JP2006143534A - 珪酸カルシウム硬化体及びその製造方法 - Google Patents

珪酸カルシウム硬化体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 不燃性を保持しつつ、生産性に優れ、かつ強度及び靭性に優れた、スチレン−ブタジエン共重合体を含む珪酸カルシウム硬化体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体であって、前記珪酸カルシウム硬化体の比重が0.4〜0.8であり、かつ、前記珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上である。また、珪酸カルシウム硬化体は、少なくとも珪酸質原料と、石灰質原料と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを含む混合物に水を加えて混練するとともに、泡沫状態にした起泡剤を添加してスラリー組成物を得て、前記スラリー組成物を型枠に流し込み、養生して硬化させて得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スチレン−ブタジエン共重合体を含み、強度及び靭性に優れた珪酸カルシウム硬化体及びその製造方法に関する。
珪酸カルシウム系建材は、不燃性や寸法安定性に優れていることから、耐火被覆材、断熱材、外壁材、内装材等として建築分野で多用されている。その中でも特に、軽量気泡コンクリート(以下「ALC」という。)や繊維補強珪酸カルシウム板(以下「ケイカル板」という。)は、建築物の軽量化への要望の高まりから、ビルや住宅の外壁材、床材、間仕切り材、屋根下地材等として広範囲に使用されている。
これらのALCやケイカル板は、比重が0.4〜1.2程度であって、コンクリート製品や窯業系建材よりも軽量であるため、建築材料として有用であるが、コンクリート製品等よりも強度や靭性が劣るという欠点を有する。したがって、例えばALCでは、ALCの中央部に鉄筋で構成された網(ラス材)を配置し、強度や靭性を確保している。しかし、ラス材を配置することで、ALCの切断加工性が低下してしまい、さらに、切断面からラス材の端部が露出するため、ラス材が腐食してALCの長期耐久力も低下してしまう。
また、ケイカル板では、強度や靭性を確保するために有機合成繊維、ガラス繊維、パルプ繊維等の補強繊維が使用されている。繊維の添加量を増加させれば、強度や靭性は大きく改善するが、繊維を多量に添加するとスラリーの作業性を低下させるほか、スプリングバック等の好ましくない現象を引き起こし、表面平滑性や意匠性が低下してしまう。したがって、繊維の添加量が制限され、十分な補強効果を得ることが困難となる。また、繊維を使用した場合、使用する繊維が、ケイカル板の主成分「珪酸カルシウム」の合成条件である高温及び高圧下での養生に耐え得るものでなければならないことから、使用できる繊維の種類が限られ、材料面におけるコスト上昇の要因にもなっている。
このような状況の下、強度及び靭性を高めた珪酸カルシウム系建材として、特定のポリイソシアネート化合物を含浸させた珪酸カルシウム成形体が提案されている(特許文献1参照)。また、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスと珪酸カルシウム水和物とを混合した水性スラリーを加圧成形し、乾燥してなる強度特性の優れた珪酸カルシウム成形体が提案されている(特許文献2参照)。さらに、珪酸カルシウムと両性高分子化合物と水とを含有する水性スラリーを加圧成形し、乾燥してなる低比重、高強度珪酸カルシウム成形体が提案されている(特許文献3参照)。
特開平8−12466号公報 特公昭62−32148号公報 特開平9−295852号公報
しかしながら、特許文献1に記載の珪酸カルシウム成形体は、厚み方向に沿って樹脂の濃度勾配が発生し、表面部に可燃性樹脂が多く存在することになるため、建築材料に必須の不燃性が著しく低下するという問題点がある。また、成形体の表面部分が樹脂に覆われて緻密化するため、成形体の乾燥工程において、乾燥時間が延長し、生産性が劣るという問題点がある。
また、特許文献2及び特許文献3に記載の珪酸カルシウム成形体は、予めスラリーに強度を補うことを目的として樹脂を添加するため、珪酸カルシウム成形体中に樹脂を均質に存在させることが可能となるが、スラリーの成形方法が加圧成形であるため、スラリーの凝結・硬化時間が延長して生産性が劣るという問題点がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、不燃性を保持しつつ、生産性に優れ、かつ強度及び靭性に優れた、珪酸カルシウム硬化体及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の珪酸カルシウム硬化体は、珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体であって、前記珪酸カルシウム硬化体の比重が0.4〜0.8であり、かつ、前記珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上であることを特徴とする(請求項1)。
本明細書において「珪酸カルシウム硬化体」とは、珪酸カルシウム水和物を主成分とする硬化体であって、一般に軽量気泡コンクリート(ALC)や珪酸カルシウム板(ケイカル板)等を構成する。また、「珪酸カルシウム硬化体の表層部」とは、珪酸カルシウム硬化体の厚み方向に沿って表面から硬化体の厚みの約1/3までの厚さの部分のことをいう。
上記発明(請求項1)によれば、スチレン−ブタジエン共重合体を含むことで、軽量でありつつ、強度及び靭性に優れた珪酸カルシウム硬化体を得ることができる。また、珪酸カルシウム硬化体の製造過程における養生後の乾燥時間を短縮でき、珪酸カルシウム硬化体の生産性を向上することができる。
上記発明(請求項1)においては、珪酸カルシウム水和物100質量部に対して、スチレン−ブタジエン共重合体3.5〜25質量部を含むことが好ましい(請求項2)。
上記発明(請求項2)によれば、珪酸カルシウム水和物100質量部に対して、スチレン−ブタジエン共重合体3.5〜25質量部を含むことで、強度及び靭性に優れた珪酸カルシウム硬化体を得ることができる。
上記発明(請求項2)においては、前記珪酸カルシウム水和物の主成分が、トバモライトであることが好ましい(請求項3)。
上記発明(請求項3)によれば、温度等により物性が変化し難く、かつ強度及び靭性に優れた、珪酸カルシウム硬化体を得ることができる。
また、本発明の珪酸カルシウム硬化体の製造方法は、少なくとも珪酸質原料と、石灰質原料と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを含む混合物に水を加えて混練するとともに、泡沫状態にした起泡剤を添加してスラリー組成物を得て、前記スラリー組成物を型枠に流し込み、養生して硬化させることを特徴とする(請求項4)。
上記発明(請求項4)によれば、スラリー組成物を加圧成形することなく硬化させることができるため、スラリー組成物の硬化時間を短縮することができ、珪酸カルシウム硬化体の生産性を向上させることができる。また、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを均質に混合して調製したスラリー組成物を型枠に流し込み、硬化させることで硬化体が得られるため、得られた硬化体に可燃性樹脂の濃度勾配が発生せず、硬化体の不燃性の低下を防止することができる。
本発明によれば、生産性に優れ、かつ強度及び靭性に優れた珪酸カルシウム硬化体を得ることができる。また、本発明の珪酸カルシウム硬化体の製造方法によれば、珪酸カルシウム硬化体の生産性を向上させることができるとともに、得られる珪酸カルシウム硬化体の不燃性の低下を防止することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の珪酸カルシウム硬化体は、珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体であって、珪酸カルシウム硬化体の比重が0.4〜0.8であり、かつ、珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上である。上記珪酸カルシウム硬化体は、珪酸カルシウム水和物100質量部に対して、スチレン−ブタジエン共重合体3.5〜25質量部含むことが好ましく、また、上記珪酸カルシウム水和物の主成分が、トバモライトであることが好ましい。
本発明の珪酸カルシウム硬化体は、以下のようにして製造することができる。
少なくとも珪酸質原料と、石灰質原料と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを含む混合物をミキサーに投入し、当該混合物に水を加えて混練し、配合組成物を調製する。これらの各原料をミキサーに投入する順序は特に限定されるものではなく、各原料を同時にミキサーへ投入してもよい。
珪酸質原料としては、例えば、珪石粉、珪石砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの珪酸質原料を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
石灰質原料としては、例えば、セメント、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、これらの混合物等が挙げられるが、セメントと生石灰との混合物又はセメントと消石灰との混合物を用いるのが好ましい。セメントと生石灰との配合割合、セメントと消石灰との配合割合は、特に限定されるものではないが、セメント100質量部に対し、生石灰7〜160質量部又は消石灰10〜215質量部を配合するのが好ましい。
上記セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント、エコセメント等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのセメントを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
上記珪酸質原料及び石灰質原料は、CaO/SiOのモル比換算で0.5〜0.9となるように配合することが好ましい。上記範囲内で配合すると、得られる珪酸カルシウム硬化体に含有される珪酸カルシウム水和物の主成分をトバモライトとすることができる。
上記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスは、スチレン単量体とブタジエン単量体との乳化重合により得られたエマルジョンであって、消泡剤を含まないものを用いるのが好ましい。珪酸カルシウム硬化体の比重は配合組成物に添加する起泡剤の添加量によりコントロールされるため、消泡剤を含まないエマルジョンを用いると、珪酸カルシウム硬化体の比重をコントロールしやすくなる。
スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン成分量、重量平均分子量は、特に限定されるものではない。また、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの粘度も、特に限定されるものではない。
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量は、珪酸カルシウム水和物100質量部に対し、固形分換算で3.5〜25質量部であることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量が上記範囲内であれば、靭性に優れた珪酸カルシウム硬化体を得ることができる。
水の配合量は、得られる珪酸カルシウム硬化体の比重、強度等の物性を勘案して適宜決定することができるが、珪酸質原料及び石灰質原料の合計100質量部に対して、通常20〜70質量部、好ましくは30〜60質量部である。
本発明の珪酸カルシウム硬化体においては、必要に応じて上記配合組成物にフィラー材を配合してもよい。フィラー材を配合することで、珪酸カルシウム硬化体の補強、加工性付与、軽量化又は増量を図ることができる。フィラー材としては、例えば、木片や木質繊維等の木質フィラー、パルプ繊維、無機質又は有機質の軽量骨材、砕石、細骨材、粗骨材等を用いることができる。フィラー材を配合する場合、その配合量は、珪酸カルシウム硬化体の補強、加工性付与、軽量化又は増量を図ることができる量であれば特に限定されるものではない。
また、本発明の珪酸カルシウム硬化体においては、上記配合組成物に各種添加剤、例えば、減水剤、凝結・硬化促進剤、スラリー流動化剤、スラリー粘性調整剤、分散剤等を必要に応じて添加してもよい。これら各種添加剤の添加量は、生産性の観点から、スラリー組成物の硬化時間が100分以内となる量であることが好ましく、特にスラリー組成物の硬化時間が30分以内となる量であることが好ましい。
ここで、スラリー組成物の硬化時間とは、スラリー組成物を加温養生した後から、オートクレーブ養生前の硬化物の表面硬度がJIS−K6253に規定されるゴム硬度計で40以上を示すまでの時間を意味し、オートクレーブ養生前に型崩れすることがないという硬化物の硬度の指標となるものである。
各種添加剤のうちスラリー粘性調整剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等を用いることができる。配合組成物にスラリー粘性調整剤を添加することで、スラリー組成物のブリージングを防止し、分散性を向上することができる。
上記のようにして得られた配合組成物に、泡沫状態にした起泡剤を添加し、スラリー組成物を調製する。配合組成物に添加する泡沫状態にした起泡剤としては、ポリビニルアルコールやグリセリン等の気泡安定剤を必要に応じて適量混合してなる起泡剤原液を10〜100倍に水で希釈して起泡剤水溶液を調製し、発泡機を用いて当該起泡剤水溶液をプレフォーミングしたものを用いるのが好ましい。また、泡沫状態にした起泡剤は、その比重が0.09〜0.15であることが好ましい。このように、泡沫状態にした起泡剤を配合組成物に添加することで、得られる珪酸カルシウム硬化体の比重のコントロールが容易になる。
起泡剤としては、例えば、界面活性剤、タンパク質系起泡剤等を用いることができる。界面活性剤は、一般に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、マレイン化樹脂系、高級アルコール硫酸塩系、アルキルアリルスルホン酸塩系、アルキル硫酸エステル塩系等の界面活性剤が挙げられる。また、タンパク質系起泡剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
泡沫状態にした起泡剤の添加量は、得られる珪酸カルシウム硬化体の比重を0.4〜0.8に調整し、かつ珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上となり得る量であればよく、具体的には、珪酸質原料及び石灰質原料の合計100質量部に対し、起泡剤水溶液量で15〜60質量部を添加するのが好ましい。
上記のようにして得られたスラリー組成物を、型枠に流し込み、加温養生(一次養生)をすることにより硬化させ、硬化物を得る。上記加温養生は、30〜70℃の温度条件下において30〜100分間養生するのが好ましい。
スラリー組成物を型枠に流し込み、硬化させる方法としては、例えば、型枠流し込み成形法、連続流し込み成形法等が挙げられる。連続流し込み成形法とは、ベルトコンベアにより移動している所定の形状の型枠に、スラリー組成物を連続して流し込み、スラリー組成物を移動しながら硬化させる成形方法をいう(特開平10−139520号公報参照)。
上記のようにして得られた硬化物を、そのまま、又は必要に応じて切断加工処理や切削加工処理に付した後、オートクレーブを用いて養生する(二次養生)。硬化物をオートクレーブ養生することにより、得られる珪酸カルシウム硬化体の強度が早期に発現されるとともに、高強度化を図ることができる。オートクレーブ養生は、160〜180℃の温度条件下において6時間以上行うことが好ましい。
以上のようにして得られた珪酸カルシウム硬化体は、珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含むものである。また、その比重は0.4〜0.8であり、かつ、硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計は、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上となる。珪酸カルシウム硬化体の比重が0.4未満であると、オートクレーブ養生の後、乾燥させている間に、乾燥収縮により珪酸カルシウム硬化体に微細クラックが発生するおそれがあり、珪酸カルシウム硬化体の比重が0.8を超えると、オートクレーブ養生後の乾燥時間が長くなり生産性が悪くなるおそれがある。また、珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の細孔容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の細孔容積の合計の40%未満であると、オートクレーブ養生後の乾燥時間が長くなり生産性が悪くなるおそれがある。
珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する細孔の容積は、水銀圧入法によって測定することができる。水銀圧入法とは、珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する細孔に水銀を圧入させて、そのときの圧力と細孔に圧入された水銀量との関係から細孔径の分布を測定するものであり、細孔の形状が円筒形であると仮定して計算されるものである。
また、得られた珪酸カルシウム硬化体中のスチレン−ブタジエン共重合体の含有量は、珪酸カルシウム水和物100質量部に対して、3.5〜25質量部であることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が3.5質量部未満であると、得られる珪酸カルシウム硬化体の強度及び靭性が劣るおそれがある。スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が25質量部を超えると、珪酸カルシウム硬化体の不燃性が低下するおそれがあるとともに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの原料としての使用量が増加することで生産コストがかかるおそれがある。
さらに、珪酸カルシウム硬化体に含有される珪酸カルシウム水和物としては、例えば、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)、低結晶性珪酸カルシウム水和物(CSH)又はこれらの混合物等が挙げられるが、得られる珪酸カルシウム硬化体の強度の観点から、珪酸カルシウム水和物の主成分がトバモライトであることが好ましい。
珪酸カルシウム硬化体に含有される珪酸カルシウム水和物の主成分がトバモライトであるか否かは、粉末X線回折及び電子顕微鏡観察で判断することができ、例えば、粉末X線回折においてトバモライトの最強線(220)を超えるその他の珪酸カルシウム水和物の回折ピークが存在していなければ、珪酸カルシウム硬化体に含まれる珪酸カルシウム水和物の主成分がトバモライトであると判断することができる。
一方、CSHは低結晶性であり、粉末X線回折では珪酸カルシウム水和物がCSHであるか否かを判断するのが困難であるため、電子顕微鏡観察によって判断する。CSHは様々な粒子形態をとることが知られており、通常、粒状、塊状の粒子形態をとるため、電子顕微鏡下でトバモライト粒子と区別することができる。
CSHは、トバモライトの基本骨格を崩さない範囲で、珪酸カルシウム硬化体に珪酸カルシウム水和物として含有されていてもよいが、CSHは、強度、耐候性、耐久性等の建材としての様々な必要性能を低下させるおそれがあるので、可能な限り含有されていないことが好ましく、電子顕微鏡による観察で、珪酸カルシウム硬化体に含有されるすべての珪酸カルシウム水和物におけるCSHの存在率は、10%未満であることが好ましい。CSHの存在率が10%以上であると、得られる珪酸カルシウム硬化体の強度が低下するおそれがある。
以上のようにして得られた珪酸カルシウム硬化体は、強度及び靭性に優れるものであり、建築物の外壁材、床材、間仕切り材、屋根下地材等として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〜11,比較例1〜7〕
工業用珪石粉(ブレーン比表面積:3000cm2/g,群馬県産)、早強ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、工業用消石灰(吉澤石灰工業社製)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:トマックスーパー,固形分濃度45%,イーテック社製)、アーウィン系凝結・硬化促進剤(電気炉を用いて常法により製造し、アーウィン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)、2CaO・SiO2及び4CaO・Al2O3・Fe2O3をそれぞれ60質量%、30質量%及び5質量%含み、ブレーン比表面積を3800cm2/gに調整した試製品)、ナフタレンスルホン酸系減水剤(商品名:マイティ150,固形分濃度50%,花王社製)、アクリル繊維(12mmチョップドストランド,日本エクスラン工業社製)及びメチルセルロース(商品名:ハイメトローズhi90-SH4000,信越化学工業社製)を混合し、当該混合物に水(水道水)を加えて混練した後、表2に示す比重となるように、プレフォームした起泡剤(商品名:エマールD−3−D,花王社製)を添加して、スラリー組成物を調製した。各原料の配合割合を表1に示す。
得られたスラリー組成物を樹脂製の型枠に流し込み、60℃で30分間加温養生した後、脱型してオートクレーブを用いて180℃で8時間養生後、60℃で絶乾になるまで乾燥して、珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体を得た。
なお、比較例2及び比較例3については、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを加えない以外は上記と同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た後、真空引きが可能な上口デシケータに得られた珪酸カルシウム硬化体及びスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを投入し、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスが完全に珪酸カルシウム硬化体に含浸するまで真空ポンプを用いて吸引した。吸引後、デシケータから珪酸カルシウム硬化体を取り出し、60℃で絶乾になるまで乾燥した。
Figure 2006143534
〔粉末X線回折分析・電子顕微鏡観察〕
実施例1〜11,比較例1〜7で得られた珪酸カルシウム硬化体を乳鉢中で粉砕して試験体を調製し、下記の条件に基づいて、試験体の粉末X線回折分析を行った。
[粉末X線回折分析条件]
粉末X線回折装置:RINT2500(リガク社製)
加速電圧:50kV
加速電流:40mA
受光スリット幅:0.3mm
走査速度:2度/分
サンプリング:0.02度
上記測定により得られた粉末X線回折ピークを図1に示す。
また、実施例1〜11,比較例1〜7で得られた珪酸カルシウム硬化体を乾燥機で絶乾状態にした後、当該珪酸カルシウム硬化体から5mm×5mm×5mmの角片を試験体として切り出し、試料台に設置した。試験体に導電性を付与するため、蒸着装置(E−300,日立社製)を用いて当該試料台ごと白金蒸着を行い、走査型電子顕微鏡(S−4100,日立社製)を用いて観察した。電子顕微鏡観察の写真を図2に示す。
図1から明らかなように、実施例1〜11及び比較例1〜7の珪酸カルシウム硬化体は、トバモライトの最強線(220)を超えるその他の珪酸カルシウム水和物のピークが存在しておらず、珪酸カルシウム水和物としてトバモライトが生成されていることが確認された。また、図2から明らかなように、実施例1〜11及び比較例1〜7の珪酸カルシウム硬化体は、CSHが存在するもののその存在率が10%未満であることが確認された。
〔細孔容積の測定〕
実施例1〜11及び比較例1〜7の珪酸カルシウム硬化体の細孔容積を、以下のようにして測定した。
珪酸カルシウム硬化体から、7mm×7mm×7mmの角片を試験体として切り出し、当該試験体をカラムに詰め込み、水銀圧入式ポロシメーター(製品名:AutoporeII9200,Micromeritics社製)を用いて水銀圧入法により細孔容積を測定した。測定結果から、全細孔容積中に占める細孔径10〜100μmの細孔の合計容積の割合を算出した。算出結果を表2に示す。
〔曲げ強度試験〕
以下のようにして、実施例1〜11及び比較例1〜7の珪酸カルシウム硬化体の曲げ強度試験を行った。
実施例1〜11及び比較例1〜7の珪酸カルシウム硬化体から、40cm×50cm×3.5cmの各片を試験体として切り出し、当該試験体の曲げ強度を、インストロン万能試験機を用いて、支点間距離40cm、載荷速度2mm/分の条件下で、3点曲げにて測定した。測定結果を表2に示す。
〔靭性係数の算出〕
上記曲げ強度試験において、試験体が3mmたわむまでの吸収エネルギー(Tb)をたわみ量で除して得られる平均耐力を曲げ強度に換算して、靭性係数を算出した。吸収エネルギー(Tb)は、曲げ強度試験で得られた破壊荷重曲線の面積に相当するため、当該面積をプラニメーター(商品名:プラコムKP−92,小泉測機製作所社製)で測定し、試験体の吸収エネルギー(Tb)とした。当該吸収エネルギー(Tb)を用いて、下記の計算式に基づき靭性係数(N/mm)を算出した。
靭性係数=(Tb×スパン)/(たわみ量×硬化体幅×(硬化体高さ)2)
=(Tb×400)/(3×400×(35)2)
算出結果を表2に示す
Figure 2006143534
表2から明らかなように、スチレン−ブタジエン共重合体を含有しない比較例1の珪酸カルシウム硬化体は、実施例1〜11の珪酸カルシウム硬化体に比して強度が低いことが確認された。また、比重が0.8を超える比較例4の珪酸カルシウム硬化体は、乾燥時間が長く生産性が悪いことが確認された。さらに、比重が0.4未満の比較例5の珪酸カルシウム硬化体は、実施例1〜11の珪酸カルシウム硬化体に比して強度が低いことが確認された。
比較例2及び3の珪酸カルシウム硬化体は、硬化体にスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを含浸させているため、乾燥時間が長く生産性が悪いことが確認された。また、比較例6の珪酸カルシウム硬化体は、硬化体にスチレン−ブタジエン共重合体が含まれていないため、実施例1〜11の珪酸カルシウム硬化体に比して強度及び靭性が低いことが確認された。
本発明の珪酸カルシウム硬化体は、耐火被覆材、断熱材、外壁材、内装材等の建築材料として有用である。
実施例で得られた珪酸カルシウム硬化体の粉末X線回折分析によって得られた粉末X線回折ピークである。 実施例で得られた珪酸カルシウム硬化体を走査型電子顕微鏡で観察した電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体であって、
    前記珪酸カルシウム硬化体の比重が0.4〜0.8であり、かつ、前記珪酸カルシウム硬化体の表層部に存在する直径10〜100μmの細孔の容積の合計が、表層部に存在するすべての細孔の容積の合計の40%以上であることを特徴とする珪酸カルシウム硬化体。
  2. 珪酸カルシウム水和物100質量部に対して、スチレン−ブタジエン共重合体3.5〜25質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の珪酸カルシウム硬化体。
  3. 前記珪酸カルシウム水和物の主成分が、トバモライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の珪酸カルシウム硬化体。
  4. 珪酸カルシウム水和物とスチレン−ブタジエン共重合体とを含む珪酸カルシウム硬化体を製造する方法であって、
    少なくとも珪酸質原料と、石灰質原料と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを含む混合物に水を加えて混練するとともに、泡沫状態にした起泡剤を添加してスラリー組成物を得て、
    前記スラリー組成物を型枠に流し込み、養生して硬化させることを特徴とする珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
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