JP2006161132A - 溶射用Ni基自溶合金粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐高温エロージョン摩耗性を向上させるために、硬度、高温下での硬度(高温硬度)、耐摩耗性、耐熱衝撃性(耐熱サイクル特性)、および耐食性に優れる溶射用Ni基自溶合金粉末を提供する。
【解決手段】 アトマイズ法により作製され、Ni基自溶合金の粒子内部に、粒径5μm以下のクロムカーバイドが均一に析出させられられている溶射用Ni基自溶合金粉末である。具体的には、前記Ni基自溶合金の組成は、2.5質量%〜4.5質量%のCと、2.0質量%〜4.0質量%のSiと、30.0質量%〜42.0質量%のCrと、1.5質量%〜4.0質量%のBと、0.5質量%〜2.0質量%のMoとを含み、残部がNiおよび不可避的不純物である。さらに、5.0質量%以下のFeを含みうる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、溶射用Ni基自溶合金粉末に関し、特に、アトマイズ法により作成される溶射用Ni基自溶合金粉末に関する。
予め金属を溶射し溶射皮膜を形成することにより、損傷を予防し、あるいは損傷部へ事後的に金属を溶射し溶射皮膜を形成することにより、損傷部を回復させている。この溶射は、例えば、当該部位に半溶融状態の金属粉末を吹き付け、当該部位表面に溶射皮膜を形成させるものであり、その簡便な作業性と硬質皮膜の形成が容易なことから、損傷対策の最も有力な手段の一つとして多用されている。
近時、発電設備のボイラーチューブなど、耐熱性、耐食性および耐摩耗性が求められる分野においても、前述した溶射皮膜の形成による損傷予防や損傷部の回復が適用されるようになってきている。
ちなみに、ボイラーチューブとは、火力発電所やゴミ焼却炉、製鉄所のコークス乾式消火設備などにおいて廃熱回収に用いられるものであり、チューブ外部に高温燃焼ガスを通過させる一方、チューブ内部に不活性ガスを通過させ、燃焼ガスの保有する熱を不活性ガスに移行させるために用いられるものである。なお、昇温された不活性ガスはボイラーに送られ、ボイラーで不活性ガスと水とが熱交換される。発生した高温で高圧の蒸気は発電機のタービンを回すために用いられる。
ボイラーチューブは、高温燃焼ガスによる腐食に加え、加熱された粉塵によるエロージョン摩耗を受けるため、耐熱性、耐摩耗性、および耐熱衝撃性が必要とされている。
ボイラーチューブの表面に溶射される材料としては、クロムカーバイド・ニッケルクロム(Cr32−NiCr)サーメットやNi基自溶合金(JIS SFNi4種、または5種)などが使用されている。
Cr32−NiCrやタングステンカーバイト・コバルト(WC−Co)などのサーメットは、微細で硬度および融点の高いCr32またはWC一次粒子と、そのバインダー的役割を担うNi−Cr合金やCoとから構成される。
このようなサーメットの粉末を製造するには、造粒−焼結法が多用されている。造粒−焼結法とは、WCやCr32などの数μm以下の一次粒子と、CoやNi−Cr合金などの粉末(バインダー)とを、溶媒中で混練してスラリー状とし、得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧して球形状とした後、溶媒を気化させ、焼結することにより粉末を得る。得られた粉末は、一次粒子が凝集結合した多孔質な二次粒子からなり、バインダーが溶融する温度で溶射が可能なため、高融点の元素を一次粒子として多量に添加できる反面、溶射皮膜の組成は、マトリックスとなるバインダー中に一次粒子が点在する不均一なものとなる。
こうしたサーメット粉末を用いて溶射皮膜を得るには、5μm〜53μm前後の微細な粒度範囲に整粒したサーメット粉末を、高速ガス炎溶射法、またはプラズマ溶射法などの溶射法により、高速で母材に衝突させる。得られる溶射皮膜は、緻密で耐摩耗性に優れたものとなる。
しかし、得られた溶射皮膜は、溶射時の衝突圧力により、サーメット粉末と母材との機械的結合を主とするため、自溶合金を用いて得た皮膜と比べ、粒子間結合力が低く、特に熱衝撃により、割れや剥離を生じやすいという問題がある。
一方、自溶合金粉末は、BやSiなどのフラックス成分を含むことを特徴としたNi基またはCo基の合金粉末であり、主として、原料を溶解炉で溶融して得た溶湯を、タンディッシュを介して、流量および流速を調整しつつ、高圧の水または不活性ガスと接触させ、粉砕および急速凝固させて、合金粉末を得る方法、いわゆるアトマイズ法で製造される。
この自溶合金粉を溶射した後、溶射部に熱を加えて再溶融処理を行うことにより、粒子間結合力が向上し、母材−皮膜界面に拡散層が形成される。このため、得られる溶射皮膜の皮膜密度が高くなり、密着強度(耐剥離性)、および耐衝撃性に優れる溶射皮膜を得ることができる。
再溶融処理が行われることからも明らかなように、従来、公知の自溶合金は耐熱性が低いことが課題の一つであるが、この耐熱性のさらなる向上を目的としたNi基合金としてNi−16Cr−4Si−4B−4Fe−2.4Cu−2.4Mo−2.4W−0.5C等が知られている。
しかしながら、公知の自溶合金粉末を用いて得た溶射皮膜では、高温下での硬度低下が大きく、そのため、適用される設備等において燃焼ガスの温度を低く抑える必要がある。前述した発電設備では、発電効率を向上させ、かつ、ダイオキシン発生を抑制するために、燃焼ガスの高温化および高圧化の要求があるが、従来の自溶合金粉末では該要求に応えられないという問題がある。
こうした問題を解決すべく提案されたものとして、特開平08−311630号公報に、Ni基自溶合金粉末に、WCを混合した材料が記載されている。
WCは、自溶合金との比重差により不均一分布とならないようにするため、WC−CoやWC−NiCrなどのサーメットの状態で、自溶合金粉末に近い粒径で混合される。得られた混合粉末を用いて形成された溶射皮膜は、自溶合金マトリックス中にWC系サーメット粒子が点在した状態を呈する溶射皮膜となる。この溶射皮膜では、WC系粒子の存在により耐摩耗性が通常の自溶合金よりも向上しているものの、耐熱性はマトリックスである自溶合金の特性を反映し、低い値となっている。
特開平08−311630号公報
本発明は上記の問題に鑑みて行われたものであり、耐高温エロージョン摩耗性を向上させるために、硬度、高温下での硬度(高温硬度)、耐摩耗性、耐熱衝撃性(耐熱サイクル特性)、および耐食性に優れる溶射用Ni基自溶合金粉末の提供を目的とする。
本発明の溶射用Ni基自溶合金は、CrおよびCを含むNi基自溶合金であって、アトマイズ法により作製され、該Ni基自溶合金の粒子内部に、粒径5μm以下のクロムカーバイドが均一に析出させられている。
本発明の溶射用Ni基自溶合金粉末は、Cr、CおよびNiを含む構成元素を所望比率で混合し、得られた混合物を溶解し、得られた溶融物を、アトマイズ法により、粒子内部に粒径5μm以下のクロムカーバイドを析出させることにより得られる。
具体的には、前記Ni基自溶合金の組成は、2.5質量%〜4.5質量%のCと、2.0質量%〜4.0質量%のSiと、30.0質量%〜42.0質量%のCrと、1.5質量%〜4.0質量%のBと、0.5質量%〜2.0質量%のMoとを含み、残部がNiおよび不可避的不純物であることが好ましい。
あるいは、前記組成は、2.5質量%〜4.5質量%のCと、2.0質量%〜4.0質量%のSiと、30.0質量%〜42.0質量%のCrと、1.5質量%〜4.0質量%のBと、0.5質量%〜2.0質量%のMoと、5.0質量%以下のFeを含み、残部がNiおよび不可避的不純物であることが好ましい。
さらに、該溶射用Ni基自溶合金粉末は、5μm〜30μm、5μm〜38μm、5μm〜45μm、15μm〜45μm、20μm〜53μm、45μm〜106μmおよび45μm〜125μmのいずれかから選択される粒度範囲に整粒することが好ましい。
本発明の溶射用Ni基自溶合金粉末を溶射し、再溶融処理して得られる溶射皮膜は、JIS SFNi4または5種、SFWC2種相当の自溶合金、Cr32−NiCrサーメットを用いて同様にして得られる皮膜と比較して、硬度、高温硬度、耐摩耗性、耐熱衝撃性(耐熱サイクル特性)、および耐食性のいずれもが、同等、またはそれ以上であり、優れた耐高温エロージョン摩耗性を有する。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、CrおよびCを含むNi基自溶合金をアトマイズ法により作製し、この合金粒子内部に粒径5μm以下の微細なCr32やCr73などのクロムカーバイドを均一に析出させることにより、この合金粉末を用いて得た溶射皮膜が、従来から公知の自溶合金粉末または自溶合金と、Cr32系サーメット、またはWC系サーメットとを混合して得られる粉末を用いて得た溶射皮膜と、同等以上の硬度、高温硬度、耐摩耗性、耐熱衝撃性、および耐食性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明において、クロムカーバイドの配合方法を、Cr32を一次粒子とするCr32−NiCrなどのサーメットとして、残部の自溶合金成分と混合するのではなく、構成元素を所望比率で混合し、得られた混合物を溶解し、得た溶融物を、アトマイズ法により、粒子内部に粒径5μm以下の微細なクロムカーバイドが析出したNi基自溶合金粉末を得る点に特徴がある。
本発明の溶射用粉末中には、クロムカーバイドが微細に析出しているため、溶射被膜中にはクロムカーバイドが、微細かつ均一に分散されており、被膜表面に占めるクロムカーバイドの面積比は、組成比(at%)に近くなっている。対して、クロムカーバイドをCr32−NiCrなどのサーメットとして残部の自溶合金との混合により添加した場合は、クロムカーバイドが、粗大かつ球状のサーメット粒子として存在するため、皮膜表面における露出量は少なく、被膜表面に占める面積比は、本発明よりも低くなる。この被膜表面におけるクロムカーバイドの面積比が高いほど、被膜特性は高くなると共に、後者の混合法では、マトリックス部分の被膜特性が、従来の自溶合金と同等(または、Cr、C量の低下により、従来を下回る)であるため、サーメット粒子との被膜特性の差異から、自溶合金マトリックスから優先的に摩耗や腐蝕などの損傷が生じ、これにより露出したサーメット粒子が、相手部品との接触により欠落するため、寿命についても短くなる。
こうして得た合金粉末を用いて溶射皮膜を形成すれば、得られた溶射皮膜は、従来と同等以上の硬度、高温硬度、耐摩耗性および耐食性を有し、優れた耐高温エロージョン摩耗性を有する。
本発明における構成成分について、以下に、それぞれの成分に係る限定理由を説明する。

Cの含有量は、2.5質量%〜4.5質量%が好ましい。
Cは、主にCrまたはMoと結合して、複炭化物を形成することにより、溶射皮膜の硬度、および耐摩耗性の向上に寄与すると共に、材料の融点を低下させ、再溶融処理を容易にする元素である。Cの含有量が2.5質量%未満になると、得られる合金粉の融点が高くなり、溶射して得られた溶射皮膜の再溶融処理が困難となる。また、得られる溶射皮膜がポーラスとなるばかりか、溶射皮膜中に晶出する複炭化物の量が少なくなり、十分な耐摩耗性が得られない。Cの含有量が4.5質量%を超えると、硬度が過度に高くなると共に、靭性が低下し、加工時や使用時にクラックが発生しやすくなる。
Cr
Crの含有量は、30質量%〜42質量%が好ましい。
Crは、Cと結合して複炭化物を形成し、また、Bと結合して複硼化物を形成して、溶射皮膜の硬度を高め、耐熱性、耐食性および耐磨耗性を著しく向上させる効果を持つ元素である。Crの含有量は、30質量%未満では、複炭化物や複硼化物の形成が不充分で、前記特性が充分に得られず、また、42質量%を超えると、得られる溶射皮膜の靱性が低下したり、融点が上昇したり、自溶性の低下をもたらしたりするとともに、加工面にブローホール等の欠陥を招き易くなる。
Si
Siの含有量は、2.0質量%〜4.0質量%が好ましい。
Siは、後述するBと共に、溶射用の自溶合金材料として重要な元素であり、再溶融処理時には、脱酸材として溶射皮膜中の酸化物や気孔を低減させて、耐衝撃性を向上させると共に、合金粉末に自溶性を付与する効果を持つ。加えて、マトリックス中に固溶して、得られる溶射皮膜の硬さや耐摩耗性の向上に寄与する。Siの含有量は、2.0質量%未満では、前記効果が充分に得られず、また、4.0質量%を超えると、硬くなりすぎて脆くなり、加工時や使用時にクラックが発生しやすくなる。

Bの含有量は、1.5質量%〜4.0質量%が好ましい。
Bは、前述のSiと同様、溶射用自溶合金材料にとって重要な元素であり、溶射後に行う再溶融処理により、溶射皮膜の耐衝撃性を向上させると共に、合金粉末に自溶性を付加する。加えて、CrおよびMoと結合して、Cr−Mo−B系複硼化物を形成して、溶射皮膜全体の硬度を高め、耐摩耗性の向上に寄与する。Bの含有量が1.5質量%未満では、前記複硼化物の形成量が少ないために、充分な効果が得られず、また、4.0質量%を超えると、複硼化物の形成量が過多となり、溶射皮膜の靭性が低下する。
Mo
Moの含有量は、0.5質量%〜2.0質量%が好ましい。
Moは、Crと同様、Cと結合して複炭化物を形成し、また、Bと結合して複硼化物を形成することにより、溶射皮膜の耐磨耗性を大幅に向上させる効果を持つ元素である。Moの含有量は、0.5質量%未満では、前記複炭化物および複硼化物の形成が不充分で、前記効果が充分に得られず、また、2.0質量%を超えても、さらなる効果の向上は大きく期待できず、却って溶射皮膜の靱性や合金粉末の自溶性の低下を招く。
Ni
Niは、本発明の耐熱・耐摩耗自溶合金材料のマトリックスを形成する元素である。
Fe
前記した組成の合金粉末の特性をより向上させるために、更にFeを添加することが可能である。Feを添加する場合には、Feの含有量は、5.0質量%以下となるようにすることが好ましい。
Feは、Niマトリックス中に固溶して、溶射皮膜全体の強度をより向上させる元素であり、この効果を目的として添加することが可能である。しかし、Feの含有量が、5.0質量%を超えると、得られる溶射皮膜の硬さが低下し、耐摩耗性の劣化をもたらす。
前述のように、本発明組成範囲内で調合された混合物は、いったん、溶解されて溶融物とされる。そして、例えばガスアトマイズ法や水アトマイズ法により、粉末とされる。これらのアトマイズ法では、アトマイズ条件により、具体的には溶融物と気体や液体との比率を変化させることにより、得られる粉末の粒度を調整することが可能であり、求める粒径の範囲で、粉末が得られる条件を、予め選定しておくことは、当業者が容易になし得ることである。また、得られた粉末を篩い分けして、選別して、溶射方法に適した粒度範囲とすることも、当業者が当然になし得ることである。
本発明の溶射用Ni基自溶合金粉末の分級粒度範囲は、使用する溶射ガンの種類により異なるが、パウダーガンおよびプラズマ溶射ガンを使用する場合には、45μm〜106μmまたは45μm〜125μmが適当であり、高速ガス炎溶射法および減圧プラズマ溶射法には、5μm〜30μm、5μm〜38μm、5μm〜45μm、15μm〜45μm、または20μm〜53μmが適切である。これらの粉末が、それぞれの粒度範囲よりも粗い場合には、溶射により緻密な溶射皮膜を形成させることが困難であり、硬度の低い溶射皮膜しか得られない。また、それぞれの範囲よりも粒度が微細である場合には、粉末の流動性が低下するとともに、受熱効率の高い微細粉末が溶融して、溶射ガンのノズル内面に堆積するために、溶射作業性が著しく損なわれる。
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、表1に示した組成となるように配合した原料を、高周波誘導真空溶解炉を用いて溶解した。得られた約1650℃の溶湯を、水アトマイズ法によって合金粉末にした。得られた合金粉末を、熱風乾燥後、振動式分級機にて45μm〜106μmに分級し、溶射用Ni基自溶合金粉末を作製した。得られた合金粉末の化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、得られた合金粉末を用いて、パウダーガンの一種である粉末式フレーム溶射ガンにより、SS400軟鋼板上に溶射して、厚さ3mmの溶射皮膜を得た。その後、燃焼炎トーチ(酸素−アセチレンバーナ)にて、溶射皮膜を1000℃以上に加熱し、再溶融処理を施した。このようにしてNi基自溶合金皮膜を形成し、さらに、得られた溶射皮膜の表面を、切削および研磨することにより平滑にし、試験片を作製した。得られた試験片の皮膜の硬度(室温)、高温硬度、耐摩耗性、耐熱衝撃性の測定結果を、表2に示した。
なお、硬度は、ロックウエル硬度計(Cスケール)とビッカース硬度計(荷重:1.0kgf)で行った。
高温硬度は、試験片を加熱し、ビッカース硬度計(荷重:0.3kgf)により、200℃、400℃、600℃で測定した。
摩耗試験は、スガ式往復運動摩耗試験機を用い、荷重:3.0kgf、往復回数(DS):1600回、相手材:SiC#320研磨紙とし、JIS H 8503(めっきの耐摩耗性試験方法)の第9項(往復運動摩耗試験法)に規定された試験方法に準じて、耐摩耗量(DS/mg)を測定した。
耐熱衝撃性は、熱サイクル試験で評価した。熱サイクル試験は、試験片を600℃の電気炉中に30分間保持した後、水中で急冷する熱サイクルを繰り返し、20回行い、1回ごとに溶射皮膜に生ずる亀裂や剥離の有無を、目視およびカラーチェックにより、観察した。
[実施例2〜4]
表1に示したように構成元素および配合割合を変えた以外は、実施例1と同様にして、溶射用Ni基自溶合金粉末を得た。化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[実施例5]
実施例1で得た溶射用Ni基自溶合金粉末を、篩い分けして20μm〜53μmの分級粒度範囲とした。
次に、高速ガス炎溶射法(燃料:ケロシン−酸素)により、SS400軟鋼板上に、厚さ1mmの溶射皮膜層を形成した。その後、燃焼炎トーチ(酸素−アセチレンバーナ)にて、溶射皮膜を1000℃以上に加熱し、再溶融処理を施した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[比較例1]
市販のJIS SFNi4種相当の溶射用自溶合金溶射用粉末を入手した。化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[比較例2]
市販のJIS SFNi5種相当の溶射用自溶合金溶射用粉末を入手した。化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[比較例3]
市販のSFWC2種相当の溶射用自溶合金溶射用粉末を入手した。化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[比較例4]
市販のCr32−NiCrサーメット溶射用粉末を入手し、20μm〜53μmの粒度範囲で分級した。化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、高速ガス炎溶射法(燃料:ケロシン−酸素)により、SS400軟鋼板上に、厚さ1mmの溶射皮膜層を形成した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
[比較例5]
質量比にて、Si:4.5質量%、Cr:13.0質量%、Fe:4.0質量%、B:3.5質量%、Mo:2.0%、残部:Niとなるように配合した原料を使用し、実施例1と同様にして45μm〜106μmの粒度範囲の合金粉末を得た。得られた合金粉末60質量部と、市販のCr32−NiCrサーメット溶射用粉末を45μm〜106μmの粒度範囲で分級したもの40質量部とを、混合機に入れ、1時間、撹拌混合した。得られた粉末の化学組成および分級粒度範囲を、表1に示した。
次に、実施例1と同様に、試験片を作製し、溶射皮膜の諸特性を評価した。得られた結果を、表2に示した。
Figure 2006161132
Figure 2006161132
以上の結果によれば、本発明による溶射用Ni基自溶合金粉末を使用して得られた溶射皮膜は、従来、使用されてきた公知の自溶合金溶射皮膜と、同等もしくは上回る高温硬度、耐摩耗性、耐熱衝撃性(耐熱サイクル性)を有し、耐高温エロージョン摩耗性を有することが明らかである。

Claims (5)

  1. CrおよびCを含むNi基自溶合金であって、アトマイズ法により作製され、該Ni基自溶合金の粒子内部に、粒径5μm以下のクロムカーバイドが均一に析出させられていることを特徴とする溶射用Ni基自溶合金。
  2. 2.5質量%〜4.5質量%のCと、2.0質量%〜4.0質量%のSiと、30.0質量%〜42.0質量%のCrと、1.5質量%〜4.0質量%のBと、0.5質量%〜2.0質量%のMoとを含み、残部がNiおよび不可避的不純物である請求項1に記載の溶射用Ni基自溶合金粉末。
  3. 2.5質量%〜4.5質量%のCと、2.0質量%〜4.0質量%のSiと、30.0質量%〜42.0質量%のCrと、1.5質量%〜4.0質量%のBと、0.5質量%〜2.0質量%のMoと、5.0質量%以下のFeを含み、残部がNiおよび不可避的不純物である請求項1に記載の溶射用Ni基自溶合金粉末。
  4. 5μm〜30μm、5μm〜38μm、5μm〜45μm、15μm〜45μm、20μm〜53μm、45μm〜106μmおよび45μm〜125μmのいずれかから選択される粒度範囲に整粒されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶射用Ni基自溶合金粉末。
  5. Cr、CおよびNiを含む構成元素を所望比率で混合し、得られた混合物を溶解し、得られた溶融物を、アトマイズ法により、粒子内部に粒径5μm以下のクロムカーバイドを析出させることを特徴とするNi基自溶合金粉末の製造方法。
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