JP2017088314A - 機器診断装置および機器診断方法、並びに機器診断システム - Google Patents
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Abstract
【課題】機器の動作状態の診断において、稼動状態の影響を考慮して異常や故障の検出精度を向上することができる機器診断装置を提供する。【解決手段】複数の機器の動作状態を診断する機器診断装置が、複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、複数の機器の内の診断対象外機器から選択する類似機器選択手段6と、類似機器選択手段6によって選択される診断対象外機器の動作状態に基づいて、診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成する基準データ算出手段7と、基準データ算出手段7によって算出される基準データと診断対象機器の動作状態とを比較して、診断対象機器の動作状態の異常の有無を判定する判定手段12と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、エレベーターなどの機器の動作状態を診断する機器診断装置および機器診断方法、並びに機器診断システムに関する。
エレベーターは、ビル内で人々を上下方向に輸送する装置であり、都市空間において必須の装置であるため、エレベーターには、正常な動作状態を保持することが求められる。このため、エレベーターの動作状態を診断し、異常や故障を的確に検出して、迅速に対処する必要がある。これに対し、特許文献1および特許文献2に記載の従来技術が知られている。
特許文献1に記載の技術においては、エレベーターのマグネットブレーキのコイルに流れる電流の乱れによって、マグネットブレーキの動作異常の有無を診断する。その際、エレベーターが停止してから一定時間経過後に診断を行う。これにより、電流の乱れの検出値に対するコイルの温度上昇の影響が除去される。
特許文献2に記載の技術においては、故障診断対象の昇降機が正常であっても走行性能の計測値が標準判定値からはずれる場合に、同様な仕様の他の昇降機の計測値に基づいて個別に判定値が設定される。
特許文献1に記載の技術においては、コイルの温度上昇がエレベーターの稼動頻度により変動したり、時間経過に伴うコイル温度の低下が外気温の影響を受けたりするため、診断時のコイル温度が一様ではない。
また、特許文献2に記載の技術においては、昇降機の仕様が同様であっても、走行性能の計測値が昇降機の稼動頻度にも依存する。
このように、上記従来技術によるエレベーターの動作状態の診断においては、計測値や判定値がエレベーターの稼動状態や使用環境によって影響を受けるため、それらの影響を考慮して、判定の為の閾値は安全に診断できるように設定されることが多い。その場合、実際には計測値が正常な範囲でばらついていたとしても、確認の為に点検を行うこともあり、当該点検によるエレベーター利用者の利便性低下に繋がる問題がある。
そこで、本発明は、エレベーターなどの機器の動作状態の診断において、稼動状態の影響を考慮して異常や故障の検出精度を向上することができる機器診断装置および機器診断方法、並びに機器診断システムを提供する。
上記課題を解決するために、本発明による機器診断装置は、複数の機器の動作状態を診断するものであって、複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、複数の機器の内の診断対象外機器から選択する類似機器選択手段と、類似機器選択手段によって選択される診断対象外機器の動作状態に基づいて、診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成する基準データ算出手段と、基準データ算出手段によって算出される基準データと診断対象機器の動作状態とを比較して、診断対象機器の動作状態の異常の有無を判定する判定手段と、を備える。
また、上記課題を解決するために、本発明による機器診断方法は、複数の機器の動作状態を診断する方法であって、複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、複数の機器の内の診断対象外機器から選択し、選択された診断対象外機器の動作状態に基づいて、診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成し、作成された基準データと診断対象機器の動作状態とを比較して、診断対象機器の動作状態の異常の有無を判定する。
さらに、本発明による機器診断システムは、複数の機器の動作状態を診断するものであって、複数の機器の稼動頻度に関する情報を取得する複数の監視端末装置を備えると共に、監視端末装置によって取得された複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、複数の機器の内の診断対象外機器から選択する類似機器選択手段と、類似エレベーター選択手段によって選択される診断対象外機器の動作状態に基づいて、診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成する基準データ算出手段と、基準データ算出手段によって算出される基準データと診断対象機器の動作状態とを比較して、診断対象機器の動作状態の異常の有無を判定する判定手段と、を備えるセンター装置を備える。
本発明によれば、機器の稼動状態を考慮した診断が行えるため、診断精度が向上する。よって、異常の予兆を検出することができるようになり、適切なタイミングで保守を実行することで保守による不稼動時間を低減させ、利用者の利便性を向上することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
本発明は、診断対象機器の動作状態や使用環境の影響による、計測値のばらつきや変動を考慮し、機器診断を行うものである。
図1は本発明の実施例1であるエレベーターの診断装置の構成を示す機能ブロック図である。
診断対象エレベーターの起動回数取得器1zと、稼動時間取得器2z、エレベーター仕様保存器3z、ビル用途保存器14zのデータは、稼動頻度推定器5zに入力され、診断対象エレベーターの稼動頻度が推定される。
また、診断対象エレベーターと同機種であるが、一部の仕様(階床数、積載人数、かご速度など)が異なる他のエレベーターAに対して、起動回数取得器1a、稼動時間取得器2a、エレベーター仕様保存器3a、ビル用途保存器14aの各データは、稼動頻度推定器5aに入力され、他のエレベーターAの稼動頻度が推定される。同様のエレベーターBに対しても、図示しない起動回数取得器、稼動時間取得器およびエレベーター仕様保存器の各データ、並びに図1に示すビル用途保存器14aのデータは、稼動頻度推定器5bに入力され、他のエレベーターBの稼動頻度が推定される。なお、エレベーターA,B以外の診断対象外エレベーター(図示を省略)についても、エレベーターA,Bと同様である。
稼動頻度推定器5a,5bなどにて推定される診断対象外エレベーターA,Bなどの稼動頻度と、稼動頻度推定器5zにて推定される診断対象エレベーターの稼動頻度は、類似エレベーター選択器6に入力され、稼動頻度が診断対象エレベーターに近い複数あるいは一つの診断対象外エレベーター(以下、「類似エレベーター」と記す)が選択される。
基準データ算出器7は、診断対象外エレベーターA,Bなどの動作状態(例えば、電磁ブレーキのコイル電流)を示すセンサ4a,4bなどによって計測されたセンサデータと、類似エレベーター選択器6が出力する類似エレベーターに関するデータを入力する。そして、基準データ算出器7は、入力した診断対象外エレベーターのセンサデータの中から、類似エレベーターのセンサデータを選択して、選択したセンサデータに基づいて、診断対象エレベーターの動作状態を診断する際の判定基準となる基準データを算出する。
基準データ算出器7で算出された基準データは、温度感度推定器9に入力される。また、気温データ10も温度感度推定器9に入力される。これらのデータに基づいて、温度感度推定器9は、類似エレベーターの基準データの温度感度を推定する。
診断対象エレベーターのセンサ4zのデータと、気温データ10と、温度感度推定器9で推定された温度感度データは、温度変動除去器11に入力され、これらのデータに基づいて、温度変動除去器11は診断対象エレベーターへの温度影響を除去する。また、基準データ算出器7で算出された基準データと、気温データ10と、温度感度推定器9で推定された温度感度は、温度変動除去器8に入力され、これらのデータに基づいて、温度変動除去器8は基準データの温度変動を除去する。
温度変動除去器8によって温度変動が除去された基準データと、温度変動除去器11によって温度変動が除去された診断対象エレベーターのセンサデータは、判定器12に入力される。これらのデータに基づいて、判定器12は、診断対象エレベーターのセンサデータが、基準データに対して所定の範囲内におさまっているかどうかを判定し、その結果を出力器13へ出力する。出力器13は、判定器12が出力した判定結果を、所定の形態(画像、文字、音声など)で表示する。
なお、図1において、エレベーター仕様保存器(3z,3aなど)、ビル用途保存器(14z,14a,14bなど)は、半導体メモリなどの記憶装置によって構成される。また、センサや気温データ以外の各機能ブロックについては、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を備えるコンピュータシステムが、所定のプログラムを実行することによって各機能ブロックとして動作する。
次に、稼動頻度推定器(5z,5a,5bなど)の処理内容について図2を用いて説明する。
図2は、本実施例1における移動頻度推定器によって推定される稼動頻度データである、エレベーターの起動回数と稼動時間の関係を示す。なお、図2においては、複数の稼動頻度推定器によって推定される稼動頻度データをまとめて示している。
エレベーターの稼動頻度は、起動時間、起動回数、エレベーターの仕様やビル用途(ビルに応じたエレベーターの使い方)などの指標に依存する。まず、ビル用途別、エレベーターの仕様別に、起動回数と稼動時間の関係がプロットされる。ビル用途、エレベーターの仕様、起動回数および稼動時間の各データは、それぞれ、ビル用途保存器(14z,14a,14bなど)、エレベーター仕様保存器(3z,3aなど)、起動回数取得器(1z,1aなど)および稼動時間取得器(2z,2aなど)から入力される。
図2においては、複数のプロットが、同じライン上に乗るプロット群、すなわち起動回数と稼動時間の関係が同様であるグループa,b,cに分かれている。ここで、グループa,b,cは、エレベーター仕様の違いを示す。同じ稼動時間に対しても、グループごとに起動回数が異なる。例えば、同じ稼動時間に対して、超高層ビルの最上階へシャトル運転するエレベーターの起動回数は、2階床のエレベーターよりも少なくなる。なお、図2中には明記されないが、同じグループ内においても、ビル用途の違いにより、プロットの変動範囲が異なる。なお、図2においてはエレベーターの起動回数および稼働時間に基づいてグループ分けを行う例であり、エレベーターの起動回数のみ、或いは稼働時間のみのように、1つの指標でグループ分けを行っても良い。稼働頻度のグループ分けを行うための指標が多いほど、より細かいグループ分けを行うことが可能となる。
このようなグループ分け、すなわち分類をするのは、診断対象エレベーターのセンサ4zのセンサデータによっては、稼働頻度、具体的には単位時間あたりの起動回数の影響を受けることを考慮しているためである。例えば、電磁ブレーキのコイル電流のセンサデータは、単位時間あたりの起動回数によってコイルの温度が変動するため、単位時間あたりの最大起動回数の影響を受ける。この点を考慮して、類似エレベーター選択器6にて、診断対象エレベーターの的確な診断のために好適な比較対象として、診断対象エレベーターと稼働頻度や使い方が同様な診断対象外エレベーターが選択される。
次に、類似エレベーター選択器6の処理内容について図3を用いて説明する。
図3は、類似エレベーターの選択に用いるテーブルデータを示す。本テーブルデータは、稼動頻度推定器(5z,5a,5bなど)から入力する稼動頻度データ(エレベーター仕様に関する情報(図2におけるグループa,b,c)を含む)、並びにビル用途保存器(14z,14a,14bなど)から入力するビル用途データに基づいて、類似エレベーター選択器6によって作成および更新される。
図3に示すテーブルデータにおいては、グループa,b,cすなわちエレベーター仕様、稼動頻度を示す指標α,β,γおよびビル用途1,2,3(図3中ではローマ数字で表記)をパラメーターとして、診断対象となり得る複数のエレベーターが、グループ(1)〜(9)のいずれかに分類されている。なお、本図3においては、グループ(仕様)と指標の組を三組示しているが、同じグループで指標が異なる場合や、異なるグループでも指標が同じである場合も含む。例えば、図3においては、グループ(仕様)と指標の組として、(a,α)が示されているが、(a,β)も含み得る。
ここで、指標は、予め類似エレベーター選択器6に設定される数式や変換ルールによって、稼動頻度推定器から入力する稼動頻度データから換算される。例えば、ブレーキについては、単位時間あたりの最大起動回数が主要な指標となる。なお、指標は、特定の数値あるいは数値範囲によって表わされる。
類似エレベーター選択器6は、診断対象エレベーターの稼動頻度推定器5zから入力する稼動頻度データを指標へ換算し、換算された指標と、ビル用途保存器14zから入力するビル用途データに対応するエレベーターを図3のテーブルデータから抽出し、抽出されたエレベーターを類似エレベーターとして出力する。図3においては、診断対象エレベーターの稼動頻度から換算された指標β(対応するグループ(仕様)はb)、診断対象エレベーターのビル用途1に、指標とビル用途が合致するグループ(4)に属する診断対象外エレベーターが類似エレベーターとして選択される。
なお、移動頻度推定にビル用途を用いながらも、類似エレベーターを選択するためにビル用途を再度用いるのは、ビル用途に伴うエレベーター稼動状態の期間的な変動(例えば、季節による変動)を考慮するためである。例えば、長期休暇中などでエレベーターの利用者が減少する場合は、エレベーターの稼動状態が変化する。そのため、比較対象とする類似エレベーターとしては、ビル用途が同じエレベーターであることが好ましい。
次に、基準データ算出器7の処理内容について図4を用いて説明する。
図4は、類似エレベーターのセンサデータと基準データ算出器7によって算出される基準データを示す。
基準データ算出器7は、類似エレベーターと判定されたエレベーター(A,B,Cなど)の各センサデータを、時系列で整理する。これにより、図4に示すように、類似エレベーターごとに、センサデータの時刻変化を示すデータが得られる。これらのデータに基づいて、基準データ算出器7は、同じタイミングすなわち同じ時刻範囲における基準(値)とばらつきを算出して、これを基準データとする。このとき、基準値としては、類似エレベーター(A,B,Cなど)のセンサデータの平均値、中央値、最大値、最小値など、センサデータによって異常の有無を判定するエレベーターの動作状態(例えば、電磁ブレーキのコイル電流、エレベータドアスイッチ信号など)の種類に応じて、的確な判定結果を得るために好適な指標が用いられる。また、ばらつきとしては、標準偏差、その整数倍値など、データのばらつきの大きさを示す指標が用いられる。
基準データ算出器7は、時系列の各センサデータにおける同じ時刻範囲のデータに基づいて基準データを算出しているが、これは、稼動頻度が同様の類似エレベーターであっても、据付時期などの違いによりセンサデータの取得時刻範囲が異なったり、時刻範囲が異なればエレベーターが受ける気温変化の影響が異なったりするためである。なお、センサデータを時系列で整理する場合の時間間隔は、1日、1週間、1ヶ月など適宜設定できるが、各センサで予め設定される。
次に、温度感度推定器9の処理内容について、図5を用いて説明する。
図5は、基準データ中のセンサ出力値と温度との関係の一例を示す。
温度感度推定器9は、基準データと気温データ10から、例えば図5に示すような、センサ出力と温度の関係を求める。気温データ10は、ビルあるいはエレベーターが備える温度センサにより計測しても良いし、ビルあるいはエレベーターの所在地域における気象データを用いても良い。図5に示すように、温度とセンサ出力の間に相関関係があれば、温度感度推定器9は、相関関係に基づき温度に対するセンサ感度を推定する。図5では、プロットされた各点を直線近似した場合の直線の傾きが、温度に対するセンサ感度(温度感度)に相当する。なお、温度感度推定器9は、予め想定されるセンサ出力と温度との間の相関関係に応じた計算手段、例えば、図5のように直線的(一次関数的)な相関関係であれば公知の最小二乗法などを用いて、温度感度を推定する。
次に、温度変動除去器8,11の処理内容を説明する。
温度変動除去器8は、温度感度推定器9によって推定されたセンサデータの温度感度と、気温データ10(基準データと共に温度感度推定器9から取得)とに基づいて、基準データ算出器7によって算出された基準データに含まれる温度変動成分を推定し、推定した変動成分を基準データから除去する。また、温度変動除去器11は、同様に、診断対象エレベーターのセンサデータから温度変動成分を除去する。例えば、図5のような一次関数的な相関関係の場合、温度感度(近似直線の傾き)をαとし、基準温度(気温)をT0とすれば、温度TにおけるセンサデータS(T)の基準温度に対する温度変化分はα(T−T0)と表せる。従って、S(T)からα(T−T0)を減ずれば、センサデータ(基準データ、診断対象エレベーターのセンサデータ)から温度変動成分が除去される。
このように温度変動除去器8,11によって基準データおよび診断対象エレベーターのセンサデータから温度成分を除去することにより、後述する判定器12による判定において、両データ間における温度の影響の相違が排除できる。これにより、判定精度が向上できる。
なお、センサデータが示す物理量の温度依存性が小さい場合には、温度感度推定器9および温度変動除去器8,11は省略しても良い。
次に、判定器17の処理内容を説明する。
判定器12は、温度変動除去器11によって温度変動が除去された、診断対象エレベーターのセンサデータが、温度変動除去器8によって温度変動が除去された基準データに対して、所定の判定基準の範囲内に収まっているか否かを判定する。例えば、判定器17は、診断対象エレベーターのセンサデータであって、計測時刻の情報を有する時系列データと、時刻情報を有する基準データの時系列データについて、時刻ごとに二乗誤差を算出し、さらに、算出された各二乗誤差の平均値、いわゆる平均二乗誤差を算出する。判定器12は、算出された平均二乗誤差が、所定の判定基準値以下であれば、診断対象エレベーターのセンサデータに係る診断内容に関して正常であると判定し、所定の判定基準値より大きければ、異常と判定する。そして、判定器12は、判定結果を出力器13へ出力する。
出力器13は、判定器12が出力した判定結果、すなわち異常の有無に関する情報を、画像、文字、音声などによって表示する。この時、異常の有無に関する情報と共に、診断対象エレベーターのセンサデータおよび基準データを表示しても良い。この場合、判定器12は、判定結果を出力器13へ出力すると共に、判定に用いたセンサデータおよび基準データを出力器13へ転送する。これにより、的確な異常要因の検討が可能となる。
上述のように、本実施例1によれば、診断対象エレベーターと稼動頻度が類似する診断対象外エレベーターの動作状態を基準として、診断対象エレベーターの動作状態を診断するので、動作状態の診断の精度や信頼性が向上する。さらに、エレベーター仕様や用途にも基づいて類似エレベーターを選択することにより、診断対象エレベーターに適応する基準データが設定されるので、診断の精度や信頼性が向上する。特に、使われ方によって動作状態の正常範囲が変動する場合や、新設のエレベーターのように利用実績が乏しいか皆無である場合でも、判定基準設定のための動作状態確認作業をすることなく、異常の有無を的確に判定できる判定基準を設定できる。
また、本実施例1によれば、診断対象エレベーターの動作状態を示すセンサデータおよび基準データから温度変動成分を除去するので、動作状態が気温、あるいは使用環境の温度によって変動する場合でも、精度および信頼性の高い診断ができる。
なお、本実施例1の機器診断手段は、エレベーターにおけるブレーキ装置やドア開閉装置などの各種エレベーター機器に適用できる。さらに、本実施例1の機器診断手段は、エレベーター機器に限らず、空調機や冷凍機、家電機器、建設機器、プラント機器など、動作状態の診断を行う各種機器に適用できる。
図6は、本発明の実施例2であるエレベーター診断装置の構成を示す機能ブロック図である。以下、主に、実施例1と異なる点について説明する。
本実施例2においては、実施例1と異なり、稼動頻度推定器(5z,5a,5bなど)への入力データが、実施例1における起動回数、稼動時間、エレベーター仕様およびビル用途の内、エレベーター仕様とビル用途が入力され、起動回数および稼動時間は入力データとはしない。これは、通常、ビル用途とエレベーター仕様が同様のエレベーターは、使われ方も同様であるため、起動回数や稼動時間が同程度になることが考慮されているためである。
本実施例2において、稼動頻度推定器(5z,5a,5bなど)は、エレベーター仕様保存器(3z,3aなど)およびビル用途保存器(14z,14a,14bなど)から、それぞれエレベーター仕様データおよびビル用途データを取得して、これらのデータを整理して、稼動頻度データとして、類似エレベーター選択器6へ出力する。類似エレベーター選択器6は、エレベーター仕様データおよびビル用途データをパラメーターとしてエレベーターを分類したテーブルデータを用いて、診断対象エレベーターのエレベーター仕様データおよびビル用途データに合致する診断対象外エレベーターを選択する。
本実施例2によれば、診断対象エレベーターと仕様やビル用途が類似する診断対象外エレベーターの動作状態を基準とすることにより、実質的に、診断対象エレベーターと稼動頻度が類似する診断対象外エレベーターの動作状態を基準にすることができる。従って、実施例1と同様に、動作状態の診断の精度や信頼性が向上する。さらに、稼動頻度推定器および類似エレベーター選択における処理が簡略化されるので、診断のスピードが向上する。
なお、本実施例2の機器診断手段は、実施例1と同様に、各種エレベーター機器に適用できると共に、エレベーター機器に限らず、動作状態の診断を行う各種機器に適用できる。
上述のような実施例1および2において、単位時間あたりの起動回数が実測できる場合には、単位時間あたりの起動回数が実測値を稼動頻度として、類似エレベーターを選択しても良い。また、類似エレベーターの選択に用いる各種データを計測できる場合は、計測されたデータを用いても良い。
なお、図1,6においては、各エレベーターについて、図示されるセンサは1個であるが、これに限らず、複数個でも良い。この場合、類似するエレベーターを先に定めてから、診断対象エレベーターのセンサデータに対応する類似エレベーターのセンサデータを選択しても良い。また、各センサデータの主要因となる物理現象が異なる場合には、類似エレベーターを判定するパラメーターが一致しているものだけでなく、所定の許容範囲内のパラメーターを有するものを含めて、類似エレベーターを選択しても良い。
図7は本発明の実施例3であるエレベーターの診断システムの構成図を示す。
ビル21a,21bにおいて、それぞれ、エレベーター31a,31bが設けられている。図示しないエレベーター31a,31bのエレベーター制御装置には、それぞれ監視端末装置32a,32bが接続される。監視端末装置はエレベーター制御装置からの信号に基づき、エレベーターの稼動頻度に関する情報、例えば、起動回数および稼動時間を取得して記憶する。また、監視端末装置は、各エレベーターが備えるセンサ(図示せず)から出力される、エレベーターの動作状態を示すセンサデータを取得して記憶する。さらに、監視端末装置は、エレベーター仕様データおよびエレベーターのビル用途データを記憶する。
また、ビル21a,21bの所在場所とは地理的に離れた場所に設置される監視センター22において、複数のエレベーター(図7では、31a,31b)の稼動状態を監視するセンター装置33が設けられる。
監視端末装置32a,32bは、定期的に、あるいはセンター装置33から通信回線網30を介して送信される指令信号に応じて、記憶しているエレベーターの稼動頻度に関する情報、エレベーター仕様データ、エレベーターのビル用途データ、並びにセンサデータを、通信回線網30を介して、センター装置33へ送信する。
センター装置33は、受信したエレベーターの稼動頻度に関する情報、エレベーター仕様データ、エレベーターのビル用途データ、並びにセンサデータに基づいて、図3に示したような類似エレベーター選択のためのテーブルデータを作成および更新し、実施例1および実施例2と同様に、動作状態を診断するエレベーターに類似する診断対象外エレベーターを選択して、基準データを算出し、基準データと診断対象エレベーターの動作状態を示すセンサデータを比較して、診断対象エレベーターの動作状態の異常の有無を判定する。
より具体的な装置構成として、監視端末装置は、図1,2に示す、エレベーターの稼動頻度に関する情報取得手段(起動回数取得器(図1)、稼動時間取得器(図1)、エレベーター仕様保存器(図1,2)、ビル用途保存器(図1,2))および稼動頻度推定器を備えると共に、図1,2では図示されないセンサデータ取得器およびセンサデータ保存器を備える。また、センター装置33は、図1,2に示す、類似エレベーター選択器、基準データ算出器、温度感度推定器、温度変動除去器、判定器並びに出力器を備える。なお、移動推定器は、センター装置の方に設けても良い。
本実施例によれば、実施例1,2と同様に、動作状態の診断の精度や信頼性が向上する。また、地理的に互いに離れた場所に設けられる多数のエレベーターの動作状態をセンター装置により統括的に診断することができる。
また、本実施例3の機器診断システムは、エレベーターに限らず、動作状態の診断を行う各種機器に適用できる。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
1a,1z 起動回数取得器
2a,2z 稼動時間取得器
3a,3z エレベーター仕様保存器
4a,4b,4z センサ
5a,5b,5z 稼動頻度推定器
6 類似エレベーター選択器
7 基準データ算出器
8 温度変動除去器
9 温度感度推定器
10 気温データ
11 温度変動除去器
12 判定器
13 出力器
14a,14b,14z ビル用途保存器
21a,21b ビル
22 監視センター
30 通信回線網
31a,31b エレベーター
32a,32b 監視端末装置
33 センター装置
2a,2z 稼動時間取得器
3a,3z エレベーター仕様保存器
4a,4b,4z センサ
5a,5b,5z 稼動頻度推定器
6 類似エレベーター選択器
7 基準データ算出器
8 温度変動除去器
9 温度感度推定器
10 気温データ
11 温度変動除去器
12 判定器
13 出力器
14a,14b,14z ビル用途保存器
21a,21b ビル
22 監視センター
30 通信回線網
31a,31b エレベーター
32a,32b 監視端末装置
33 センター装置
Claims (15)
- 複数の機器の動作状態を診断する機器診断装置において、
前記複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、前記複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、前記複数の機器の内の診断対象外機器から選択する類似機器選択手段と、
前記類似機器選択手段によって選択される前記診断対象外機器の動作状態に基づいて、前記診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成する基準データ算出手段と、
前記基準データ算出手段によって算出される前記基準データと前記診断対象機器の動作状態とを比較して、前記診断対象機器の前記動作状態の異常の有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
機器の稼動時間または起動回数の少なくともいずれかに基づいて、前記稼動頻度を推定する稼動頻度推定手段を備えることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項2に記載の機器診断装置において、
前記稼動頻度推定手段は、機器の仕様または用途の少なくともいずれかに基づいて、前記稼動頻度を推定することを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
機器の仕様または用途の少なくともいずれかに基づいて、前記稼動頻度を推定する稼動頻度推定手段を備えることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
前記類似機器選択手段は、機器の用途に基づいて、前記類似機器を選択することを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
前記診断対象機器の動作状態を計測可能なセンサを有し、
前記基準データ算出手段は、計測時刻の情報を有するセンサデータに基づいて前記基準データを作成することを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
前記基準データ算出手段は、複数の前記診断対象外機器の同じ時刻範囲の動作状態に基づいて前記基準データを作成することを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
温度データと、温度と動作状態の相関関係とに基づいて、前記基準データと前記診断対象機器の動作状態から温度変動成分を除去する温度変動除去手段を備え、
前記判定手段は、前記温度変動除去手段によって温度変動成分が除去された前記基準データおよび前記診断対象機器の動作状態を比較して、前記診断対象機器の前記動作状態の異常の有無を判定することを特徴とする機器診断装置。 - 請求項8に記載の機器診断装置において、
前記温度データは、気象情報から取得されることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項8に記載の機器診断装置において、
前記温度データは、温度センサによって取得されることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項8に記載の機器診断装置において、
前記基準データと前記温度データとに基づいて、前記相関関係を推定する温度感度推定手段を備えることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
前記診断対象機器の前記動作状態、および前記診断対象外機器の前記動作状態を検出する複数のセンサを備えることを特徴とする機器診断装置。 - 請求項1に記載の機器診断装置において、
前記複数の機器が、複数のエレベーターであることを特徴とする機器診断装置。 - 複数の機器の動作状態を診断する機器診断方法において、
前記複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、前記複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、前記複数の機器の内の診断対象外機器から選択し、
選択された前記診断対象外機器の動作状態に基づいて、前記診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成し、
作成された前記基準データと前記診断対象機器の前記動作状態とを比較して、前記診断対象機器の前記動作状態の異常の有無を判定することを特徴とする機器診断方法。 - 複数の機器の動作状態を診断する機器診断システムにおいて、
前記複数の機器の稼動頻度に関する情報を取得する複数の監視端末装置と、
前記監視端末装置によって取得された前記複数の機器の稼動頻度に関する情報に基づいて、前記複数の機器の内の診断対象機器に類似の機器を、前記複数の機器の内の診断対象外機器から選択する類似機器選択手段と、
前記類似機器選択手段によって選択される前記診断対象外機器の動作状態に基づいて、前記診断対象機器の動作状態を診断するための基準データを作成する基準データ算出手段と、
前記基準データ算出手段によって算出される前記基準データと前記診断対象機器の動作状態とを比較して、前記診断対象機器の前記動作状態の異常の有無を判定する判定手段と、
を備えるセンター装置と、
を備えることを特徴とする機器診断システム。
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