JP2006148006A - 半導体レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】閾値電流を低減できると共に、可飽和吸収層を簡単に形成できる半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子は、傾斜n−GaAs基板101上に形成され、AlGaInP系材料からなる活性層106と、この活性層106上に形成されたp−GaAs可飽和吸収層109、このp−GaAs可飽和吸収層109上に形成されたp−GaInPエッチストップ層111とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】半導体レーザ素子は、傾斜n−GaAs基板101上に形成され、AlGaInP系材料からなる活性層106と、この活性層106上に形成されたp−GaAs可飽和吸収層109、このp−GaAs可飽和吸収層109上に形成されたp−GaInPエッチストップ層111とを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は半導体レーザ素子に関する。
CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、MD(ミニディスク)等の光ディスクは、光学的に情報を記録できる大容量の記録媒体として現在盛んに利用されている。
特にDVDは例えば長時間の映像の記録が可能で、DVD再生用レコーダは一般に普及してきている。DVDの再生を行う光ピックアップは、650nm帯の波長のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を備えている。
ところで、上記光ピックアップでは、光ディスクの光ディスク面に記録された情報を再生する時に、光ディスクのディスク面からの反射による戻り光や温度の変化によって強度雑音が生じて、信号の読み取りエラーが起こる。そのため、上記半導体レーザ素子の活性層に可飽和吸収領域を設けることにより、縦モードを多モード化させて、自励発振を起こすようにして、外乱からの影響を受けにくいレーザ発振状態にして低雑音化を起こすような工夫がなされている。
一般に、上記活性層の発光領域外で活性層の発光領域近傍に可飽和吸収領域を設けた半導体レーザ素子が製品化されているが、可飽和吸収領域での光閉じ込め量を制御するために、発光領域のエピ界面に対して水平/垂直方向の光の分布や閉じ込めを最適な領域に設計する必要があり、放射角や非点隔差が大きくなりやすく、また、自励発振特性を強めるために活性層を厚くする必要があるので、動作電流の低減にも限界がある。
こうした制約から逃れるために、特許文献1(特開平9−219558号公報)や特許文献2(特開平8−204282号公報)のように、活性層とは別に可飽和吸収層を設ける半導体レーザ素子が提案されている。
図6に、上記半導体レーザ素子の模式断面図を示す。
上記半導体レーザ素子では、15°オフした傾斜n−GaAs基板601上に、n−GaAsバッファ層602、n−GaInPバッファ層603、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下クラッド層604、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pガイド層605、活性層606、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pガイド層607、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層608およびp−GaInP可飽和吸収層609が順次形成されている。
上記可飽和吸収層609上には、リッジ形状のリッジ部613と、このリッジ部613の側方に位置するn−GaAs電流阻止層614とが形成されている。上記リッジ部613は、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5第2上クラッド層610、p−GaInP中間層611およびp−GaAsキャップ層612からなっている。
上記キャップ層612上には、p側オーミック電極615、Mo/Auスパッタ電極616およびAuメッキ電極617が順次形成されている。なお、上記基板601の裏面下にはn側電極618が形成されている。
上記構成の半導体レーザは、Auメッキ電極617がサブマウントに対向するようにサブマウントに実装される。そして、上記サブマウントに実装させた半導体レーザ素子は所定のステムに実装される。
ところで、上記半導体レーザ素子が自励発振特性を得るためには、可飽和吸収層609のキャリア密度に対する利得特性の傾きが大きいことが要求されるが、可飽和吸収層609の材料のGaInPではその傾きが小さく、吸収が飽和するのに注入すべきキャリアの量が多い。したがって、上記半導体レーザ素子では、閾値電流が増加してしまうという問題がある。
また、上記可飽和吸収層609は、発振光を吸収するために基板601と格子整合するIn組成よりIn組成を大きくして、圧縮歪みがかかるような状態にする必要がある。しかしながら、上記可飽和吸収層609の歪み量は層厚や組成の微妙な変化で変わり、その歪み量の変化は価電子帯の縮退状態に影響を与え、最終的に利得特性が変化するので、可飽和吸収層609の形成は非常に困難であるという問題がある。
特開平9−219558号公報
特開平8−204282号公報
そこで、本発明の課題は、閾値電流を低減できると共に、可飽和吸収層を簡単に形成できる半導体レーザ素子を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の半導体レーザ素子は、
第1の導電型基板上に形成され、AlGaInP系材料からなる活性層と、
上記活性層上に形成され、GaAsまたはAlGaAsからなる可飽和吸収層と、
上記可飽和吸収層上に形成され、AlGaInP系材料からなるエッチストップ層と
を備えたことを特徴としている。
第1の導電型基板上に形成され、AlGaInP系材料からなる活性層と、
上記活性層上に形成され、GaAsまたはAlGaAsからなる可飽和吸収層と、
上記可飽和吸収層上に形成され、AlGaInP系材料からなるエッチストップ層と
を備えたことを特徴としている。
ここで、AlGaInP系材料とは、(AlXGa1-X)YIn1-YP(0≦x≦1,0≦y≦1)またはGaZIn1-ZP(0≦z≦1)を指す。
上記構成の半導体レーザ素子によれば、GaAsは、図7に示すように、注入キャリア密度に対する利得曲線の傾きが、GaInPに比べて大きく、光吸収が容易に飽和するので、注入キャリア密度が低くても、自励発振が起こる。したがって、上記活性層上にGaAsからなる可飽和吸収層を形成することにより、閾値電流を低減することができる。
また、上記活性層上にGaAsからなる可飽和吸収層を形成することにより、可飽和吸収層の層厚や組成が微妙に変化しても、可飽和吸収層の利得特性が大きく変化しない。したがって、上記可飽和吸収層の形成は簡単である。
また、上記活性層上にGaAsからなる可飽和吸収層を形成する場合、可飽和吸収層のバンドギャップはGaAs層の層厚を調整することで調整する。つまり、その場合、上記可飽和吸収層のバンドギャップは可飽和吸収層の層厚を変更することで調整できる。
また、上記活性層上にAlGaAsからなる可飽和吸収層を形成しても、活性層上にGaAsからなる可飽和吸収層を形成する場合と同様の効果は得られる。
また、上記活性層上にGaAsで可飽和吸収層を形成する場合に比べて、AlGaAsで可飽和吸収層を形成する場合の方が、光吸収が下げられるので、さらに内部ロスを減らすことができ、動作電流を下げることができる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記活性層およびエッチストップ層は歪み系半導体からなる。
ここで、歪み系半導体とは、引張り歪みまたは圧縮歪みが加えられている半導体を指す。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記可飽和吸収層の光閉じ込め係数は0.1%以上0.3%以下である。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収層の光閉じ込め係数を0.1%以上にすることにより、自励発振を生じさせることができる。
また、上記可飽和吸収層の光閉じ込め係数を0.3%以下にすることにより、可飽和吸収層の光吸収が大きくなり過ぎるのを防ぐことができる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長以上であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内である。
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長以上であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内である。
一実施形態の半導体レーザ素子では、
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長+1nm以上であり、かつ、上記レーザ光の発振波長+5nm以下であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内である。
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長+1nm以上であり、かつ、上記レーザ光の発振波長+5nm以下であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内である。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記可飽和吸収層は、層厚が10Å以上30Å以下のGaAs単層である。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記可飽和吸収層は、層厚が10Å以上50Å以下のAlxGa1-xAs単層(0≦x≦1)である。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収層はAlxGa1-xAs単層である場合、可飽和吸収層の層厚とAl混晶比xの調整とにより、可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長の値と可飽和吸収層の光閉じ込め係数とを調整することができる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記可飽和吸収層はGaAs層と可飽和吸収光ガイド層とからなる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記エッチストップ層は上記可飽和吸収層に隣接している。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記エッチストップ層を可飽和吸収層に隣接させることにより、エッチストップ層を可飽和吸収光ガイド層として機能させることができる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記可飽和吸収層はGaAs単層とGaInPエッチストップ層とからなる。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収層をGaAs単層とGaInPエッチストップ層とで構成する場合、p−GaAs単層の層厚とGaInPエッチストップ層のGa組成および層厚を調整することにより、可飽和吸収層のフォトルミネッセンスおよび光閉じ込め係数を調整することができる。この場合、上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は上記レーザ光の発振波長以上の値に調整するのが好ましい。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記活性層の電流注入部以外の部分上に形成された光閉じ込め電流阻止層を備える。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記光閉じ込め電流阻止層はGaAsからなる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記光閉じ込め電流阻止層は、上記活性層が出射するレーザ光に対して略透明な材料からなる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記光閉じ込め電流阻止層はAlInPからなる。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記光閉じ込め電流阻止層はSiO2膜である。
一実施形態の半導体レーザ素子では、上記SiO2膜はプラズマCVD法で形成されている。
本発明の半導体レーザ素子は、活性層上に、GaAsまたはAlGaAsからなる可飽和吸収層を形成することによって、可飽和吸収層が容易に飽和するので、注入キャリア密度が低くても、自励発振が起こる。したがって、上記半導体レーザ素子の閾値電流を低減することができる。
また、上記GaAsまたはAlGaAsからなる可飽和吸収層は、層厚や組成が微妙に変化しても、利得特性が大きく変化しない。したがって、上記可飽和吸収層の形成は簡単である。
以下、本発明の半導体レーザ素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態の半導体レーザ素子の模式断面図を示す。
図1に、本発明の第1実施形態の半導体レーザ素子の模式断面図を示す。
上記半導体レーザ素子は、15°オフした傾斜n−GaAs基板101上に順次積層されたn−GaAsバッファ層102、n−GaInPバッファ層103、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層104、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層105、MQW(多重量子井戸構造)を有する活性層106、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層107、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層108、p−GaAs可飽和吸収層109、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層110およびp−GaInPエッチストップ層111を備えている。
また、上記エッチングストップ層111上には、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第3上クラッド層112、p−GaInP中間層113およびp−GaAsキャップ層114からなるリッジ形状のリッジ部115が形成されている。このリッジ部115は、基板101の表面と平行な方向おいてn−GaAs電流阻止層116で挟まれている。つまり、上記リッジ部115の両側方には電流阻止層116が形成されている。
また、上記リッジ部115上には、Au/AuZn層からなるp側オーミック電極117が形成されている。そして、上記電極117上から電流阻止層116上に渡ってはMo/Auスパッタ電極118が形成され、この電極118上にはAuメッキ厚膜電極119が形成されている。これらの電極がp側電極として機能する。一方、上記基板101にはn側電極120が形成されている。
以下、上記半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、15°オフした傾斜n−GaAs基板101にすべきウエハ上に、MOCVD法(有機金属気相エピタキシャル成長法)にて、n−GaAsバッファ層102、n−GaInPバッファ層103、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層104、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層105、MQW(多重量子井戸構造)を有する活性層106、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層107、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層108、p−GaAs可飽和吸収層109、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層110、p−GaInPエッチストップ層111、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第3上クラッド層112にすべきp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層、p−GaInP中間層113にすべきp−GaInP層、および、p−GaAsキャップ層114にすべきp−GaAs層を順次形成する。
上記活性層106は、4層のGa0.49In0.51P井戸層と3層のun−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pバリア層とからなっている。上記井戸層の各厚みは50Åに設定されていると共に、バリア層の各厚みも50Åに設定されている。また、上記井戸層とバリア層とは交互に形成されて、井戸層のそれぞれは2つのバリア層で挟まれている。
次に、上記p−GaAsキャップ層114にすべきp−GaAs層上に、3〜4μm幅のライン状のSiO2マスクを形成した後、ドライエッチングにより、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層の途中まで所定のリッジ幅に加工して、さらに、ウェットエッチングにより、リッジ形状を整える。これにより、上記p−GaInPエッチストップ層111上に、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第3上クラッド層112、p−GaInP中間層113およびp−GaAsキャップ層114からなるリッジ形状のリッジ部115が得られる。
次に、MOCVD法により、リッジ部115の上方および側方に、n−GaAs電流阻止層116にすべきn−GaAs層を積層する。
次に、上記n−GaAs電流阻止層116にすべきn−GaAs層上に、フォトリソグラフィにより、リッジ部116の直上にライン状に窓が開いたレジストパターンを形成する。
次に、上記レジストパターンをマスクとし、アンモニア系のエッチャントを用いて、n−GaAs電流阻止層116にすべきn−GaAs層を下地層(p−GaAsキャップ層114)に対してエッチングが停止するように選択にエッチングする。これにより、上記n−GaAs電流阻止層116が得られ、p−GaAsキャップ層114の表面が露出する。
次に、上記レジストパターンおよびp−GaAsキャップ層114の表面に、Au/AuZn層を蒸着した後、レジストパターンを剥離する。そうすると、上記Au/AuZn層の不要な部分もレジストパターンと共に剥離して、リッジ部115の直上のみに位置するp側オーミック電極117が得られる。
次に、上記n−GaAs電流阻止層116およびp側オーミック電極117上にMo/Auスパッタ電極118を形成した後、このMo/Auスパッタ電極118上にAuメッキ厚膜電極119を形成する。
以上のような層および電極を有するウエハを100μm程度に研磨することにより、傾斜n−GaAs基板101を得た後、その傾斜n−GaAs基板101の裏面にn側電極120を形成する。
下表1に、上記半導体レーザ素子の各構成層の層厚を示す。
最後に、共振器長が350μmになるように、ウエハを複数のバーに分割して、各バーの端面に反射膜をコーティングした後、バーをチップ(半導体レーザ素子)に分割し、このチップをステム上に実装した後、特性を測定したところ、光出力が4mWであり、発振波長が658nmであり、動作電流が50mAであった。
そして、上記チップに対して戻り光量0.01〜10%の間での光出力4mWでのRIN(相対雑音強度)を測定したところ、25℃、70℃の温度条件に対して−130dB/Hz以下と良好な雑音特性であった。
また、上記チップに対して非点隔差を測定したところ、光出力4mWにおいて3μmと小さな値が得られた。
図2に、上記可飽和吸収層109の層厚(図2中では「SA層厚」と記載する。)と可飽和吸収層109の光閉じ込め係数Γsaとの相関を示す。より詳しくはn、図2中においては、第1上クラッド層108の層厚を0.08μmに設定した場合の上記相関を白丸(○)で示し、また、第1上クラッド層108の層厚を0.14μmに設定した場合の上記相関を黒丸(●)で示し、また、第1上クラッド層108の層厚を0.16μmに設定した場合の上記相関を白四角(□)で示している。
上記光閉じ込め係数Γsaは、自励発振強度と比例相関があり、図2中で光閉じ込め係数Γsaが、0.1%以上の矢印の範囲内の領域が、自励発振を起こす領域である。一方、上記光閉じ込め係数Γsaは、大きすぎると動作電流増加につながるので、0.3%以下にすることが望ましい。
また、上記可飽和吸収層下に形成するp−第1上クラッド層の層厚は、可飽和吸収層が活性層に近づきすぎると、可飽和吸収層での光閉じ込め係数が大きくなるので、可飽和吸収層を1原子層(5.65Å)以下に薄くしなければならず、安定に形成できないので、0.08μm以上が望ましく、逆に可飽和吸収層を活性層から離し過ぎるとΓsaを大きくするために、可飽和吸収層の層厚を厚くする必要があるので、0.16μm程度が望ましい。
上記第1実施形態では、可飽和吸収層をGaAsで形成したが、可飽和吸収層をAlGaAsで形成してもよい。上記可飽和吸収層をAlGaAsで形成する場合、Al混晶比を調整することにより、バンドギャップによる吸収を減らせて、動作電流を低減できる。
図3に、AlGaAs可飽和吸収層(図3中では「SA層」と記載する。)のAl混晶比とその可飽和吸収層の光閉じ込め係数Γsaとの相関を示す。なお、図3中においては、上記可飽和吸収層の層厚を20Åに設定した場合の上記相関を白丸(○)で示し、また、上記可飽和吸収層の層厚を30Åに設定した場合の上記相関を黒丸(●)で示している。
図3から分かるように、上記可飽和吸収層のAl混晶比を大きく変えても、あまり可飽和吸収層の光閉じ込め係数Γsaは変わらないので、Al混晶比の調整のみで動作電流を調整できる。つまり、上記可飽和吸収層のAl混晶比を調節することにより、可飽和吸収層の光閉じ込め係数Γsaに悪影響を及ぼすことなく、動作電流を調整できる。ここでは、上記可飽和吸収層のPL(フォトルミネッセンス)波長を半導体レーザ素子の発振波長(658nm)よりも5nm大きく調整した。この場合、光出力4mWで、発振波長658nm、動作電流45mAであった。
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態の半導体レーザの模式断面図を示す。
図4に、本発明の第2実施形態の半導体レーザの模式断面図を示す。
上記半導体レーザ素子は、15°オフした傾斜n−GaAs基板401上に順次積層されたn−GaAsバッファ層402、n−GaInPバッファ層403、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層404、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層405、MQWを有する活性層406、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層407、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層408、p−GaAs可飽和吸収層409およびp−GaInPエッチストップ層410を備えている。
また、上記エッチストップ層410上には、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層411、p−GaInP中間層412およびp−GaAsキャップ層413からなるリッジ部414が形成されている。このリッジ部414は、基板401の表面と平行な方向においてn−GaAs電流阻止層415で挟まれている。つまり、上記リッジ部414の両側方には電流阻止層415が形成されている。
また、上記リッジ部414上には、Au/AuZnからなるp側オーミック電極416が形成されている。そして、上記電極416上から電流阻止層415上に渡ってはMo/Auスパッタ電極417が形成され、この電極417上にはAuメッキ厚膜電極418が形成されている。
以下、上記半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、15°オフした傾斜n−GaAs基板401にすべきウエハ上に、MOCVD法にて、n−GaAsバッファ層402、n−GaInPバッファ層403、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層404、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層405、MQWを有する活性層406、un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層407、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層408、p−GaAs可飽和吸収層409、p−GaInPエッチストップ層410、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層411にすべきp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層、p−GaInP中間層412にすべきp−GaInP層、および、p−GaAsキャップ層413にすべきp−GaAs層を順次形成する。
上記活性層406は、4層のGa0.49In0.51P井戸層と3層のun−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pバリア層とからなっている。上記井戸層の各厚みは50Åに設定されていると共に、バリア層の各厚みも50Åに設定されている。また、上記井戸層とバリア層とは交互に形成されて、井戸層のそれぞれは2つのバリア層で挟まれている。
次に、上記p−GaAsキャップ層413にすべきp−GaAs層上に、3〜4μm幅のライン状のSiO2マスクを形成した後、ドライエッチングにより、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層412にすべきp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層の途中まで所定のリッジ幅に加工して、さらに、ウエットエッチングにより、リッジ形状を整える。これにより、上記p−GaInPエッチストップ層410上に、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層411、p−GaInP中間層412およびp−GaAsキャップ層413からなるリッジ部414が得られる。
次に、MOCVD法により、リッジ部414の上方および側方に、n−GaAs電流阻止層415すべきn−GaAs層を積層する。
次に、上記n−GaAs電流阻止層415すべきn−GaAs層上に、フォトリソグラフィーにより、リッジ部414の直上にライン状に窓が開いたレジストパターンを形成する。
次に、上記レジストパターンをマスクとし、アンモニア系のエッチャントを用いて、n−GaAs電流阻止層415にすべきn−GaAs層を下地層(p−GaAsキャップ層413)に対してエッチングが停止するように選択にエッチングする。これにより、上記n−GaAs電流阻止層415が得られる、p−GaAsキャップ層413の表面が露出する。
次に、上記レジストパターンおよびp−GaAsキャップ層413の表面に、Au/AuZn層を蒸着した後、レジスパターンを剥離する。そうすると、上記Au/AuZn層の部分がレジストパターンと共に剥離して、リッジ部414の直上のみに位置するp側オーミック電極416が得られる。
次に、上記p側オーミック電極416およびn−GaAs電流阻止層415上に、Mo/Auスパッタ電極417を形成した後、Mo/Auスパッタ電極417上にAuメッキ厚膜電極418を形成する。
以上のような層および電極を有するウエハを100μm程度に研磨することにより、傾斜n−GaAs基板401を得た後、その傾斜n−GaAs基板401の面にn側電極419を形成する。
下表2に、上記半導体レーザ素子の各構成層の層厚を示す。
最後に、共振器長が350μmになるように、ウエハを複数のバーに分割して、各バーの端面に反射膜をコーティングした後、バーをチップ(半導体レーザ素子)に分割し、このチップをステム上に実装した後、特性を測定したところ、光出力が4mWであり、発振波長が656nmであり、動作電流が55mAであった。
そして、上記チップに対して戻り光量0.01〜10%の間での光出力4mWでのRINを測定したところ、25℃、70℃の温度条件に対して−130dB/Hz以下と良好な雑音特性であった。
また、上記チップに対して非点隔差を測定したところ、光出力4mWにおいて1μmと小さな値が得られた。
図5に、上記可飽和吸収層409の層厚(図5中では「SA層厚」と記載する。)と可飽和吸収層409の光閉じ込め係数との相関を白丸(○)で示す。この場合、上記可飽和吸収層409以外の層の層厚は上記表2の層厚に設定されている。また、上記第1実施形態の可飽和吸収層109の層厚と可飽和吸収層109の光閉じ込め係数Γsaとの相関を黒丸(●)で示す。この場合、上記可飽和吸収層109以外の層の層厚は上記表1の層厚に設定されている。
図5から分かるように、可飽和吸収層409の層厚が可飽和吸収層109の層厚と同じ場合、可飽和吸収層409の光閉じ込め係数Γsaは、可飽和吸収層109の光閉じ込め係数Γsaよりも大きい。上記Γsaとしては0.1〜0.3%が望ましい。よって、本実施形態では、可飽和吸収層409の層厚を15Åに設定している。
上記第1,第2実施形態では、リッジ部の側面をn−GaAs層で埋め込むロスガイド構造の半導体レーザ素子に本発明を適用していたが、リッジ部の側面を例えばn−AlInP層やSiO2膜等で埋め込むようなリアルガイド構造の半導体レーザ素子に本発明を適用してもよい。上記リアルガイド構造の半導体レーザ素子は、ロスガイド構造の半導体レーザ素子に比べて、埋め込み層(n−AlInP層やSiO2膜等)の材料を変えることで、導波ロスを低減できて動作電流を下げることが可能で、また、非点隔差を低減することができる。
101,401 傾斜n−GaAs基板
102,402 n−GaAsバッファ層
103,403 n−GaInPバッファ層
104,404 n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層
105,405 un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層
107,407 un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層
106,406 活性層
108,408 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層
109,409 p−GaAs可飽和吸収層
110 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層
111,410 p−GaInPエッチストップ層
112,411 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層
113,412 p−GaInP中間層
114,413 p−GaAsキャップ層
115,414 リッジ部
116,415 n−GaAs電流阻止層
117,416 p側オーミック電極
118,417 Mo/Auスパッタ電極
119,418 Auメッキ電極
120,419 n側電極
102,402 n−GaAsバッファ層
103,403 n−GaInPバッファ層
104,404 n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層
105,405 un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P下ガイド層
107,407 un−(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5P上ガイド層
106,406 活性層
108,408 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1上クラッド層
109,409 p−GaAs可飽和吸収層
110 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層
111,410 p−GaInPエッチストップ層
112,411 p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2上クラッド層
113,412 p−GaInP中間層
114,413 p−GaAsキャップ層
115,414 リッジ部
116,415 n−GaAs電流阻止層
117,416 p側オーミック電極
118,417 Mo/Auスパッタ電極
119,418 Auメッキ電極
120,419 n側電極
Claims (13)
- 第1の導電型基板上に形成され、AlGaInP系材料からなる活性層と、
上記活性層上に形成され、GaAsまたはAlGaAsからなる可飽和吸収層と、
上記可飽和吸収層上に形成され、AlGaInP系材料からなるエッチストップ層と
を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長以上であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内であることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収層のフォトルミネッセンス波長は、上記活性層が出射するレーザ光の発振波長+1nm以上であり、かつ、上記レーザ光の発振波長+5nm以下であり、
上記エッチストップ層は上記レーザ光に対して略透明であり、
上記エッチストップ層のフォトルミネッセンス波長は610〜625nmの範囲内であることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項2に記載の半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収層は、層厚が10Å以上30Å以下のGaAs単層であることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項3に記載の半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収層は、層厚が10Å以上50Å以下のAlxGa1-xAs単層(0≦x≦1)であることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項2に記載の半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収層はGaAs層と可飽和吸収光ガイド層とからなることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子において
上記エッチストップ層は上記可飽和吸収層に隣接していることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子において、
上記活性層の電流注入部以外の部分上に形成された光閉じ込め電流阻止層を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項8に記載の半導体レーザ素子において、
上記光閉じ込め電流阻止層はGaAsからなることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項8に記載の半導体レーザ素子において、
上記光閉じ込め電流阻止層は、上記活性層が出射するレーザ光に対して略透明な材料からなることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項8に記載の半導体レーザ素子において、
上記光閉じ込め電流阻止層はAlInPからなることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項8に記載の半導体レーザ素子において、
上記光閉じ込め電流阻止層はSiO2膜であることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項12に記載の半導体レーザ素子において、
上記SiO2膜はプラズマCVD法で形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
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