以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る液体吐出装置を用いたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部(搬送手段に相当)22と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。また、各ヘッド12K,12C,12M,12Yには、それぞれノズル(インク吐出口)から吐出された飛翔中の液滴を光学的に検知するための光源(発光手段に相当)27A及びフォトセンサ(受光手段に相当)27Bからなる吐出検査装置27が配置されている。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンク(インクタンク)を有し、各インクタンクは不図示の管路を介して各ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1において、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、記録媒体の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図8中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。なお、吸引吸着によるベルト搬送手段に代えて、静電吸着によるベルト搬送手段を用いることも可能である。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12の各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図1に示したように、印字部12の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3はヘッド50を吐出口面(ノズル面)側から見た図であり、図4は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
図3の点線で示したように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図4に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図7中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一部(図4において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
上述した構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度αを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度αの方向に沿ってノズル51を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosαとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
ヘッド50の構造及びノズル配列の形態は図3乃至図5で説明した例に限定されない。例えば、図6に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するフルラインヘッドを構成してもよい。
また、図4で説明したとおり、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の構成〕
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図7のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図7に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
図7には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室内)に気泡が混入した場合、ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータを動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面の清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル板表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、アクチュエータ58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面に、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図7で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。また、上記の吸引動作は、ヘッド50へのインク初期装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。
〔制御系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、吐出検出制御部85等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74及びROM75の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
ROM75には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM75は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ74に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてディザ法や誤差拡散法などのハーフトーン化技術によってインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド50の各ノズル51に対応するアクチュエータ58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ84から出力された駆動信号がヘッド50に加えられることによって、該当するノズル51からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部80における所要の信号処理を経て生成されたドットデータに基づき、ヘッドドライバ84を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
吐出検出制御部85は、吐出検出用の光源27Aの点灯(ON)/消灯(OFF)並びに点灯時の発光量等を制御する光源制御回路と、フォトセンサ27Bの駆動回路及びフォトセンサ27Bからの検出信号を処理する信号処理回路とを含んで構成される。吐出検出制御部85はプリント制御部80からの指令に従って光源27A及びフォトセンサ27Bの動作を制御し、フォトセンサ27Bから得られた検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、吐出検出制御部85を通じて得られた検出情報に基づいてノズル51の吐出/不吐出を判断し、不吐出ノズルが検出された場合には所定の回復動作を実施する制御を行う。すなわち、プリント制御部80は、本発明の吐出口選択手段、吐出制御手段及び吐出状態判定手段、更には第1、第2の吐出制御手段及び第1、第2の吐出状態判定手段として機能する。
〔吐出検出の方法〕
図9は飛翔液滴を検出する手段の概略構成図である。同図に示すように、吐出検査装置27は、主に、レーザダイオード等の光源27Aとフォトセンサ27B、光源27Aから射出された光を所定の形状の光束に成形する光学系90、フォトセンサ27Bから得られる検出信号を受けて吐出状態を検知する吐出検知手段92等を含んで構成される。
光源27Aからフォトセンサ27Bに至る光路は、必ずしも一直線の構成である必要はなく、折り返しミラーやプリズムなどの周知の光学部材(折り返し手段)や光ファイバー等を利用して、多様な光路形態とすることが可能である。
本発明の実施に際して光源27Aの種類は特に限定はされないが、レーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)など、比較的波長の揃ったコヒーレンス光源を用いることが好ましい。
光学系90は、光源27Aからの光を第1のビーム幅の略平行光である第1の平行光93とするコリメータレンズ90A及びシリンドリカルレンズ90Bと、この第1の平行光93を、第1のビーム幅とは異なる第2のビーム幅の略平行光である第2の平行光94に変換するビーム変換器90Cとから構成されている。ビーム変換器90Cは、光ビームを絞ったり、横に広げたりしてビームの断面形状(縦方向のビーム幅及び横方向のビーム幅など)を変更するものである。
なお、これらの平行光を異なる幅の平行光としたり、平行光の幅を可変とし、更に平行光の幅の切り換え等を行う光学系については後述する。
第2の平行光94は、ヘッド50のノズル面50Aと記録紙16との間の液滴飛翔空間に形成され、該第2の平行光94の光軸方向は、ヘッド50から吐出されるインク滴(液滴)96の飛翔方向と直交するようになっている。
この第2の平行光(以下「検出光束」という。)94は、集光レンズ98によって集光され、略集光位置において、フォトセンサ27Bに受光されるようになっている。フォトセンサ27Bは、受光量に応じた電気信号を出力する光電変換素子であり、検出光束94内に存在する液滴の数によって受光量が変化し、その出力信号(検出信号)が変化する。
フォトセンサ27Bの検出信号は吐出検知手段92に入力され、該検出信号に基づいて飛翔液滴の有無、すなわちノズル51の吐出状態(吐出/不吐出)が検知されるようになっている。この吐出検出方法の詳細については後述する。
吐出検査装置27は、上述の構成の他に、検出光束94の断面形状を変更する変更手段100、ヘッド50から吐出される液滴96に対して検出光束94を走査させる走査手段102、フォトセンサ27Bの検出信号に基づいて液滴96の飛翔速度を算出する液滴速度算出手段104及び検出光束94中に液滴96を吐出する際の吐出タイミングを制御する吐出タイミング制御手段106を有している。
変更手段100は、光学系90内の光学部材の配置や光学物性(屈折率など)を変更するなどして光学構成を変更する部材構成及びその駆動制御回路等を含む。走査手段(検出光移動手段に相当)102は、光源27A及び光学系90の一部又は全部を移動させる移動機構やモータ等の部材構成及びその駆動制御回路等を含む。吐出検知手段92、液滴速度算出手段104及び吐出タイミング制御手段106は図8で説明したシステムコントローラ72とプリント制御部80並びに吐出検出制御部85のブロックの組み合わせによって実現される手段であり、それぞれ所定のプログラムに基づいて演算及び制御が行われる。
〔吐出検出の原理〕
ここで本発明による吐出検出の原理について説明する。
図10は検出系の模式図である。図の左側に示した光源(ここでは、LDを用いるものとする。)27Aからの光を平行光にしてフォトセンサ27B側に導く光学系が形成される。ヘッド50に設けられたノズル群のうち、検出光束94の光軸と平行な線上に配置された2つのノズル(図10中の[1] で示した位置に対応する検出対象ノズル[1] と、[2] で示した位置に対応する検出対象ノズル[2] )を選択し、これら2ノズルを同時に駆動することによって、検出光束94中に2個の液滴96-1、96-2を同時に存在させる。これら2液滴間の距離(概ね2つのノズル[1] ,[2] 間の光軸方向距離)がどの程度の距離にあれば、2液滴の検出が可能であるかを考察する。
一般的に、直進する光を遮る障害物が存在している場合でも、光は障害物のエッジから影の側へ回り込むために(回折現象)、当該障害物の後方のある距離を隔てた障害物の背面側領域にも光が入り込む。
障害物から近い距離では「干渉」の影響により光の強弱分布が見られるが、「光量」に主点をおいて「回折」の現象を検討する。
図11は、検出光束中に液滴(光を遮る障害物)が存在する様子を描いた模式図である。直径φDの液滴110に図の左から平行光(波長λ)が照射されると、フランフォーファ回折により、角度θの光の回り込みが発生する。それによって、液滴110後方に図中斜線で示した略三角形の領域(実際には軸中心に対称なので略円錐形状の領域)のように、光が届かない領域(以下「影領域」と呼ぶ)120が発生する。
回折角度θは、D>λの条件においては、θ=λ/D程度となる。よって、液滴110の中心から当該影領域120の頂点までの距離(回折光の回り込み距離)をLとすると、次式
L=D/(2×tan θ)
で表される。具体的な数値で例示すると、液滴径φD=30μm(14pl相当) 、波長λ=800nm の場合、L=0.56mmとなる。
かかる距離Lで規定される影領域120内に光は到達し難く、逆に、この規定距離Lよりも離れた領域には検出光が到達する。したがって、図12に示した液滴A,Cのように、同時に吐出された2つの液滴A,Cの光軸方向距離が規定距離Lよりも小さい場合には後方の液滴Aに光が十分に届かず、液滴Aを検出することが難しい。
これに対し、同図の液滴B,Cのように、2つの液滴B,Cの光軸方向距離が規定距離Lよりも大きい場合は後方の液滴Bに光が十分に回り込むため、液滴Bを検出することができる。2液滴の中心間距離(すなわち、ノズルの中心間距離) をPn とするとき、Pn >Lの条件を満たす2ノズルが検査対象として選択される(図12参照)。
このように、複数の液滴を同時に吐出して検出を行う際に、その光軸方向の距離(間隔)を液滴サイズと光源波長から算出される規定値よりも大きくとることで、精度のよい検出が可能となる。
図13(a)は検出光束94の断面(フォトセンサ27Bから見た受光断面)と液滴96の位置関係を示した図であり、図13(b)は液滴の通過による検出信号の変化を示すセンサ出力波形図、図13(c)は図13(b)に示した検出信号の変化分を抽出した信号(変化量の大きさを示す信号、以下「変化抽出信号」という。)を示す波形図である。
これらの図面に示したように、検出光束94内に液滴(1滴)96が進入すると、この液滴96によって検出光束94の一部が遮られ、フォトセンサ27Bへの入射光量が減少する。これに伴い、フォトセンサ27Bのセンサ出力が低下する。液滴96が検出光束94を通過し終えて、検出光束94内に液滴96が存在しなくなると、フォトセンサ27Bの出力は元の基準レベルに復帰する。
図13(c)に示したように、液滴判定用のしきい値(Th1)を設定しておくことにより、センサ出力の変化抽出信号としきい値(Th1) とを比較して検出光束94内の液滴の有無を判定することができる。
図14及び図15は、2つの液滴を同時に検出する場合に得られるセンサ出力の変化抽出信号の例を示した図である。これらの図面中縦軸は信号の振幅(例えば、電圧値)、横軸は時間を示す。
図14は、図12で説明した液滴B,Cの位置関係にある2液滴が検出光束内を通過する際に得られる変化抽出信号の例である。この場合、2つの液滴が規定距離Lよりも遠い位置にあるため、2滴目(後方)の液滴Bにも光が回り込んで液滴Bに照射され、その分だけ光を遮る。したがって、図14に示すように大きな信号変化が得られる。これら2液滴による光の遮蔽面積は一滴の場合(図13)の約2倍となるため、図14に示したように、センサ出力の変化抽出信号の変化量は図13(c)の約2倍となる。
このため、図14に示すように、一滴のみの通過を判定する第1のしきい値(Th1) と、2滴の通過を判定する第2のしきい値(Th2;ただし、本例ではTh1<Th2とする。) とを設定しておくことにより、センサ出力の変化抽出信号としきい値(Th1,Th2)とを比較して検出光束94内の液滴の個数を判定することができる。
変化抽出信号が第2のしきい値Th2を超えていれば、2ノズルとも正常な吐出が行われたと判断でき、変化抽出信号が第1のしきい値Th1を超えて第2のしきい値Th2に満たない場合には、何れか一方のノズルは正常、他方は異常であると判断できる。また、変化抽出信号が第1のしきい値Th1を下回っている場合には、2ノズルとも異常であると判断される。
これに対し、図12で説明した液滴A、Cの関係にある2液滴の場合は、液滴間の距離が規定距離Lよりも小さいため、2滴目の液滴Aに光が当たりにくい(前の液滴Cの影に隠れてしまう)。したがって、2ノズルがともに正常に吐出しても検出信号の出力が小さく、図15の実線で示したように、変化抽出信号の変化量は小さくなる。すなわち、図13(c)で説明した一滴分の信号と略同レベルの信号となり、しきい値Th2を超えない出力となる。このため、図15と図13(c)で説明した変化抽出信号から、2滴が通過したのか、1滴のみが通過したのかを判別できない。
以上から、2滴の同時検出を行う場合には、検出対象の液滴間隔をコントロールして、2液滴間距離が規定距離Lよりも大きくなるように、検出対象ノズルを選択することが必要である。なお、ここでは、2液滴を例に述べたが、同様の原理で同一線上に並ぶn個(nは2以上の数)の液滴について検出が可能である。この場合、光軸方向線上に配置されるn個のノズルを同時に駆動し、しきい値をn段階(Thj ;j =1,2 …,n) に設定しておくことにより、略同時に吐出された液滴数を判別することができる。
このように、同時検出する液滴数に応じて複数の判定用しきい値を設定することにより、検出対象とされた複数のノズルのうち正常なノズル数(又は異常ノズル数)を把握することができる。実際の装置では、検出信号の処理回路又は制御ソフトにおいて上述の判定用しきい値を持ち、吐出の判定が行われる。
吐出異常が検出された場合には所定の回復動作や打滴補正等を実施する制御が行われる。なお、吐出検出によって異常が検出された場合には、当該複数のノズルについて2度目の検出を行うこととし、この2度目の検出にて1ノズルずつ又は1度目よりも少数のノズルの吐出を行い、又は検出するノズルの組み合わせを変えて吐出を行い、異常ノズルを特定する態様もある。
また、吐出異常が検出されたノズルグループのみについて吸引、予備吐出等のメンテナンス動作を実施する態様も好ましい。この場合、例えば、キャップ64の内側が仕切壁によってノズルグループに対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
上述した検出処理は、印字動作中に検出光束94をヘッド50に対して走査することにより行うことが可能である。もちろん、吐出検出は印字動作中に実施する態様に限定されず、非印字中のメンテナンス時(予備吐出時など)に吐出動作を実施して吐出検出を行うことも可能である。
ここで図16乃至図18を参照し、検出対象となるノズル51と検出光束94の光軸の関係例を説明する。
図16は、2次元配列されたノズル列から検出対象となる2ノズルを選択する例を示した平面模式図である。図16はヘッドのノズル面側からみた図である(図17,図18も同様)。図16に示した例では、ヘッド50の長手方向(図16の横方向)に対して角度αの斜めの列方向に沿って並んだノズル51の配列方向と検出光束94の光軸とが角度ψ(ψ>0)を成し、検出対象となる複数のノズル51は、ビーム幅W1 の検出光束94の光軸と平行な線上に配置されている。このような検出光束94を形成する検出光学系が構成されている。
すなわち、図16において黒丸で示したノズル51-A,51-Bが検出対象となっており、これら異なるノズル列にあるノズル51-A,51-Bから略同時に液滴が吐出される。ここでいう「略同時に吐出」とは、ノズル51-A,51-Bに対応した吐出駆動用のアクチュエータへの駆動信号の印加タイミングにおいて同時という意味であり、実際の液滴の吐出タイミングにおいて厳密に同時性を要求するものでない。
図9で説明した走査手段102によって図16の検出光束94をノズル配列に対して相対移動させることにより、検出対象が変更される。
図17は、2次元配列されたノズル列から検出対象となる2ノズルを選択する他の例を示した平面模式図である。図示の例は、ヘッド50の長手方向(図17の横方向)に対して角度αの斜めの列方向に沿って並んだノズル51の配列方向と検出光束94の光軸とが平行を成し、検出対象となる複数のノズル51から吐出される液滴がビーム幅W2 の検出光束94の断面内の略同じ位置を通過するように検出光学系が構成されている。
すなわち、図17において、黒丸で示したノズル51-C,51-Dが検出対象となっており、同一ノズル列内にあるノズル51-C,51-Dから同時に吐出される液滴をフォトセンサ27Bから見たとき、2つの液滴の位置は重なるが、光軸方向に規定距離Lよりも離れた位置関係になっている。また、図9で説明した走査手段102によって図17の検出光束94を移動させることにより、検出対象となるノズル列を変更できる。
図18は、2次元配列されたノズル列から検出対象となる2ノズルを選択する更に他の例を示した平面模式図である。図示の例は、フルライン型ヘッドの主走査方向に沿って並ぶノズル列と平行に検出光束94の光軸を配置したものであり、検出対象となる複数のノズル51から吐出される液滴がビーム幅W3 の検出光束94の断面内の略同じ位置を通過するように検出光学系が構成されている。
すなわち、図18において、黒丸で示したノズル51-E,51-Fが検出対象となっており、同一ノズル列内にあるノズル51-E,51-Fから吐出される液滴をフォトセンサ27Bから見たとき、2つの液滴の位置が重なるが、光軸方向に規定距離L以上離れた位置関係になっている。また、図9で説明した走査手段102によって図18の検出光束94を移動させることにより、検出対象となるノズル列を変更できる。
検出光束94の断面形状(断面形状及び断面積)は、同時検出する液滴数、吐出検出対象となるノズル51の配置関係、並びに吐出タイミングの時間差などを考慮して適宜設定される。例えば2400dpi の解像度を実現する場合、ドットピッチは約10μmであり、飛翔中の液滴(球形液)で直径15μm程度となる。検出光束94の断面積が大きくなると、吐出液滴による遮蔽面積の割合が小さくなるため、SNが悪くなる。したがって、検出対象たる複数の液滴が空間的、時間的に重ならないように、なるべく細いビームを用いることが好ましい。
より好ましくは、ビーム形状を可変とし、状況に応じて自動的にビーム形状を適切な形状に切り換える制御を行う。ビーム形状を最適化してビーム断面積に対する液滴の遮蔽率を高めることにより、SNのよい、高精度の検出を実現できる。検出光のビーム形状を変更するための手段については後述する。
〔飛翔方向異常及び飛翔速度異常の検出の原理〕
次に、図11及び図12で説明した回折現象による影領域120を利用した吐出方向異常及び吐出速度異常の検出原理について説明する。
図19(a)は、2ノズルから同時吐出された液滴を検出光の光軸方向から見た図である。検出光は紙面表から裏方向へと進むものとする。また、図19(b)は、図19(a)の側面図であり、図19(b)の左から光が照射されるものとする。
検出光の光軸と平行な線上に配置された2つのノズルを同時に駆動することによって、検出光束94中に2個の液滴を同時に存在させるとき、これら2液滴間の距離(すなわち2ノズルの光軸方向距離)は、図19(b)に示したように、規定距離Lよりも短い距離であるとする。すなわち、2ノズルが正常に吐出された場合に、検出光束の進行方向に対して後方(下流)の液滴Aは前方(上流)の液滴Cによる影領域120の中を通過するような位置関係の2ノズルが選択される。
選択された2ノズルが正常の吐出(吐出方向及び吐出速度ともに正常な(通常の)液滴飛翔)を行っていれば、図19(a)に示したA滴、C滴のように、検出光束の断面内で両液滴が重なり、後方のA滴に十分には光が当たらないためフォトセンサ27Bからの出力波形の変化量(すなわち、変化抽出信号の波形振幅)は小さい(図20の破線で示した波形参照)。
これに対し、液滴の飛翔速度(吐出速度)に異常が発生し、2液滴間で速度のずれが生じた場合には、例えば、図19(a),(b)に示したD滴のような状態となる。D滴は、手前の液滴Cに対して飛翔速度が遅くなっている。飛翔速度が基準(C滴)より遅いため、図19(a)において、D滴はC滴の上に描かれている。
また、液滴の飛翔方向(吐出方向)に異常が発生し、2液滴間で吐出方向のずれが生じた場合には、例えば、E滴のような状態となる。E滴は、手前の液滴Cに対して飛翔方向が図19(a)の右にずれている。E滴は図19(b)の側面図ではC滴の後方位置から外れていないが、図19(a)で示したように断面方向にずれている。
光軸断面方向からみて、D滴、E滴のように基準のC滴からずれていると、C滴のみならず、D滴、E滴にも光があたって、D滴,E滴によって検出光が遮られるので、フォトセンサ27Bの検出信号として小さくなる。つまり、変化抽出信号の波形振幅が大きくなるため(図20の実線で示した波形参照)、異常を検出できる。
上記のような、変化抽出信号の違いを表したものが図20である。本来2つの液滴が同様の吐出(正常の吐出)をしていれば、図19(a)のA滴及びC滴のように、光軸断面内で2滴が略重なり合い、かつ規定距離Lより近いから図20の破線のような出力になる。すなわち、2滴吐出しているが、検出上は変化の程度が小さく、波形の差が少ない出力が得られる(図15の実線波形を比較参照)。
これに対し、飛翔速度異常や飛翔方向異常によって、図19(a)のD滴やE滴のような位置になると、検出光を遮る面積が大きくなるので、図20の実線のような出力波形になる。
このように、規定距離Lよりも近い距離の2ノズルを略同時に吐出させた場合、各ノズルから吐出が行われていることが前提となるが、フォトセンサ27Bからの出力が小さければ(1滴分の波形しか出なければ、)、飛翔方向及び飛翔速度が正常と判断できる。それ以外は飛翔方向又は飛翔速度について異常である(飛翔方向や速度が揃っていない)と判断できる。すなわち、図20のように、変化抽出信号についてしきい値Th1、Th2を設け、しきい値Th2を超えた場合、或いはしきい値Th1を下回った場合には吐出不良が発生したと判断できる。
〔制御フロー〕
次に、本実施形態のインクジェット記録装置10における吐出検出の手順について説明する。
図21は、不吐出検出の制御例を示すフローチャートである。不吐出検出のシーケンスがスタートすると(ステップS110)、まず、検出光の光軸と平行な直線上に並ぶノズル列のうち、ノズル間距離Pn が規定距離Lよりも大きい位置関係を有する2つのノズル( Pn >Lの関係を満たす2ノズル)を選択する(ステップS112)。規定距離Lの情報は図8で説明したROM75などの記憶手段に格納されている。また、検出光の光軸位置は図9で説明した走査手段102の制御情報或いは位置検出手段からの検出情報に基づいて把握する。
こうして、上記の条件を満たして選択された2ノズルについて両者のアクチュエータを同時に駆動し(ステップS114)、2ノズルから略同時に液滴を吐出させる。この吐出動作に伴うフォトセンサの受光量を測定し(ステップS116)、フォトセンサから得られる検出信号の変化抽出信号と、しきい値Th2とを比較する(ステップS118)。ステップS118において検出信号の変化抽出信号が所定のしきい値Th2以上であれば、吐出が正常に行われていると判定される(ステップS120)。その一方、ステップS118で検出信号の変化抽出信号が所定のしきい値Th2に満たない場合には、2ノズルのうち少なくとも一方のノズルについて吐出異常があると認定される(ステップS122)。
この場合、異常ノズルの特定処理フロー(図22)に移行する。図22に示したように、異常ノズル特定処理がスタートすると(ステップS210)、まず、検出信号の変化抽出信号としきい値Th1の比較と行う(ステップS212)。検出信号の変化抽出信号がしきい値Th1以下の場合は、両方のノズルが不吐出であると判断される(ステップS214)。
ステップS212において、しきい値Th1を上回っている場合には、2 ノズルのうち何れか一方が不吐出であり、どちらのノズルが不吐出であるかを特定すべく、2 ノズルの吐出タイミングをずらして順次駆動を行う(ステップS216)。
各ノズルの駆動タイミングに同期して受光量の測定を行い(ステップS218)、各ノズルの吐出動作について検出信号の変化抽出信号を得る。得られた変化検出信号としきい値Th1とを比較し、しきい値Th1以下となるノズルが異常ノズルであると判定される(ステップS220)。ステップS210又はS214で異常ノズルが特定されたら、図21のフローチャートに復帰して、ステップS126に進む。
図21のステップS126では、特定された異常ノズルの位置と異常ノズルの数を記憶する処理が行われる。かかる情報を記憶する手段は、装置内部のメモリでもよいし、着脱可能は外部記憶装置(リムーバブルメディア)でもよい。
次に、検出を終了するか否かの判定を行う(ステップS128)。この判定は、ヘッドの全ノズルの検査が終了したか否か、或いは、予め設定されていた検査対象ノズル(一部のノズル群)について検査が終了したか否か、若しくは、ステップS126で記憶した異常ノズル数が規定値に到達したか否かなどの観点から判断される。
ステップS128において、検出を終了させない場合は、ステップS112に戻り、検査対象のノズルを変えて、別の2ノズルを選択し、ステップS112〜S128の処理を繰り返す。
ステップS128において、検出を終了させると判断した場合には、ステップS130に進む。ステップS130では、検出結果に応じてどのような対応処理を実施するかの判定を行う。装置内のメモリ(好ましくは、不揮発性の記憶手段)には、検出結果と対応処理の関連付けを定義したテーブルデータが予め格納されており、このテーブルに従って処理内容が決定される。
例えば、総ノズル数に対する異常ノズルの割合が規定値を超えた場合には、吐出を停止し、ノズル吸引などの回復処理を実施する(ステップS132)。或いはまた、異常ノズル数が比較的少なく、かつ隣接ノズルによる代用打滴によって画像上のカバーが可能な状況の場合は、隣接ノズルによるリカバリー(不吐ノズルの近隣ノズルによる画像上の代用打滴)を行う。或いは、回復処理(ステップS132)やリカバリー処理(ステップS134)に代えて、又はこれと組み合わせてエラー表示などの処理を行う態様もある。また、もし、異常ノズルが検出されなければ、処理不要と判断して、対応処理を行わずに、本シーケンスを終了する(ステップS136)。
図21及び図22で説明した方法によれば、光軸方向の一定距離よりも離れた位置のノズルを同時検出の対象として選択するようにしたので、複数の液滴を同時に検出でき、検出時間の短縮を達成できる。これにより、トータルの印刷のスループットを向上させることができる。また、異常ノズルが検出された場合に、回復処理やリカバリーなどの対応処理を行うため印刷品質の向上を図ることができる。
なお、上記説明では、異常ノズルが検出された場合に、同時に吐出させたノズルを順次吐出させることで、異常ノズルを特定したが(図22)、吐出するノズルの組み合わせを変えることによって、異常ノズルを特定することも可能である。
次に、飛翔方向及び速度の異常を検出する場合について説明する。
図23は、飛翔方向及び速度の異常検出の制御例を示すフローチャートである。飛翔方向及び速度の異常検出のシーケンスがスタートすると(ステップS310)、まず、検出光の光軸と平行な直線上に並ぶノズルのうち、ノズル間距離Pn が規定距離L以下の位置関係を有する2つのノズル( Pn ≦Lの関係を満たす2ノズル)を選択する(ステップS312)。
これら選択された2ノズルについて両者のアクチュエータを同時に駆動し(ステップS314)、2ノズルから略同時に液滴を吐出させる。この吐出動作に伴うフォトセンサの受光量を測定し(ステップS316)、その変化量抽出信号としきい値Th1、Th2とを比較する(ステップS318)。変化抽出信号が第1のしきい値Th1以上、かつ第2のしきい値Th2以下である場合には、2ノズルの吐出は正常であると判断される。
その一方、ステップS318において、検出信号の変化量抽出信号が第1のしきい値Th1未満であるか、或いは第2のしきい値Th2を上回るものである場合は、吐出方向及び吐出速度のうち少なくとも一方に異常があると判断される(ステップS322)。
ステップS322又はステップS320の後は、ステップS328に進み、検出を終了するか否かの判定を行う。この判定(ステップS328)は、ヘッドの全ノズルの検査が終了したか否か、或いは、予め設定されていた検査対象ノズル(一部のノズル群)について検査が終了したか否か、若しくは、異常ノズルが検出されたか否かなどの観点から判断される。
ステップS328において、検出を終了させない場合は、ステップS312に戻り、検査対象のノズルを変えて、別の2ノズルを選択し、ステップS312〜S328の処理を繰り返す。
ステップS328において、検出を終了させると判断した場合には、ステップS330に進む。ステップS330では、検出結果に応じてどのような対応処理を実施するかの判定を行う。装置内のメモリ(好ましくは、不揮発性の記憶手段)には、検出結果と対応処理の関連付けを定義したテーブルデータが予め格納されており、このテーブルに従って処理内容が決定される。
例えば、異常ノズルが検出された場合には、吐出を停止して、ノズル吸引などの回復処理を実施する(ステップS332)。或いはまた、異常ノズルが検出されても、隣接ノズルによる代用打滴によって画像上のカバーが可能な状況の場合は、隣接ノズルによるリカバリー(不吐ノズルの近隣ノズルによる画像上の代用打滴)を行う(ステップS334)。また、回復処理(ステップS332)やリカバリー処理(ステップS334)に代えて、又はこれと組み合わせてエラー表示などの処理を行う態様もある。また、もし、異常ノズルが検出されなければ、処理不要と判断して、対応処理を行わずに、本シーケンスを終了する(ステップS336)。
なお、異常ノズルが検出された場合に、同時吐出したノズルを順次吐出するか、吐出するノズルの組み合わせを変えることにより、異常ノズルを特定することができる点は図22で説明した例と同様である。
図23で説明した方法によれば、飛翔方向異常や飛翔速度異常を高精度に検出することができる。また、異常ノズルが検出された場合に、回復処理やリカバリーなどの対応処理を行うため印刷品質の向上を図ることができる。
上記説明では、不吐出検出のシーケンス(図21,図22)と、吐出方向及び吐出速度の異常検出のシーケンス(図23)とを独立して行う例を述べたが、これらを適宜組み合わせる制御態様も可能である。
図24は、不吐出検出のシーケンスと、飛翔方向及び速度の異常検出シーケンスを組み合わせた検出の手順を示したフローチャートである。
同図において、図21乃至図23で説明したフローチャートと同一又は類似の工程には、同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図24のフローチャートは、図21と比較して、ステップS129による判断が追加されている。この判断は、不吐出の検出に続いて吐出方向及び吐出速度の異常の検出を行うか否かを決定する処理である。ユーザが所定の入力装置(ユーザインターフェース等)を介して指定した検出モードに基づいて判断を行ってもよいし、タイマーなどの時間管理その他の所定の条件に基づくプログラムによって自動的に判断してもよい。
ステップS129において、吐出方向及び吐出速度の異常の検出を行わないと判断した場合は、ステップS130に進み、以下、図21で説明したように、不吐出の検出結果に基づいて、回復処理、リカバリー処理、エラー表示などの処理を行う(ステップS130〜S136)。
一方、ステップS129において、飛翔方向及び速度の異常の検出を行うと判断した場合は、ステップS140に進む。ステップS140では、不吐出検出の結果に基づいて不吐出ノズルの有無を判定する。不吐出ノズルが検出されている場合には、回復処理(ステップS142)を実施し、不吐出を解消してから、飛翔方向及び速度の異常検出処理(図23で説明済み)に移行する(図24のステップS144)。
また、ステップS140において、不吐出ノズルが検出されていない場合は、回復処理(ステップS142)を省略して、飛翔方向及び速度の異常検出シーケンス(図23で説明済み)に移行する(図24のステップS144)。
これは、図23で説明した飛翔方向及び速度の異常検出シーケンスでは、検査対象のノズルが不吐出でないことを前提とすることに配慮したものである。前段の不吐出検出シーケンスで不吐が検出された場合にはノズル吸引などの回復処理を行い、不吐出ノズルを解消してから、後段の吐出方向及び吐出速度の異常検出シーケンスに移行する。
なお、ノズルが不吐になる場合、初めは飛翔方向異常や速度異常が発生し、その後不吐に至ることから、吐出検出についてまず先に飛翔方向及び速度の異常検出を実行してから、不吐出の検出を行うという手順も可能である。
〔検出光のビーム形状を変更するための手段〕
ここで、検出光束94の断面形状を制御する構成について説明する。ある幅の平行光を異なる幅の平行光にするレンズ系は、一般に「望遠鏡」と同様の光学系として構成される。望遠鏡で無限遠のものを見る状態にすると、入射光は平行光となり、接眼レンズからの出射光も平行光になる。この望遠鏡の光学系に対し、「接眼レンズ側」から光を入射すると、望遠鏡の光学系はビームエキスパンダとして機能する。このような光学系の基本構成の例を次に示す。
図25に示すのは、ある幅の平行光を異なる幅の平行光に変換する光学系の基本構成を示す第1の例であり、同図の(a)は光学系を上から見た平面図、(b)は光学系を横(正面)から見た図となっている。つまり光軸に対し直交した2方向から見た図をそれぞれ(a),(b)として示してある。なお、これらの図において左から光が入射しているものとする(以下、図26乃至図31における(a),(b)の関係、並びに入射光の進入方向は図25と同様である)。
図25に示した構成は、ガリレオタイプのビームエキスパンダ光学系であり、光軸に直交する2つの軸の内、特に図25(b)に示す1つの方向で、レンズ200aは光を発散させる凹レンズであり、レンズ200bは凸レンズとなっており、ビーム幅をd1 からd2 へと変換するビームエキスパンダとして機能している。また、図25(a)に示すように、光軸に直交する他の方向では、光学的なパワーを持たないシリンドリカルタイプのビームエキスパンダとなっている。これにより、縦横のサイズが異なる矩形状の平行光を形成することができる。
図26は、ある幅の平行光を異なる幅の平行光に変換する光学系の基本構成を示す第2の例である。この第2の例は、ケプラータイプのビームエキスパンダ光学系であり、光軸に直交する2つの軸の内、特に図26(b)に示す方向で、レンズ202a及びレンズ202bともに凸レンズとなっており、ビームエキスパンダとして機能し、ビーム幅を変換している。また、図26(a)に示すように、光軸に直交する他の方向では、光学的なパワーを持たないシリンドリカルタイプのビームエキスパンダとなっている。
上述した図25及び図26のどちらの光学系を用いてもビームエキスパンダとして使用可能である。
また、図27に示す基本構成の第3の例は、上述した図25のタイプで焦点距離の異なる2つのガリレオタイプのビームエキスパンダを向かい合わせに直列に2つつなげて使用した例である。すなわち、図27(a)に示される方向では、入射光前段の凸レンズ204a及び凹レンズ204bからなるビームエキスパンダで平行光幅が狭くされ、図27(b)に示される方向では、入射光後段の凹レンズ204c及び凸レンズ204dからなるビームエキスパンダで平行光幅が広くされている。
また、図28に基本構成の第4の例を示す。この例は、アナモルフィックプリズムペアを使用したビームエキスパンダである。同図に示すように、台形状の断面を持った四角柱状のプリズム206a、206bを用いることにより平行光の入射角に応じて出射光の幅を連続的に変えることができる(図31参照)。このプリズム206a、206bを2つペアで使用してこれらを適切な位置関係に置くことにより、入射光軸と出射光軸を平行にすることができる(ただし、一致はしない。)。また、これらのプリズム206a、206bを2つ使用することで、平行光の幅を変えられる範囲が大きくなる。
更に、図28では、これらのプリズム206a、206bの後に平面鏡(ミラー)206cを置き、このミラー206cの位置を調整することで、平行光の幅を変換した後の光軸を一定にするようにしている。またこの場合、プリズム206a、206bを透過した後の光軸は入射光と平行である必要はなく、ミラー206cの位置と角度を同時に調整することにより、常にミラー206cを反射した後の出射光の光軸を一定にすることができる。
次に、平行光の幅を可変とする、すなわち入射光と出射光の幅の関係を可変とする光学系の構成例について説明する。
まず、前述した図25又は図26に示したようなレンズを用いた系では、これらの図の左側の入射側レンズと右側の出射側レンズの一方或いは両方に、一般的に知られたズーム光学系を用い、焦点距離を可変にすることで、入射光と出射光の幅の関係を連続的に可変とすることができる。この場合図25、図26に示したようにシリンドリカルレンズを用いたズーム光学系となる。
図29に、平行光幅を可変とする第1の構成例を示す。この例は、図25に示したものと同様の光学系であり、光軸に直交する一の方向で凹レンズ、他の方向でシリンドリカルレンズとなっているレンズ208aと、一の方向で凸レンズ、他の方向でシリンドリカルレンズとなっているレンズ208bとで構成され、特に、出射側のレンズ208bの焦点距離を図25の例よりも短くしたものである。
すなわち、図29に示した出射側のレンズ208bの焦点距離をいろいろと変えることにより入射光の幅d3 と出射光の幅d4 との関係を変えることができる。図25又は図29のような、出射幅の異なる光学系を複数用意して置き、これらを切り換えることにより必要な幅の平行光を得ることができる。
図30は平行光幅を可変とする第2の構成例を示す図である。この構成は、出射側に平行光の幅を変える可動式のアパーチャを配置した例である。図30(a)及び(b)に示すように、本例の基本的なレンズ構成は図25に示すものと同様であり、入射側のレンズ210aは光軸に直交する一方向に凹レンズ、他の方向にはシリンドリカルレンズとなっており、また出射側のレンズ210dは、光軸に直交する一方向に凸レンズ、他の方向にはシリンドリカルレンズとなっている。更に、本例では、出射側のレンズ210dの後方に平行光の幅を変えるための可動式のアパーチャ212が設けられている。アパーチャ212は、図30(b)に矢印で示したように駆動し、その間隙を調整して平行光の幅を可変にするようになっている。
また、本例では、出射側のレンズ210dに対し、複数のレンズ210b、210cを組み合わせて収差を良好に補正するようにしている。このように、収差補正した光学系を使用することで、インク滴の検出に用いるような、比較的長い距離に平行光を通す目的での使用に好適な構成となる。
図31に平行光幅を可変とする第3の例を示す。これは、図28と同様の構成を示すもので、プリズム206a、206bの位置関係を変えて平行光の幅を変えるようにしたものである。
次に、平行光の断面形状がインク滴の飛翔方向に長い場合と、それと直交する方向に長い場合とを切り換えるビーム成形の手段について説明する。
平行光幅の縦横を切り換える1つの方法としては、光軸の周りに光学系を回転させる方法がある。すなわち、上で説明した図25乃至図31の何れの光学系でも、光軸に対して直交した2つの方向で入射平行光に対する影響が異なっているため、これらのうちプリズムを用いた図28及び図31のものを除いて、光学系を光軸の周りに90度回転させれば、縦長断面の平行光を横長断面の平行光に切り換えることができる。また、図28及び図31の場合には、プリズム部分を出射光軸周りに90度回転させれば、同様に平行光幅を切り換えることができる。これらの場合には、図9で説明した変更手段100として、光学系90の構成要素(レンズ或いはプリズム)を機械的に回転させる駆動系を含んで構成される。
また、平行光幅の縦横を切り換える他の方法としては、上で図29乃至図31に示した平行光幅を可変とするビームエキスパンダを2つ直列に、それぞれ光軸に対して直交する2つの方向で平行光の幅が独立に変わるように用いる方法が考えられる。
なお、図27において2つのビームエキスパンダを直列に繋いだものを示したが、図28乃至図31に示したビームエキスパンダの2つをこのように直列に、しかも、それぞれ光軸に対して直交する2つの方向で平行光の幅が独立に変わるように用いることにより、縦長断面の平行光を横長断面の平行光に変換することができる。
このとき、特に、ズームレンズやアナモルフィックプリズムのペア等、平行光の幅を連続で可変にできるものを使用することで、ビーム形状の状態を連続的に変化させることができる。
〔他の実施形態〕
図32に本発明の他の実施形態を示す。同図に示すように、複数の光源241,242を用いて、複数本の検出光束244,245を生成し、これら複数本の検出光束244,245を同時に使用して吐出検出を行う態様も可能である。この場合、受光系には複数本の検出光束244,245に共通の集光レンズ250を用い、光源数よりも少ない数(図32において1つ)のフォトセンサ252に光を導く構成とすることができる。なお、図32では、2つの光源241,242を示したが、更に多数の光源を用いてもよい。
このような構成によれば、より多数のノズル51の吐出状態を同時に検出することができ、検出時間の一層の短縮化を実現できる。
また、図33に示すように、受光側に導光路256を配置し、当該導光路256の端部にフォトセンサ258を配置する構成も可能である。光源241,242から照射された検出光束244,245は導光路256によって受光され、当該導光路256内を通ってフォトセンサ258に導かれるようになっている。
このような構成においても、光源数よりも少ないフォトセンサ数とすることができる。また、図33の構成は、受光系の移動機構が不要であり、複数の光源241,242を独立に移動させることも可能である。
上述の説明では、インクジェット記録装置10を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、印画紙に非接触で現像液等を塗布する液体吐出ヘッドを備えた写真画像形成装置についても本発明の液体吐出装置を適用できる。また、本発明の適用範囲は画像形成装置に限定されず、液体吐出ヘッドを用いて処理液その他各種の液体を被吐出媒体に向けて噴射する各種の装置(塗装装置、塗布装置、配線描画装置など)について本発明を適用することができる。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…印字ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、22…吸着ベルト搬送部、27…吐出検査装置、27A…光源、27B…フォトセンサ、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、57…個別電極、58…アクチュエータ、72…システムコントローラ、80…プリント制御部、84…ヘッドドライバ、85…吐出検出制御部、90…光学系、94…検出光束、96…インク滴、241,242…光源、244,245…検出光束、252…フォトセンサ、256…導光路、258…フォトセンサ