JP2006182773A - イネ科植物病害を防除するための生物資材または防除剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イネ科植物の防除能を有する微生物を有効成分として用いる防除剤、生物資材、防除方法、防除剤および生物資材の製造方法の提供に関する。
【選択図】なし
Description
また、化学農薬は使用済み廃液の処理が必要となっており、これにかかる作業者の負担、およびコストが問題となっている。
さらに、本発明者らは、イネ科植物病害に対する防除能を有する糸状菌を土壌中で増殖させることにより簡便にイネ科植物病害に有効な生物資材、あるいは防除剤を製造できることを見出し本発明に到った。
また、本発明は、前記防除能を有する糸状菌を土壌中で増殖させることにより調整される生物資材または防除剤およびその製造方法に関する。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)イネ科植物病害を防除するための生物資材または防除剤の製造方法であって、
イネ科植物病害に対する防除能を有する微生物を土壌中で増殖させることにより調製することを特徴とする、
生物資材または防除剤の製造方法。
(2)増殖させる土壌が、加熱処理後の土壌である上記(1)に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(3)増殖させる土壌が、pH6以下の土壌である上記(1)または(2)に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(4)増殖させる土壌が、土壌水分10%以上20%未満の土壌である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)増殖させる土壌が、イネ科植物用育苗培土である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(6)増殖させる微生物が、ペニシリウム(Penicillium)属、またはその完全世代であるタラロミセス(Talaromyces)属、ユウペニシリウム(Eupenicillium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、グリオクラディウム(Glyocladium)属、フザリウム(Fusarium)属に属する一種または複数の種である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(7)増殖させる微生物がPenicilluim sp. B-453株(FERM BP-08517)である上記(6)に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(8)増殖させる微生物がPenicillium(完全世代がTalaromyces)sp. B-422株(FERMBP-08516)である上記(6)に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(9)増殖させる微生物がEupenicilluim reticulisporum B-408株(FERM BP-08515)である上記(6)に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(10)イネ科植物病害に対する防除が、イネの育苗時に発生する糸状菌性病害および細菌性病害の両方に対する防除である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。
(11)Penicillium 属またはその完全世代であるTalaromyces属、Eupenicillium属に属し、イネ科植物伝染性病害に対して防除能を有する糸状菌。
(12)糸状菌が、Penicillium verruculosumである上記(11)に記載の糸状菌。
(13)糸状菌が、Penicillium aculeatumである上記(11)に記載の糸状菌。
(14)糸状菌が、Eupenicillium reticulisporumである上記(11)に記載の糸状菌。
(15)Penicillium sp.B-453 株(FERM BP-08517)。
(16)Penicillium(完全世代がTalaromyces)sp.B-422株(FERM BP-08516)。
(17)Eupenicillium reticulisporumB-408株(FERM BP-08515)。
(18)上記(11)〜(17)のいずれかに記載の糸状菌のうち少なくとも1菌株を有効成分とするイネ科植物病害防除剤。
(19)防除剤が、イネの育苗時に発生する糸状菌性病害および細菌性病害の両方に対して防除能を有する上記(18)に記載のイネ科植物病害防除剤。
(20)上記(18)または(19)に記載のイネ科植物病害防除剤を使用したイネ科植物病害防除方法。
(21)上記(18)または(19)に記載のイネ科植物病害防除剤により処理した生物資材。
(22)生物資材が、イネ科植物用育苗培養土である上記(21)に記載の生物資材。
(23)上記(18)または(19)に記載の防除剤により処理された植物種子。
(2)本発明の生物資材または防除剤を用いれば、種子消毒剤処理作業、廃液処理作業、土壌処理剤処理作業を省略することも可能となり、作業工程や生産コスト低減に貢献できる。
(3)本発明の糸状菌を土壌に添加する製造方法によれば、当該菌の生育温度に保持すれだけで増殖可能であり、特別な培養装置も必要なく保存安定性も良好である。また、通常の育苗培土と同様に扱うことができるため、使用方法が簡便であり、環境中へ化学物質の放出を減少させることができる。
、およびイネ白葉枯病(Xanthomonas campestris pv. oryzae)、また、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネばか苗病(Gibberella fujikuroi)、イネごま葉枯病等(Cochliobolus miyabeanus)、イネ苗立枯病(Trichoderma viridea)、イネ苗立枯病(Rhizopus属)を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
上記糸状菌としては、ペニシリウム(Penicillium)属に属する糸状菌、およびこの完全世代であるタラロミセス(Talaromyces)属、ユウペニシリウム(Eupenicillium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、グリオクラディウム(Glyocladium)属、フザリウム(Fusarium)属に属する糸状菌が挙げられる。このうちでも、ペニシリウム(Penicillium)属に属する糸状菌、この完全世代であるタラロミセス(Talaromyces)属、およびユウペニシリウム(Eupenicillium)属に属する糸状菌が好ましい。
また、これらの微生物は、ふすまなどの資材での培養、固体培地での静置培養、液体培養等の公知の手段で増殖させたものを用いればよく、特に培地の種類、培養条件などに制限されるものではない。
しながら加熱乾燥を行う方法も、あるいはこれらを組み合わせて行う方法もある。
また、後述するように生物資材と同様に製造することもできる。
また、増殖させるための土壌は、本発明の微生物が増殖できる水分量およびpHであればよいが、イネ育苗用の場合、土壌水分量は10%以上20%未満が望ましく、土壌pHは6以下が望ましく、5.5以下がより望ましい。特に、イネ用育苗培土の場合、酸性領域のpHが望ましい。増殖させるための土壌をこのような水分量およびpHにすることにより、細菌の増殖は抑えることができ、本発明の拮抗糸状菌は良好に増殖することができる。また、本発明の土壌の水分量は少ないことから、軽く持ち運びやすいというメリットもある。
呉羽化学工業(株)内培土製造工場の加熱乾燥工程を通過したくみあい粒状培土K(呉羽化学工業(株)製)をサンプリングし、放冷後、PDA培地で培養したTalaromyces sp.B-422の胞子液106cells/mlを培土に3%(v/w)吹付け処理し、ポリエチレン製袋内で25℃に保持した。適宜培土をサンプリングし、生菌数をカウントし、経時変化を測定した。結果を図1に示す。これによれば、Talaromyces sp.B-422は、速やかに増殖し、12ヶ月間105CFU/g以上を維持した。
試験例1に準じて調製したTalaromyces sp.B-422入り(2.1×106CFU/g)くみあい粒状培土−Kを120℃、1時間加熱殺菌処理したくみあい粒状培土Kおよびクレハ シリカ入り培土2号(呉羽化学工業(株)製)に1%(w/w)添加し、ポリエチレン製袋内で25℃に保持した。添加直後は、104CFU/g前後の生菌数が、水分を14〜18%に調製した培土いずれにおいても、10日後には106CFU/g以上に増加した。結果を表1に示す。
PDA培地で培養したTalaromycessp.B-422胞子液107Cells/mlを120℃、1時間加熱殺菌処理した培土(くみあい粒状培土−K、くみあい粒状培土−D、くみあい粒状培土〔中・成苗培土〕、クレハ粒状培土 すぐれもんL品、クレハ粒状培土 すぐれもんH品、クレハ シリカ入り培土、クレハ シリカ入り培土2号)(以上呉羽化学工業(株)製)に1%(v/w)吹付け添加し、ポリエチレン製袋内で25℃に保持した。このときの水分量は17%である。培養10日後にサンプリングし、生菌数をカウントした。いずれの培土においてもTalaromyces sp.B-422は、10日間の培養で105CFU/g以上に増加した。結果を表2示す。
イネばか苗病に自然感染したイネ罹病種子(品種:短銀坊主)を用いて本病害に対する拮抗糸状菌入り農園芸用資材の防除効果を調べた。ばか苗病罹病種子は、15℃で4日間浸種(浴比1:1)、30℃1日の催芽を行った。育苗土の全層処理は、イチゴパック(10×15cm)あたり、試験例1に準じて調製したTalaromyces sp.B-422入り培土資材を床土として140g、覆土65gを使用した。覆土処理の場合は、床土に市販の育苗用粒状培土(くみあい粒状培土K)を充填した。種子処理の場合は、床土、覆土とも市販育苗用粒状培土を用いた。播種量は、乾籾5g相当で行った(1区3反復)。その後出芽器中で30℃3日間出芽させ、以降はガラス温室内で育苗した。播種21日後に各試験区の罹病苗率を調査し、下記(1)式により防除価を求めた。
また、防除効果の比較のため、B-422胞子液(1×106 cells/ml)の24時間浸漬処理または、市販の種子消毒剤(テクリード Cフロアブル)200倍24時間浸漬処理を行った。結果を表3に示す。
調製した資材は、B-422胞子液の24時間浸漬処理および対照化学薬剤のテクリード Cフロアブルと同等の効果を示した。
防除価=(1−(処理区の罹病苗率÷無処理区の罹病苗率))× 100 (1)
感染源となるトリコデルマ菌をPDAプレートに植菌し、25℃、5日間前培養した。適量の菌水を加えて胞子懸濁液を調製し、1号角プレート中のPDA10枚に塗沫し、蛍光灯下、25℃で11日間培養した。このプレートに滅菌水を加えて胞子懸濁液を調製し、500mlにメスアップした。胞子濃度は1.2×108/mlであった。これらの菌液をオートクレーブ処理(120℃、1時間)したくみあい粒状培土K品12kgに添加してよく混和し、病土とした。
20×15cmイチゴパック(育苗箱の1/6の大きさ)に、病土280gを充填した。供試籾は2001年産日本晴を用い、比較とした種子処理区は、B−422胞子液(1×106 cells/ml)の24時間浸漬処理または、市販の種子消毒剤(テクリード Cフロアブル)200倍24時間浸漬処理を行った。浸種は15℃4日、催芽は30℃1日とした。全区に一次潅水を行った後、パック当たり乾籾25g相当を播種した(150g/育苗箱相当、1区3連)。ダコニール処理区以外はならし潅水を行ない、ダコニール1000処理区は同剤500倍液をパック当たり83ml潅注した(約500ml/育苗箱相当)。
防除資材処理区は、未消毒籾を播種した後、試験例2に準じて調製したTalaromyces sp.B-422入り防除資材を覆土した。その他の区は通常の市販育苗用粒状培土(くみあい粒状培土−K)を覆土した。覆土量は全て130g/パック (700g/育苗箱相当)とした(覆土には病土を用いていない)。
育苗器中で30℃3日間出芽後、温室で管理した。播種14日後に全苗数、枯死苗数、30本の苗あたりの着菌苗率を調査し、下記(2)式により防除価を求めた。結果を表4に示す。
防除価=(1−(処理区の着菌苗率÷無処理区の着菌苗率))× 100(2)
イネばか苗病に自然感染したイネ罹病種子(品種:短銀坊主)を用いて本病害に対する種子処理によるPenicillium sp.B-453(FERM BP-08517)、Eupenicillium sp.B-408(FERM BP-08515)、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516) の防除効果を調べた。各菌株はPDA培地で25℃、10日間培養後、滅菌水に胞子を懸濁し、所定濃度の胞子液を調製した。ばか苗病罹病種子を拮抗菌胞子液に浴比1:1で24時間浸漬し、次いで30℃で3日間浸種(浴比1:1)を行なった後、市販の育苗用粒状培土(くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm) に1箱当たり乾籾5g相当を播種した(1区3反復)。その後、出芽器中30℃で3日間出芽させ、それ以降はガラス温室内で育苗した。播種21日後に各試験区の罹病苗率を調査し、(1)式により防除価を求めた。結果を表5に示す。
イネ苗立枯細菌病菌を開花期接種した罹病種子(品種:日本晴)を用いて本病害に対する種子処理によるTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516) の防除効果を調べた。各菌株の培養方法、種子処理方法は試験例6と同様である。
市販の育苗用粒状培土(くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm)に1箱当たり乾籾10g相当を播種した(1区3反復)。播種14日後に各試験区を以下の発病指数を用いて発病状況を調査した。結果を表6に示す。
[発病指数]
0:無発病、1:白化苗の発生が見られるが枯死苗はない、2:枯死苗25%以下、3:枯死苗25〜50%、4:枯死苗50〜80%、5:枯死苗80%以上(ほとんど全てが枯死)
イネもみ枯細菌病菌を減圧接種した罹病種子(品種:日本晴)を用いて本病害に対する種子処理によるTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)の防除効果を調べた。各菌株の培養方法、種子処理方法は試験例6と同様である。
市販の育苗用粒状培土(商品名:くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm)に箱当たり乾籾10g相当を播種した(1区3反復)。播種14日後に各試験区を以下の発病指数を用いて発病状況を調査した。結果を表7に示す。
[発病指数]
0:無発病、1:褐変、部分枯死苗の発生が見られるが枯死苗はない、2:枯死苗25%以下、3:枯死苗25〜50%、4:枯死苗50〜80%、5:枯死苗80%以上(ほとんど全てが枯死)
イネ褐条病菌を減圧接種した罹病種子(品種:日本晴)を用いて本病害に対して種子処理によるEupenicillium sp.B-408(FERM BP-08515)の防除効果を調べた。各菌株の培養方法、種子処理方法は試験例6と同様である。
市販の育苗用粒状培土(くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm) に箱当たり乾籾10g相当を播種した(1区3反復)。その後出芽器中で32℃3日間出芽させ、以降はガラス温室内で育苗した。播種21日後に各試験区の罹病苗率を調査し、(1)式により防除価を求めた。結果を表8に示す。
イネいもち病に自然感染した罹病種子(品種:ササニシキ)を用いて本病害に対する種子処理によるTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516) の防除効果を調べた。各菌株の培養方法、種子処理方法は試験例6と同様である。
市販の育苗用粒状培土(くみあい粒状培土)を詰めた育苗用箱(10×15cm)に箱当たり乾籾10g相当を播種した(反復なし)。その後出芽器中で32℃4日間出芽させ、以降はガラス温室内で育苗した。播種21日後に各試験区の罹病苗率を調査し、防除価を求めた。結果を表9に示す。
PDA培地で培養したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)、Trichoderma atrovirideから、胞子液を調製し、Talaromyces sp.B-422を加熱殺菌した育苗用粒状培土(三菱粒状培土(三菱化学(株)製))、Trichoderma atrovirideを加熱殺菌した育苗用粒状培土(くみあい粒状培土−K(呉羽化学工業(株)製))にそれぞれ1%(v/w)添加し、ポリエチレン製袋に入れ、25℃で保持した。保存14日後の生菌数を測定した結果、いずれの場合においても培土内で菌の増殖が観察された。次に、これら育苗用粒状培土を用いて、イネばか苗病に対する防除効果を調べた。方法は、試験例4に準じて各試験区の罹病苗率を調査した。なお、調査は、播種後14日後とした。増殖後の培土の防除価は、それぞれ95,100であり、高いイネばか苗病防除効果が認められた。
PDA培地で培養したTalaromyces sp.B-422、Trichoderma atroviride、Talaromyces flavusから、胞子液を調製した。加熱殺菌した育苗用粒状培土(三菱粒状培土(三菱化学(株)製)、くみあい粒状培土−K(呉羽化学工業(株)製))に上記糸状菌を1%(v/w)添加し、ポリエチレン製袋に入れ、25℃で保持した。保存15日後の生菌数を測定した結果、いずれの場合においても培土内で菌の増殖が観察された。
Claims (10)
- イネ科植物病害を防除するための生物資材または防除剤の製造方法であって、
イネ科植物病害に対する防除能を有する微生物を土壌中で増殖させることにより調製することを特徴とする、
生物資材または防除剤の製造方法。 - 増殖させる土壌が、加熱処理後の土壌である請求項1に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
- 増殖させる土壌が、pH6以下の土壌である請求項1または2に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
- 増殖させる土壌が、土壌水分10%以上20%未満の土壌である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 増殖させる土壌が、イネ科植物用育苗培土である請求項1〜4のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。
- 増殖させる微生物が、ペニシリウム(Penicillium)属、またはその完全世代であるタ
ラロミセス(Talaromyces)属、ユウペニシリウム(Eupenicillium)属、トリコデルマ(
Trichoderma)属、グリオクラディウム(Glyocladium)属、フザリウム(Fusarium)属に
属する一種または複数の種である、請求項1〜5のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。 - 増殖させる微生物がPenicillium sp. B-453株(FERM BP-08517)である請求項6に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
- 増殖させる微生物がPenicillium(完全世代がTalaromyces)sp. B-422株(FERM BP-08516)である請求項6に記載の生物資材または防除剤の製造方法。
- 増殖させる微生物がEupenicillium reticulisporum B-408株(FERM BP-08515)であ
る請求項6に記載の生物資材または防除剤の製造方法。 - イネ科植物病害に対する防除が、イネの育苗時に発生する糸状菌性病害および細菌性病害の両方に対する防除である請求項1〜9のいずれかに記載の生物資材または防除剤の製造方法。
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