JP2006167662A - 低融点飽和ポリエステルで被覆された金属撚線とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、鋼撚線に直接塗装が実行でき、ピンホール等の傷がなく外表面が完璧に飽和ポリエステル被覆された撚線の製造方法を提示すると共に、耐腐食性及び耐候性が高いだけでなく、特に素材の金属撚線の柔軟性を損なわず、曲げに強く、耐久性に優れた熱可塑性の飽和ポリエステル被覆の撚線を提供することにある。
【解決手段】
本発明の金属撚線被覆方法は、使用する低融点飽和ポリエステルの融点を越える200℃〜250℃に金属撚線の表面を加熱する工程と、該加熱された金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を塗布する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うようにした。
【選択図】 図3

Description

本発明は塩害や種々の腐食条件の厳しい場所でも防食性に優れた、飽和ポリエステル樹脂系の粉体塗料で被膜された鋼やステンレス等の鉄材のみならずアルミニウム、銅及びその合金撚線の製造方法、及び、それによって製造された飽和ポリエステル樹脂系の粉体塗料で被膜された金属撚線に関する。
鋼撚線等の従来の表面処理は亜鉛メッキを施しただけの製品が主であった。そのため耐食性が低く悪条件下では長期使用は期待出来ないという大きな問題をもっていた。近年この問題を解決するものとして、種々の製品が製造提示されている。その1つは金属撚線の1本1本にエポキシ樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニール等の粉体塗装でこれを被膜し、その後これを撚って所定の製品を得る方法である。撚線には単純な7本撚りもあるが、21本、35本など多数の線が集合されており、撚線を更に複数本撚って形成したものもある。この加工方法はその線の数だけ個々に被覆加工を行わなければならないため、その数の多い撚線の加工には手間と時間が掛かって高コストとなってしまう。また、被覆処理した線を撚るという工程が続くため、より大きな力を必要とされ、せっかく被覆処理した塗装面に傷が付いてしまうという重大な問題をもっている。
また、別の方法として特許文献1に示されているように、すでに撚り終えたロープ等を強力な力で再びより戻して線と線とに空間を作りそこへ粉体塗料で塗装処理し、その後又撚りかえすという方法で製造する方法も提示されている。この加工方法も鉄線の数が多くなればなるほど線間に空間を作ることが厄介となり、被覆を終えた縁を再度撚るという作業には更に大きな力が必要となる。その為塗装が傷つき又剥がれを生じるということは避けがたい。従って、最終的に傷の補修をせねばならないが工程が増えコストが嵩むだけでなく、製品の品質が落ちて問題である。この方法では7本撚り程度のものにしか適用出来ない。
上記の問題を踏まえ、撚線をほぐすことなくそのままの状態で被覆することが想到され、特許文献2にその方法が提示されている。その加工工程は図16に示されるように、線材を構成する素線は、まず前処理装置11として、ショットブラストあるいは化成処理装置により表面処理が施される。次に、高周波加熱などの加熱装置12により、次工程でプラスチックの粉体が溶融、付着するために必要な温度まで加熱する。このときの加熱温度は、用いるプラスチックの種類により適宜設定する。加熱された素線は、塗装装置13のところでその表面にプラスチック被覆がなされる。この塗装は、流動浸漬粉体塗装、静電粉体塗装等の粉体塗装によるもので、素線の撚り目が外表に現れるように被覆層を形成する。その後、水冷等の冷却装置14により前記プラスチック被覆層を養生、硬化させる。この硬化を行った後、この発明ではショットブラスト装置15により吹き付けを行い、プラスチック被覆層表面に肌荒れを起こして多数の凹凸を形成するようにしている。これはプレストレストコンクリート構造物等に使用される耐食性のPC鋼撚線を想定したものでモルタルなどとの付着性を高めるための処理である。この発明はプラスチック被覆材としてエポキシ樹脂が好適とされるが、ポリエステル樹脂などでもよいと記載されている。
しかし、上記の製造方法は熱硬化性樹脂を使用する被覆加工である。このため、樹脂として不飽和ポリエステルを採用してこの製造方法で鋼撚線の被覆を行った場合、固い被覆となり撚線を曲げることが困難となる。鋼撚線はドラムに巻き付けたり、使用に際して曲げを必要とすることがあるが、この撚線を強い力で曲げると被覆が傷ついたり、剥離したりしてしまうという重大な欠陥を有することになる。
そこで、本発明者等は先に、鋼撚線に直接塗装が実行でき、ピンホール等の傷がなく外表面が完璧に飽和ポリエステル被覆された撚線の製造方法を提示すること、また、その製造物として耐腐食性及び耐候性が高いだけでなく、所定の曲げに強く、耐衝撃性に優れた熱可塑性の飽和ポリエステル被覆の撚線を提供することを目的とし、金属撚線の表面を熱可塑性飽和ポリエステル樹脂の溶融点230〜240℃以上に加熱する工程と、該加熱された金属撚線の表面に前記樹脂の粉体を塗布する工程とを踏む金属撚線の被覆方法を提示し、特願2004−314058号として特許出願した。この発明の金属撚線の被覆方法は、目的課題を効果的に解決すると共に金属撚線に直接被覆加工を施すものであるから、如何に多数の線を撚った製品でも1回の工程で被覆加工をするので量産が可能であり又安価に製品を得ることができるという画期的な効果を有するのであるが、被覆加工を施すことによって、金属撚線の柔軟性がやや損なわれるという現象を伴う。ドラムに巻き込む等の場合であれば全く問題とならないが、曲げ伸ばし動作を伴うような金属撚線の用途によっては、金属撚線の柔軟性が損なわれることは好ましくない場合があり、耐腐食性や耐摩耗性に優れ機械疲労が少ないだけでなく金属撚線の柔軟性を損なうことのない被覆が求められている。
特開平9−57382号公報 「防食被覆された鋼撚り線の製造方法」 平成9年3月4日公開 特開平5−111912号公報 「PC鋼撚り線及びその製造方法」 平成5年5月7日公開 特開平11−106701号公報 「粉体塗料、その塗装方法、および塗装金属製品」 平成11年4月20日公開
本発明が解決しようとする課題は、鋼撚線に直接塗装が実行でき、ピンホール等の傷がなく外表面が完璧に飽和ポリエステル被覆された撚線の製造方法を提示すると共に、耐腐食性及び耐候性が高いだけでなく、特に素材の金属撚線の柔軟性を損なわず、曲げに強く、耐衝撃性に優れた熱可塑性の飽和ポリエステル被覆の撚線を提供することにある。
本発明の金属撚線被覆方法は、使用する低融点飽和ポリエステルの融点を越える200℃〜250℃に金属撚線の表面を加熱する工程と、該加熱された金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を塗布する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うようにした。
また、本発明の他の金属撚線被覆方法は、金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を静電塗装する工程と、前記粉体が塗布された金属撚線の表面を前記飽和ポリエステルの融点を越える180℃〜230℃に加熱する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うようにした。
低融点飽和ポリエステルには熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体として末端カルボキシル基を25〜50当量/10g含むものを用いるようにした。
また、流動調整剤には高分散性シリカ、又はアルミニウムオキサイドが用いられ、流動調整剤の混入比率は被加工物である金属撚線の種類に応じて調整するようにした。
本発明の樹脂被覆金属撚線の被覆方法は、流動調整剤には高分散性シリカ、又はアルミニウムオキサイドを用いるようにした。
本発明の樹脂被覆金属撚線は、150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステルで被覆されるようにした。
また、その被覆樹脂には顔料、染料、及び紫外線防止剤、酸化防止剤、蓄光剤必要に応じて混入されるようにした。
本発明の金属撚線被覆方法は、使用する低融点飽和ポリエステルの融点を越える200℃〜250℃に金属撚線の表面を加熱する工程と、該加熱された金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を塗布する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うようにしたものであるから、被覆された撚線は撚線の柔軟性を損なわうことなく、飽和ポリエステルの特性である耐腐食性及び耐候性が高いだけでなく、所定の曲げに強く、耐衝撃性に優れたものを製造することが出来る。また、如何に多数の線を撚った製品でも1回の工程で被覆加工をするので量産が可能であり又安価に製品を得ることができる。
また、本発明の他の金属撚線被覆方法は、金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を静電塗装する工程と、前記粉体が塗布された金属撚線の表面を融点が180℃〜230℃に加熱する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うようにしたものであるから、静電塗装の量を加減することにより容易に薄い被膜を施すことが出来る。また、加工された被膜の素材は飽和ポリエステルであるから、上記の製造方法と同様な効果を得ることができる。
また、低融点飽和ポリエステルは従来の溶融点230〜240℃である飽和ポリエステルに較べ流動性の悪い性質を持つが、流動調整剤には高分散性シリカ、又はアルミニウムオキサイドが用いられ、従来の混合率(0.012%〜0.07%)より高い混合率(0.05〜0.1%)とすることで流動性を高め粉体塗装を可能とすることが出来る。流動調整剤の混入比率は被加工物である金属撚線の種類に応じて調整することになるが、粉体の流動性を高くすることにより静電塗装の際に、複雑な構造部分や細かい間隙にも粉体が入り込み緻密な被覆を形成することができる。
本発明の樹脂被覆金属撚線は、低融点飽和ポリエステルには固有粘度が0.5〜0.7であり、融点が150〜200℃である熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体で被覆されているが、その熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体としては末端カルボキシル基を25〜50当量/10g含むものを使用するため、末端カルボキシル基を含まないものと比較して一層金属撚線密着性が増す。
本発明の樹脂被覆金属撚線は、被覆する低融点飽和ポリエステル樹脂には顔料、染料、及び紫外線防止剤、酸化防止剤、蓄光剤を必要に応じて混入することが可能であり、その被覆樹脂に顔料、染料といった色素が含まれていればそれぞれに自然な色づけがなされるため、所望の色の製品を提供することが出来る。また、紫外線防止剤が混入されていれば野外に設置されても紫外線による劣化を受けることがない。酸化防止剤が混入されていれば長期使用においても酸化による劣化を防止することが出来る。蓄光剤が混入されていれば暗闇でも蛍光・燐光によってその存在を示す機能を備えることが出来る。そして、これらが複数含まれたものであれば、それらの機能を併せ持つものが提供できる。
本発明で使用される固有粘度が0.5〜0.7であり、融点が150〜200℃である熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体である低融点飽和ポリエステル自体は新規物質ではない。防食性に優れた金属表面被覆層を形成する粉体塗料であって、もともとは野外で実施されることの多い溶融法でも塗装が可能となる低溶融点という物性を備えた飽和ポリエステルとして開発されたものである(特許文献3参照)。飽和ポリエステルは耐腐食性及び耐候性が高いだけでなく、所定の曲げに強く、耐衝撃性に優れた特性を備えたものである。この固有粘度が0.5〜0.7であり、融点が150〜200℃である熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体である低融点飽和ポリエステルは、そもそも融点を低くするということを目的に開発された粉体塗装材料であるが、本発明者等はこの低融点飽和ポリエステルの被覆層が柔軟性に富んだものであるということを発見し、その知見に基づいて本発明に想到したものである。
柔軟性に富んだ被覆樹脂としては塩化ビニールなどの素材が知られているが、塩化ビニールは金属との密着性が悪く、境界面に接着剤を介して接合しなければならないし、経年劣化や耐衝撃性に問題があるだけでなく、塩素を含んだ樹脂として後処理の問題があり環境面から素材としても敬遠される傾向にある。その点、飽和性ポリエステルは金属との密着性、耐候性に優れ、経年変化も少ないため被覆材として好適である。
本発明に係る低融点の飽和ポリエステルは次のようにして得ることができる。すなわち、エチレングリコールとテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルとを反応原料として、230℃で反応させ、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートとし、これを三酸化アンチモンを触媒とし、280℃の真空下で反応させて熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体を得る。この重合体の固有粘度は0.65であり、融点は180℃であった。これを粉体塗料として用いる。また、金属表面との密着性を高めるために、重合反応を途中で停止させ、未反応の末端カルボキシル基を残存させた熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体を得るようにしてもよい。因みにこの方法で製造した重合体の固有粘度は0.65であり、融点は180℃であり、末端カルボキシ基を30当量/106g有していた。
本発明の方法の工程を図1にフローチャートとして示す。ステップ1としてまず固有粘度が0.5〜0.7であり、融点が150〜200℃である熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体である低融点飽和ポリエステル樹脂(以下、本発明の低融点飽和ポリエステル樹脂という。)のペレットを粉砕し、粉体状にする被覆加工の準備を行う。その際の粉体は80メッシユ以下で300メッシユ以上のものとするのが好ましい。これは粉体粒径でいえば5〜10μm程度もののである。ステップ2でこの粉体樹脂を高分散性シリカ、又はアルミニウムオキサイドの流動調整剤と混合し、粉体としての流動性を高めておく。次の工程は金属撚線に本発明の低融点飽和ポリエステル樹脂を被覆加工する工程であるが、厚めの被服を施す場合には、金属撚線はあらかじめ加熱しておかなければならない。すなわち、本発明の低融点飽和ポリエステル樹脂は150〜200℃で熔融することに対応させ、金属撚線は当該温度以上に加熱しておくことが必要とある。そこで、ステップ3の工程は金属撚線を200〜250℃に予熱処理する工程となる。そうした状態の下で、ステップ4での粉体樹脂を被覆加工する工程において粉体は加熱物体に直接接した粒子から熔融し又そこへ重なった粉体もその熱を受けて溶け、順次層を厚くして付着する。これを実行するには、静電塗装機によって吹きつける手法と流動浸漬法で粉体が浮遊している所を通過させる手法とが採用できる。所定時間ステップ4の工程を施してから取り出せば撚線表面に飽和ポリエステル樹脂が被膜された状態となってでてくるが、その際の時間と温度をコントロールすることにより、所望の膜厚を得ることができる。ステップ5でこれを冷却して飽和ポリエステル樹脂を固化し金属撚線表面に安定した被膜を完成させる。
さて本発明の特徴的な性質は被覆樹脂が柔軟性に富んでおり、金属撚線の柔軟性を損なわないという点である。今、樹脂被覆を施していない400μmφの線を19本撚った線を更に7本にして撚り6.3mmφとした鋼撚線(以下試料1という。)と、この鋼撚線に本発明者等が先に提示した溶融点が240℃の飽和ポリエステルで被覆したもの(以下試料2という。)と、本発明の溶融点が185℃の低融点飽和ポリエステル樹脂で被覆したもの(以下試料3という。)とを比較試験した結果を示す。図2は試料1の断面写真、図3が試料2の断面写真であり、図4が試料3の断面写真である。これらの写真からいずれの樹脂も金属撚線の凹凸表面をなだらかに囲んで被覆が施されていることが認められる。この被覆状態を顕微鏡の倍率を×100と×200と高めて観察した。図5が試料2の×100倍率の断面写真であり、図6が試料2の×200倍率の断面写真である。また、図7が試料3の×100倍率の断面写真であり、図8が試料3の×200倍率の断面写真である。図5と図6では樹脂被覆層の外表面とバックとの境界が写真でやや不鮮明であるが、金属線と樹脂との境界は隙間なく密に表面被覆がなされていることがはっきり観察できる。撚線となっている鋼線と鋼線との間にも樹脂が綺麗に浸透し、気泡の残留がない形態で完全に撚線表面に密着して固着していることが確認できる。図7と図8の試料3の写真からも金属線と樹脂との境界は隙間なく密に表面被覆がなされていることがはっきり観察できるし、撚線となっている鋼線と鋼線との間にも樹脂が綺麗に浸透し、気泡の残留がない形態で撚線表面に密着して固着していることが確認できる。このように加工製品の被覆状態においては大きな差は認められなかった。
次に柔軟性を示す曲げ強度試験の結果を示す。この試験でも樹脂被覆を施していない裸撚線を試料1、溶融点が240℃の飽和ポリエステルで被覆した撚線を試料2、本発明の低融点飽和ポリエステル樹脂で被覆した撚線を試料3として比較データを測定した。試料2の被覆層の厚さは250μm、試料3の被覆層の厚さは180μmとそれぞれの被覆層の厚さに若干の差があった。この厚みは加工時の撚線の移動速度等の設定により調整可能な事項である。試験装置は図9に示すものを用いて行った。即ち、間隔距離調整可能な一対の支持部の先端は2Rの形状となっており、この一対の支持部の中央部分に先端形状が5Rの荷重部を配置して上下方向に5mm/minの速度で駆動する機構を備えている。この加重部にはロードセルが配設されており、加重部に掛かる力を測定することが出来る。前記一対の支持部間隔を140mmにして20cmの長さのサンプル線材を載置して、荷重部を下方に30mm変位させると、線材は90°以上曲げられる。図10は試料1に対して荷重部を下方に30mm変位させたときの写真であり、図11は試料2に対して荷重部を下方に30mm変位させたときの写真、そして図12は試料3に対して荷重部を下方に30mm変位させたときの写真である。荷重部が0変位から30mm変位する間の荷重量をロードセルで測定し最大値を示したときの値と、その時の変位量とを表1に示す。
被覆されていない裸の撚線(試料1)では、19.50mm変位したときに最大荷重を示し、その値は88.97Nであり、溶融点が240℃の飽和ポリエステルで被覆したもの(試料2)では、14.92mm変位したときに最大荷重を示し、その値は176.0Nと約倍の荷重が掛かっている。この溶融点240℃の飽和ポリエステルで被覆したことにより、撚線は固くされ、曲げ難くなっていることが分かる。本発明の低融点飽和ポリエステル樹脂で被覆した試料3では18.08mm変位させたときに最大荷重を示し、その値は124.6Nであった。被覆していない試料1に較べると1.4倍の荷重を要するものの、試料2の値の0.71倍程の荷重であり、金属撚線の柔軟性を大きく損なうものでないことが分かる。
この試料1,2,3の一端を固定し、他端部に515gの錘をつるしてその曲がり具合の差を写真に撮ったものを図13に示す。図のAにおいて手前側の大きく曲がった線材が本発明に係る試料3であり、奥側の曲がりの小さな線材が溶融点240℃の飽和ポリエステルで被覆した試料2であって、曲げ固さに大きな差があることが見てとれる。図のBの手前側の線材は樹脂被覆のない試料1であり、奥側が本発明に係る試料3の線材であって、ほとんど曲がり具合に差がないことが見てとれる。このように、本発明に係る低融点で飽和ポリエステル粉体の被覆によって撚線の柔軟性が大きく損なわれることがなく、金属撚線の曲げ加工に支障を来すことがないことが証明できた。
次ぎに、繰り返し曲げ運動による疲労試験を行った結果を示す。試験装置は先の曲げ強度試験に使用したものを用い、線材を90°以上曲げる30mmの変位を0.1Hzの繰り返し速度でサンプルに対し負荷するものとし、試料2と試料3に対しそれぞれ10回,20回,30回繰り返したものの変形具合を観察した。図14において左側3本の線材は試料2のもの、右3本は本発明に係る試料3の線材で、それぞれ左から10回,20回,30回の繰り返し曲げ試験を行ったものである。残留変形は曲げ固さが大きい試料2の方が大きく、本発明に係る試料3では小さいことが見てとれる。曲げ部分に剥離や亀裂の発生などはいずれのサンプルからも発見されず、疲労を観察することはなかった。ただし、この試験では繰り返し曲げ運動の際に支持部の先端部と試料線材の被覆外表面とは摩擦を繰り返すことになるため、30回繰り返した試料3の被覆外表面には摩耗剥離が観察された。このことから、本発明に係る低溶融点飽和ポリエステル樹脂の被覆は柔軟性において溶融点が240℃の飽和ポリエステルで被覆したものに勝るが、耐機械的摩擦には若干弱い性質があることが分かる。線材の柔軟性が求められるときには本発明の係る樹脂被覆が適し、柔軟性よりも機械的強度が求められる場合には試料2のものが適している。それぞれの特性に適した選択がなされることが望ましい。
金属撚線に熱可塑性飽和ポリエステルの被覆を施す本発明の方法を実施したシステム例を図15に示す。1は被覆前原料の金属撚線10が巻かれた供給側ドラムであり、8は樹脂被覆された金属撚線10の巻き取りドラムである。このシステムは金属撚線10供給側ドラム1から引き出され、巻き取りドラム8に巻き取られる経路の途上で順次必要な処理がなされる工程が配置されている。この実施例では亜鉛メッキを施した径400μmφの線を19本撚った線を更に7本にして撚り6.3mmφとした鋼撚線材を用意し、これをドラム1に巻きとってコーティング装置にセットする。2は汚れ錆取り装置で、鋼撚線10の洗浄をして付着した異物を除去し、表面をきれいにする。3は予熱炉で、鋼線材を熱可塑性飽和ポリエステルの溶融点150〜200℃以上にするため、高周波加熱方式で200〜250℃に加熱する。加熱された鋼撚線10は塗装装置4に引き込まれる。この塗装装置4は流動浸漬法で塗装を行うもので、槽内には流動調節剤(アルミニウムオキサイド)が0.07重量%混入された185℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体が収納され、槽の底部には粉体は通さないがエアーを通すメッシュが張られており、下方からエアーを吹き上げるような構造となっている。エアーが送り込まれると樹脂粉体は舞い上げられ、槽内で流動状態を作り上げる。この槽内を加熱された鋼撚線10が通過する過程で付着した樹脂粉体が溶融状態となり、撚線表面に広がり隙間無く濡らす。撚線の送り速度は槽内滞在時間に反比例する関係にあり、この送り速度と予熱炉での加熱温度が被覆層の厚さを左右することになる。
本実施例では塗装装置4を通過した後段に、後熱炉5が配置されており、表面に一応の樹脂被覆が形成されている撚線を再度加熱する。この加熱方式も高周波加熱で、この際の加熱温度は飽和ポリエステル樹脂が要する温度を越えた200〜250℃に設定する。この加熱により、被覆樹脂は再度溶融状態となり、例え鋼撚線と樹脂被膜の境界面に残留気泡があったとしても、この再度の浸漬によって、排除され境界面に完全な密着形態が実現される。6は冷却装置であって、この実施例では水冷が採用されている。この段階で冷却することにより、撚線表面を隙間無く覆った樹脂層は固化され、しっかりと安定して撚線表面を被覆することになる。7は乾燥機で、冷却用の水が残らないようにこの乾燥機を経ることで被覆表面を乾かす。以上の工程を経て完成された金属撚線10は巻き取りドラム8に巻き取られ、完成品となる。
上記のシステムを用いて製造した実施例を以下に示す。この際使用した塗装原料は低溶融点飽和ポリエステル系粉体塗料として有機溶剤難溶性を示す結晶性ポリエステルでGM−470(東洋紡商品銘柄)のペレットを80メッシュ以下に粉砕して粉体塗料としたものである。この物性は分子量が30×10で30℃における比重が1.28、ガラス転移温度が20℃、融点は185℃のものである。また、塗装の際に粉体塗料の流動性を高くするため、流動調整材として三塩化アルミニウムから製造されたアルミニウムオキサイドC(日本アエロジル社商品番号203−C)を0.07重量%混合した。粉体塗料のメッシュは80メッシュ以下であり、白色の顔料で着色した。
本発明の金属撚線に低溶融点飽和ポリエステル系樹脂の被覆を施す方法の工程を示すフローチャートである。 熱可塑性飽和ポリエステル樹脂で被覆する鋼撚線を切り出し断面で観察した顕微鏡写真である。 溶融点240℃の飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線を切り出し断面で観察した顕微鏡写真である。 本発明の溶融点185℃の飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線を切り出し断面で観察した顕微鏡写真である。 溶融点240℃の飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線切出し断面の100倍率顕微鏡写真である。 溶融点240℃の飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線切出し断面の200倍率顕微鏡写真である。 本発明の低溶融点飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線切出し断面の100倍率顕微鏡写真である。 本発明の低溶融点飽和ポリエステル樹脂で被覆した鋼撚線切出し断面の200倍率顕微鏡写真である。 曲げ試験に用いた試験装置を写した写真である。 被覆前の鋼撚線を90℃以上曲げた状態を写した写真である。 溶融点240℃の飽和ポリエステルで被覆した鋼撚線を90℃以上曲げた状態を写した写真である。 本発明の低溶融点飽和ポリエステルで被覆した鋼撚線を90℃以上曲げた状態を写した写真である。 試料1と試料2と試料3の鋼撚線に同じ荷重をかけたときの曲がり具合を比較する写真である。 90度以上の曲げを10回、20回、30回加えた試料2と試料3の鋼撚線を比較する写真である。 本発明に係る金属撚線に低溶融点飽和ポリエステルの被覆加工を実行するシステムを説明する図である。 熱硬化性樹脂を用いて金属撚線の被覆を実施する従来システムを説明する図である。
符号の説明
1 原料撚線供給ドラム 2 汚れ・錆とり装置
3 予熱炉 4 塗装装置
5 後熱炉 6 水冷装置
7 乾燥機 8 被覆撚線巻き取りドラム

Claims (6)

  1. 使用する低融点飽和ポリエステルの融点を越える200℃〜250℃に金属撚線の表面を加熱する工程と、該加熱された金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を塗布する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うと共に、被覆加工後も撚線の柔軟性が保たれることを特徴とする金属撚線の被覆方法。
  2. 金属撚線の表面に流動調節剤が混入された150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステル粉体を静電塗装する工程と、前記粉体が塗布された金属撚線の表面を前記飽和ポリエステルの融点を越える180℃〜230℃に加熱する工程とを踏み、塗布された樹脂粉体は溶融状態となって撚線表面を被うと共に、被覆加工後も撚線の柔軟性が保たれることを特徴とする金属撚線の被覆方法。
  3. 熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系重合体として末端カルボキシル基を25〜50当量/10g含むものを用いた請求項1又は2に記載の金属撚線の被覆方法。
  4. 流動調整剤には高分散性シリカ、又はアルミニウムオキサイドが用いられるものである請求項1乃至3のいずれかに記載の金属撚線の被覆方法。
  5. 150℃〜200℃の低融点で固有粘度が0.5〜0.7である飽和ポリエステルで被覆された金属撚線。
  6. 被覆樹脂には顔料、染料、及び紫外線防止剤、酸化防止剤、蓄光剤の内の1つ以上が含まれている請求項5に記載の金属撚線。
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