部の計算結果と上記周波数領域信号との積を周波数成分ごとに計算するゲイン制御部と、
上記ゲイン制御部の出力信号を時間領域信号に変換する周波数合成部と、
を備える収音装置。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を所定時間間隔(以下フレームという)ごとに、周波数領域信号に変換する周波数分析部と、
上記周波数分析部の出力信号中の各周波数成分について、各i(i=1,2,…,T)フレーム離れた2つのフレーム間の相関を、iフレーム前の上記周波数領域信号のパワーで正規化し、その正規化値を所定区間で累積し、上記累計を上記所定の区間で平均化した値を重み係数として求める重み係数計算部と、
上記周波数領域信号が入力され、上記重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム(Tは1以上の整数)分行った結果を残響成分パワーとする残響成分パワー推定部と、
上記周波数領域信号と上記残響成分パワー信号が入力され、周波数成分ごとの周波数領域信号のパワーから上記残響成分パワーを引き算する減算部と、
上記減算部の各出力信号の平方根をそれぞれ求める開平演算部と、
上記開平演算部の周波数成分ごとの出力信号に上記周波数領域信号の位相を付加する位相付加部と、
上記位相付加部の出力信号を時間領域信号に変換する周波数合成部と、
を備える収音装置。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を所定時間間隔(以下フレームという)ごとに、周波数領域信号に変換する周波数分析部と、
上記周波数領域信号が入力され、予め定数としてプリセットされている重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム(Tは1以上の整数)分行った結果を残響成分パワーとする残響成分パワー推定部と、
上記周波数領域信号と上記残響成分パワー信号が入力され、周波数成分ごとの周波数領域信号のパワーから上記残響成分パワーを引き算する減算部と、
上記減算部の各出力信号の平方根をそれぞれ求める開平演算部と、
上記開平演算部の周波数成分ごとの出力信号に上記周波数領域信号の位相を付加する位相付加部と、
上記位相付加部の出力信号を時間領域信号に変換する周波数合成部と、
を備える収音装置。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を周波数分析して周波数領域信号を得る周波数分析過程と、
上記周波数分析過程で得た周波数領域信号の各周波数成分について、各i(i=1,2,…,T)フレーム離れた2つのフレーム間の相関を、iフレーム前の上記周波数領域信号のパワーで正規化し、その正規化値を所定区間で累積し、上記累計を上記所定の区間で平均化した値を重み係数として求める過程と、
上記周波数領域信号が入力され、上記重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム分行った結果を残響成分のパワーとする過程と、
周波数成分ごとに上記周波数領域信号のパワーから上記残響成分のパワーを減算して
ゲインを計算する残響抑圧ゲイン計算過程と、
上記計算されたゲインを各周波数における上記周波数領域信号のパワーに乗算するゲイン制御過程と、
上記乗算された結果の各周波数成分を時間領域信号に変換する周波数合成過程と、
を有することを特徴とする収音方法。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を周波数分析して周波数領域信号を得る周波数分析過程と、
上記周波数領域信号が入力され、予め定数としてプリセットされた重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム分行った結果を残響成分のパワーとする過程と、
周波数成分ごとに上記周波数領域信号のパワーから上記残響成分のパワーを減算して
ゲインを計算する残響抑圧ゲイン計算過程と、
上記計算されたゲインを各周波数における上記周波数領域信号のパワーに乗算するゲイン制御過程と、
上記乗算された結果の各周波数成分を時間領域信号に変換する周波数合成過程と、
を有することを特徴とする収音方法。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を周波数分析して周波数領域信号を得る周波数分析過程と、
上記周波数分析過程で得た周波数領域信号の各周波数成分について、各i(i=1,2,…,T)フレーム離れた2つのフレーム間の相関を、iフレーム前の上記周波数領域信号のパワーで正規化し、その正規化値を所定区間で累積し、上記累計を上記所定の区間で平均化した値を重み係数として求める過程と、
上記周波数領域信号が入力され、上記重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム分行った結果を残響成分のパワーとする過程と、
上記周波数分析過程の結果得られた各周波数成分の信号パワーから上記消し残り残響成分のパワーを推定する過程で得られた残響成分パワーを引き算する減算過程と、
上記残響成分パワーを引き算した各周波数成分の信号の平方根を演算する開平演算過程と、
上記平方根を演算する過程で得られた各周波数成分の結果に、上記周波数分析過程で得られた位相を付加する位相付加過程と、
上記位相付加過程で得られた各周波数成分の信号を時間領域信号に変換する周波数合成過程と、
を有することを特徴とする収音方法。 - 音声信号を逆フィルタ処理して得た雑音残響抑圧信号が入力され、その入力信号を周波数分析して周波数領域信号を得る周波数分析過程と、
上記周波数領域信号が入力され、予め定数としてプリセットされた重み係数を用いて上記周波数領域信号のパワーの重み付け加算を過去Tフレーム分行った結果を残響成分のパワーとする過程と、
上記周波数分析過程の結果得られた各周波数成分の信号パワーから上記消し残り残響成分のパワーを推定する過程で得られた残響成分パワーを引き算する減算過程と、
上記残響成分パワーを引き算した各周波数成分の信号の平方根を演算する開平演算過程と、
上記平方根を演算する過程で得られた各周波数成分の結果に、上記周波数分析過程で得られた位相を付加する位相付加過程と、
上記位相付加過程で得られた各周波数成分の信号を時間領域信号に変換する周波数合成過程と、
を有することを特徴とする収音方法。 - 請求項1乃至5に記載した何れかの収音装置としてコンピュータを機能させるための収音装置プログラム。
- 請求項10に記載した何れかのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
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