JP2006171059A - 光反射鏡、その製造方法およびプロジェクター - Google Patents

光反射鏡、その製造方法およびプロジェクター Download PDF

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正一 武井
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宣充 浜名
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Abstract

【課題】プラスチック基材を用いて、高強度で高反射率の光反射鏡を提供することである。
【解決手段】強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層50aと、このプラスチック強化層50aの表面に形成され強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層50bとを含む基材50と、この基材50の前記プラスチック光沢層表面に被着させた反射膜52とを備えた光反射鏡である。前記基材50は、金型内に前記プラスチック強化層用およびプラスチック光沢層用の熱硬化性樹脂組成物のいずれかを一方を注入して前記プラスチック強化層またはプラスチック光沢層を成形後、他方の熱硬化性樹脂組成物を注入して光沢層50bまたは強化層50aを成形することによって得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に基材がプラスチック材で構成され、大型であっても高い強度を有する光反射鏡、その製造方法およびプロジェクターに関する。
映像を投写するプロジェクターは、前面型プロジェクターと、背面型プロジェクターとに分類される。前面型プロジェクターは、反射型スクリーンを部屋の壁際に配置し、液晶表示素子や投写レンズ等を含むプロジェクターユニットを部屋の中央部に配置して、投写レンズからスクリーンへ向かって変調光を投写し、スクリーンに画像等を表示する。観視者はスクリーンで反射した変調光を見る。一方、背面型プロジェクターは、液晶表示素子や投写レンズ等を含むプロジェクターユニットがボックス型の筺体の内部に配置され、さらに透過型スクリーンが筺体の前面部に設けられているものである。観視者は筺体の外側からスクリーンを透過した変調光を見るようになっている。
近時、大画面、例えば対角70インチから100インチの画面を有する背面型プロジェクターが研究されている。このような大画面を有する背面型プロジェクターでは、投写レンズからスクリーンまでの距離を2m以上も長くとることが必要になり、筺体がかなり大きくなる。そこで、投写レンズとスクリーンとの間にミラーを配置し、筺体の奥行きを小さくするようになっている。
しかし、投写レンズとスクリーンとの間に配置されるミラーとして、ガラス製の表面反射ミラーを使用すると、大画面の背面型プロジェクターにおいて、ミラーの面積は1.5m×1.1m以上となる。しかも、ガラスは脆く、割れやすいため、厚さを5mm以上にすると、ミラーの重さが20kg以上になり、装置全体では100kg以上にもなるという問題点が生じる。
そこで、特許文献1には、投写レンズとスクリーンとの間に配置されるミラーを、比重もガラスの60パーセント程度と小さいプラスチックで作ることが提案されている。特許文献1に記載のミラーは、透明なプラスチックシート34の一面に銀やアルミニウム等の反射性金属を蒸着してなるものであり、保護膜36が反射膜35を覆っている。
しかし、スクリーンが大画面となるほど、ミラーも大型化するため、充分な強度が要求される。ところが、通常の熱硬化性樹脂を成形したプラスチック基材では、厚さを大きくしても、強度が劣るために、割れたり、クラックが発生しやすいという問題がある。
強度の高いプラスチック基材を得るには、ガラス繊維などの強化繊維を含有した樹脂組成物を用いることが一般に知られている。ところが、強化繊維を樹脂組成物に多量に含有させて得られる基材は、強化繊維により表面が粗く平滑性が損なわれている。このため、基材表面に銀やアルミニウム等の反射性金属を蒸着して反射膜を形成したとき、反射膜の反射率が低下するという問題がある。
特に、大画面で薄型(例えば奥行200mm以下)の背面型プロジェクターでは、投写レンズから投写された画像を非球面ミラーや背面ミラーといった複数の反射鏡で画像を順次反射させながら投写するため、反射率が低いとスクリーンに映し出される拡大画像が暗いものになる。このため、軽量で反射率が96%以上の反射鏡が要望されている。
ところで、反射率の高い反射鏡として、特許文献2には、特定の銀の反射膜を備え、可視光領域で反射率が98%以上である反射鏡が記載されている。しかしながら、特許文献2において、反射率が98%以上である反射鏡はガラス基材を用いて得られたものである。ガラス基材を用いる場合は、軽量化が困難であり、かつ精密な表面研磨が必要であるためコストも高くなるという問題がある。
特開平7−230072号公報 特開2003‐114313号公報([0073]、[0081])
本発明の課題は、プラスチック基材を用いて、高強度で高反射率の光反射鏡を提供することである。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、基材のうち、反射膜を形成する表面側は、強化繊維の含有量を少なくしたプラスチック光沢層とし、裏面側は、逆に強化繊維の含有量を多くしたプラスチック強化層とすることにより、高強度で高反射率という相反する要求を同時に満足させることができる光反射鏡を得ることに成功した。
すなわち、本発明の光反射鏡は、以下の構成からなる。
(1)強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層と、このプラスチック強化層の表面に形成され強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層とを含む基材と、この基材の前記プラスチック光沢層表面に被着させた銀を含む反射膜とを備えたことを特徴とする光反射鏡。
(2)前記プラスチック光沢層は、前記プラスチック強化層よりも厚さが薄いことを特徴とする上記(1)に記載の光反射鏡。
(3)前記プラスチック強化層の強度が90MPa以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の光反射鏡。
(4)前記プラスチック光沢層の表面は、PV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光反射鏡。
(5)前記プラスチック強化層とプラスチック光沢層との線膨張係数の差が3×10-5/℃以内である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光反射鏡。
(6)前記プラスチック強化層は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤50〜78質量%、強化繊維8〜20質量%および硬化剤0.1〜3質量%からなる強化層形成用の熱硬化性樹脂組成物を成形したものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光反射鏡。
(7)前記プラスチック光沢層は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤70〜84質量%、強化繊維5質量%以下および硬化剤0.1〜3質量%からなる光沢層形成用の熱硬化性樹脂組成物を成形したものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光反射鏡。
(8)前記無機充填剤の平均粒径が0.1〜60μmである上記(6)または(7)に記載の光反射鏡。
(9)前記強化繊維は、繊維長が1〜3mmであり、径が5〜100μmである上記(6)または(7)のいずれかに記載の光反射鏡。
(10)前記銀を含む反射膜が、X線回折による(111)ピーク強度がその他のピーク強度の合計の20倍以上であることを特徴とする上記(1)に記載の光反射鏡。
(11)前記銀を含む反射膜の表面は、PV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のなり、なめらかな面であることを特徴とする上記(1)または(10)に記載の光反射鏡。
(12)前記銀の反射膜の厚みが100〜200nmであることを特徴とする上記(1)、(10)または(11)に記載の光反射鏡。
(13)前記反射膜と基材との間に密着性向上膜が介在していることを特徴とする上記(1)に記載の光反射鏡。
(14)前記密着性向上膜が、Cr、CrO、Cr23、Y23、LaTiO3、La2Ti38、SiO2、TiO2およびAl23からなる群より選ばれる少なくとも1種からなり、厚さが10〜200nmである誘電体層である上記(13)に記載の光反射鏡。
(15)前記反射膜の表面に、反射増加膜が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の光反射鏡。
(16)前記反射膜が、Y23、MgF2、LaTiO3、La2Ti38、SiO2、TiO2およびAl23からなる群より選ばれる化合物から形成される2層以上の透明誘電体層であることを特徴とする上記(15)に記載の光反射鏡。
(17)前記反射増加膜が、反射膜表面に少なくとも高屈折率の透明誘電体層と、低屈折率の透明誘電体層とを積層して形成されていることを特徴とする上記(15)または(16)に記載の光反射鏡。
(18)強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層および強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層を積層成形して基材を得る工程と、得られた基材のうちプラスチック光沢層の表面に銀を含む反射膜を形成する工程とを含む光反射鏡の製造方法。
(19)金型内に前記強化層用および光沢層用の熱硬化性樹脂組成物のいずれかを一方を注入して前記プラスチック強化層またはプラスチック光沢層を成形後、他方の熱硬化性樹脂組成物を注入してプラスチック光沢層またはプラスチック強化層を成形する上記(18)に記載の光反射鏡の製造方法。
(20)一方の熱硬化性樹脂組成物の成形後、前記金型内を脱気して、または脱気しながら、前記他方の熱硬化性樹脂組成物の成形が行われる上記(19)に記載の光反射鏡の製造方法。
(21)前記強化層および光沢層形成用の各熱硬化性樹脂組成物が、さらに離型剤を0.1〜3質量%含有していることを特徴とする上記(18)〜(20)のいずれかに記載の光反射鏡の製造方法。
(22)前記基材の表面に、銀を含む反射膜を形成するに先立って、前記基材の表面に密着性向上膜を形成することを特徴とする上記(18)に記載の反射鏡の製造方法。
(23)前記基材の表面に銀を含む反射膜を形成した後、反射膜の表面に反射増加膜を形成することを特徴とする上記(18)〜(22)のいずれかに記載の反射鏡の製造方法。
(24)前記反射増加膜が、2層以上の透明誘電体層からなる上記(23)に記載の反射鏡の製造方法。
(25)前記反射増加膜が、反射膜表面に少なくとも高屈折率の透明誘電体層と、低屈折率の透明誘電体層とを積層して形成されていることを特徴とする上記(23)または(24)に記載の反射鏡の製造方法。
(26)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の光反射鏡を具備したことを特徴とするプロジェクター。
なお、前記プラスチック光沢層表面のPV値および表面状態は、非接触三次元輪郭測定機(例えば三鷹光機(株)製の商品名「NH−3SP」)により測定することができる。
本発明の光反射鏡は、大判、例えば130mm×150mmであっても、ガラス基板よりも軽量で安価に製造できると共に、基材はプラスチック強化層を備えているので、高い強度を有し、しかも反射膜を被着させる基材表面は強化繊維の含有量が少ないプラスチック光沢層であるので、高い反射率を有するという効果がある。
また、本発明の光反射鏡の製造方法によれば、研磨などの後加工を要することなく、高反射率の光反射鏡を簡単に製造することができる。
この実施形態にかかる光反射鏡は、図1に示すように、基材50がプラスチック強化層50aとプラスチック光沢層50bとを含み、光沢層50b表面に反射膜52が形成されたものである。
前記プラスチック強化層50aおよびプラスチック光沢層50bは、その熱変形温度を考慮すると熱硬化性樹脂を用いて形成するのが好ましい。このような熱硬化性樹脂としては、成形品の熱変形温度が130℃以上であれば特に限定されるものではなく、例えば不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの各種の熱硬化性樹脂が使用可能である。特に不飽和ポリエステル樹脂を使用するのが転写性、成形寸法安定性のうえで好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂を使用する場合、前記プラスチック強化層形成用の熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤50〜78質量%、強化繊維8〜20質量%および硬化剤0.1〜3質量%からなるのが好ましい。すなわち、強化繊維を8〜20質量%含有することにより、強度を高めることができる。強化繊維の含有量が8質量%未満では、所望の強度が得られない。一方、強化繊維の含有量が20質量%を超えると、樹脂流動性が悪くなり成形が困難となるため好ましくない。
また、前記プラスチック光沢層50bを形成するための熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤70〜84質量%、強化繊維5質量%以下および硬化剤0.1〜3質量%からなるのが好ましい。すなわち、強化繊維の含有量が5質量%以下であることにより、基材50の表面が光沢のある平滑面になり、従って光沢層50bの表面に反射膜を蒸着したとき、高い反射率が得られる。強化繊維の含有量が5質量%を超えると、表面の平滑性が低下して、PV(peak to valley)値が0.5μmを超え、鋭角な突起のない、なめらかな成形面を得ることが困難になり、高い反射率が得られない。なお、プラスチック光沢層50bでは、強化繊維の含有量が0質量%であってもよい。
前記強化繊維としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維(炭素繊維)、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、スチール繊維、アモルファス繊維、有機繊維などがあげられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。強化繊維は繊維長が1〜3mmで繊維径が5〜100μmであるのが好ましい。繊維長があまり長くなると、プラスチック光沢層50b表面の平滑性が劣るようになるおそれがある。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、α,β-不飽和二塩基酸またはその無水物からなる酸成分と多価アルコールとを重縮合して得られる不飽和ポリエステル(プレポリマー)と重合性単量体とを混合した液状樹脂であり、不飽和ポリエステルを65〜75質量%、重合性単量体を35〜25質量%の割合で含有する。
この不飽和ポリエステル樹脂に使用されるα,β-不飽和二塩基酸またはその無水物としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの1種または2種以上の酸またはその無水物が挙げられ、特にマレイン酸またはその無水物またはフマル酸が好適に用いられる。また、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。
さらに、α,β-不飽和二塩基酸またはその無水物、多価アルコールに、必要に応じて飽和二塩基酸またはその無水物を加えて重縮合してもよい。飽和二塩基酸またはその無水物としては、例えばフタル酸またはその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、上記多価アルコールの他に必要に応じて、1,3−プロパンジオール、1,3−プタンジオール、1,4−プタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの1種または2種以上を上記多価アルコールに混合して使用することができる。
不飽和ポリエステル樹脂に使用される重合性単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、p−メチルスチレン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。重合性単量体は、その所定量を不飽和ポリエステルと混合して不飽和ポリエステル樹脂に含有させるが、不飽和ポリエステルの調製時にその一部を添加することもできる。不飽和ポリエステル樹脂の配合量は、樹脂組成物中に7〜19質量%、好ましくは8〜13質量%である。
前記樹脂組成物に配合される熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル系共重合体、変性ABS樹脂、ポリカプロラクトン、変性ポリウレタンなどが挙げられる。特に、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル系共重合体のようなアクリル系樹脂(共重合体を含む)、ポリ酢酸ビニル、スチレン−酢酸ビニル共重合体のような酢酸ビニル系樹脂(共重合体を含む)が、分散性、低収縮性、剛性の点で好ましい。熱可塑性樹脂の配合量は、樹脂組成物中に6〜19質量%、好ましくは8〜12質量%である。
前記樹脂組成物に配合される無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、タルク、グラファイト、カーボンブラック、アスベスト、水酸化アルミニウムなどの公知の無機充填剤が挙げられる。無機充填剤は平均粒径が0.1〜60μmの範囲にあることが好ましく、その形状は破砕状であることが好ましい。無機充填剤の配合量は、樹脂組成物中に70〜84質量%である。
不飽和ポリエステル樹脂の硬化反応を開始させる硬化剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど有機過酸化物が挙げられる。硬化剤の配合量は、樹脂組成物中に0.1〜3質量%である。
さらに、いずれの樹脂組成物にも、成形品を金型から容易に脱型できるように内部離型剤を配合してもよい。内部離型剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの脂肪族金属塩が挙げられる。内部離型剤の配合量は、樹脂組成物中に0.1〜3質量%程度でよい。
また、前記樹脂組成物に、必要に応じて顔料などの着色剤、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの増粘剤を配合してもよい。
本発明の光反射鏡を製造するには、強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層50a、および強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層50bを順次積層成形して基材50を得、得られた基材50のうちプラスチック光沢層50bの表面に反射膜を蒸着する。成形の順序は特に制限されず、強化層50aおよび光沢層50bのどちらを先に成形してもよい。
前記基材50は、例えば強化層50aと光沢層50bとをそれぞれ個別に成形し、それらを接着するなどして積層一体化してもよいが、1つの金型で順次成形するのが好ましい。すなわち、金型内に例えば強化層用の熱硬化性樹脂組成物を注入して前記強化層50aを成形後、脱型せずに、前記金型内に光沢層用の熱硬化性樹脂組成物を注入して光沢層50bを成形する。
二段目の成形時(光沢層成形時)には、空気の混入を防止するために、脱気しながら成形するのがよい。これにより強化層50aと光沢層50bとの密着性が向上し、高い接合強度が得られる。なお、二段目の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも金型内の第一段成形(樹脂硬化)終了後の段階で金型内に注入すればよい。
前記熱硬化性樹脂組成物の成形は、135〜180℃の温度で加熱硬化させて行われる。成形方法としては、射出成形(インジェクション成形)、トランスファー成形、圧縮成形などの通常の熱硬化性樹脂の成形に用いられる方法が挙げられる。
前記プラスチック光沢層50bは、前記プラスチック強化層50aよりも厚さが薄いのが好ましく、プラスチック光沢層50bがプラスチック強化層50aよりも厚さが大きい場合は、基材50の強度向上が不十分になるおそれがある。具体的には、プラスチック光沢層50bの厚さは、プラスチック強化層50aの厚さの約0.1〜0.9倍であるのがよい。
また、前記プラスチック強化層50aとプラスチック光沢層50bとの線膨張係数の差は3×10-5/℃以内であるのが好ましい。線膨張係数の差が3×10-5/℃を超える場合には、環境温度の変化によりプラスチック強化層50aとプラスチック光沢層50bとの間に亀裂ができたるおそれがある。線膨張係数の差を上記範囲内にするには、例えば強化繊維の配合量以外は同じ配合成分で同量を配合するようにすればよい。
前記熱硬化性樹脂組成物は、いずれも成形品表面の平滑性、寸法安定性を確保するうえで、成形時の成形収縮率が0.05〜−0.10%であるのが好ましい。成形収縮率は、常温の成形品と常温の金型の寸法を比較して、その割合を示した値であり、(金型寸法−成形品寸法)/金型寸法から算出される。
使用される金型は、成形品の反射膜形成面に対応する面が平滑であることが必要であり、具体的にはJIS B 0601−2001で規定される表面粗さRzが0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下であるのがよい。また、前記した二段成形を行うためには、種々の成形方法が挙げられ、例えば2つの金型を用いて別々に成形する方法、あるいは一つの金型の中に二つの別形状を加工しておく方法、より好ましくは金型内の一つのキャビティで第一段の成形終了後に、油圧または電動機を用いた機械的方法によってキャビティ空間を広げて第二段成形用を行う方法などが採用可能である。
一つの金型の中に二つの別形状を加工しておく方法としては、上記のほかに、例えば(1)仕切り板を設けて強化層と光沢層のいずれか一方を成形後、油圧装置または電動機により仕切り板を外し他方の層を成形する、(2)例えば上型内に二つの形状がそれぞれ並設されており、いずれかの形状で強化層と光沢層のいずれか一方を成形後、型を開いて、下型または上型をスライドするかまたは回転させ、他方の形状にて一方の層の上に他方の層を成形するなどの方法も挙げられる。
また、一つの金型で二段成形する場合に必要な脱気を行なうには、例えば、金型にガスの逃げ道であるガスベントを設定する、成形中に金型をごく短時間だけ若干開いてガスを逃がす、型内を真空引きすることにより減圧にする、金型スライド機構を利用して型とスライドとの隙間を利用して脱気する、成形品を取り出すためのエジェクターピンを利用して脱気するなどの方法が挙げられる。脱気により、型内の残存気体を排気して金型内における樹脂の転写性を向上させることができる。
このようにして成形されるプラスチック基材50は、光沢層50bの表面がPV値0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面である。このため、離型した成形品は、表面に平滑層(アンダーコート層等)を設けたり、研磨したりするなどの後加工を施すことなく、その表面に反射膜を直接形成することができると共に、基材表面の影響を強く受ける反射膜の表面もPV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面となすことができる。
次に、得られた基材の表面に、銀を含む反射膜を形成する。このとき、基材の表面に、後述する方法によって銀を含む反射膜を直接形成してもよく、あるいは反射膜と基材との間に密着性向上膜を介在させてもよい。さらに、前記反射膜の表面に、2層以上の反射増加膜を形成してもよい。反射増加膜は、例えば、反射膜表面に、少なくとも高屈折率の第一透明誘電体層と低屈折率の第二透明誘電体層とをこの順に積層した膜が挙げられるが、積層順序は特に制限されない。第二透明誘電体層の表面には、さらに高屈折率または低屈折率の透明誘電体層を積層(例えば高屈折率および低屈折率の透明誘電体層を交互に積層)することができる。なお、反射増加膜は、経済性を考慮すると、5層以下であるのがよい。
以下、基材の表面に、密着性向上膜、反射膜および反射増加膜をこの順に形成する場合について説明するが、反射膜のみの場合、密着性向上膜と反射膜とを形成する場合、反射膜と反射増加膜とを形成する場合についても同様にして適用可能である。
本発明の好ましい実施形態では、図1に示すように、基材50の表面に、Cr、CrO、Cr23、Y23、LaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2およびAl23から選ばれる少なくとも1種からなる密着性向上膜51と、銀からなる反射膜52と、MgF2またはSiO2からなる第一透明誘電体層53と、LaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2およびAl23から選ばれる少なくとも1種からなる第二透明誘電体層54とが前記基材50側からこの順に積層される。
密着性向上膜51は反射膜52と基材50との密着性を高めると共に、水分が基材50を透過して反射膜52に接触し反射膜52を腐食してしまうのを有効に防止する機能を有する。密着性向上膜51の厚さは密着性を考慮して10〜200nm、好ましくは30〜80nmが好ましい。密着性向上膜51の厚さが10nm未満では、密着性が劣化し易くなると共に、水分が基材50を透過して反射膜52に接触するのを有効に防止するのが困難となってしまう。また、密着性向上膜51は密着性が良好である限りできるだけ薄いほうが望ましいことから、密着性向上膜51の厚さは200nm以下が好ましい。
また、密着性向上膜51は、ポーラスで無数の微小クラックのあるプラスチック基材50の表面をより平滑な表面状態にする機能をも有することが、後述する実施例におけるSEM写真から明らかとなった。このような機能が得られる理由は明らかではないが、密着性向上膜51を構成する成分とプラスチック基材50の表面との間で何らかの化学的または物理的相互作用が働いたのではないかと推測される。いずれにしても、プラスチック基材50の表面がより平滑な表面状態になることにより、反射膜の反射率をより一層向上させることができる。
銀からなる反射膜52は厚さが100〜200nm、好ましくは70〜130nmであるのが好ましい。反射膜52の厚さが100nm未満では、光が透過し易くなり反射率が低くなる。一方、反射膜52の厚さが200nmを超えても反射率が向上せず、また銀は材料コストがかかるため、反射膜52の厚さが不必要に厚いことは好ましくない。
第一透明誘電体層53および第二透明誘電体層54は多層干渉層による高反射膜、すなわち反射増加膜を構成している。従って、これらの厚さはその屈折率および光の波長によって適宜決定される。また、第二透明誘電体層54の屈折率が第一透明誘電体層53の屈折率よりも大きい。例えば、第一透明誘電体層53にMgF2、第二透明誘電体層54にLa2Ti38を用いて可視光領域で最高の反射率とする場合、第一透明誘電体層53の厚さは73nm程度であり、第二透明誘電体層54の厚さは60nm程度となる。
なお、第一透明誘電体層53および第二透明誘電体層54からなる反射増加膜は反射膜52を保護する作用もなし、反射増加膜によって大気中に含まれる水分等が反射膜52に接触し、反射膜52に腐食等が発生するのを有効に防止することができる。
銀を含む反射膜52は、第一透明誘電体層53側の表面X線回折による(111)ピーク強度がその他のピーク強度の合計の20倍以上である。これは、結晶の配向性が高くかつ結晶密度が高く緻密であり、さらに反射膜の性質が均質であることを意味している。これにより、反射率低下の大きな原因となる光の膜内への吸収や散乱が抑制される。すなわち、光の吸収は、光のエネルギーが膜内で熱に変換されて失われることを意味しており、膜内に不純物等の欠陥があると生じる。
また、反射膜52は、原子間力顕微鏡(AFM)による観察によって測定される算術平均粗さが3nm(μmに換算すると0.003μmである)以下である。原子間力顕微鏡とは、探針を付けたカンチレバーを試料表面に近づけると、原子間力によってカンチレバーがたわむのを利用して、その変位をレーザー反射光で検知し、表面の凹凸をナノメーターオーダーで画像化することができる顕微鏡をいう。このような原子間力顕微鏡で測定される表面粗さが3nm以下であるということは、反射膜52が実質的に平坦であることを意味する。これにより、反射率低下の大きな原因となる層表面での光の散乱が抑制される。
従って、以上の点から、反射膜52は緻密で平坦であるため、光の散乱や吸収を抑制して高い反射率を実現していると考えられる。
また、第二透明誘電体層54は基材50と反対側の表面の算術平均粗さが5nm以下である。これにより、第二の透明誘電体層54は平坦であるため、反射膜52と共に、光の散乱や吸収を抑制して高い反射率の実現に寄与している。
次に、反射鏡を作製する方法について説明する。図2はこの反射鏡を作製するのに使用する薄膜形成装置の概略を示している。以下の薄膜形成方法は、蒸発材料9および必要なら成膜条件を変えることにより、1つの薄膜形成装置で連続的にプラスチック基材50上に膜形成を行えるようにしたものである。
まず、プラスチック基材50の表面に密着性向上膜51を形成する場合について説明する。図2に示す薄膜形成装置におけるチャンバ11内の下部には蒸発材料9をボート1に収容保持した蒸発源20が配置されている。この蒸発源20に対向するように、チャンバ11内の上部には、基材50を保持するための基材保持部2が設けられている。密着性向上膜51を形成するための蒸発材料9としては、LaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2,Al23を用いることができる。
基材保持部2は導電性材料からなっていて、高周波電力供給電源(RF)5からの高周波電力が、マッチング装置(MN)4および直流遮蔽フィルタとしてのコンデンサ7を介して印加されるようになっている。なお、コンデンサ7は、可変コンデンサを用いてマッチング回路の一部として機能させてもよい。さらに、基材保持部2には、直流電圧印加電源(DC)6の陰極側が、高周波遮蔽フィルタとしてのコイル8を介して接続されている。高周波電力供給電源5の基材保持部2とは反対側の端子は直流電圧印加電源6の陽極側と接続されていて、これらは接地されている。
ボート1は、例えば、それ自身が電気抵抗の高い材料からなっていて、例えば交流電源からなる加熱電源3からの電力供給を受けて、蒸発材料9を蒸発させるための熱を発生する。ボート1には、さらに、直流電圧印加電源6の陽極側が接続されている。
チャンバ11内の空間は、排気ダクト12および排気バルブ13を介して真空ポンプ14によって排気され、薄膜形成期間中において、所定の真空状態とされる。チャンバ11内に不活性ガス(例えばアルゴンガス等)および反応性ガス(例えば酸素ガス)を供給するために、チャンバ11には、流量制御装置(MFC)24およびガス供給配管25を介して、不活性ガス供給源21および反応性ガス供給源23が接続されている。不活性ガス供給源21からの供給/停止は、弁21aを開閉することによって行われる。反応性ガス供給源23からの供給/停止は、弁23aを開閉することによって行われる。
チャンバ11内の真空度は、真空度計15によって計測され、この真空度計15の出力に基づき、流量制御装置24は、マイクロコンピュータ等からなる制御装置30によって制御されるようになっている。これにより、不活性ガス供給源21および反応性ガス供給源23からのガス供給量は、チャンバ11内の真空度が所定値に保持されるように制御される。密着性向上膜51を得るためには、チャンバ11内の層形成時の真空度は1.0×10-2〜5.0×10-2Pa、好ましくは2.0×10-2〜3.0×10-2Paであるのがよい。このとき、酸素ガス濃度は約1.0×10-2〜3.0×10-2Paの範囲内で調整される。
プラスチック基材50の表面における薄膜の形成速度を計測するために、基材保持部2に関連して膜厚モニタ17が設けられている。この膜厚モニタ17の出力信号は、制御装置30に入力されていて、この制御装置30は、膜厚モニタ17の出力に基づいて加熱電源3の出力を制御するようになっている。こうして、薄膜の形成速度が所望の値となるように、ボート1への通電量が制御され、蒸発材料9の蒸発量が調整される。金属酸化膜である密着性向上膜51を得るためには、当該金属酸化膜の形成速度は5〜20Å/秒、好ましくは13〜18Å/秒であるのがよい。
高周波電力供給電源5は、例えば周波数10〜50MHzの高周波電源でよいが、一般的な13.56MHzに設定すればよく、放電電極としての基材保持部2の単位面積(cm2)当たり出力50〜800mW、好ましくは85〜170mWの高周波電力を基材保持部2に印加する。これに応じた高周波電界がチャンバ11内で形成されることによって、チャンバ11内ではガス供給配管25から供給されるガスおよび蒸発材料9から蒸発した蒸発物からなるプラズマが生成することになる。このプラズマ中のイオン化された粒子のうち、正に帯電したものは、直流電圧印加電源6から基材保持部2に印加された直流バイアスによって、基材50の表面へと引き寄せられる。直流電圧印加電源6からの印加電圧は100〜400V、好ましくは180〜230Vであるのがよい。
一方、プラズマ中の解離した電子は、直流電圧印加電源6の陽極側に接続されたボート1へと引き寄せられることになる。このとき、蒸発源20からは蒸発材料9が継続的に蒸発しているので、蒸発粒子と電子との衝突により、プラズマの足が蒸発源20に下りたような形状の発光体が蒸発源20の近傍に見られる。そして、蒸発源20の近傍に集まった電子は、接地され陽極側に接続されているボート1に吸い込まれ、ボート1上の蒸発材料9に衝突する。これによって、蒸発材料9は、ボート1による加熱と、電子の衝突とによってその蒸発が促進されることになる。すなわち、蒸発材料9への集中的な電子衝突によって低温で蒸発を促進させる効果(デポジションアシスト効果)が得られる。
図2に示されるように、チャンバ11は、直流電圧印加電源6および高周波電力供給電源5のいずれにも接続されておらず、また接地もされていない。すなわち、チャンバ11は、電気的に浮遊状態となっている。このため、基材保持部2とチャンバ11との間での高周波放電が起こることもなく、チャンバ11内のプラズマ中の荷電粒子がチャンバ11の内壁に引き寄せられることもない。従って、プラズマ中の陽イオン化した粒子またはプラスに荷電した粒子は、基材50の表面へと効率的に導かれ、プラズマ中の負の荷電粒子である電子は、ボート1上の蒸発材料9へと集中的に導かれることになる。これにより、良好な薄膜形成を実現できるとともに、電子ビームによる蒸発材料9の蒸発促進を効率的に行える。さらには、チャンバ11の内壁に蒸発材料が付着することを抑制することができる。
チャンバ11内においてプラズマが安定すると、蒸発材料9へのプラズマから電子ビームの照射によって、蒸発材料9はプラズマに吸上げられるように蒸発する。そこで、基材50に付着する蒸発材料9の付着速度を一定に保持するために、膜厚モニタ17の出力に基づき、制御装置30は、加熱電源3の出力を下げる。すなわち、ボート1への通電電流または通電電圧を下げる。これにより、蒸発速度が調節される。
プラズマから供給される電子ビームにより蒸発材料9の蒸発が促進されるので、ボート1の加熱電流値は低く抑えることができるから、比較的低い加熱温度で蒸発材料9の蒸発を継続して維持することができ、プラズマの作用を利用した蒸着による薄膜形成を行える。
この装置における薄膜形成の特徴は、不活性ガスのチャンバ11への供給方法にある。すなわち、薄膜形成の初期段階においては、ガス供給配管25から比較的大きな流量でチャンバ11へガスが供給され、蒸発材料9からの蒸発が活発になると、ガス供給配管25からのガス供給量が減少させられ、これにより、蒸発材料9からの蒸発が活発でない薄膜形成の初期段階においては、ガス供給配管25から供給される不活性ガスのプラズマがチャンバ11内に形成される。蒸発材料9からの蒸発が活発になると、ガス供給配管25からのガス供給量が減少し、蒸発材料9からの蒸発粒子が支配的となった組成のプラズマがチャンバ11内に形成されるに至る。
このようにして、薄膜形成の初期段階に不活性ガスをチャンバ11に導入することにより、チャンバ11内に安定したプラズマを速やかに形成することができる。これによって、プラズマの作用を利用した薄膜形成を初期段階から行うことができるので、良好な密着性の薄膜である密着性向上膜51を基材50の表面に形成することができる。
図3は、薄膜形成のより具体的なプロセスを説明するための図である。この図には、薄膜を基材50の表面に形成する場合に、不活性ガス供給源21から不活性ガスをチャンバ11内に供給しながら薄膜形成を行うプロセスの一例が記載されている。具体的には、図3(a)はガス供給量の時間変化を示し、図3(b)はチャンバ11内の真空度の時間変化を示し、図3(c)はボート1の加熱電流値の時間変化を示している。
薄膜形成処理の開始前の期間T1には、制御装置30は、排気バルブ13を開き、真空ポンプ14によりチャンバ11内の雰囲気が排気されて、チャンバ11内の真空度が例えば約10-3Paに保持される。この状態から、制御装置30は、時刻t10に弁21a,23aを開いて、不活性ガス供給源21および反応性ガス供給源23からのガスの供給を開始させる。制御装置30は、時刻t10に弁21a,23aを開いて、不活性ガス供給源21および反応性ガス供給源23からのガスの供給を開始させる。このガス供給が開始された後には、制御装置30は、真空度計15の出力信号をモニタすることによって、チャンバ11内の真空度を、例えば2×10-2Paに保持するように流量制御装置24を制御する。
これによって、ボート1への通電が開始されて蒸発材料9が加熱される期間T2には、高周波電力供給電源5から印加される高周波電界によって、チャンバ11内でプラズマが生成される。このプラズマ中のイオン化された不活性ガスの原子や分子は、直流電圧印加電源6から基材保持部2に与えられている直流バイアスによって、基材50へと導かれる。この不活性ガスの原子や分子が基材50に衝突することによって、期間T2中に基材50の望ましくない昇温が生じる場合には、基材50の下方にシャッタ18を設けて、基材50に向かう不活性ガスを阻止すればよい。
期間T2には、制御装置30は加熱電源3を制御して、ボート1への通電を開始する。これに伴って、ボート1への加熱電流値が上昇し、期間T2の終期には、例えば150Aに達するようにする。チャンバ11内におけるプラズマが安定する時刻t11において、制御装置30の制御下にある駆動装置(図示せず)によってシャッタ18が開かれ、これにより、薄膜の形成が開始される。蒸発材料9の蒸発により、蒸発粒子がプラズマ中へと導かれることになるから、一定の流量でガス供給配管25からチャンバ11内にガスを供給すれば、チャンバ11内の真空度が下がる。
ところが、制御装置30は、チャンバ11内の真空度が一定値(例えば2×10-2Pa)に保持されるように流量制御装置24を制御して、ガス供給配管25を介するガス供給量を調整する。その結果、蒸発材料9からの蒸発量の増大に伴って、参照符号Aで示すように、チャンバ11への不活性ガス導入量が減少していく。従って、薄膜形成が行われている期間T3の初期においては、プラズマの組成は、不活性ガスに支配されているが、このプラズマの組成は、速やかに蒸発材料9の蒸発物によって支配された組成へと変化していく。密着性向上膜51を得るためには、蒸発材料9からの蒸発量の増大に伴って、参照符号Aで示すように、チャンバ11への不活性ガス導入量が減少していくため、参照符号Cで示すような時間変化を示すように制御される。また、蒸発材料9からの蒸発量の増大に伴って、チャンバ11への酸素ガス導入量は増加することになる。
一方、プラズマからの電子の供給によって、蒸発材料9からの蒸発が促進されるので、膜厚モニタ17の出力に基づくフィードバック制御によって、加熱電源3からボート1に供給される電流が参照符号Bで示すように減少することになる。例えば約2〜3秒の期間を経て、電流値は150Aから80Aへと低下する。このため、蒸発材料9は、通常の蒸着やイオンプレーティングにおけるよりも低温状態でその蒸発が進行することになるから、蒸発源20からの輻射熱によって基材50が過度に昇温されることがない。
以上のように、この実施形態によれば、チャンバ11に不活性ガスを導入した状態で薄膜形成を開始することにより、薄膜形成の初期段階からチャンバ11内に良好なプラズマを生成させることができる。これにより、蒸発材料は初期段階からプラズマの作用を受けながら基材50に効率的に導かれる。その結果、密着性の良好なLaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2およびAl23から選ばれる少なくとも1種からなる密着性向上膜51を効率よく形成することができる。
密着性向上膜51の形成後、蒸発源20のボート1に蒸発材料9として銀材料を収容保持させ、密着性向上膜51の形成と同様にして、基材50上の密着性向上膜51の表面に銀層を形成させ、反射膜52を得る。このとき、酸素ガス等の反応性ガスを供給するための反応性ガス供給源23は使用されない。また、銀の反射膜52を得る場合、チャンバ11内の真空度は1.0×10-2〜5.0×10-2Pa、好ましくは2.5×10-2〜3.5×10-2Paであるのがよく、反射膜52の形成速度は10〜20Å/秒、好ましくは15〜18Å/秒であるのがよい。
銀の反射膜52を形成した後、蒸発材料9としてMgF2またはSiO2をボート1に収容保持させ、密着性向上膜51の形成と同様にして、反射膜52の表面にMgF2またはSiO2からなる第一の透明誘電体層53を形成する。
ついで、蒸発材料9としてLaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2,Al23を使用して、密着性向上膜51の形成と同様にして、第一透明誘電体層銀層53の表面にLaTiO3,La2Ti38,SiO2,TiO2およびAl23から選ばれる少なくとも1種からなる第二透明誘電体層54を形成する。
ボート1への各蒸発材料9の供給には、例えばコート材料供給器(図示せず)からボート1に密着性向上膜51、反射膜52、第一および第二の透明誘電体層53,54の各材料をこの順に供給し、それぞれ所定の成膜条件にて順次蒸発を行わせ、基板50の表面に連続的に膜形成を行わせてもよい。
これらの薄膜形成の間、基材50は60℃以下に保持されている。従って、プラスチック基材50の表面に前記した各膜(層)51〜54を形成するのに好適である。例えばポリカーボネートの耐熱温度は120〜130℃、ポリメタクリル酸メチルの耐熱温度は80℃程度であるので、これらのプラスチック基材50に対して各膜(層)51〜54を順次積層形成することができる。
このように、この薄膜形成方法によれば、チャンバ11内へプラズマを形成するためのガスが供給されるので、薄膜形成初期においてチャンバ11内に速やかにプラズマを生成することができる。これによって、薄膜形成の初期段階から、プラズマの作用を利用した各膜(層)51〜54の作製が可能となり、密着性および耐久性に優れた反射鏡を得ることができる。
また、チャンバ11内へのガス供給量は、薄膜形成初期に多く、その後は少なくするため、チャンバ11内に供給された不活性ガスの原子や分子が基材50に衝突することによる基材50の温度上昇を抑制することができる。
さらに、直流印加電圧電源6から印加される直流電界により、プラズマ中のプラスに帯電した粒子または陽イオン化した粒子は、基材50方向へと加速されて飛来し、基材50と衝突し、基材50表面に堆積する。これによって、被膜の形成がなされることになる。一方、負の電荷をもつ電子は、陽極側となるボート1へと加速されて、ボート1上の蒸発材料9に集中的に衝突して、蒸発材料9に蒸発のためのエネルギーを与える。こうして、熱エネルギーに代わる高いエネルギーを得た蒸発材料9は、低温でも容易に蒸発して、チャンバ11内のプラズマ形成領域へと蒸発していく。すなわち、チャンバ11内に形成されたプラズマ中の電子が蒸発材料9へと導かれ、これによって材料の蒸発を促進する、いわゆるデポジションアシスト効果が得られるため、抵抗加熱等による蒸発材料9の加熱エネルギーを格段に低減することができる。その結果、プラスチック基材50の温度上昇を抑制することができるので、より低温状態での薄膜形成が可能になる。
蒸発材料9からの蒸発量は、加熱手段に与えるエネルギーおよび直流電圧印加電源6の出力を前記範囲内に制御することによって調整される。また、蒸発材料9の粒子の基材50への衝突エネルギーは、直流電圧印加電源6の出力を前記範囲内に制御することによって調整される。これにより、蒸着物質には、基材50表面への単なる堆積でなく、基材50表面に形成された蒸着物質層の原子または分子配列を安定な状態に再配列させるのに充分なエネルギーを与えることができる。さらに、蒸着物質の粒子に、基材50内に浸透して順応させるのに充分なエネルギーも与えることができる。
このため、本発明では、平坦で膜内欠陥が殆どなく、緻密で密着性に優れた膜51〜54が得られ、反射膜52の場合は殆ど純粋な銀の単結晶層に近い銀膜となる。
本発明では、基材の形状は特に制限されない。従って、例えば図4に示すような複雑な形状のプラスチック基材55を用いて、その表面に前記した膜51〜54の層構成からなる銀の反射膜56を直接形成することができる。また、本発明は、非球面ミラーなどを作製するのに好適である。
本発明における銀を含む反射膜は、結晶の配向性が良好(一方向に揃っている)な単結晶質のものとなっているので、以下のような利点がある。
(1)波長が420〜700nmでの広い波長帯域(略可視光領域)での光の反射率が96%以上と高い。
(2)光の入射角が10〜50°の範囲において反射率の変化量が0.5%以下と小さい。
(3)プラスチック基材等との密着性に優れる。
(4)密着性に優れることから、腐蝕が少なく耐久性が飛躍的に改善される。
このようにして、表面粗さが非常に小さく実質的に平坦で、しかも結晶の配向性がきわめて良好な単結晶質である銀を含む反射膜を前記したプラスチック基材50の表面に蒸着される。このとき、反射膜の表面は、プラスチック基材50の表面状態を殆どそのまま反映され再現したものになるが、本発明におけるプラスチック基材50は、PV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面であるので、反射膜の有する高い反射率を損なうことがなく、反射率が96%以上となる。
よって、本発明の光反射鏡は、その優れた特性を利用して、下記に例示するような様々な用途に好適に使用することができる。
A.液晶プロジェクタ装置用の反射鏡。
従来のアルミニウム反射層を用いた反射鏡のように、青色光、緑色光、赤色光(3原色光)にそれぞれ対応した3種類のものを作製する必要がなく、1種類の反射鏡で各色に対して高い反射率が得られる。
B.DLPプロジェクタ用のライトトンネル(角筒状の基体の内面に銀膜および透明誘電体層を形成した光学部品)。
C.天体望遠鏡、双眼鏡などの反射鏡。
D.各種光学装置のアルミニウム反射層を用いた反射鏡の代替品。
E.基材がプラスチックであるので、成形により表面に所定の凹凸が形成された異形プラスチック基材に反射膜を被覆した高反射異形ミラー等。
次に、本発明の光反射鏡をプロジェクターに適用した場合を例に挙げて説明する。本発明にかかるプロジェクターは、液晶表示素子等の空間変調素子から出射した変調光を投写するための投射レンズと、本発明にかかる光反射鏡と、この反射鏡で反射した光を受ける透過型スクリーンとを備える。このような背面型プロジェクターは、図8に示したものや、図9に示したものが挙げられる。
すなわち、図8に示す背面型プロジェクターは、筺体の内部に背面ミラー21が配置され、光学エンジン22から投写された画像を背面ミラー21で反射してスクリーン23に画像を表示する。このような垂直投写方式では、画角が80°で投写距離L1は900mm以上となるため、プロジェクターの厚みL2も500mm以上になる。
これに対して、近時提案されている薄型化された背面型プロジェクターでは、図9に示すように、光学エンジン22から投写された画像を非球面ミラー24を用いて斜め投写し、これを背面ミラー25で反射してスクリーン23に画像を表示する。このため、160°という超広画角が可能となり、投写距離L1は200mmとなり、プロジェクターの厚みL2も200mm以下に薄型化することが可能になる。また、プロジェクターの装置構成によっては、さらに複数の平面ミラーや非球面ミラーを使用して、画像を順次反射させながら投写する場合もある。このためには、反射率の高いミラーが要望されるので、本発明の光反射鏡は当該プロジェクターの非球面ミラー24や背面ミラー25として好適に使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記に示す各成分を表1に示す割合で混合し、ニーダーにて常温で混練して強化層用および光沢層用の各熱硬化性樹脂組成物を得た。
不飽和ポリエステル樹脂:日本ユピカ(株)製の商品名「ユピカ7123」
熱可塑性樹脂:日本ユピカ(株)製の商品名「A−25」
無機充填材:日東粉化工業(株)製の商品名「NS−200」
強化繊維:日本硝子繊維(株)製の商品名「RES03−BM5」
硬化剤(A):日本油脂(株)製の商品名「パーヘキサHC」
硬化剤(B):日本油脂(株)製の商品名「パーブチルZ」
離型剤:旭電化工業(株)製の商品名「エフコ・ケムZNS−P」

まず、強化層用の熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形用金型に投入し、50tトランスファー成形機(王子機械(株)製)にて成形を行い、厚さ2mmの強化層を成形した。成形条件は、以下の通りである。
成形温度:165℃
形締圧力:150kgf/cm2
注入圧力:50kgf/cm2
硬化時間:3分
ついで、同じ金型内に光沢層用の熱硬化性樹脂組成物を投入し、前記強化層の上面に厚さ1mmの光沢層を成形した。成形条件は、以下の通りである。なお、この実施例ではガス抜き構造として金型にガスベントを用いて脱気する構造を採用した。
成形温度:165℃
形締圧力:150kgf/cm2
注入圧力:50kgf/cm2
硬化時間:3分
得られたプラスチック強化層とプラスチック光沢層との線膨張係数は、それぞれ2.0×10-5/℃および0.8×10-5/℃であり、その差は1.2×10-5/℃であった。上記数値から強化層と光沢層とは膨張率の違いによって剥離することなく一体化されることがわかる。
脱型したプラスチック基材は、表面に加工を施すことなく、下記(i)〜(iv)の順に各膜(層層を直接積層し、光反射鏡を作製した。
(i) 密着性向上膜51:Y23(厚さ40nm)
(ii) 反射膜52:銀Ag(厚さ100nm)
(iii) 第一透明誘電体層53:フッ化マグネシウムMgF2(厚さ73nm)
(iv) 第二透明誘電体層54:チタン酸ランタンLa2Ti38(厚さ60nm)
各膜(層)の作製条件は以下の通りである。
(I) 密着性向上膜51
蒸発材料9:Y23(純度99%)
チャンバ11内への導入ガス:Arガスおよび酸素ガス
高周波電力供給電源5からの基材保持部2への印加電力:周波数13.56MHzで85mW/cm2(基材保持部2の単位面積当たりの印加電力)
直流印加電源6:陰極側を基材保持部2に接続し、陽極側をボート1に接続
直流印加電源6から基材保持部2への印加電圧:230V
チャンバ11:接地されていない電気的に浮遊状態
23層の形成速度:15Å/秒以下
(A)Y23層形成の初期段階(図3の期間T2)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:350A(T2終期)
(B)Y23層の形成段階(図3の期間T3)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:230A(T3終期)
かくして厚さ40nmのY23層を基材50表面に作製することができた。この薄膜作製の全期間を通じて基板50の表面温度は40℃未満に保持されていた。
加熱電源3からボート1への通電電流:230A(T3終期)
かくして厚さ40nmのLaTiO3層を基材50表面に作製することができた。この薄膜作製の全期間を通じて基板50の表面温度は40℃未満に保持されていた。
(II) 反射膜52
蒸発材料9:銀(純度99.9%)
チャンバ11内への導入ガス:アルゴンガス
高周波電力供給電源5からの基材保持部2への印加電力:周波数13.56MHzで85mW/cm2(基材保持部2の単位面積当たりの印加電力)
直流印加電源6:陰極側を基材保持部2に接続し、陽極側をボート1に接続
直流印加電源6から基材保持部2への印加電圧:230V
チャンバ11:接地されていない電気的に浮遊状態
反射膜の形成速度:5〜18Å/秒
(a)反射膜形成の初期段階(図3の期間T2)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:280A(T2終期)
(b)反射膜の形成段階(図3の期間T3)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:約210A(T3終期)
かくして厚さ110nmの反射膜をY23層の表面に作製することができた。この反射膜作製の全期間を通じて基板50の表面温度は、40℃で反応するサーモシールが僅かに反応したことから、40〜45℃程度に保持されていた。
(III) 第一透明誘電体層53
蒸発材料9:フッ化マグネシウムMgF2(純度99.9%)
チャンバ11内への導入ガス:Arガス
高周波電力供給電源5からの基材保持部2への印加電力:周波数13.56MHzで85mW/cm2(基材保持部2の単位面積当たりの印加電力)
直流印加電源6:陰極側を基材保持部2に接続し、陽極側をボート1に接続
直流印加電源6から基材保持部2への印加電圧:230V
チャンバ11:接地されていない電気的に浮遊状態
MgF2層の形成速度:15Å/秒以下
(A)MgF2層形成の初期段階(図3の期間T2)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:350A(T2終期)
(B)MgF2層の形成段階(図3の期間T3)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:230A(T3終期)
かくして厚さ54nmのMgF2層を反射膜の表面に作製することができた。このMgF2層作製の全期間を通じて基板50の表面温度は、40℃以上で反応するサーモシールが反応しなかったことから40℃未満に保持されていた。
引き続き、
蒸発材料9:酸化イットリウムY23(純度99%)
チャンバ11内への導入ガス:Arガスおよび酸素ガス
高周波電力供給電源5からの基材保持部2への印加電力:周波数13.56MHzで85mW/cm2(基材保持部2の単位面積当たりの印加電力)
直流印加電源6:陰極側を基材保持部2に接続し、陽極側をボート1に接続
直流印加電源6から基材保持部2への印加電圧:230V
チャンバ11:接地されていない電気的に浮遊状態
23層の形成速度:15Å/秒以下
の条件で
(A)Y23層形成の初期段階(図3の期間T2)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:350A(T2終期)
(B)Y23層の形成段階(図3の期間T3)
チャンバ11内の真空度:2×10-2Paで一定
加熱電源3からボート1への通電電流:230A(T3終期)
かくして厚さ20nmのLaTiO3層を基材50表面に作製することができた。この薄膜作製の全期間を通じて基板50の表面温度は40℃未満に保持されていた。
(IV) 第二透明誘電体層54
前記2層に代えてLa2Ti38を使用した他は前記(I)と同様にして、Y23層の表面に厚さ50nmのLa2Ti38層を作製した。このLa2Ti38層作製の全期間を通じて基板50の表面温度は、40℃以上で反応するサーモシールが反応しなかったことから40℃未満に保持されていた。
実施例1で得た光反射鏡について、以下の評価試験を行った。
1.強度試験
JIS K6911(1995)(曲げ強度試験)により、基材を構成する光沢層、強化層およびこれらの複合した基材の曲げ強度を測定した。その結果を表2に示す。
2.表面状態
反射膜表面の表面状態およびPV値を非接触三次元輪郭測定機(三鷹光機(株)製の商品名「NH−3SP」)により測定した。その結果を図5に示す。図5は対物レンズの倍率100倍で測定された反射膜表面の三次元形状を示している。図5から、反射膜の表面は、鋭角な突起のない、なめらかな面であることがわかる。また、同図から測定される高さ(厚み)方向の最大値は0.21μm、最小値は−0.20μmであるので、PV値は約0.4μmとなる。
3.表面のSEM観察
第一透明誘電体層53および第二透明誘電体層54を形成していない状態で、SEM(走査電子顕微鏡)にて5000倍の表面(斜め方向から観察した表面の写真)および断面を観察した。それらのSEM写真を図6および図7にそれぞれ示す。
4.X線回折による(111)ピーク強度
X線回折装置(理学電気社製のRINT1400V型)を用い、X線出力50kV‐200mA、測定範囲2θ=10°〜100°、発光スリット−散乱スリット−受光スリット:1°−1°−0.3mmにて測定した。その結果、実施例の反射膜52は、(111)ピーク強度がその他のピーク強度の合計の約23倍であった。
5.反射率
(1)可視光領域での反射率測定
可視光領域(波長:約350〜750nm)での反射率を光度計((株)日立製作所製の分光光度計U−4000)にて測定した。その結果、反射率は98%であった。
なお、密着性向上膜51としてCr、CrO、Cr23、Y23、La2Ti38,SiO2,TiO2およびAl23のいずれかを用いた場合、第一透明誘電体層53としてSiO2、23を用いた場合、および第二透明誘電体層54としてLaTiO3,SiO2,TiO2およびAl23のいずれかを用いた場合、いずれも上記実施例と同様な特性を有する反射鏡が得られた。
[比較例]
基材として前記光沢層と同組成の成形材料のみを用いて成形した基材(以下、光沢基材という)と、前記強化層と同組成の成形材料のみを用いて成形した基材(以下、強化基材という)とを用いた他は、実施例と同様にして光反射鏡を作製した。この光反射鏡について、実施例と同様にして反射率およびPV値の評価試験を行なった。その結果を表3に示す。
本発明の一実施形態にかかる光反射鏡を示す断面図である。 本発明の光反射鏡を製造するための薄膜形成装置の一例を示す概念図である。 薄膜形成のプロセスを示す説明図である。 本発明の光反射鏡の適用例を示す斜視図である。 実施例1で得た反射膜の表面状態を三次元表示したグラフである。 実施例1で得た反射膜の表面状態を示すSEM写真である。 実施例1で得た反射膜を形成した状態での反射鏡の断面を示すSEM写真である。 背面プロジェクターを示す説明図である。 薄型背面プロジェクターを示す説明図である。
符号の説明
1:ボート、3:加熱電源、4:マッチング装置、5:高周波電力供給電源、6:直流電圧印加電源、9:蒸発材料、11:チャンバ、20:蒸発源、50:基材、50a:プラスチック強化層、50b:プラスチック光沢層、51:密着性向上膜、52:反射膜、53:第一透明誘電体層、54:第二透明誘電体層

Claims (26)

  1. 強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層と、このプラスチック強化層の表面に形成され強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層とを含む基材と、
    この基材の前記プラスチック光沢層表面に被着させた銀を含む反射膜とを備えたことを特徴とする光反射鏡。
  2. 前記プラスチック光沢層は、前記プラスチック強化層よりも厚さが薄いことを特徴とする請求項1に記載の光反射鏡。
  3. 前記プラスチック強化層の強度が90MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光反射鏡。
  4. 前記プラスチック光沢層の表面は、PV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光反射鏡。
  5. 前記プラスチック強化層とプラスチック光沢層との線膨張係数の差が3×10-5/℃以内である請求項1〜4のいずれかに記載の光反射鏡。
  6. 前記プラスチック強化層は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤50〜78質量%、強化繊維8〜20質量%および硬化剤0.1〜3質量%からなる強化層形成用の熱硬化性樹脂組成物を成形したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光反射鏡。
  7. 前記プラスチック光沢層は、不飽和ポリエステル樹脂7〜19質量%、熱可塑性樹脂6〜19質量%、無機充填剤70〜84質量%、強化繊維5質量%以下および硬化剤0.1〜3質量%からなる光沢層形成用の熱硬化性樹脂組成物を成形したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光反射鏡。
  8. 前記無機充填剤の平均粒径が0.1〜60μmである請求項6または7に記載の光反射鏡。
  9. 前記強化繊維は、繊維長が1〜3mmであり、径が5〜100μmである請求項6または7のいずれかに記載の光反射鏡。
  10. 前記銀を含む反射膜が、X線回折による(111)ピーク強度がその他のピーク強度の合計の20倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の光反射鏡。
  11. 前記銀を含む反射膜の表面は、PV値が0.5μm以下で、かつ鋭角な突起のない、なめらかな面であることを特徴とする請求項1または10に記載の光反射鏡。
  12. 前記銀を含む反射膜の厚みが100〜200nmであることを特徴とする請求項1、10または11に記載の光反射鏡。
  13. 前記反射膜と基材との間に密着性向上膜が介在していることを特徴とする請求項1に記載の光反射鏡。
  14. 前記密着性向上膜が、Cr、CrO、Cr23、Y23、LaTiO3、La2Ti38、SiO2、TiO2およびAl23からなる群より選ばれる少なくとも1種からなり、厚さが10〜200nmである誘電体層である請求項13記載の光反射鏡。
  15. 前記反射膜の表面に反射増加膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光反射鏡。
  16. 前記反射増加膜が、Y23、MgF2、LaTiO3、La2Ti38、SiO2、TiO2およびAl23からなる群より選ばれる化合物から形成される2層以上の透明誘電体層であることを特徴とする請求項15に記載の光反射鏡。
  17. 前記反射増加膜が、反射膜表面に少なくとも高屈折率の透明誘電体層と、低屈折率の透明誘電体層とを積層して形成されていることを特徴とする請求項15または16に記載の光反射鏡。
  18. 強化繊維を8〜20質量%含有するプラスチック強化層および強化繊維を5質量%以下含有するプラスチック光沢層を積層成形して基材を得る工程と、得られた基材のうちプラスチック光沢層の表面に銀を含む反射膜を形成する工程とを含む光反射鏡の製造方法。
  19. 金型内に前記強化層用および光沢層用の熱硬化性樹脂組成物のいずれかを一方を注入して前記プラスチック強化層またはプラスチック光沢層を成形後、他方の熱硬化性樹脂組成物を注入してプラスチック光沢層またはプラスチック強化層を成形する請求項18に記載の光反射鏡の製造方法。
  20. 一方の熱硬化性樹脂組成物の成形後、前記金型内を脱気して、または脱気しながら、前記他方の熱硬化性樹脂組成物の成形が行われる請求項19記載の光反射鏡の製造方法。
  21. 前記強化層および光沢層形成用の各熱硬化性樹脂組成物が、さらに離型剤を0.1〜3質量%含有していることを特徴とする請求項18〜20のいずれかに記載の光反射鏡の製造方法。
  22. 前記基材の表面に、銀を含む反射膜を形成するに先立って、前記基材の表面に密着性向上膜を形成することを特徴とする請求項18に記載の反射鏡の製造方法。
  23. 前記基材の表面に銀を含む反射膜を形成した後、反射膜の表面に反射増加膜を形成することを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の反射鏡の製造方法。
  24. 前記反射増加膜が、2層以上の透明誘電体層からなる請求項23に記載の反射鏡の製造方法。
  25. 前記反射増加膜が、反射膜表面に少なくとも高屈折率の透明誘電体層と、低屈折率の透明誘電体層とを積層して形成されていることを特徴とする請求項23または24に記載の反射鏡の製造方法。
  26. 請求項1〜17のいずれかに記載の光反射鏡を具備したことを特徴とするプロジェクター。

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