JP2006142285A - 土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体、貴金属担持鉄複合体を含む浄化剤及び土壌・地下水の浄化処理方法 - Google Patents

土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体、貴金属担持鉄複合体を含む浄化剤及び土壌・地下水の浄化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、土壌・地下水中に含まれる有機ハロゲン化合物、特に難分解性の芳香族有機ハロゲン化合物を効率よく持続的に、且つ経済的に処理できる鉄複合粒子を用いた浄化方法を提供する。
【解決手段】 有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いる貴金属担持鉄複合体であり、該貴金属担持鉄複合体はα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子とルテニウム、ロジウム及びパラジウムから選択した1種以上の貴金属とからなる貴金属担持鉄複合体であって、前記貴金属担持鉄複合体のX線回折スペクトルにおいてα−Feの(110)面とマグネタイトの(311)面との回折強度比が0.30〜0.95であり、Al含有量0.10〜1.50重量%であってS含有量3500〜10000ppmであり、貴金属の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体である。
【代表図】 なし

Description

本発明は、土壌又は地下水中に含まれるジクロロメタン、四塩化炭素、1、2−ジクロロエタン、1、1−ジクロロエチレン、シス−1、2−ジクロロエチレン、1、1、1−トリクロロエタン、1、1、2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び1、3−ジクロロプロペン等の脂肪族有機ハロゲン化合物、ダイオキシン類、PCB等の芳香族有機ハロゲン化合物を効率よく、持続的に、しかも経済的に分解できる浄化剤を提供するものである。
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の脂肪族有機ハロゲン化合物は、半導体工場での洗浄用や金属加工金属の脱脂用として幅広く用いられている。
また、都市ごみや産業廃棄物を焼却するごみ焼却炉から発生する排ガスや飛灰、主灰中には、微量ではあるが人体に対して極めて強い毒性を持つ芳香族有機ハロゲン化合物であるダイオキシン類が含まれている。ダイオキシン類は、ジベンゾ−p−ジオキシン、ジベンゾフラン等の水素が塩素で置換された化合物の総称である。排ガスや飛灰はごみ焼却炉周辺に滞留し周辺地域の土壌中にダイオキシン類が残存することとなる。
更に、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は化学的、熱的に安定であり、電気絶縁性にも優れており、トランス、コンデンサーの絶縁油、可塑剤、熱媒体として多用されていたが、有害であることから製造及び使用が禁止されている。しかしながら、過去において使用されていたPCBの有効な処理方法は確立されておらず、大部分が処理されずにそのまま保存されている。
脂肪族有機ハロゲン化合物及び芳香族有機ハロゲン化合物等の有機ハロゲン化合物は難分解性である上に発癌性物質又は強い毒性を有する物質であるため、土壌・地下水の有機ハロゲン化合物による汚染が深刻な環境問題になっている。
即ち、前記有機ハロゲン化合物が排出された場合、有機ハロゲン化合物は難分解性であるため、排出された土壌中に蓄積され有機ハロゲン化合物で汚染された状態となり、また、地下水も有機ハロゲン化合物によって汚染されることとなる。更に、地下水は汚染土壌以外の周辺地域についても広がるため、広範な領域で有機ハロゲン化合物による汚染が問題となる。
有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌では土地の再利用・再開発を行うことができないため、有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌・地下水の浄化処理方法として様々な技術手段の提案がなされているが、有機ハロゲン化合物は難分解性であり、しかも、多量の土壌・地下水が処理対象となるため、効率的、且つ、経済的な浄化技術は未だ十分に確立されていない。
有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌の浄化方法として、各種触媒を用いて浄化処理する方法、有機ハロゲン化合物の揮発性を利用して吸引除去する方法、土壌を掘削して加熱処理によって無害化する熱分解法、微生物を利用する方法等が知られている。また、有機ハロゲン化合物によって汚染された地下水の浄化方法として、汚染地下水を土壌外に抽出して無害化する方法、地下水を揚水することによって有機ハロゲン化合物を除去する方法等が知られている。
有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化方法として提案されている技術手段のうち、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水と鉄系粒子を用いた浄化剤とを混合接触させて無害化する技術手段が提案されている(特許文献1乃至9、非特許文献1)。
特開平11−235577号公報 特開2000−5740号公報 特開2000−334063号公報 特開2001−38341号公報 特開2001−198567号公報 特開2002−161263号公報 特開2002−210452号公報 特開2002−317202号公報 特開2004−083086号公報 CHUAN−BAO WANG AND WEI−XIAN ZHANG,「Synthesizing Nanoscale Iron Particles for Rapid and Complete Dechlorination of TCE and PCBs」,ENVIRONMENTAL SCIENCE & TECHNOLOGY,1997,Vol.31,No.7,p.2154−2156
土壌又は地下水中に含まれる有機ハロゲン化合物類を効率よく、持続的に、しかも経済的に分解できる浄化剤は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
即ち、前出特許文献1には0.1重量%以上の炭素を含有する鉄粉を土壌に添加・混合して土壌中の有機ハロゲン化合物を無害化する技術が開示されているが、鉄粉の比表面積及び粒度は記載されているものの粒子サイズが大きいため、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献2には銅を含有した鉄粉を用いて土壌中の有機ハロゲン化合物を無害化する技術が開示されているが、有機ハロゲン化合物の分解に長時間を必要とするため効率よく有機ハロゲン化合物を無害化できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献3にはダイオキシン類と製鉄所における熱間圧延鋼板の製造工程から生じるミルスケールを含む塩酸酸性水溶液とを100℃より低温で接触させてダイオキシン類を無害化する技術が開示されているが、無害化を促進させる塩酸酸性水溶液が必須であり、ミルスケール自体の分解反応が十分とは言い難いものである。
また、前出特許文献4には平均粒子径1〜500μmの鉄粒子を含む水懸濁液からなる土壌浄化剤が開示されているが、粒子サイズが大きく、有機ハロゲン化合物を十分に分解することが困難となる。
また、前出特許文献5には平均粒子径が10μm未満の球状鉄粒子を含有する水懸濁液を用いる技術が開示されているが、該球状鉄粒子を含有する水懸濁液は製鋼用の酸素吹転炉から精錬中に発生する排ガスを集塵し、ガスを除去して得られる水懸濁液であり、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献6には、ニッケル、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる金属が表面に付着し、付着金属以外の表面が鉄酸化被膜で覆われている有機ハロゲン化合物分解用鉄粉が記載されているが、ミルスケールで得られた鉄粉や溶鋼を水アトマイズした鉄粉を用いており、記載されている鉄粉の比表面積から、鉄粉の粒子サイズが大きいと思われ、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献7には、Sを含有する鉄粉を有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、粒子サイズが大きく、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献8には、マグネタイトを含有する鉄複合粒子粉末を有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、Sを含有しておらず、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献9には、マグネタイトと鉄との複合体を有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水に用いて浄化処理を行うことが記載されているが、短期間で効率よく分解するためには未だ十分とは言い難いものであった。
また、前出非特許文献1には、1〜100nmのFe粒子表面にPdを被覆した複合粒子粉末を用いることで、水溶液中のPCBを常温で分解できることを開示しているが、短時間で効率よく、PCBを分解できるとは言い難いものである。
そこで、本発明は、土壌・地下水中に含まれる有機ハロゲン化合物、特に難分解性の芳香族有機ハロゲン化合物を効率よく持続的に、且つ経済的に処理できる鉄複合粒子を用いた浄化方法を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は以下の通りの本発明により達成できる。
即ち、本発明は、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いる貴金属担持鉄複合体であり、該貴金属担持鉄複合体はα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子とルテニウム、ロジウム及びパラジウムから選択した1種以上の貴金属とからなる貴金属担持鉄複合体であって、前記貴金属担持鉄複合体のX線回折スペクトルにおいてα−Feの(110)面の回折強度D110とマグネタイトの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))が0.30〜0.95であり、Al含有量0.10〜1.50重量%であってS含有量3500〜10000ppmであり、貴金属の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体である(本発明1)。
また、本発明は、前記貴金属担持鉄複合体の平均粒子径が0.05〜0.50μmであることを特徴とする前記土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体である(本発明2)。
また、本発明は、飽和磁化値が85〜190Am/kgであり、BET比表面積が5〜60m/gであり、α−Feの(110)面の結晶子サイズが200〜400Åであることを特徴とする前記土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体である(本発明3)。
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体を有効成分として含有する水懸濁液からなる土壌・地下水の浄化処理用浄化剤である(本発明4)。
また、本発明は、有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌又は有機ハロゲン化合物類で汚染された地下水に対して、本発明1乃至3のいずれかに記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体又は本発明4記載の土壌・地下水浄化処理用浄化剤を用いて浄化処理を行うことを特徴とする土壌・地下水の浄化処理方法である(本発明5)。
また、本発明は、有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌又は有機ハロゲン化合物類で汚染された地下水に対して、原位置で、本発明4の土壌・地下水の浄化処理用浄化剤を直接、注入することを特徴とする土壌・地下水の浄化処理方法である(本発明6)。
本発明に係る浄化処理用貴金属担持鉄複合体は、有機ハロゲン化合物、特に芳香族有機ハロゲン化合物を効率よく分解できるので、有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌・地下水の浄化剤として好適である。
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
まず、本発明1乃至3に係る土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体(以下、「貴金属担持鉄複合体」という。)について述べる。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体は、α−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子に、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムから選択した1種以上の貴金属を存在させたものである。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体のFeの含有量は、該貴金属担持鉄複合体のX線回折スペクトルにおいて、α−Feの(110)面の回折強度D110とFeの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))で示した場合に、0.30〜0.95である。製造直後の強度比が0.30未満の場合、α−Fe相の存在比率が低いため有機ハロゲン化合物の浄化性能が十分ではなく、本発明の目的とする効果を容易に得ることが困難となる。強度比が0.95を超える場合には、α−Fe相の存在比率は十分であるが本発明で生成されたFe相の存在比率が低くなり、触媒活性の早期劣化、持続性の低下を招く為、本発明の目的とする効果が得られない。好ましくは0.32〜0.95である。また、Feは鉄複合粒子の粒子表面に存在することが好ましい。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体のS含有量は3500〜10000ppmである。S含有量が3500ppm未満の場合には、有機ハロゲン化合物の浄化性能が十分ではなく本発明の目的とする効果が得られない。10000ppmを越える場合には、有機ハロゲン化合物の浄化性能はあるが、多量に含有しても効果が飽和し経済的ではない。好ましくは3800〜10000ppmであり、より好ましくは3800〜9500ppmである。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体のAl含有量は0.10〜1.50重量%である。Al含有量が0.10重量%未満の場合には、造粒物の体積収縮により硬い造粒物になり易い為、湿式粉砕を行う場合に労力を要する。1.50重量%を越える場合には、還元反応の進行が遅く、還元反応に長時間を要する。また結晶成長を十分に行うことができず、α−Fe相が不安定となり粒子表面に酸化皮膜が厚く形成されたり、また加熱還元時におけるFe相からα−Fe相への相変化が不十分のため、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることができない。好ましくは0.20〜1.20重量%である。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体の貴金属含有量は0.01〜5.0重量%である。貴金属が0.01重量%未満の場合は、貴金属の担持効果が小さくなり、触媒活性が低下し、5.0重量%を超える場合には、貴金属を増やした効果がなく、経済的でない。好ましくは0.05〜4.0重量%、より好ましくは0.05〜3.0重量%である。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体の粒子形状は粒状が好ましい。本発明では紡錘状又は針状のゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子をそのまま加熱還元処理するので、α−Fe相へ結晶変態する際、粒子形状が崩れ、等方的に成長する過程を経るので粒状形状となる。一方、球状では粒子サイズが同じであれば、BET比表面積が小さくなり触媒活性が低くなるため、球状粒子が存在しないことが好ましい。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体の平均粒子径は0.05〜0.50μmが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合にはα−Fe相が不安定であるため表面に厚い酸化被膜が形成され、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果が得られない。製造直後に0.50μmを越える場合にはα−Fe相の存在比率は高くできるが、相対的にFe相の存在比率が低くなり、触媒活性の早期劣化、維持性の低下を招く為、本発明の目的とする課題を容易に解決することができない。より好ましくは0.05〜0.30μmである。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体の結晶子サイズ(α−Feの(110)面)は200〜400Åが好ましい。200Å未満の場合にはα−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。400Åを越える場合には、α−Fe相の存在比率は高くできるが、本発明で生成したFe相の存在比率を本発明の目的とする効果が得られる程度に保持することが困難となる。より好ましくは200〜350Åである。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体のBET比表面積値は5〜60m/gが好ましい。5m/g未満の場合には、接触面積が小さくなり触媒活性が発現しにくい。60m/gを越える場合には、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。より好ましくは7〜55m/gである。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体の飽和磁化値は85〜190Am/kg(85〜190emu/g)が好ましい。製造直後の貴金属担持鉄複合体の飽和磁化値が85Am/kg未満の場合には、α−Fe相の存在比率が低いものであり、本発明の目的とする課題を容易に解決することができない。190Am/kgを越える場合にはα−Fe相の存在比率は高くできるが、本発明で得られるFe相の存在比率を本発明の目的とする効果が得られる程度に保持することが困難となる。結果相対的にFe相の存在比率が低くなり、触媒活性の早期劣化、維持性の低下を招く為、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。より好ましくは90〜190Am/kg(90〜190emu/g)である。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体のFeの含有量は全粒子粉末に対して70重量%以上が好ましい。製造直後のFeの含有量が70重量%未満の場合には触媒活性が低下するため、本発明の目的とする効果を容易に得ることが困難となる。より好ましくは70〜98重量%であり、更により好ましくは70〜90重量%である。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体は、Pb、Cd、As、Hg、Sn、Sb、Ba、Zn、Cr、Nb、Co、Bi等のFe及び貴金属以外の金属元素は毒性のある金属であるため極力含有しないことが好ましい。
なお、貴金属担持鉄複合体は、造粒物の形態であってもよい。
次に、本発明4に係る有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化剤(以下、「浄化剤」という)について述べる。
本発明4に係る浄化剤は、本発明1乃至3のいずれかに係る貴金属担持鉄複合体を有効成分として含有する水懸濁液であり、貴金属担持鉄複合体の水懸濁液中の含有量は10〜40重量%の範囲内で適宜選択することができ、より好ましくは10〜30重量部である。40重量%を越える場合、浄化剤が増粘するため、撹拌時の機械的負荷が伝わりにくく、均一に混合することが難しいため、濃度の調整が困難となる。
本発明に係る浄化剤においては、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアスパラギン酸又はその塩及びポリマレイン酸又はその塩から選ばれる1種以上の分散剤を含有させることによって、従来に比べて格段に土壌への浸透性を向上させることができる。マレイン酸又はその塩でも生分解性は有すが、特に、ポリアスパラギン酸又はその塩は、生分解性が非常に良好であり、土壌・地下水への注入後、微生物によって生分解を起こすため、環境に蓄積されることがほとんど認められないことから、原位置浄化処理用浄化剤の分散剤としてより好適である。
本発明に係る浄化剤の比重は1.2〜1.4が好ましい。1.2未満では浄化剤の輸送、土壌等への添加量を考えると固形分が少なく経済的でなく、1.4を超える場合は本発明の一次粒子径、二次粒子径を考慮すると浄化剤が増粘し、工業的に製造するのは困難である。
次に、本発明に係る有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体の製造法について述べる。
本発明に係る貴金属担持鉄複合体は、常法に従って、ゲータイト粒子を製造し、必要により加熱してヘマタイト粒子とした後、前記ゲータイト粒子又は前記ヘマタイト粒子を加熱還元して鉄粒子粉末とした後、該鉄粒子粉末を気相中で当該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成して水中に取り出す又は該鉄粒子粉末を水中に取り出して水中で当該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成してα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子を含有する水懸濁液を製造した後、前記鉄複合粒子の粒子表面に貴金属を担持・被覆させた後、ろ過、水洗、乾燥して得ることができる。
本発明におけるα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子を含有する水懸濁液は、平均長軸径が0.05〜0.50μmであってAl含有量が0.06〜1.00重量%であり、S含有量が2200〜5500ppmであるゲータイト粒子粉末又は平均長軸径が0.05〜0.50μmであってAl含有量が0.07〜1.13重量%であり、S含有量が2400〜8000ppmのヘマタイト粒子粉末を、350〜600℃の温度範囲で加熱還元して鉄粒子粉末とした後、該鉄粒子粉末を気相中で当該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成して水中に取り出す又は該鉄粒子粉末を水中に取り出して水中で当該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成することによって得ることができる。
ゲータイト粒子粉末は、常法に従って、例えば、第一鉄塩を含有する水溶液と、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ又はアンモニアから選ばれる1種又は2種以上とを反応させて得られる鉄の水酸化物や炭酸鉄等の第一鉄含有沈殿物を含む懸濁液中に空気等の酸素含有ガスを通気することにより得ることができる。
なお、不純物含有量の少ない浄化処理用鉄複合粒子粉末を得るためには、前記第一鉄塩を含有する水溶液として、重金属等の不純物を低減し、純度の高いものを使用することが好ましい。
第一鉄塩を含有する水溶液の不純物量を低減するためには、例えば、鋼板を硫酸で酸洗し、鋼板の表層に析出している不純物、防錆の油分等を溶解除去した後の不純物の少ない鋼板を溶解して得られた第一鉄塩水溶液を用いる方法がある。鉄以外の金属不純物の多い屑鉄やスクラップ鉄、耐蝕性を向上させる為に行なわれるめっき処理、リン酸塩処理及びクロム酸処理等を行った鋼板並びに防錆の油分を塗布した鋼板等の酸洗液を用いた場合には、鉄複合粒子粉末中に不純物が残存し、浄化する土壌・地下水に溶出する恐れがあり好ましくない。また、酸化チタン製造工程等から副生する硫酸第一鉄溶液に水酸化アルカリ等のアルカリを添加し、pH調整によりチタン、その他の不純物を水酸化物として不溶化して沈殿除去、限外ろ過除去等を行い使用する方法がある。不純物の少ない鋼板を硫酸溶解して使用するのが好ましく、引き続きpH調整による不純物除去を行うのが更に好ましい。何れの方法も工業的に問題が無く、経済的にも有利である。
ゲータイト粒子粉末の平均長軸径は0.05〜0.50μmであり、S含有量が2200〜5500ppmである。粒子形状は紡錘状又は針状のどちらでも良い。軸比は4〜30が好ましく、より好ましくは5〜25であり、BET比表面積は20〜200m/gが好ましく、より好ましくは25〜180m/gである。
本発明においては、前記ゲータイト粒子中にAlを含有させるか、又は、ゲータイト粒子にAl被覆することが重要である。Alを含有または被覆することによって造粒物の体積収縮を抑制することより造粒物の硬さを制御することができる。したがって湿式粉砕を行う場合の労力も小さくすることができる。また相対的に一次粒子の大きさを小さくすることができ、比表面積も相対的に大きくなり、性能が向上する。
ゲータイト粒子粉末のAl含有量又はAl被覆量は0.06〜1.00重量%が好ましい。
なお、ゲータイト粒子粉末は、常法に従って、造粒しておくことが好ましい。造粒することによって、固定層方式の還元炉を使用できるほか、鉄複合粒子とした場合でも還元条件によってはそのまま造粒物の形態を保つことが可能となり、カラム等に充填して使用する場合には好ましい。
得られたゲータイト粒子粉末は250〜350℃の温度範囲で加熱脱水したヘマタイト粒子粉末にすることが好ましい。
本発明におけるヘマタイト粒子粉末は、あらかじめS含有量が高いゲータイト粒子を用いるか、又は、S含有量が低いゲータイト粒子の場合には、ヘマタイト粒子粉末の水懸濁液に硫酸を添加することで、ヘマタイト粒子粉末のS含有量を制御する。
ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径は0.05〜0.50μmであり、S含有量が2400〜8000ppmである。ヘマタイト粒子粉末のAl含有量又はAl被覆量は0.07〜1.13重量%が好ましい。
前記ゲータイト粒子粉末又は前記ヘマタイト粒子粉末を350〜600℃の温度範囲で加熱還元することによって鉄粒子(α−Fe)粉末とする。
加熱還元温度が350℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、還元反応に長時間を要する。また、BET比表面積を大きくすることができるが、結晶成長を十分に行うことができず、α−Fe相が不安定となり粒子表面に酸化被膜が厚く形成されたり、またFe相からα−Fe相への相変化が不十分のため、α−Fe相の存在比率を高くすることができない。600℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子及び粒子相互間の焼結が過度に促進され粒子径が大きくなり、BET比表面積も小さくなるため好ましくない。
なお、還元反応の昇温時の雰囲気は水素ガス、窒素ガス等が利用できるが、工業的には水素ガスが好ましい。
加熱還元後の鉄粒子粉末は冷却した後、該鉄粒子粉末を気相中でFeの表面酸化被膜を形成し、水中に取り出す、或いは水中に取り出して該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化皮膜を形成する。
表面酸化被膜の形成方法は、還元後の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法、酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐々に酸化する方法等により空気中に取り出すことができる。なお、気相中での表面酸化被膜の形成温度は、150℃以下が好ましいさらに、水中に取り出す時には100℃以下まで冷却されていることが好ましい。
一方、気相中で酸化被膜を形成することなく水中に取り出す場合には、100℃以下まで冷却されていることが好ましい。加熱還元した後、気相中で表面酸化被膜を形成することなく、直接、水中に取り出した場合、α−Feの触媒活性により水を分解して水素と酸素を生成し、発生した酸素によりα−Feが酸化され、粒子表面にFeからなる酸化被膜が形成されるものと推定している。
なお、加熱還元後の冷却時の雰囲気は窒素又は水素のいずれでもよいが、最終的には窒素に切り替えることが好ましい。
次いで、得られたα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子粉末の水懸濁液を湿式粉砕装置を用いて粉砕・分散する。
湿式粉砕に用いる粉砕装置としては、メディアを用いる場合、転動ミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)や振動ミル(ファイン・バイブレーションミル)等の容器駆動式、塔型(タワーミル)、攪拌槽型(アトライター)、流通管型(サンドグラインドミル)及びアニュラー型(アニュラーミル)等の媒体攪拌式を用いることができる。メディアを用いない場合、容器回転型(オングミル)、湿式高速回転型(コロイドミル、ホモミキサー、ラインミキサー)等のせん断・摩擦式を用いることができる。
湿式粉砕時の懸濁液中の該鉄粒子濃度は20〜40重量%が好ましい。20重量%未満の場合は、粉砕時にせん断等の応力が掛かり難く所定の粉砕粒度が得られないか長時間を要し、また粉砕に必要なメディアが著しく摩耗する為好ましくない。40重量%を超える場合には、水懸濁液が増粘し、機械的な負荷が大きく工業的に製造するのは困難である。
粉砕後のα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子の粒子表面に貴金属を担持・被覆させた後、濾過・水洗し、乾燥することによって、本発明に係る貴金属担持鉄複合体を得る。
また、貴金属の担持・被覆方法としては、加熱還元前のゲーサイト粒子粉末或いはヘマタイト粒子粉末に、予め貴金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物を含浸させた後、加熱還元処理以降の処理を行うことも可能であり、例えば、予めゲータイト粒子粉末或いはヘマタイト粒子粉末に、貴金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物を含浸させた後、加熱還元処理して得られた貴金属を担持した鉄粒子粉末を冷却し、気相中で表面酸化被膜を形成し、貴金属担持鉄複合体とする方法、前記加熱還元処理して得られた貴金属を担持した鉄粒子粉末を水中に取り出して水中で当該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成して貴金属を担持したα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子を含有する水懸濁液を製造した後、ろ過、水洗、乾燥して得ることができる。
α−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子の粒子表面へ貴金属を担持・被覆させる方法としては、該鉄複合粒子を含有する水懸濁液に、貴金属塩水溶液を添加混合して、鉄複合粒子表面のFe又はFe2+と貴金属イオンを置換めっきする方法や、該鉄複合粒子を含有する水懸濁液に貴金属コロイド液を添加混合して、該鉄複合粒子表面にコロイド状の貴金属を担持させる方法等が挙げられる。
貴金属塩としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウムの硝酸塩、酢酸塩、塩化物等が使用できる。
また、濾過・水洗後の乾燥雰囲気は、窒素、空気中、真空中等適宜選択できるが、温度は100℃以下が好ましい。
次に、本発明4に係る土壌・地下水の浄化処理用浄化剤の製造法について述べる。
本発明に係る土壌・地下水の浄化処理用浄化剤の製造法は、前記貴金属担持鉄複合体の製造法において、該α−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子の粒子表面に貴金属を担持・被覆させた後、デカンテーションによって水洗したものを、そのまま貴金属担持鉄複合体を含有する水懸濁液からなる浄化剤とするものである。
或いは、予めゲータイト粒子粉末或いはヘマタイト粒子粉末に、貴金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物を含浸させた後、加熱還元処理して得られた貴金属−鉄粒子粉末を冷却し、気相中で表面酸化被膜を形成し水中に取り出す又は水中に取り出して水中で該鉄粒子粉末の粒子表面に表面酸化被膜を形成した後、さらに湿式粉砕装置にて水懸濁液を調製し、デカンテーションにて水洗したものを、そのまま貴金属担持鉄複合体を含有する水懸濁液からなる浄化剤としてもよい。
なお、本発明においては、前記製造法に従ってあらかじめα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子を含有する水懸濁液を製造した後、該懸濁液を土壌・地下水の浄化処理を行う施工現場に輸送し、施工現場において、α−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子を含有する水懸濁液に対して前記方法に従って、鉄複合粒子に貴金属を担持・被覆させることもできる。
本発明4に係る浄化剤は、必要により、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアスパラギン酸又はその塩及びポリマレイン酸又はその塩から選ばれる1種以上の分散剤を含有させても良く、前記各分散剤は水溶性であるので、貴金属担持鉄複合体を含有する水懸濁液中に、粉末或いは水溶液で添加し、攪拌混合すればよい。
ポリマレイン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸の重合体又は無水マレイン酸、マレイン酸と他のモノマーとの共重合体(例えば、オレフィン・マレイン酸共重合体など)であり、前記重合体又は共重合体のナトリウム塩などのポリマレイン酸塩も用いることができる。ポリマレイン酸は、例えば、日本油脂株式会社、BASFジャパン株式会社等のメーカーが製造したポリマーを使用することができる。
次に、本発明5又は6に係る有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理方法ついて述べる。
有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理は、一般的に、含有される汚染物質を直接地下で分解する原位置分解法と掘削又は抽出した土壌・地下水中の汚染物質を分解する原位置抽出法とがあり、本発明においてはいずれの方法でも行うことができるが、好ましくは原位置分解法である。
原位置分解法においては、貴金属担持鉄複合体又は浄化剤を高圧の空気、窒素等のガスあるいは水を媒体にしてそのまま浸透もしくはボーリング孔から地下に導入する方法が取られる。特に本発明の浄化剤は水懸濁液であるのでそのまま使用するか必要に応じて希釈すれば良い。
原位置抽出法においては、掘削した土壌と貴金属担持鉄複合体又は浄化剤を、サンドミル、ヘンシェルミキサー、コンクリートミキサー、ナウターミキサー、一軸又は二軸式のニーダー型混合器等を用いて混合攪拌すれば良い。また、揚水した地下水においては貴金属担持鉄複合体が充填されたカラム等に通水することができる。
本発明に係る浄化剤は、浄化処理に用いる際に鉄複合粒子の固形分濃度が0.01〜20重量%となるように希釈することが好ましい。
また、本発明においては、土壌への浸透性向上のために、希釈浄化剤中に炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等を添加してもよい。
本発明に係る浄化剤の添加量は、土壌、地下水および排水中の有機ハロゲン化合物の濃度に応じて適宜選択することができるが、土壌を対象とする場合には、通常土壌100重量部に対して、固形分の貴金属担持鉄複合体として、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜20重量部である。0.01重量部未満の場合には、本発明の目的とする効果が充分得られない。50重量部を超える場合には、浄化効果は向上するが経済的ではない。また、地下水および排水を対象とする場合には、地下水100重量部に対して0.01〜50重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜20重量部である。
土壌、地下水および排水中の有機ハロゲン化合物に対する本発明に係る浄化剤の添加量は、有機ハロゲン化合物1重量部に対して、固形分の貴金属担持鉄複合体として、10〜1000重量部が好ましく、より好ましくは10〜500重量部である。1重量部未満の場合には、本発明の目的とする効果が充分得られない。500重量部を超える場合には、有機ハロゲン化合物の分解性能は向上するが経済的ではない。
本発明に係る分解触媒を用いた場合には、後述する評価法において、土壌中の芳香族有機ハロゲン化合物の残存率を25%以下、好ましくは20%以下にすることができ、地下水および排水中の芳香族有機ハロゲン化合物の残存率を25%以下、好ましくは20%以下にすることができる。
<作用>
本発明において重要な点は、本発明に係る貴金属担持鉄複合体あるいは浄化剤を用いることによって、土壌・地下水の有機ハロゲン化合物を効率よく、経済的に分解処理できるという点である。
本発明者は、土壌・地下水中の有機ハロゲン化合物を効果的に分解できる理由は未だ明らかではないが、下記のように推定している。
即ち、本発明に係る浄化処理用貴金属担持鉄複合体は、α−Fe相(0価)とFe相とが特定の割合で存在するとともに、一部の硫黄が加熱還元工程を経て0価の状態で存在することによって、鉄複合粒子として高い還元作用を有することができ、有機ハロゲン化合物の分解反応に寄与するものと推定している。更に、有機ハロゲン化合物を分解する際に、α−Fe相(0価)及びFe相と水が反応して生成した活性水素が、スピルオーバー現象によって貴金属担持鉄複合体の粒子表面を移動し、貴金属相表面に吸着した有機ハロゲン化合物と水素化脱ハロゲン反応するものと推定している。
本発明においては、浄化処理用貴金属担持鉄複合体にAl化合物を特定量添加することによって、有機ハロゲン化合物の分解性能を向上させることができる。この理由は未だ明らかではないが、Alを含有することによって、一次粒子をより微細化することができ、しかも、鉄複合粒子粉末の凝集体の強度を従来に比較して小さくなるので、湿式粉砕に労力を要さず、同様に粉砕した場合より微細に粉砕することが可能となる。その結果、土壌中又は地下水中で容易に浸透・分散することができるので、鉄複合粒子が本来有する有機ハロゲン化合物に対する分解活性を十分に発揮できたことによるものと本発明者は推定している。
以上のように、触媒活性効果が高いため、効率的に短期間で浄化処理を行うことが可能となり、特に高濃度の脂肪族有機ハロゲン化合物や難分解性の芳香族有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化に好適である。
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
ゲータイト粒子粉末の平均長軸径及び軸比は透過型電子顕微鏡写真(倍率30000倍)で測定した。ヘマタイト粒子粉末及び鉄複合粒子粉末の平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真(倍率30000倍)を用いて測定した。
鉄複合粒子粉末のFe量、Al量及び貴金属量は、貴金属担持鉄複合体0.20gを濃硝酸/濃塩酸(1/3容積比)溶液をイオン交換水で2倍に希釈した溶液30mlに煮沸溶解した後、イオン交換水を加えて2リットルに希釈して、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して測定した。
各粒子粉末のS含有量は、「カーボン・サルファーアナライザー:EMIA−2200」(HORIBA製)を使用して測定した。
各粒子粉末の結晶相はX線回折によって10〜90°の範囲で測定して同定した。
鉄複合粒子粉末のピーク強度比は、前記の通りX線回折の結果から、α−Feの(110)面の回折強度D110及びマグネタイトの(311)面の回折強度D311を測定し、D110/(D311+D110)として強度比を求めた。
鉄複合粒子粉末の結晶子サイズ(α−Feの(110)面)は、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、各粒子の結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記シェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
結晶子サイズ=Kλ/βcosθ
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)。
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)。
θ=回折角(各結晶面の回折ピークに対応)。
各粒子粉末の比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用し、BET法により測定した値で示した。
鉄複合粒子粉末の飽和磁化値は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
<模擬土壌中クロロベンゼンの浄化処理評価>
<模擬土壌用検量線の作製:クロロベンゼンの定量>
クロロベンゼンの濃度は下記手順に従ってあらかじめ検量線を作成し、得られた検量線に基づいて濃度を算出した。
クロロベンゼン(CCl):分子量112.56
試薬特級(99.5%)、密度(20℃)1.115g/ml
クロロベンゼンを0.05μl、0.1μl及び1.0μlの3水準とし、褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)にイオン交換水30mlを添加し、砂質土壌20g(目開き2mmの篩い下)を封印し、次いで、クロロベンゼンを各水準量注入し、直ちにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付ける。バイアル瓶のヘッドスペースのガスをシリンジで50μl分取し、「GC−MS−QP5050」(島津製作所製)を用いてクロロベンゼンを測定する。クロロベンゼンは全く分解されないものとして、添加量とピーク面積との関係を求める。このときのカラムはキャピラリーカラム(DB−1:J&W Scientific社製、液相:ジメチルポリシロキサン)とし、キャリアガスにはHeガス(143l/min)を使用し、40℃、2分間保持した後、10℃/minの速度で250℃まで昇温してガスを分析する。
<試料調整>
あらかじめ湿った砂質土壌20g(目開き2mm篩い下)にクロロベンゼン1.0μlを添加し、クロロベンゼンで汚染された土壌を作製した。褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に貴金属担持鉄複合体0.3g又は浄化剤(貴金属担持鉄複合体0.3g相当)を入れ、さらにイオン交換水を浄化剤中の水量と合わせて30mlとなるように注入し、次いで、前記汚染土壌を添加し、直ぐにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付けて静置反応させる。
<評価方法>
クロロベンゼン残存量は、前記バイアル瓶のヘッドスペースのガスを、反応時間100時間後にシリンジで50μl分取し、前記「GC−MS−QP5050」(島津製作所製)を用いて測定する。
<模擬地下水、排水中クロロベンゼンの浄化処理評価>
<模擬地下水、排水用検量線の作製:クロロベンゼンの定量>
砂質土壌を添加しない以外は前記<土壌用検量線の作製:クロロベンゼンの定量>と同様にして地下水、排水用検量線を作成した。
<試料調整>
前記褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に貴金属担持鉄複合体0.3g又は浄化剤(貴金属担持鉄複合体0.3g相当)を入れ、さらにイオン交換水を浄化剤中の水量と合わせて30mlとなるように注入し、次いで、クロロベンゼン1μlを添加し、直ぐにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付けて静置反応させる。
<評価方法>
クロロベンゼン残存量は前記<評価方法>と同様にして測定した。
<模擬土壌中ダイオキシン類の浄化処理評価>
<試料調整>
褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に、あらかじめ湿った砂質土壌20g(目開き2mm篩い下)、貴金属担持鉄複合体0.3g又は浄化剤(鉄複合粒子粉末0.3g相当)及びイオン交換水30mlを注入し、次いで、表1に示すダイオキシン類混合標準液(CIL社製EDF−4943)をアセトンで100倍に希釈した希釈標準液(41ng−TEQ/ml)を0.2ml(8.2ng−TEQに相当する)注入し、直ぐにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付けて静置反応させる。
Figure 2006142285
<評価方法>
反応時間200時間後に、バイエル瓶中の溶液、砂質土壌および貴金属担持鉄複合体に含まれるダイオキシン類を常法によって抽出し、抽出液中のダイオキシン類をガスクロマトグラフィー質量分析計(MICROMASS社製AUTOSPEC ULTIMA)で定量した。残存量は毒性等量にて計算した。
<模擬地下水、排水中ダイオキシン類の浄化処理評価>
<試料調整>
褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に貴金属担持鉄複合体0.3g又は浄化剤(貴金属担持鉄複合体0.3g相当)とイオン交換水30mlを注入し、次いで、表1に示すダイオキシン類混合標準液(CIL社製EDF−4943)をアセトンで100倍に希釈した希釈標準液(41ng−TEQ/ml)を0.2ml(8.2ng−TEQに相当する)注入し、直ぐにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付けて静置反応させる。
<評価方法>
ダイオキシン類残存量は前記<評価方法>と同様にして測定した。
実施例1<貴金属担持鉄複合体1及び浄化剤1の製造>
毎秒3.4cmの割合でNガスを流すことによって非酸化性雰囲気に保持された反応容器中に、1.16mol/lのNaCO水溶液704lを添加した後、Fe2+1.35mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液296lを添加、混合(NaCO量は、Feに対し2.0倍当量に該当する。)し、温度47℃においてFeCOを生成させた。
ここに得たFeCOを含む水溶液中に、引き続き、Nガスを毎秒3.4cmの割合で吹き込みながら、温度47℃で70分間保持した後、当該FeCOを含む水溶液中に、温度47℃において毎秒2.8cmの空気を5.0時間通気してゲータイト粒子1を生成させた。なお、空気通気中におけるpHは8.5〜9.5であった。
ここに得たゲータイト粒子1を含有する懸濁液に、Al3+0.3mol/lを含む硫酸Al水溶液20lを添加、十分撹拌した後フィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してゲータイト粒子粉末1の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成する含有するゲータイト粒子粉末は、平均長軸径0.30μm、軸比(長軸径/短軸径)12.5の紡錘状を呈した粒子であった。BET比表面積は85m/g、Al含有量は0.40重量%、S含有量は400ppmであった。
前記造粒物を330℃で加熱しヘマタイト粒子とし乾式粉砕する。その後水に邂逅し70%硫酸を10ml/kgの割合で添加し攪拌する。その後、脱水しプレスケーキとし、圧縮成型機を用いて孔径3mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してヘマタイト粒子粉末の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成するヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.24μm、軸比(長軸径/短軸径)10.7の紡錘形を呈した粒子であった。S含有量は3300ppmであった。
前記ヘマタイト粒子粉末の造粒物100gを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、窒素ガスに切り替えて90℃まで冷却し、次いで、酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化被膜を形成した。次いでイオン交換水300mlを直接還元炉に導入し、そのまま鉄粒子粉末を含有する水懸濁液として取り出した。
その水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、中速回転型攪拌機として動力0.2kWのT.Kホモディスパー2.5型(直径40mmφのエッジタービン翼、特殊機化工業(株)製)を挿入し、回転数3600rpmで30分間攪拌した。
次いで、連続せん断式分散機として、動力0.55kWのT.Kホモミックラインミル(PL−SL型、特殊機化工業(株)製)で、回転数4000rpmで分散処理した。
その後、メディア式分散機として、動力1.5kWの四筒式サンドグラインダー(4TSG−(1/8G)型、特殊機化工業(株)製)に、直径2mmのガラスビーズを0.25l充填し、回転数500rpmで分散処理し、固形分濃度30重量%の水懸濁液300mlを得た。
この水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、1.25mmol/lのルテニウムコロイド水溶液(戸田工業(株)製TCU−611、平均粒子径5nm)710mlを羽根攪拌下にて添加し、さらに30分間攪拌混合した後、デカンテーションにて上澄み液の伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗して、比重1.25、固形分濃度30重量%の浄化剤300mlとした(浄化剤1とする)。
得られた浄化剤中に含有する鉄複合粒子は、走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察した結果、一次粒子の粒子形状は米粒状であって平均長軸径が0.09μmであって軸比が1.4であった。
次いで、濾過し、40℃で3時間、大気中で乾燥し、浄化処理用鉄複合粒子粉末を得た(貴金属担持鉄複合体1とする)。
ここに得た鉄複合粒子は、α−Feを主体としており、飽和磁化値132Am/kg(132emu/g)、BET比表面積27m/g、結晶子サイズ295Å、Fe含有量は82.9重量%、S含有量は4000ppm、ルテニウム含有量0.10重量%であった。X線回折の結果、α−FeのD110とFeのD311との強度比D110/(D110+D311)は0.84であった。
実施例2<貴金属担持鉄複合体2及び浄化剤2の製造>
Fe2+1.50mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液12.8lと0.44−NのNaOH水溶液30.2l(硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し0.35当量に該当する。)とを混合し、pH6.7、温度38℃においてFe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液の生成を行なった。次いで、Fe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液に温度40℃において毎分130lの空気を3.0時間通気してゲータイト核粒子を生成させた。
前記ゲータイト核粒子を含む硫酸第一鉄水溶液(ゲータイト核粒子の存在量は生成ゲータイト粒子に対し35mol%に該当する。)に、5.4NのNaCO水溶液7.0l(残存硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し1.5当量に該当する。)を加え、pH9.4、温度42℃において毎分130lの空気を4時間通気してゲータイト粒子粉末を生成させた。ここに得たゲータイト粒子を含有する懸濁液にAl3+0.3mol/lを含む硫酸Al水溶液を0.96lを添加、十分撹拌した後をフィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してゲータイト粒子粉末2の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成する含有するゲータイト粒子粉末は、平均長軸径0.33μm、軸比(長軸径/短軸径)25.0の針状を呈した粒子であった。BET比表面積は70m/g、Al含有量は0.42重量%、S含有量は4000ppmであった。
前記造粒物を330℃で加熱しヘマタイト粒子とし乾式粉砕する。その後、脱水しプレスケーキとし、圧縮成型機を用いて孔径3mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してヘマタイト粒子粉末の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成するヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.25μm、軸比(長軸径/短軸径)21.4の針状を呈した粒子であった。S含有量は4500ppmであった。
前記ヘマタイト粒子粉末の造粒物100gを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、イオン交換水300mlを直接還元炉に導入し、そのまま約20重量%の鉄粒子粉末を含有する水懸濁液として取り出した。
その水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、中速回転型攪拌機として動力0.2kWのT.Kホモディスパー2.5型(直径40mmφのエッジタービン翼、特殊機化工業(株)製)を挿入し、回転数3600rpmで30分間攪拌した。
次いで、連続せん断式分散機として、動力0.55kWのT.Kホモミックラインミル(PL−SL型、特殊機化工業(株)製)で、回転数4000rpmで分散処理した。
その後、メディア式分散機として、動力1.5kWの四筒式サンドグラインダー(4TSG−(1/8G)型、特殊機化工業(株)製)に、直径2mmのガラスビーズを0.25l充填し、回転数500rpmで分散処理し、固形分濃度30重量%の水懸濁液300mlを得た。
この水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、5.0mmol/lの硝酸パラジウム水溶液340mlを羽根攪拌下にて添加し、さらに30分間攪拌混合した後、デカンテーションにて上澄み液の伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗し、さらに、羽根攪拌下にて、ポリマレイン酸水溶液(日本油脂(株)製ポリスターOM)を固形分として15g添加し、比重1.25、固形分濃度30重量%の浄化剤(浄化処理用浄化剤2)300mlとした。
得られた浄化剤中に含有する鉄複合粒子は、走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察した結果、一次粒子の粒子形状は米粒状であって平均長軸径が0.11μmであって軸比が1.4であった。
浄化剤の一部を抜き取り、濾過・水洗し、40℃で3時間、大気中で乾燥し、貴金属担持鉄複合体を得た(貴金属担持鉄複合体2とする)。
ここに得た鉄複合粒子粉末は、α−Feを主体としており、飽和磁化値140Am/kg(140emu/g)、BET比表面積20m/g、結晶子サイズ298Å、Fe含有量は85.9重量%、S含有量は5500ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.88であった。
実施例3〜4、比較例1〜3
貴金属担持鉄複合体及び浄化剤:
ゲータイト粒子の種類、加熱脱水の温度、ヘマタイト粒子を含有する懸濁液への硫酸の添加の有無及び添加量、加熱還元の温度、浄化剤の固形分濃度、貴金属の種類及び添加量を種々変化させた以外は、前記実施例1と同様にして、それぞれ貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を得た。
なお、ゲータイト粒子3は、添加する硫酸Al水溶液の量を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にしてゲータイト粒子粉末の造粒物を得たものである。
ゲータイト粒子の諸特性を表2に、製造条件を表3に、得られた貴金属担持鉄複合体の諸特性を表4に示す。
実施例5<貴金属担持鉄複合体5及び浄化剤5の製造>
Fe2+1.50mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液12.8lと0.44−NのNaOH水溶液30.2l(硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し0.35当量に該当する。)とを混合し、pH6.7、温度38℃においてFe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液の生成を行なった。次いで、Fe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液に温度40℃において毎分130lの空気を3.0時間通気してゲータイト核粒子を生成させた。
前記ゲータイト核粒子を含む硫酸第一鉄水溶液(ゲータイト核粒子の存在量は生成ゲータイト粒子に対し35mol%に該当する。)に、5.4NのNaCO水溶液7.0l(残存硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し1.5当量に該当する。)を加え、pH9.4、温度42℃において毎分130lの空気を4時間通気してゲータイト粒子を生成させた。ここに得たゲータイト粒子を含有する懸濁液にAl3+0.3mol/lを含む硫酸Al水溶液を0.96lを添加、十分撹拌した後、Ru2+0.05mol/lを含む塩化Ru水溶液0.94lを添加、十分攪拌した後、フィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してゲータイト粒子4の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成する含有するゲータイト粒子は、平均長軸径0.33μm、軸比(長軸径/短軸径)25.0の針状を呈した粒子であった。BET比表面積は70m/g、Al含有量は0.40重量%、Ru含有量は0.25重量%、S含有量は3500ppmであった。
前記造粒物を330℃で加熱しヘマタイト粒子の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成するヘマタイト粒子は、平均長軸径0.25μm、軸比(長軸径/短軸径)22.0の針状を呈した粒子であった。S含有量は4000ppmであった。
前記ヘマタイト粒子の造粒物100gを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、窒素ガスに切り替えて70℃まで冷却し、次いで、酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化皮膜を形成し、α-Fe−Fe−アルミニウム−ルテニウム複合粒子を得た(貴金属担持鉄複合体5)。
前記鉄複合粒子11をイオン交換水300mlへ投入し、約20重量%の鉄複合粒子を含有する水懸濁液とした後、その水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、中速回転型攪拌機として動力0.2kWのT.Kホモディスパー2.5型(直径40mmφのエッジタービン翼、特殊機化工業(株)製)を挿入し、回転数3600rpmで30分間攪拌した。
次いで、連続せん断式分散機として、動力0.55kWのT.Kホモミックラインミル(PL−SL型、特殊機化工業(株)製)で、回転数4000rpmで分散処理した。
その後、メディア式分散機として、動力1.5kWの四筒式サンドグラインダー(4TSG−(1/8G)型、特殊機化工業(株)製)に、直径2mmのガラスビーズを0.25l充填し、回転数500rpmで分散処理し、この水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、羽根攪拌下にて、ポリマレイン酸水溶液(日本油脂(株)製ポリスターOM)を固形分として10.8g添加し、比重1.20、固形分濃度20重量%の浄化剤(浄化処理用浄化剤5)300mlとした。
得られた浄化剤中に含有する鉄複合粒子は、走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察した結果、一次粒子の粒子形状は米粒状であって平均長軸径が0.10μmであって軸比が1.4であった。
ここに得た鉄複合粒子は、α−Feを主体としており、飽和磁化値152Am/kg(152emu/g)、BET比表面積27m/g、結晶子サイズ262Å、Fe含有量は87.7重量%、S含有量は4700ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.87であった。
ゲータイト粒子の諸特性を表2に、製造条件を表3に、得られた貴金属担持鉄複合体の諸特性を表4に示す。
Figure 2006142285
Figure 2006142285
Figure 2006142285
<模擬汚染土壌または汚染地下水、排水の浄化処理>
使用例1
<土壌中クロロベンゼンの浄化処理結果>
前記評価方法によれば、前記貴金属担持鉄複合体1を用いた場合、土壌用試料中のクロロベンゼンの残存率は、100時間後で4.5%であった。反応生成物としては、ベンゼンおよびシクロヘキサンが確認できた。
使用例2〜9、比較使用例1〜4
貴金属担持鉄複合体又は浄化剤の種類、反応対象物質を種々変化させて、前記の模擬汚染土壌または汚染地下水、排水の処理を行った。
評価結果を表5に示す。
なお、実施例3で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体3、浄化剤3とし、実施例4で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体4、浄化剤4とし、実施例5で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体5、浄化剤5とし、比較例1で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体6、浄化剤6とし、比較例2で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体7、浄化剤7とし、比較例3で得られた貴金属担持鉄複合体及び浄化剤を、それぞれ、鉄複合体8、浄化剤8とした。
Figure 2006142285
本発明に係る浄化処理用鉄複合粒子粉末は、有機ハロゲン化合物、特に芳香族有機ハロゲン化合物を効率よく分解できるので、有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌・地下水の浄化剤として好適である。

Claims (6)

  1. 有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いる貴金属担持鉄複合体であり、該貴金属担持鉄複合体はα−Fe及びマグネタイトからなる鉄複合粒子とルテニウム、ロジウム及びパラジウムから選択した1種以上の貴金属とからなる貴金属担持鉄複合体であって、前記貴金属担持鉄複合体のX線回折スペクトルにおいてα−Feの(110)面の回折強度D110とマグネタイトの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))が0.30〜0.95であり、Al含有量0.10〜1.50重量%であってS含有量3500〜10000ppmであり、貴金属の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体。
  2. 前記貴金属担持鉄複合体の平均粒子径が0.05〜0.50μmであることを特徴とする請求項1記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体。
  3. 飽和磁化値が85〜190Am/kgであり、BET比表面積が5〜60m/gであり、α−Feの(110)面の結晶子サイズが200〜400Åであることを特徴とする請求項1又は2記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体を有効成分として含有する水懸濁液からなる土壌・地下水の浄化処理用浄化剤。
  5. 有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌又は有機ハロゲン化合物類で汚染された地下水に対して、請求項1乃至3のいずれかに記載の土壌・地下水の浄化処理用貴金属担持鉄複合体又は請求項4記載の土壌・地下水浄化処理用浄化剤を用いて浄化処理を行うことを特徴とする土壌・地下水の浄化処理方法。
  6. 有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌又は有機ハロゲン化合物類で汚染された地下水に対して、原位置で、請求項4記載の土壌・地下水の浄化処理用浄化剤を直接、注入することを特徴とする土壌・地下水の浄化処理方法。
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