JP2006168280A - 射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法 - Google Patents

射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 加熱された金型に射出された樹脂から射出成形により成形される成形品の性状をシミュレーションすること。
【解決手段】 キャビティ18が形成される金型10の金型形状と金型10が加熱される加熱条件と金型10が冷却される冷却条件とを収集する金型条件収集部と、金型形状と加熱条件と冷却条件とに基づいて、キャビティ18のキャビティ表面のキャビティ表面温度を算出する金型シミュレーション部3と、樹脂31の性質を収集する樹脂条件収集部と、性質とキャビティ表面温度とに基づいて、樹脂31がキャビティ18に射出されたときの樹脂31の挙動を算出し、樹脂31の挙動に基づいてキャビティ18に射出された樹脂31から成形される成形品の性状を算出する樹脂シミュレーション部5とを備えている。このような射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法により、加熱された金型10に射出された樹脂31が冷却して得られる成形品の性状を正確にシミュレーションすることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法に関し、特に、射出成形に用いられる金型の形状や運転条件を設計するときに利用される射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法に関する。
金型キャビティ内に可塑化された溶融樹脂を射出充填し、冷却して成形品に成形する射出成形が知られている。射出成形では、可塑化された溶融樹脂をキャビティ内に射出充填し、冷却後、型開して成形品として取り出すまでの工程で射出成形1サイクルとなる。最近では、キャビティの表面温度を、予め、例えば100℃程度まで昇温させておいてから可塑化溶融樹脂を射出充填し、充填後に金型を急冷するという、金型急加熱、急冷却工程を加えた射出成形が行われることがある。
このように、予めキャビティ温度を昇温させておくと、キャビティ内へ射出された樹脂の固化が遅くなるため、低射出圧として樹脂流動速度を下げても、キャビティ内へ樹脂充填ができる。また、キャビティ表面に到達した樹脂はキャビティ表面に熱を奪われて固化を開始するが、キャビティ表面の温度が昇温しているため、固化開始が遅れ、結果として、キャビティ表面の形状(微細凹凸、鏡面、しぼ模様等)はより精密に樹脂成形品に転写されることとなる。この射出成形では、急加熱工程を含むが、急冷却工程により成形サイクルが長くなるのを抑えている。
図9は、このような金型急加熱、急冷却工程を加えた射出成形に適用される金型を示している。金型110は、移動側金型111と固定側金型112とから形成されている。固定側金型112は、射出成形機のケーシングに固定されている。移動側金型111は、固定側金型112に向かって進退可能にケーシングに支持されている。
移動側金型111は、外型114と内型115とから形成されている。外型114には窪みが形成されており、内型115は、外型114に形成された前記窪みの中に配置されて支持されている。内型115は、外型114に接触する面に複数の溝が形成されており、その溝は、内型115が外型114に支持されるときに、複数の流路121を形成する。外型114には、さらに、図示されていない上流側流路と下流側流路とが形成されている。その上流側流路は、流路121の上流側端を外部の加熱冷却媒体供給源(不図示)の吐出側又は吸入側のいずれか一方に接続し、その下流側流路は、流路121の下流側端を前記外部の加熱冷却媒体供給源の吐出側又は吸入側のいずれか他方に接続している。
固定側金型112は、外型116と内型117とから形成されている。外型116には窪みが形成されており、内型117は、外型116に形成された前記窪みの中に配置されて支持されている。内型117は、外型116に接触する面に複数の溝が形成されており、その溝は、内型117が外型116に支持されるときに、複数の流路122を形成する。外型116には、さらに、図示されていない上流側流路と下流側流路とが形成されている。その上流側流路は、流路122の上流側端を外部の加熱冷却媒体供給源(不図示)の吐出側又は吸入側のいずれか一方に接続し、その下流側流路は、流路122の下流側端を前記外部の加熱冷却媒体供給源の吐出側又は吸入側のいずれか他方に接続している。
内型115の外型114に接していない面には、窪みが形成されており、内型117の外型116に接していない面にも窪みが形成されている。それら窪みは、移動側金型111と固定側金型112とが密着したときに、キャビティ118を形成する。金型110には、さらに、図示されていないゲートが形成されている。そのゲートを介して、キャビティ118は、図示されていない射出成形機の射出シリンダと連通する。
金型110が適用される射出成形機は、図示されていない可塑化機構と射出機構と型締機構と加熱冷却機構とを備えている。可塑化機構は、原料である可塑性樹脂を溶融して溶融樹脂を生成する。射出機構は、可塑化機構で生成された溶融樹脂をキャビティ118に射出する。型締機構は、移動側金型111を固定側金型112に向かって進退させ、また移動側金型111と固定側金型112とを型締する。加熱冷却機構は、冷水を生成する冷水供給源と温水を生成する温水供給源とその冷水または温水の一方を流路121、122に供給するバルブとを備え、流路121、122に冷水を流してキャビティ118の表面を冷却し、流路121、122に温水を流してキャビティ118の表面を加熱する。
図10は、金型110を用いた射出成形方法を示し、流路121、122に供給される加熱冷却媒体(水)の温度変化を示している。その射出成形方法では、樹脂材料を可塑化溶融し、キャビティ内に射出充填し、冷却して成形品として取り出すまでの射出成形1サイクルΔtが繰り返して実行される。射出成形1サイクルΔtは、金型加熱期間Δtと樹脂充填期間Δtと金型冷却期間Δtと成形品取出期間Δtとから形成される。金型加熱期間Δtでは、加熱冷却機構により流路121、122に160℃の温水が供給され、キャビティ118のキャビティ表面が加熱される。樹脂充填期間Δtでは、可塑化機構により生成された溶融樹脂が射出機構によりキャビティ118に射出充填される。金型冷却期間Δtでは、加熱冷却機構により流路121、122に20℃の冷水が供給され、キャビティ118のキャビティ表面が冷却される。成形品取出期間Δtでは、型締機構により移動側金型111を固定側金型から離間する方向に移動させて型開してキャビティ118から成形品を取り出し、成形品を取り出した後、移動側金型111を固定側金型112に向かって移動させ、移動側金型111と固定側金型112とを型閉じ・型締めして次の射出成形サイクルに備える。
加熱冷却機構は、温水または冷水を流路121、122に常時供給する。すなわち、加熱冷却機構は、金型加熱期間Δtと樹脂充填期間Δtとに流路121、122に温水を供給し、金型冷却期間Δtと成形品取出期間Δtとに流路121、122に冷水を供給する。
このような射出成形方法によれば、キャビティ118内に射出充填された溶融樹脂は、表面がキャビティ118の表面に十分に密着した後に冷却されて凝固する。このため、成形品の表面形状は、キャビティ118のキャビティ表面形状に倣うこととなる。例えば、キャビティ118の表面に微細な凹凸形状が形成されているときには、その微細な凹凸形状が成形品の表面形状として転写される。キャビティ118の表面が鏡面であるときには、成形品の表面は鏡面に形成されることとなる。キャビティ118の表面形状を、成形品の表面により精密に転写することができる金型、射出成形条件を設計することが望まれている。
数値解析により、成形プロセス中の金型の温度履歴を求め、或いは、冷却工程における樹脂成形品の温度履歴や反り、ひけ等の変形量を予測する、種々の射出成形シミュレーション方法が提案されている。
特開平05−322812号公報には、局所的に違う熱伝達係数を決定することができ、しかも温度センサが供給媒体との境界から離れていることの影響及び外壁からの放熱現象の影響を考慮して、熱伝達係数を算出することができる射出成形用金型の熱伝達係数算出方法が開示されている。その射出成形用金型の熱伝達係数算出方法は、金型温調配管内で行われる熱交換を金型外壁からの放熱現象を考慮した数値解析と実験的手法により算出し、該金型の熱伝達係数を算出することを特徴としている。
特開平06−262635号公報には、結晶性プラスチック成形品の成形において、成形条件の最適化を図り得る結晶性プラスチック成形品における成形条件の設定方法が開示されている。その結晶性プラスチック成形品における成形条件の設定方法は、核発生速度式・球晶成長速度式をAvramiの式に代入して樹脂の結晶成長速度を時間と温度の関数として求め、一方金型内の樹脂温度をシミュレーションなどの手法により時間の関数として求め、その両者から結晶化度の累積値を求めることにより、金型温度・樹脂温度・冷却固化時間の設定を最適化することを特徴としている。
特開平07−282123号公報には、数値計算に要する時間を効果的に短縮化しつつ、精密な温度解析を行うことができるようにする金型の温度解析方法が開示されている。その金型の温度解析方法は、網目状に分割された多角形要素の集合体からなる金型の解析モデルに基づき、各部の温度を数値計算によって解析する金型の温度解析方法であって、金型の形状等に対応させてその各部を構成する多角形要素の分割幅を設定するとともに、この多角形要素の分割幅に応じて上記数値計算に使用する諸物性値を変更し、この変更後の諸物性値を用いて上記金型モデルの温度解析を行うように構成したことを特徴としている。
特開平10−278085号公報には、金型内部を微小要素に分割することなく、金型表面を要素分割して、成形プロセス中の成形品、金型の温度履歴を予測し、計算時間も短縮させる射出成形プロセスにおける温度履歴予測装置が開示されている。その射出成形プロセスにおける温度履歴予測装置は、射出成形プロセスの成型品および金型の温度履歴を数値解析により予測する装置において、成形品部を微小要素に分割し、有限要素法、差分法、有限体積法、境界要素法などの数値計算法を適用することにより、非定常熱伝導問題を解くことで、成形品から金型中のキャビ面へ逃げる1サイクル平均の熱量を要素ごとに算出する第1の手段と、金型部を微小要素に分割し、境界条件として金型キャビ面の各要素に前記第1の算出手段で算出された各要素の成形品から金型へ逃げる1サイクル平均の熱量を、冷却管の表面には冷媒温度・冷媒と金型の間の熱伝達率を、外気と接する金型表面には外気温度・外気と金型の間の熱伝達率を与え、境界要素法、有限要素法、有限体積法、差分法などの数値計算法を適用して、定常熱伝導問題を解くことで、金型の温度および熱流速を算出する第2の算出手段と、入力された境界条件および前記第2の算出手段で得られた温度分布、熱流速をもとに、キャビ面から冷却管までの距離および冷媒と冷却管の間の熱伝達率を一次元的なモデルに置き換えた等価距離、等価熱伝達率を算出する第3の算出手段と、前記第3の算出手段で求めた等価距離、等価熱伝達率を用い、成形品およびキャビ面から冷却管までの金型を板厚方向に一次元の微小要素に分割し、有限要素法もしくは差分法、有限体積法を用いた数値計算により、非定常熱伝導問題を繰り返し解くことで、射出成形加工プロセス中の成形品および金型の温度履歴を算出する第4の算出手段とを備えることを特徴としている。
特開平10−278089号公報には、樹脂成形品としての最終的な状態での反り、ひけ等に起因する樹脂成形品の変形量の算出を、より少ない投資と解析作業時間で実現することを可能にした射出成形プロセスのシミュレーション方法が開示されている。その樹脂部品の射出成形プロセスのシミュレーション方法は、金型及び樹脂部品の形状データに基づいて形状モデルを作成し、当該形状モデルを複数の微小要素に分割する工程と、前記樹脂部品の設計パラメータを入力する入力工程と、前記金型への樹脂の流入口から前記複数の微小要素のそれぞれへの到達パラメータ(x)を変数とした樹脂温度の関数(t=f[x])及び樹脂圧力の関数(p=g[x])を求める流動解析工程と、前記流動解析工程で求めた前記到達パラメータ、前記樹脂温度、前記樹脂圧力および前記関数に基づいて前記金型内における前記樹脂温度及び樹脂圧力の分散値を表示する表示工程と、前記樹脂温度及び樹脂圧力の分散値に基づいて前記入力工程で入力された設計パラメータを評価する評価工程と、を有することを特徴としている。
特開2000−289076号公報には、成形過程における樹脂の物理的挙動の予測精度を向上させる樹脂成形シミュレーション方法が開示されている。その樹脂成形シミュレーション方法は、データを入力する入力部と、樹脂の射出成形過程における金型内の伝熱現象をシミュレートして、金型の温度分布を計算する金型冷却解析部と、計算された金型の温度分布に基づいて、金型温度と界面熱伝達率との相関関係マップを参照して界面熱伝達率を計算する熱伝達率計算部と、充填開始から離型までの溶融樹脂の挙動をシミュレートし、樹脂圧力及び樹脂温度の経時変化を計算する充填保圧冷却解析部と、射出成形品が常温になるまでの応力及び歪をシミュレートし、そり変形及び収縮変形を予測するそり解析部と、計算された金型温度分布,樹脂圧力及び樹脂温度の経時変化,射出成形品のそり変形及び収縮変形をCRT等から出力する出力部と、を含んで構成されたことを特徴としている。
特開2003−326581号公報には、樹脂の収縮による変形量が許容値以内に収まる冷却条件を求める方法および経時変化による収縮率を許容値以下に抑えるために必要な冷却条件を求める方法が開示されている。その収縮率に基づく射出成形品の型内冷却条件の予測方法は、成形品、金型の温度および成形品の樹脂圧力、温度を予測する手段と型内冷却中の成形品の粘弾性特性を考慮し応力シミュレーションを行い、型内での残留応力を予測する手段と成形品が金型から離れる現象の応力シミュレーションを行なう手段と成形品が大気温度になるまでの成形品の温度および粘弾性特性を考慮した応力シミュレーションを行なう手段と成形品が大気温度になってから指定された経過時間まで大気中での成形品の粘弾性特性を考慮した応力シミュレーションを行なう手段および冷却条件を振って、経時変化による収縮率を許容値以下に抑えるために必要な冷却条件を求める部分からなる。
特開平05−322812号公報 特開平06−262635号公報 特開平07−282123号公報 特開平10−278085号公報 特開平10−278089号公報 特開2000−289076号公報 特開2003−326581号公報
射出成形により成形される樹脂成形品の、成形(冷却)工程における温度履歴を数値解析により求め、反り、ひけ等の変形量を正確に予測しようとする場合、金型内の温調流路を流れる加熱媒体、或いは冷却媒体から受ける影響(金型の加熱、冷却)の他に、金型内に射出され、キャビティ表面に到達した樹脂が保有する熱量の影響をも考慮してキャビティの表面温度分布、履歴を解析し、かつ、そのように解析されたキャビティ表面の温度分布、履歴を基礎にして、成形プロセス(冷却工程)中の樹脂成形品の温度履歴を解析し、反り、ひけ等の変形量を予測する、金型解析と成形品解析の双方を連成した数値解析を行うことが必要である。
本発明の課題は、射出成形により成形される成形品の形状を、金型解析と成形品解析とを連成して算出する射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、射出成形により成形される成形品の形状を、金型解析と成形品解析とを連成して、より正確に算出する射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、射出成形により成形される成形品の形状をより速く算出する射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、射出成形により成形される成形品の形状をより正確に、かつ、より速く算出する射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法を提供することにある。
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明による射出成形シミュレーション装置(1)は、キャビティ(18)が形成される金型(10)の金型形状と金型(10)が加熱される加熱条件と金型(10)が冷却される冷却条件とを収集する金型条件収集部と、金型形状と加熱条件と冷却条件とに基づいて、キャビティ(18)の表面温度を算出する金型シミュレーション部(3)と、キャビティ(18)に射出充填される樹脂(31)の性質を収集する樹脂条件収集部と、樹脂(31)の性質とキャビティ表面温度とに基づいて、樹脂(31)がキャビティ(18)に射出されたときの樹脂の挙動を算出し、その樹脂(31)の挙動に基づいてキャビティ(18)に射出された樹脂(31)から成形される成形品の形状を算出する樹脂シミュレーション部(5)とを備えている。このような射出成形シミュレーション装置(1)は、加熱された金型(10)に射出された樹脂(31)が冷却されて成形される成形品の形状をシミュレーションすることができる。樹脂(31)は、キャビティ(18)に充填される途中から冷却され、成形品の形状に影響を及ぼす。このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置(1)は、成形品の形状をより正確に算出することができる。
金型シミュレーション部(3)は、樹脂(31)の挙動に更に基づいてキャビティ表面温度を算出することが好ましい。キャビティ表面は、樹脂(31)からも加熱される。このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置(1)は、キャビティ表面温度をより正確に算出することができる。
金型シミュレーション部(3)は、樹脂(31)の挙動とは独立してキャビティ表面温度を算出することが好ましい。金型(10)は、一般に、樹脂(31)と比較して十分に比熱が大きく、キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動に独立してキャビティ表面温度を算出することができる。このような射出成形シミュレーション装置(1)は、その挙動に連立してキャビティ表面温度を算出することより計算が速く、好ましい。
キャビティ表面温度は、複数の時刻でのキャビティ表面の温度を示している。このとき、金型シミュレーション部(3)は、その挙動のうちの複数の時刻から間引かれた時刻での挙動に更に基づいてキャビティ表面温度を算出することが好ましい。このような射出成形シミュレーション装置(1)は、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に連立させて算出することより計算が速く、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に独立に算出することより正確にキャビティ表面温度を算出することができ、成形品の形状をより正確に算出することができる。
金型シミュレーション部(3)は、樹脂全量が、特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、キャビティ表面温度を算出することが好ましい。さらに、金型シミュレーション部(3)は、射出充填される樹脂(31)の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、キャビティ表面温度を算出することが好ましい。
金型シミュレーション部(3)は、キャビティ(18)の表面が変形する変形量を更に算出する。このとき、樹脂シミュレーション部(5)は、キャビティ(18)の表面の変形量に更に基づいて成形品の形状を算出することが好ましい。キャビティ表面は、熱により変形する。成形品の形状は、キャビティ表面の変形に影響される。このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置(1)は、成形品の形状をより正確に算出することができる。
樹脂シミュレーション部(5)は、樹脂(31)からキャビティ表面に加わる圧力分布を更に算出する。このとき、金型シミュレーション部(3)は、圧力分布に更に基づいて変形量を算出することが好ましい。キャビティ表面は、圧力によりさらに変形する。このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置(1)は、成形品の形状をより正確に算出することができる。
本発明による射出成形シミュレーションプログラムは、コンピュータである射出成形シミュレーション装置(1)により実行されるコンピュータプログラムであり、そのコンピュータプログラムの部分として、キャビティ(18)が形成される金型(10)の金型形状と金型(10)が加熱される加熱条件と金型(10)が冷却される冷却条件とを収集するステップと、金型形状と加熱条件と冷却条件とに基づいて、キャビティ(18)の表面温度を算出するステップと、キャビティ(18)に射出充填される樹脂(31)の性質を収集するステップと、樹脂(31)の性質とキャビティ表面温度とに基づいて、樹脂(31)がキャビティ(18)に射出されたときの樹脂の挙動を算出し、その樹脂(31)の挙動に基づいてキャビティ(18)に射出された樹脂(31)から成形される成形品の形状を算出するステップとを備えている。このとき、加熱された金型(10)に射出された樹脂(31)が冷却されて成形される成形品の形状をシミュレーションすることができる。樹脂(31)は、キャビティ(18)に充填される途中から冷却され、成形品の形状に影響を及ぼす。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、樹脂(31)からも加熱される。このような計算によれば、キャビティ表面温度をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動とは独立して算出されることが好ましい。金型(10)は、一般に、樹脂(31)と比較して十分に比熱が大きく、キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動に独立してキャビティ表面温度を算出することができる。このような計算によれば、その挙動に連立してキャビティ表面温度を算出することより計算が速く、好ましい。
キャビティ表面温度は、複数の時刻でのキャビティ表面の温度を示し、挙動のうちの複数の時刻から間引かれた時刻での挙動に更に基づいて算出されることが好ましい。このとき、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に連立させて算出することより計算が速く、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に独立に算出することより正確にキャビティ表面温度を算出することができ、成形品の形状をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂全量が、特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、算出されることが好ましい。さらに、キャビティ表面温度は、射出充填される樹脂(31)の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、キャビティ表面温度を算出されることが好ましい。
本発明による射出成形シミュレーションプログラムは、キャビティ表面が変形する変形量を算出するステップを更に備えている。このとき、成形品の形状は、変形量に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、熱により変形する。成形品の形状は、キャビティ表面の変形に影響される。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
本発明による射出成形シミュレーションプログラムは、樹脂(31)からキャビティ表面に加わる圧力分布を算出するステップを更に備えている。このとき、変形量は、圧力分布に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、圧力によりさらに変形する。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
本発明による射出成形シミュレーション方法は、キャビティ(18)が形成される金型(10)の金型形状と金型(10)が加熱される加熱条件と金型(10)が冷却される冷却条件とを収集するステップ(S21)と、金型形状と加熱条件と冷却条件とに基づいて、キャビティ(18)の表面温度を算出するステップ(S22)と、キャビティ(18)に射出充填される樹脂(31)の性質を収集するステップ(S31)と、樹脂(31)の性質とキャビティ表面温度とに基づいて、樹脂(31)がキャビティ(18)に射出されたときの樹脂の挙動を算出し、その樹脂(31)の挙動に基づいてキャビティ(18)に射出された樹脂(31)から成形される成形品の形状を算出するステップ(S33)とを備えている。このとき、加熱された金型(10)に射出された樹脂(31)が冷却されて成形される成形品の形状をシミュレーションすることができる。樹脂(31)は、キャビティ(18)に充填される途中から冷却され、成形品の形状に影響を及ぼす。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、樹脂(31)からも加熱される。このような計算によれば、キャビティ表面温度をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動とは独立して算出されることが好ましい。金型(10)は、一般に、樹脂(31)と比較して十分に比熱が大きく、キャビティ表面温度は、樹脂(31)の挙動に独立してキャビティ表面温度を算出することができる。このような計算によれば、その挙動に連立してキャビティ表面温度を算出することより計算が速く、好ましい。
キャビティ表面温度は、複数の時刻でのキャビティ表面の温度を示し、挙動のうちの複数の時刻から間引かれた時刻での挙動に更に基づいて算出されることが好ましい。このとき、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に連立させて算出することより計算が速く、キャビティ表面温度を樹脂(31)の挙動に独立に算出することより正確にキャビティ表面温度を算出することができ、成形品の形状をより正確に算出することができる。
キャビティ表面温度は、樹脂全量が、特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、算出されることが好ましい。さらに、キャビティ表面温度は、射出充填される樹脂(31)の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填される樹脂充填工程をモデル化し、キャビティ表面温度を算出されることが好ましい。
本発明による射出成形シミュレーション方法は、キャビティ(18)の表面が変形する変形量を算出するステップ(S22)を更に備えている。このとき、成形品の形状は、キャビティ(18)の変形量に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、熱により変形する。成形品の形状は、キャビティ表面の変形に影響される。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
本発明による射出成形シミュレーション方法は、樹脂(31)からキャビティ表面に加わる圧力分布を算出するステップ(S22)を更に備えている。このとき、変形量は、圧力分布に更に基づいて算出されることが好ましい。キャビティ表面は、圧力によりさらに変形する。このような計算によれば、成形品の形状をより正確に算出することができる。
本発明による金型製造方法は、金型(10)を生産する方法であり、本発明による射出成形シミュレーション方法を実行するステップ(S2)と、成形品の形状が不適切であるときに、金型形状を変更するステップ(S3、S1)と、成形品の形状が適切であるときに、金型形状を満足する本物の金型(10)を製造するステップ(S10)とを備えていることが好ましい。
本発明による射出成形方法は、成形品を生産する方法であり、本発明による射出成形シミュレーション方法を実行するステップ(S2)と、成形品の形状が不適切であるときに、加熱条件と冷却条件とを変更するステップ(S3、S1)と、成形品の形状が適切であるときに、金型形状を満足する本物の金型(10)を用いて加熱条件と冷却条件とを満足するように射出成形するステップとを備えていることが好ましい。
本発明による射出成形シミュレーション装置及び射出成形シミュレーション方法は、可塑化溶融された樹脂材料を、加熱冷却される金型に射出充填し、冷却後に成形品として取り出す射出成形により成形される成形品の性状をシミュレーションすることができる。
図面を参照して、本発明による射出成形シミュレーション装置の実施の形態を記載する。その射出成形シミュレーション装置によるシミュレーションの対象である金型10は、図1に示されているように、移動側金型11と固定側金型12とから形成されている。金型10は、可塑化溶融された樹脂材料を射出充填し、冷却して、成形品に成形する射出成形機に適用される。固定側金型12は、射出成形機のケーシングに固定されている。移動側金型11は、固定側金型12に向かって進退可能にケーシングに支持されている。
移動側金型11は、外型14と内型15とから形成されている。外型14には窪みが形成されており、内型15は、外型14に形成された前記窪みの中に配置されて支持されている。内型15は、外型14に接触する面に複数の溝が形成されており、その溝は、内型15が外型14に支持されるときに、複数の流路21を形成する。外型14には、さらに、図示されていない上流側流路と下流側流路とが形成されている。その上流側流路は、流路21の上流側端を外部の加熱冷却媒体供給源(不図示)の吐出側又は吸入側のいずれか一方に接続し、その下流側流路は、流路21の下流側端を前記外部の加熱冷却媒体供給源の吐出側又は吸入側のいずれか他方に接続している。
固定側金型12は、外型16と内型17とから形成されている。外型16には窪みが形成されており、内型17は、外型16に形成された前記窪みの中に配置されて支持されている。内型17は、外型16に接触する面に複数の溝が形成されており、その溝は、内型17が外型16に支持されるときに、複数の流路22を形成する。外型16には、さらに、図示されていない上流側流路と下流側流路とが形成されている。その上流側流路は、流路22の上流側端を外部の加熱冷却媒体供給源(不図示)の吐出側又は吸入側のいずれか一方に接続し、その下流側流路は、流路22の下流側端を前記外部の加熱冷却媒体供給源の吐出側又は吸入側のいずれか他方に接続している。
内型15の外型14に接していない面には、窪みが形成されており、内型17の外型16に接していない面にも窪みが形成されている。それら窪みは、移動側金型11と固定側金型12とが密着したときに、キャビティ18を形成する。金型10には、さらに、図示されていないゲートが形成されている。そのゲートを介して、キャビティ18は図示されていない射出成形機の射出シリンダに連通する。
金型10が適用される射出成形機は、図示されていない可塑化機構と射出機構と型締機構と加熱冷却機構とを備えている。可塑化機構は、原料である可塑性樹脂を溶融して溶融樹脂を生成する。射出機構は、可塑化機構で生成された溶融樹脂をキャビティ18に射出する。型締機構は、移動側金型11を固定側金型12に向かって進退させて型開閉し、また移動側金型11と固定側金型12とを型締めする。加熱冷却機構は、冷水を生成する冷水供給源と温水を生成する温水供給源とその冷水または温水の一方を流路21、22に供給するバルブとを備え、流路21、22に冷水を流してキャビティ18の表面を冷却し、流路21、22に温水を流してキャビティ18の表面を加熱する。
図2は、金型10を用いた射出成形方法を示し、流路21、22に供給される加熱冷却媒体(水)の温度変化を示している。その射出成形方法では、樹脂材料を可塑化溶融し、金型キャビティ内に射出充填し、冷却して成形品として取り出すまでの射出成形1サイクルΔtが繰り返して実行される。射出成形1サイクルΔtは、金型加熱期間Δtと樹脂充填期間Δtと金型冷却期間Δtと成形品取出期間Δtとから形成される。金型加熱期間Δtでは、加熱冷却機構により流路21、22に温水が供給され、キャビティ18のキャビティ表面が加熱される。樹脂充填期間Δtでは、可塑化機構により生成された溶融樹脂が射出機構によりキャビティ18に射出充填される。金型冷却期間Δtでは、加熱冷却機構により流路21、22に冷水が供給され、キャビティ18のキャビティ表面が冷却される。成形品取出期間Δtでは、型締機構により移動側金型11を固定側金型12から離間する方向に移動させて型開してキャビティ18から成形品を取り出し、成形品を取り出した後、移動側金型11を固定側金型12に向かって移動させ、移動側金型11と固定側金型12とを型閉じ・型締めして次の射出成形サイクルに備える。
加熱冷却機構は、温水または冷水を流路21、22に常時供給する。すなわち、加熱冷却機構は、金型加熱期間Δtと樹脂充填期間Δtとに流路21、22に温水を供給し、金型冷却期間Δtと成形品取出期間Δtとに流路21、22に冷水を供給する。
図3は、キャビティ18に射出される樹脂の挙動を示している。その樹脂31は、金型10に形成されるゲート33を介してキャビティ18に射出される。その樹脂31の表面は、樹脂31がキャビティ18に充填される前に、キャビティ18のキャビティ表面に接触していないメルトフロント32とキャビティ表面に接触している接触面34とから形成されている。メルトフロント32は、樹脂31がゲート33を介してキャビティ18に射出されると、キャビティ表面のうちのゲート33に近い領域からキャビティ表面のうちのゲート33から遠い領域に向かって移動し、終には消滅する。接触面34は、樹脂31がキャビティ18に射出されるにつれて面積を増加させ、終にはキャビティ表面に一致する。樹脂31は、接触面34から金型10に熱を放熱する。
図4は、本発明による射出成形シミュレーション装置を示している。その射出成形シミュレーション装置1は、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とを備える情報処理装置(コンピュータ)である。このような情報処理装置としては、パーソナルコンピュータ、ワークステーションが例示される。入力装置は、ユーザにより操作されることにより生成される情報を射出成形シミュレーション装置1に出力する装置であり、記録媒体の読取装置、キーボードが例示される。出力装置としては、ディスプレイ、プリンタが例示される。その射出成形シミュレーション装置1は、コンピュータプログラムである金型条件収集部2と金型シミュレーション部3と樹脂条件収集部4と樹脂シミュレーション部5とがインストールされている。
金型条件収集部2は、入力装置を用いてユーザにより入力される金型条件をその入力装置から収集する。その金型条件は、金型の構造と運転条件とを示している。その金型の構造は、キャビティ18の形状と流路21、22の断面形状と流路21、22のレイアウトとを示している。その運転条件は、加熱条件と冷却条件とから形成されている。その加熱条件は、流路21、22に供給される温水の温度と流量とを示している。その冷却条件は、流路21、22に供給される冷水の温度と流量とを示している。
金型シミュレーション部3は、金型条件収集部2により収集された金型条件に基づいて、金型10の数学的モデルを生成し、その数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。温度分布は、キャビティ18のキャビティ表面が分割された複数の微小領域のある時刻の温度をそれぞれ示している。温度変化は、時間を所定の時間毎に区切る複数の時刻での各微小領域の温度を示している。熱変形は、その複数の時刻でのその微小領域の移動量を示している。このような数値計算法としては、金型10を微小要素に分割して計算する方法が例示され、有限要素法、差分法、有限体積法、境界要素法などが例示される。このとき、金型シミュレーション部3は、樹脂シミュレーション部5により算出された結果を用いないで独立に動作する。
樹脂条件収集部4は、入力装置を用いてユーザにより入力される樹脂条件を入力装置から収集する。その樹脂条件は、キャビティ18に射出される樹脂の物性と成形条件とを示している。その物性は、各温度での粘度を示す粘度特性と熱伝導率と圧力・体積・温度の関係を示すPVT特性とを示している。その成形条件は、ゲート33の位置と樹脂がキャビティ18に射出される射出速度とキャビティ18に射出されるときの樹脂温度とを示している。
樹脂シミュレーション部5は、樹脂条件収集部4により収集された樹脂条件に基づいて樹脂31の数学的モデルを生成し、その数学的モデルを用いて金型シミュレーション部3により算出されたキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とに基づいて樹脂31の挙動と成形品の形状とを算出する。その挙動は、樹脂31が分割された複数の微小要素の位置、温度、圧力を示している。このような数値計算法としては、樹脂31を微小要素に分割して計算する方法が例示され、有限要素法、差分法、有限体積法、境界要素法などが例示される。
本発明による金型製造方法の実施の形態は、金型と運転条件とを設計する動作と運転条件を検証する動作とを備えている。
図5は、金型と運転条件とを設計する動作を示している。設計者は、まず、目的の成形品の形状に基づいて、適当に金型の構造と運転条件とを設計する(ステップS1)。設計者は、設計されたその金型の構造と運転条件とを射出成形シミュレーション装置1に入力し、目的の成形品が形成される樹脂の樹脂条件を射出成形シミュレーション装置1に入力する。射出成形シミュレーション装置1は、入力された情報に基づいて、金型の挙動と樹脂の挙動とをシミュレーションし、成形品の形状を算出する(ステップS2)。設計者は、算出された成形品の形状と目的の形状との誤差が許容範囲を外れて不適切であるときに(ステップS3、NO)、算出された成形品の形状を参照して、成形品が目的の形状となるように金型の形状と運転条件とを再び設計する(ステップS1)。ステップS1、S2の動作は、算出された成形品の形状と目的の形状との誤差が許容範囲に含まれるまで繰り返して実行される。
図6は、運転条件を検証する動作とを備えている。設計者は、図5の動作により設計された金型の構造に基づいて金型を製作する(ステップS10)。設計者は、さらに、図5の動作により設計された運転条件に基づいて、その金型を用いて射出成形する(ステップS11)。設計者は、成形された成形品の形状を計測し、成形された成形品の形状と目的の形状との誤差が許容範囲を外れているかどうかを判別する(ステップS12)。
設計者は、誤差が許容範囲を外れているときに(ステップS12、NO)、誤差が許容範囲を外れなくなるように、運転条件を変更する(ステップS13)。設計者は、運転条件の変更でその誤差が許容範囲を外れなくならないと判別されたときに(ステップS14、NO)、図5の動作を実行して欠陥が発生しないように金型の形状と運転条件とを再び設計する(ステップS15)。
このような金型製造方法によれば、成形された成形品の形状と目的の形状との誤差が許容範囲を外れないような、金型の構造と運転条件とをより容易により確実に設計することができる。
本発明による射出成形方法の実施の形態は、図5の動作において、算出された成形品の形状と目的の形状との誤差が許容範囲に含まれるときに設計された金型の構造に基づいて製作された金型を用いて、そのときに設計された運転条件を満足するように射出成形する動作から形成されている。このような射出成形方法によれば、成形品が目的の形状に成形されやすく、好ましい。このような射出成形方法は、さらに、図6の動作において設計された運転条件を満足するように射出成形することにより、成形品を目的の形状により容易により確実に成形することができる。
本発明による射出成形シミュレーション方法の実施の形態は、本発明による射出成形シミュレーション装置1により実行され、図5に示されている動作におけるステップS2の処理である。その射出成形シミュレーション方法は、金型のキャビティ表面の挙動をシミュレーションする動作と、樹脂の挙動をシミュレーションする動作とを備えている。
図7は、金型のキャビティ表面の挙動をシミュレーションする動作を示している。設計者は、まず、設計されたその金型の構造と運転条件とを射出成形シミュレーション装置1に入力する(ステップS21)。射出成形シミュレーション装置1は、その金型の構造と運転条件とに基づいて、金型10の数学的モデルを生成し、その数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する(ステップS22)。その温度分布は、キャビティ18のキャビティ表面が分割された複数の微小領域のある時刻の温度をそれぞれ示している。温度変化は、時間を所定の時間毎に区切る複数の時刻での各微小領域の温度を示している。熱変形は、その複数の時刻でのその微小領域の移動量を示している。
図8は、樹脂の挙動をシミュレーションする動作を示している。設計者は、まず、目的の成形品を形成する樹脂の樹脂条件を射出成形シミュレーション装置1に入力する(ステップS31)。その樹脂条件は、キャビティ18に射出される樹脂の物性と成形条件とを示している。その物性は、各温度での粘度を示す粘度特性と熱伝導率と圧力・体積・温度の関係を示すPVT特性とを示している。その成形条件は、ゲート33の位置と樹脂がキャビティ18に射出される射出速度とキャビティ18に射出されるときの樹脂温度とを示している。射出成形シミュレーション装置1は、さらに、図7の動作により算出されたキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを収集する(ステップS32)。
射出成形シミュレーション装置1は、入力された樹脂条件に基づいて溶融樹脂31の数学的モデルを生成し、その数学的モデルを用いて、図7の動作により算出されたキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とに基づいて溶融樹脂31の挙動と成形品の形状とを算出する(ステップS33)。その挙動は、溶融樹脂31が分割された複数の微小要素の位置、温度、圧力を示している。射出成形シミュレーション装置1は、算出された溶融樹脂31の挙動と成形品の形状とを設計者に認識可能にディスプレイに表示し、紙に印刷する(ステップS34)。
このような射出成形シミュレーション方法によれば、加熱された金型10に射出された樹脂31が冷却して成形品に成形する射出成形により成形される成形品の形状をシミュレーションすることができる。金型10は、一般に、樹脂31と比較して十分に比熱が大きく、キャビティ表面温度は、樹脂31の挙動に独立してキャビティ表面温度を算出しても、その誤差は、十分に小さい。このような計算によれば、溶融樹脂31の挙動に連立してキャビティ表面温度を算出することより計算が速く、好ましい。
本発明による射出成形シミュレーション装置の実施の他の形態は、既述の実施の形態における金型シミュレーション部3の他の金型シミュレーション部に置換されている。その金型シミュレーション部は、金型条件収集部2により収集された金型条件に基づいて、金型10の数学的モデルを生成し、樹脂シミュレーション部5により算出された結果に基づいてその数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。すなわち、その金型シミュレーション部は、樹脂31が金型10を加熱することを考慮に入れてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。
本発明による射出成形シミュレーション方法の実施の他の形態は、その金型シミュレーション部が適用された射出成形シミュレーション装置1により実行され、既述の実施の形態における金型のキャビティ表面の挙動をシミュレーションする動作と、樹脂の挙動をシミュレーションする動作とが並行して実行される。すなわち、図7の動作のステップS21で、射出成形シミュレーション装置1は、その金型の構造と運転条件とに基づいて、金型10の数学的モデルを生成し、図8の動作のステップ33により算出された結果に基づいてその数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。すなわち、射出成形シミュレーション装置1は、樹脂31が金型10を加熱することを考慮に入れてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。
キャビティ表面は、樹脂31からも加熱される。このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置1は、計算が遅くなるが、金型のキャビティ表面の挙動を樹脂の挙動に独立して算出することより正確に、キャビティ表面温度を算出することができる。
本発明による射出成形シミュレーション装置の実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態における金型シミュレーション部3のさらに他の金型シミュレーション部に置換されている。その金型シミュレーション部は、樹脂シミュレーション部5により算出された溶融樹脂31の挙動のうち、溶融樹脂31が充填される期間を1回または複数回に分割する時刻での挙動を抽出する。その金型シミュレーション部は、その抽出された挙動に基づいてその数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。
金型シミュレーション部は、樹脂31の一塊がキャビティ18に一瞬のうちに充填されたものとして、キャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。または、その金型シミュレーション部は、樹脂31が分割された数個(5、6個)の塊がキャビティ18に数回に分けて充填されたものとして、キャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。
本発明による射出成形シミュレーション方法の実施のさらに他の形態は、その金型シミュレーション部が適用された射出成形シミュレーション装置1により実行され、既述の実施の形態における金型のキャビティ表面の挙動をシミュレーションする動作と、樹脂の挙動をシミュレーションする動作とが並行して実行される。すなわち、図7の動作のステップS21で、射出成形シミュレーション装置1は、その金型の構造と運転条件とに基づいて、金型10の数学的モデルを生成する。射出成形シミュレーション装置1は、図8の動作のステップ33により算出された樹脂31の挙動のうち、樹脂31が充填される期間を1回または複数回に分割する時刻での挙動を抽出する。射出成形シミュレーション装置1は、その抽出された挙動に基づいてその数学的モデルを用いてキャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。すなわち、射出成形シミュレーション装置1は、樹脂31の一塊がキャビティ18に一瞬のうちに充填されたものとして、キャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。または、射出成形シミュレーション装置1は、樹脂31が分割された数個(5、6個)の塊がキャビティ18に数回に分けて充填されたものとして、キャビティ表面の温度分布と温度変化と熱変形とを算出する。
このような計算によれば、射出成形シミュレーション装置1は、金型のキャビティ表面の挙動を樹脂の挙動に独立して算出する場合より正確にキャビティ表面温度を算出することができ、かつ、樹脂の流動を具体的に模擬してキャビティ表面温度を算出することより計算が速い。
図1は、金型を示す斜視断面図である。 図2は、冷却水の温度変化を示すグラフである。 図3は、キャビティに充填される溶融樹脂を示す斜視図である。 図4は、本発明による射出成形シミュレーション装置の実施の形態を示すブロック図である。 図5は、金型と運転条件とを設計する動作を示すフローチャートである。 図6は、運転条件を検証する動作を示すフローチャートである。 図7は、金型のキャビティ表面の挙動をシミュレーションする動作を示すフローチャートである。 図8は、樹脂の挙動をシミュレーションする動作を示すフローチャートである。 図9は、金型を示す斜視断面図である。 図10は、冷却水の温度変化を示すグラフである。
符号の説明
1 :射出成形シミュレーション装置
2 :金型条件収集部
3 :金型シミュレーション部
4 :樹脂条件収集部
5 :樹脂シミュレーション部
10:金型
11:移動側金型
12:固定側金型
14:外型
15:内型
16:外型
17:内型
18:キャビティ
21:流路
22:流路
31:溶融樹脂
32:メルトフロント
33:ゲート
34:接触面

Claims (23)

  1. キャビティが形成される金型の金型形状と前記金型が加熱される加熱条件と前記金型が冷却される冷却条件とを収集する金型条件収集部と、
    前記金型形状と前記加熱条件と前記冷却条件とに基づいて、前記キャビティの表面温度を算出する金型シミュレーション部と、
    前記キャビティに射出充填される樹脂の性質を収集する樹脂条件収集部と、
    前記樹脂の性質と前記キャビティ表面温度とに基づいて、前記樹脂が前記キャビティに射出されたときの樹脂の挙動を算出し、
    前記樹脂の挙動に基づいてキャビティに射出された樹脂から成形される成形品の性状を算出する樹脂シミュレーション部
    とを具備する射出成形シミュレーション装置。
  2. 請求項1において、
    前記金型シミュレーション部は、前記樹脂の挙動に更に基づいて前記キャビティ表面温度を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  3. 請求項1において、
    前記金型シミュレーション部は、前記樹脂の挙動とは独立して前記キャビティ表面温度を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  4. 請求項1において、
    前記金型シミュレーション部は、樹脂の全量が、特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、前記キャビティ表面温度を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  5. 請求項1において
    前記金型シミュレーション部は、射出充填される樹脂の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、前記キャビティ表面温度を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
    前記金型シミュレーション部は、前記キャビティの表面が変形する変形量を更に算出し、
    前記樹脂シミュレーション部は、前記キャビティ表面の変形量に更に基づいて前記成形品性状を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  7. 請求項6において、
    前記樹脂シミュレーション部は、前記樹脂から前記キャビティ表面に加わる圧力分布を更に算出し、
    前記金型シミュレーション部は、前記圧力分布に更に基づいて前記変形量を算出する
    射出成形シミュレーション装置。
  8. キャビティが形成される金型の金型形状と前記金型が加熱される加熱条件と前記金型が冷却される冷却条件とを収集するステップと、
    前記金型形状と前記加熱条件と前記冷却条件とに基づいて、前記キャビティの表面温度を算出するステップと、
    前記キャビティに射出充填される樹脂の性質を収集するステップと、
    前記樹脂の性質と前記キャビティ表面温度とに基づいて、前記樹脂が前記キャビティに射出されたときの樹脂の挙動を算出し、
    前記樹脂の挙動に基づいてキャビティに射出された樹脂から成形される成形品の性状を算出するステップ
    とを具備する射出成形シミュレーションプログラム。
  9. 請求項8において、
    前記キャビティ表面温度は、前記樹脂の挙動に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  10. 請求項8において、
    前記キャビティ表面温度は、前記樹脂の挙動に独立して算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  11. 請求項8において、
    前記キャビティ表面温度は、樹脂の全量が、特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  12. 請求項8において
    前記キャビティ表面温度は、射出充填される樹脂の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  13. 請求項8〜請求項12のいずれかにおいて、
    前記キャビティ表面が変形する変形量を算出するステップを更に具備し、
    前記成形品形状は、前記変形量に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  14. 請求項13において、
    前記樹脂から前記キャビティ表面に加わる圧力分布を算出するステップを更に具備し、
    前記変形量は、前記圧力分布に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーションプログラム。
  15. キャビティが形成される金型の金型形状と前記金型が加熱される加熱条件と前記金型が冷却される冷却条件とを収集するステップと、
    前記金型形状と前記加熱条件と前記冷却条件とに基づいて、前記キャビティの表面温度を算出するステップと、
    前記金型に射出充填される樹脂の性質を収集するステップと、
    前記樹脂の性質と前記キャビティ表面温度とに基づいて、前記樹脂が前記キャビティに射出されたときの樹脂の挙動を算出し、
    前記樹脂の挙動に基づいて、キャビティに射出された樹脂から成形される成形品の性状を算出するステップ
    とを具備する射出成形シミュレーション方法。
  16. 請求項15において、
    前記キャビティ表面温度は、前記樹脂の挙動に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  17. 請求項15において、
    前記キャビティ表面温度は、前記樹脂の挙動に独立して算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  18. 請求項15において、
    前記キャビティ表面温度は、樹脂の全量が、特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  19. 請求項15において
    前記キャビティ表面温度は、射出充填される樹脂の全量を複数に分割し、分割した量の各々が、それぞれ特定の時刻に、一瞬に充填されると樹脂充填工程をモデル化し、算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  20. 請求項15〜請求項19のいずれかにおいて、
    前記キャビティ表面が変形する変形量を算出するステップを更に具備し、
    前記成形品形状は、前記変形量に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  21. 請求項20において、
    前記樹脂から前記キャビティ表面に加わる圧力分布を算出するステップを更に具備し、
    前記変形量は、前記圧力分布に更に基づいて算出される
    射出成形シミュレーション方法。
  22. 請求項15〜請求項21のいずれかに記載される射出成形シミュレーション方法を実行するステップと、
    前記成形品形状が不適切であるときに、前記金型形状を変更するステップと、
    前記成形品形状が適切であるときに、前記金型形状を満足する本物の金型を製造するステップ
    とを具備する金型製造方法。
  23. 請求項15〜請求項21のいずれかに記載される射出成形シミュレーション方法を実行するステップと、
    前記成形品形状が不適切であるときに、前記加熱条件と前記冷却条件とを変更するステップと、
    前記成形品形状が適切であるときに、前記金型形状を満足する本物の金型を用いて前記加熱条件と前記冷却条件とを満足するように射出成形するステップ
    とを具備する射出成形方法。
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