JP2007303030A - 防蝕耐蝕性pc鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 樹脂被覆を施した防蝕性PC鋼撚線を構成する鋼線に耐蝕性を附加してPC鋼材の長期耐久性を一層向上させる。
【解決手段】 鋼線に耐蝕性を附加する方法として含亜鉛樹脂被覆を施す。そのため撚線を構成する素線表面を予め伸線直後又は撚線直前の部位において清浄化して金属面を露出させたのち含亜鉛熱硬化性樹脂を塗布し、該塗膜の熱硬化反応を撚線ラインにおけるホット・ストレッチ処理に便乗させて高温高速で促進させて併行処理し、耐蝕性皮膜を形成して耐蝕性PC鋼撚線とする。該撚線を材料としてその上に既存の各種樹脂被覆を重ね防蝕耐蝕性PC鋼材とする。
【選択図】 図3
【解決手段】 鋼線に耐蝕性を附加する方法として含亜鉛樹脂被覆を施す。そのため撚線を構成する素線表面を予め伸線直後又は撚線直前の部位において清浄化して金属面を露出させたのち含亜鉛熱硬化性樹脂を塗布し、該塗膜の熱硬化反応を撚線ラインにおけるホット・ストレッチ処理に便乗させて高温高速で促進させて併行処理し、耐蝕性皮膜を形成して耐蝕性PC鋼撚線とする。該撚線を材料としてその上に既存の各種樹脂被覆を重ね防蝕耐蝕性PC鋼材とする。
【選択図】 図3
Description
本発明は、ピアノ線を撚り合わせて造られた通常のPC鋼撚線に樹脂被覆を施した防蝕性PC鋼材とその製造方法に関している。
PC(プレストレスト・コンクリート、Prestressed Concrete)とはその中に埋設されたピアノ線の張力により圧縮強化されたコンクリートである。橋梁等の大型構造物にはピアノ線が多数撚り合わされたPC鋼撚線が使用される。鋼撚線は通常そのままグラウト(接着用モルタル)を介してコンクリートの内部に張力状態で埋設される。グラウト作業に不備があると水、空気の浸透により腐蝕して破断に至る。より安全を期すには樹脂被覆された防蝕性PC鋼撚線が使用される。
コンクリート構造物の性能向上のため鋼撚線がコンクリート外部、空中に露出した構造で使用される場合がある。この場合グラウト及びコンクリートによる防護が無いので損傷を受け易く、腐蝕し易いと言う問題がある。特別の防蝕が不可欠であり厚肉の樹脂被覆がなされる。傷部から水、空気の浸透を防止するため被覆は個々の鋼線に密着させ連通空隙の発生を極力防止しているが必ずしも完全ではない。
上記問題の一解決策として加圧注入法(例えば特許文献1)があり、個々の鋼線表面により完全に樹脂を被覆し且つ間隙も充填して有効である。損傷を受けた場合、腐蝕は局所的に収まり易いが腐蝕自体は避けられないという問題が残る。又厚肉防蝕という方法が原料費をはじめコスト高である。
他の対策として鋼線に予め亜鉛メッキを施し、耐蝕性を附加した鋼撚線に樹脂被覆した鋼材が使用されることがある。この場合性能は充分であるがコストが極めて割高になる。その上溶融メッキ時の加熱による鋼線の強度低下もある。
特許文献2には、防蝕被覆をもつPC鋼材の製造方法として、被覆に当たって事前に表面清浄化が必要でありショット・ブラストにより酸化膜、付着潤滑剤等を除去すると開示されている。実際の製造では伸線後の表面は熱間圧延後の表面と異なり酸化膜が無いので剥離除去は起こらず且つ該処理では潤滑残滓は除去されにくいと言う問題が有る。
特許文献3には、防蝕・耐蝕PC鋼材の製造方法として(Zn粉末1+Al粉末1)約50%+樹脂約50%を混合・硬化させ、粉砕して粉体とした後PC鋼撚線の表面に粉体塗装する方法が開示されている。樹脂による防蝕と金属による耐蝕により損傷にも耐えるとされる。本方法の場合、導電性保持のため金属粉量比率が大きく樹脂の粘靱性が低下して損傷し易いと言う問題、腐蝕環境下で樹脂中の金属が虫食い状で消費され耐久性、強度とも問題であること、更に前処理として鋼線表面の付着物除去にブラスト処理を適用と開示されているが上記同様清浄化は充分ではない等の問題がある。
自動車車体下部の鋼材部品特に懸架バネにも同様の問題がある。積雪地域では凍結防止のため道路に塩化物が散布される。付着塩によりバネの腐蝕が促進される。対策として防蝕塗装、更に塗膜強化のためのリン酸化合物による下地処理又は耐蝕性強化のための金属亜鉛を混合したエポキシ系樹脂等の耐蝕塗装による下地処理の上に防蝕塗装ないし防蝕樹脂被覆がなされている。
犠牲腐蝕に基づく上記含亜鉛粉の樹脂皮膜による耐蝕強化は自動車用鋼部品には極めて効果的に利用されているが建設業界には知られず実用されていない。背景として知っていても耐蝕性に関して付着亜鉛量の少ない含亜鉛有機皮膜程度では多用されてきた亜鉛メッキ鋼材にはとても及ばないことが先入観としてあったと推測される。
上記含亜鉛粉塗装の工程例を説明する。鋼部品が個々に連続して製造ラインに供給され、ショット・ブラスト等による酸化膜除去、含亜鉛粉塗料槽への浸漬、引き上げ、送風加熱乾燥、仕上げ塗料槽への浸漬、引き上げ、送風加熱乾燥から成る。他の例は同様のラインで浸漬塗布の換わりに吹き付けによるものである。加熱に遠赤外線を使用することもある。当該工程はそのまま容易に鋼線及び鋼撚線製造工程に転用できるわけではない。鋼材の初期表面性状が異なる、表面清浄化や乾燥に許容される時間に制限がある、方法の異なる厚肉の樹脂被覆工程が後続する等製造上の問題も多々あり、所期の品質が得られかどうかも問題となる。
現行の撚線ラインにおいて撚線に含亜鉛粉塗装を適用する場合の第1の問題は、皮膜の乾燥がライン速度に追随できない。該塗装は指触できるまで約5分、半硬化には10分以上かかる。走行している鋼線、鋼撚線にこのような時間をかけることは生産性から実用にならない。急速乾燥・急速硬化の手段が不可欠となる。
第2の問題は皮膜の付着強度と導電性を確保するには鋼線表面の清浄化は不可欠であり、現行ライン速度に適合できる清浄化方法・速度が必要である。
第2の問題は皮膜の付着強度と導電性を確保するには鋼線表面の清浄化は不可欠であり、現行ライン速度に適合できる清浄化方法・速度が必要である。
撚線ラインではなく下工程の樹脂被覆ライン(通常表面清浄化工程は組み込まれていない)において下地として含亜鉛粉塗装を挿入する場合、直後の樹脂被覆に当たり押し出しや加圧注入による方法を適用すると下地の皮膜が未乾燥・未硬化であるから膜が破壊されると言う問題がある。表面清浄化及び塗装の熱硬化に充分な時間を組み込むとライン長は2倍以上になって改造に無理が生ずる。
特許文献4には、通常のPC鋼撚線に粉体樹脂被覆を施した防蝕性PC鋼撚線の製造方法が開示されている。本方法では個々の鋼線表面に樹脂を被覆し且つ間隙も充填するため2手段が組み込まれている。一つは樹脂と鋼線との密着性を良くするため鋼線表面を酸洗等により清浄化するがその際一時的に撚りを戻して処理することが開示されている。他は同様に撚りを戻した後に粉体を静電付着させ、均一に被覆を形成する。本方法により優れた被覆がなされるが問題は、単なる防蝕被覆だけでは既述同様に耐蝕性に欠ける。粉体塗装にありがちな微妙な含水性、通気・通水性等の問題解決のため厚肉被覆が必要となる。
他の問題として、PC鋼撚線は通常撚線後、張力下で温間加熱して歪みを導入するホット・ストレッチ処理がなされる。本処理によりリラクセーションと称する長期使用時の伸びが低下し本来の強度が活かされる。上記の被覆工程では一時的に撚りを戻すため鋼線に塑性加工歪みが入り、ホット・ストレッチ効果が消滅して低リラクセーションではなくなる。
以上述べたようにPC鋼材の耐腐蝕性を強化して構造物の長期安全性を一層向上させることが期待されているが、単純な防蝕用樹脂被覆では、損傷が生じた場合水、空気が内部に浸透し部分腐蝕が不可避である。被覆に先行して素線となるピアノ線に亜鉛メッキを加える方法では品質は充分だがコストが極めて割高である。
防蝕性樹脂を厚肉に且つ鋼表面と密着させ間隙にも充填させて被覆した場合防蝕性は改善されるが、損傷に伴う腐蝕に対しては不充分であり、又樹脂原単位が大きいという厚肉防蝕性鋼材本来のコスト高と言う問題がある。
防蝕性樹脂を厚肉に且つ鋼表面と密着させ間隙にも充填させて被覆した場合防蝕性は改善されるが、損傷に伴う腐蝕に対しては不充分であり、又樹脂原単位が大きいという厚肉防蝕性鋼材本来のコスト高と言う問題がある。
自動車部品の製造で適用されている含亜鉛粉耐蝕性皮膜を下地にして防蝕皮膜を構成する方法は耐久性が優れ且つコストも有利であるが、処理時間が長くて高速の伸線工程には当然、撚線工程、被覆工程のどの製造ラインにおいても速度が整合せず、生産性低下やライン長が過大になって実施困難と言う問題がある。
比較的低速の粉体樹脂被覆ラインでは上記皮膜工程を被覆工程に重ねて併行処理することができそうであるが粉体付着のための開索がリラクセーション性能を低下させる。
本発明は上記の従来の防蝕性PC鋼材の主として局所的腐蝕に起因する耐久性の問題を解決して長期安全性の向上を図ることを課題としている。もう一つの課題は許容コストで解決することである。そのため自動車部品で培われた防蝕・耐蝕技術を鋼線・撚線・被覆の製造工程に合理的に転用することができる方法を提供する。
第1の発明は、ピアノ線を素線として撚り合わせて撚線とし、ホット・ストレッチ処理を直結・後続させて低リラクセーションのPC鋼撚線を製造する方法において、各素線に対して予め伸線工程の直後において鋼線表面の付着物を除去して金属面を露出させておき、該素線を撚り合わせて鋼撚線とし、次ぎにホット・ストレッチ処理の入口部において該鋼撚線の表面に金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布し、次ぎに該鋼撚線を誘導加熱してホット・ストレッチ作用と塗膜の熱硬化反応とを同時・併行処理して耐蝕性樹脂皮膜を形成することを特徴とする耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
第2の発明は、ピアノ線を素線として撚り合わせて撚線とし、ホット・ストレッチ処理を直結・後続させて低リラクセーションのPC鋼撚線を製造する方法において、各素線が円錐面状に収斂して撚り合わされる部位において収斂の中間で平行部を形成し、該平行部において各素線表面の付着物を除去して金属面を露出させ、該素線を撚り合わせて鋼撚線とし、次ぎにホット・ストレッチ処理の入口部において該鋼撚線の表面に金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布し、次ぎに該鋼撚線を誘導加熱してホット・ストレッチ作用と塗膜の熱硬化反応とを同時・併行処理して耐蝕性樹脂皮膜を形成することを特徴とする耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
第3の発明は、第1又は第2発明に記載した方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線を直進走行させつつ該撚線上に加圧注入方式により熱可塑性の防蝕性樹脂を個々の鋼線の間隙を充満しつつ被覆することを特徴とする防蝕・耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
第4の発明は、第1又は第2発明に記載した方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線を直進走行させつつグラウト用遅れ硬化性樹脂又は潤滑材を該鋼撚線と被覆間に充満しつつ押出し方式により熱可塑性の防蝕性樹脂を被覆することを特徴とする防蝕・耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
第5の発明は、第1又は第2発明に記載した方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線を直進走行させつつ250℃以下の温度に誘導加熱し、一時的に弾性範囲内で撚りを戻すよう捻って鋼線間に間隙を設け、該撚線上に熱硬化性の粉体樹脂を静電付着させ、溶融させ、捻りを戻し、再度粉体付着・加熱して防蝕性被覆とすることを特徴とする防蝕・耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
第6の発明は、PC鋼撚線を直進走行させつつ表面の付着物を除去し、該鋼撚線を誘導加熱し、一時的に撚りを戻して鋼線間を離間させ、離間した温間の該鋼線群の表面に熱硬化性の粉体樹脂を静電付着・溶融させ、撚り形状を元の撚線に回復し、更に該粉体を堆積させ、再加熱と温間保持により付着粉体を溶融・平滑化させ、水冷して厚肉の防蝕性樹脂被覆を持つPC鋼撚線を製造する方法において、粉体付着の直前の部位において該鋼線表面に下地処理として金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布して塗膜を形成し、後続の被覆を形成する工程に該塗膜の熱硬化反応による被膜形成工程を包含させることを特徴とする防蝕・耐蝕性PC鋼撚線の製造方法である。
上記の発明の第1の効果として、厚肉樹脂被覆の防蝕性PC鋼撚線において、鋼線自体に亜鉛メッキ同様の耐蝕性が附加され、PC構造物の長期安全性が向上する。
第2の効果として、耐蝕性附加の効果により防蝕被覆厚を必要最小限に止め、高価な樹脂コストが削減される。
第3の効果として比較的低コストで上記処理が可能である。
第4の効果として粉体塗装方式の樹脂被覆に対しては、リラクセーション性能を低下させずに耐蝕性を附加させることにより防蝕性の多少の低下を補い、逆にリラクセーション性能の低下を許容する場合にはより防蝕・耐蝕性の大きいPC鋼材とすることができる。
第2の効果として、耐蝕性附加の効果により防蝕被覆厚を必要最小限に止め、高価な樹脂コストが削減される。
第3の効果として比較的低コストで上記処理が可能である。
第4の効果として粉体塗装方式の樹脂被覆に対しては、リラクセーション性能を低下させずに耐蝕性を附加させることにより防蝕性の多少の低下を補い、逆にリラクセーション性能の低下を許容する場合にはより防蝕・耐蝕性の大きいPC鋼材とすることができる。
以下実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は第1発明を実施する設備の前半の概略図である。材料としてピアノ線材1を伸線機2に供給する。該ピアノ線材1をダイス3と伸線釜4により数回引き抜き所定線径、所定強度のピアノ線5に仕上げる。該ピアノ線5を直結して後続する酸洗装置6に供給する。
該装置6は処理酸7と該酸を内蔵するタンク8とタンク内に浸漬されピアノ線を一時的に巻き取る巻き枠9と酸洗されたピアノ線を水洗・乾燥する水洗装置10、乾燥装置11から成る。該ピアノ線を巻き枠9に酸処理に必要な時間分だけ巻き、回転・走行させつつ処理酸により鋼線表面の付着物を除去し金属面を露出させ、巻き枠から引き出して水洗、乾燥した後ボビン12に巻取る。以上には特別の新規性は無い。
図1は第1発明を実施する設備の前半の概略図である。材料としてピアノ線材1を伸線機2に供給する。該ピアノ線材1をダイス3と伸線釜4により数回引き抜き所定線径、所定強度のピアノ線5に仕上げる。該ピアノ線5を直結して後続する酸洗装置6に供給する。
該装置6は処理酸7と該酸を内蔵するタンク8とタンク内に浸漬されピアノ線を一時的に巻き取る巻き枠9と酸洗されたピアノ線を水洗・乾燥する水洗装置10、乾燥装置11から成る。該ピアノ線を巻き枠9に酸処理に必要な時間分だけ巻き、回転・走行させつつ処理酸により鋼線表面の付着物を除去し金属面を露出させ、巻き枠から引き出して水洗、乾燥した後ボビン12に巻取る。以上には特別の新規性は無い。
図2はピアノ線を撚り合わせる撚線工程と、それに直結して後続するホット・ストレッチ工程を説明する概略側面図である。素線14となる酸洗されたピアノ線5が巻かれた例えば7個のボビン12を撚線機13に装着する。各素線14をボビン12より引き出し、中心線の周りにそれぞれ旋回させて捻り、撚線15に成形する。
次ぎに1対の巻取輪16から成る2台のキャプスタン17により撚線15に張力を作用させてストレッチ加工を施す。ストレッチ入口部に配置された誘導加熱装置19により該撚線15を約400℃に加熱し、ブルーイング処理を施す。張力下のブルーイングによりホット・ストレッチ処理となる。このとき該加熱装置の上流側に配置された塗装スプレイ18により該撚線15に金属亜鉛混合の急速熱硬化性のエポキシ系樹脂溶液を吹き付ける。
該樹脂はトルエン、シンナー等の溶剤により粘度、塗膜性、乾燥性等を適切に調整しておく。樹脂は加熱により粘性が低下するので粘性の大きい塗装液でも使用できる。エポキシ系樹脂は鋼との濡れ性が大きく粘性低下に伴い浸透性が強化され線間隙を充満して鋼線表面全体に均一性のある塗膜を形成する。また張力下の昇温に伴い撚線がわずかに絞られ鋼線間の接触位置と間隙が変化し塗膜は接触部も覆う。
該誘導加熱により塗膜は塗膜下面から加熱され下層から溶剤の乾燥、樹脂の溶着、樹脂の硬化が急速に進行する。ホット・ストレッチの温度条件は約400℃×約10秒である。当該温度は樹脂の熱硬化の適正温度を超えているが、時間が極めて短いので実用可能となる。数秒後水冷装置20により撚線14は冷却されホット・ストレッチ加工は完了する。樹脂皮膜の形成とホット・ストレッチの両工程は同時進行しほぼ同時終了する。
ホット・ストレッチの温度条件は多少融通が利き、他方樹脂性質は配合等により調節可能範囲が大きいので適切な配合により該条件と樹脂硬化条件とを整合させることができる。水冷により皮膜の表面粘着性は消去され、巻取機21により問題無く巻取られて耐蝕性低リラクセーションPC鋼撚線40に仕上げられる。
ホット・ストレッチの温度条件は多少融通が利き、他方樹脂性質は配合等により調節可能範囲が大きいので適切な配合により該条件と樹脂硬化条件とを整合させることができる。水冷により皮膜の表面粘着性は消去され、巻取機21により問題無く巻取られて耐蝕性低リラクセーションPC鋼撚線40に仕上げられる。
誘導加熱による塗膜の熱硬化は既述の如く下層から反応が進行するので通常より高温による高速反応が可能でしかも問題を起こしにくい。従って塗装条件を適切に設定すれば熱硬化反応を既存のホット・ストレッチ処理の時間内に包含させることができると言うことが本発明の重要な一要素である。即ち皮膜形成を既存の高速の撚線工程に組込可能としている。その結果設備費、操業費とも大きな負担無く本発明を実施することができる。
第2発明では素線として通常のピアノ線を使用する。撚線機13に組み込まれた酸洗装置22により鋼線表面の付着物を除去し金属面を露出させ、撚り合わせ・水洗・乾燥した後ホット・ストレッチ工程に進める。酸洗には特別の対策が必要である。即ち各素線が円錐面状に収斂して撚り合わされる部位の中間に平行部23を構成し、該平行部において酸洗装置22により各素線に酸を作用させる。撚り合わせ点に水洗装置24を配置し、乾燥装置25を後続させ、以下第1発明と全く同様である。平行部の形成も重要要素である。
図4(a)は第1発明又は第2発明の方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線40の横断面の構造を示す。撚線外周表面だけでなく間隙面にも又各鋼線接触部にも耐蝕性皮膜41が形成される。これは多少の隙間ができるよう鋼線直径が設計されていること、溶解・溶融樹脂に湿潤・浸透性があること、張力附加による塗膜のずれ等に支えられる。
撚線工程の線速は相当大きいので二つの問題が提起される。一つは耐蝕皮膜の膜厚を大きくすることが困難である。膜厚は通常20〜40μmである。亜鉛分ではそれらの1/2以下である。従って耐蝕性が制限されると言う危惧である。厚膜は乾燥に時間を要すること、厚膜の高速硬化は膜強度に問題が生ずること、未硬化・粘着性を残したまま巻取ると粘着による膜の破損、剥離が生じ易いと言う問題を付随する。本発明では通常の亜鉛メッキ線のような50〜100μmの厚膜は必要としない。なぜなら次工程の樹脂被覆を前提とし、防蝕に耐蝕を附加して総合的に耐久強化するので薄膜でも実用上問題は小さい。
他の問題は場合により撚線部での酸洗時間が不足する。その防止には撚合わせ平行部を充分長くすることが必要である。該部の長さが多少不足しても犠牲防蝕の作用はあるので後続の被覆方法と適合すると必要な耐蝕性を発揮させることができる。以下に述べる第3、第4、第5発明はその好例である。
第3発明では、含亜鉛の耐蝕性皮膜41を持つPC鋼撚線40を通常の加圧注入方式の被覆ラインに供給して直進走行させつつ熱可塑性の防蝕性樹脂を被覆し、防蝕・耐蝕性PC鋼撚線を製造する。加圧注入は周知・既存の方法・設備であるから構造図及び説明は省略する。本被覆方式の特徴は樹脂が大きな圧力により鋼線の間隙に確実に浸透して充填され、しかも鋼線の接触部にも被覆がなされる、連通性の空隙が発生しない。従って耐蝕性皮膜が厚膜でなくても又表面清浄化が完全無欠でなくても必要な防蝕・耐蝕性が発揮される。
図4(b)は第3発明の方法によって製造された防蝕耐蝕性PC鋼撚線43の横断面の構造を示す。防蝕被覆42が確実に充填される。本発明の効果により従来経験的に厚めに設計されていた被覆を合理的に削減することができる。
第4発明も第3発明と同様に第1発明又は第2発明による耐蝕性PC鋼撚線40に防蝕被覆を施すものである。該撚線40を通常の押し出し方式の樹脂被覆ラインに供給して直進走行させつつ熱可塑性の防蝕性樹脂からなる被覆48を耐蝕性PC鋼撚線40に間隙を以て形成し、該間隙に流動性のあるグラウト用の遅れ硬化性樹脂44を充満し、現場グラウト作業不要の防蝕耐蝕性PC鋼材45とする。グラウト用樹脂44は鋼線間隙に確実に充満し数週間から数ヶ月で硬化する。図4(c)は第4発明の方法によって製造された防蝕・耐蝕性PC鋼材の横断面の構造を示す。本発明の効果により被覆及びグラウト厚を削減することができる。上記において遅れ硬化性樹脂の替わりにグリース等の潤滑材を充満すると撚線と被覆が固着せず緊張附加時に容易に滑り、施工性が良い通称アンボンドPC鋼材とすることができる。
第5発明も第3、第4発明と同様に第1発明又は第2発明による耐蝕性PC鋼撚線40に防蝕被覆を施すものである。該撚線40を通常の粉体樹脂塗装による被覆ラインに供給して直進走行させつつ250℃以下の温度に誘導加熱し、一時的に弾性範囲内で撚りを戻して鋼線間に間隙を設け、該撚線上に熱硬化性の粉体樹脂を静電付着させ、溶融させ、撚りを元に収め、付着と再加熱・保持により溶融を重ねて防蝕性被覆とする。加熱温度はホット・ストレッチ温度より遙かに低いので鋼線の機械的性質に悪影響を及ぼさない。撚りの戻しは弾性内であるからリラクセーション性能の低下も無い。樹脂は撚線状態で付着するので個々の鋼線を完全に全面被覆することは困難であるが大部分覆うことができる。多少の空隙、間隙があっても亜鉛による耐蝕が作用して防蝕耐蝕性PC鋼材となる。
第6発明の実施例を図3に従って説明する。既存の粉体樹脂被覆ラインに効果的に耐蝕性皮膜を形成する工程が組み込まれる。樹脂被覆ラインに通常のPC鋼撚線31を供給する。鋼線表面には潤滑残滓等付着物がある。ピンチロール32により直進走行させ、開索機33により鋼撚線31の撚りを戻して鋼線群をかご状に離間させる。かご状鋼線群34を酸洗装置35により鋼線の表面に付着している伸線潤滑剤等の異物を除去し金属面を露出させ、水洗装置36により水洗する。次ぎに誘導加熱装置37により鋼線群を250℃以下に加熱し、清浄化した表面に塗装スプレイ38により金属亜鉛含有のエポキシ系塗料39を塗布し、静電粉体塗装室50に誘導する。塗膜は内面から加熱・乾燥が始まり昇温による軟化と熱硬化反応が併行し表面は粘着状になる。その上に熱硬化性の粉体樹脂51が付着する。付着した粉体は塗膜と融合しつつ鋼線の熱により溶融し被覆形成が始まる。撚りを回復した後更に付着を重ね再度加熱器52と保持炉53により加熱し保持して付着樹脂を溶融させ、表面張力により撚線表面に均一厚且つ平滑な被覆を形成する。下地の塗膜の硬化反応も進み耐蝕性、密着強度、破壊強度に優れた皮膜46が完成する。次ぎに水冷装置54により被覆層を冷却して表面粘着性の消去と被覆の強化を図る。皮膜、被覆とも硬化が完了し巻取機55により巻取られる。
図4(d)は第6発明の方法によって製造された防蝕耐蝕性PC鋼材の横断面の構造を示す。耐蝕皮膜46は鋼線表面全周に密着している。同様に防食被覆47も鋼線間、鋼線間隙に充満している。粉体樹脂被覆にありがちな微小な通気性、透水性、含水性、気孔等に起因する局所腐蝕に対しては含亜鉛樹脂被膜が効果的に対応して問題を解消する。本方法では撚線は弾性限を越えて撚りが戻されるのでホット・ストレッチ効果即ち低リラクセ−ションは消失する。状況に応じ第5発明の製品と使い分けるのが望ましい。
一般に被覆ラインは撚線ラインより低速であるから反応時間は確保し易い。従って前者に耐蝕性皮膜処理を組み込むことは無理ではなく、後者と比較して皮膜を厚くし易い有利性がある。その上粉体塗装を後続させる場合皮膜と被覆が無理なく融合し、厚い皮膜と被覆が安定する。第6発明により比較的厚膜の耐蝕性皮膜を容易に構成することができる。
本発明の方法では既存の防蝕被覆ラインを小改造して耐蝕皮膜と防蝕被覆をほぼ同時に形成することができる。本発明による強固で耐蝕性のある下地により従来の厚い被覆を合理的に削減することができる。
本発明の方法では既存の防蝕被覆ラインを小改造して耐蝕皮膜と防蝕被覆をほぼ同時に形成することができる。本発明による強固で耐蝕性のある下地により従来の厚い被覆を合理的に削減することができる。
以下、処理条件について捕捉説明する。
鋼線表面の清浄化に当たって、処理酸として硫酸、塩酸、リン酸等が使用され一長一短がある。有機溶剤も使用できる。溶剤として温脱脂液、シンナー系、トルエン系等がある。溶剤では脱脂はできるが伸線下地のリン酸塩皮膜残滓の除去は不足する。
含亜鉛導電性樹脂塗料としては自動車用鋼材には例えば商品名ゼッタールEP(大日本塗料株式会社)等が使用される。
鋼線表面の清浄化に当たって、処理酸として硫酸、塩酸、リン酸等が使用され一長一短がある。有機溶剤も使用できる。溶剤として温脱脂液、シンナー系、トルエン系等がある。溶剤では脱脂はできるが伸線下地のリン酸塩皮膜残滓の除去は不足する。
含亜鉛導電性樹脂塗料としては自動車用鋼材には例えば商品名ゼッタールEP(大日本塗料株式会社)等が使用される。
第3及び第4発明において、熱可塑性樹脂としてポリエチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系が強度、延靭性、価格の点で望ましい。第5及び第6発明において下地処理として熱硬化性樹脂としてエポキシ系が好ましいがエポキシ系に限定されない。反応時間は充分あるので他の樹脂も使用できる。被覆材についても同様である。
現在、厚膜の樹脂被覆を施した防蝕性PC鋼撚線が多用されている。該鋼撚線に本発明を適用すると、新たに鋼線自体の耐蝕性が附加されPC構造物の長期安全性が一層向上する。実施するに当たり既存のPC鋼撚線を製造する設備やPC鋼撚線に被覆を施す設備を流用できて小改造で製造可能とすることができ、コスト上の問題も小さい。
1:ピアノ線材 2:伸線機 3:ダイス 4:伸線釜 5:ピアノ線 6:酸洗装置 7:処理酸 8:タンク 9:巻き枠 10:水洗装置 11:乾燥装置 12:ボビン 13:撚線機 14:素線 15:鋼撚線 16巻取輪 17:キャプスタン 18:塗装スプレイ 19:誘導加熱装置 20:水冷装置 21:巻取機 22:酸洗装置 23:平行部 24:水洗装置 25:乾燥装置 31:鋼撚線 32:ピンチロール 33:開索機 34:かご状鋼線群 35:酸洗装置 36:水洗装置 37:誘導加熱装置 38:塗装スプレイ 39:エポキシ系塗料 40:耐蝕性鋼撚線 41:耐蝕被膜 42:防蝕被覆 43:防蝕耐蝕性鋼撚線 44:遅れ硬化樹脂 45:グラウト内在鋼撚線 46:耐蝕皮膜 47:粉体樹脂被覆 48:被覆 50:粉体塗装室 51:粉体樹脂 52:加熱装置 53:保温炉 54:水冷装置 55:巻取機
Claims (6)
- ピアノ線を素線として撚り合わせて撚線とし、ホット・ストレッチ処理を直結・後続させて低リラクセーションのPC鋼撚線を製造する方法において、各素線に対して予め伸線工程の直後において鋼線表面の付着物を除去して金属面を露出させておき、該素線を撚り合わせて鋼撚線とし、次ぎにホット・ストレッチ処理の入口部において該鋼撚線の表面に金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布し、次ぎに該鋼撚線を誘導加熱してホット・ストレッチ作用と塗膜の熱硬化反応とを同時・併行処理して耐蝕性樹脂皮膜を形成することを特徴とする耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
- ピアノ線を素線として撚り合わせて撚線とし、ホット・ストレッチ処理を直結・後続させて低リラクセーションのPC鋼撚線を製造する方法において、各素線が円錐面状に収斂して撚り合わされる部位において収斂の中間で平行部を形成し、該平行部において各素線表面の付着物を除去して金属面を露出させ、該素線を撚り合わせて鋼撚線とし、次ぎにホット・ストレッチ処理の入口部において該鋼撚線の表面に金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布し、次ぎに該鋼撚線を誘導加熱してホット・ストレッチ作用と塗膜の熱硬化反応とを同時・併行処理して耐蝕性樹脂皮膜を形成することを特徴とする耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載した方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線を直進走行させつつ該撚線上に加圧注入方式により熱可塑性の防蝕性樹脂を個々の鋼線の間隙を充満しつつ被覆することを特徴とする防蝕耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載した方法によって製造された耐蝕性PC鋼撚線を直進走行させつつグラウト用遅れ硬化性樹脂又は潤滑材を該鋼撚線と被覆間に充満しつつ押出し方式により熱可塑性の防蝕性樹脂を被覆することを特徴とする防蝕耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載した方法によって製造された耐蝕性つPC鋼撚線を直進走行させつつ250℃以下の温度に誘導加熱し、一時的に弾性範囲内で撚りを戻すよう捻って鋼線間に間隙を設け、該撚線上に熱硬化性の粉体樹脂を静電付着させ、溶融させ、捻りを戻し、再度粉体付着・加熱して防蝕性被覆とすることを特徴とする防蝕耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
- PC鋼撚線を直進走行させつつ表面の付着物を除去し、該鋼撚線を誘導加熱し、一時的に撚りを戻して鋼線間を離間させ、離間した温間の該鋼線群の表面に熱硬化性の粉体樹脂を静電付着・溶融させ、撚り形状を元の撚線に回復し、更に該粉体を堆積させ、再加熱と温間保持により付着粉体を溶融・平滑化させ、水冷して厚肉の防蝕性樹脂被覆を持つPC鋼撚線を製造する方法において、粉体付着の直前の部位において該鋼線表面に下地処理として金属亜鉛粉末を混合した導電性の熱硬化性樹脂塗料を塗布して塗膜を形成し、後続の被覆を形成する工程に該塗膜の熱硬化反応による被膜形成工程を包含させることを特徴とする防蝕耐蝕性PC鋼撚線の製造方法。
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JP5222424B1 (ja) * | 2012-08-02 | 2013-06-26 | 黒沢建設株式会社 | Pc鋼より線の防錆被膜形成方法及びpc鋼より線 |
WO2018074985A3 (en) * | 2016-10-18 | 2018-12-27 | Cemer Kent Ekipmanlari Sanayi Ve Ticaret Anonim Sirketi | PROCESS FOR PRODUCING ROPES USED IN CLIMBING GAMES BASED ON NETS OR ROPES |
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2006
- 2006-05-12 JP JP2006133492A patent/JP2007303030A/ja active Pending
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