JP2006168386A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】 スタビライザ装置等のロール抑制装置を備えた車両用サスペンションシステムの実用性の向上を図る。
【解決手段】 ロール抑制装置のアクチュエータの目標回転角θ*を決定する際、常に、実際に車体に生じている横加速度である実横Gとステアリングホイールの操作角δ(S14)と車速vとに依拠する横加速度である推定横G(S13)との和(S15)に基づいて決定する(S16)。実横Gに基づく制御における不都合を解消し、効果的に車体のロールを抑制することが可能となる。また、ゲイン等を利用した複雑な手法による決定と異なり、簡便な手法によって目標回転角θ*を決定できることから、制御装置の構成の単純化が図れることになる。
【選択図】 図6
【解決手段】 ロール抑制装置のアクチュエータの目標回転角θ*を決定する際、常に、実際に車体に生じている横加速度である実横Gとステアリングホイールの操作角δ(S14)と車速vとに依拠する横加速度である推定横G(S13)との和(S15)に基づいて決定する(S16)。実横Gに基づく制御における不都合を解消し、効果的に車体のロールを抑制することが可能となる。また、ゲイン等を利用した複雑な手法による決定と異なり、簡便な手法によって目標回転角θ*を決定できることから、制御装置の構成の単純化が図れることになる。
【選択図】 図6
Description
本発明は、車両用サスペンションシステムに関し、詳しくは、車体のロールを抑制するためのロール抑制装置を備えたサスペンションシステムにおけるそのロール抑制装置の制御に関する。
ロール抑制装置を備えたサスペンションシステムの制御に関して、下記特許文献に記載の技術が存在する。それらの技術では、いずれも、車体に発生する実際の横加速度である実横加速度(「実旋回状態量」の一種であり、以下、「実横G」と略す場合がある)と、車両走行速度および操舵量に基づいて推定された推定横加速度(「推定旋回状態量」の一種であり、以下、「推定横G」と略す場合がある)とを利用してロール制御装置の制御値を決定している。
特開平5−50819号公報
特開平5−16633号公報
特開平4−166408号公報
上記特許文献に記載の技術は、車両旋回初期における制御遅れ,ステアリング操作部材の切り戻し時の揺れ戻し,旋回時の車両の過大なスリップ等に鑑み、実横Gに基づくのみならず、推定横Gにも基づいて、ロール抑制装置の制御値を決定している。推定横Gに基づく制御は、ステアリング操作に対する応答性が良好であるという利点があるが、逆に、低μ路における旋回,ステアリング操作部材の早い切り返しで必要以上の制御を行ってしまう。そこで、上記特許文献に記載の技術では、実横G,推定横Gのそれぞれのゲインを車両走行速度,操舵速度等に基づいて変更している。ところが、それらゲインの変更を伴った制御でも、実際の車両走行における種々の局面の車両の挙動をシミュレートすることは困難であり、また、可及的に完全に近い状態でシミュレートすべく、多くのパラメータを用いて複雑な演算処理を行う場合には、制御値決定の処理が煩雑なものとなるばかりでなく、かえって制御の遅れを生じる結果となりかねない。したがって、ゲインを変更するという手法を採用するところの、上記特許文献に記載の技術を始めとする従来の技術は、実用性という観点において、改善の余地を残すものとなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、ロール抑制装置を備えた車両用サスペンションシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンションシステムは、ロール抑制装置の制御にあたって、それの制御目標値を実旋回状態量と推定旋回状態量との和に基づいて決定することを特徴とする。
本発明の車両用サスペンションシステムでは、ロール制御装置の制御目標値が実旋回状態量のみならず推定旋回状態量にも依拠して制御目標値が決定されるため、例えば、車両旋回初期における制御遅れ等、実旋回状態量に基づく制御のデメリットを解消して効果的なロール抑制が可能となる。また、ゲインの変更という手法を用いず、単なる実旋回状態量と推定旋回状態量との和に基づいて決定されるため、その決定のための処理は簡便なものとなる。そのような利点から、本発明によれば、実用性の高いサスペンションシステムが実現する。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項ないし(3)項の各々が、請求項1ないし請求項3の各々に相当する。
(1)アクチュエータを有してそのアクチュエータの作動によって車体のロールを抑制するロール抑制装置と、
(a)実際の車両の旋回状態を指標する実旋回状態量と、操舵量と車両走行速度とに依拠して推定される車両の旋回状態を指標する推定旋回状態量とに基づいて、前記アクチュエータの制御目標値を決定する制御目標値決定部と、(b)その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて前記アクチュエータを制御作動させる作動制御部とを有する制御装置と
を備えたサスペンションシステムであって、
前記制御目標値決定部が、実旋回状態量と推定旋回状態量との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものであることを特徴とする車両用サスペンションシステム。
(a)実際の車両の旋回状態を指標する実旋回状態量と、操舵量と車両走行速度とに依拠して推定される車両の旋回状態を指標する推定旋回状態量とに基づいて、前記アクチュエータの制御目標値を決定する制御目標値決定部と、(b)その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて前記アクチュエータを制御作動させる作動制御部とを有する制御装置と
を備えたサスペンションシステムであって、
前記制御目標値決定部が、実旋回状態量と推定旋回状態量との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものであることを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様では、ロール抑制装置の制御目標値を、実旋回状態量と推定旋回状態量との両者に基づいて決定しているため、例えば、車両旋回初期における制御遅れ,ステアリング操作部材の切り戻し時の揺れ戻し,旋回時の車両の過大なスリップ等の実旋回状態量に基づく制御における不都合を解消し、効果的に車体のロールを抑制することが可能となる。また、実旋回状態量と推定旋回状態量との単なる和に基づいて制御目標値が決定されるため、その決定のための処理が簡便なものとなり、制御装置の構成の単純化が図れることとなる。さらに、本項に記載の態様によれば、実旋回状態量を検出するためのセンサと推定旋回状態量を検出するためのセンサとのいずれか一方が失陥したような場合であっても、制御目標値の基礎となる旋回状態量が概ね半分となるだけであり、ロール抑制装置が全く制御されないといった事態が回避されることになる。以上のような利点から、本項に記載のサスペンションシステムは、実用性の高いサスペンションシステムとなる。
本項の態様において、サスペンションシステムが備える「ロール抑制装置」は、その構成が特に限定されるものではなく、すでに公知の構成のロール抑制装置を広く採用することが可能である。詳しく言えば、アクチュエータの作動によって車体のロール量(ロール角),ロール速度等を抑制することが可能な装置であればよいのである。具体的には例えば、車輪保持部材と車体に設けられたマウント部とに連結されて車輪と車体との相対移動に伴って伸縮する懸架シリンダ(例えば、ショックアブソーバのようなもの)を有し、その懸架シリンダの発生させる減衰力をアクチュエータによって変更することでロール速度を制御するような構成のロール抑制装置であってもよく、また、アクチュエータによって積極的に懸架シリンダを伸縮させることにより、車輪と車体間の距離を能動的に変化させてロール量を制御するような構成のロール抑制装置であってもよい。さらに、車輪車体間距離を能動的に変化させる構成の装置として、後に説明するように、スタビライザバーを有し、アクチュエータによってそのスタビライザバーの弾性力を変化させるような構成のロール抑制装置を採用することも可能である。また、「アクチュエータ」は、空気圧,油圧等の液圧によって作動するものであってもよく、電磁式モータ、ソレノイド等の電磁力によって作動するものであってもよい。
本項の態様における「制御装置」は、コンピュータを主体とするものを採用することができ、「制御目標値決定部」によって決定された制御目標値に基づいてアクチュエータの作動を制御する「作動制御部」は、フィードバック制御,フィードフォワード制御を始めとした任意の形態の制御を行うものとすることが可能である。また、本項の態様における「旋回状態量」は、実質的に旋回状態を表す量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、上述した横Gを始めとして、車両のヨーレート、車両のスリップ角、車両に作用するコーナリングフォース,横力等、種々のものを採用することが可能である。また、推定旋回状態量の基礎となる「操舵量」は、例えば、ステアリングホイール等のステアリング操作部材の操作量であってもよく、また、転舵装置が備える転舵ロッドの移動量等である転舵量であってもよい。推定旋回状態量は、例えば、車両走行速度と操舵量とをパラメータとするマップを作成し、そのマップを参照することによって推定することもでき、また、車両走行速度と操舵量とをパラメータとする計算式を設定し、その計算式に従って演算することによって推定することも可能である。
(2)制御目標値決定部が、実旋回状態量としての実際に車両に発生する実横加速度と、推定旋回状態量としての推定された横加速度である推定横加速度との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、旋回状態量として、横Gを採用する態様である。実横Gは、センサによって容易に検出でき、また、推定横Gは、操舵量と車両走行速度とに基づいて容易に算出等することができるという理由から、横Gは、旋回状態量として好適である。
(3)前記ロール抑制装置が、
両端部の各々が左右の車輪保持部材の各々に連結されるスタビライザバーを備え、前記アクチュエータがそのスタビライザバーの弾性力を変化させるように構成されたスタビライザ装置を含んで構成された(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
両端部の各々が左右の車輪保持部材の各々に連結されるスタビライザバーを備え、前記アクチュエータがそのスタビライザバーの弾性力を変化させるように構成されたスタビライザ装置を含んで構成された(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様におけるスタビライザ装置は、いわゆるアクティブスタビライザとよぶことのできる装置であり、バウンシング,ピッチング等の制御とは別に車体のロール制御を行い得るため、本項の態様のサスペンションシステムは効果的なロール抑制制御が可能となる。本項の態様において採用するスタビライザ装置は、その構成が特に限定されるものではない。例えば、スタビライザバーの一方の端部とサスペンションロアアーム等の車輪保持部材との間に、アクチュエータとしてのシリンダ装置を介在させ、そのシリンダ装置を伸縮させることによってスタビライザバーの弾性力を変化させるような構成のものを採用することが可能である。また、スタビライザバーを中央部で分割して、1対のスタビライザバーとし、アクチュエータによってそれら1対のスタビライザバーを相対回転させることによってスタビライザバー全体の弾性力を変化させるような構成のものを採用することも可能である。
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
図1に、実施例の車両用サスペンションシステム10を概念的に示す。本車両用サスペンションシステム10は、車両の前輪側、後輪側の各々に配設され、それぞれがロール抑制装置として機能する2つのスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部材(図2参照)に連結されたスタビライザバー20を備えている。そのスタビライザバー20は、中央部で分割されており、一対のスタビライザバー、すなわち右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とを含む構成のものとされている。それら一対のスタビライザバー22,24がアクチュエータ30を介して相対回転可能に接続されており、大まかに言えば、スタビライザ装置14は、アクチュエータ30が、左右のスタビライザバー22,24を相対回転させることによって(図の矢印を参照のこと)、スタビライザバー20全体の弾性力を変化させて車体のロール抑制を行う。
図2には、一方のスタビライザ装置14の車幅方向の中央から一方側の車輪16にかけての部分が概略的に示されている。本車両用サスペンションシステム10は、それぞれが4つの車輪16の各々に対して設けられた4つの独立懸架式のサスペンション装置38を含んで構成されている。このサスペンション装置38は、一般によく知られたダブルウィシュボーン式のものであり、一端部が車体に回動可能に連結され、他端部が車輪16に連結された車輪保持部材としてのアッパアーム42およびロアアーム44を備えている。それらアッパアーム42およびロアアーム44は、車輪16と車体との接近離間(相対的な上下動の意味)に伴い、上記一端部(車体側)を中心に回動させられ、上記他端部(車輪側)が車体に対して上下させられる。また、サスペンション装置38は、ショックアブソーバ46と、サスペンションスプリング48(本装置では「エアばね」である)とを備えている。それらショックアブソーバ46およびスプリング48は、それぞれが、車体側の部材と車輪側の部材とに連結されている。このような構造から、サスペンション装置38は、車輪16と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させる機能を果たすものとなっている。
スタビライザ装置14は、先に説明した一対のスタビライザバーである右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とを備える(図2には、右スタビライザバー22および左スタビライザバー24の一方が示されている)。各スタビライザバー22,24は、それぞれ、略車幅方向に延びるトーションバー部60と、トーションバー部60と一体化されてそれと交差して概ね車両前方あるいは後方に延びるアーム部62とに区分することができる。各スタビライザバー22,24のトーションバー部60は、アーム部62に近い箇所において、車体の一部であるスタビライザ装置配設部64に固定的に設けられた支持部材66によって回転可能に支持され、互いに同軸に配置されている。それらトーションバー部60の端部(車幅方向における中央側の端部)の間には、上述のアクチュエータ30が配設されており、後に詳しく説明するが、各トーションバー部60の端部は、それぞれ、そのアクチュエータ30に接続されている。一方、アーム部62の端部(トーションバー部60側とは反対側の端部)は、上述のロアアーム44に設けられたスタビライザバー連結部68に、それと相対回転可能に連結されている。
アクチュエータ30は、図3に模式的に示すように、電動モータ70と、電動モータ70の回転を減速する減速機構72とを含んで構成されている。これら電動モータ70および減速機構72は、アクチュエータ30のハウジング74内に設けられている。ハウジング74は、ハウジング保持部材76によって、回転可能かつ軸方向(略車幅方向)に移動不能にスタビライザ装置配設部64に保持されている。図2から解るように、ハウジング74の両端部の各々には、2つの出力軸80,82が各々延び出すように配設されている。それら出力軸80,82のハウジング74から延び出した側の端部が、それぞれ、各スタビライザバー22,24の端部と、セレーション嵌合によって相対回転不能に接続されている。また、図3から解るように、一方の出力軸80は、ハウジング74の端部に固定されており、また、他方の出力軸82は、ハウジング74内に延び入る状態で配設されるとともに、ハウジング74に対して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。その出力軸82のハウジング74内に存在する一方の端部が、後に詳しく説明するように、減速装置72に接続されている。
電動モータ70は、ハウジング74の内周壁に沿って一円周上に固定して配置された複数のステータコイル84と、ハウジング74に回転可能に保持された中空状のモータ軸86と、モータ軸86の外周においてステータコイル84と向きあうようにして一円周上に固定して配設された永久磁石88とを含んで構成されている。電動モータ70は、ステータコイル84がステータとして機能し、永久磁石88がロータとして機能するDCブラシレスモータとされている。
減速機構72は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)90,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)92およびリングギヤ(サーキュラスプライン)94を備え、ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構等とも呼ばれる)として構成されている。波動発生器90は、楕円状カムの外周にボール・ベアリングが嵌められたものであり、モータ軸86の一端部の外周に固定されている。フレキシブルギヤ92は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯が形成されている。このフレキシブルギヤ92は、先に説明した出力軸82に支持されている。詳しく言えば、出力軸82は、モータ軸86を貫通しており、それから延び出す端部にフレキシブルギヤ92の底部が固着されることで、フレキシブルギヤ92と出力軸82とが接続されているのである。リングギヤ94は、概してリング状をなし、その内周に複数(フレキシブルギヤの歯数よりやや多い数、例えば2つ多い数)の歯が形成されており、ハウジング74に固定されている。フレキシブルギヤ92は、その周壁部が波動発生器90に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ94と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。波動発生器90が1回転(360度)すると、フレキシブルギヤ92とリングギヤ94とが、それらの歯数の差分だけ相対回転させられる。ハーモニックギヤ機構はその構成が公知のものであることから、本減速機構72の詳細な図示は省略し、説明は簡単なものに留める。
以上の構成から、電動モータ70が回転させられる場合、つまり、アクチュエータ30が作動する場合に、右スタビライザバー22と左スタビライザバー24との各トーションバー部60が相対回転させられ、右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とによって構成されて1つのスタビライザバーと観念できるスタビライザバー20が、捩じられることになるのである。このねじりにより生じる力は、左右の各々の車輪16と車体とを接近あるいは離間させる力として作用することになる。つまり、本スタビライザ装置14では、アクチュエータ30の作動によって、スタビライザバー20の弾性力,すなわち,剛性を変化させるような構成の装置とされているのである。
なお、アクチュエータ30には、ハウジング74内に、モータ軸86の回転角度、すなわち、電動モータ70の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ100が設けられている。モータ回転角センサ100は、本アクチュエータ30ではエンコーダを主体とするものであり、それによる検出値は、電動モータ70の通電相の切換に利用されるとともに、左右のスタビライザバー22,24の相対回転角度(相対回転位置)を指標するものとして、アクチュエータ30の制御、つまり、スタビライザ装置14によるロール抑制制御に利用される。
本車両用サスペンションシステムは、図1に示すように、スタビライザ装置14、詳しくは、それのアクチュエータ30を制御する制御装置であるスタビライザ電子制御ユニット(スタビライザECU)110(以下、単に「ECU110」という場合がある)を備えている。そのECU110は、図4に示すように、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータ112を主体として構成されており、ECU110には、上記モータ回転角センサ100とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ120,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ122および車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横Gセンサ124が接続されている(図1では、それぞれ「θ」,「δ」,「v」,「G」と表されている)。また、ECU110には、駆動回路130(図4参照)を介してアクチュエータ30の電動モータ70が接続されている。ECU110のコンピュータ112のROMには、ロール抑制プログラム等のプログラムおよび各種データ等が記憶されている。
ECU110は、機能的には、図4に機能ブロックを示すように、操作角センサ120と車速センサ122との検出結果に基づいて旋回状態量としての推定横Gを推定する旋回状態量推定部140と、それによって推定された推定横Gと横Gセンサ124によって検出された実横Gとに基づいてアクチュエータ30の制御目標値を決定する制御目標値決定部142と、その制御目標値に基づいてアクチュエータ30の作動を制御する作動制御部146とを備えるものとされている。
以上のように構成される車両用サスペンションシステム10では、ロール抑制制御、つまり、スタビライザ装置14のアクチュエータ30の作動によって車両旋回時における車体のロールモーメントに対抗するモーメントを発生させ、車体のロールをアクティブに抑制する制御が実行される。詳しくは、推定横Gと実横Gとの和が、アクチュエータ30を制御する制御目標値を決定するための制御用の横加速度である制御横加速度(以下、「制御横G」という場合がある)として算出され、その制御横Gに基づいて車体のロールを抑制するに必要な制御目標値として、スタビライザバー20の捩り角度、すなわち、左右スタビライザバー22,24の相対回転角度に相当する電動モータ70の目標回転角が決定される。そして電動モータ70の実際の回転角である実回転角θと目標回転角θ*との偏差に基づくフィードバック制御が行われ、その偏差を解消するように電動モータ70へ電流が供給されるのである。
なお、上記ロール抑制制御が実行されない間は、電動モータ70には電流が供給されず、アクチュエータ30は、スタビライザバー20からの回転モーメント(車輪16側からの入力)により、電動モータ70の回転角が設定された角度(スタビライザバー20が捩じられていない状態に相当する角度)となる中立位置へ復帰することを許容される。ただし、アクチュエータ30の内部摩擦、電動モータ70のコギングトルク,逆起電力等の影響で中立位置へ復帰しないこともある。
本車両用サスペンションシステム10において、ECU110は、コンピュータ112がロール抑制プログラムを極短い時間間隔をおいて繰り返し実行することで、スタビライザ装置14を適切に作動させ、車体のロールを抑制する。以下、本スタビライザ装置14による車体のロール抑制制御を、図5に示すロール抑制プログラムのフローチャートに沿って説明する。なお、本サスペンションシステム10では、2つのスタビライザ装置14が設けられているが、それらは同様に制御されるため、説明を単純化させるため、一方のスタビライザ装置14の説明をすることで、システム全体における制御の説明に代えることとする。
まず、ステップS1(以下単に「S1」と称する。他のステップについても同じ)において、車体のロールを抑制するために必要な左右のスタビライザバー24,26の相対回転角度、すなわちアクチュエータ30の制御目標値たる電動モータ70の目標回転角θ*が決定される。この決定は、目標回転角決定ルーチンにおいて行われるが、そのルーチンによる目標回転角θ*の具体的な手法は、後に詳しく説明する。次にS2において、今回ロール抑制制御を行うべきか否かが判断される。具体的には、操舵されていない場合、つまり、ステアリングホイールの操作角δが一定期間略中立位置にある場合、または、車速vが予め設定された設定速度より小さい場合には、車体のロールが小さく、ロールの抑制を行う必要がないので、S2の判定がNOとなり、S3に進んでロールの抑制を行わない非ロール抑制制御が実行される。非ロール抑制制御が実行される場合には、アクチュエータ30に電流が供給されず、先に説明したように、アクチュエータ30は、左右スタビライザバー22,24からの回転モーメントによって中立位置へ復帰することを許容される状態となる。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
それに対して、S2においてロールの抑制を行うべきであると判断されれば、S4に進んで、モータ回転角センサ100の検出値に基づいて現在の電動モータ70の回転角である実回転角θが取得される。次にS5において、ロール抑制制御が実行される。具体的には、先に説明したように、目標回転角θ*と実回転角θとの偏差に基づくフィードバック制御が実行され、その偏差を解消するような電流が供給される。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
次に、電動モータ70の目標回転角θ*の決定を行う目標回転角決定ルーチンを、図6に示すフローチャートに沿って説明する。このルーチンでは、まず、S11において、車速センサ122の検出値に基づいて車速vが取得される。次に、S12において、操舵量として、操作角センサ120の検出値に基づいてステアリングホイールの操作角δが取得される。次にS13において、それら車速vおよび操作角δに基づいて推定横加速度Gycが推定される。推定横加速度Gycは、車両特性に基づいて車速と操作角とをパラメータとするマップが予め作成されており、そのマップを参照することによって推定される。なお、推定横加速度は、車速と操作角とをパラメータとする計算式を設定し、その計算式に従って演算することにより推定されてもよい。続いて、S14において、車体に発生する実際の横Gである実横加速度Gyrが、横Gセンサ124の検出値に基づいて取得される。
続くS15において、推定横加速度Gycと実横加速度Gyrとの和が、制御横加速度Gy*として算出される。詳しく言えば、制御横加速度Gy*は、ロール抑制制御を行うために推定横加速度Gycと実横加速度Gyrとに基づいて設定される値であって、後述する制御目標値としての電動モータ70の目標回転角θ*を決定する際に利用される値である。次に、S16において、その制御横加速度Gy*に基づいてアクチュエータ30の目標回転角θ*が決定される。具体的に言えば、制御横加速度Gy*に対応する目標回転角θ*のデータがコンピュータ112のROMに予め記憶されており、そのデータに基づいて容易に目標回転角θ*が決定される。このS16の終了によって、本プログラムの1回の実行が終了する。以上のように、本実施例においては、常に、推定横加速度Gycと実横加速度Gyrとの和に基づいて、目標回転角θ*が決定されるのである。
以上の説明から解るように、ECU110のコンピュータ112の目標回転角決定ルーチンを実行する部分のうちのS13を実行する部分が旋回状態量推定部140が構成し、S15およびS16を実行する部分が制御目標値決定部142を構成するもとなっている。そして、ロール抑制プログラムを実行する部分のうちのS2ないしS5を実行する部分が、作動制御部146を構成するものとされているのである。
本車両用サスペンションシステム10によれば、スタビライザ装置14の制御目標値であるアクチュエータ30が備える電動モータ70の目標回転角θ*が、実横加速度Gyrと推定横加速度Gycとの和に基づいて決定された制御横加速度Gy*に依拠して決定される。図7に、典型的な車両旋回の時間的経過tに対する実横加速度Gyr,推定横加速度Gycの変化と、それの和である制御横加速度Gy*および制御横加速度Gy*を1/2したものの変化を示す。この図から解るように、一般的に、実横加速度Gyrは推定横加速度Gycに対しての遅れを伴って発生する。実横加速度Gyrと推定横加速度Gycとの和としての制御横加速度Gy*を制御目標値の基準として採用することにより、その遅れを加味したロール抑制制御が実行されることが理解できる。したがって、実横加速度Gyrと推定横加速度Gycとの和に基づいて制御目標値を決定すれば、車両旋回初期における制御遅れ,ステアリング操作部材の切り戻し時の揺れ戻し,旋回時の車両の過大なスリップ等の実横Gに基づく制御における不都合を解消し、効果的に車体のロールを抑制することが可能となるのである。また、実横加速度Gyrと推定横加速度Gycとの単なる和に基づいて目標回転角θ*を決定することにより、その決定のための処理が簡便なものとなり、制御装置の構成の単純化が図れることとなる。さらに、実横加速度Gyrを検出するための横Gセンサ124と推定横加速度Gycを検出するための操作角センサ100および車速センサ122のいずれかが失陥したような場合であっても、目標回転角θ*の基礎となる制御横加速度Gy*が概ね半分となるだけであり、ロール抑制装置が全く制御されないといった事態が回避されることになる。
10:車両用サスペンションシステム 14:スタビライザ装置(ロール抑制装置) 20:スタビライザバー 30:アクチュエータ 70:電動モータ 72:減速機構 100:モータ回転角センサ 110:スラビライザ電子制御ユニット(制御装置) 112:コンピュータ 140:旋回状態量推定部 142:制御目標値決定部
Claims (3)
- アクチュエータを有してそのアクチュエータの作動によって車体のロールを抑制するロール抑制装置と、
(a)実際の車両の旋回状態を指標する実旋回状態量と、操舵量と車両走行速度とに依拠して推定される車両の旋回状態を指標する推定旋回状態量とに基づいて、前記アクチュエータの制御目標値を決定する制御目標値決定部と、(b)その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて前記アクチュエータを制御作動させる作動制御部とを有する制御装置と
を備えたサスペンションシステムであって、
前記制御目標値決定部が、実旋回状態量と推定旋回状態量との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものであることを特徴とする車両用サスペンションシステム。 - 制御目標値決定部が、実旋回状態量としての実際に車両に発生する実横加速度と、推定旋回状態量としての推定された横加速度である推定横加速度との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記ロール抑制装置が、
両端部の各々が左右の車輪保持部材の各々に連結されるスタビライザバーを備え、前記アクチュエータがそのスタビライザバーの弾性力を変化させるように構成されたスタビライザ装置を含んで構成された請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
Priority Applications (1)
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JP2004359372A JP2006168386A (ja) | 2004-12-13 | 2004-12-13 | 車両用サスペンションシステム |
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EP1995091A2 (en) | 2007-05-17 | 2008-11-26 | Aisin Seiki Kabushiki Kaisha | Apparatus for controlling load for vehicle driving wheel |
KR102062573B1 (ko) | 2013-06-19 | 2020-01-06 | 현대모비스 주식회사 | 차량 자세 제어 장치 및 방법 |
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2004
- 2004-12-13 JP JP2004359372A patent/JP2006168386A/ja not_active Withdrawn
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