JP2006193956A - 拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置及び芯材入り補強体の施工方法 - Google Patents

拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置及び芯材入り補強体の施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】拡縮翼操作及び拡縮翼状態保持のための別途特別な外力を必要とせず採算性に優れ、ロッド本体の固化材液吐出口への掘削土の詰まりを防止した拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置、及びそれを用いて固化材液を中圧で吐出し地盤内に拡大径の地盤改良体を構築するとともに採算性のよい芯材入り補強体の施工方法を提供する。
【解決手段】基端部がロッド本体の先端部近傍に拡縮自在にピン接合された拡翼式掘削翼と、その後方のロッド本体に沿って進退自在に外挿された外周管部材と、一方の端部が拡翼式掘削翼の中間位置にピン接合されるとともに他方の端部が外周管部材の先端部にピン接合され、外周管部材の進退に伴って拡翼式掘削翼を拡縮する作動リンクと、外周管部材の後端部に設けられ、ロッド本体の一方向回転により外周管部材を先端方向に前進させて拡翼式掘削翼を拡翼し、ロッド本体の他方向回転により外周管部材を後退させて拡翼式掘削翼を縮翼する拡縮制御機構とを具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、地盤の表面側では小径の削孔内を通過可能であり、もしくは表面側に小径の削孔を造成することが可能であるとともに、内部に拡大径の削孔を造成することができ、さらに内部に拡大径の地盤改良体を構築することが可能な拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置及びそれを用いて内部に拡大径の地盤改良体(補強体)を構築する芯材入り補強体の施工方法に関する。
従来から地盤の地表面側に小径の削孔を造成することが可能であるとともに、内部に拡大径の地盤改良体を構築することが可能な拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置や、内部に拡大径の地盤改良体(芯材入りの補強体)を構築する地盤改良方法は既に知られていた(例えば特許文献1参照)。
前記特許文献1の地盤改良装置は、ロッド本体の内管と外管が相対的にスライド可能となっているとともに、拡翼式掘削翼は、基端側が内管側に固定され、他端(先端)側が外管に設けられたガイド孔に挿通されており、外管を先端側にスライドさせることにより拡翼状態となり、反対側にスライドさせることにより縮翼状態となる構造である。すなわち、この地盤改良装置は、地表側で内管を外管よりも突出させた状態でロッド本体の回転駆動力とは別途の外力により外管を内管に沿って前進スライドさせ拡翼式掘削翼の先端下面を押圧することにより拡翼式掘削翼を拡翼し、または外管を内管に沿って後退スライドさせ拡翼式掘削翼の先端上面を押圧し引き戻すことによって拡翼式掘削翼を縮翼させる構造となっている。
特開2003−313858号公報(請求項1及び6、図1〜7)
しかし、このような特許文献1の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置及び地盤改良方法には、次のような問題があった。
特許文献1の地盤改良装置においては、ロッド本体の回転駆動力とは別途の外力により外管を内管に沿って進退スライドさせることにより拡翼式掘削翼を拡縮させる機構であって、地表部側と地中深く掘進した削孔内の拡翼式掘削翼の位置とは遠く離れた位置にあるため、削孔内の掘削土や周辺地盤等からの摩擦抵抗に抗して外管を移動させるためには大きな力を必要とするばかりでなく、その縮翼状態や拡翼状態を保持するためにもロッド本体回転駆動力とは別途の大きな外力あるいは強固な保持力が必要となり、それに伴いコストアップにもなるという問題点があった。
そして、特許文献1の地盤改良装置を用いた地盤改良方法においては、特許文献1の図7に示されているように、拡翼式掘削翼を縮翼した状態で所定の深度まで掘進した後、その位置で拡翼式掘削翼を拡翼させる工程を採用する施工方法であり、前記の通りこの拡翼操作に別途大きな外力を必要とし、かつ拡翼状態を保持するために外管の移動を防止するための強固な保持力を必要とした。
また、特許文献1の地盤改良装置においては、拡翼した拡翼式掘削翼の下面(裏面)に対応する外管先端側の位置に固化材液吐出口が設けられており、固化材液吐出口も外管と同時に移動する構造であるため、拡翼式掘削翼を縮翼した状態で地盤を掘削する場合、固化材液吐出口は掘削土中に露出した状態となり、固化材液吐出口から固化材液を吐出しないで掘削する際に固化材液吐出口に掘削土が詰まり易いという問題点もあった。
さらに、特許文献1の地盤改良装置を用いた地盤改良方法においては、拡翼式掘削翼を拡翼させた状態で地盤改良装置を引き上げながら地盤を拡大径削孔する方法であって、この地盤拡大径削孔は主として外管周囲に設けられた固化材液吐出口から高圧で固化材液を吐出させることにより行い、拡翼式掘削翼は固化材液の吐出圧で軟弱化された地盤を撹絆して固化材液と掘削土とを攪拌混合させることが果たすべき主要な役割であった。このように地盤拡大径削孔は固化材液の吐出に委ねられているために、固化材液を高圧で吐出させる必要があり、それに伴う付帯設備などによるさらにコストアップとなるという問題点があった。
これらの問題点を解決すべく、本発明の目的は、拡翼又は縮翼する際に外管を押し引きしたり、その拡翼状態や縮翼状態を保持したりするための別途特別な(ロッド本体回転駆動力とは別途の)外力を必要とせず採算性に優れるとともに、ロッド本体に設けた固化材液吐出口に掘削土が詰まることのないように構成した拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、前記拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を使用して拡翼操作や拡翼状態保持のための別途特別な外力を必要とせず、更に固化材液を高圧より低い中圧で吐出することにより地盤内に拡大径の地盤改良体を構築することができ、採算性にも優れた芯材入り補強体の施工方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置は、基端部がロッド本体の先端部近傍に拡縮自在にピン接合された拡翼式掘削翼と、拡翼式掘削翼の後方のロッド本体に沿って進退自在に外挿された外周管部材と、一方の端部が前記拡翼式掘削翼の基端部から離れた中間位置にピン接合されるとともに他方の端部が前記外周管部材の先端部にピン接合され、前記外周管部材の進退に伴って拡翼式掘削翼を拡縮する作動リンクと、前記外周管部材の後端部に設けられ、前記ロッド本体の一方向回転により外周管部材をロッド本体先端方向に前進させて拡翼式掘削翼を拡翼状態とし、前記ロッド本体の他方向回転により外周管部材をロッド本体後方向に後退させて拡翼式掘削翼を縮翼状態とする拡縮制御機構と、を具備することを特徴としている。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置であって、 前記拡縮制御機構は、前記外周管部材の後端部の外周部に螺合されてロッド本体に沿って摺動自在に外挿されるとともに、一部外面が少なくとも両側から挟持可能な平行面を有する非円筒部が形成された拡縮制御管部材と、前記拡縮制御管部材の後端部に隣接してロッド本体の外周に固着され、拡縮制御管部材を連結手段により一体化連結することが可能な固定部材と、を備えていることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、請求項2記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置であって、前記拡縮制御機構は、前記拡翼式掘削翼が地盤の削孔内で拡翼もしくは縮翼すべき位置に到達している状態で、常に地表に存在する位置となるようにロッド本体に設けられ、前記連結手段は、前記固定部材を貫通して拡縮制御管部材の後端部に着脱自在に螺合するボルトであることを特徴としている。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置であって、前記ロッド本体は外管と内管とからなる二重管構造であり、前記拡翼した状態の拡翼式掘削翼の投影域内の外管位置に固化材液の吐出口が設けられ、前記外管と内管の間に前記吐出口に連通する固化材液の流路となる隙間が形成されるとともに、内管の先端部が外管の先端部近傍内面に固着されて前記隙間が閉鎖されており、ロッド本体の先端部である外管の先端部は開口されていることを特徴としている。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置であって、前記外周管部材の先端部には二股状に分岐形成された二股クレビスが設けられ、この二股クレビスの間に挟設されて前記作動リンクの他端部がピン接合され、前記吐出口は、前記拡翼式掘削翼が拡翼した状態で前記二股クレビス間の空間域内に対応する外管位置に設けられていることを特徴としている。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の拡翼式掘削を備えた地盤改良装置であって、前記拡翼式掘削翼前方のロッド本体の先端部周面位置に先端掘削ビットが設けられ、前記拡翼式掘削翼は、縮翼状態で前記先端掘削ビットの外径内に収まるように構成されていることを特徴としている。
請求項7に係る発明の芯材入り補強体の施工方法は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置(以下、ロッドと略称する)を用いて地盤の補強を行う芯材入り補強体の施工方法であって、芯材をロッド本体先端から挿入してロッド本体先端部の開口部を封鎖するとともに拡翼式掘削翼を縮翼した状態で地盤を所定の第1深度まで削孔する縮径削孔工程と、前記第1深度で拡翼式掘削翼を拡翼してロッド本体の吐出口から何も吐出することなく所定の第2深度まで拡翼状態で掘進する無水拡径削孔工程と、拡翼式掘削翼を拡翼したままの状態で前記吐出口及びロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出すとともにロッド本体を回転させながら前記所定の第2深度から引き上げることにより、芯材を前記拡径削孔中に残置させるとともに固化材液と掘削土砂とが攪拌混合されたソイルセメントからなる芯材入り補強体を前記拡径削孔内に構築する補強体拡径部構築工程と、ロッドを引き上げ拡翼式掘削翼が前記第1深度まで後戻りした時点で拡翼式掘削翼を縮翼するとともに、前記ロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出しながらロッドを引き上げることにより前記縮径削孔部内に固化材液を充填する補強体縮径部構築工程と、を有することを特徴としている。
また、請求項8に係る発明は、請求項7記載の芯材入り補強体の施工方法であって、前記地盤は、擁壁本体部とその後側の栗石部とからなる既設擁壁部であって、前記第1深度は栗石部を超える位置に設定され、前記第1深度までの縮径削孔は予め別途の掘削機により削孔され、その後、縮径削孔内に拡翼式掘削翼が縮翼した状態でロッドを挿通して前記無水拡径削孔工程以降の工程を行うことを特徴としている。
請求項9に係る発明は、前記請求項7記載の芯材入り補強体の施工方法が、土留め壁を有する地盤に対する施工であることを特徴としている。
請求項10に係る発明は、請求項8又は請求項9のいずれかに記載の芯材入り補強体の施工方法であって、前記第1深度までの縮径削孔部分に管状のケーシングを挿入した後に、拡翼式掘削翼が縮翼した状態で縮径削孔ケーシング内にロッドを挿通して前記無水拡径削孔工程以降の工程を行うことを特徴としている。
請求項1の発明によれば、拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置は、ロッド本体に沿って進退自在に外挿された外周管部材にピン接合された作動リンクにより拡翼式掘削翼が拡縮可能となっており、外周管部材の後端部に設けられた拡縮制御機構によりロッド本体の一方向回転により外周管部材をロッド本体先端方向に前進させて作動リンクが拡翼式掘削翼を押し上げて拡翼状態とし、前記ロッド本体の他方向回転により外周管部材をロッド本体後方向に後退させて作動リンクが拡翼式掘削翼を引き込んで縮翼状態とする構成となっている。このように、拡縮制御機構によるロッド本体の正逆回転により拡翼式掘削翼を拡翼又は縮翼状態にする構成であるため、従来技術のような拡翼式掘削翼を拡翼又は縮翼状態にするためのロッド本体回転駆動力以外の特別な大きな外力を必要としない。
これにより、この発明によれば、拡翼式掘削翼を拡翼又は縮翼状態にするための別途特別な外力を付与するための付帯設備を省くことができ、採算性にも優れた拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を提供することができる。
請求項2の発明によれば、前記拡縮制御機構が、外周管部材の後端部の外周部に螺合されて外周管部材摺動自在に外挿されるとともにロッド本体の外周に固着された固定部材と連結手段により一体化連結される拡縮制御管部材を備えた構造となっている。このため、拡縮制御管部材の非円筒部を挟持するか又は拡縮制御管部材を前記固定部材に連結手段により固定した状態でロッド本体を一方向に回転することにより、前記拡縮制御管部材と外周管部材間の螺合によるねじの推進力を受けた外周管部材をロッド本体先端方向に前進させることで拡翼式掘削翼を拡翼状態とし、一方、前記拡縮制御管部材と固定部材との連結手段を解除して拡縮制御管部材の非円筒部を挟持し固定した状態でロッド本体を他方向に逆回転させることにより、前記拡縮制御管部材と外周管部材間の螺合によるねじの後進力を受けた外周管部材をロッド本体後方向に後退させることで拡翼式掘削翼を縮翼状態とすることができる。
したがって、この発明によれば、請求項1の発明と同様な効果を有するのに加えて、拡縮制御管部材と外周管部材間の螺合機構(ねじ)がロッド本体の回転力を外周管部材のロッド本体に沿う進退力に変換する最も簡易かつコンパクトな構造であり信頼性も高いことから、拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を安価でコンパクトに構成するとともに一層信頼性を向上させることができる。
さらに、拡縮式掘削翼が縮翼された状態で、固定部材と拡縮制御管部材との連結手段による固定を解除して拡縮式掘削翼縮翼方向にロッド本体を回転した場合、拡縮制御管部材と外周管部材は螺合によるねじ締付け力により固定部材側に押し付けられながら一体的にロッド本体と共に回転して拡縮式掘削翼が縮翼された状態を保持することができる。一方、拡翼式掘削翼を拡翼状態で固定部材と拡縮制御管部材とを連結手段により固定させることによって拡縮制御管部材をロッド本体に固定ができることから、別途特別の外力を加えることなく拡翼状態を保持することができる。
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様な効果を有するのに加えて、拡翼式掘削翼が地中で拡翼もしくは縮翼すべき位置に到達している状態で、常に拡縮制御管部材が地表に存在する位置に設けられているので、地上部で拡縮制御管部材の非円筒部を外部機材で回転不能に把持してロッド本体を前記一方向に回転することによる拡翼式掘削翼の拡翼作業等が地上側で制御できる。また、固定部材と拡縮制御管との連結手段による固定解除も地上側で実施できる。これにより、拡翼式掘削翼の拡縮翼操作の容易性が確保できるという利点がある。
請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3の発明と同様な効果を有するのに加えて、ロッド本体は外管と内管とからなる二重管構造であり、拡翼した状態の拡翼式掘削翼の投影域内の外管位置に固化材液の吐出口が設けられているので、この吐出口は拡翼式掘削翼が縮翼した状態で拡翼式掘削翼の内側(裏面)の下方に覆い隠れた位置となることから、この縮翼状態で吐出口から固化材液の吐出なく掘進しても吐出口が掘削土砂で詰まることがない。また、外管と内管の間に前記吐出口に連通する固化材液の流路となる隙間が形成されるとともに、内管の先端部が外管の先端部近傍内面に固着されて前記隙間が閉鎖されており、外管の先端部は開口されているので、固化材液の流路形成が容易になるというメリットがある。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と全く同様な効果を有するのに加えて、外周管部材の先端部に設けられた二股クレビスの間に挟設されて作動リンクがピン接合され、前記吐出口は拡翼式掘削翼が拡翼した状態で二股クレビス間の空間域内に対応する外管位置に設けられているので、拡翼式掘削翼巾の中心部に吐出された固化材液が拡翼した状態の拡翼式掘削翼の内側(裏面)に確実に衝突するようにすることができる。これにより、掘削済みの削孔壁に固化材液が衝突することによる削孔の崩壊を防止するとともに、拡翼式掘削翼による固化材液と掘削土砂との攪拌混合されたソイルセメントからなる芯材入り補強体の構築を効率よくかつ確実に行うことができる。
請求項6の発明によれば、請求項1乃至請求項5の発明と同様な効果を有するのに加えて、ロッド本体の先端部周面位置に先端掘削ビットが設けられ、前記拡翼式掘削翼は、縮翼状態で前記先端掘削ビットの外径内に収まるように構成されているので、拡翼式掘削翼が縮翼状態でも拡翼式掘削翼の存在が掘進作業の邪魔になることがなく、先端掘削ビットにより地盤を確実に掘進することができる。
請求項7の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置(以下、単に「ロッド」と略称する)を用いて地盤の補強を行う芯材入り補強体の施工方法であって、地表側から拡翼式掘削翼が縮翼した状態で地盤を所定の第1深度まで縮径削孔し、前記第1深度で拡翼式掘削翼を拡翼して外管表面の吐出口から何も吐出することなく所定の第2深度まで拡翼状態で掘進して拡径削孔することができるとともに、所定の第2深度に達した後に前記吐出口あるいはロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出するのと並行してロッド本体を回転させながら引き上げるので、掘削済みの土砂中に固化材液が吐出されることになり、従来技術のように拡翼式掘削翼が拡翼した状態で未掘削の地盤中に固化材液を高圧で吐出してその吐出圧により地盤を軟化して拡径削孔する方法に比べて吐出圧を低くすることができる。その上、掘削済みの土砂中に吐出された固化材液は、吐出圧を少し高くしても拡翼状態の拡翼式掘削翼に衝突し、掘削済みの削孔壁に固化材液が直接衝突しないことから、削孔壁の崩壊を防止することができるとともに、掘削済みの土砂中に吐出された固化材液は拡翼した拡翼式掘削翼により掘削土砂と攪拌混合され効率よくソイルセメントとすることができる。
また、芯材を削孔中に残置させるとともにロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出しながらロッドを引き上げるので、芯材の周囲には掘削土やソイルセメントと撹絆されない固化材液を存在させることができる。その結果、固化材液やソイルセメントが硬化した状態では、芯材の周囲に硬化した固化材単独からなる固化材層が存在し、その周囲に硬化したソイルセメント層が存在する構成とすることができる。このように芯材とソイルセメント層の間に硬化した固化材層を介在させることにより、芯材及びこれらの層の相互間の接合力が高められ、芯材入り補強体の曲げ力などの外力に対する剪断破壊抵抗を高めることができる。
さらに、地表側は拡翼式掘削翼が縮翼した状態で通過可能な縮径削孔とすることができるので、地表側から拡翼式掘削翼を拡翼した拡径削孔とする従来の施工方法に比べて、削孔作業の手間と費用が格段に少なくなるばかりか、地上側の見映えも良くすることができる。
請求項8の発明によれば、請求項7の発明と同様な効果を有するのに加えて、前記地盤は、擁壁本体部とその後側の栗石部とからなる既設擁壁部であって、前記第1深度が栗石部を超える位置に設定された縮径削孔が予め別途の掘削機により削孔されていることにより、拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を使用しての縮径削孔作業が回避でき、既設擁壁部にソイルセメントからなる芯材入り補強体を手っ取り早く容易に構築することができる。
請求項9の発明によれば、土留め壁を有する地盤に対しても芯材入り補強体を施工することが可能となる。
鋼製矢板や親杭横矢板等の土留め壁に対して拡翼式掘削翼を拡翼した径相当の拡径孔を従来のように造成した場合、特に地下水位が開口位置よりも高い場合には、矢板等の土留め壁に削孔した際に土留め壁背面の土砂と地下水が溢れ出す恐れがあり、土留め壁背面の土砂と地下水が溢れ出すことにより土留め壁背面側の地盤沈下や地盤崩壊が起き易くなる。また、土留め壁が鋼製矢板や親杭横矢板である場合、これらの矢板に大きな径の拡径孔が開けられた結果、矢板が曲げに対する応力に耐え難くなり、土留め壁としての役目が果たせなくなる危険性がある。しかし、この発明によれば、土留め壁である場合でも、拡翼式掘削翼が縮翼した状態で通過可能な縮径孔を土留め壁に設けるだけで済むので、これらの危険性が発生する確率を極めて少なくすることができる。
請求項10の発明によれば、請求項8あるいは請求項9の発明と同様な効果を有するのに加えて、前記縮径削孔部内に挿入された管状のケーシングにより、削孔内に形成されるソイルセメントや固化材液が栗石部に流出するのを防止することができることから、削孔内にソイルセメント固化体を確実に構築するという信頼性を確保することができる。
以下、本発明の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置及びそれを用いた芯材入り補強体の施工方法を図示する実施の形態により具体的に説明する。
図1は本発明に係る一実施の形態の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置の縦断面図であり、左半部は拡翼式掘削翼が拡翼した状態、右半部は拡翼式掘削翼が縮翼した状態を示す。図2は図1のA矢視断面図、図3は図1のB矢視断面図、図4は図1のC矢視断面図、図5は図1のD矢視断面図、図6は図1のE矢視図である。なお、図4においては、吐出口21a、21aを省略して示している。
本発明の一実施の形態の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置Rは、図1に示すように、基端部1aがロッド本体2の先端部近傍に拡縮自在にピン7によりヒンジ接合された拡翼式掘削翼1と、拡翼式掘削翼1の後方のロッド本体2に沿って進退自在に外挿された外周管部材3と、一方の端部が拡翼式掘削翼1の基端部1aから離れた中間位置にピン8によりヒンジ接合されるとともに他方の端部が外周管部材3の先端部にピン9によりヒンジ接合され、外周管部材3の進退に伴って拡翼式掘削翼1を拡縮する作動リンク4と、外周管部材3の後端部に設けられ、ロッド本体2の一方向回転により外周管部材3をロッド本体2先端方向に前進スライドさせて拡翼式掘削翼1を図1の左半部に示す拡翼状態とし、ロッド本体2の他方向回転により外周管部材3をロッド本体2後方向に後退スライドさせて拡翼式掘削翼1を図1の右半部に示す縮翼状態とする拡縮制御機構5とから概略構成されている。
拡縮制御機構5は、ロッド本体2に沿って摺動自在に外挿されるとともに外周管部材3の後端部の外面に設けられた雄ねじ31と螺合される雌ねじ51aが先端部内面に形成された拡縮制御管部材51と、拡縮制御管部材51の後端部に隣接してロッド本体2の外周に固着され、拡縮制御管部材51を連結手段53により一体化連結する固定部材52とからなっている。連結手段53は、例えば図1の左半部に示すように、固定部材52を貫通して拡縮制御管部材51の後端部に着脱自在に螺合するボルト(以下、ボルト53という)とすることができる。
拡縮制御管部材51の後端面と固定部材52の先端面とは、図1及び図3に示すように、相互に一部嵌合する。それとともにその嵌合部における外管21に対向する周面にベアリング溝21bが穿設され、外管21の拡縮制御管部材に対向する面にベアリング受溝51b、52b等が設けられ、ベアリング溝21b内に点在自在に一部が埋設された複数のボールからなるボールベアリング54がその略左半部をそれぞれベアリング受溝51b、52b等に挟持される。このボールベアリング54は、拡縮制御管部材51が固定部材52側に押し付けられる場合(後述する)にベアリング受溝51b、52bを介してその押し付け力(いわゆるスラスト)を受けながら拡縮制御管部材51をスムースに回転自在に支持するスラスト軸受の機能を有するものである。なお、拡縮制御管部材51の外管部側内周面に設けられたねじ山51aと外管部周面に設けられたねじ山31とが螺合されている。
ここで、図1の右半部に示すように、拡縮式掘削翼1が縮翼された状態で、固定部材52と拡縮制御管部材51とのボルト53接合を解除してロッド本体2を拡縮式掘削翼1の縮翼方向に回転した場合、拡縮制御管部材51及び外周管部材3は一体的にロッド本体2と共に回転して拡縮式掘削翼1を縮翼された状態に保つことができる構成となっている。すなわち、拡翼式掘削翼1を縮翼した状態でロッド本体2を拡縮式掘削翼1縮翼方向に回転させても、拡縮制御管部材51と外周管部材3は螺合によるねじ締付け力により前記ボールベアリング54を介して固定部材52側に押し付けられながら一体的にロッド本体2と共に回転して拡縮式掘削翼1が縮翼された状態を保持することができる。この際、回転駆動されるロッド本体2の後述する先端部近傍に基端部1aがピン接合された拡翼式掘削翼1の回転力を受けることにより、拡翼式掘削翼1と外周管部材3の先端部とにピン接合された作動リンク4を介して外周管部材3は拡縮制御管部材51と共に回転することができる。
拡縮制御管部材51の先端側一部外面には、少なくとも両側からスパナ等で挟持して回転を規制することが可能な平行面を有する例えば図2に示す六角形ナットのような非円筒部51cが形成されている。
そこで、図1の右半部に示した縮翼状態から同図の左半部に示した拡翼状態にするには次のようにする。ロッド本体2が回転しても拡縮制御管部材51の回転を規制するように例えば拡縮制御管部材51の非円筒部51cを挟持した状態で、ロッド本体を一方向に回転させる。拡縮制御管部材51と外周管部材3間の螺合による推進力より外周管部材3をロッド本体2先端方向に前進スライドさせる。この外周管部材3の前進スライドに伴い作動リンク4が拡翼式掘削翼1を押し上げて拡翼状態にすることができる。すなわち、拡縮制御管部材51を固定させてロッド本体2を一方向に回転させることにより、拡縮制御管部材51と外周管部材3間の雌雄ねじ51a、31による螺合が解除される(緩む)方向の推進力が発生し、それに伴って外周管部材3が前進スライドし、拡翼式掘削翼1を拡翼状態にすることができる。なお、拡縮制御管部材51及び外周管部材3の各雌雄ねじ51a、31のねじ部長さは、外周管部材3の前記スライドする距離に相応する長さに設定することが望ましい。
一方、図1の左半部に示した拡翼状態から同図の右半部に示した縮翼状態にするには次のようにする。ボルト53を緩めて固定部材52と拡縮制御管部材51との一体化連結を解除し、拡縮制御管部材51の回転を規制するように拡縮制御管部材51の非円筒部をスパナ等で挟持した状態でロッド本体2を他方向に逆回転させることにより、拡縮制御管部材51と外周管部材3間の雌雄ねじ51a、31が締結する(締まる)方向の後進力が発生し、それに伴い外周管部材が後進スライドして拡翼式掘削翼1を縮翼状態にすることができる。なお、固定部材52により外周管部材3が拡縮制御管部材51と共にさらに後進スライドしようとするのが阻止されるため、そのままロッド本体2を逆回転し続けても外周管部材3の後進スライドを阻止することができる。このようにして、ロッド本体2の回転駆力以外の何ら別途特別な外力を加えることなく容易に縮翼状態を保持することができる。
なお、図示していないが、拡翼式掘削翼1が地盤の地中で拡翼もしくは縮翼すべき位置に到達している状態で、常に拡縮制御機構5は地表に存在する位置に設けられていることが望ましい。このような拡縮制御機構5の配置構成により、地上部で拡縮制御管部材51の非円筒部51cを外部機材により把持して回転規制することやボルト53の締緩による固定部材52と拡縮制御管部材51との一体化連結又は連結解除ができ、拡翼式掘削翼1の拡翼もしくは縮翼操作が地上部で容易に実施可能となる。
ロッド本体2は、図1に示すように、外管21と内管22とからなる二重管構造であり、同図の左半部に示すように拡翼した状態の拡翼式掘削翼1の投影域内の外管21位置に固化材液の吐出口21aが設けられている。外管21と内管22の間には吐出口21aに連通する固化材液の流路となる隙間23が形成されるとともに、内管22の先端部22aが外管21の先端部21e近傍内面21dに固着されて隙間23が閉鎖されている。また、外管21の先端部21eは、FRP製ロッドなどの芯材6を挿入できるよう内管22内径と同径で連通する開口部21fが穿設されている。したがって、吐出口21aとは別に、この開口部21fからも内管22内を経由して固化材液を吐出することができるようになっている。この吐出口21aと開口部21fとからの固化材液吐出については、図示しないロッド後方の地上部側で切換え操作される。
芯材6は、図面には明示しないが、先端側では外管先端部21eの開口部21fを塞ぐに足る大径とし、外管21内に挿入される部分では外管21内径よりも細い小径に形成され、芯材6の先端側大径部が外管先端部21eの開口部21fの外側に露出した際には、外管先端部21eの開口部21f内面と芯材6外面との間に隙間を生じさせ、外管先端部21eの開口部21fから固化材液を吐出できるように構成することが望ましい。ただし、外管21の外側に常時露出している芯材6の先端部分側は細くしてもよい。
しかしながら、長尺となる芯材6をこのように異径構造とするにはその製造工程に特別な設備が必要となるので、図1に示めすように、同一径の芯材ロッド61の先端側に外管先端部21eの開口部21fを塞ぐに足る大径鍔状の係止板62を取付ける構造とすることが望ましい現実的な芯材6の形態である。
また、芯材6の先端部63は地盤中に突き刺さり易くするような尖鋭構造とすることにより、先端部63を削孔底に突き刺した状態で芯材6を削孔内に残置することが容易になる。
この場合、外管先端部21eの開口部21fを塞ぐ大径の鍔状の係止板62と地盤中に突き刺さる尖鋭構造の先端部63とを一体化し、例えば図1に2点鎖線で示すように、先端方向に漸次縮径したコーン状に形成された金属製もしくは硬質プラスチック製の定着コーン64を芯材ロッド61の先端部に取り付けた構造とすることがさらに望ましい実用的な芯材6の形態である。
外管21の先端部には、二股状に分岐形成された二股クレビス21cが設けられ、図5に示したように、拡翼式掘削翼1の基端部1aが二股クレビス21cの間に挟設されてピン7によりヒンジ接合されている。一方、外周管部材3の先端部には、二股状に分岐形成された二股クレビス32が設けられ、図4に示したように、中央の拡翼式掘削翼1の中間部両側面に一端部がピン8によりヒンジ接合された2枚の作動リンク4の他端部が二股クレビス32の間に挟設されてピン9によりヒンジ接合されている。
図7は図1のF−F矢視図、図8は図1のG−G矢視図である。
吐出口21aは、図7に示したように、2枚の拡翼式掘削翼1が拡翼した状態で二股クレビス32間の空間域内に対応する位置の外管21外周面に2箇所設けられている。
このような吐出口21aの配置構成とすることにより、拡翼した状態の拡翼式掘削翼1の内側(裏面側)で翼巾の中心部に吐出された固化材液が確実に衝突するようにすることができる。これにより、掘削済みの削孔壁に固化材液が衝突することおよび衝突よる削孔の崩壊を防止するとともに、拡翼式掘削翼1による固化材液と掘削土砂との攪拌混合されたソイルセメントからなる芯材入り補強体の構築を効率よく行うことができる。さらに、縮翼した状態では、図8に示したように、拡翼式掘削翼1の内側に吐出口21aを覆い隠すことができる。このため、縮翼状態で吐出口21aから固化材液の吐出なく掘進しても吐出口21a内に掘削土砂が侵入して詰まるのを防止することができる。
図2、図6乃至8に示すように、拡翼式掘削翼1前方のロッド本体2の外管21の先端部周面位置に先端掘削ビット24が設けられている。先端掘削ピット24は、後部(拡翼式掘削翼1側)に設けられ、外周面に掘削可能な刃体24bが形成された大径鍔部24aと、大径鍔部24aに同外径で連設されるとともに拡翼式掘削翼1が存在する外管21軸方向に沿って径が外管先端部21eの開口部21f方向に減少する傾斜部24dが形成され、傾斜部24d及び前端部24eの外面に刃体24fが形成された板状体24cとから構成されている。そして、縮翼状態の拡翼式掘削翼1が、先端掘削ピット24の大径鍔部24aの外径外にはみ出すことなく、大径鍔部24aの外径内に収まるような構成とすることが望ましい。
このような先端掘削ビット24の構成により、拡翼式掘削翼1が縮翼状態でも拡翼式掘削翼1の存在が掘進作業の邪魔になることがなく、先端掘削ビット24により地盤を確実に掘進することができる。
先端掘削ビット24の前端部24eの刃体24fとした部分には、図6に示すように、外管先端部21eの開口部21fの径内に突出するように形成された係合突起24hを設けるとともに、芯材6の鍔状の係止板62に係合突起24hが係合するように切欠き形成された係合溝62aが設けられている。ロッド本体2内に挿入された芯材6は、前記係合突起24hと係合溝62aとの係合により、芯材6の中心位置が規定されるとともにロッド本体2に対して芯材6の回転が規制される。これにより、ロッド本体2と共に芯材6を同時に回転させることができる。
また、先端掘削ピット24の大径鍔部24aは、図1の左半部に示すように、その後端面24gが拡翼した状態の拡翼式掘削翼1の基端面部1eに当接するようになっており、これ以上拡翼式掘削翼1が拡翼する方向への動きを阻止する機能も有している。
なお、拡翼式掘削翼1の表面側は、図2、図6乃至8に示すように、刃体1cを設けた回転方向側から刃体を設けない反対側に沿い傾斜させており、これにより拡翼した状態の拡翼式掘削翼1による掘削効率を向上させることができる。また、拡翼した状態の拡翼式掘削翼1の最大径外面部1bにも刃体1dを延設して、刃体1dでも地盤を掘削できるようにすることが望ましい。
なお、芯材6の挿入が不必要なソイルセメント体のみを構築する場合には、図1に示したような外管21の先端部は開口されている構造とする必要がなく、いわゆる前記拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置Rに対して、外管21の先端が封鎖された構造の変形形態とすることができる。
次に、以上説明した本発明の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置Rを用いた芯材入り補強体の施工方法について説明する。
図9は、図1の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を使用した本発明の芯材入り補強体の施工方法の一例を説明するための工程図であり、(a)は先行縮径削孔工程終了状態、(b)は無水拡径削孔工程開始状態、(c)は無水拡径削孔工程終了状態、(d)は補強体拡径部構築工程途中状態、(e)は補強体縮径部構築工程開始状態、(f)は芯材入り補強体の施工完了状態を示す。
本発明の一実施の形態による芯材入り補強体の施工方法は、図示しないが、対象地盤が図9に示すような既設擁壁部Gが設けられていない法面や切り土面のケースであって、前記の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置R(以下、単に「ロッドR」と略称する)を使用して地盤の補強を行う方法である。この場合図示しないが、前記図1乃至図8に示した拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置Rを使用する方法であり、工程的に既設擁壁部Gが設けられた図9に示す施工工程と共通するため、図9に示された符号を付して説明する。
まず、芯材(6)をロッド本体(2)の先端部(21c)から挿入して先端部(21c)の開口部(21f)を封鎖するとともに拡翼式掘削翼(1)を縮翼した状態で地盤を所定の第1深度まで削孔する(図9(a)の縮径削孔H1造成と同様の縮径削孔工程)。
前記第1深度で拡翼式掘削翼(1)を拡翼して(図9(b)と同様)ロッド本体(2)の吐出口(21a)から固化材液など何も吐出することなく所定の第2深度まで拡翼状態で掘進する(図3(c)の拡径削孔H2造成と同様の無水拡径孔削孔工程)。
その後、拡翼式掘削翼(1)を拡翼したままの状態で吐出口(21a)及びロッド本体(2)先端部(21c)の開口部(21f)から固化材液を吐出すとともにロッド本体(2)を回転させながら前記所定の第2深度から引き上げることにより、芯材(6)を前記拡径削孔(H2)中に残置させるとともに固化材液と掘削土砂とが攪拌混合されたソイルセメントからなる芯材入り補強体(100)を拡径削孔(H2)内に構築する(図9(d)と同様の補強体拡径部構築工程)。
さらに、ロッド(R)を引き上げ拡翼式掘削翼(1)が前記第1深度まで後戻りした時点で拡翼式掘削翼(1)を縮翼するとともに、ロッド本体(2)先端部(21c)の開口部(21f)から固化材液を吐出しながらロッド(R)を引き上げることにより前記縮径削孔(H1)部内に固化材液を充填する(図9(e)と同様の補強体縮径部構築工程)。
以上の工程により、地盤に所定の第1深度まで縮径され、所定の第2深度まで拡径された芯材(6)入り補強体(100)の構築が完成する(図9(f)と同様)。
このような本発明の芯材入り補強体の施工方法によれば、地盤の第1深度で拡翼式掘削翼を拡翼して外管の吐出口から何も吐出することなく所定の第2深度まで拡翼状態で掘進した後に前記吐出口あるいはロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出するのと並行してロッドを回転させながら引き上げるので、掘削済みの土砂中に固化材液が吐出されるため、固化材液の吐出圧を比較的低く抑えることができる。その上、掘削済みの土砂中に吐出された固化材液が掘削済みの削孔壁に直接衝突しないことから、削孔壁の崩壊を防止することができるとともに、掘削済みの土砂中に吐出された固化材液は拡翼した拡翼式掘削翼により掘削土砂と攪拌混合され効率よくソイルセメントとすることができる。また、地表側は拡翼式掘削翼が縮翼した状態で通過可能な縮径削孔とすることができるので、地表側から拡翼式掘削翼を拡翼した拡径削孔とする従来の施工方法に比べて、削孔作業の手間と費用が少なくなるとともに地上側の見映えも良くすることができる。
また、芯材を掘削孔中に残置させるとともにロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出しながらロッドを引き上げるので、芯材の周囲には掘削土やソイルセメントと撹絆されない固化材液が硬化した固化材単独からなる固化材層が存在し、その周囲に硬化したソイルセメント層が存在する構成とすることができる。このため、芯材及びこれらの層の相互間の接合力が高められ、芯材入り補強体への外力に対する剪断破壊抵抗を高めることができる。
次に、図9に示す別の実施の形態の芯材入り補強体の施工方法について説明する。
この実施の形態の芯材入り補強体の施工方法は、図9に示すように、前記一実施の形態における地盤が擁壁本体部G1とその後側の栗石部G2とからなる既設擁壁部Gであって、前記第1深度は栗石部G2を超える位置に設定され、前記既設擁壁部Gの縮径削孔H1は予め別途の掘削機(図示しない)により前記第1深度まで削孔される(先行縮径削孔工程)。
その後、図9(a)に示すように縮径削孔H1内に拡翼式掘削翼1が縮翼した状態でロッドRを挿通し、前記施工法と同様に、引続き図9(b)及び(c)に示すような前記無水拡径削孔工程、それ以降の図3(d)に示すような前記補強体拡径部構築工程、さらに図9(e)に示すような前記補強体縮径部構築工程を順次行うことにより、既設擁壁部Gに前記第1深度まで縮径され、所定の第2深度まで拡径された図9(f)に示すような芯材6入り補強体100の構築が完成する。
この施工法では、前記第1深度が栗石部G2を超える位置に設定された縮径削孔H1が予め別途の掘削機により削孔されることにより、拡翼式掘削翼1を備えた地盤改良装置Rを使用しての縮径削孔作業が回避され、既設擁壁部Gにソイルセメントからなる芯材6入り補強体100を容易に構築することができる。
なお、図9に示した既設擁壁部(G)がある場合の他に、土留め壁(図示しない)である場合でも、拡翼式掘削翼(1)が縮翼した状態で通過可能な縮径孔(H1)を土留め壁(例えば、土留め壁が鋼製矢板の場合には、鋼製矢板)に設けるだけで前記施工法と同様に既設擁壁部(G)にソイルセメントからなる芯材(6)入り補強体(100)を容易に構築することができる。
さらに別の実施の形態として、図9(a)に示すように前記縮径削孔H1部内に管状のケーシング101を挿入したケースであって、以降は前記実施の形態と同様に施工が行われる。すなわち、拡翼式掘削翼1が縮翼した状態で縮径削孔H1のケーシング101内にロッドRを挿通し、図9(b)及び(c)に示す前記無水拡径削孔工程、それ以降の図3(d)に示す前記補強体拡径部構築工程、さらに図9(e)に示す前記補強体縮径部構築工程を順次行うことにより、既設擁壁部Gに前記第1深度まで縮径され、所定の第2深度まで拡径された図9(f)に示す芯材6入り補強体100の構築が完成する。
この施工法では、縮径削孔H1部内に挿入された管状のケーシング101により、縮径削孔H1内に形成されるソイルセメントや固化材液が栗石部に流出するのを防止することができることから、縮径削孔H1内にソイルセメント固化体を確実に構築することができる。
なお、以上説明した本発明の芯材入り補強体の施工方法により切り土面や法面を補強する場合、斜め下方向もしくは略水平方向に芯材入り補強体を造成することが芯材入り補強体で盛土の崩落を防止するという観点から望ましい。また、切り土面や法面だけでなく、水平な地面にソイルセメント柱体からなる補強体を構築する場合、表面にコンクリート層などの表面層が存在しても、本発明の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を使用することにより、地表面側が所定深度まで縮径でそれ以下の深度では拡径のソイルセメント柱体からなる補強体を構築することができる。これらの補強体は、必要に応じて芯材入り又は芯材無しの補強体とすることは容易に選択可能である。
本発明に係る一実施の形態の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置の縦断面図であり、左半部は拡翼式掘削翼が拡翼した状態、右半部は拡翼式掘削翼が縮翼した状態を示す。 図1のA矢視断面図である。 図1のB矢視断面図である。 図1のC矢視断面図である。 図1のD矢視断面図である。 図1のE矢視図である。 図1のF−F矢視図である。 図1のG−G矢視図である。 図1の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置を使用した本発明の芯材入り補強体の施工方法の一例を説明するための工程図であり、(a)は先行縮径削孔工程終了状態、(b)は無水拡径削孔工程開始状態、(c)は無水拡径削孔工程終了状態、(d)は補強体拡径部構築工程途中状態、(e)は補強体縮径部構築工程開始状態、(f)は芯材入り補強体の施工完了状態を示す。
符号の説明
1 拡翼式掘削翼
1a 基端部
1b 最大径外面部
1c 基端面部
1c、1d、24b、24f 刃体
1e 基端面部
2 ロッド本体
3 外周管部材
4 作動リンク
5 拡縮制御機構
6 芯材
7、8、9 ピン
21 外管
21a 吐出口
21b ベアリング溝
21e、22a、63 先端部
21d 内面
21f 開口部
22 内管
23 隙間
24 先端ビット部
24a 大径鍔部
24c 板状体
24d 傾斜部
24e 前端部
24g 後端面
24h 係合突起
31 雄ねじ
32 二股クレビス
51 拡縮制御管部材
51a 雌ねじ
51b、52b ベアリング受溝
51c 非円筒部
52 固定部材
53 連結手段(又はボルト)
61 芯材ロッド
62 係止板
62a 係合溝
64 定着コーン
100 補強体
101 ケーシング
G 既設擁壁部
G1 擁壁本体部
G2 栗石部
H1 縮径削孔
H2 拡径削孔
R 拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置(又はロッド)

Claims (10)

  1. 基端部がロッド本体の先端部近傍に拡縮自在にピン接合された拡翼式掘削翼と、
    拡翼式掘削翼の後方のロッド本体に沿って進退自在に外挿された外周管部材と、
    一方の端部が前記拡翼式掘削翼の基端部から離れた中間位置にピン接合されるとともに他方の端部が前記外周管部材の先端部にピン接合され、前記外周管部材の進退に伴って拡翼式掘削翼を拡縮する作動リンクと、
    前記外周管部材の後端部に設けられ、前記ロッド本体の一方向回転により外周管部材をロッド本体先端方向に前進させて拡翼式掘削翼を拡翼状態とし、前記ロッド本体の他方向回転により外周管部材をロッド本体後方向に後退させて拡翼式掘削翼を縮翼状態とする拡縮制御機構と、を具備することを特徴とする拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  2. 前記拡縮制御機構は、
    前記外周管部材の後端部の外周部に螺合されてロッド本体に沿って摺動自在に外挿されるとともに、一部外面が少なくとも両側から挟持可能な平行面を有する非円筒部が形成された拡縮制御管部材と、
    前記拡縮制御管部材の後端部に隣接してロッド本体の外周に固着され、拡縮制御管部材を連結手段により一体化連結することが可能な固定部材と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  3. 前記拡縮制御機構は、前記拡翼式掘削翼が地盤の削孔内で拡翼もしくは縮翼すべき位置に到達している状態で、常に地表に存在する位置となるようにロッド本体に設けられ、
    前記連結手段は、前記固定部材を貫通して拡縮制御管部材の後端部に着脱自在に螺合するボルトであることを特徴とする請求項2記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  4. 前記ロッド本体は外管と内管とからなる二重管構造であり、
    前記拡翼した状態の拡翼式掘削翼の投影域内の外管位置に固化材液の吐出口が設けられ、
    前記外管と内管の間に前記吐出口に連通する固化材液の流路となる隙間が形成されるとともに、
    内管の先端部が外管の先端部近傍内面に固着されて前記隙間が閉鎖されており、
    ロッド本体の先端部である外管の先端部は開口されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  5. 前記外周管部材の先端部には二股状に分岐形成された二股クレビスが設けられ、この二股クレビスの間に挟設されて前記作動リンクの他端部がピン接合され、
    前記吐出口は、前記拡翼式掘削翼が拡翼した状態で前記二股クレビス間の空間域内に対応する外管位置に設けられていることを特徴とする請求項4記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  6. 前記拡翼式掘削翼前方のロッド本体の先端部周面位置に先端掘削ビットが設けられ、
    前記拡翼式掘削翼は、縮翼状態で前記先端掘削ビットの外径内に収まるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の拡翼式掘削翼を備えた地盤改良装置(以下、ロッドと略称する)を用いて地盤の補強を行う芯材入り補強体の施工方法であって、
    芯材をロッド本体先端から挿入してロッド本体先端部の開口部を封鎖するとともに拡翼式掘削翼を縮翼した状態で地盤を所定の第1深度まで削孔する縮径削孔工程と、
    前記第1深度で拡翼式掘削翼を拡翼してロッド本体の吐出口から何も吐出することなく所定の第2深度まで拡翼状態で掘進する無水拡径削孔工程と、
    拡翼式掘削翼を拡翼したままの状態で前記吐出口及びロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出すとともにロッド本体を回転させながら前記所定の第2深度から引き上げることにより、芯材を前記拡径削孔中に残置させるとともに固化材液と掘削土砂とが攪拌混合されたソイルセメントからなる芯材入り補強体を前記拡径削孔内に構築する補強体拡径部構築工程と、
    ロッドを引き上げ拡翼式掘削翼が前記第1深度まで後戻りした時点で拡翼式掘削翼を縮翼するとともに、前記ロッド本体先端部の開口部から固化材液を吐出しながらロッドを引き上げることにより前記縮径削孔部内に固化材液を充填する補強体縮径部構築工程と、を有することを特徴とする芯材入り補強体の施工方法。
  8. 前記地盤は、擁壁本体部とその後側の栗石部とからなる既設擁壁部であって、
    前記第1深度は栗石部を超える位置に設定され、
    前記第1深度までの縮径削孔は予め別途の掘削機により削孔され、
    その後、縮径削孔内に拡翼式掘削翼が縮翼した状態でロッドを挿通して前記無水拡径削孔工程以降の工程を行うことを特徴とする請求項7記載の芯材入り補強体の施工方法。
  9. 前記請求項7記載の芯材入り補強体の施工方法が、土留め壁を有する地盤に対する施工であることを特徴とする施工方法。
  10. 前記第1深度までの縮径削孔部分に管状のケーシングを挿入した後に、拡翼式掘削翼が縮翼した状態で縮径削孔ケーシング内にロッドを挿通して前記無水拡径削孔工程以降の工程を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9のいずれかに記載の芯材入り補強体の施工方法。
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