JP2006175492A - 消失模型鋳造法による鋳物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
消失模型を使用した鋳物製造方法において注湯時の湯流れ性を損なうことなく注湯温度を下げ、欠陥のない高品質な鋳物製品を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】
消失模型を使用した鋳物の製造方法において、鋳型に乾燥砂を使用し、かつ消失模型として発泡模型を使用し、更に1250℃から1330℃の範囲の温度を有する溶湯を鋳型の湯口から注湯すると共に、通気路を介して鋳型を減圧する構成にした。
また、通気路を介して鋳型を減圧した後、更に通気路を介して鋳型を加圧するようにした。
【選択図】
図4
消失模型を使用した鋳物製造方法において注湯時の湯流れ性を損なうことなく注湯温度を下げ、欠陥のない高品質な鋳物製品を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】
消失模型を使用した鋳物の製造方法において、鋳型に乾燥砂を使用し、かつ消失模型として発泡模型を使用し、更に1250℃から1330℃の範囲の温度を有する溶湯を鋳型の湯口から注湯すると共に、通気路を介して鋳型を減圧する構成にした。
また、通気路を介して鋳型を減圧した後、更に通気路を介して鋳型を加圧するようにした。
【選択図】
図4
Description
本発明は、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄鋳物の製造方法に係り、更に詳細には消失模型を使用し、鋳物品質を高めると共に生産効率の向上を図った鋳物の製造方法を提供するものである。
異形管等の鋳鉄製品を製造するプロセスとして、消失模型を使用した鋳物製造方法が多用されてきている。
消失模型を使用した鋳物製造方法においては、まず発泡樹脂模型の外面に塗型を塗布し、これを製品型とすると共に、発泡樹脂模型の外面に塗型を塗布した湯道、湯口、湯受け皿、押し湯部等を形成し、これらを組み立てて鋳物砂の中に込める。この湯受け皿に溶湯を供給すると、溶湯の熱により発泡樹脂は分解ガス化され、溶湯は湯口から湯道へと進み、発泡樹脂模型に到達する。溶湯はこの発泡樹脂模型を熱により分解ガス化させて消失させ、発泡樹脂模型が存在していた空間に充填され凝固することにより鋳物が製造される。
このような消失模型を使用して鋳物を製造する方法において、鋳物砂として例えばフラン樹脂のようなバインダーを含んだ鋳物砂を使用するものを一般にフルモールド鋳造法と呼び、バインダーを使用していない鋳物砂を使用するものをロストフォーム鋳造法と一般に呼んでいる。
消失模型を使用した鋳造方法は、鋳造設備費が安価であるため水道管等の鋳造法として採用されている。また、粘結剤を使用しないロストフォーム法を採用した場合には、廃砂が少ないという利点もある。
しかしながら、消失模型を使用して鋳物を製造する場合、発泡樹脂模型を鋳型の中に入れたまま注湯するため、発泡樹脂模型が分解する際に大量のガスを発生し、そのため湯流れ性が悪くなるという問題があり、かかる問題を解決するため注湯温度を高める等の対応をとる必要があった。
更に、注湯温度を高めることにより冷却する過程で体積の収縮がおこり、いわゆる「ひけ」が発生するため、鋳型に押し湯を設けて「ひけ」の発生を抑える等の配慮が必要になっていた。
また、鋳型に乾燥砂を使用し、注湯温度を高めると、注湯後鋳物が冷却されるまでの時間が長くなり、解枠までの時間が長くなるという問題があった。
本発明は、上述したような従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、消失模型を使用した鋳物製造方法において、注湯時の湯流れ性を損なうことなく注湯温度を下げ、「ひけ」、「湯境」等の欠陥や、「ガス欠陥」のない高品質な鋳物製品の製造方法を提供することを課題とする。
また、鋳物の冷却時間の短縮、鋳物砂の繰り返し使用、溶湯の歩留まり向上、および鋳型の生産効率向上等により、生産性の高い鋳物製品の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本願請求項1に係る発明では、消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、鋳型に乾燥砂を使用し、かつ消失模型として発泡模型を使用し、更に1250℃から1330℃の範囲の温度を有する溶湯を鋳型の湯口から注湯するステップと、鋳型を減圧するステップと、を備えた構成の鋳物の製造方法とした。
注湯温度を従来から行われている注湯温度より低く設定することによりセミソリッド状態(固体と液体の共存状態)での注湯を実現し、冷却の際の熱膨張による体積の収縮量を低減させ、「ひけ」等の欠陥の発生を抑制することが可能となる。また、鋳型を減圧することにより、注湯時に発生する発泡模型の分解ガスが吸引され製品内部にガスを巻き込むことがなくなると共に、湯流れ性を高めることができる結果、鋳物製品中に「ガス欠陥」や「湯境」等の欠陥が発生しないように抑制することができ、高品質な鋳物製品の製造方法を提供することが可能となる。
また、本願請求項2に係る発明では、請求項1に記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法における鋳型を減圧するステップを、鋳型下方に設けられ鋳型に連通する孔を備えた通気路内を減圧することによって達成される構成の鋳物の製造方法とした。
このような構成とすることにより、注湯時に発生する発泡模型の分解ガスが吸引され鋳物製品内部にガスを巻き込むことがなくなることに加え、鋳型下方から減圧吸引されることになるため、鋳型に注湯された溶湯には下方へ吸引する力が作用する。この結果、溶湯が鋳型の下方にひきつけられ、湯流れ性を更に改善することが可能となる。
また、本願請求項3に係る発明では、請求項2に記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、前記鋳型を減圧するステップの後、更に鋳型を加圧するステップを含み、これらのステップが前記通気路内を減圧および加圧することによって達成される構成とした。
このような構成とすることにより、加圧された低温の空気が鋳型内部を流れるため、注湯された鋳型全体の冷却速度を上げることが可能となるため、解枠までの時間を短くすることができる。その結果、鋳物製品の生産性を高めることが可能となる。
また、本願請求項4に係る発明では、請求項1から3のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、鋳型を減圧するステップの圧力を0.03Mpaから0.05Mpaの真空圧である構成とした。
鋳型を減圧するステップの圧力として0.03Mpaから0.05Mpaの真空圧を適用することにより、注湯時に発生する発泡模型の分解ガスが最も良く吸引され、製品内部にガスを巻き込むことがなくなると共に、湯流れ性をも高めることができる。
また、本願請求項5に係る発明では、請求項3または4に記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、鋳型を減圧するステップを注湯開始時から注湯完了時まで続け、注湯完了時から鋳物温度がフェライト − パーライト変態温度に低下するまで前記鋳型を加圧するステップを続ける構成とした。
このような構成とすることにより、解枠までの時間を更に短くすることができ、鋳物製品の生産性を高めることが可能となる。
また、本願請求項6に係る発明では、請求項1から5のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、鋳型が粘結剤を用いない鋳物砂から形成された構成とした。
このような構成とすることにより、鋳物砂の繰り返し使用が可能となり、鋳物製品の生産性を高めることが可能となる。
また、本願請求項7に係る発明では、請求項1から6のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、発泡模型の材質がPMMAであり、その発泡倍率が40から50倍である構成とした。
このような構成とすることにより、型が変形に耐えられる程度まで剛性を高めることができると共に、ガスおよび残渣の発生が少ない発泡模型を得ることができ、高品質の鋳物製品を生産することが可能となる。
また、本願請求項8に係る発明では、請求項1から7のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、発泡模型の全面または一部に15Kgf/cm2以上の曲げ強度を有する塗型を塗布した構成とした。
このような構成とすることにより、鋳物砂と溶湯の反応を防止し、発泡模型の剛性を更に高くすることができ、高品質の鋳物製品を生産することが可能となる。
また、本願請求項9に係る発明では、請求項1から8のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、鋳型に押し湯部を設けない構成とした。
鋳型に押し湯部を設けないことにより、溶湯の歩留まりが向上し、鋳物製品の生産性をより高めることが可能となる。
また、本願請求項10に係る発明では、請求項1から9のいずれかに記載された消失模型鋳造法による鋳物の製造方法において、発泡模型が湯道、堰、製品部を一体成形したもの、またはこれらの一部を別成形した後、接着により一体化する構成とした。
このような構成とすることにより、鋳型の生産効率が向上し、鋳物製品の生産性をより高めることが可能となる。
以上説明したような手段をとることにより、消失模型を使用した鋳物製造方法において、注湯時の湯流れ性を損なうことなく注湯温度を下げ、「ひけ」、「湯境」等の欠陥や、「ガス欠陥」のない高品質な鋳物製品の製造方法を提供することが可能となる。
また、鋳物の冷却時間の短縮、鋳物砂の繰り返し使用、溶湯の歩留まり向上、および鋳型の生産効率向上等により、生産性の高い鋳物製品の製造方法を提供することが可能となる。
鋳物製品の製造工程において、鋳型に注湯する際の湯温は、最終製品の品質および製造コストに大きな影響を及ぼす。従来鋳物製品を製造する場合、一般的には1450℃程度の高温で注湯を行っていたが、注湯する際の溶湯の温度は、溶湯が凝固する際の熱収縮量、湯流れ性、発泡模型を分解消失させる程度、および溶解に必要となる電力エネルギーを左右する要因となる。
注湯温度が高いと、溶湯が凝固し冷却される過程で熱膨張により起こる体積の収縮が大きくなり、「ひけ」が発生する原因になる。従来は、押し湯を行ってこの「ひけ」を防止するようにしていた。注湯温度を下げ、半凝固状態に近い溶湯、即ち、セミソリッド状態の溶湯を使って注湯すると、熱膨張による体積の収縮量と凝固の過程で生じる黒鉛の析出過程での体積の膨張量がほぼ同じ程度になり、これらを互いに相殺することができ、「ひけ」の発生を防止することが可能となる。ここでセミソリッド状態とは、鋳鉄が液相から固相に状態変化する過程で、液相部分であるセメンタイトと、固相部分であるマルテンサイトが混在した状態をいう。
また、このようにセミソリッド状態で注湯を行うようにすると、従来のような高温で注湯する場合に較べて溶湯を高温に加熱する必要がなくなるため、加熱のためのエネルギー消費を低減することができる。
しかし、注湯温度が低いと溶湯の粘性が高くなって湯流れ性が低下する。 その結果湯回りが悪くなって「湯境」等の欠陥の原因となる。
また、注湯温度が低いと発泡模型をガス化して分解消失させる速度が遅くなったり、発泡模型の残渣が生じたりする。 この結果残渣やガスの巻き込みによる欠陥が生じる原因となる。
以上述べたような観点から考えると、高品質の鋳物製品を低コストで生産するためには、注湯温度をセミソリッド状態の遷移温度まで低下させるように制御し、かつ低温注湯による弊害を防止するための対策を講じることが重要になってくる。
そこで、注湯時に鋳型の堰部において、溶湯がセミソリッド状態となるように溶湯の温度を制御するための条件を明らかにしておく必要があり、この条件を求めるための注湯試験を実施した。
注湯試験は、図1に示すように実際の鋳型の湯道をシュミレートするように、金属パイプの内側に耐火材を配置し、パイプの中心部分に発泡樹脂(ロストフォーム)をセットして、これに溶湯を流し込むようにした。パイプを通り過ぎた溶湯が、パイプ出口に設けた水槽内へ落下するようにしておき、ここに落下したサンプル(テストピース)の組織観察を行うことによってパイプの出口位置(堰部に相当する位置)においてセミソリッド状態が得られていたか否かの評価をおこなった。
表1はこの注湯試験の結果を示したものである。また図2は得られたテストピースの顕微鏡による組織の拡大写真であり、セミソリッド状態を呈したテストピースの顕微鏡写真である。表1に示した○印は、セミソリッド状態が実現されていたことを表し、×印はセミソリッド状態が実現されていなかったことを表す。
注湯試験においては、注入する溶湯の温度を1400℃から1230℃の範囲で変化させて試験を行った。注湯温度が1350℃以上の条件では水槽内へ落下する段階で固体状態であった組織は観察されなかった。しかし、注湯温度が1330℃になるとわずかに固体状態であった組織が観察され、注湯温度が1300℃以下、1230℃以上の条件では液体と固体が混在した状態であった組織が観察された。従って、1230℃から1330℃の温度範囲で注湯を行えばセミソリッド状態を実現することが可能であることを実証することができた。
次に、種々条件を変えてダクタイル鋳鉄異形管の試作をおこなった。試作を行った鋳鉄製品は、図3に示すような呼び径8インチで肉厚3.5mmの直管状の異形管(重量5.5Kg/1個)と、呼び径10インチで肉厚5mmの直管状の異形管(重量11Kg/1個)の2種類である。
この試作においては、注湯温度を1400℃から1230℃まで変化させて注湯を行うと共に、注湯する際に鋳型を減圧する場合と減圧しない場合に分けて試作を行った。
まず、鋳型を減圧しないで異型管を成形する方法について以下に詳細に説明する。
鋳型を形成する際に使用する発泡模型は、ポリメチルメタクリル樹脂(PMMA)を発泡させて異型管の形状に成形することにより製作した。この場合、発泡模型としては発生ガスや残渣をより少なくするために、発泡倍率を高めて比重をより低くすることが望ましいが、あまりに発泡倍率を高め、比重を低くすると成形体としての剛性が低くなって、変形し易くなるため寸法精度の高い鋳物製品を得ることができなくなる。従って、発泡倍率を40倍から50倍の間で設定するのが望ましい。
次に、成形した発泡模型の外表面に、塗型を塗布することにより表面層を形成する。この塗型は砂と溶湯との反応を防止し、発泡模型の剛性を向上させたり、補強したりする目的で使用されるものである。そのため塗布する塗型は15Kg/cm2以上の強度を有するものが望ましい。塗型の濃度は鋳物製品中におけるガス欠陥の発生にも影響するものであり、このガス欠陥の発生を押さえるためには70ボーメ程度の濃度にしておく必要がある。
なお、発泡模型を製作するにあたって、最終的な鋳物製品の形状をした発泡模型を製作し、湯道、湯口、湯受け皿、押し湯部等の発泡模型をそれぞれ別に製作するようにしても良いが、製品部分と湯道、湯口、湯受け皿、押し湯部等を一体として成型し、これに塗型を塗布するようにしても良い。また、これらを別々に成形した後、接着によって一体形状に形成し、その後塗型を塗布するようにしても良い。
次に、塗型を塗布した発泡模型を使用して、鋳型を成形する。鋳型に使用する鋳物砂としては人工セラミック鋳物砂であるセラビーズ400(商品名)を使用した。この鋳物砂には粘結材を混ぜていないため、破砕による廃砂は無く、鋳物砂として再使用が可能であるという利点を有している。
発泡模型を内蔵した鋳型ができあがると、これに溶湯が注入される。注湯した地金の材質はFCD45である。発泡模型を使用して鋳物を製造する場合、溶湯が湯口に注がれると、溶湯の熱で発泡模型を分解消失させつつ溶湯は鋳型の内部に充填されていく。分解した発泡模型のガスは、ある程度の通気性を有する鋳物砂の内部を通って鋳型の外部へ放出される。
また、鋳型の内部に充填された溶湯は時間と共に冷却され液相から固相へ状態変化していく。
注湯された鋳物の温度が充分冷却されると、鋳型は解体され、中から成形された鋳物製品が取り出され、異形管の成形工程が終了する。
次に、鋳型を減圧しながら注湯して異型管を成形する方法について以下に説明する。
鋳型を減圧しながら鋳造する方法と、鋳型を減圧しないで鋳造する方法とが異なるのは、鋳型に溶湯を注入する以降の工程である。即ち、発泡模型を内蔵した鋳型に溶湯を注入すると同時に、図4に示すように鋳型(1)下方に設けた通気路(2)内を減圧することによって鋳型の減圧が行われる。
この通気路(2)には、鋳型内の鋳物砂と直接連通させるための通気孔(3)が複数設けられており、通気路(2)の一端は外部に設置され、真空ポンプ等を備えたの減圧装置(図示せず)に連通されている。
減圧装置により、通気路(2)の内部を減圧すると鋳物砂内に存在する空気や、樹脂製の発泡模型が分解して発生した分解ガスを鋳物砂の中に存在する空隙を通して吸引する。
鋳型の減圧は、分解ガス等を十分に吸引するために、注湯した溶湯が凝固するまで続けることが望ましい。また、砂を直接吸引せず、かつ分解ガス等を十分に吸引するようにするためには、減圧する際の圧力は0.03Mpaから0.05Mpaの範囲に設定することが望ましい。
鋳型の減圧が完了し、注湯された鋳物の温度が充分冷却されると、鋳型は解枠され、中から成形された鋳物製品が取り出され、異形管の成形工程が終了する。
なお、ここで通気路(2)を鋳型の下方に設ける場合について説明したが、これに限らず、通気路(2)を鋳型の側方または上方に設けても良いし、あるいは鋳型外周の鋳枠に直接通気孔を設け、鋳枠の外側を減圧するようにしても良い。
ただし、通気路(2)を図4に示すように鋳型下方に設けた場合、鋳型を減圧しつつ注湯する際に、溶湯は鋳型下方に吸引されることになり、溶湯が鋳型の内部空間で跳ね上がりにくくなり、溶湯面が鋳型の下方から安定して上昇していく。その結果、空気やガスの巻き込みを抑えることができるという効果が期待できる。
また、鋳型の上面には、耐熱性のプラスチックフィルム(4)を設けて置くことによって、鋳型を減圧する際、外部から鋳物砂に流入する空気を減少させ、その結果分解ガス等の吸引除去をより効果的に行うことができるようになる。
表2は、呼び径8インチで肉厚3.5mmの直管状の異形管と、呼び径10インチで肉厚5mmの直管状の異形管を成形した結果について示したものである。
これらの異形管は、注湯温度と、注湯時に鋳型を減圧するか否かという点をパラメータとして成形したものであり、成形された異形管の評価結果を表中に○、△、×で示してある。○印を付したものは、成形された異形管に湯流れ性に起因する「湯境」やガスの巻き込みによるガス欠陥等のない、高品質の鋳物製品であったことを表し、△は湯流れ性には問題ないものの、ガス欠陥が生じていたものを表し、×は湯流れ性に問題があったものを表している。
注湯温度を下げて高品質な鋳物製品を得るためには、鋳型の減圧が不可欠であることが確認できた。
表2の結果と、表1の結果とを考え併せると、セミソリッド状態を確立させた上で、品質上問題のない、特に薄肉の鋳物製品を製造するためには、注湯温度を1250℃から1330℃の範囲に制御し、併せて鋳型を減圧する必要があることが判った。なお、このようにセミソリッド状態で注湯することにより、押し湯部を設ける必要が無くなり、溶湯の歩留りを向上させることが可能となる。
また、表2に示す注湯時に鋳型を減圧した場合の鋳物製品と、注湯時に鋳型を減圧しない場合の鋳物製品の引張強度を測定した結果を図5に対比して示す。
この図から判るように、注湯時に鋳型を減圧することにより、鋳物製品の引張強度は向上し、また、セミソリッド状態で注湯を行った場合の方が引張強度が向上する傾向にあることが判る。
更に、ここで行った試作とは別に、鋳型を減圧した後、鋳型を強制冷却させるために、鋳型を更に加圧して異型管を成形する試験を行った。
鋳型を減圧した後、更に鋳型を加圧する製造プロセスは、鋳型を減圧しながら注湯する製造プロセスとほぼ同様であるが、溶湯を鋳型に注入しつつ通気路(2)内を減圧した後、更に通気路(2)内を加圧する点のみ異なる。
即ち、発泡模型を内蔵した鋳型に溶湯を注入すると同時に、鋳型(1)下方に設けた通気路(2)内を減圧することによって鋳型の減圧が行われ、この減圧は注湯が完了するまで続けられる。そして注湯が完了したあと減圧された通気路(2)内の圧力を大気圧以上に加圧する。このようにすることによって、通気路(2)から鋳型内の鋳物砂の空隙に温度の低い空気が送り込まれ、空気の流れを形成することができる。この空気の流れによって鋳物の冷却速度を速めることが可能となる。 なお、この場合において鋳型の上面に、耐熱性のプラスチックフィルム(4)が配置されている場合には、このフィルム(4)を除去してから通気路(2)内の圧力を大気圧以上に加圧することが望ましい。鋳型内を空気が流動し易くなるからである。
通気路(2)の加圧は、鋳物が充分に冷却されるまで実施してもよいが、鋳物の温度がフェライト − パーライト変態温度に低下するまで加圧し、その後は通気路(2)内の圧力を大気圧にもどすようにしても良い。このようにすることにより、ムダなエネルギーを消費することなく、効果的に鋳物の冷却速度を高めることが可能となる。
このように鋳型を減圧した後、鋳型を強制冷却させるために鋳型を更に加圧して異型管を成形する比較試験を行った結果、強制冷却しない方法の場合、注湯から解枠まで30分間かかっていたものが、強制冷却することにより15分間で解枠することができるようになり、大幅な生産性の向上を図ることができるようになった。
1 鋳型
2 通気路
3 通気孔
4 フィルム
5 湯道
6 鋳枠
7 消失模型または鋳物製品
2 通気路
3 通気孔
4 フィルム
5 湯道
6 鋳枠
7 消失模型または鋳物製品
Claims (10)
- 消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、鋳型に乾燥砂を使用し、かつ消失模型として発泡模型を使用し、
(1) 1250℃から1330℃の範囲の温度を有する溶湯を鋳型の湯口から注湯するステップと、
(2) 鋳型を減圧するステップと、
からなることを特徴とする鋳物の製造方法。 - 請求項1に記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記鋳型を減圧するステップが、鋳型下方に設けられ鋳型に連通する孔を備えた通気路内を減圧することによって達成されることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項2に記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記鋳型を減圧するステップの後、更に鋳型を加圧するステップを含み、これらのステップが前記通気路内を減圧および加圧することによって達成されることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記鋳型を減圧するステップの圧力が0.03Mpaから0.05Mpaの真空圧であることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項3または4に記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記鋳型を減圧するステップを注湯開始時から注湯完了時まで続け、注湯完了時から鋳物温度がフェライト − パーライト変態温度に低下するまで前記鋳型を加圧するステップを続けることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記鋳型が粘結剤を用いない鋳物砂から形成されたものであることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記発泡模型の材質がPMMAであり、その発泡倍率が40から50倍であることを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記発泡模型の全面または一部に15Kgf/cm2以上の曲げ強度を有する塗型を塗布したことを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、鋳型に押し湯部を設けないことを特徴とする鋳物の製造方法。
- 請求項1から9のいずれかに記載の消失模型鋳造法による鋳物の製造方法であって、前記発泡模型が湯道、堰、製品部を一体成形したもの、またはこれらの一部を別成形した後、接着により一体としたものであることを特徴とする鋳物の製造方法。
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