JP2006195350A - 光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明フィルム(b)の上に複屈折層(a)が積層され、かつ複屈折層(a)は特定の条件を満たし、しかも25℃10%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値と25℃80%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値の差異が、それぞれ20nm以内、50nm以内である光学フィルム。
【選択図】 なし
Description
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。
多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。この偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
本発明の第2の課題は、光学的異方性が小さく、湿度依存性が小さく、波長分散が小さく、光学的なムラの少ないセルロースアシレートフィルムにより作製した光学補償フィルムや偏光板などの光学材料が視野角特性に優れるものであることを示すこと、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することにある。
光学的異方性が小さく、湿度依存性が小さく、波長分散が小さく、光学的なムラが小さいセルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムに用いることによって、偏光板の光学特性を良化できる。また光学補償フィルムの支持体として用いると、光学補償フィルムそのものの光学性能を引き出すことができる。これらの偏光板や光学補償フィルムを液晶表示装置に用いることによってコントラストの良化、色味を改良することができる。
また、前述のような光学特性のフィルムであっても、液晶表示装置に使用した場合に、例えば、広い視野角におけるコントラストが優れるという効果を奏するが、一方では、虹ムラが発生するという問題もあった。
本発明によれば、下記の光学フィルム、偏光板、液晶表示装置が提供され、上記課題が解決される。
1.透明フィルム(b)の上に複屈折層(a)が積層された光学フィルムであって、かつ複屈折層(a)は下記数式(I)、(II)の条件を満たし、かつ25℃10%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値と25℃80%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値の差異が、それぞれ20nm以内、50nm以内であることを特徴とする光学フィルム。
数式(I):1<(nx−nz)/(nx−ny)
数式(II):0.0005≦Δn(a)≦0.5
(数式(II)において、Δn(a)は、下記数式で表される複屈折層(a)の複屈折率であり、数式(I)および下記数式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ複屈折層(a)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示す。ここで、X軸は複屈折層(a)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は前記面内において、X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸はX軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
Δn(a)=[(nx+ny)/2]−nz)
2.Re(λ)およびRth(λ)が下記数式(I')をみたすことを特徴とする上記1に記載の光学フィルム。
数式(I'):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
(式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
3.Re及びRthの面内ばらつきが下記数式(III)及び(IV)を満たすことを特徴とする上記1または2に記載の光学フィルム。
(III):|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3
(IV) :|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5
(式中、Re(MAX)、Rth(MAX)は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は最小値である。)
4.Re(λ)およびRth(λ)が、下記数式(V)及び(VI)をみたすセルロースアシレートフィルムとの積層体であることを特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載の光学フィルム。
数式(V) :0≦Re(630)≦10、かつ|Rth(630)|≦25
数式(VI):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
(式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
5.セルロースアシレートフィルムが、フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記数式(VII)及び(VIII)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする上記4に記載の光学フィルム。
数式(VII):(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
数式(VIII) :0.01≦A≦30
(ここで、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)を表し、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)を表す。なお、Aはフィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。)
6.セルロースアシレートフィルムが、アシル置換度が2.85〜3.00のセルロースアシレートに、Re(λ)およびRth(λ)を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする上記4に記載の光学フィルム。
7.セルロースアシレートフィルムが、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする上記4に記載の光学フィルム。
8.セルロースアシレートフィルムが、フィルムの膜厚が10〜120μmであることを特徴とする上記4に記載の光学フィルム。
9.透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)が積層されていることを特徴とする上記1乃至8のいずれかに記載の光学フィルム。
10.複屈折層(a)を形成する材料が、非液晶性材料であることを特徴とする上記1乃至9のいずれかに記載の光学フィルム。
11.非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする上記11に記載の光学フィルム。
12.収縮性を有する透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明フィルム(b)の収縮に伴い前記塗工膜を収縮させることにより得られることを特徴とする上記9乃至11のいずれかに記載の光学フィルム。
13.加熱により透明フィルム(b)を収縮させることを特徴とする上記12に記載の光学フィルム。
14.透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明フィルム(b)と塗工膜とを共に延伸することによって得られることを特徴とする上記9乃至13のいずれかに記載の光学フィルム。
15.さらに、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方を含む上記9乃至15のいずれかに記載の光学フィルム。
16.最外層に、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方が積層された上記9乃至15のいずれかに記載の光学フィルム。
17.上記1乃至8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、又は上記9乃至16のいずれかに記載の光学フィルムを少なくとも1枚、偏光子の保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。
18.液晶セルおよび光学部材を含み、液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、光学部材が、上記1乃至16のいずれかに記載の光学フィルムまたは上記17に記載の偏光板であることを特徴とする液晶パネル。
19.液晶パネルを含む液晶表示装置であって、液晶パネルが上記18記載の液晶パネルであることを特徴とする液晶表示装置。
20.上記1〜16に記載の光学フィルム及び上記17に記載の偏光板、のいずれかを有することを特徴とする液晶表示装置。
21.上記1〜16のいずれかに記載の光学フィルム及び上記17に記載の偏光板、のいずれかを有することを特徴とするVA液晶表示装置。
22.液晶セルの上下両側に偏光板を有する上記21に記載のVA液晶表示装置において、少なくとも片側の偏光板のセル側に上記1〜16のいずれかに記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
発明の光学補償フィルム、偏光板を使用すれば、斜めからの色味変化が少なく、画面上のムラが少なく、さらには表示性能の湿度依存性にも優れ、また、虹ムラの発生も抑制された表示品位に優れる薄型の液晶表示装置が実現できる。さらに、サーモ後のパネルムラも低減した表示品位に優れる薄型の液晶表示装置が実現できる。
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
次に上述のセルロースを原料に製造され、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも好ましく用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期は、ドープ作製工程において何れの添加剤を添加しても良く、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
セルロースアシレート溶液は、本発明のセルロースアシレートフィルムの光学的異方性、とくにフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記数式(ii)、(iii)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが好ましい。
数式(ii) :(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
数式(iii):0.01≦A≦30
上記数式(ii)、(iii)は
数式(ii) :(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
数式(iii):0.05≦A≦25
であることがより好ましく、
数式(ii) :(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
数式(iii):0.1≦A≦20
であることがさらに好ましい。
ここで、Rth(A)は、Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)であり、
Rth(0)は、Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)であり、
Aは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。 本発明者らは、鋭意検討した結果、フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、Re及びRthがゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0ないし7である化合物が好ましい。LogP値が上記範囲であると、セルロースアシレートとの相溶性が十分ありフィルムの白濁や粉吹きが生じない、親水性が適度でありフィルムが耐水性を有する等の利点がある。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール−水分配係数(LogP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.- Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のLogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることがさらに好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
一般式(13)の化合物について説明する。
R1、R2およびR3の置換基としては、フッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。
また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のものが特に好ましい。アルキル基の好ましい具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t-オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルが挙げられる。
アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの、例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルが特に好ましい。
一般式(13)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物(以下波長分散調整剤ともいう)について説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムのRthの波長分散を良化させるためには、下記式(iv)で表されるRthの波長分散ΔRthを低下させる化合物を、下記数式(v)、(vi)を満たす範囲で少なくとも一種含有することが好ましい。
数式(iv):ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|
数式(v) :(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
数式(vi):0.01≦B≦30
上記数式(v)、(vi)は
数式(v):(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
数式(vi):0.05≦B≦25
であることがより好ましく、
数式(v):(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
数式(vi):0.1≦B≦20
であることがさらに好ましい。
ここで、
Rth(400)は、400nmにおけるRth(nm)を意味し、
Rth(700)は、700nmにおけるRth(nm)を意味し、
ΔRth(B)は、ΔRthを低下させる化合物をB質量%含有したフィルムのΔRth(nm)を意味し、
ΔRth(0)は、ΔRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのΔRth(nm)を意味し、
Bは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)
である。
上記の波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環を、Q2は芳香族環を表す。)
Q1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q2であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては、例えば、
アルキル基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。〕、
アルケニル基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。〕、
アルキニル基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。〕、
アリール基〔好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。〕、
置換又は未置換のアミノ基〔好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。〕、
アルコキシ基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。〕、
アリールオキシ基〔好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。〕、
アシル基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。〕、
アルコキシカルボニル基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。〕、
アリールオキシカルボニル基〔好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。〕、
アシルオキシ基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。〕、
アシルアミノ基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。〕、
アルコキシカルボニルアミノ基〔好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。〕、
アリールオキシカルボニルアミノ基〔好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。〕、
スルホニルアミノ基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。〕、
スルファモイル基〔好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。〕、
カルバモイル基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。〕、
アルキルチオ基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。〕、
アリールチオ基〔好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。〕、
スルホニル基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。〕、
スルフィニル基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。〕、
ウレイド基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。〕、
リン酸アミド基〔好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。〕、
ヘテロ環基〔好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。〕、
シリル基〔好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる〕、
その他、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子〔例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子〕、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基などが挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
R1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
Q1およびQ2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
Q1およびQ2で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
Q1およびQ2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q1およびQ2で表される芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
Q1およびQ2は、更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
置換基Tとしては、前述した一般式(101)の置換基Tがそのまま適用されるが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Q1およびQ2で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
Q1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、C1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
R3およびR8として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、C1〜20のアルキル基、C0〜20のアミノ基、C1〜12のアルコキシ基、C6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、C1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
X3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
上記の光学的に異方性を低下する化合物、波長分散調整剤の他に、本発明のセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45%であることが好ましい。より好ましくは10〜40%であり、さらに好ましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよびエーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
その他、本発明のセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などの公開公報に記載されている。これらの公開公報によると、本発明のセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
[溶解工程]
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRe値の差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が0〜20nmであることが好ましい。より好ましくは0〜15nmであり、さらに好ましくは0〜10nmである。また、Rth値の差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜30nmである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。4%以上の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎてしまい好ましくない。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。 また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めた。
試料100×100mmを用意し、固定一軸延伸機を用いて温度140℃の条件下で機械搬送方向(MD方向)または垂直方向(TD方向)に延伸を行った。延伸前後における各試料の正面レターデーションは自動複屈折計KOBRA21ADHを用いて測定した。遅相軸の検出は上記のレターデーション測定の際に得られる配向角から決定した。延伸によってReの変化が小さいことが好ましく、具体的にはRe(n)をn(%)延伸したフィルムの面内正面レターデーション(nm)、Re(0)を延伸していないフィルムの面内正面レターデーション(nm)としたときに、|Re(n)−Re(0)|/n≦1.0を満たすことが好ましく、|Re(n)−Re(0)|/n≦0.3を満たすことがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルムに用いる場合、偏光子が機械搬送方向(MD方向)に吸収軸を持つため、セルロースアシレートフィルムは遅相軸がMD方向近傍またはTD近傍にあることが好ましい。遅相軸が偏光子と平行または直交させることにより光漏れや色味変化を低減できる。近傍とは、遅相軸とMDまたはTD方向が0〜10°、好ましくは0〜5°の範囲にあることを表す。
本発明のセルロースアシレートフィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施した。
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計〔KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)〕において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)と、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°としてサンプルを10°ごとに50°まで傾斜させて波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を基に、KOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。セルロースアシレートの平均屈折率は1.48である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、波長を変えてエリプソメーターM−150(日本分光(株)製)において同様に測定した。
試料70mm×100mmを、25℃、65%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA−21DH、王子計測(株))にて、垂直入射における入射角を変化させた時の位相差より分子配向軸を算出した。
(軸ズレ)
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))で軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは次の式を満たすことが好ましい。
|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3、かつ|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5
[式中、Re(MAX)、Rth(MAX)は、任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は、最小値である。]
本発明のセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明に用いる透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由堆積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることが好ましい。より好ましくは50°以下であり、45°以下であることがさらに好ましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは、前述のように、複屈折層(a)と透明フィルム(b)とを含む光学フィルムであって、透明フィルム(b)の上に複屈折層(a)が積層されており、かつ、前記数式(I)から(II)の全ての条件を満たすことを特徴とする。
また、本発明において、前記複屈折層(a)は、前記数式(I)を満たすことが必要である。本発明の光学フィルムの前記複屈折層(a)が、1<(nx−nz)/(nx−ny)を満たせば、厚み方向における複屈折率が、フィルム面内の複屈折率よりも大きくなるため、例えば、液晶セルの光学補償に優れたものとなる。また、好ましくは、1<(nx−nz)/(nx−ny)≦100の範囲である。前記値が100以下であれば、例えば、本発明の光学フィルムを液晶表示装置に用いた場合に、十分なコントラスト比を得ることができ、視野角特性がより一層優れるからである。さらに、前記(nx−nz)/(nx−ny)の値は、光学補償に優れることから、例えば、1<(nx−nz)/(nx−ny)≦80の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦50である。また、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置に使用する場合には、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦30であることが特に好ましい。
なお、図1の概略図に、複屈折層(a)10における屈折率(nx,ny,nz)の光軸方向を矢印で示す。屈折率nx,ny,nzは、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、図示のように、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物が挙げられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物が挙げられる。
また、一般式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは0または1の整数である。
式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等が挙げられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
また、一般式(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1〜9アルコキシカルボニル基、C1〜9アルキルカルボニルオキシ基、C1〜12アリールオキシカルボニル基、C1〜12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1〜12アリールカルバモイル基、ならびに、C1〜12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせが挙げられる。tは0から4までの整数であり、zは0から3までの整数である。
前記一般式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
第1の製造方法は、面内において一方向に収縮性を示す透明基板上に、直接、複屈折層の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明基板の収縮に伴い塗工膜を収縮させる方法である。このような方法によって、収縮した透明基板は透明フィルム(b)となり、収縮した塗工膜は複屈折層(a)となって、透明フィルム(b)上に、複屈折層(a)が直接固定化された本発明の光学フィルムが得られる。このように、透明フィルム(b)上に、複屈折層(a)が直接積層され、かつ条件(I)及び(II)を全て満たす本発明の光学フィルムは、例えば、従来のように透明フィルム上の複屈折層を他の基板に転写してから使用する必要がなく、そのまま視覚補償フィルム等として使用することができる。なお、基板の収縮性は、例えば、基板に予め加熱処理を施すこと等によって付与することができる。
また、ポリマー溶液は、例えば、形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
(位相差値Δnd、配向軸精度の測定)
位相差計(王子計測機器社製、商品名KOBRA21ADH)を用いて測定した。
王子計測機器社製の商品名KOBRA21ADHを用いて、590nmにおける屈折率を測定した。
アンリツ製商品名デジタルマイクロメーターK−351C型を使用して測定した。
本発明の光学フィルムは面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値の差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が0〜20nmであることが好ましい。より好ましくは0〜15nmであり、さらに好ましくは0〜10nmである。
また、Rth値の差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましく、より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜30nmである。
これは、使用するセルロースアシレートフィルムの湿度依存性を良化させることで達成できる。
さらに、光学フィルムを液晶表示装置に使用する場合、長期間使用することの強制評価として、湿熱サーモを行うことが多いが、これまではサーモ取り出し後にパネル画面内に不均一なムラが発生することが多かった。ところが、本発明の、面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthの湿度による変化が小さい光学フィルムを使用すると、サーモ取り出し後にもムラが発生しないことがわかった。これはサーモ中、および前後での湿度変化があっても、光学フィルムのRe、Rthの変化が少ないためであると考えられる。
セルロースアシレートフィルムの場合と同様、Re、Rthの波長分散を測定した。
|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
であることが好ましく、
さらには|Re(400)−Re(700)|≦8かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦30
であることが好ましい。
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
これは、使用するセルロースアシレートフィルムの波長分散性を制御することで達成できる。
前述のように、光学フィルムを使用したパネルを湿熱サーモすると、これまではサーモ取り出し後でパネル画面の色味が変化している場合があった。ところが、本発明の、波長分散が制御された光学フィルムを用いると、サーモ取り出し後でも色味変化が起こらなくなった。
本発明の光学フィルムは次の式を満たすことが好ましい。
|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3、かつ|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5
さらに好ましくは、
|Re(MAX)−Re(MIN)|≦2、かつ|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦4
であることが好ましい。
[式中、Re(MAX)、Rth(MAX)−は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は最小値である。]
これも、使用するセルロースアシレートフィルムのレターデーションの面内ばらつきを小さくすることで達成できる。
このような偏光板の構成は、本発明の光学フィルムを有していれば、特に制限されないが、例えば、図2または図3に示すようなものが例示できる。図2および図3は、それぞれ本発明の積層偏光板の例を示す断面図であり、両図において同一部分には同一符号を付している。なお、本発明の偏光板は、以下の構成に限定されるものではなく、さらに他の光学部材等を含んでいてもよい。
そして、光学フィルム1は、前述のように複屈折層(a)と透明フィルム(b)との積層体であるため、いずれの表面が偏光子に面してもよいが、例えば、以下のような理由から、光学フィルム1の透明フィルム(b)側が偏光子2に面するように配置することが好ましい。このような構成であれば、光学フィルム1の透明フィルム(b)を、積層偏光板における透明保護層として兼用できるからである。すなわち、偏光子の両面に透明保護層を積層する代わりに、偏光子の一方の面には透明保護層を積層し、他方の面には、透明フィルムが面するように光学フィルムを積層することによって、透明フィルムが偏光子の他方の透明保護層の役割も果たすのである。このため、より一層薄型化された偏光板を得ることができる。
二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。 また、偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
また、保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d
また、透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、処理は従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D−BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。
これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。
粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
[実施例1]
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
酢化度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記のマット剤溶液組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液D 10.3質量部
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤については下記表4に示すものを用いた。
光学的異方性を低下する化合物 49.3質量部
波長分散調整剤 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液A 12.8質量部
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12%、1.8%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μmであった。
添加剤溶液中の光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤の種類及び量を表1の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアセテートフィルム試料2〜18を作製した。表1には試料1作製の溶液組成も記入した。これら試料の相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)を測定したところ、本発明の光学的異方性低下剤を添加していない比較試料15、16および光学的異方性低下剤の代わりに可塑剤ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)を添加した比較試料17、18においてはΔRthが30nm以下にならず光学的異方性の湿度依存性が大きかった。
一方、本発明の光学的異方性低下剤を含む試料2〜14においてはΔRthが0〜30nmの範囲にあり、湿度依存性が低下していることを確認した。さらに、Re、Rthの幅方向の分布も小さく、光学ムラの少ないものであった。またこれら試料の25℃80%RHにおける平衡含水率を測定したところ、比較試料15以外においてはいずれも4%以下であり本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤の添加によりセルロースアシレートフィルムが疎水化されていることが確認できた。さらに、これら試料の60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)を測定したところ、比較試料15以外においてはいずれも400g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であり、また比較試料16、17と比較して本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤を添加した試料1〜14はいずれも透湿度が良化していることが確認できた。また、比較試料18以外の試料ではいずれもフィルムの白濁はなく、十分に透明なフィルムが作成できたが、比較試料18は添加化合物の総量がセルロースアシレートに対して49%と高く、5〜45%の範囲を超えており、この場合はフィルムが白濁して化合物が析出し(泣き出し)、透明性を持ったセルロースアシレートフィルムとしては評価できなかった。
また、試料12と13においては、80℃、90%RHの条件に48時間放置した際の質量変化を測定したところ、試料12は−0.12%、試料13は−0.02%であった。 波長分散調整剤としてベンゾトリアゾール系化合物であるUV−21、UV−22、UV−23を用いたが、分子量が320以下であるUV−23(分子量315.5)を含まない試料123の方が試料12よりも保留性の点で有利であることが確認できた。
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)とから合成された下記式(6)で表される質量平均分子量(Mw)70,000のポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して、15質量%のポリイミド溶液を調製した。なお、ポリイミドの調製等は、文献(F. Li et al. Polymer40 (1999) 4571−4583)の方法を参照した。一方、実施例1の、厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム1を、固定端横延伸によって175℃で1.3倍の横延伸して、厚み75μmの延伸TACフィルムを作製した。そして、この延伸TACフィルム上にポリイミド溶液を塗工し、これを100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
また、フィルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
下記式(18)で表されるポリエーテルケトン(Mw:500,000)をメチルイソブチルケトンに溶解し、20質量%のワニスを調製した。このワニスを、実施例2と同様の延伸TACフィルム1上に塗工し、これを100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み10μm、Δn(a)約0.02のポリエーテルケトンフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。また、フィルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物と、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルとから合成されたポリイミド(Mw:30,000)を、シクロペンタノンに溶解して、20質量%ポリイミド溶液を調製した。この溶液を、実施例1の厚み80μmの未延伸TACフィルム1上に塗布し、130℃で5分乾燥した後、150℃で縦一軸延伸により10%の延伸を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み5μm、Δn(a)約0.025のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。また、フィルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとから合成されたポリイミド(Mw:100,000)をシクロヘキサノンに溶解し、15質量%ポリイミド溶液を調製した。この溶液を、実施例1の厚み80μmの未延伸TACフィルム1上に塗布し、130℃で5分乾燥した後、150℃で縦一軸延伸により10%の延伸を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。また、フィルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
実施例1と同様のポリイミドを、メチルイソブチルケトンに溶解して、25質量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様の実施例1の延伸TACフィルム1上に塗工し、160℃で5分間乾燥を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。また、フィルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
実施例1と同様のポリイミド溶液を、実施例1の厚み80μmの未延伸TACフィルム1上に塗工し、100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み4μm、Δn(a)約0.025のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。このフィルムは、湿度依存性、波長分散性に優れ、光学性能の面内ばらつきが小さいものであった。また、nx≒ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。また、フイルム1のかわりに実施例1のフィルム2乃至14を用いた場合についても同様であった。
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例2と同様にして、光学フィルムを作製した。
(比較例2)
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例3と同様にして、光学フィルムを作製した。
(比較例3)
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例4と同様にして、光学フィルムを作製した。
(比較例4)
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例5と同様にして、光学フィルムを作製した。
(比較例5)
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例6と同様にして、光学フィルムを作製した。
(比較例6)
TACフィルムを実施例1で作製した比較試料フィルム15乃至18にした以外は実施例7と同様にして、光学フィルムを作製した。
そして、実施例1〜7および比較例1〜6で得られた光学フィルムを、市販の偏光板(日東電工(株)製、商品名「HEG1425DU」)と、アクリル系粘着剤を介して積層し、光学補償層一体型の積層偏光板を作製した。なお、偏光板と、光学フィルムの透明フィルム(b)基材とが面するように積層した。さらに、この積層偏光板を液晶セルのバックライト側に、偏光板が外側になるように接着して液晶表示装置を作製した。
そして、これらの液晶表示装置の表示特性を評価した。その結果、各実施例の光学フィルムを用いた場合、斜めから見た場合でも正面から見た場合と色味の差が小さいこと、また、画面内にムラが少ないことが示された。
(斜めから見た色味変化)
ほとんど正面と色味が同じ :○
視認できるほど色味が異なる :△
色味が異なり鑑賞しにくい :×
(画面内のムラ)
3cm四方以下の薄いムラが1点以下ある :○
3cm四方以下の薄いムラが1点以上3点以下ある :△
3cm四方以上のムラが3点以上ある :×
結果より、波長分散性に優れた実施例のフィルムを使用した液晶表示装置は斜めから見ても色味変化しないことが確認できた。また、Re、Rthの光学ムラの小さい実施例のフィルムを使用した液晶表示装置は、画面内のムラも少ないことが確認できた。さらに、実施例では、正面と斜視の広い視野角範囲において、コントラストと表示の均質性に優れるだけでなく、さらに虹ムラの発生も抑制された。各実施例の中でも、特に、条件(II)が100以下である実施例1〜実施例6の光学フィルムの場合は、虹ムラの発生が十分に回避され、極めて優れた表示品位を示した。
(表示性能の湿度依存性)
湿度による表示性能に差が感じられない :○
表示性能に差があるが、気にならない :△
表示性能に大きく差があり、非常に気になる :×
湿度による、Re、Rthの性能に差が小さい実施例のフィルムを用いた液晶表示装置は、25℃10%RHの雰囲気下と25℃80%RHの雰囲気下での表示性能に差が小さく、比較例のフィルムを使用した場合より優れていることが確認できた。
(湿熱サーモによる表示性能の変化)
湿熱サーモしても表示ムラ(光漏れ・色ムラ等)がない :○
画面の一部に3cm四方以下の光漏れ・色ムラがある :△
画面全体に3cm四方以上の光漏れ・色ムラがある :×
湿度による、Re、Rthの性能に差が小さい実施例のフィルムを用いた液晶表示装置は、湿熱サーモしても表示ムラがなく、比較例のフィルムを使用した場合より優れていることが確認できた。
2 偏光子
3 保護層
10複屈折率層(a)
20,30積層偏光板
21液晶セル
40液晶パネル
Claims (22)
- 透明フィルム(b)の上に複屈折層(a)が積層された光学フィルムであって、かつ複屈折層(a)は下記数式(I)、(II)の条件を満たし、かつ25℃10%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値と25℃80%RH環境下で測定したReレターデーション値及びRthレターデーション値の差異が、それぞれ20nm以内、50nm以内であることを特徴とする光学フィルム。
数式(I):1<(nx−nz)/(nx−ny)
数式(II):0.0005≦Δn(a)≦0.5
(数式(II)において、Δn(a)は、下記数式で表される複屈折層(a)の複屈折率であり、数式(I)および下記数式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ複屈折層(a)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示す。ここで、X軸は複屈折層(a)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は前記面内において、X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸はX軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
Δn(a)=[(nx+ny)/2]−nz) - Re(λ)およびRth(λ)が下記数式(I')をみたすことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
数式(I'):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
(式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。) - Re及びRthの面内ばらつきが下記数式(III)及び(IV)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
(III):|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3
(IV) :|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5
(式中、Re(MAX)、Rth(MAX)は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は最小値である。) - 積層体を構成する透明フィルム(b)のRe(λ)及びRth(λ)が、下記数式(V)及び(VI)を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学フィルム。
数式(V) :0≦Re(630)≦10、かつ|Rth(630)|≦25
数式(VI) :|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
(式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。) - セルロースアシレートフィルムが、フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記数式(VII)及び(VIII)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
数式(VII):(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
数式(VIII) :0.01≦A≦30
(ここで、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)を表し、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)を表す。なお、Aはフィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。) - セルロースアシレートフィルムが、アシル置換度が2.85〜3.00のセルロースアシレートに、Re(λ)およびRth(λ)を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートフィルムが、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートフィルムが、フィルムの膜厚が10〜120μmであることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
- 透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)が積層されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光学フィルム。
- 複屈折層(a)を形成する材料が、非液晶性材料であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の光学フィルム。
- 非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする請求項11に記載の光学フィルム。
- 収縮性を有する透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明フィルム(b)の収縮に伴い前記塗工膜を収縮させることにより得られることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の光学フィルム。
- 加熱により透明フィルム(b)を収縮させることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルム。
- 透明フィルム(b)上に、直接、複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明フィルム(b)と塗工膜とを共に延伸することによって得られることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の光学フィルム。
- さらに、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方を含む請求項9乃至15のいずれかに記載の光学フィルム。
- 最外層に、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方が積層された請求項9乃至15のいずれかに記載の光学フィルム。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、又は請求項9乃至16のいずれかに記載の光学フィルムを少なくとも1枚、偏光子の保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。
- 液晶セルおよび光学部材を含み、液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、光学部材が、請求項1乃至16のいずれかに記載の光学フィルムまたは請求項17に記載の偏光板であることを特徴とする液晶パネル。
- 液晶パネルを含む液晶表示装置であって、液晶パネルが請求項18記載の液晶パネルであることを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項1〜16に記載の光学フィルム及び請求項17に記載の偏光板、のいずれかを有することを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の光学フィルム及び請求項17に記載の偏光板、のいずれかを有することを特徴とするVA液晶表示装置。
- 液晶セルの上下両側に偏光板を有する請求項21に記載のVA液晶表示装置において、少なくとも片側の偏光板のセル側に請求項1〜16のいずれかに記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
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