JP2006195543A - モデル同定装置およびモデル同定プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 データ数や数値演算量の増大を伴うことなく、周波数帯域を分割しながら周波数応答特性を計算することが可能となるとともに、間引きを行うためのサンプリング周波数と周波数帯域の分割位置を客観的に一意に設定した上で、分割して得られた周波数応答特性を結合させたり、モードの数を考慮した帯域分割を行ったりすることなく、伝達関数を同定する。
【解決手段】 サンプリング手段13は、複数の入力信号uに対する応答信号yの組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングし、パルス伝達関数同定手段16は、複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定する。
【選択図】 図2
【解決手段】 サンプリング手段13は、複数の入力信号uに対する応答信号yの組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングし、パルス伝達関数同定手段16は、複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定する。
【選択図】 図2
Description
本発明はモデル同定装置およびモデル同定プログラムに関し、特に、特性不明システムに対する入力信号と応答信号とから、システムの特性を示すモデルを同定する方法に適用して好適なものである。
従来の特性不明システムのモデル同定では、そのシステムの周波数応答特性を測定し、その周波数応答特性に基づいてシステムの伝達関数を推定する方法が知られている。ここで、周波数応答特性を測定する方法としては、掃引正弦波を用いた周波数応答法(非特許文献1)が知られている。一方、伝達関数を推定する方法としては、偏分反復法(非特許文献2、特許文献1)やモード円適合法(非特許文献3)が知られている。
しかし、広域に渡る周波数応答特性を精度よく測定するためには、測定用信号を長時間に渡ってシステムに入力する必要があり、システムに負担がかかる。このため、M系列信号などの擬似白色信号を、同定対象の周波数帯域下限周波数で決まる期間だけ入力し、その入力信号とそれに対する応答信号とから最小二乗法を用いて差分方程式を同定して、その差分方程式に対する周波数応答から伝達関数を推定する方法が開示されている(特許文献2)。
そして、擬似白色信号を用いることで広域に渡る周波数応答特性を精度よく測定するために、ある一定のサンプリング周期で測定した入出力信号を、各々複数の低域通過フィルタにより複数の周波数帯域成分に分割し、その帯域分割された複数組の入出力信号を各々の周波数帯域に対応したサンプリング周期で間引いて再度サンプリングし、その間引かれたデータから最小二乗法を用いて差分方程式を複数個同定し、その複数個の差分方程式に対して周波数応答を計算し、得られた複数個の周波数応答特性を結合させ、その結合させた周波数応答から伝達関数を推定する方法が開示されている(特許文献2、特許文献3)。
ここで、低域通過フィルタの通過周波数帯域の決定に関しては、同定に用いる応答信号とは別の同定対象のデータに対するスペクトル解析結果から決定するか(特許文献3)、各通過周波数帯域の上限を同定対象の各反共振周波数と一致させる方法が用いられている(非特許文献3)。
また、伝達関数を推定する時においても、周波数応答特性を精度よく同定するために周波数帯域を分割する方法が用いられており、分割した帯域ごとにモード特性を同定する方法が知られている。ここで、偏分反復法において、分割した周波数帯域の各帯域内に含まれるモードの数を限定し、各帯域内の伝達関数を同定する方法が開示されている(特許文献1)。また、モード円適合法においては、モードが帯域内に1つだけ存在するように周波数帯域を分割し、分割した帯域ごとに2次伝達関数を同定する方法が開示されている(非特許文献3)。
また、伝達関数を推定する時においても、周波数応答特性を精度よく同定するために周波数帯域を分割する方法が用いられており、分割した帯域ごとにモード特性を同定する方法が知られている。ここで、偏分反復法において、分割した周波数帯域の各帯域内に含まれるモードの数を限定し、各帯域内の伝達関数を同定する方法が開示されている(特許文献1)。また、モード円適合法においては、モードが帯域内に1つだけ存在するように周波数帯域を分割し、分割した帯域ごとに2次伝達関数を同定する方法が開示されている(非特許文献3)。
木村英紀著、「ディジタル信号処理と制御」、株式会社昭栄堂、昭和62年9月、P233−236
安田仁彦著、「モード解析と動的設計」、株式会社コロナ社、昭1993年11月、P182−184
橋本誠司、石川赳夫、足立修一、船渡寛人、神山健三、磯島彰宏氏著、「マルチデシメーション同定法を用いたロバスト制御のための柔軟構造物のモデリング手法」、電気学会論文誌D部門、124巻5号、2004年、P471−4786
特開平10−38748号公報
特開平3−282718号公報
特開平3−217901号公報
しかしながら、システムの広域に渡る周波数応答特性を示す伝達関数を精度よく同定するために、高いサンプリング周波数で低い周波数帯域を同定すると、扱うデータ数が増大するという問題があった。例えば、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を同定するとして、サンプリング周波数を4000Hzで測定すると、入出力信号それぞれ4000個のデータを測定する必要がある。さらに、これらのデータを用いて最小二乗法にて差分方程式を同定する場合、4000個の方程式に対する最小二乗解法を行わなければならず、計算量が膨大になる。
一方、同定に用いる入出力信号を各々複数の低域通過フィルタにより複数の周波数帯域成分に分割して各周波数帯域の周波数応答特性を計算する方法では、分割される周波数帯域の数に比例してデータ量が増えるとともに、最小二乗法による差分方程式の導出時に、データ量の増加に比例して数値演算量が増えるという問題があった。
例えば、表1に示すように、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を1Hz〜250Hz、250Hz〜500Hz、500Hz〜750Hz、750Hz〜1000Hzの4個に分割した場合、各周波数帯域での入力信号のデータ数および最小二乗解法の方程式の数はそれぞれ1000、2000、3000、4000になる。このため、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を4個に分割すると、合計で10000個のデータを用意する必要があるだけでなく、最小二乗解法の方程式の数も合計で10000個となり、データ数および最小二乗解法の方程式の数は、周波数帯域を分割しない場合に比べて2.5倍に増加する。
例えば、表1に示すように、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を1Hz〜250Hz、250Hz〜500Hz、500Hz〜750Hz、750Hz〜1000Hzの4個に分割した場合、各周波数帯域での入力信号のデータ数および最小二乗解法の方程式の数はそれぞれ1000、2000、3000、4000になる。このため、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を4個に分割すると、合計で10000個のデータを用意する必要があるだけでなく、最小二乗解法の方程式の数も合計で10000個となり、データ数および最小二乗解法の方程式の数は、周波数帯域を分割しない場合に比べて2.5倍に増加する。
また、周波数帯域ごとに得られた周波数応答特性を結合させる際には、周波数帯域の上限周波数と下限周波数付近は間引きサンプリングによる影響を考慮しなければならないが、周波数帯域の上限周波数と下限周波数付近では互いに隣り合う周波数帯域が重なるように設定し、重なり合う部分の平均値を求める方法が取られる。このため、周波数帯域の結合後の精度は、周波数帯域の上限周波数と下限周波数の取り方に依存するという問題があった。
また、低域通過フィルタの通過周波数帯域の決定に関し、同定に用いる応答信号とは別の同定対象のデータに対するスペクトル解析結果から決定する方法(特許文献3)では、同定に用いる応答信号とは別個に信号を測定する必要があるだけでなく、その信号に対するスペクトル解析を別途行う必要があり、作業工程の増大を招くという問題があった。また、各通過周波数帯域の上限を同定対象の各反共振周波数と一致させる方法(非特許文献3)では、特性不明システムの同定を行う際に、反共振点がどの周波数点にあるか不明であるため、反共振点を容易に設定することができないという問題があった。また、擬似白色信号の周波数応答から反共振点を探し出す方法もあるが、図3に示すような周波数応答解析結果から視覚的に探索する必要があるため、恣意的な探索となり、同定以前に作業工程が増加するという問題があった。
さらに、伝達関数を推定する場合にも、周波数応答特性を同定する時と同様な問題がある。例えば、偏分反復法では、偏分反復法の演算の前にモードの数を考慮した帯域分割のための工程が必要となる。また、モード円適合法では、モードが帯域内に1つだけ存在するように周波数帯域を分割しなければならず、特性不明システムの同定を行うために周波数応答特性を測定する際に、モードの数やモードの周波数帯域を精度よく解析しなければならないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、データ数や数値演算量の増大を伴うことなく、周波数帯域を分割しながら周波数応答特性を計算することが可能となるとともに、間引きを行うためのサンプリング周波数と周波数帯域の分割位置を客観的に一意に設定した上で、分割して得られた周波数応答特性を結合させたり、モードの数を考慮した帯域分割を行ったりすることなく、伝達関数を同定することが可能なモデル同定装置およびモデル同定プログラムを提供することである。
上述した課題を解決するために、請求項1記載のモデル同定装置によれば、一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号を入力する入力信号入力手段と、前記入力信号に対する応答信号を前記サンプリング周期で測定する応答信号測定手段と、前記複数の入力信号に対する応答信号の組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングするサンプリング手段と、前記間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号ごとに複数個の差分方程式を同定する差分方程式同定手段と、前記複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号の測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算する周波数応答特性計算手段と、前記計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定するパルス伝達関数同定手段とを備えることを特徴とする。
これにより、分割された各周波数帯域ごとに入力信号が入力される期間を異ならせることが可能となり、一定のサンプリング周期で入力信号を入力した場合においても、分割された各周波数帯域の入出力信号のデータ数を互いに一致させることが可能となる。このため、周波数帯域を分割した場合においても、高いサンプリング周波数で低い周波数帯域を同定する必要がなくなり、扱う総データ数と最小二乗解法による数値演算量の増大を伴うことなく、周波数応答特性を同定することが可能となるとともに、特性不明システムのモードの数に依存することなく、間引きを行うためのサンプリング周波数や周波数帯域の分割位置を設定することが可能となり、周波数帯域の分割するためのデータを別途測定したり、スペクトル解析による試行錯誤をなくすことを可能として、作業工程の増大を抑制することができる。
また、請求項2記載のモデル同定装置によれば、前記差分方程式同定手段は、未知変数の最大数が前記差分方程式を構成する連立方程式の個数を超えないように次数を変化させた時に、複数個の差分方程式の入力信号に対する出力と測定した応答信号との差の平方和が最小となるように差分方程式の次数を設定することを特徴とする。
これにより、差分方程式の次数を適切に決定することが可能となり、差分方程式から周波数応答特性を精度よく計算することができる。
これにより、差分方程式の次数を適切に決定することが可能となり、差分方程式から周波数応答特性を精度よく計算することができる。
また、請求項3記載のモデル同定装置によれば、前記パルス伝達関数同定手段は、全周波数応答特性に対する線形化最小二乗法に基づいてパルス伝達関数を同定することを特徴とする。
これにより、複数の周波数帯域の周波数応答特性から1つの伝達関数を推定する際に、分割して得られた周波数応答特性を結合させることなく、複数組の周波数応答特性をそのまま用いることで、その特性を数学的に近似したパルス伝達関数を同定することが可能となるとともに、周波数応答特性を分割してパルス伝達関数を同定する必要がなくなり、周波数応答特性に対する視覚的解析を基にした帯域分割のための領域設定などの事前の作業を不要とすることができる。
これにより、複数の周波数帯域の周波数応答特性から1つの伝達関数を推定する際に、分割して得られた周波数応答特性を結合させることなく、複数組の周波数応答特性をそのまま用いることで、その特性を数学的に近似したパルス伝達関数を同定することが可能となるとともに、周波数応答特性を分割してパルス伝達関数を同定する必要がなくなり、周波数応答特性に対する視覚的解析を基にした帯域分割のための領域設定などの事前の作業を不要とすることができる。
また、請求項4記載のモデル同定装置によれば、前記パルス伝達関数同定手段は、線形化されたパルス伝達関数に対して反復重み付き最小二乗法を適用し、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性と基準となる差分方程式の周波数応答特性との相対偏差が閾値を下回るように、前記パルス伝達関数の係数を計算することを特徴とする。
これにより、非線形最小二乗法を適用することなく、パルス伝達関数を同定することが可能となり、収束解が得られなくなる懸念を払拭することが可能となるとともに、パルス伝達関数の線形化に伴う偏差を低減することができる。
これにより、非線形最小二乗法を適用することなく、パルス伝達関数を同定することが可能となり、収束解が得られなくなる懸念を払拭することが可能となるとともに、パルス伝達関数の線形化に伴う偏差を低減することができる。
また、請求項5記載のモデル同定装置によれば、前記パルス伝達関数同定手段は、前記パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列の階数がそのシルベスタ行列の列数と等しくなるように前記パルス伝達関数の次数を決定することを特徴とする。
これにより、伝達関数の係数で構成されるシルベスタ行列の行列解析によりパルス伝達関数の次数を一意に決定することができる。このため、パルス伝達関数の次数をモードの数から決定する必要がなくなり、モードの探索やモード探索のための周波数応答解析などを不要となることから、パルス伝達関数の次数を決定するための作業工程の負担を軽減することができる。
これにより、伝達関数の係数で構成されるシルベスタ行列の行列解析によりパルス伝達関数の次数を一意に決定することができる。このため、パルス伝達関数の次数をモードの数から決定する必要がなくなり、モードの探索やモード探索のための周波数応答解析などを不要となることから、パルス伝達関数の次数を決定するための作業工程の負担を軽減することができる。
また、請求項6記載のモデル同定プログラムによれば、一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号を入力するステップと、前記入力信号に対する応答信号を前記サンプリング周期で測定するステップと、前記複数の入力信号に対する応答信号の組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングするステップと、前記間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号ごと複数個の差分方程式を同定するステップと、前記複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号の測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算するステップと、前記計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、周波数帯域を分割した場合においても、扱う総データ数と最小二乗解法による数値演算量の増大を伴うことなく周波数応答特性を同定することが可能となるとともに、特性不明システムのモードの数に依存することなく、間引きを行うためのサンプリング周波数や周波数帯域の分割位置を設定することが可能となり、周波数帯域の分割するためのデータを別途測定したり、スペクトル解析による試行錯誤をなくすことができ、作業工程の増大を抑制することができる。
また、請求項7記載のモデル同定プログラムによれば、未知変数の最大数が前記差分方程式を構成する連立方程式の個数を超えないように次数を変化させた時に、複数個の差分方程式の入力信号に対する出力と測定した応答信号との差の平方和が最小となるように差分方程式の次数を設定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6記載のモデル同定プログラム。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、差分方程式の次数を適切に決定することが可能となり、差分方程式から周波数応答特性を精度よく計算することができる。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、差分方程式の次数を適切に決定することが可能となり、差分方程式から周波数応答特性を精度よく計算することができる。
また、請求項8記載のモデル同定プログラムによれば、全周波数応答特性に対する線形化最小二乗法に基づいてパルス伝達関数を同定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、複数の周波数帯域の周波数応答特性から1つの伝達関数を推定する際に、分割して得られた周波数応答特性を結合させることなく、複数組の周波数応答特性をそのまま用いることで、その特性を数学的に近似したパルス伝達関数を同定することが可能となるとともに、周波数応答特性を分割してパルス伝達関数を同定する必要がなくなり、周波数応答特性に対する視覚的解析を基にした帯域分割のための領域設定などの事前の作業を不要とすることができる。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、複数の周波数帯域の周波数応答特性から1つの伝達関数を推定する際に、分割して得られた周波数応答特性を結合させることなく、複数組の周波数応答特性をそのまま用いることで、その特性を数学的に近似したパルス伝達関数を同定することが可能となるとともに、周波数応答特性を分割してパルス伝達関数を同定する必要がなくなり、周波数応答特性に対する視覚的解析を基にした帯域分割のための領域設定などの事前の作業を不要とすることができる。
また、請求項9記載のモデル同定プログラムによれば、線形化されたパルス伝達関数に対して反復重み付き最小二乗法を適用し、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性と基準となる差分方程式の周波数応答特性との相対偏差が閾値を下回るように、前記パルス伝達関数の係数を計算するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、非線形最小二乗法を適用することなく、パルス伝達関数を同定することが可能となり、収束解が得られなくなる懸念を払拭することが可能となるとともに、パルス伝達関数の線形化に伴う偏差を低減することができる。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、非線形最小二乗法を適用することなく、パルス伝達関数を同定することが可能となり、収束解が得られなくなる懸念を払拭することが可能となるとともに、パルス伝達関数の線形化に伴う偏差を低減することができる。
また、請求項10記載のモデル同定プログラムによれば、前記パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列の階数がそのシルベスタ行列の列数と等しくなるように前記パルス伝達関数の次数を決定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、伝達関数の係数で構成されるシルベスタ行列の行列解析によりパルス伝達関数の次数を一意に決定することができる。このため、パルス伝達関数の次数をモードの数から決定する必要がなくなり、モードの探索やモード探索のための周波数応答解析などを不要となることから、パルス伝達関数の次数を決定するための作業工程の負担を軽減することができる。
これにより、モデル同定プログラムをコンピュータに実行させることで、伝達関数の係数で構成されるシルベスタ行列の行列解析によりパルス伝達関数の次数を一意に決定することができる。このため、パルス伝達関数の次数をモードの数から決定する必要がなくなり、モードの探索やモード探索のための周波数応答解析などを不要となることから、パルス伝達関数の次数を決定するための作業工程の負担を軽減することができる。
以上説明したように、本発明によれば、データ数や数値演算量の増大を伴うことなく、周波数帯域を分割しながら周波数応答特性を計算することが可能となるとともに、間引きを行うためのサンプリング周波数と周波数帯域の分割位置を客観的に一意に設定した上で、分割して得られた周波数応答特性を結合させたり、モードの数を考慮した帯域分割を行ったりすることなく、伝達関数を同定することが可能となる。
以下、本発明の実施形態に係るモデル同定装置およびその方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモデル同定方法を示すブロック図である。
図1において、特性不明システム1に入力信号uが入力されると、その入力信号uに対する応答信号yが出力される。また、特性不明システム1にはシステム同定装置2が接続され、システム同定装置2は、特性不明システム1に入力される入力信号uおよび特性不明システム1から出力される応答信号yのうち、ある一定期間のサンプリングデータu[n]、y[n]を測定する。そして、システム同定装置2は、これらのサンプリングデータu[n]、y[n]に基づいて、特性不明システム1の特性を示すモデルを同定する。なお、特性不明システム1の特性を示すモデルは、例えば、特性不明システム1の伝達関数で表すことができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るモデル同定方法を示すブロック図である。
図1において、特性不明システム1に入力信号uが入力されると、その入力信号uに対する応答信号yが出力される。また、特性不明システム1にはシステム同定装置2が接続され、システム同定装置2は、特性不明システム1に入力される入力信号uおよび特性不明システム1から出力される応答信号yのうち、ある一定期間のサンプリングデータu[n]、y[n]を測定する。そして、システム同定装置2は、これらのサンプリングデータu[n]、y[n]に基づいて、特性不明システム1の特性を示すモデルを同定する。なお、特性不明システム1の特性を示すモデルは、例えば、特性不明システム1の伝達関数で表すことができる。
図2は、図1のシステム同定装置2の概略構成を示すブロック図である。
図2において、システム同定装置2には、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16が設けられている。ここで、入力信号入力手段11は、一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号uを入力する。なお、複数の入力信号uとしては、例えば、複数の擬似白色信号または多重正弦波を用いることができる。応答信号測定手段12は、一定のサンプリング周期で入力された入力信号uに対する応答信号yを測定する。サンプリング手段13は、複数の入力信号uに対する応答信号yの組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングする。差分方程式同定手段14は、サンプリング手段13にて間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号yごとに複数個の差分方程式を同定する。周波数応答特性計算手段15は、差分方程式同定手段14にて同定された複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号yの測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算する。パルス伝達関数同定手段16は、周波数応答特性計算手段15にて計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定する。
図2において、システム同定装置2には、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16が設けられている。ここで、入力信号入力手段11は、一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号uを入力する。なお、複数の入力信号uとしては、例えば、複数の擬似白色信号または多重正弦波を用いることができる。応答信号測定手段12は、一定のサンプリング周期で入力された入力信号uに対する応答信号yを測定する。サンプリング手段13は、複数の入力信号uに対する応答信号yの組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングする。差分方程式同定手段14は、サンプリング手段13にて間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号yごとに複数個の差分方程式を同定する。周波数応答特性計算手段15は、差分方程式同定手段14にて同定された複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号yの測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算する。パルス伝達関数同定手段16は、周波数応答特性計算手段15にて計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定する。
これにより、システム同定装置2は、入力信号uが入力される期間を異ならせることで周波数帯域を分割しながら、特性不明システム1の周波数応答特性を計算することが可能となるとともに、一定のサンプリング周期で特性不明システム1に入力信号uを入力した場合においても、分割された各周波数帯域の入力信号uのデータ数を互いに一致させることが可能となる。このため、システム同定装置2は、特性不明システム1の周波数帯域を分割した場合においても、高いサンプリング周波数で低い周波数帯域を同定する必要がなくなり、扱う総データ数と最小二乗解法による数値演算量の増大を伴うことなく、周波数応答特性を同定することが可能となるとともに、特性不明システム1のモードの数に依存することなく、間引きを行うためのサンプリング周波数や周波数帯域の分割位置を設定することが可能となり、周波数帯域の分割するためのデータを別途測定したり、スペクトル解析による試行錯誤をなくすことを可能として、作業工程の増大を抑制することができる。
なお、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16は、これらの手段で行われる処理を遂行させる命令が記述されたプログラムをコンピュータに実行させることにより実現することができる。
そして、このプログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶しておけば、その記憶媒体をコンピュータに装着し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16で行われる処理を実現することができる。また、このプログラムをインターネットを介してダウンロードすることにより、このプログラムを容易に普及させることができる。
そして、このプログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶しておけば、その記憶媒体をコンピュータに装着し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16で行われる処理を実現することができる。また、このプログラムをインターネットを介してダウンロードすることにより、このプログラムを容易に普及させることができる。
また、入力信号入力手段11、応答信号測定手段12、サンプリング手段13、差分方程式同定手段14、周波数応答特性計算手段15およびパルス伝達関数同定手段16で行われる処理を遂行させる命令が記述されたプログラムをコンピュータに実行させる場合、スタンドアロン型コンピュータで実行させるようにしてもよく、ネットワークに接続された複数のコンピュータに分散処理させるようにしてもよい。
以下、図1のシステム同定装置2で実施される処理について数式を用いながら説明する。
図1において、特性不明システム1が線形動的システムであると仮定すると、あるサンプリング点nでの特性不明システム1の応答信号yは、そのサンプリング点nでの入力信号uと、過去にサンプリングされた入力信号u[n−i]および応答信号y[n−i]とを用いることで、以下の(1)式の差分方程式で表すことができる。
図1において、特性不明システム1が線形動的システムであると仮定すると、あるサンプリング点nでの特性不明システム1の応答信号yは、そのサンプリング点nでの入力信号uと、過去にサンプリングされた入力信号u[n−i]および応答信号y[n−i]とを用いることで、以下の(1)式の差分方程式で表すことができる。
ただし、ai、biは差分方程式の未知係数、qは差分方程式の未知の次数である。
(1)式は、特性不明システム1の応答信号yを測定した期間Tの全てのサンプリング点nで成立し、差分方程式の次数qを設定すると、未知係数ai、biに対するm個の連立方程式が得られる。ただし、m=T/Δt、Δtはサンプリング周期である。従って、(2)式に示すように、未知係数ai、biを変数xとした行列方程式Ax=bが(1)式から得られる。
(1)式は、特性不明システム1の応答信号yを測定した期間Tの全てのサンプリング点nで成立し、差分方程式の次数qを設定すると、未知係数ai、biに対するm個の連立方程式が得られる。ただし、m=T/Δt、Δtはサンプリング周期である。従って、(2)式に示すように、未知係数ai、biを変数xとした行列方程式Ax=bが(1)式から得られる。
例えば、1Hz〜1000Hzまでの周波数帯域を同定するとして、サンプリング周波数を4000Hzで測定すると、図2の入力信号入力手段11は、表2に示すような期間の異なるM系列信号を入力信号uとして用いることができる。ここで、サンプリング周波数を4000Hzで一定の場合、入力信号uの各データ数は、表2に示すように、入力信号uが入力される期間に比例して増加する。例えば、サンプリング周波数が4000Hzで入力信号uを0.064秒、0.256秒、1.024秒の期間だけそれぞれサンプリングした場合、データ数はそれぞれ256個、1024個、4096個となる。
そこで、サンプリング手段13は、入力される期間の最も短い入力信号uのデータ数と、その他の入力される期間の長い入力信号uのデータ数が互いに一致するように、入力される期間の長い入力信号uのデータ数を間引いてサンプリングする。この結果、例えば、表2に示すように、0.064秒、0.256秒、1.024秒の期間に対し、間引きが行われた後のサンプリング周波数として、4000Hz、1000Hz、250Hzという互いに異なるサンプリング周波数がそれぞれ得られる。なお、間引きが行う前に、折り返し雑音を除去するためのフィルタリングを行うようにしてもよい。
この間引かれたサンプリング周波数の異なる3組のデータを用いて、(2)式に示すような256個の連立方程式を3組だけ作成する。そして、差分方程式同定手段14は、これらの3組の連立方程式を最小二乗法によって解くことにより、サンプリング周波数の異なる応答信号yごとの差分方程式の未知係数ai、biを導出することができる。
ここで、周波数応答特性を精度よく計算するためには、差分方程式の次数qを適切に決定する必要がある。このため、差分方程式の次数qを2から127まで設定し、各次数qに対する未知係数ai、biを(2)式により導出する。そして、複数個の差分方程式の入力信号uに対する各出力を(3)式により計算する。
ここで、周波数応答特性を精度よく計算するためには、差分方程式の次数qを適切に決定する必要がある。このため、差分方程式の次数qを2から127まで設定し、各次数qに対する未知係数ai、biを(2)式により導出する。そして、複数個の差分方程式の入力信号uに対する各出力を(3)式により計算する。
ただし、
o[k]:差分方程式のk番目の出力
u[k]:k(k=0,・・・,255)番目の入力信号
である。
そして、複数個の差分方程式の入力信号uに対する各出力が求まると、測定した特性不明システム1の応答信号yとの差の平方和Eqを(4)式にてそれぞれ計算し、平方和Eqが最小となる次数qを最適値とすることができる。
o[k]:差分方程式のk番目の出力
u[k]:k(k=0,・・・,255)番目の入力信号
である。
そして、複数個の差分方程式の入力信号uに対する各出力が求まると、測定した特性不明システム1の応答信号yとの差の平方和Eqを(4)式にてそれぞれ計算し、平方和Eqが最小となる次数qを最適値とすることができる。
そして、差分方程式の未知係数ai、biが導出されると、周波数応答特性計算手段15は、3組の差分方程式を用いることにより、特性不明システム1の周波数応答特性を計算する。ここで、3組の差分方程式に対する周波数応答特性Gfs(z)は、(5)式に示すように、これらに差分方程式をz演算子で構成されるパルス伝達関数に変換することにより計算することができる。ここで、z-iはiサンプル遅延を表すため、(2)式により導出された差分方程式の係数ai、biをそのまま用いることができる。
ただし、
zk=exp(j2πfk/fs)
fs:3組の差分方程式に対応する各サンプリング周波数
fk:各サンプリング周波数に対応する周波数帯域内のk番目の周波数点
である。
ここで、3組の差分方程式に対する周波数帯域と周波数点は、それぞれのサンプリング周波数fsと測定期間Tにより、以下の(6)式、(7)式で表すことができる。
1/T≦fk≦fs/5 (6)
fk=fs/N×k (7)
ただし、
N:各サンプリング周波数での入力信号uのデータ数(表2の場合、256個)
k:1以上の正の整数
である。
zk=exp(j2πfk/fs)
fs:3組の差分方程式に対応する各サンプリング周波数
fk:各サンプリング周波数に対応する周波数帯域内のk番目の周波数点
である。
ここで、3組の差分方程式に対する周波数帯域と周波数点は、それぞれのサンプリング周波数fsと測定期間Tにより、以下の(6)式、(7)式で表すことができる。
1/T≦fk≦fs/5 (6)
fk=fs/N×k (7)
ただし、
N:各サンプリング周波数での入力信号uのデータ数(表2の場合、256個)
k:1以上の正の整数
である。
そして、パルス伝達関数同定手段16は、周波数応答特性計算手段15にて得られた3組の周波数応答データに対して、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定する。ここで、パルス伝達関数同定手段16は、(8)式に示すように、全周波数応答特性に対する最小二乗法に基づいて、αi、βiを未知係数とした測定時のサンプリング周期でのパルス伝達関数を同定することができる。
これにより、複数の周波数帯域の周波数応答特性から1つのパルス伝達関数を推定する際に、分割して得られた周波数応答特性を結合させることなく、複数組の周波数応答特性をそのまま用いることで、その特性を数学的に近似したパルス伝達関数を同定することが可能となるとともに、周波数応答特性を分割してパルス伝達関数を同定する必要がなくなり、周波数応答特性に対する視覚的解析を基にした帯域分割のための領域設定などの事前の作業を不要とすることができる。
ただし、(8)式のままでは、非線形最小二乗法を適用することとなり、収束解が得られない場合が懸念される。このため、(8)式の分母を払うことにより(9)式を生成する。
ただし、(8)式のままでは、非線形最小二乗法を適用することとなり、収束解が得られない場合が懸念される。このため、(8)式の分母を払うことにより(9)式を生成する。
そして、(10)式に示すように、線形化された(9)式の全周波数応答特性に対する連立方程式を生成し、(10)式の連立方程式を線形化最小二乗法により解いて、未知係数αi、βiを導出する。
Ax=d (10)
ただし、A、d、xはそれぞれ以下のように表すことができる。
Ax=d (10)
ただし、A、d、xはそれぞれ以下のように表すことができる。
ここで、
zk=exp(j2πfk/fs)
fs:測定時のサンプリング周波数(表2の場合、4000Hz)
fk:全周波数帯域のk番目の周波数点
である。
また、z演算子は複素関数であるので、(11)式に示すように、10)式の連立方程式の実部と虚部とを別々に計算できるように構成し、連立代数方程式から未知係数αi、βiを導出する。
Bx=e (11)
ただし、B、eはそれぞれ以下のように表すことができる。
zk=exp(j2πfk/fs)
fs:測定時のサンプリング周波数(表2の場合、4000Hz)
fk:全周波数帯域のk番目の周波数点
である。
また、z演算子は複素関数であるので、(11)式に示すように、10)式の連立方程式の実部と虚部とを別々に計算できるように構成し、連立代数方程式から未知係数αi、βiを導出する。
Bx=e (11)
ただし、B、eはそれぞれ以下のように表すことができる。
しかし、(11)式で得られる解には線形化による偏差が含まれるので、偏差を低減させるために、反復重み付き最小二乗法を適用する。すなわち、重み係数行列W(λ)を(11)式に追加して、以下の(11)式に示される連立代数方程式を構成する。
C(λ)x=g(λ) (12)
ただし、λは繰り返し回数である。
また、C(λ)、g(λ)は以下の式で表すことができる。
C(λ)x=g(λ) (12)
ただし、λは繰り返し回数である。
また、C(λ)、g(λ)は以下の式で表すことができる。
ここで、重み係数行列W(λ)は以下の式で表すことができる。
ここで、重み係数ωi (λ)は以下の式で表すことができる。
ただし、
αi (λ):λ回目に得られたパルス伝達関数を構成する分母多項式のi番目の係数である。
ここで、係数αi、βiが未知であるため、初回は重み係数ωi (λ)はすべて1とする。そして、重み係数ωi (λ)を更新しながら、重み付き最小二乗解を繰り返し計算することで、最小二乗解の偏差を小さくすることができる。そして、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性H(z)と基準となる差分方程式の周波数応答特性Gfs(z)との相対偏差が、(13)式に示すように、閾値γを下回った時に繰り返し作業を終了する。
αi (λ):λ回目に得られたパルス伝達関数を構成する分母多項式のi番目の係数である。
ここで、係数αi、βiが未知であるため、初回は重み係数ωi (λ)はすべて1とする。そして、重み係数ωi (λ)を更新しながら、重み付き最小二乗解を繰り返し計算することで、最小二乗解の偏差を小さくすることができる。そして、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性H(z)と基準となる差分方程式の周波数応答特性Gfs(z)との相対偏差が、(13)式に示すように、閾値γを下回った時に繰り返し作業を終了する。
ただし、パルス伝達関数の周波数応答特性H(z)は、以下の式で表すことができる。
ここで、
n:周波数点の総数
である
基準となる差分方程式の周波数応答特性Gfs(z)を精度よく同定するためには、パルス伝達関数の次数を適切に設定する必要がある。そのため、以下の(14)式に示すように、パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列Sを求め、シルベスタ行列Sの階数がそのシルベスタ行列Sの列数と等しくなるようにパルス伝達関数の次数を決定する。
n:周波数点の総数
である
基準となる差分方程式の周波数応答特性Gfs(z)を精度よく同定するためには、パルス伝達関数の次数を適切に設定する必要がある。そのため、以下の(14)式に示すように、パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列Sを求め、シルベスタ行列Sの階数がそのシルベスタ行列Sの列数と等しくなるようにパルス伝達関数の次数を決定する。
これにより、伝達関数の係数で構成されるシルベスタ行列Sの行列解析によりパルス伝達関数の次数を一意に決定することができる。このため、パルス伝達関数の次数をモードの数から決定する必要がなくなり、モードの探索やモード探索のための周波数応答解析などを不要となることから、パルス伝達関数の次数を決定するための作業工程の負担を軽減することができる。
ここで、最適なパルス伝達関数の次数の決定手順としては、例えば、以下に示すような方法を用いることができる。
まず、初期次数を2次と設定し、線形化最小二乗法にて2次のパルス伝達関数を導出する。そして、合計6個の係数から4行4列のシルベスタ行列Sを構成し階数を計算する。そして、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数と等しい場合、パルス伝達関数の次数を1つ増やして、3次のパルス伝達関数を導出する。そして、合計8個の係数から6行6列のシルベスタ行列Sを構成し階数を計算する。
まず、初期次数を2次と設定し、線形化最小二乗法にて2次のパルス伝達関数を導出する。そして、合計6個の係数から4行4列のシルベスタ行列Sを構成し階数を計算する。そして、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数と等しい場合、パルス伝達関数の次数を1つ増やして、3次のパルス伝達関数を導出する。そして、合計8個の係数から6行6列のシルベスタ行列Sを構成し階数を計算する。
もし、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数より少ない場合、2次を最適な次数として決定する。一方、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数と等しい場合、パルス伝達関数の次数を1つ増やして、4次のパルス伝達関数を導出する。もし、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数より少ない場合、3次を最適な次数として決定する。一方、得られたシルベスタ行列Sの階数が列数と等しい場合、パルス伝達関数の次数を1つ増やして、同様な操作を繰り返すことにより、最適なパルス伝達関数の次数を決定することが可能となる。
本発明は、データ量や数値演算量の増大および作業工程の負担を抑制しつつ、特性不明システムのモデルを精度よく同定することができ、人工衛星の姿勢制御系やロボットの適応制御系に利用することができる。
1 特性不明システム
2 システム同定装置
11 入力信号入力手段
12 応答信号測定手段
13 サンプリング手段
14 差分方程式同定手段
15 周波数応答特性計算手段
16 パルス伝達関数同定手段
2 システム同定装置
11 入力信号入力手段
12 応答信号測定手段
13 サンプリング手段
14 差分方程式同定手段
15 周波数応答特性計算手段
16 パルス伝達関数同定手段
Claims (10)
- 一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号を入力する入力信号入力手段と、
前記入力信号に対する応答信号を前記サンプリング周期で測定する応答信号測定手段と、
前記複数の入力信号に対する応答信号の組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングするサンプリング手段と、
前記間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号ごとに複数個の差分方程式を同定する差分方程式同定手段と、
前記複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号の測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算する周波数応答特性計算手段と、
前記計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定するパルス伝達関数同定手段とを備えることを特徴とするモデル同定装置。 - 前記差分方程式同定手段は、未知変数の最大数が前記差分方程式を構成する連立方程式の個数を超えないように次数を変化させた時に、複数個の差分方程式の入力信号に対する出力と測定した応答信号との差の平方和が最小となるように差分方程式の次数を設定することを特徴とする請求項1記載のモデル同定装置。
- 前記パルス伝達関数同定手段は、全周波数応答特性に対する線形化最小二乗法に基づいてパルス伝達関数を同定することを特徴とする請求項1または2記載のモデル同定装置。
- 前記パルス伝達関数同定手段は、線形化されたパルス伝達関数に対して反復重み付き最小二乗法を適用し、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性と基準となる差分方程式の周波数応答特性との相対偏差が閾値を下回るように、前記パルス伝達関数の係数を計算することを特徴とする請求項3記載のモデル同定装置。
- 前記パルス伝達関数同定手段は、前記パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列の階数がそのシルベスタ行列の列数と等しくなるように前記パルス伝達関数の次数を決定することを特徴とする請求項3または4記載のモデル同定装置。
- 一定のサンプリング周期で期間の異なる複数の入力信号を入力するステップと、
前記入力信号に対する応答信号を前記サンプリング周期で測定するステップと、
前記複数の入力信号に対する応答信号の組に対し、データ数がすべての組に対して等しくなるように各組ごとに異なるサンプリング周期で間引いてサンプリングするステップと、
前記間引かれたデータを用いることにより、サンプリング周期が異なる応答信号ごと複数個の差分方程式を同定するステップと、
前記複数個の差分方程式について、各サンプリング周期と応答信号の測定期間で決まる周波数帯域の周波数応答特性を計算するステップと、
前記計算された複数個の周波数応答特性に基づいて、そのすべての周波数応答特性を表すことができる測定時のサンプリング周期での1つのパルス伝達関数を同定するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするモデル同定プログラム。 - 未知変数の最大数が前記差分方程式を構成する連立方程式の個数を超えないように次数を変化させた時に、複数個の差分方程式の入力信号に対する出力と測定した応答信号との差の平方和が最小となるように差分方程式の次数を設定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6記載のモデル同定プログラム。
- 全周波数応答特性に対する線形化最小二乗法に基づいてパルス伝達関数を同定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6または7記載のモデル同定プログラム。
- 線形化されたパルス伝達関数に対して反復重み付き最小二乗法を適用し、導出されたパルス伝達関数の周波数応答特性と基準となる差分方程式の周波数応答特性との相対偏差が閾値を下回るように、前記パルス伝達関数の係数を計算するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項8記載のモデル同定プログラム。
- 前記パルス伝達関数の分母多項式および分子多項式の各係数で構成されるシルベスタ行列の階数がそのシルベスタ行列の列数と等しくなるように前記パルス伝達関数の次数を決定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項8または9記載のモデル同定プログラム。
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-
2005
- 2005-01-11 JP JP2005003938A patent/JP2006195543A/ja active Pending
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