実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。図1において、ビル設備診断装置は複数のビル内設備群1−1〜1−Nとビル内設備群1−1〜1−Nからデータを送受するビル設備診断装置2で構成される。ビル内設備群はビルに設置される設備の集合である。ここで、Nはビル設備診断装置2とデータを送受することができるビル内設備群の数を表わしており、Nは2以上の整数である。ビル内設備群1−1〜1−Nに設置される設備として昇降機があり、本実施の形態1では昇降機としてエレベーターがビル内設備群1−1〜1−Nそれぞれに設置され、エレベーター制御部11−1〜11−Nにより制御される。エレベーター制御部11−1〜11−Nは1台または複数のエレベーターの制御を行う。エレベーター制御部11−1〜11−Nはそれぞれ対応するビル側通信部12−1〜12−Nと接続され、ビル設備診断装置2とデータを送受することができる。なお、1つのビル内設備群にエレベーター制御部が複数あってもよい。
個別のビル内設備群nのビル側通信部12−nはエレベーター制御部11−nから昇降機稼動履歴データLE(n)を受け取り、ビル設備診断装置2へ送信する。ここでn(1≦n≦N)はビル設備診断装置2とデータを送受することができる個別のビル内設備群の番号を表わしている。昇降機稼動履歴データLE(n)は、その要素としてエレベーターの乗車人数、降車人数、戸開閉履歴、走行履歴、乗場呼び発生履歴、かご呼び発生履歴などの昇降機運行履歴データLED(n)を含む。また、昇降機稼動履歴データLE(n)は、その要素としてエレベーターの待ち時間履歴、旅行時間履歴、満員通過発生履歴、積み残し発生履歴などの昇降機サービス履歴データLES(n)、エレベーターの特定のリレーの動作回数、巻き上げ機の動作履歴、ブレーキの動作履歴などの昇降機機器動作履歴データLEE(n)、エレベーターの振動測定履歴、騒音測定履歴、インバーターの温度測定履歴、モーターの温度測定履歴などの昇降機機器状態履歴データLEC(n)を含んでもよい。例えば、昇降機稼動履歴データLE(n)は式(1)のように記述することができる。
LE(n)={LED(n)、LES(n)、LEE(n)、LEC(n)}
…(1)
ビル側通信部12−1〜12−Nがそれぞれ対応するエレベーター制御部11−1〜11−Nとのみ接続されている場合、履歴データL(1)〜L(N)として扱われるデータは、昇降機稼動履歴データLE(1)〜LE(N)だけである。また、昇降機稼動履歴データLE(n)、昇降機運行履歴データLED(n)、昇降機サービス履歴データLES(n)、昇降機機器動作履歴データLEE(n)、昇降機機器状態履歴データLEC(n)は、ある時刻tとその時刻におけるデータの値の集合であるログデータ形式でもよいし、所定の単位時間における積算値や平均値など統計処理したデータでもよいし、所定の時間帯毎の各時間帯における積算値や平均値など統計処理したデータの集合でもよい。
ビル設備診断装置2は診断装置側通信部21、設置データ蓄積部22、履歴データ蓄積部23、診断部24、診断結果表示部25で構成される。診断装置側通信部21は、ビル側通信部12−1〜12−Nと有線または無線のネットワークで接続されているか、共通の媒体が扱えるインタフェースを備えており、ビル側通信部12−1〜12−Nから出力される昇降機稼動履歴データLE(1)〜LE(N)が入力される。
設置データ蓄積部22は複数のビル内設備群1−1〜1−Nそれぞれに設置される昇降機に関する設置データSE(1)〜SE(N)を蓄積する第一の記憶手段である。昇降機に関する設置データSE(1)〜SE(N)はエレベーターの仕様や設置などに関するデータで、地上階床数、地下階床数、階高、エレベーター速度、エレベーター容量、かご台数、ドア幅、ドア速度、ビル用途、ビル内利用状況などが含まれる。個別のビル内設備群1−nに関する設置データS(n)は式(2)のように記述することができる。
S(n)={SE(n)} …(2)
履歴データ蓄積部23はエレベーターの制御部であるエレベーター制御部11−1〜11−Nとの間で送受される昇降機稼動履歴データLE(1)〜LE(N)を履歴データL(1)〜L(N)として蓄積する第二の記憶手段である。
診断部24は設置データ蓄積部22と履歴データ蓄積部23とに蓄積されたデータから、ビル内設備群1−1〜1−Nのいずれかのビル内設備群1−m(1≦m≦N)の診断を行うものであり、診断対象ビルデータ抽出部241、検索条件作成部242、履歴データ抽出部243、比較診断部244から構成される。診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243は、履歴データから類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別し、設置データと特定データとによりビル内設備群の利用状況を示す利用指数を算出し、複数のビル内設備群のうちの診断対象ビル内設備群の利用指数により設定される所定の範囲に利用指数が収まるかどうかで複数のビル内設備群から類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段である。なお、診断したい目的に合わせて診断データをあらかじめ設定し、特定データと診断データを区別してもよい。比較診断部244は診断データのうちの診断対象ビル内設備群に関するデータが診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られるビル内設備群の正常状態を示す許容範囲に含まれるかどうかで、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断する診断手段である。
診断対象ビルデータ抽出部241は診断対象となる診断対象ビル内設備群1−m(1≦m≦N)を選定し、診断対象ビル内設備群1−mに関する設置データS(m)を設置データ蓄積部22から、昇降機稼動履歴データLE(m)を履歴データ蓄積部23から抽出する。この際、昇降機稼動履歴データLE(m)から類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別する。
検索条件作成部242は診断目的に合わせて、検索対象ビルデータ抽出部241で抽出された特定データまたは設置データS(m)から、診断対象ビル内設備群と類似ビル内設備群を抽出するための履歴データの検索条件Cを作成する。検索条件Cは設置データS(1)〜S(N)から作成される設置データ検索条件CSと、昇降機稼動履歴データLE(1)〜LE(N)のうちの類似ビル内設備群を特定する特定データから作成される履歴データ検索条件CLとからなる。また、検索条件Cとしては、設置データ検索条件CSまたは履歴データ検索条件CLのいずれか1つ以上の条件があればよい。
例えば、設置データ検索条件CSとして式(3)のような条件が与えることができる。
CS={地上階床数(m)−THL≦地上階床数(n)≦地上階床数(m)+THU
、
地下階床数(n)=地下階床数(m)、
かご台数(n)=かご台数(m)、
ビル用途(n)=ビル用途(m)} …(3)
式(3)において、n(1≦n≦N)はビル設備診断装置2とデータを送受することができる個別のビル内設備群の番号を表わしており、m(1≦n≦N)は診断対象ビル内設備群の番号を表わしている。また、THLは地上階床数の検索条件に関する下方許容範囲、THUは上方許容範囲を表わす。例えば、診断対象ビル内設備群1−mの設置データS(m)が地上階床数10階、地下階床数2階、かご台数3台、ビル用途住宅、THL=2、THU=3である場合、地上階床数が8〜13階床で、地下階床数が2階床、かご台数が3台で、ビル用途が住宅である条件を満たすビル内設備群を検索することになる。
また、履歴データ検索条件CLとしては式(4)のような条件を与えることができる。
CL={8時台の乗車人数(m)×PERL≦8時台の乗車人数(n)
≦8時台の乗車人数(m)×PERU、
履歴データ収集日種別(n)=履歴データ収集日種別(m)} …(4)
式(4)において、PERLは8時台乗車人数に関する下限許容率、PERUは上限許容率である。例えば、診断対象ビル内設備群1−mの昇降機稼動履歴データLE(m)が8時台乗車人数400人、下限許容率0.8、上限許容率1.2、履歴データ収集日種別=平日の場合、平日の8時台乗車人数が320人から480人の間にあるビル内設備群を検索することになる。このように、設置データS(m)から作成される設置データ検索条件CSと特定データから作成される履歴データ検索条件CLとにより、診断対象ビル内設備群の利用状況を示す利用指数として平日の8時台の乗車人数を算出し、複数のビル内設備群1−1〜1−Nから類似ビル内設備群を特定するための利用指数の所定の範囲として平日の8時台乗車人数が320人から480人の間にあることを検索条件Cとして設定する。
履歴データ抽出部243は、設置データS(1)〜S(N)と特定データとによりビル内設備群1−1〜1−Nの利用状況を示す利用指数を算出し、この利用指数からビル内設備群1−1〜1−Nの中から検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の集合K(C)を特定する。そして、類似ビル内設備群の集合K(C)に関する昇降機稼動履歴データLE’(k)を履歴データ蓄積部23から抽出する。ここで、kは検索条件Cに合致するビル内設備群の集合K(C)の要素である。
比較診断部244は類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)を比較する。比較の方法としては、類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)の頻度分布曲線と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)とを比較する方法、診断データX’(k)の平均値Xaと診断データX(m)を比較する方法、診断データX’(k)の平均値Xa’および診断データX’(k)の標準偏差Xs’からの診断データX(m)の変移を比較する方法などがある。なお、診断データX’(k)の頻度分布、平均値、標準偏差などからエレベーターの正常状態を示す許容範囲を設定し、診断データX(m)がこの許容範囲に含まれるかどうかで診断対象のエレベーターの稼動状態を診断することができる。以上のように、診断データのうちの診断対象ビル内設備群に関するデータが診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られるビル内設備群の正常状態を示す許容範囲に含まれるかどうかで、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断することができる。
診断結果表示部25は比較診断部244で生成された比較診断結果を表示し、オペレーターに理解を促す。
ここで、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)は、昇降機稼動履歴データLE(n)の要素である昇降機運行履歴データLED(n)、昇降機サービス履歴データLES(n)、昇降機機器動作履歴データLEE(n)、昇降機機器状態履歴データLEC(n)のいずれかまたは、それらのいずれかの履歴データを構成する要素のデータであってよい。たとえば、昇降機運行履歴データLED(n)の要素である出発回数であってもよいし、昇降機サービス履歴データLES(n)の要素である待ち時間であってもよい。また、診断データX(n)は単一の値でも複数の値でもよい。
検索条件Cと、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)としては、様々な組合せが可能である。第1の組合せ例として、昇降機サービス履歴データLES(n)に含まれる待ち時間から、診断対象ビル内設備群に関する待ち時間を診断してもよい。図2は類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)のうちの待ち時間WT’(k)の頻度分布301と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)のうちの待ち時間WT(m)302とを比較している。図2より、類似する条件のビル内設備群と比べると、診断対象ビル内設備群1−mのエレベーターの待ち時間が長いことがわかる。
また、図3のように、類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)のうちの待ち時間WT’(k)の累積度数分布303と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)のうちの待ち時間WT(m)302とを比較することも可能である。このような比較により、診断対象ビル内設備群1−mが類似ビル内設備群の中でどのような位置にあるかが明らかとなり、相対的な評価が可能となる。
また、類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX1’(k)を類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる別の診断データX2’(k)で規格化した値X12‘(k)=X1’(k)/X2’(k)の頻度分布または累積度数分布を用いて比較することも可能である。これによって、診断対象ビル内設備群1−mにおける2つの値X1(m)とX2(m)の値の関係が、類似ビル内設備群の中でどのような位置にあるかが明らかとなり、相対的な評価が可能となる。
また、類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX1’(k)の平均値X1aと類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる別の診断データX2’(k)の平均値X2aの関係を表わす曲線X1a=F(X2a)と、診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX1(m)、X2(m)を比較してもよい。このとき、X1’(k)、X1a、X2’(k)、X2a、X1(m)、X2(m)はスカラー値でもベクトルでもよい。図4に、X1aとしてエレベーターの出発回数Stを設定し、X2aとしてリレーの故障頻度Rrを設定した場合のエレベーターの出発回数Stとリレーの故障頻度Rrとの関係をあらわす曲線304を示す。また、診断対象ビル内設備群の出発回数St(m)とリレー故障頻度Rr(m)との関係をあらわす点305を示す。曲線304と点305を比較すると、出発回数に対してリレーの故障頻度が高いことが分かる。
第2の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)として平均待ち時間を設定し、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとして設置データS(n)から交通計算によって演算できるエレベーターの5分間あたりの輸送能力、履歴データ検索条件CLとして5分間あたり乗車人数を設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、輸送能力に対する乗車人数つまり、交通需要が類似しているビル内設備群の間で、平均待ち時間の相対評価を行うことが可能となる。本評価は、1日全体の平均値で行ってもよいし、5分間以上の一定時間毎の平均待ち時間と乗車人数を用いて、一定時間ごとに診断を行ってもよい。ここで、交通計算とは、エレベーターの設計時点において一般的に用いる輸送能力計算手法であり、エレベーターが1周回に必要な周回時間を演算し、周回時間によって輸送能力や待ち時間の2倍に相当する出発間隔を演算することが可能となる。
第3の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)として設置データS(n)から周回時間を使って演算できるエレベーターの出発間隔と待ち時間の比率を設定し、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとして設置データS(n)から周回時間を使って演算できるエレベーターの5分間あたりの輸送能力、履歴データ検索条件CLとして5分間あたりの乗車人数が診断対象ビル内設備群の5分間あたりの乗車人数から決められる所定の範囲内にあることと設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、輸送能力と交通需要の条件が類似しているビル内設備群において、エレベーターの設計時点で演算された出発間隔と、エレベーターの運用後に演算される待ち時間実績値の比率の相対評価が可能となる。本評価は、1日全体の平均値で行ってもよいし、5分間以上の一定時間毎の平均待ち時間と乗車人数を用いて、一定時間ごとに診断を行ってもよい。
第4の組合せ例としては、第2または第3の組合せ例において、診断対象ビル内設備群が設置されるビルが竣工前で、診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)が得られない状態において、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)の平均値を演算することにより、診断対象ビル内設備群の竣工後の待ち時間の事前推定が可能となり、検索条件Cにおける設置データ検索条件CSを変更して再検索することにより、適正な待ち時間となる設置データ検索条件CSが得られる。得られた設置データ検索条件から、エレベーターの設備設計を行うことにより、適正な待ち時間を得られる設備設計が可能となる。
第5の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)として制御パラメータ標準値での待ち時間と所定の方法で制御パラメータをチューニングした後の待ち時間を比較して得られる改善率を設定し、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとしてビル階床数、エレベーター台数、エレベーター速度、ビル利用状況、制御パラメータチューニングの実施を設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、類似したビル内設備群において制御パラメータチューニングの効果の相対評価が可能となる。
第6の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)として空きかご待機動作標準状態での待ち時間と空きかご待機階をチューニングした場合の待ち時間を比較して得られる改善率を設定し、検索条件Cのうち、履歴データ検索条件CLとして、連続乗車率が診断対象ビル内設備群の連続乗車率から決められる所定の範囲内にあることと設定する。ここで、連続乗車率とは、あるF階で乗客が降車した直後の乗場呼び数を、全呼び数で割ったものであり、一般に連続乗車率が高いと空きかごは特定の階で待機動作をするよりも、最終停止階で停止することが望ましい。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、連続乗車率が類似したビル内設備群において、空きかご待機階チューニングの効果の相対評価が可能となる。
第7の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)としてエレベーターの装置変更前の待ち時間とエレベーターの装置変更後の待ち時間を比較して得られる改善率を設定し、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとして、ビル階床数、エレベーター台数、エレベーター速度ビル利用状況、制御パラメータチューニングの実施を設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、類似したビル内設備群においてエレベーターの設備変更効果の相対評価が可能となる。
第8の組合せ例としては、第5、第6、第7の組合せにおいて、診断対象ビル内設備群に制御パラメータチューニング、空きかご待機階チューニングまたはエレベーターの装置変更を行う前で、診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)が得られない状態において、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)の平均値を演算することにより、診断対象ビル内設備群の制御パラメータチューニング、空きかご待機階チューニング、エレベーターの装置変更効果の事前推定が可能となる。
第9の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)として例えばブレーキシューやローラーやロープなどのエレベーター部品の磨耗率を設定し、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとしてビルの階床数、エレベーターの形式、ビル用途を設定し、履歴データ検索条件CLとしてエレベーターの出発回数を設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、エレベーターの使用頻度条件が同じ場合の部品磨耗率の相対評価が可能となる。
第10の組合せ例としては、昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれるデータの中で、ブレーキシューやローラーやロープなどのエレベーター部品の磨耗率をX1(n)、エレベーターの出発回数をX2(n)とし、診断データX(n)=X1(n)/X2(n)として設定する。また、検索条件Cのうち、設置データ検索条件CSとしてビルの階床数、エレベーターの形式、ビル用途を設定する。このように昇降機稼動履歴データLE(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE’(k)に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)とを比較することによって、エレベーターの使用頻度に対する部品磨耗率の相対評価が可能となる。
以上のように、昇降機に関する設置データを蓄積する第一の記憶手段である設置データ蓄積部22と、昇降機稼動履歴データを履歴データとして蓄積する第二の記憶手段である履歴データ蓄積部23と、複数のビル内設備群1−1〜1−Nから類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段として診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243と、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断する診断手段として比較診断部244とを備えることにより、多数の昇降機稼動履歴データの中から、類似ビル内設備群における昇降機稼動履歴データと診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データを比較することにより相対的な評価値を得ることが可能となり、診断対象ビル内設備群のうちの昇降機であるエレベーターの稼動状態を診断することができる。
実施の形態2.
図5は、この発明を実施するための実施の形態2におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。図5において、ビル内設備群1−1〜1−Nに設置される昇降機としてエレベーターに加えてエスカレーターがあり、エレベーター制御部11−1〜11−Nおよびエスカレーター制御部41−1〜41−Nが設置される。なお、ビル内設備群のうちにはエレベーター制御部のみが設置されるビル内設備群、エスカレーター制御部のみが設置されるビル内設備群が含まれてもよい。個別のビル内設備群nのビル側通信部12−nはエレベーター制御部11−nおよびエスカレーター制御部41−nからエレベーターの稼動履歴データおよびエスカレーターの稼動履歴データを受け取り昇降機稼動履歴データLE(n)としてビル設備診断装置2へ送信する。この昇降機稼動履歴データLE(n)はビル設備診断装置2に設置された履歴データ蓄積部23に蓄積される。また、エレベーターの設置データおよびエスカレーターの設置データは昇降機に関する設置データSE(n)として設置データ蓄積部22に蓄積される。
昇降機稼動履歴データLE(n)は次のように与えられる。昇降機運行履歴データLED(n)は、エレベーターの乗車人数、降車人数、戸開閉履歴、走行履歴、乗場呼び発生履歴、かご呼び発生履歴に加えて、各階間に設置された個々のエスカレーターの乗車人数を含む。エスカレーターの乗車人数はエスカレーターのモーターの負荷率で測定してもよいし、乗場もしくは降場に光電センサなどの人の通過を検出するセンサを設けて測定してもよいし、休止機能つきエスカレーターでは起動回数を測定してもよい。昇降機機器動作履歴データLEE(n)は、エレベーターの特定のリレーの動作回数、巻き上げ機の動作履歴、ブレーキの動作履歴などに加えて、エスカレーターの特定のリレーの動作回数、巻き上げ機の動作履歴を加えてもよい。昇降機機器状態履歴データLEC(n)はエレベーターの振動測定履歴、騒音測定履歴、インバーターの温度測定履歴、モーターの温度測定履歴に加えて、エスカレーターの振動測定履歴、騒音測定履歴、インバーターの温度測定履歴、モーターの温度測定履歴を加えてもよい。
設置データ蓄積部22に蓄積された設置データおよび履歴データ蓄積部23に蓄積された履歴データに基づき診断部24により診断対象ビル内設備群に設置されるエレベーターおよびエスカレーターの稼動状態を診断する。
以上のように、ビル内設備群1−1〜1−Nにエレベーター制御部11−1〜11−Nおよびエスカレーター制御部41−1〜41−Nを設置した構成により、診断対象ビル内設備群のうちの昇降機であるエレベーターおよびエスカレーターの稼動状態を診断することができる。
図6は、この発明を実施するための実施の形態2におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との別の構成図である。図6において、ビル内設備群1−1〜1−Nにはエレベーター制御部は設置されず、エスカレーター制御部41−1〜41−Nが設置される。個別のビル内設備群nのビル側通信部12−nはエスカレーター制御部41−nからエスカレーターの稼動履歴データを昇降機稼動履歴データLE(n)として受け取り、ビル設備診断装置2へ送信する。この昇降機稼動履歴データLE(n)はビル設備診断装置2に設置された履歴データ蓄積部23に蓄積される。また、エスカレーターの設置データは昇降機に関する設置データSE(n)として設置データ蓄積部22に蓄積される。
昇降機稼動履歴データLE(n)は次のように与えられる。昇降機運行履歴データLED(n)にはエスカレーターの乗車人数を含む。エスカレーターの乗車人数はエスカレーターのモーターの負荷率で測定してもよいし、乗場もしくは降場に光電センサなどの人の通過を検出するセンサを設けて測定してもよいし、休止機能つきエスカレーターでは起動回数を測定してもよい。昇降機機器動作履歴データLEE(n)はエスカレーターの特定のリレーの動作回数、巻き上げ機の動作履歴を含む。昇降機機器状態履歴データLEC(n)はエスカレーターの振動測定履歴、騒音測定履歴、インバーターの温度測定履歴、モーターの温度測定履歴を含む。
設置データ蓄積部22に蓄積された設置データおよび履歴データ蓄積部23に蓄積された履歴データに基づき診断部24により診断対象ビル内設備群に設置されるエスカレーターの稼動状態を診断することができる。
以上のように、ビル内設備群1−1〜1−Nにエレベーター制御部を設置せず、エスカレーター制御部41−1〜41−Nを設置した構成により、診断対象ビル内設備群のうちのエスカレーターの稼動状態を診断することができる。
実施の形態3.
図7は、この発明を実施するための実施の形態3におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。このビル設備診断装置により、ビル内設備群に設置された設備の履歴データを使って、履歴データの相対評価により設備の診断と事例検索を行うものである。このビル設備診断装置はビル内設備群に設置される設備である昇降機としてエレベーターに対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を蓄積する第三の記憶手段である事例蓄積部26、昇降機としてエレベーターに対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を入力する事例入力部27、類似ビル内設備群の作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を第三の記憶手段である事例蓄積部26から検索する事例検索手段である事例抽出部245、診断結果を表示する診断結果表示部25で構成され、それ以外は実施の形態1で説明したものと同じである。
事例蓄積部26は昇降機としてエレベーターに対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を事例データとして蓄積する。ここでいう事例とは、例えば、エレベーターの運行性能が悪い場合に、制御パラメータのチューニングやエレベーターの追加を行ったなどの対策事例や、部品などの磨耗にもとづく故障事例などがある。表1に事例データ一覧表の一例を示す。事例入力部27は事例データを、事例蓄積部26に入力する端末であり、新たな作業事例が発生した場合に事例の入力を行う。事例蓄積部26は、ビル内設備群1−1〜1−Nで行った制御パラメータのチューニング事例や故障発生事例などの作業事例を例えば、表1の事例データ一覧表のような形式で蓄積している。このとき事例データは式(5)の形で表わされる。
CASE(j)={type(j)、name(j)、CV(j)、XV(j)、
OPERATION(j)} …(5)
ここで、CASE(j)はj番目の事例、type(j)は事例種別であり、例えば、チューニングや部品交換、故障などの値を表わす。name(j)はビル名、CV(j)は事例CASE(j)を適用したときの検索条件の値、XV(j)は事例CASE(j)を適用したときの診断値データの値、OPERATION(j)は作業事例を表わす。
事例抽出部245は検索条件作成部242から出力される検索条件CがCV(j)に合致し、診断対象ビル内設備群の昇降機稼動履歴データLE(m)に含まれる診断データX(m)がXV(j)と類似している事例CASE’(m)を類似ビル内設備群に設置されるエレベーターの事例データとして事例蓄積部26に蓄積された事例データから抽出する。診断結果表示部25は比較診断部244で生成された比較診断結果と事例抽出部245で抽出された事例CASE’(m)を表示する。また、事例蓄積部26に蓄積された事例データからビル内設備群に設置される設備の正常状態を示す許容範囲を設定することができる。
本実施の形態では、ビル内設備群に設置される設備である昇降機としてエレベーターを設置した場合について説明したが、エレベーターに加えてエスカレーターを設置してもよいし、エスカレーターだけを設置してもよい。
以上のように、ビル内設備群に設置される設備に対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を蓄積する第三の記憶手段として事例蓄積部26と、類似ビル内設備群に設置される設備の作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を第三の記憶手段から検索する事例検索手段として事例抽出部245とを備えることにより、多数の履歴データの中から、類似ビル内設備群における履歴データと診断対象ビル内設備群の履歴データを比較することにより相対的な評価値と、類似した状況で過去に行った作業事例を得ることができる。
実施の形態4.
図8は、この発明を実施するための実施の形態4におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。このビル設備診断装置により、ビル内設備群の履歴データを使って、履歴データの相対評価と事例検索によって、ビル内設備群のパラメータチューニングを行うものである。このビル設備診断装置はビル内設備群のパラメータチューニングを行うパラメータ作成部28で構成され、それ以外は実施の形態3で説明したものと同じである。
パラメータ作成部28は事例抽出部245から出力される事例CASE(j)のOPERATION(j)の作業履歴にもとづいてパラメータ作成を行う。例えば、OPERATION(j)が、空かご待機階をビル最上階に設定するという作業履歴であった場合には、パラメータである空かご待機階を最上階に設定する。
以上のように、ビル内設備群のパラメータチューニングを行うパラメータ作成部28を備えることにより、多数の履歴データの中から、類似ビル内設備群における履歴データと診断対象ビル内設備群の履歴データを比較することにより類似した状況で過去に行った作業事例にもとづいて制御パラメータの設定ができる。
実施の形態5.
図9は、この発明を実施するための実施の形態5におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。このビル設備診断装置により、複数のビル内設備群に設置された昇降機の履歴データと昇降機以外のビル内設備の履歴データを用いて、昇降機などの設備の稼動状況が類似しているビル内設備群との間での、ビル内設備の履歴データの相対評価によって、昇降機以外のビル内設備の診断や事例検索を行うものである。ここでいう昇降機以外のビル内設備の履歴データとは上下水道設備、空調設備、照明設備、受配電設備など稼動状況、入退出管理システム、監視システムなどのセキュリティシステムなどの利用状況、稼動状況である。また、ビル内設備の履歴データにはビル内設備の履歴データが含まれてもよい。ビル施設の履歴データとは、ル内店舗の来客数、売上高、テナントの空室率などをいう。またここでいう事例とは、昇降機以外のビル内設備やビル施設の制御パラメータのチューニング事例、設備設計事例、故障事例のほか、ビル内施設での行事事例などを含む。
図9において、ビル設備診断装置は複数のビル内設備群1−1〜1−Nとビル内設備群1−1〜1−Nからデータを送受して診断を行うビル設備診断装置2で構成される。ここで、Nはビル設備診断装置2とデータを送受することができるビル内設備群の数を表わしており、Nは2以上の整数である。ビル内設備群1−1〜1−Nに設置される設備として昇降機がある。昇降機としてエレベーターがビル内設備群1−1〜1−Nそれぞれに設置され、エレベーター制御部11−1〜11−Nにより制御される。エレベーター制御部11−1〜11−Nは1台または複数のエレベーターの制御を行う。なお、1つのビル内設備群にエレベーター制御部が複数あってもよい。また、ビル内設備群1−1〜1−Nに設置される設備としてビル内設備13−1〜13−Nがある。ビル内設備13−1〜13−Nは、エレベーター以外のビル内設備やビル施設に関するシステムであり、例えば、上下水道制御システム、空調設備制御システム、照明制御システム、受配電制御システム、入退出管理システム、監視システムのほか、ビル内店舗のPOSシステム、ビル管理システムなどがある。1つのビル内設備群にビル内設備が複数あってもよい。エレベーター制御部11−1〜11−Nとビル内設備13−1〜13−Nはそれぞれ対応するビル側通信部12−1〜12−Nと接続され、ビル設備診断装置2とデータを送受することができる。
個別のビル内設備群nのビル側通信部12−nはエレベーター制御部11−nから昇降機稼動履歴データLE(n)とビル内設備13−nからビル内設備履歴データLF(n)とを受け取り、ビル設備診断装置2へ送信する。ここでn(1≦n≦N)はビル設備診断装置2とデータを送受することができる個別のビル内設備群の番号を表わしている。昇降機稼動履歴データLE(n)は実施の形態1で説明したものと同じである。ビル内設備履歴データLF(n)はビル内設備の稼動状況、利用状況、売上高などである。また、ビル内設備履歴データLF(n)は昇降機稼動履歴データLE(n)と同様に、ある時刻tとその時刻におけるデータの値の集合であるログデータ形式でもよいし、所定の単位時間における積算値や平均値など統計処理したデータでもよいし、所定の時間帯毎の各時間帯における積算値や平均値など統計処理したデータの集合でもよい。昇降機稼動履歴データLE(n)とビル内設備履歴データLF(n)とはまとめて、履歴データL(n)として扱われる。履歴データL(n)は式(6)で表わされる。
L(n)={LE(n)、LF(n)} …(6)
ビル設備診断装置2は診断装置側通信部21、設置データ蓄積部22、履歴データ蓄積部23、診断部24、診断結果表示部25、事例蓄積部26、事例入力部27で構成される。診断装置側通信部21は、ビル側通信部12−1〜12−Nと有線または無線のネットワークで接続されているか、共通の媒体が扱えるインタフェースを備えており、ビル側通信部12−1〜12−Nから出力される履歴データL(1)〜L(N)が入力される。
設置データ蓄積部22は複数のビル内設備群1−1〜1−Nそれぞれに設置される昇降機としてエレベーターに関する設置データと複数のビル内設備群1−1〜1−Nに設置されるエレベーター以外のビル内設備の設置データを蓄積する第一の記憶手段であり、ビル内設備群に設置された設備や機器の設置、テナントの状況、業種などに関するデータのうち少なくともエレベーターとその他の設備、施設に関する設置データを記憶する。例えば、実施の形態1に説明したエレベーターの仕様などに関する設置データと、上下水道設備に関するポンプ容量、ポンプのモーターの種類、設置期間などのビル内設備に関する設置データとなる。ビル内設備群1−nに関する設置データS(n)は式(7)のように記述できる。
S(n)={SE(n)、SF(n)} …(7)
ここで、SE(n)は個別のビル内設備群1−nに設置された昇降機に関する設置データの集合、SF(n)は昇降機以外の設備、施設に関する設置データの集合である。
履歴データ蓄積部23はエレベーターの制御部であるエレベーター制御部11−1〜11−Nとの間で送受される昇降機稼動履歴データLE(1)〜LE(N)とビル内設備との間で送受されるビル内設備履歴データLF(1)〜LF(N)とを履歴データL(1)〜L(N)として蓄積する第二の記憶手段である。
診断部24は設置データ蓄積部22と履歴データ蓄積部23に蓄積されたデータから、ビル内設備群1−1〜1−Nのいずれかのビル内設備群1−m(1≦m≦N)の診断を行うものであり、診断対象ビルデータ抽出部241、検索条件作成部242、履歴データ抽出部243、比較診断部244、事例抽出部245で構成される。診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243は、履歴データから類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別し、設置データと特定データとによりビル内設備群の利用状況を示す利用指数を算出し、複数のビル内設備群のうちの診断対象ビル内設備群の利用指数により設定される所定の範囲に利用指数が収まるかどうかで複数のビル内設備群から類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段である。なお、診断したい目的に合わせて診断データをあらかじめ設定し、特定データと診断データを区別してもよい。比較診断部244は診断データのうちの診断対象ビル内設備群に関するデータが診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られるビル内設備群の正常状態を示す許容範囲に含まれるかどうかで、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断する診断手段である。また、事例抽出部245は実施の形態3で説明したような、類似ビル内設備群に設置される設備の作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を第三の記憶手段である事例蓄積部26から検索する事例検索手段である。
診断対象ビルデータ抽出部241は診断対象となる診断対象ビル内設備群1−m(1≦m≦N)を選定し、診断対象ビル内設備群1−mに関する設置データS(m)を設置データ蓄積部22から、履歴データL(m)を履歴データ蓄積部23から抽出する。この際、履歴データL(m)から類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別する。特定データは昇降機稼動履歴データおよびビル内設備履歴データから選別され、診断データも昇降機稼動履歴データおよびビル内設備履歴データから選別される。
検索条件作成部242は診断目的に合わせて、検索対象ビルデータ抽出部241で抽出された特定データまたは設置データS(m)から、診断対象ビル内設備群と類似ビル内設備群を抽出するための履歴データの検索条件Cを作成する。検索条件Cは設置データS(1)〜S(N)から作成される設置データ検索条件CSと、履歴データL(1)〜L(N)のうちの類似ビル内設備群を特定する特定データから作成される履歴データ検索条件CLとからなる。なお、履歴データ検索条件CLに昇降機稼動履歴データが含まれることで、類似ビル内設備群を特定することができる。また、検索条件Cとしては、設置データ検索条件CSまたは履歴データ検索条件CLのいずれかまたは両方の条件があればよい。設置データ検索条件CSとしては、例えば、実施の形態1で説明した式(3)のような条件が与えることができる。また、履歴データ検索条件CLとしては、例えば、実施の形態1で説明した式(4)のような条件を与えることができる。
履歴データ抽出部243は、設置データS(1)〜S(N)と特定データとによりビル内設備群1−1〜1−Nの利用状況を示す利用指数を算出し、この利用指数からビル内設備群1−1〜1−Nの中から検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の集合K(C)を特定する。そして、類似ビル内設備群の集合K(C)に関する履歴データL’(k)を履歴データ蓄積部23から抽出する。ここで、kは検索条件Cに合致するビル内設備群の集合K(C)の要素である。
比較診断部244は類似ビル内設備群の履歴データL’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)を比較する。比較の方法としては、実施の形態1で説明したように、類似ビル内設備群の履歴データL’(k)に含まれる診断データX’(k)の頻度分布曲線と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)とを比較する方法、診断データX’(k)の平均値Xaと診断データX(m)を比較する方法、診断データX’(k)の平均値Xa’および標準偏差Xs’からの診断データX(m)の変移を比較する方法などがある。また、個別のビル内設備群1−nの診断データX(n)を用いてもよく、診断データX(n)は単一の値でも複数の値でもよい。なお、診断データX(n)はビル内設備履歴データLF(n)を昇降機稼動履歴データLE(n)で正規化した値としてもよい。たとえば、診断データX(n)を式(8)のように与えてもよい。
X(n)=LF(n)/LE(n) …(8)
なお、診断データX’(k)の頻度分布、平均値、標準偏差などからビル内設備群に設置される設備の正常状態を示す許容範囲を設定し、診断データX(m)がこの許容範囲に含まれるかどうかで稼動状態を診断することができる。以上のように、診断データのうちの診断対象ビル内設備群に関するデータが診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られるビル内設備群の正常状態を示す許容範囲に含まれるかどうかで、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断することができる。
事例蓄積部26はビル内設備群に設置される設備に対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を蓄積する第三の記憶手段であり、昇降機であるエレベーターとビル内設備の制御パラメータのチューニング事例、設備設計事例、故障事例のほか、ビル本体での行事事例などを蓄積している。表2に事例データ一覧表の一例を示す。なお、事例データは式(5)の形で表わされる。事例蓄積部26に蓄積された事例データからビル内設備群に設置される設備の正常状態を示す許容範囲を設定することができる。事例入力部27は式(5)の事例データを、事例蓄積部26に入力する端末であり、新たな作業事例が発生した場合に、事例の入力を行う
事例抽出部245は検索条件作成部242から出力される検索条件CがCV(j)に合致し、診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)がXV(j)と類似している事例CASE’(m)を事例蓄積部26に蓄積された事例データから抽出する。診断結果表示部25は比較診断部244で生成された比較診断結果と事例抽出部245で抽出された事例CASE’(m)を表示する。なお、CV(j)は事例CASE(j)を適用したときの検索条件の値、XV(j)は事例CASE(j)を適用したときの診断データの値である。
ところで、検索条件Cおよび履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としては、様々な組合せが可能である。第11の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)として空調機器の消費電力を設定し、検索条件Cのうち履歴データ検索条件CLとしてエレベーターの乗車人数と降車人数の積算から得られる推定滞在人数を設定することができる。推定滞在人数は類似ビル内設備群を特定するための利用指数である。ここで、ビルnのF階における時刻tでの推定滞在人数PN(n、t、F)は式(9)によって得られる。
PN(n、t、F)=(F階におけるビル開館から時刻tまでの降車人数の総和)
−(F階におけるビル開館から時刻tまでの乗車人数の総和) …(9)
また、ビルnのF階における時刻tでの推定滞在人数PN(n、t、F)の終日の平均値の2階以上の全階床に関する総和、つまり平均の推定全館内滞在人数をPNA(n)とすると、履歴データ検索条件CLは例えば、式(10)のように設定できる。
CL={PNA(n)×PNRL≦PNA(m)≦PNA(n)×PNRU}
…(10)
式(10)において、PNRLは下限許容率、PNRUは上限許容率であり、例えば、PNA(m)が1000人、PNRLが0.8、PNRUが1.2の場合、平均の滞在人数が800人から1200人のビル内設備群が検索対象となる。このように、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)および検索条件Cを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、滞在人数が類似しているビル内設備群の間で、空調機器の相対評価を行うことが可能となる。本評価は、1日全体の平均値で行ってもよいし、5分間以上の一定時間毎の平均待ち時間と乗車人数を用いて、一定時間ごとに診断を行ってもよい。また、階床毎に診断を行ってもよい。
第12の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)として、水道の利用量を設定し、検索条件Cを第11の組合せ例と同様に推定滞在人数とすることができる。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、滞在人数が類似しているビル内設備群との間で、水道の利用量を診断するとともに、水道利用量が類似ビル内設備群に対して多い場合に、検索された事例にもとづいて、故障の診断や、節水対策などを行うことが可能となる。
第13の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてPOSなどで入力可能なテナント店舗の売上高を設定し、検索条件Cを第11の組合せ例と同様に推定滞在人数とすることができる。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、滞在人数が類似しているビル内設備群の間で、売上高を診断することが可能となる。
第14の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてPOSなどで入力可能なテナント店舗の購入者数を設定し、検索条件Cを第11の組合せ例と同様に推定滞在人数とすることができる。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、滞在人数が類似しているビル内設備群の間で、購買者数を診断することが可能となる。
第15の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてテナントの空室率と賃貸料を設定し、検索条件Cを第11の組合せ例と同様に推定滞在人数とすることができる。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、滞在人数が類似しているビル内設備群の間で賃貸料と空室率の関係から、診断対象物件の賃貸料の診断が可能となる。
第16の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)として入退出管理システムの単位時間あたりの最大ゲート通過人数を設定し、検索条件Cのうち、履歴データ条件CLを単位時間あたりの最大降車人数を設定することができる。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、診断ビル内設備群に必要な入退出管理システムのスループットを推定することが可能となり、入退出管理システムの設備設計が可能となる。また、上記の診断を階床毎や時間帯毎に行うことにより、入退出管理システムのセキュリティレベルとスループットに関するパラメータ調整が可能となる。
第17の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてビル消費電力を推定滞在人数で割った値を設定する。また、検索条件Cとして、ビル階床数とビルの1階床あたりの床面積とを設定する。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、規模が類似しているビル内設備群の間で1人あたりの消費電力量を診断するとともに、1人あたりの消費電力が類似ビル内設備群に対して多い場合に、検索された事例にもとづいて節電対策などを行うことが可能となる。
第18の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)として水道利用料を推定滞在人数で割った値を設定する。また、検索条件Cとしてビル階床数とビルの1階床あたりの床面積とを設定する。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、規模が類似しているビル内設備群の間で、1人あたりの水道の利用量を診断するとともに、1人あたりの水道利用量が類似ビル内設備群に対して多い場合に、検索された事例にもとづいて、故障の診断や、節水対策などを行うことが可能となる。
第19の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてPOSなどで入力可能なテナント店舗の売上高を推定滞在人数で割った値を設定する。また、検索条件Cとしてビル階床数とビルの1階床あたりの床面積とを設定する。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、規模が類似しているビル内設備群の間で、滞在人数1人あたりの売上高を診断することが可能となる。
第20の組合せ例としては、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)としてPOSなどで入力可能なテナント店舗の購入者数を推定滞在人数で割った値を設定する。また、検索条件Cとしてビル階床数とビルの1階床あたりの床面積とテナント業務種別とを設定する。このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)と診断対象ビル内設備群の履歴データL(m)に含まれる診断データX(m)を比較することによって、規模やテナント業種が類似しているビル内設備群の間で、滞在人数と購入者数の比を診断することが可能となる。
本実施の形態では、ビル内設備群に設置される設備である昇降機としてエレベーターを設置した場合について説明したが、エレベーターに加えてエスカレーターを設置してもよいし、エスカレーターだけを設置してもよい。
以上のように、昇降機に関する設置データとビル内設備13−1〜13−Nに関する設置データとを蓄積する第一の記憶手段として設置データ蓄積部22と、昇降機稼動履歴データとビル内設備履歴データとを履歴データとして蓄積する第二の記憶手段として履歴データ蓄積部23と、複数のビル内設備群から類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段として診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243と、診断対象ビル内設備群に設置される設備の稼動状態を診断する診断手段として比較診断部244とを備えることにより、多数の履歴データの中から、類似ビル内設備群における履歴データと診断対象ビル内設備群のデータを比較することにより相対的な評価値を得ることが可能となり、診断対象ビル内設備群の昇降機およびビル内設備の稼動状態を診断することができる。
実施の形態6.
図10は、この発明を実施するための実施の形態6におけるビル設備診断装置と複数のビル内設備群との構成図である。このビル設備診断装置により、複数のビル内設備群に設置された昇降機の稼動履歴データと昇降機以外のビル内設備の履歴データから、ビル内設備履歴データが送受できない設備の稼動状況を推定し、正常かどうか診断するものである。
図10において、ビル設備診断装置はビル内設備履歴データを送受できない設備を有するビル内設備群3−1〜3−M、比較診断部244に代えて比較推定部246で構成され、それ以外は実施の形態5で説明したものと同じである。ここで、Mはビル設備診断装置2とビル内設備履歴データを送受できない設備を有するビル内設備群の数を表わしており、Mは1以上の整数である。ビル内設備群3−1〜3−Mには診断装置側通信部21とデータを送受するビル側通信部32−1〜32−M、ビル側通信部32−1〜32−Mとデータを送受できる昇降機の制御部であるエレベーター制御部31−1〜31−M、ビル内設備履歴データをビル側通信部32−1〜32−Mへ送受できない設備が含まれるビル内設備33−1〜33−Mで構成されている。
ビル設備診断装置2は診断装置側通信部21、設置データ蓄積部22、履歴データ蓄積部23、診断部24、診断結果表示部25、事例蓄積部26、事例入力部27で構成される。診断装置側通信部21は、ビル側通信部12−1〜12−Nおよびビル側通信部32−1〜32−Mと有線または無線のネットワークで接続されているか、共通の媒体が扱えるインタフェースを備えている。
設置データ蓄積部22は複数のビル内設備群1−1〜1−Nおよびビル内設備群3−1〜3−Mそれぞれに昇降機として設置されるエレベーターの設置データとエレベーター以外のビル内設備の設置データを蓄積する第一の記憶手段であり、ビル内設備群に設置された設備や機器の設置、テナントの状況、業種などに関するデータのうち少なくともエレベーターとその他の設備、施設に関する設置データを記憶する。
履歴データ蓄積部23は昇降機として設置されるエレベーターの制御部であるエレベーター制御部11−1〜11−Nおよびエレベーター制御部31−1〜31−Mとの間で送受される昇降機稼動履歴データと、ビル内設備のうちの一部であるビル内設備13−1〜13−Nとの間で送受されるビル内設備履歴データとを履歴データとして蓄積する第二の記憶手段であり、入力された履歴データを蓄積する。なお、ビル内設備33−1〜33−Mの設備のうちのビル側通信部32−1〜32−Nとデータを送受できる個別の設備に関するビル内設備履歴データを履歴データ蓄積部23に蓄積してもよい。
診断部24は設置データ蓄積部22と履歴データ蓄積部23に蓄積されたデータから、ビル内設備群3−1〜3−Nのいずれかのビル内設備群3−nの診断を行うものであり、診断対象ビルデータ抽出部241、検索条件作成部242、履歴データ抽出部243、事例抽出部245、比較推定部246で構成される。診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243は、昇降機稼動履歴データとビル内設備履歴データとから類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別し、設置データと特定データとによりビル内設備群の利用状況を示す利用指数を算出し、ビル内設備のうちのビル内設備履歴データを送受できない設備を有するビル内設備群である診断対象ビル内設備群の利用指数により設定される所定の範囲に利用指数が収まるかどうかで複数のビル内設備群から類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段である。なお、診断したい目的に合わせて診断データをあらかじめ設定し、特定データと診断データを区別してもよい。比較推定部246は第一の記憶手段である設置データ蓄積部22にビル内設備の設置データは蓄積されているがビル内設備履歴データを送受できない設備の稼動状態を診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られる統計値により類推して、稼動状態が正常かどうかを診断する判断手段である。また、事例抽出部245は実施の形態3で説明したような、類似ビル内設備群に設置される設備の作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を第三の記憶手段である事例蓄積部26から検索する事例検索手段であり、昇降機とビル内設備について事例検索を行う。
診断対象ビルデータ抽出部241は診断対象となる診断対象ビル内設備群3−m(1≦m≦M)を選定し、診断対象ビル内設備群3−mに関する設置データS(N+m)を設置データ蓄積部22から、履歴データL(N+m)を履歴データ蓄積部23から抽出する。この際、履歴データL(N+m)から類似ビル内設備群を特定する特定データと診断データとを選別する。ここで、Nはビル設備診断装置2とデータを送受することができるビル内設備群の数であり、ビル内設備群3−mに関するデータはN+m番目に蓄積されていることを表している。特定データは昇降機稼動履歴データおよびビル内設備履歴データから選別され、診断データも昇降機稼動履歴データおよびビル内設備履歴データから選別される。診断データは昇降機稼動履歴データから選別される場合もある。
検索条件作成部242は診断目的に合わせて、検索対象ビルデータ抽出部241で抽出された特定データと設置データとから、診断対象ビル内設備群と類似ビル内設備群を抽出するための履歴データの検索条件Cを作成する。検索条件Cは設置データから作成される設置データ検索条件CSと、履歴データのうちの類似ビル内設備群を特定する特定データから作成される履歴データ検索条件CLとからなる。なお、履歴データ検索条件CLに昇降機稼動履歴データが含まれることで、類似ビル内設備群を特定することができる。また、検索条件Cとしては、設置データ検索条件CSまたは履歴データ検索条件CLのいずれかまたは両方の条件があればよい。設置データ検索条件CSとしては、例えば、実施の形態1で説明した式(3)のような条件が与えることができる。また、履歴データ検索条件CLとしては、例えば、実施の形態1で説明した式(4)のような条件を与えることができる。
履歴データ抽出部243は、設置データと特定データとによりビル内設備群1−1〜1−Nの利用状況を示す利用指数を算出し、この利用指数からビル内設備群1−1〜1−Nの中から検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の集合K(C)を特定する。そして、類似ビル内設備群の集合K(C)に関する履歴データL’(k)を履歴データ蓄積部23から抽出する。ここで、kは検索条件Cに合致するビル内設備群の集合K(C)の要素である。
比較推定部246では第一の記憶手段である履歴データ蓄積部23にビル内設備の設置データは蓄積されているがビル内設備履歴データを送受できない設備の稼動状態を診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られる統計値により類推して、稼動状態が正常かどうかを診断する判断手段である。例えば、診断データのうちの類似ビル内設備群に関するデータの集合から得られる統計値として、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)の平均値Xa’を求め、診断対象ビル内設備群3−mの診断データX(N+m)の推定値XES(N+m)として出力する。推定値XES(N+m)からビル内設備の稼動状況を診断することができる。また、作業事例または故障事例と組合せて稼動状況を診断することもできる。
例えば、履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)として水道ポンプの稼動率を設定し、検索条件Cを実施の形態5の第11の組合せ例と同様に推定滞在人数とすることができる。一般に水道使用量つまり水道ポンプの稼働頻度は滞在人数に比例すると考えられるので、このように履歴データL(n)に含まれる診断データX(n)と検索条件Cとを設定し、検索条件Cに合致する類似ビル内設備群の履歴データL’(k)中に含まれる診断データX’(k)の統計値として平均値を求めることによって、滞在人数が類似しているビル内設備群における水道ポンプ稼動率の推定値XES(N+m)を類推して、水道ポンプの稼動履歴データが送受できないビル内設備群においても水道ポンプの稼働率の推定ができ、水道ポンプの稼動状態が正常かどうかを診断し、事例蓄積部26に蓄積された事例データなどから設備の故障予測が可能となる。
なお、事例蓄積部26はビル内設備群に設置される設備に対する作業事例と故障事例のいずれかまたは両方を蓄積する第三の記憶手段であり、昇降機としてエレベーターとビル内設備の制御パラメータのチューニング事例、設備設計事例、故障事例のほか、ビル本体での行事事例などを蓄積している。事例入力部27は事例データを、事例蓄積部26に入力する端末であり、新たな作業事例が発生した場合に、事例の入力を行う。診断結果表示部25では、診断データの推定値と事例抽出部245で抽出した事例データとを表示する。
本実施の形態では、ビル内設備群に設置される設備である昇降機としてエレベーターを設置した場合について説明したが、エレベーターに加えてエスカレーターを設置してもよいし、エスカレーターだけを設置してもよい。
以上のように、昇降機とビル内設備との設置データを蓄積する第一の記憶手段として設置データ蓄積部22と、昇降機稼動履歴データと、ビル内設備のうちの一部との間で送受されるビル内設備履歴データとを蓄積する第二の記憶手段として履歴データ蓄積部23と、複数のビル内設備群から類似ビル内設備群を特定する類似ビル特定手段として診断対象ビルデータ抽出部241と検索条件作成部242と履歴データ抽出部243と、ビル内設備履歴データを送受できない設備の稼動状態が正常かどうかを診断する判断手段として比較推定部246とを備えることにより、複数のビル内設備群に設置された昇降機の稼動履歴データと昇降機以外のビル内設備の履歴データから、ビル内設備履歴データを送受できない設備の稼動状態を推定し、正常かどうか判断することができる。