以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る液滴吐出装置を用いたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12Y,12Mに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。また、各ヘッド12K,12C,12M,12Yには、ヘッド内流路を光学的に観察するための観察ユニット27が設けられている。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図9中符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12の各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図1に示した印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部24により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の4−4線に沿う断面図)である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b) に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a) の構成に代えて、図3(c) に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図3(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図4に示したように、ヘッド50は複数枚のプレート部材(502〜510)を積層接合して作製され、内部において圧力室52、供給口54、共通流路55等の所要の流路が形成されている。すなわち、図4の上からベースブレート502、共通流路プレート504、反射プレート506、圧力室プレート508、ノズルプレート510の順に接合されている。
ベースプレート502は、共通流路55の一面(図4において天面)を構成する部材であって、光透過性を有する材料(透明材料)から成る。なお、観察用の光が透過すればよいため、無色透明に限らず、有色透明であってもよい。少なくともヘッド内観察に必要な領域部分が透明体であればよいが、ベースプレート502全体を透明体としてもよい。
共通流路プレート504は、共通流路55の壁面を構成する部材である。反射プレート506は、ガラス基板516に誘電体多層膜ミラー517が蒸着された構造を有する。この反射プレート506は、共通流路55と圧力室52との間に配置され、誘電体多層膜ミラー517側の面が共通流路55の一面(図において床面)を構成するとともに、その反対側のガラス基板516面が圧力室52の一面(図において天面)を構成する。また、反射プレート506は、圧力室52と共通流路55とを繋ぐ供給口54に相当する流路の壁面を構成する部材でもある。
圧力室プレート508は、圧力室52の壁面を構成する部材である。ノズルプレート510には、インク吐出口となるノズル51が穿設されている。なお、「ノズル」は、液が吐出する最後の絞り部分である。このノズルプレート510は、圧力室52の一面(図4において床面)を形成する部材であるとともに、振動板(加圧板)としての役割を兼ねており、該ノズルプレート510には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。なお、各プレート部材(502〜510)の流路に対応する穴や溝はエッチングやプレス加工など周知の加工技術を用いて形成される。
図示のとおり、本例のヘッド50は、反射プレート506を挟んで圧力室52と共通流路55とが積層方向(図4の上下方向)に階層的に配置された構造を有し、圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通している。
また、共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図6中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
アクチュエータ58の個別電極57に駆動電圧を印加することによって該アクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。インク吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の構成〕
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面(ノズルプレート510表面)に摺動可能である。ノズルプレート510にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズルプレート510に摺動させることでノズルプレート510表面を拭き取り、ノズルプレート510表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータ58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズルプレート510表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、アクチュエータ58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面50Aに、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。
図7は、図4で説明した誘電体多層膜ミラー517の反射特性例を示すグラフである。図7の横軸は入射光の波長を示し、縦軸は反射率を示す。同図に示したように、この誘電体多層膜ミラー517は、入射光の波長によって反射率(透過率)が変わり、相対的に短波長側の波長帯域(反射波長帯域)において高い反射率を有し、かかる反射帯域外の長波側の帯域(透過波長帯域)において非常に低い反射率を有している。
図8(a)は観察ユニット27の構成図である。同図に示したように、観察ユニット27は、第1光源71、第2光源72、カメラ74、ハーフミラー76,77及びレンズ80〜86を含んで構成されており、これら要素から成る図示の如き光学系がケーシング90内に収納されたものである。
第1光源71から照射される光の中心波長λ1 は、図7で説明した透過波長帯域に含まれているものとし、第2光源72から照射される光の中心波長λ2 は、図7で説明した反射波長帯域に含まれているものとする。第1光源71及び第2光源72には、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)などの発光素子を好適に用いることができる。
図8(a)に示したとおり、第1光源71から出射された光はレンズ80を介してハーフミラー76に入射し、該ハーフミラー76によって図8(a)の下方に反射され、レンズ82を介してヘッド50に照射される。同様に、第2光源72から出射された光はレンズ84を介してハーフミラー77に入射し、該ハーフミラー77及びレンズ82を介してヘッド50に照射される。
第1光源71又は第2光源72の発光が制御されることにより、各光源からの光がヘッド50に選択的に照射される。
ヘッド50からの反射光はレンズ82を通して観察ユニット27内に取り込まれ、ハーフミラー77、76を直進してレンズ86を介してカメラ74に入射する。カメラ74は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサに代表される撮像素子を備えた電子撮像装置である。本例のカメラ74は、多数のフォトセンサが2次元的に配列されたエリアセンサを搭載しており、レンズ86を介して撮像素子の受光面に結像された光学像は各フォトセンサによって入射光量に応じた電気信号に変換され、カメラ74から画像信号として出力される。
観察ユニット27は、ヘッド50の背面側(ノズル面50Aと反対側の面)において不図示の移動機構によって移動自在に支持されており、ヘッド50の全ての圧力室52を観察できるようにスキャン移動可能となっている。
カメラ74による画像データの取得と、得られた画像データに基づく計算(画像処理等)により、異物の有無、位置を判別することが可能である。
なお、図8(a)では基本となる単純な光学系の構成を示したが、不図示のミラー、プリズム、光ファイバーその他の光学部材を利用することにより、多様な光学系の設計が可能である。また、エリアセンサを搭載したカメラ74に代えて、ラインセンサなど他の受光素子を用いることも可能である。
図8(a)では、受光手段として1つのカメラ74を用いているが、検出光の波長帯域に合わせてピーク感度の異なる複数の受光手段(例えば、複数のカメラ)を設けることにより、一層精度のよい検出が可能となる。また、ピーク感度の異なる複数の受光手段を用いることにより、光源を共通化する構成も可能である。
図8(b)は、2台のカメラを利用した観察ユニットの構成例を示す図である。同図において図8(a)に示した例と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図8(b)に示した観察ユニット27は、ダイクロイックミラー78と、2つのカメラ74A,74B、及び各カメラ74A,74Bに光を導くためのレンズ86A,86Bを備えている。
ダイクロイックミラー78は、特定の波長の光だけを選択的に反射若しくは透過させる光学部材であり、本例では波長λ1 の光を反射し、波長λ2 の光を透過させる。すなわち、ヘッド50からの反射光はダイクロイックミラー78によって、波長λ1 を含む波長域の光と波長λ2 を含む波長域の光とに分けられる。ダイクロイックミラー78で反射された波長λ1 の光はレンズ86Aを介してカメラ74Aに入射する。また、ダイクロイックミラー78を透過した波長λ2 の光はレンズ86Bを介してカメラ74Bに入射する。
図8(c)はカメラの分光感度の例を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は相対感度を示す。図中の曲線[1] は、図8(b)で説明したカメラ74Aの分光特性を示しており、波長λ1 の付近に感度のピークを有している。一方、図8(c)中の曲線[2] は、図8(b)で説明したカメラ74Bの分光特性を示しており、波長λ2 の付近に感度のピークを有している。
このように、検出光の波長帯域に合った分光感度のカメラ74A,74Bを用いることにより、一層高精度の検出が可能となる。
図8(d)は観察ユニットの更に他の構成例を示す図である。同図において図8(a)に示した例と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図8(d)に示した観察ユニット27は、カメラ部に3板式(3CCD方式)のカメラ(以下、「3CCDカメラ」といい、符号92で示す。)が用いられている。3CCDカメラ92は、色分解プリズム93と、3個のCCD(撮像素子)94R,94G,94Bを含んで構成される。
レンズ86を介して入射した光は色分解プリズム93によって3原色(R,G,B)に分離され、色分解プリズム93のRGB各出射面に対して配設された各CCD94R,94G,94Bによって受光される。3CCDカメラ92を用いる態様は、単板式のカメラを用いる態様と比較して、より再現性の高い画像情報を得ることができる。
3CCDカメラ92の分光特性と波長λ1 、λ2 の関係については特に限定されないが、波長λ1 、λ2 がそれぞれ別のCCD94R,94G,94Bの分光感度のピーク波長付近に設定される態様が好ましい。
例えば、波長λ1 はR用CCD94Rの分光感度のピークを示す波長の付近に設定される一方、波長λ2 はB用CCD94Bの分光感度のピークを示す波長の付近に設定される。このように、波長λ1 、λ2 の光がそれぞれ別々のCCDに受光されるように構成されることにより、各波長域の光を高精度に検出することができる。
〔制御系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。図9はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、メンテナンスユニット179、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184、吐出検出制御部185等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従ってモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ189を駆動するドライバである。
メンテナンスユニット179は、図6で説明したキャップ64やクリーニングブレード66等を含むブロックであり、システムコントローラ172の指令に従い所要の回復処理を実施する。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ184を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図9において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184はプリント制御部180から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド50の吐出駆動用アクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174に蓄えられた画像データは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータに基づき、ヘッド50が駆動制御され、ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
吐出検出制御部185は、観察ユニット27の第1光源71及び第2光源72の点灯(ON)/消灯(OFF)並びに点灯時の発光量等を制御する光源制御回路と、カメラ74から得られる画像信号(検出信号)を処理する信号処理回路を含んで構成される。吐出検出制御部185はプリント制御部180からの指令に従って第1光源71及び第2光源72の発光を制御するとともに、カメラ74から得た画像データの処理を行う。
吐出検出制御部185には、カメラ74から得た画像データを記憶するメモリ192と、不吐出判定に用いるテーブルデータが格納された判定テーブル格納部194とが接続されている。本例の判定テーブル格納部194には、異物(気泡)の位置及び大きさと不吐出の危険度の関係を示したテーブルデータが格納されており、吐出検出制御部185は、メモリ192に記憶した情報と、該テーブルデータとを参照して、不吐出の危険性を評価し、その評価結果をプリント制御部180に提供する。
プリント制御部180及びシステムコントローラ172は、吐出検出制御部185から得られた情報に基づき、不吐出となる危険性が高い場合に所定の回復動作を実施する制御を行う。
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10の動作について説明する。
図10は、インクジェット記録装置10における吐出検出のシーケンス例を示すフローチャートである。ここでは、検出タイミングを管理するタイマーに基づいて検出動作をスタートさせる例を示すが、どのようなタイミングで検出動作を実行するかは多様な設計が可能であり、図示のようなタイマーによる時間管理の他、プリント枚数、インク消費量、或いはこれらの組み合わせなどに基づいて検出動作を開始させる態様もあり得る。
図10において、タイマーの時間管理により検出動作がスタートしたら(ステップS110)、まず、観察ユニット27の第1光源71を点灯させ(ステップS112)、カメラ74によってヘッド50内を観察する(ステップS114)。第1光源71から照射される波長λ1 の光は反射プレート506を透過するため、カメラ74は圧力室52と共通流路55の内部を両方同時に観察できる。このとき、カメラ74から得られた画像データ(以下「第1の異物情報」という。)はメモリ192に記憶される(ステップS116)。
第1の異物情報を取得したら、第1光源71を消灯し(ステップS118)、第2光源72を点灯させる(ステップS120)。第2光源72から照射される波長λ2 の光は反射プレート506によって反射され、圧力室52に光が届かないため、カメラ74は共通流路55の内部のみを観察できる。このとき、カメラ74から得られた画像データ(以下「第2の異物情報」という。)はメモリ192に記憶される(ステップS124)。
第2の異物情報を取得したら、第2光源72を消灯し(ステップS126)、メモリ192内の情報を基に圧力室52及び共通流路55それぞれの異物情報を計算する(ステップS128)。
そして、ステップS128の計算結果に基づき、圧力室52内に異物が存在しているか否かの判断を行う(ステップS130)。この判断処理は、圧力室内における異物の大きさと不吐出の関係を記述した判定テーブルを参照して行われる。
ステップS130において、圧力室52内に異物が存在しているとの判定を得たときは、回復動作(例えば、吸引)を実施して(ステップS132)、ヘッド50から異物を除去する。このとき、例えば、図3(c)のようなヘッド構成の場合、ヘッドユニット(ヘッドブロック)ごとに回復動作を行うことにより、効率的な回復動作が可能になる(後述のステップS138についても同様)。
その一方、ステップS130において、異物が無いと判定したときは、ステップS134に進み、共通流路55内の異物判断を行う。
すなわち、ステップS134では、ステップS128で得た計算結果に基づき、共通流路55内に異物が存在しているか否かの判断を行う。この判断処理は、共通流路内における異物の位置並びに大きさと不吐出の危険度の関係を記述した判定テーブルを参照して行われる。
共通流路55内に異物が存在している場合は、直ちに吐出不良になるとは言えないが、その位置や大きさによっては不吐出となる確率(危険度)が増す。したがって、予め用意された判定テーブルを利用して、危険度を評価する。
ステップS134において、共通流路55内に異物が存在している旨の判定を得た場合には、ステップS136に進み、回復動作をすぐに実施する必要があるか否かを判断する。この判断処理も、異物位置及び大きさと危険度の関係を記述した判定テーブルを用いて判断される。
異物が圧力室52に極めて近い位置にあるなど、直ちに不吐出になる可能性が高い状態であると判断したときは、回復動作を実施する(ステップS138)。その一方、ステップS136において、すぐには不吐出につながらない状態であると判断したときは、共通流路55のみの内部観察を継続し(ステップS140)、ステップS134に戻る。こうして、共通流路55内の異物を追跡観察することで、圧力室52への異物流入を事前に把握することできる。そして、追跡観察中にステップS136で回復動作が必要と判断されれば、回復動作が実行される。こうして、異物による吐出不良が発生する前に効果的に回復動作を行うことができる。
その一方、追跡観察中に異物が消滅した場合や、初めから異物が存在していなかった場合など、ステップS134において共通流路55内に異物が存在ないと判断されれば、検出動作を終了する(ステップS142)。
〔他の実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図11は、本発明の他の実施形態に係るヘッドの構成例を示す断面図である。同図において、図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図11に示したヘッド50は、図4における反射プレート506に代えて、図11のように、圧力室52と共通流路55の間にコレステリック液晶による反射制御プレート507が配置された構造を有している。
反射制御プレート507は、2枚のガラス基板522,524間に透明電極532、534を介して液晶層541を挟装して成る積層構造を有する。透明電極532,534間に封入された液晶層541は透明電極532,534間の印加電圧に応じて分子配列が変化して、円偏光反射性と透過性が切り替わる。
図12は、コレステリック液晶の特性を示した模式図である。図12において、符号544は、電圧源を示す。図12(a)に示したように、透明電極532,534間に電圧が印加されていない状態では、液晶層541の分子配列は螺旋状構造を有し、円偏光の入射光を反射する。一方、図12(b)に示したように、透明電極532,534間に電圧を印加すると、電界に沿って分子が整列し、円偏光の入射光が透過する。
図13は、図11及び図12で説明した構成から成るヘッド50の内部流路観察手段として利用される観察ユニット27の構成例を示した図である。図13において図8(a)と同一又は類似する部分には共通の符号を付し、その説明は省略する。
図13に示した観察ユニット27は、レーザ光源271と、レンズ272と、λ/4板とを含んで構成される。レーザ光源271には、レーザダイオード(LD)などの発光素子を好適に用いることができる。
レーザ光源271から出射された直線偏光は、レンズ272を介してλ/4板274に入射され、λ/4板274を通過して円偏光に変換される。この光はハーフミラー76を及びレンズ82を介してヘッド50に照射される。
また、ヘッド50からの反射光はレンズ82を通して観察ユニット27内に取り込まれ、ハーフミラー76を直進してレンズ86を介してカメラ74に入射する。
図11及び図12で説明したように、ヘッド50内の液晶層541の分子配列を制御して反射制御プレート507の反射/透過を切り換えることにより、圧力室52と共通流路55とを選択的に観察することが可能である。
図11乃至図13で説明した構成例におけるシーケンス例を図14に示す。図14のフローチャートにおいて図10と共通する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図14に示したフローチャートは、図10における第1光源71及び第2光源72の選択的ON/OFFに代えて、液晶層541のON/OFFを行っている。すなわち、タイマーの時間管理等により検出動作開始後(ステップS110)、レーザ光源271を点灯させるとともに(ステップS111)、反射制御プレート507の透明電極532,534間に電圧を印加して液晶層541を透過状態にする(ステップS113)。円偏光に変換された光は液晶層541を透過するため、カメラ74は圧力室52と共通流路55の内部を両方同時に観察できる(ステップS114)。
ステップS114及びステップS116により第1の異物情報を取得したら、透明電極532,534間への電圧印加をOFFして液晶層541を円偏光反射状態にする(ステップS119)。このとき、光は反射制御プレート507の液晶層541によって反射され、圧力室52に光が届かないため、カメラ74は共通流路55の内部のみを観察できる(ステップS122)。
ステップS122及びステップS124により第2の異物情報を取得したら、レーザ光源271を消灯する(ステップS127)。その後処理(ステップS128〜S142)は図10で説明したとおりである。
図4及び図11で例示したヘッド50は、図15(a)に示す如く、圧力室52と該圧力室52にインクを供給する共通流路55とが液吐出方向(ノズル面50Aに垂直な方向)に沿って上下に重なる(少なくとも一部が重なる)ように階層的に配置された構造を有していたが、本発明の適用はかかる構造に限定されない。例えば、図15(b)に示すように、圧力室52と該圧力室52にインクを供給する共通流路55とが斜め方向の上下に配置され、当該圧力室52の直上には隣の圧力室52にインクを供給する共通流路55が重なるように配置される構造についても本発明を適用できる。
また、図15(c)に示すように、共通流路55が分離されておらず、一体の共通液室となっている構造を有するヘッド50についても本発明を適用できる。
もちろん、図15(a)〜(c)において圧力室52と共通流路55の上下関係は入れ替えも可能である。更にまた、本例では、圧力室52と共通流路55とをプレート積層方向に沿って上下に配置したが、両者の配置関係はこの例に限定されず、横方向(積層方向と直交する方向)に並ぶ態様など、光の選択的な反射/透過部材を挟んで手前側と奥側とに分かれて配置される多様な配置関係が可能である。
更に、観察対象となる流路部は、圧力室と共通流路とに限定されず、圧力室と圧力室、共通流路と共通流路、或いは、これら何れかの液室と他の送液路などというように、多様な組み合わせが可能である。
次に、インク室ユニットの他の形態例について説明する。
図4及び図11で説明したとおり、本発明の実施形態によるヘッド50は、ヘッド背面に観察ユニット27を設ける構造との関係から、ノズルプレート510に接合したアクチュエータ58によってインクに圧力を加える「ノズル面加振型」のインクジェットヘッドとなっている。
図16は、かかるノズル面加振型ヘッドにおけるインク室ユニット(液滴吐出素子)の他の構造例を示した平面図である。なお、図16はノズルプレート510をノズル面50A側から見た図であり、図4の説明と同一又は類似する部分には同一の符号を付してある。すなわち、図16において符号51はノズルの開口、符号52は圧力室、符号58はアクチュエータである。
図示のように、圧力室52の平面形状を略菱形(平行四辺形)とし、該菱形の対角線のうち長い方の対角線上の頂角の一方にノズル51、他方に供給口54を配置するように構成すると、圧力室52内のインクの流れに淀みが無くなり、気泡の排出性が向上する。アクチュエータ58は、ノズルプレート510の圧力室52底面部分をできるだけ広く覆うように配置され、ノズルプレート510に接合される。
図17は、ノズルプレート510の圧力室52側に接合されている圧力室プレート508の平面図である。図示のとおり、圧力室プレート508は、略菱形の平面形状を有する圧力室開口部95Aを有し、圧力室52の壁面の一部を構成するとともに、図16で説明したアクチュエータ58の駆動によるノズル51自身の動き(変位)を拘束するようにノズルプレート510のノズル周囲を支持する支持部材として機能する。
すなわち、図17の圧力室プレート508は、ノズル位置に対応してノズル径と略同径の部分円形状の開口部95Bが形成され、この開口部95Bと圧力室開口部95Aとは切欠部95Cによって連通されている。ノズルプレート510に穿設されたノズル51の周囲は、圧力室プレート508の開口部95Bの周囲部材によって支持されており、切欠部94Cの部分のみ限定的に支持部材のない状態(非拘束状態)となっている。
こうして、切欠部95Cを介してアクチュエータ58とノズルとが近接配置されることにより、アクチュエータ58の発生圧力が効率よくノズル近傍のインクに伝わるため、流動性の悪い、高粘度インクでも吐出することが可能となる。また、切欠部95Cを除いて、ノズル周囲の大部分は圧力室プレート508によって支持されているため、力の伝達に悪影響を与えない範囲でノズル51が固定され、インクの吐出方向を安定させることができる。
なお、図16及び図17では、略菱形形状の圧力室開口部95Aを例示したが、圧力室52の平面形状はこれに限定されず、菱形以外の四角形、多角形、楕円など様々な形態が可能である。
例えば、図18に示すように、ノズル径に略等しい幅を有する長方形や正方形の平面形状を有する圧力室52でも同様の効果を得ることができる。この場合、アクチュエータ58は、圧力室52の形状に合わせて略長方形又は正方形とする。なお、個別電極57のコンタクト部(電極の引き出し部)57Aは、圧力室52とアクチュエータ58とが接する底面部分を避け、圧力室プレートによって支持される固定部分に配置されることが好ましい。
上述の説明では、画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、印画紙に非接触で現像液を塗布する写真画像形成装置等についても本発明の液滴吐出装置を適用できる。また、本発明に係る液滴吐出装置の適用範囲は画像形成装置に限定されず、吐出ヘッドを用いて処理液その他各種の液体を被吐出媒体に向けて噴射する各種の装置(塗装装置、塗布装置など)について本発明を適用することができる。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、22…吸着ベルト搬送部、27…観察ユニット、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、55…共通流路、58…アクチュエータ、71…第1光源、72…第2光源、74…カメラ、74A,74B…カメラ、76,77…ハーフミラー、92…3CCDカメラ、93…色分解プリズム、94R,94G,94B…CCD、172…システムコントローラ、180…プリント制御部、184…ヘッドドライバ、185…吐出検出制御部、192…メモリ、271…レーザ光源、274…λ/4板、502…ベースプレート、506…反射プレート、507…反射制御プレート、510…ノズルプレート、517…誘電体多層膜ミラー、522,524…ガラス基板、532,534…透明電極、541…液晶層