JP2006183482A - 2ストローク内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃費/出力のトレードオフが解消された2ストローク内燃機関を提供する。
【解決手段】 シリンダブロック1に設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポート7を有する2ストローク内燃機関において、機関運転条件に応じてピストン4の下死点位置を可変制御する。これによって、広範囲の運転条件に対応して、掃気効率及び膨張仕事を有効に取り出すことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、2ストローク内燃機関に関する。
2ストローク機関(2サイクル機関)において排気弁のリフト・作動角を変化させて、掃気効率を向上させる狙いについては既に同一出願人から提案されており、公知(特許文献1を参照)である。
特開平11−93710号公報
しかしながら、特許文献1のように、掃気ポートの開口特性が固定の場合には、掃気ポートが閉じる時期によって実圧縮比が決まってしまうため、低速・低負荷での掃熱効率を低下させない設定では、開口期間が比較的短くなり、高速高負荷時に十分な過給のための開口面積(期間)が取れないなど、主に燃費/出力のトレードオフが残るという問題がある。
そこで、本発明は、シリンダブロックに設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポートを有する2ストローク内燃機関において、機関運転条件に応じてピストンの下死点位置を可変制御することを特徴としている。
本発明によれば、ピストンの下死点位置を機関運転条件に応じて可変制御することができるため、広範囲の運転条件に対応して、掃気効率及び膨張仕事を有効に取り出すことができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るユニフロー型の2ストローク内燃機関の概略構成を模式的に示している。シリンダブロック1とシリンダヘッド2により大略構成されたエンジン本体内には、複数のシリンダ3が直列に形成されている。これらのシリンダ3内には、それぞれピストン4が摺動可能に配置されている。
シリンダヘッド2には、排気弁5によって開閉される排気ポート6が各シリンダ3毎に形成されている。シリンダブロック1には、ピストン4によって開閉される掃気ポート7が、各シリンダ3毎に形成されている。掃気ポート7に接続された吸気系としての吸気通路8には、吸気コレクタ9が介装されていると共に、吸気コレクタ9の上流側に過給機10が配置されている。
また、掃気ポート7は、ピストン4の下死点近傍の反スラスト側となる位置に設けられている。ここで、シリンダ3の内周面には、ピストン4がシリンダ3内を往復動する際に、後述する複リンク式ピストン−クランク機構61のアッパリンク66の傾きに応じて、ピストン往復軸線に対して直交方向のスラスト荷重が作用する。すなわち、掃気ポート7は、下死点近傍でこのスラスト荷重が作用しない位置のシリンダ3の内周面、換言すれば下死点近傍でこのスラスト荷重が作用するシリンダ3の内周面に対向する位置に設けられているのである。
図2は、ピストン4の駆動機構である複リンク式ピストン−クランク機構61を示している。この複リンク式ピストン−クランク機構61は、リンク構成の一部の回転中心を動かすことによりピストン4の上死点位置及び下死点位置を同時に可変制御可能となものであって、ピストン位置可変手段に相当するものである。
また、この複リンク式ピストン−クランク機構61は、ピストン上死点位置を変化させることで機関圧縮比つまり公称圧縮比を変化させることができ、いわゆる可変圧縮比機構としての機能を発揮するものである。尚、この複リンク式ピストン−クランク機構61は、本出願人が先に提案した特開2001−227367号公報等によって公知となっているので、その概要のみを説明する。
クランクシャフト62は、複数のジャーナル部63とクランクピン部64とを備えており、シリンダブロック1の主軸受(図示せず)に、ジャーナル部63が回転自在に支持されている。クランクピン部64は、ジャーナル部63から所定量偏心しており、ここに第2リンクとなるロアリンク65が回転自在に連結されている。
ロアリンク65は、クランクピン部64を挟持するように本体65aへキャップ65bを取り付けて構成されたものであって、この挟持部分でクランクピン部65に対して回転自在に連結されている。
第1リンクとなるアッパリンク66は、下端側が第1連結ピン67によりロアリンク65の一端に回動可能に連結され、上端側がピストンピン68によりピストン4に回動可能に連結されている。ピストン4は、燃焼圧力を受け、シリンダブロック1のシリンダ3内を往復動する。
第3リンクとなるコントロールリンク69は、上端側が第2連結ピン70によりロアリンク65の他端に回動可能に連結され、下端側が制御軸71を介して機関本体の一部となるシリンダブロック1の下部に回動可能に連結されている。詳しくは、制御軸71は、回転可能に機関本体に支持されているとともに、その回転中心から偏心している偏心カム部71aを有し、この偏心カム部71aにコントロールリンク69下端部が回転可能に嵌合している。制御軸71は、電動モータ等を用いた図示しない圧縮比制御アクチュエータによって回動位置が制御される。
上記のような複リンク式ピストン−クランク機構61においては、制御軸71が圧縮比制御アクチュエータによって回動されると、偏心カム部71aの中心位置、特に、機関本体に対する相対位置が変化する。これにより、コントロールリンク69の下端の揺動支持位置が変化する。そして、コントロールリンク69の揺動支持位置の変化により、ピストン4の行程が変化して、機関圧縮比を変えることが可能となる。すなわち、ピストン4の上死点位置及び下死点位置を変化させることができる。
図3は、上述した複リンク式ピストン−クランク機構61により、機関圧縮比を高くした場合(高ε)と、機関圧縮比を低くした場合(低ε)と、のピストンストロークを対比したものである。図3から明らかなように、機関圧縮比を変化させることにより、ピストン下死点におけるピストン最下点位置が変化する。そのため、機関圧縮比を変化させることにより、図4に示すように掃気ポート7の開口高さが変化する。また、図3に示したピストンストローク特性から、機関圧縮比の変化に伴い掃気ポート7の開口期間も変化することになる。すなわち、複リンク式ピストン−クランク機構61によりピストン下死点位置を高くすることで機関圧縮比を高圧縮比側に変化させると、図4(a)に示すように掃気ポート7の開口高さは小さくなり、かつ掃気ポート7の開口期間は短くなる。一方、ピストン下死点位置を低くすることで機関圧縮比を低圧縮比側に変化させると、図4(b)に示すように掃気ポート7の開口高さは大きくなり、かつ掃気ポート7の開口期間は長くなる。
また、複リンク式ピストン−クランク機構61においては、リンクディメンジョンを適切に選定することにより、単振動に近いピストンストローク特性が得られるよう設定されている。この単振動に近いストローク特性は振動騒音の上でも有利ではあるが、特に、上死点付近のピストン速度が、一般的な単リンク式ピストン−クランク機構に比べて、20%前後緩やかとなる。これは、特に冷機時のような燃焼速度が遅い条件下で、初期の火炎核の生成、成長の上で有利となる。尚、複リンク式ピストン−クランク機構61において、ピストンストローク特性を単振動に近づけるように設定する技術は、本出願人が先に提案した特開2001−227367号公報等によって公知となっているものである。
そして、本発明の第1実施形態においては、排気弁5のリフト・作動角を所定のリフト・作動角に固定として、機関負荷(機関運転条件)に応じてピストン4の下死点位置を制御する。
図5は、排気弁5のリフト・作動角を固定としたの場合の掃気ポート7の開口特性と排気弁5のバルブリフト特性を示している。
機関低負荷時(機関部分負荷時)には、ピストン4の下死点位置を高くすることで、機関圧縮比を高くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に縮小している。この結果、排気弁5と掃気ポート7が共に開いているオーバラップ期間は小さくなるため、掃気ポート7からの新気が排気ポート6に抜けることを抑制できる。一方、機関高負荷時には、ピストン4の下死点位置を低くすることで、機関圧縮比を低くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に拡大している。つまり、機関高負荷時には、掃気ポート7が十分に開き、早い時期から掃気を開始すると共に、排気弁5が閉じた後に新気を過給することも可能となる。
また、2サイクル機関においては、機関低負荷時の燃焼が問題となり、特にガソリン機関では、大量の残留ガスを含む混合気の燃焼かリーンバーンの燃焼の2者択一を迫られる。このような場面で、機関圧縮比を高く設定できることは、このいずれの条件においても大きな燃焼改善効果がある。
尚、この第1実施形態では、機関高負荷時に、排気弁5が閉弁してから掃気ポート7が閉弁するまでの期間に、過給機10による過給を行っている。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、上述した第1実施形態における構成が、排気弁5のリフト・作動角を連続的に拡大・縮小制御するリフト・作動角可変機構30(後述)を備えたものである。尚、この第2実施形態は、このリフト・作動角可変機構30以外は上述した第1実施形態と同一構成である。
図6を用いて上述したリフト・作動角可変機構30を説明する。尚、このリフト・作動角可変機構30は、本出願人が先に提案した特開2002−89303号公報や特開2002−89341号公報等によって公知となっているので、その概要のみを説明する。
排気弁5のリフト・作動角を拡大・縮小するリフト・作動角可変機構30は、シリンダヘッド1上部の図示せぬカムブラケットに回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、この駆動軸13に、圧入等により固定された偏心カム15と、駆動軸13の上方位置に同じカムブラケットによって回転自在に支持されるとともに駆動軸13と平行に配置された制御軸16(前述の制御軸71とは別物)と、この制御軸16の偏心カム部17に揺動自在に支持されたロッカアーム18と、各排気弁5の上端部に配置されたタペット19に当接する揺動カム20と、を備えている。偏心カム15とロッカアーム18とはリンクアーム25によって連係されており、ロッカアーム18と揺動カム20とは、リンク部材26によって連係されている。
駆動軸13は、タイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランクシャフトによって駆動されている。
偏心カム15は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸13の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム25の環状部25aが回転可能に嵌合している。
ロッカアーム18は、略中央部が偏心カム部17によって支持されており、その一端部に、リンクアーム25の延長部25bが連係しているとともに、他端部に、リンク部材26の上端部が連係している。偏心カム部17は、制御軸16の軸心から偏心しており、従って、制御軸16の角度位置に応じてロッカアーム18の揺動中心は変化する。
揺動カム20は、駆動軸13の外周に嵌合して回転自在に支持されており、側方へ延びた端部20aに、リンク部材26の下端部が連係している。この揺動カム20の下面には、駆動軸13と同心状の円弧をなす基円面24aと、該基円面24aから上記端部20aへと所定の曲線を描いて延びるカム面24bと、が連続して形成されており、これらの基円面24aならびにカム面24bが、揺動カム20の揺動位置に応じてタペット19の上面に当接するようになっている。
すなわち、基円面24aはベースサークル区間として、リフト量が0となる区間であり、揺動カム20が揺動してカム面24bがタペット19に接触すると、徐々にリフトしていくことになる。尚、ベースサークル区間とリフト区間との間には若干のランプ区間が設けられている。
制御軸16は、一端部に設けられたリフト・作動角制御用油圧アクチュエータ(図示せず)によって所定角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用油圧アクチュエータへの油圧供給は、エンジンコントロールユニット(図示せず)からの制御信号に基づき制御されている。
このリフト・作動角可変機構30の作用を説明すると、駆動軸13が回転すると、偏心カム15のカム作用によってリンクアーム25が上下動し、これに伴ってロッカアーム18が揺動する。このロッカアーム18の揺動は、リンク部材26を介して揺動カム20へ伝達され、該揺動カム20が揺動する。この揺動カム20のカム作用によって、タペット19が押圧され、排気弁5がリフトする。
ここで、リフト・作動角制御用油圧アクチュエータを介して制御軸16の角度が変化すると、ロッカアーム18の初期位置が変化し、ひいては揺動カム20の初期揺動位置が変化する。
例えば偏心カム部17が図6(A)のように上方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として上方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19から離れる方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、基円面24aが長くタペット19に接触し続け、カム面24bがタペット19に接触する期間は短い。従って、リフト量が全体として小さくなり、かつその開時期から閉時期までの角度範囲つまり作動角も縮小する。
逆に、偏心カム部17が図6(B)のように下方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として下方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19に近付く方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、タペット19と接触する部位が基円面24aからカム面24bへと直ちに移行する。従って、リフト量が全体として大きくなり、かつその作動角も拡大する。
偏心カム部17の初期位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、バルブリフト特性は、図7に示すように、連続的に変化する。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。尚、この第2実施形態では、リフト・作動角の大小変化に伴い、排気弁5の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
そして、本発明の第2実施形態においては、機関運転状態に応じて、排気弁5のリフト・作動角と、ピストン4の下死点位置とを可変制御する。
図8は、排気弁5のリフト・作動角の可変制御と、複リンク式ピストン−ストローク機構61による圧縮比可変技術と、を組合わせ第2実施形態における掃気ポート7の開口特性と排気弁5のバルブリフト特性とを示している。
機関低負荷時(機関部分負荷時)には、ピストン4の下死点位置を高くすることで、機関圧縮比を高くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に縮小している。そして、排気弁5のリフト・作動角を相対的に縮小している。この結果、機関低負荷時には排気弁5のリフト・作動角が大幅に縮小されているため、排気弁5の開時期は遅くなり、膨張比が大きくなるため、熱効率は大幅に向上する。また、掃気ポート7のみ開いている期間が増えているが、これは過給圧を上げなければ過給されることはない。
一方、機関高負荷時には、ピストン4の下死点位置を低くすることで、機関圧縮比を低くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に拡大している。そして、排気弁5のリフト・作動角を相対的に拡大している。そのため、機関高負荷時には掃気ポート7、排気弁5のいずれも、開弁(開口)期間が長くなるため、十分な掃気期間、過給期間を確保する事が可能となる。換言すれば、掃気ポート7が十分に開き、早い時期から掃気を開始すると共に、排気弁5が閉じた後に新気を過給することも可能となる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、上述した第2実施形態における構成が、排気弁5のリフトの中心角の位相を可変させる位相可変機構31(後述)を備えたものである。尚、第3実施形態は、この位相可変機構31以外は上述した第2実施形態と同一構成である。
図9を用いて、排気弁5のリフトの中心角の位相(クランクシャフトに対する位相)を進角もしくは遅角する位相可変機構31について説明する。
この第3実施形態における位相可変機構31は、上述したリフト・作動角可変機構30の駆動軸13の一端側に設けられたものである。
ブラケット42を介してシリンダヘッド側に回転可能に支持された駆動軸13の一端側には、その外周上にカムプーリ(又はカムスプロケット)43が同軸上に配置されている。このカムプーリ43は、チェーン又はタイミングベルトを介してクランクシャフトからの回転動力が伝達され、クランクシャフトと同期して回転する。
位相可変機構31は、上記のカムプーリ43と駆動軸13との間の回転伝達経路に設けられ、両者の回転位相を連続的かつ多段階に変化させるようになっている。具体的には、位相可変機構31は、カムプーリ43の内周側に一体的に形成された外筒部44と、駆動軸13にボルト45を介して締結固定され、駆動軸13と一体的に回転する内筒部46と、外筒部44と内筒部46との間に介装されたリング状のプランジャ47と、プランジャ47を一方向(図9における左方向)へ常時付勢するリターンスプリング48と、を有している。外筒部44の内周側にはスリーブ49が固定されており、このスリーブ49がベアリング50を介して軸受けブラケット42に回転可能に支持されている。
ここで、プランジャ47内、外周面と内筒部46の外周面及び外筒部44の内周面との噛合部分51はヘリカルスプラインとなっている。従って、プランジャ47が内、外筒部46、44の軸方向(図9における左右方向)へ移動することにより、この軸方向の運動が内筒部46と外筒部44との相対回転運動に変換され、外筒部44と内筒部46との相対回転位相が連続的に変化する。この結果、図10に示すように、排気弁5の作動角が一定のままで、その排気弁5のリフトの中心角が進角側(a)から遅角側(b)へ連続的に変化する。例えば、プランジャ47が図9の最も左方向へ配置されている状態(図9の状態)では、図10中の波形(b)で示すように、排気弁5のリフト中心角及び開閉時期は最も遅角側に設定される。一方、プランジャ47が図9の最も右側に配置されている状態では、図10中の波形(a)で示すように、排気弁5のリフト中心角及び開閉時期が最も進角側に設定される。
尚、この位相可変機構31は、プランジャ47の一端と、外筒部44にピン52を介して固定されるエンドキャップ53と、の間に液密に画成された油圧室54への作動油圧を制御することでプランジャ47を所定の軸方向位置に移動、保持し、排気弁5のリフト中心角の位相を可変することを実現させている。また、油圧室54には、エンドキャップ53、ボルト45及び駆動軸13に形成された油通路55a、55b、55c、55dを介して、図外の油圧供給源から油圧が供給されている。尚、油圧室54への油圧の供給はエンジンコントロールユニット(図示せず)からの制御信号に基づき制御されている。
そして、本発明の第3実施形態においては、機関運転状態に応じて、排気弁5のリフト・作動角、排気弁5のリフト中心角の位相及びピストン4の下死点位置と、を可変制御する。
図11は、排気弁5のリフト・作動角及びリフトの中心角の位相の可変制御と、複リンク式ピストン−ストローク機構61による圧縮比可変技術と、を組合わせ第3実施形態における掃気ポート7の開口特性と排気弁5のバルブリフト特性とを示している。
機関低負荷時(機関部分負荷時)には、ピストン4の下死点位置を高くすることで、機関圧縮比を高くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に縮小している。そして、排気弁5のリフト・作動角を相対的に縮小し、かつ排気弁5のリフト中心角の位相を相対的に進角させている。一方、機関高負荷時には、ピストン4の下死点位置を低くすることで、機関圧縮比を低くすると共に、掃気ポート7の開口期間及び開口高さを相対的に拡大している。そして、排気弁5のリフト・作動角を相対的に拡大し、かつ排気弁5のリフト中心角の位相を相対的に遅角させている。
このような第3実施形態においては、機関低負荷時には、膨張仕事も最大限回収可能であり、排気弁5の開弁期間と掃気ポート7の開口期間とのオーバーラップも小さくなっている。このオーバーラップは、機関高負荷時には十分に拡大される。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、上述した第1〜第3実施形態に対して適用されるものであって、図12に示すように、シリンダ3の内周面に開口した掃気ポート7の開口部75の形状を工夫した場合の実施例である。
すなわち、この第4実施形態においては、図12(b)に示すように、掃気ポート7の開口部75が、シリンダヘッド側に向かって(図12における下側から上側に向かって)小さくなるよう形成されている。換言すれば、排気ポート7は、ピストン4の下死点位置が高くなるにつれてその開口面積の減少率が大きくなるよう、開口部75の形状が設定されている。
図13は、掃気ポート7の開口部形状をシリンダ周方向に細長い長方形とした比較例をである。
図14は、掃気ポート7の開口部形状による開口面積特性を示したものであって、図中の特性線Aは第4実施形態における掃気ポート7に関するものであり、図中の特性線Bは図13に示した比較例における掃気ポートに関するものである。この図14からも明らかなように、第4実施形態においては、ピストン4の下死点位置の変化に対し、掃気ポート7の開口面積の変化を大きくとることができる。
上記実施形態から把握し得る本発明の技術的思想について、その効果とともに列記する。
(1) シリンダブロックに設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポートを有する2ストローク内燃機関において、機関運転条件に応じてピストンの下死点位置を可変制御する。これによって、広範囲の運転条件に対応して、掃気効率及び膨張仕事を有効に取り出すことができる。
(2) 2ストローク内燃機関は、シリンダブロックに設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポートと、機関運転条件に応じてピストンの下死点位置を可変制御するピストン位置可変手段と、を有する。
(3) 上記(1)または(2)に記載の2ストローク内燃機関は、具体的には、シリンダヘッドに開閉作動可能に設けられた排気弁を有する。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、具体的には、吸気系に過給機を有する。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、具体的には、ピストンの上死点位置及び下死点位置が同時に可変制御可能となっている。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、具体的には、機関部分負荷時にピストンの下死点位置が高くなるように制御する。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、具体的には、機関高負荷時にピストンの下死点位置が低くなるように制御する。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、排気弁のリフト・作動角を拡大・縮小する排気弁リフト・作動角可変機構を有する。これによって、一層、掃気効率及び膨張仕事を有効に取り出すことができる。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関は、排気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる排気弁位相可変手段構を有する。これによって、一層、掃気効率及び膨張仕事を有効に取り出すことができる。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関において、ピストンは、ピストンにピストンピンを介して連結された第1リンクと、この第1リンクに揺動可能に連結されるとともにクランクシャフトのクランクピン部に回転可能に連結された第2リンクと、第2リンクに揺動可能に連結されるとともに機関本体に揺動可能に支持された第3リンクと、を備えた複リンク式ピストン−クランク機構によってクランクシャフトから駆動されている。
(11) 上記(1)〜(10)のいずれかに記載の2ストローク内燃機関において、掃気ポートは、ピストンの下死点位置が高くなるにつれてその開口面積の減少率が大きくなるように、開口部の形状が設定されている。これによって、ピストンの下死点位置の変化に対し、掃気ポートの開口面積の変化を大きくとることができる。
(12) 上記(10)または(11)に記載の2ストローク内燃機関において、掃気ポートは、ピストン下死点近傍の反スラスト側となる位置に設けられている。
本発明に係る2ストローク内燃機関の概略構成を模式的に示した説明図。 複リンク式ピストン−クランク機構の概略構成を示す説明図。 複リンク式ピストン−クランク機構のピストンストローク特性を示す特性図。 ピストンストローク特性による掃気ポートの開口高さの変化を模式的に示した説明図。 本発明の第1実施形態における掃気ポートの開口特性と、排気弁のリフト特性とを示す特性図。 リフト・作動角可変機構の動作説明図。 リフト・作動角可変機構によるリフト・作動角の特性変化を示す特性図。 本発明の第2実施形態における掃気ポートの開口特性と、排気弁のリフト特性とを示す特性図。 位相可変機構の概略構成を示す説明図。 位相可変機構による排気弁のバルブリフト特性の位相変化を示す説明図。 本発明の第3実施形態における掃気ポートの開口特性と、排気弁のリフト特性とを示す特性図。 本発明の第4実施形態における掃気ポートの開口部形状を模式的に示した説明図。 比較例における掃気ポートの開口部形状を模式的に示した説明図。 ピストン下死点位置の変化に対する掃気ポートの開口面積の変化を示す説明図。
符号の説明
4…ピストン
5…排気弁
6…排気ポート
7…掃気ポート

Claims (12)

  1. シリンダブロックに設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポートを有する2ストローク内燃機関において、
    機関運転条件に応じてピストンの下死点位置を可変制御することを特徴とする2ストローク内燃機関。
  2. シリンダブロックに設けられてピストン下死点位置近傍で開口する掃気ポートと、
    機関運転条件に応じてピストンの下死点位置を可変制御するピストン位置可変手段と、を有することを特徴とする2ストローク内燃機関。
  3. シリンダヘッドに開閉作動可能に設けられた排気弁を有することを特徴とする請求項1または2に記載の2ストローク内燃機関。
  4. 吸気系に過給機を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  5. ピストンの上死点位置及び下死点位置が同時に可変制御可能となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  6. 機関部分負荷時には、ピストンの下死点位置が高くなるように制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  7. 機関高負荷時には、ピストンの下死点位置が低くなるように制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  8. 排気弁のリフト・作動角を拡大・縮小する排気弁リフト・作動角可変機構を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  9. 排気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる排気弁位相可変手段構を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  10. ピストンは、ピストンにピストンピンを介して連結された第1リンクと、この第1リンクに揺動可能に連結されるとともにクランクシャフトのクランクピン部に回転可能に連結された第2リンクと、第2リンクに揺動可能に連結されるとともに機関本体に揺動可能に支持された第3リンクと、を備えた複リンク式ピストン−クランク機構によってクランクシャフトから駆動されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  11. 掃気ポートは、ピストンの下死点位置が高くなるにつれてその開口面積の減少率が大きくなるように、開口部の形状が設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の2ストローク内燃機関。
  12. 掃気ポートは、ピストン下死点近傍の反スラスト側となる位置に設けられていることを特徴とする請求項10または11に記載の2ストローク内燃機関。
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