請求項1に記載の発明は、天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の総重量よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の総重量が大きいものである。
これによって、真空断熱材の密度が発泡断熱体よりも大きいので、真空断熱材を用いるほど断熱箱体の重量が増加する。真空断熱材の被覆面積を下方重点となるように配置することで冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させることができ、転倒に対する安定性が向上する。
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
請求項2に記載の発明は、天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の体積よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の体積が大きいものである。
これによって、発泡断熱体よりも密度の大きい真空断熱材の厚みを変えたり、複数枚重ねて使ったりすることで、下方重点となるように真空断熱材を配置でき冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させて転倒に対する安定性が向上する。
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、圧縮機は、天面後方に形成した凹み部内に配設し、最上部断熱区画に回転扉を備え、最下部断熱区画に引出し扉を備えたことを特徴とする。
これによって、下部の引出し扉によって、下部前方に荷重がかかる場合でも、冷凍サイクルの構成機器のうち最も重量の大きい圧縮機を引出し扉の荷重がかかる部分の対角線上である天面後方部に位置させることで、引出し扉を引き出した際の、重心位置の変化を抑制することができ、その結果、転倒に対して安定性を向上させることができる。
また、引出し式貯蔵室を開けた時に貯蔵室構造部品および収納物が断熱箱体外部に位置しても、断熱箱体の重量を増加させることができるので、前方方向への転倒に対して安定性が向上する。
さらにまた、引出し式貯蔵室を取外した状態であっても、断熱箱体の引出し式貯蔵室より下部重量が増加することができるので転倒防止の安定性が向上する。
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、断熱箱体の最下部に引出し扉を有する冷凍室を設け、引出し扉を除いて前記冷凍室周囲の両側面と背面と底面とに前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材を配設したことを特徴とする。
これによって、庫内外の温度差の大きい冷凍室周囲に断熱性能の高い真空断熱材を重点的に配置して、内容積を確保した上で省エネ性を高めると共に、断熱箱体最下部の重量を増加させて転倒防止に対する安定性を向上させることが可能である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、最上部断熱区画が冷蔵温度帯に設定された冷蔵室であり、下部断熱区画の少なくとも一部が前記真空断熱材を配設し冷凍温度帯に設定された冷凍室であることを特徴とする。
これによって、断熱性能の高い真空断熱材を重点的に配置した断熱壁を有する区画に温度差の大きい冷凍室を配置して、効果的に転倒防止と省エネルギー化の両立が図れる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、最上部断熱区画には前記真空断熱材を配設せず、下部断熱区画にのみ前記真空断熱材を配設したことを特徴とする。
これによって、外気温度との温度差の小さい冷蔵温度帯の区画に対しては断熱性の向上に重点を置かず敢えて真空断熱材の配設を行わず、むしろ真空断熱材を配設しないことによる冷蔵庫重心の上部移動化を抑えて転倒防止の実益をとり、一方、外気温度との温度差の大きい冷凍温度帯を有する下部区画に対しては重点的に真空断熱材を配設することにより断熱性向上による省エネルギー化と冷蔵庫重心の下部移動化による転倒防止の双方の実益をとることができ、両区画の温度帯の設計とそれに対する真空断熱材の効果的な配設の組み合わせで、上部区画と下部区画とを併せた冷蔵庫本体としての省エネルギー化と転倒防止の両立を合理的に図ることができる。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材はシート状無機繊維集合体をガスバリア性フィルムによって被覆し、内部を減圧したことを特徴とするので、薄く平面性のよい真空断熱材の構成が可能であり、比較的薄い断熱壁を有する断熱箱体への適用が可能であり、真空断熱材配置の自由度も高い。
また折り曲げや溝つけや異形形状などの加工性に優れるので、断熱箱体への配設自由度が高く、断熱箱体下方部への重点的真空断熱材配設などの適用にたいして効果がある。
また、シート状であるので薄いシートを必要に応じて複数枚構成可能であり、必要に応じた厚みを対応可能であり、真空断熱材の体積を変化させるのに有効である。
また、無機繊維を用いるので真空断熱材内における経時的なガス発生が少なく、断熱箱体の長期信頼性が向上する。
また、請求項8に記載の発明は、請求項3から7のいずれか一項に記載の発明において、最上部断熱区画の回転扉の高さを断熱箱体高さの概ね1/2としたことを特徴とする。
これによって、最上部断熱区画の下端面を断熱箱体の上下方向のほぼ中心に位置させることができる。回転扉は引出し扉に比べて庫内棚の収納物が移動しないので重心の移動が比較的少なくてすむために、断熱箱体の上部半分の重心移動を少なくすることが可能となり、転倒に対して安定性が向上する。
また、請求項9に記載の発明は、請求項3から8のいずれか一項に記載の発明において、回転扉を備えた断熱区画の下方にある引出し扉を備えた下部断熱区画が上下方向に少なくとも2つの引出し構成を有しており、最上段引出しの扉高さは下段引出しの扉高さと比べて小さいことを特徴とする。
これによって、最上段引出し扉高さが最も小さいので内容積や収納容量を最も少なくすることができるので、引出し扉の開放による重心位置の変化が小さくてすむ。また、下段の引出しの内容積や収納容量が比較的に大きくしたので、最上段引出し扉を開放した場合に、より下方の位置に大きな収納物を配置できるので転倒に対して安定化を図ることができる。
また、請求項10に記載の発明は、請求項3から9のいずれか一項に記載の発明において、回転扉を備えた断熱区画の下部にある引出し扉を備えた断熱区画が上下方向に少なくとも2つの引出し構成を有しており、最上段引出しは左右方向に少なくとも2つの引出し構成を有していることを特徴とするので、最上段引出しの各々の扉重量や内容積が小さくできるので、最上段引出し扉の開放による重心位置の変化を更に少なくすることが可能であり、転倒に対する安定化を図ることができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の概略正面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図1において、断熱箱体1は2つの断熱区画に区分されており上部、下部ともに回転扉式とする構成をとり、上を冷蔵室402、下を冷凍室403としている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉が設けられ、上から冷蔵室回転扉405、冷凍室回転扉406である。
冷蔵室回転扉405には扉ポケット34が収納スペースとして設けられており、庫内には複数の収納棚8が設けられてある。
冷凍サイクルは天面上方部450に配設した圧縮機416と凝縮器417、および減圧器であるキャピラリ(図示せず)、さらに庫内側に配設された蒸発器20(図示せず)とを環状に接続して構成されている。
断熱箱体1の天面上方部450に、冷蔵庫の構成部品の中で重量の重い物である圧縮機416や凝縮器417や冷媒配管を収納することで、冷蔵庫は重心位置が高くなり転倒しやすくなるが、冷蔵室402の下端面445(現実には冷蔵室402と冷凍室403を区画する区画壁404の上下方向の中心線445)より下方に真空断熱材425の配設する面積を大きくする、すなわち真空断熱材425を下方に配設する重量を大きくすることにより、冷蔵庫の重心が下方へ移動して転倒防止を可能にする。
この時、真空断熱材425は無機材料を用いるので上部に用いているウレタン等の発泡断熱体415と比べて密度が高いものとなる。発泡断熱体415の密度が20〜50kg/m3であるのに対して真空断熱材425は200〜250kg/m3と少なくとも4倍以上とすることができる。
また、本実施の形態においては、冷蔵庫上段および下段を引出し式の扉のように庫内収納物が冷蔵庫外部に移動しない回転扉式とすることで、重心位置の変化を抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
さらに、各々回転扉は観音開きタイプであれば、扉開口面積に対して扉の大きさを小さくできるので、扉開閉による重心位置の変化をますます抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
さらに、冷蔵室402と比べて冷凍室403の断熱壁厚さを厚くすることで、同等内容積を確保する場合に、省エネ性と転倒に対する安定性を両立して向上させることができる。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図2において、断熱箱体501は2つの断熱区画に区分されており上部に回転扉、下部に引出し扉を備えた構成をとり、上を冷蔵室502、下を冷凍室503としている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉が設けられ、上から冷蔵室回転扉505、冷凍室引出し扉506である。
冷蔵室回転扉505及び冷凍室引出し扉506には、冷蔵室棚560、冷凍室貯蔵ケース561が収納スペースとして設けられてある。
冷凍サイクルは第一の天面部550に配設した凝縮器517と、第一の天面部550の冷蔵庫後方で第一の天面部550よりも低い位置に形成された第二の天面部551に配設した圧縮機516と、減圧器であるキャピラリ(図示せず)、さらに庫内側に配設された蒸発器20とを環状に接続して構成されている。
ここで、冷蔵庫の下段部に設けられた冷凍室引出し扉506を引き出した際、冷凍室貯蔵ケース561内の収納物が冷蔵庫前方に移動するため、冷蔵庫の重心位置が大きく前方に移動し、冷蔵庫の転倒の可能性が高くなる。
また、この転倒の可能性は、本実施の形態のように、冷凍室貯蔵ケース561の最奥部まですべて引き出せるようなタイプの冷蔵庫の場合は、さらに冷蔵庫の転倒の可能性が増す。
またさらに、冷凍室貯蔵ケース561もしくは冷凍室引出し扉506が断熱箱体501とビスなどによりレール部材を仲介して、しっかりと固定されており最奥部まで引き出し可能とした場合には、引き出された冷凍室引出し扉506や冷凍室貯蔵ケース561にかけられた荷重が断熱箱体501へと伝わりやすいので、冷蔵庫が転倒しやすくなる。
しかしながら、本実施の形態の冷蔵庫では、真空断熱材525を下方に配設する重量を大きくし、かつ下部の引出し式貯蔵室によって、下部前方に荷重がかかる場合でも、冷凍サイクルの構成機器のうち最も重量の大きい圧縮機516を引出し式貯蔵室の荷重がかかる部分の対角線上である天面後方部に位置させることで、引出し式の扉を引き出した際の、重心位置の変化を抑制することができ、その結果、転倒に対して安定性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、各貯蔵室に備えられた扉以外の断熱箱体501のみでも、真空断熱材525を下方に配設する重量を大きくすることで、断熱箱体501の重心を下方に移動させることができる。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図4は真空断熱材の断面図を示すものであり、図5は冷蔵庫の正面扉部を除く面展開図を示すものであり、図6は傾斜時の冷蔵庫概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図3において、断熱箱体1はABSなどの樹脂体を真空成型した内箱22とプリコート鋼板などの金属材料を用いた外箱23とで構成された空間に発泡断熱体24を注入してなる断熱壁を備えている。発泡断熱体24はたとえば硬質ウレタンフォームやフェノールフォームやスチレンフォームなどが用いられる。発泡材としてはハイドロカーボン系のシクロペンタンを用いると、温暖化防止の観点でさらによい。
また、発泡前の内箱22と外箱23とで構成される空間には真空断熱材25が外箱側に接着部材(図示せず)を用いて密着貼付けされている。また、真空断熱材25は断熱箱体1の璧厚内に配設するために薄い平面形状のものが必要となる。さらに、ホットメルトなどの接着部材は接着部に空気が混入しないように真空断熱材25貼付け面に全面塗布されている。真空断熱材25は発泡断熱体24と一体に発泡されて断熱箱体1を構成しており、発泡断熱体24と比べて5倍〜20倍の断熱性能を有する真空断熱材25により性能向上させるものである。
図4に示すように、真空断熱材25は内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体26とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム27で構成され、内部を減圧してなる平面状の断熱材である。ガスバリア性フィルム27は減圧後に溶着部28を溶着して減圧状態を維持している。溶着部28を要するフィルム端部は他辺と比べて長くなるので折り返して接着部材(図示せず)で固定してある。
真空断熱材25は無機材料を用いるので発泡断熱体24と比べて密度が高いものとなる。発泡断熱体24の密度が20〜50kg/m3であるのに対して真空断熱材25は200〜250kg/m3と少なくとも4倍以上とすることができる。
また、シート状セラミックファイバー成形体26は所定厚さのものを複数積層して使用することで容易に厚みを変更可能である。
断熱箱体1は複数の断熱区画に区分されており最上部断熱区画の扉を回転扉式、最下部断熱区画の扉を引出し式とする構成をとってある。最上部から冷蔵室2、並べて設けた引出し式の切替室29および製氷室30と、引出し式の野菜室4と最下部に引出し式の冷凍室3となっている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉がガスケット31を介して設けられている。上から冷蔵室回転扉5、切替室引出し扉32、製氷室引出し扉33、野菜室引出し扉7、冷凍室引出し扉6である。
冷蔵室回転扉5には扉ポケット34が収納スペースとして設けられており、庫内には複数の収納棚8が設けられてある。また冷蔵室2の最下部には貯蔵ケース35が設けてある。
冷蔵室2は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に冷蔵温度帯に設定されており、通常1〜5℃で設定されている。また、貯蔵ケース35は肉魚などの保鮮性向上のため比較的低めの温度、たとえば−3〜1℃で設定される。野菜室4は冷蔵室2と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。低温にすれほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
切替室29はユーザーの設定により温度設定を変更可能であり、冷凍室温度帯から冷蔵、野菜室温度帯まで所定の温度設定にすることができる。また、製氷室30は独立の氷保存室であり、自動製氷装置(図示せず)を備えて、氷を自動的に作製、貯留するものである。氷を保存するために冷凍温度帯であるが、氷の保存が目的であるために冷凍温度帯よりも比較的高い冷凍温度設定も可能である。
冷凍室3は冷凍保存のために冷凍温度帯に設定されており、通常−22〜−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30や−25℃の低温で設定されることもある。
断熱箱体1は天面後方部を窪ませた凹み部10を設けてある。また凹み部10の下方背壁面に第二の凹み部36を設けた。
冷凍サイクルは凹み部10に配設した圧縮機16と凝縮器(図示せず)と減圧器であるキャピラリと蒸発器20とを環状に接続して構成されている。蒸発器20は冷却ファン21で強制対流熱交換させている。凝縮器(図示せず)はファンを用いて強制空冷してもよいし、外箱23の内側に熱伝導よく貼り付けられた自然空冷タイプであってもよいし、各室断熱扉体間の仕切りに配設して防滴防止を行うための高圧配管を組み合わせてもよい。
また電動三方弁などの流路制御手段を用いて、区画構成や温度設定の構成に応じた複数の蒸発器を使い分けたり、複数のキャピラリを切替たり、圧縮機16の停止中にガスカットなどしてもよい。
冷凍サイクルを動作させる制御基板37は第二の凹み部36に取外し可能なカバーで密閉して配置されている。さらに凹み部10も背面カバー15で取外し可能に略密閉されている。
また、冷凍サイクルの構成機器である蒸発器20は冷却ファン21と共に、中段に位置する野菜室4の背面部に設けられている。これにより最下段の貯蔵室である冷凍室3の内容積と奥行きを最大限に大きくすることが可能である。
なお、中段の野菜室4と最下段の冷凍室3は逆の構成となれば、野菜室4の内容積と奥行きを最大限に大きくすることが可能となる。
また、真空断熱材25の配設位置について図5の断熱箱体1の展開図を元に説明する。真空断熱材25は断熱箱体1の両側面39及び背面40と底面41に貯蔵室の側面および背面のほぼ全面を覆うように貼付けてあり各面下部を基準に上部に向かって配設している。最上部に位置する回転扉式貯蔵室である冷蔵室2の下端面を示すA−A´線(実際には最上部断熱区画の下端面を示すので、冷蔵室2と下部貯蔵室である切替室29,製氷室30とを区画する区画壁の上下方向の中心線を指す)から上部に貼りつけた真空断熱材25の合計面積を斜線部で示している。真空断熱材25は斜線部と比較して無印部の合計面積の方が大きくなるように貼付け位置と大きさを決定している。
断熱箱体1の背面40は圧縮機16を配設した凹み部10と、制御基板37を配置した第二の凹み部36が設けてあり真空断熱材25は第二の凹み部36の高さまで配設してある。両側面39に用いる真空断熱材25も合理化のために背面と同一寸法の仕様としている。底面41は冷蔵庫の設置支持点となるキャスター42が4点設けられており、真空断熱材25はこれを避けた寸法で外箱23側に最大限貼りつけられている。キャスター42は安定性を向上させるために最大限キャスター間寸法を拡大している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板37からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機16の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて放熱して凝縮液化し、キャピラリで減圧されて低温低圧の液冷媒となり蒸発器20に至る。
冷却ファン21の動作により、庫内の空気と熱交換されて蒸発器20内の冷媒は蒸発気化する。低温の冷気をダンパ(図示せず)などで分配することで各室の冷却を行う。また複数の蒸発器や減圧器を用いる場合は流路制御手段により必要な蒸発器20へ冷媒が供給される。蒸発器20を出た冷媒は圧縮機16へと吸い込まれる。このようにサイクル運転を繰り返すことで庫内の冷却が行われる。
次に、転倒防止の安定性について説明する。
断熱箱体1の天面後方部の凹み部10に、冷蔵庫の構成部品の中で比較的重量物である圧縮機16や凝縮器(図示せず)や冷媒配管を収納することで、冷蔵庫は重心位置が高くなり転倒しやすくなる。
図6に示すように、床に対してキャスター42などで通常4点支持されている冷蔵庫は、各支持点から重力方向に伸ばした4本の垂線43の外側に重心が位置すれば転倒の可能性が生じる。また、重心位置が高くなればなるほど冷蔵庫の設置傾きや外力による冷蔵庫傾斜に対して、少ない傾斜角度44で転倒する可能性がある。
冷蔵庫の重心位置は庫内に収納物を入れて使用するために、収納状況によって異なるために特定することができないが、以下のように転倒防止を図るものである。
また、使い勝手の面から上段を回転扉式、下段を引出し式の貯蔵室とすると、上段貯蔵室である冷蔵室2の下端面45はおおよそ700〜1200mmの範囲にあり、これ以上高いと引出し式貯蔵室が非常に使いにくくなってしまう。また引出し式貯蔵室の間口寸法の取り合いから約1000mmとしていることも多い。
さらにまた、冷蔵庫奥行き寸法はおおむね600〜700mmであり、冷蔵庫奥行き寸法の1/2の中心線46と冷蔵室2の下端面との交点47を定め、この交点を冷蔵庫傾斜に対してより安定化させることで転倒に対して安定性の向上を図ることができる。
キャスター42の位置を冷蔵庫外郭から50mm内側とし中心線46との距離を250mmとすると、最も高い冷蔵室2下端面45の位置1200mmに対して床の傾斜角度44が約12°で支持点から伸ばした重力方向の垂線43の外側に交点47が位置することになる。
よって、冷蔵室2の下端面45より下方に真空断熱材25の配設する面積が大きいので重量を交点47に対して安定方向に増加させることが可能であり、本実施の形態の冷蔵庫では、真空断熱材を下方に配設する重量を大きくすることで冷蔵庫が設置される際に想定される設置角度が0°〜10°の範囲内においては、冷蔵庫の重心が支持点から伸ばした重力方向の垂線43の内側に位置させることができる。
また、冷蔵庫上段を庫内収納物が冷蔵庫外部に移動しない回転扉式とすることで、最も影響の有る上段部の重心位置の変化を抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
さらに、扉の開け閉めや取外しなどにより、引出し式貯蔵室の区画は重量変動が大きい。この重量変動が大きい引出し貯蔵室周囲の断熱璧に重点的に真空断熱材25を配設することで断熱箱体1の本体重量が増加し、重量変動を低減することができ、転倒に対して安定させることができる。
また、本実施の形態の冷蔵庫では、真空断熱材25を下方に配設する重量を大きくし、かつ下部の引出し式貯蔵室である冷凍室3,野菜室4等によって、下部前方に荷重がかかる場合でも、冷凍サイクルの構成機器のうち最も重量の大きい圧縮機16を引出し式貯蔵室である冷凍室3,野菜室4等の荷重がかかる部分の対角線上である天面後方部に位置させることで、引出し式の扉である冷凍室引出し扉6,野菜室引出し扉7等を引き出した際の、重心位置の変化を抑制することができ、その結果、転倒に対して安定性をさらに向上させることができる。
また、断熱箱体1の下端部の構造は圧縮機16などの冷凍サイクル構成部品がないのでシンプルな壁面構成可能であり、平板の真空断熱材25を各壁面に最下端から配置することが可能である。これによって低コスト、低工数で真空断熱材25の配設が可能である。
また、発泡断熱体24よりも高い断熱性能を有する真空断熱材25を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
なお、運転を繰り返して高温になる凝縮器を断熱箱体1の天面に配置することにより、熱のこもりによる断熱性能の低下がなくさらに省エネ化が可能である。
また、引出し貯蔵室が断熱箱体1の高さ方向1/2以下に位置する場合は冷蔵室下端面45を断熱箱体1の高さ方向1/2の中心線として取り扱い安定化を図るとなおよい。
さらになお、真空断熱材25は各面一枚の貼り付けとしたが、両側面39と背面40に貼りつける真空断熱材25を折り曲げた一枚としたり、底面41と背面40を一枚としたり、両側面39と底面41を一枚とすることで真空断熱材25の使用枚数を低減し工数削減など合理化を図ることができる。
なお、本実施の形態において、最上部に位置する回転扉式貯蔵室である冷蔵室2の下端面を示すA−A´線から上部に貼りつけた真空断熱材25の斜線部で示す合計面積をA−A´線から下部に貼りつけた真空断熱材25の無印部で示す合計面積より小さくなるように構成することを述べたが、製品としての費用対効果も考え合わせて、この考え方をさらに発展させることも可能である。
すなわち、最上部断熱区画である冷蔵室2には前記真空断熱材を配設せず、下部断熱区画にのみ、例えば限定されるものではないが冷凍室3,切替室29,製氷室30の各室に真空断熱材25を配設すれば、外気温度との温度差の小さい冷蔵温度帯の区画である冷蔵室2に対しては断熱性の向上に重点を置かず敢えて真空断熱材25の配設を行わず、むしろ真空断熱材25を配設しないことによる冷蔵庫重心の上部移動化を抑えて転倒防止の実益をとり、一方、外気温度との温度差の大きい冷凍温度帯を有する下部区画である冷凍室3,切替室29,製氷室30の各室に対しては重点的に真空断熱材25を配設することにより断熱性向上による省エネルギー化と冷蔵庫重心の下部移動化による転倒防止の双方の実益をとることができ、両区画の温度帯の設計とそれに対する真空断熱材25の効果的な配設の組み合わせで、上部区画と下部区画とを併せた冷蔵庫本体としての省エネルギー化と転倒防止の両立を合理的に図ることができる。
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図において、断熱箱体1の底面41に設けた真空断熱材48の厚みを比較的増加させたので、下方に配置された真空断熱材体積を大きくすることができる。下方の真空断熱材25体積を増加させて重量を増加することで転倒に対する安定性が向上する。
また、真空断熱材25は内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体26とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム27で構成され、内部を減圧してなる平面状の断熱材であるので、シート状セラミックファイバー成形体26を複数積層して使用することで容易に厚みを変更可能であり、複数の厚みを使用する場合に有利である。
なお、厚みを同等の真空断熱材25を用いる場合は複数枚の真空断熱材25を積層させて使用してもよいが、真空断熱材25の平面性がよいので複数枚の接合が容易であり、空気の混入などによる変形などを防止するのに有利である。
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図において、断熱箱体1の最下部に冷凍室引出し扉6を有する冷凍室3を設けてある。また、蒸発器20と冷却ファン21は冷凍室3の後方に断熱箱体1の最下部に配置してある。冷凍室引出し扉6を除いて、冷凍室3周囲に相当する両側面と背面と底面とに発泡断熱体24より密度の大きい、内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体26とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム27で構成され、内部を減圧してなる平面状の真空断熱材25を配設してある。
これによって、庫内外の温度差の大きい冷凍室3と冷却器20の周囲に断熱性能の高い真空断熱材25を重点的に配置して、内容積を確保した上で省エネ性を高めると共に、断熱箱体1の最下部の重量を増加させて転倒防止に対する安定性を向上させることが可能である。
なお、さらに冷凍室3上部の断熱区画に真空断熱材25を配設するとさらに安定性に効果がある。しかし省エネ化の効果は他の部位の外部との断熱に用いる真空断熱材25と比較して少ない。
またなお、冷凍室周囲の壁面毎に一枚の真空断熱材25を配設したが、複数面を折り曲げた真空断熱材25を配設することで、工数などのコスト削減や、折り曲げコーナー部の被覆面積の増加が可能である。
(実施の形態6)
図9は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
冷凍サイクルは天面後方部650に配設した圧縮機616と、冷蔵庫底面部空間に配設した凝縮器670と減圧器であるキャピラリ(図示せず)、さらに庫内側に配設された蒸発器20とを環状に接続して構成されている。
断熱箱体601の上部の貯蔵室は冷蔵室602であり、冷蔵室回転扉605を有しており、下部の貯蔵室は冷凍室603であり、冷凍室引出し扉606を有した引出し式の貯蔵室である。
真空断熱材625は断熱箱体601の下部に備えられた引出し式の貯蔵室である冷蔵室603のほぼ全面を覆うように貼付けてある。特に本実施例においては、冷蔵室602と冷凍室603の間の断熱壁にも真空断熱材625を設置している。
これらより、真空断熱材625および比較的重量の大きい凝縮器670を冷蔵庫底面に配設したことから、圧縮機616を天面に配設した冷蔵庫においても、重心位置が大幅に下がると共に、引出し式の扉である冷凍室引出し扉606を引き出した際に、下部前方に荷重がかかる場合でも、冷凍サイクルの構成機器のうち最も重量の大きい圧縮機616を引出し式貯蔵室の荷重がかかる部分の対角線上である天面後方部に位置させることで、引出し式の扉を引き出した際の、重心位置の変化を抑制することができ、その結果、転倒に対して安定性を向上させることができる。
よって、重心位置の変化をさらに抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
(実施の形態7)
図10は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の正面扉部を除く概略正面断面図を示すものである。図11は冷蔵庫の正面扉部を除く面展開図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図10より、圧縮機716は断熱箱体701の天面部に備えられる。また、上部の貯蔵室は冷蔵温度帯で使用される冷蔵室702であり、下部の貯蔵室は冷凍温度帯で使用される冷凍室703である。冷蔵庫の壁厚は、ウレタン等の発泡断熱材料715で形成された壁厚を冷蔵室702および冷凍室703共に同等程度として、下部貯蔵室には発泡断熱材715で形成された断熱層に加え、さらに真空断熱材725を埋設することで、冷蔵室702の壁厚より冷凍室703の壁厚の方がたとえば5mmから30mm程度厚くなる構成となる。
真空断熱材725の配設位置について図11の断熱箱体701の展開図を元に説明する。真空断熱材725は断熱箱体701の両側面39及び背面40と底面41に貯蔵室の側面および背面のほぼ全面を覆うように貼付けてあり各面下部を基準に上部に向かって配設している。本実施例においては、上部貯蔵室702の下端部を示すA−A´線から下部にのみ真空断熱材725を貼り付ける。
これにより、真空断熱材725をドアを除く冷蔵庫下部のほぼ全面を覆うように貼り付けたことから、ドアを除く冷蔵庫自身の重心位置を大幅に下げることができ、転倒に対して安定性を向上させることができる。
さらに、上部より下部貯蔵室703の壁厚を厚くすることから、重心を低く保ち、転倒に対して安定性を向上させることができる。
なお、本実施例において、上下断熱区画にはそれぞれ断熱扉が設けられているが、上部の冷蔵室扉を回転式扉とすることで、庫内収納物が冷蔵庫外部に移動しないため、重心位置の変化を抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
なお、本実施例における蒸発器(図示せず)は下段貯蔵室背面側において上下方向に平面上に配設されているが、下部の貯蔵室である冷凍室703の底部において冷蔵庫前後方向に配設させることにより、冷蔵庫の重心位置がさらに低下して、転倒に対して安定性を向上させることができる。
(実施の形態8)
図12は、本発明の実施の形態8における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図13は冷蔵庫の概略正面図を示すものであり、図14は冷蔵庫の正面扉部を除く面展開図を示す。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図12、図13において、断熱箱体801は内箱802と外箱803とで構成された空間に発泡断熱体804を注入してなる断熱壁を備えている。
また、発泡前の内箱802と外箱803とで構成される空間には、省エネ性の向上を図るために発泡断熱体804と比べて5倍〜20倍の断熱性能を有する真空断熱材805が発泡断熱体804と一体に発泡されている。
真空断熱材805はたとえばガラス繊維などの無機材料を用いており、発泡断熱体804と比べて密度が高いものとなる。発泡断熱体804の密度が20〜50kg/m3であるのに対して真空断熱材805は200〜250kg/m3と少なくとも4倍以上とすることができる。
断熱箱体801は複数の断熱区画に区分されており最上部断熱区画の扉を回転扉式、下部断熱区画の扉を引出し式とし上下方向に3つの引出し構成を有している。最上部断熱区画である冷蔵室806、最上部断熱区画より下方に位置する下部断熱区画の中で最上段に位置する区画には左右に並べて設けた引出し式の切替室807および製氷室808が備えられており、その下方には引出し式の野菜室809が備えられ、最下部に引出し式の冷凍室810が配置されている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉がガスケット811を介して設けられている。上から冷蔵室回転扉812、最上段の引出し扉である切替室引出し扉813と製氷室引出し扉814、その下方に野菜室引出し扉815、最下方に冷凍室引出し扉816である。
また、切替室引出し扉813と製氷室引出し扉814は左右方向に並んで構成されている。
断熱箱体801は天面後方部を窪ませた凹み部817を設けてあり、冷凍サイクルは凹み部817に配設した圧縮機818と凝縮器(図示せず)と減圧器であるキャピラリと蒸発器819とを環状に接続して構成されている。蒸発器819は冷却ファン820で強制対流熱交換させている。凝縮器(図示せず)はファンを用いて強制空冷してもよいし、外箱803の内側に熱伝導よく貼り付けられた自然空冷タイプであってもよいし、各室断熱扉体間の仕切りに配設して防滴防止を行うための高圧配管を組み合わせてもよい。
冷凍サイクルを動作させる制御基板821は凹み部817の下方に取外し可能なカバーで密閉して配置されている。さらに凹み部10もカバーで取外し可能に略密閉されている。
また、断熱箱体801の高さ寸法をH0とし、冷蔵室回転扉812の高さ寸法をH1とすると、冷蔵室回転扉812の下端面がH0のほぼ中心高さかそれ以下となるように、H1はH0の概ね1/2以上とすることが望ましく、本実施の形態では、H0の中心高さと同等となる概ね1/2に設定してある。さらに冷蔵室回転扉812の下方に配置した引出し扉のうち、上方にある切替室引出し扉813と製氷室引出し扉814の高さ寸法をH2とし、その下方に位置する野菜室引出し扉815の高さ寸法をH3とし、最下方の冷凍室引出し扉816の高さ寸法をH4とすると、H2はH3やH4と比べて最も小さくしてあり、H2<H3、H2<H4の関係を成り立たせてある。
さらに、真空断熱材805の配設位置について図14の展開図を元に説明する。真空断熱材805は断熱箱体801の両側面及び背面と底面に貯蔵室の側面および背面を覆うように貼付けてあり各面下部を基準に上部に向かって配設している。最上部に位置する回転扉式貯蔵室である冷蔵室806の下端面を示すA−A´線(実際には最上部断熱区画の下端面を示すので、冷蔵室2と下部貯蔵室である切替室807、製氷室808とを区画する区画壁の上下方向の中心線を指す)から上部に貼りつけた真空断熱材805の合計面積を斜線部で示している。真空断熱材805は斜線部と比較して無印部の合計面積の方が大きくなるように貼付け位置と大きさを決定している。
具体的には通常使い勝手のよい5枚から6枚の多ドアタイプの冷蔵庫でH0は1800ミリ程度であり、H1は800ミリ程度であるが、H1を概ね1/2となる900ミリ程度とした。これによって、冷蔵室806下端部の設置面からの高さであるH0−H1が900mm程度となり、平均的な女性が冷蔵室806の扉812の収納スペースおよび庫内側の収納スペースの中でも、最も使用頻度の高い最下段の収納スペースに食品を収納する際に、ひじ等を大きく上げることなく、スムーズに収納が行うことができる高さとすることができる。特に、冷蔵室806の最下段に引き出し式の収納部を設けた場合には、引き出し式動作をよりスムーズにでき、また収納動作もスムーズとなる。
また、H1を大きくするほど冷蔵室806の容量が増加して引き出し各室の容量が低下する問題があるが、従来一般的であった圧縮機818を冷蔵庫の下部後方に備えたタイプの冷蔵庫と比べて、圧縮機818を冷蔵室806の天面後方に配置させることで、冷蔵室806の内容積を減少させて、下部の引出し区画の内容積を増加させることができるので、結果的には従来の冷蔵庫と同等の内容積バランスを維持したままH1を大きくすることができる。
以上のように構成された冷蔵庫の転倒防止の安定性について、以下説明する。
断熱箱体801の天面後方部の凹み部817に、冷蔵庫の構成部品の中で比較的重量物である圧縮機818や凝縮器(図示せず)や冷媒配管を収納することで、冷蔵庫は重心位置が高くなり転倒しやすくなる。
床に対してキャスター822などで通常4点支持されている冷蔵庫は、各支持点から重力方向に伸ばした4本の垂線の外側に重心が位置すれば転倒の可能性が生じる。従って重心位置が高いほど小さな冷蔵庫の設置傾きや外力による冷蔵庫傾斜で転倒しやすく、重心位置が低いほど転倒しにくいことがわかる。
従って、天面に圧縮機818等の重量物を配置した場合に、重心位置を低くすることが転倒に対する安定性を向上させることにつながる。
そこで冷蔵室回転扉812の高さH1が断熱箱体801の高さH0の概ね1/2とすることで、冷蔵室806の下端面を示すA−A´線は断熱箱体801の上下方向のほぼ中心に位置させることができる。回転扉は引出し扉に比べて庫内棚の収納物が移動しないので重心の移動が比較的少なくてすむために、断熱箱体801の上部半分の重心移動を少なくすることが可能となり、転倒に対して安定性が向上する。
また、冷蔵室806の下端面をより下方へ下げることで、上記のような転倒安定性が向上することに加え、冷蔵室806の前面開口部の面積が広くなり、冷蔵室扉812に備えられた収納スペースが拡大するとともに、冷蔵室806の庫内への食品等の収納もしやすくなるので、最も頻繁に利用される冷蔵室806の使い勝手が向上することで、冷蔵庫の使い勝手が向上するという効果も奏する。
また引出し扉の区画は回転式扉の区画と比べて、収納物を支えるために強度の必要なレールやレール保持部材やケースなど構成が複雑で重量が増加するので、引出し扉の区画を断熱箱体801の下部半分に構成することで、重心を低くさせて転倒に対して安定性を向上させることができる。
また、回転扉812の高さH1が断熱箱体801の高さH0の概ね1/2であるため、換言すれば、引出し扉の区画の全高も断熱箱体801の高さH0の概ね1/2となり、扉開放により前方への重心移動が発生する引出し扉の区画の高さを必要以上に大きくならないようにできるため、引出し扉を開放した際の前方への転倒安全性を高めることができる。
さらにまた引出し区画の扉枚数が多くなるほど構成部材が増加して、断熱箱体801の下部重量を増加し重心を低くすることができるので安定性を向上させることができる。但し、収納量は構成部材による無効部分が増加するために減少するので、上下方向に3区画に分割した引き出し構成を図ると内容積と安定性の両立の面でよい。
さらに引出しの中で最上段にある切替室引出し扉813と製氷室引出し扉814の高さH2を、その下段に位置する野菜室引出し扉815の高さH3や冷凍室引出し扉816の高さH4と比べて最も小さくしたので、概ね同一の奥行きと幅の構成であることから内容積や収納容量を最も少なくすることができるので、重心の変化が小さくてすむ。また、下段の野菜室809や冷凍室810の内容積や収納容量を比較的に大きくしたので、最上段の引出しを開放した場合に、より下方の位置に大きな収納物を配置できるので転倒に対して安定化を図ることができる。
また、最上段の引出しを少なくとも左右に2分割して、一方を切替室807、もう一方を製氷室808としたので、各々の扉重量や内容積が小さくできるので、上方での引出し開放による重心の変化を更に少なくすることが可能であり、転倒に対する安定化を図ることができる。
なお、野菜室809と冷凍室810は逆の配置であればペットボトル飲料収納を野菜室手前に設けた場合に野菜室引出し扉815の開放による重心移動が大きくなるために、最下部に配置することで、影響を大幅に小さくできて、安定性の向上を図ることが可能である。
またなお、蒸発器819や冷却ファン820や流量制御バルブ(図示しない)やダンパ(図示しない)などの冷却システム構成部品を引出し扉を備えた下部断熱区画の後方背面に配置することで、モーターや金属材料で構成されていて比較的重量が重い部品が引出し開放による重心の前方移動に対してバランサーとなり、転倒に対する安定性を向上させることができる。
さらに、重心移動の大きい引出し式貯蔵室の区画周囲に重点的に真空断熱材805を配設することで断熱箱体801の本体重量が増加し、重心移動の変化を抑制し、転倒に対して安定性を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、最上部に位置する回転扉式貯蔵室である冷蔵室806の下端面を示すA−A´線を断熱箱体801の概ね中央に配置して、安定化を図るとともに真空断熱材805をA−A´線から上部に貼りつけた斜線部合計面積より、A−A´線から下部に貼りつけた無印部合計面積が小さくなるように構成することで、A−A´自体が下方に移動するために真空断熱材805の使用量を抑制しつつ安定化を図ることができコスト面で有利となる。
さらに断熱性能による省エネ効果が大きい低温区画である冷凍室810や製氷室807などが引出し区画で下方に配置してあるので、低温区画の周囲の真空断熱材805配設と安定性の向上の両立が図られる。
なお、使い勝手と、下部の引出し区画の内容積維持と、転倒安全性の各条件を満足する観点から種々検討を加えると、H1はH0/2の±10%の範囲であれば従来の高さ配分の冷蔵庫との各条件における何らかの差別化が可能となることがわかった。この範囲であれば、上記各条件の全てに有意な差を発揮できるものから、特定の条件に対して有意な差を発揮できるものまでを含めて従来とのレイアウト的な差別化が可能である。
たとえば、H0が1800ミリの冷蔵庫であればH1は900±90ミリの範囲であればよいし、H0が1600ミリの冷蔵庫であればH1は800±80ミリの範囲であればよい。